特許異議申立
2024-700386
X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム
- 審判番号
- 2024-700386
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-171845
- 登録番号
- 7367165
- 請求日
- 2024年04月22日
- 審決日
- 2025年12月01日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】キヤノン株式会社
- 【権利者代理人】阿部 琢磨
- 【権利者代理人】高橋 佳子
- 【権利者代理人】中辻 七朗
- 【権利者代理人】冨田 一史
- 【権利者代理人】大朋 靖尚
- 【権利者代理人】黒岩 創吾
- 【異議申立人】株式会社 レクレアル
- 【異議申立人代理人】松浦 孝
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 波多江 進
- 審判官 東松 修太郎
- 分類
- P1651.121-ZAA(H01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7367165号発明「X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7367165号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7367165号の請求項1、2、4~8、11~13に係る特許を取り消す。
特許第7367165号の請求項3、9、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許の出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯
特許第7367165号(以下「本件特許」という。)について、出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和4年10月26日 :特許出願(特願2016-16375号(出願日 平成28年1月29日)を原出願とする分割出願である特願2021-1000号(出願日 令和3年1月6日)を原出願とする分割出願)
令和5年10月13日 :特許権の設定登録
同月23日 :特許掲載公報の発行
2 本件特許異議申立ての手続の経緯
本件特許異議申立ての手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 4月22日付け:特許異議申立書の提出
(特許異議申立人:株式会社レクレアル、請求項1~13に対して)
同年 7月26日付け:取消理由通知書
同年10月 2日 :訂正請求書及び意見書の提出
同月17日付け:手続補正指令書(方式)
同年11月15日 :訂正請求書の手続補正書(方式)の提出
令和7年 1月 9日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 2月17日 :手続補正書及び意見書の提出
同年 3月21日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月23日 :訂正請求書及び意見書の提出
同年 6月12日付け:手続補正指令書(方式)
同年 7月10日 :訂正請求書の手続補正書(方式)の提出
同年 8月 1日付け:手続補正指令書(方式)
同年 9月 1日 :手続補正書(方式)の手続補正書(方式)の提出
同月12日付け:訂正請求があった旨の通知書
令和7年9月12日付けの通知書において、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は応答しなかった。
以下、令和7年7月10日に提出され、同年9月1日に提出された手続補正書(方式)により補正された手続補正書(方式)により補正された、同年5月23日提出の訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
また、本件訂正請求書に記載の訂正事項1~17をそのまま訂正事項1~17という。
第2 本件訂正について
1 本件訂正の請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める、というものである。
なお、本件訂正に係る請求によって、令和6年10月2日に提出された訂正請求書による請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前(本件特許の設定登録時)の特許請求の範囲の請求項1~13の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
電子の照射によりX線を発生するターゲットと前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材とを含む陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記引出電極を通過した電子に静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極と、前記集束電極と前記集束電極を電気的に絶縁し支持するために管周方向に離散的に設けられた複数の絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と接続される陰極部材と、を含む陰極と、を有するX線発生管であって、
前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、
前記電子銃は、前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記複数の絶縁支持部材のいずれもが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮る導電性の遮蔽部を有しているX線発生管。
【請求項2】
電子の照射によりX線を発生するターゲットと前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材とを含む陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記引出電極を通過した電子に静電場を作用させ電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と電気的に接続される陰極部材と、を含む陰極と、管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管と、を有するX線発生管であって、
前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、
前記電子銃は、前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記絶縁支持部材が有さないように前記絶縁支持部材を遮る導電性の遮蔽部を有するX線発生管。
【請求項3】
前記集束電極は、電圧源により電位規定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のX線発生管。
【請求項4】
前記集束電極は、前記導電性の前記遮蔽部を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項5】
前記導電性の前記遮蔽部は、前記複数の絶縁支持部材が前記電子通過路から直視される部分を有さないように設けられることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。
【請求項6】
前記集束電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり前記電子通過路に沿って延在する管状部と、を有し、
前記導電部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項7】
前記導電性の前記遮蔽部は、記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項8】
前記電子放出部に由来する金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することを低減する請求項1~7のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項9】
前記電子銃は、管径方向における外側から見て前記絶縁支持部材が直視されない様に、前記絶縁支持部材の管径方向における外側に外周管状部を有し、前記導電部は前記外周管状部の部分であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項10】
前記外周管状部は、前記集束電極の部分であることを特徴とする請求項9に記載のX線発生管。
【請求項11】
管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管をさらに有する請求項1に記載のX線発生管。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。
【請求項13】
請求項12に記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、
前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、
を備えることを特徴とするX線撮影システム。」
3 本件訂正後の訂正特許請求の範囲の記載
本件訂正後の訂正特許請求の範囲の請求項1~13の記載は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
「【請求項1】
電子の照射によりX線を発生するターゲットと前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材とを含む陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持するために管周方向に離散的に設けられた複数の絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と接続される陰極部材と、を含む陰極と、を有するX線発生管であって、
前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当し、
前記電子銃は、前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記複数の絶縁支持部材のいずれもが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮り前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電性の遮蔽部を有しているX線発生管。
【請求項2】
電子の照射によりX線を発生するターゲットと前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材とを含む陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と電気的に接続される陰極部材と、を含む陰極と、管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管と、を有するX線発生管であって、
前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当し、
前記電子銃は、前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記絶縁支持部材が有さないように前記絶縁支持部材を遮り前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する導電性の遮蔽部を有するX線発生管。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記集束電極は、前記導電性の前記遮蔽部を含む請求項1または2に記載のX線発生管。
【請求項5】
前記導電性の前記遮蔽部は、前記複数の絶縁支持部材が前記電子通過路から直視される部分を有さないように設けられることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。
【請求項6】
前記集束電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり前記電子通過路に沿って延在する管状部と、を有し、
前記導電性の前記遮蔽部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1、2、4~5のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項7】
前記導電性の前記遮蔽部は、前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されている請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項8】
前記電子放出部に由来する金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することを低減する請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管をさらに有する請求項1に記載のX線発生管。
【請求項12】
請求項1、2、4~8、および、11のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。
【請求項13】
請求項12に記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、
前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、
を備えることを特徴とするX線撮影システム。」
4 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、一群の請求項である訂正後の請求項1~13についての訂正事項1~17からなるものであって、訂正事項1~17の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「前記引出電極を通過した電子に静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極」であった記載を、「前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~13も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「前記集束電極と前記集束電極を電気的に絶縁し」であった記載を、「前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~13も同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「電子通過路を規定する電子通過孔を有し、」であった記載を、「電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当し、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~13も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において、訂正前の「前記複数の絶縁支持部材を遮る導電性の遮蔽部」であった記載を、「前記複数の絶縁支持部材を遮り前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電性の遮蔽部」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~13も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2において、訂正前の「前記引出電極を通過した電子に静電場を作用させ電子ビームを形成する集束電極」であった記載を、「前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ電子ビームを形成する集束電極」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~4、6~10、12~13も同様に訂正する。)。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2において、訂正前の「電子通過路を規定する電子通過孔を有し、」であった記載を、「電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当し、」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~4、6~10、12~13も同様に訂正する。)。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2において、訂正前の「前記絶縁支持部材を遮る導電性の遮蔽部」であった記載を、「前記絶縁支持部材を遮り前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する導電性の遮蔽部」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~4、6~10、12~13も同様に訂正する。)。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3を削除する(請求項3の記載を引用する請求項4、6~10、12、13も同様に訂正する。)。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項4において、訂正前の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」であった記載を、「請求項1または2に記載の」と訂正する(請求項4の記載を引用する請求項6~10、12~13も同様に訂正する。)。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6において、訂正前の「前記導電部」であった記載を、「前記導電性の前記遮蔽部」と訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7~10、12~13も同様に訂正する。)。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6において、訂正前の「請求項1~5のいずれか1項に記載の」であった記載を、「請求項1、2、4~5のいずれか1項に記載の」と訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7~10、12~13も同様に訂正する。)。
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7において、訂正前の「記絶縁支持部材」であった記載を、「前記絶縁支持部材」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~10、12~13も同様に訂正する。)。
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項7において、訂正前の「請求項1~6のいずれか1項に記載の」であった記載を、「請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載の」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~10、12~13も同様に訂正する。)。
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項8において、訂正前の「請求項1~7のいずれか1項に記載の」であった記載を、「請求項1、2、4~7のいずれか1項に記載の」と訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9~10、12~13も同様に訂正する。)。
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項9を削除する(請求項9の記載を引用する請求項10、12~13も同様に訂正する。)。
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項10を削除する(請求項10の記載を引用する請求項12~13も同様に訂正する。)。
(17) 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項12において、訂正前の「請求項1~11のいずれか1項に記載の」であった記載を、「請求項1、2、4~8、および、11のいずれか1項に記載の」と訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)。
第3 本件訂正の適否についての判断
1 訂正事項1、5について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項1、5に係る訂正は、以下の訂正からなるものである。
(i) 本件訂正前の請求項1、2に特定されていた「集束電極」について、「前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され[る]」ことを限定する訂正。
(ii) 本件訂正前の請求項1、2に特定されていた「静電場を作用させ[る]」ことについて、「集束電場として」作用させることを限定する訂正。
前記(i)及び(ii)の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項1、5に係る訂正は、本件特許の設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の「一方、集束グリッド電極44は、電子に対して集束電場を形成しターゲット5b上に形成する焦点8の大きさを規定することを意図して設けられ、電子放出部40に対して所定の電位差を有した集束グリッド電位が不図示の電圧源より印加される。」(【0034】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項1、5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項1、5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
2 訂正事項2について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の「前記集束電極と前記集束電極を電気的に絶縁し」との技術的に不可解なため明瞭でない記載を、「前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し」と訂正することにより、明瞭にするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等の「前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材」(【請求項2】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
3 訂正事項3、6について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項3、6に係る訂正は、本件訂正前の請求項1、2に特定されていた「電子通過路」について、「前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当[する]」ことを限定するものであるから、訂正事項3、6に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項3、6に係る訂正は、本件明細書等の「なお、本願明細書における電子通過路7は、電子放出部40から放出された電子が集束グリッド電極44を通過するまでの通過経路に対応する。」(【0035】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項3、6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項3、6に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
4 訂正事項4について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に特定されていた「導電性の遮蔽部」について、「前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する」ことを限定するものであるから、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等の「このような環状部43a、44a(導電部6)を備えることにより、本実施形態の電子銃4bは、絶縁支持部材41a~41d上への管径方向に移動する散乱金属粒子の堆積が抑制される。」(【0048】)及び「一方、金属イオンの残部は、陰極304に捕獲される前に、図3(e)に示す様に、散乱電子、電子ビームと再結合し、電子ビーム、散乱電子の運動エネルギーの一部を受け取り、中性の散乱金属粒子となる。」(【0067】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
5 訂正事項7について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項7に係る訂正は、本件訂正前の請求項2に特定されていた「導電性の遮蔽部」について、「前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する」ことを限定するものであるから、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項7に係る訂正は、本件明細書等の「本実施形態に係るX線発生管1によれば、電子通過路7からみて絶縁支持部材41が直視されないように遮る導電部6(管状部43b、43c、44b)を電子銃4bが有することで、絶縁支持部材41の絶縁性が担保される。」(【0052】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
6 訂正事項8、15、16について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項8、15、16に係る訂正は、本件訂正前の請求項3、9、10を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項8、15、16に係る訂正は、本件訂正前の請求項3、9、10を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項8、15、16に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項8、15、16に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
7 訂正事項9、11、13、14、17について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項9、11、13、14、17に係る訂正は、訂正事項8、15、16に係る訂正により本件訂正前の請求項3、9、10が削除されたことに伴い、これらの請求項の記載を引用しないように訂正して引用する請求項数を削減するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項9、11、13、14、17に係る訂正は、引用する請求項数を削減するものであるから、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項9、11、13、14、17に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項9、11、13、14、17に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
8 訂正事項10について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項10に係る訂正は、本件訂正前の請求項6の「前記導電部」が前記されていないことに起因する明瞭でない記載を、「前記導電性の遮蔽部」と訂正することにより、明瞭にするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項10に係る訂正は、本件明細書等の「導電性の遮蔽部」(【請求項1】、【請求項2】)及び「導電部6(管状部43b、43c、44b)は、電子通過路7から飛翔する金属粒子が、絶縁支持部材41に堆積することを抑制し、絶縁支持部材41の絶縁性を維持する役割を担う。」(【0050】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項10に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項10に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
9 訂正事項12について
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項12に係る訂正は、本件訂正前の請求項7の「記絶縁支持部材」との誤記を、「前記絶縁支持部材」と正しい記載に訂正するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
訂正事項12に係る訂正は、誤記を正しい記載に訂正するものであるから、新規事項を追加するものではない。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項12に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 小括
したがって、訂正事項12に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる事項を目的とし、同法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。
10 本件訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正後の請求項1~13についての訂正事項1~17は、特許法120条の5第2項ただし書1号、2号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合している。また、当該訂正事項1、3~9、11~17に係る本件訂正後の請求項1~13は、特許異議の申立てがされている請求項であるから、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第4 先の取消理由の概要
本件特許について、当審において令和7年3月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次に示す取消理由2を含むものである。
取消理由2 進歩性欠如
本件特許の請求項1~8、11~13に係る発明は、本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8、11~13に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第5 取消理由2についての判断
1 判断の概要
当合議体は、以下に示す理由により、請求項1、2、4~8、11~13に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである、と判断する。
2 本件発明の認定
前記第3のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13(前記第2の3参照)に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
3 各甲号証並びに各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明等の認定
(1) 各甲号証
甲第1号証:特開2000-30641号公報
甲第2号証:特開2015-135722号公報
甲第3号証:実願昭46-30873号(実開昭47-31054号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平10-255679号公報
甲第5号証:特開2006-286264号公報
以下、「第」及び「号証」を略して「甲1」などという。
(2) 甲1の記載事項及び甲1発明の認定
ア 甲1の記載事項
本願の出願前に発行された甲1には、次の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、他の文献についても同様である。
(ア) 第1実施形態(【0020】~【0047】)
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るX線管の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】図1は、第1実施形態に係るX線管の要部を示す断面図である。図1に示すように、X線管1は、マイクロフォーカスX線管であり、電子80を発生・放出する電子銃部2と、この電子銃部2からの電子80を受けてX線81を発生させるX線発生部3と、を備えている。これらの電子銃部2及びX線発生部3は、各構成部品を収容する筐体としての筒状の容器21,31より各々の外郭が構成される。これらの容器21,31は導電体より成り、互いに直交するように連結されている。容器21内と容器31内とは、容器21,31の境界部に形成された集束電極25により仕切られると共に、この集束電極25に形成された開口25aを通して連通され、容器21内には電子銃50が、容器31内には陽極ターゲット32が、各々配置されている。また、容器21,31は密封されて、その内部は真空状態にされている。
【0022】容器21内に配置された電子銃50は概略、発熱源としてのヒータ76と、このヒータ76により加熱されて電子80を発生・放出する熱電子源としてのカソード73と、このカソード73から放出された電子80を加速・集束させる第1、第2グリッド電極71,72と、この第2グリッド電極72と集束電極25との間に介在して当該第2グリッド電極72と集束電極25との間隔を所定の間隔に設定するスペーサ8と、上記第1、第2グリッド電極71,72、ヒータ76、カソード73に所定の電圧を容器外部より供給するための複数のピン5と、これらのピン5が貫通固定されると共に容器の蓋部として機能するステム4と、を備える。
【0023】上記ステム4、ヒータ76、カソード73、第1、第2グリッド電極71,72及びスペーサ8は、集束電極25側に向かってこの順に並設され、これら構成部品の各軸心が一致すると共に集束電極25の開口25aの軸心、筒状を成す容器21の軸心と同軸に位置するように配置されている。
【0024】さらに詳細に説明すれば、上記カソード73は、絶縁体より成る筒体74の先端に設けられ、この筒体74内に、当該カソード73を加熱する上記ヒータ76が設けられている。上記第1グリッド電極71は、カソード73より集束電極25側に配置され、この第1グリッド電極71より集束電極25側に、上記第2グリッド電極72が配置される。この第2グリッド電極72は、第1グリッド電極71の集束電極25側に、複数のセラミック棒(絶縁体)9を介して支持され、上記カソード73及びヒータ76を有する筒体74は、第1グリッド電極71の集束電極25側とは反対側に、絶縁体75を介して支持されている。
【0025】第1、第2グリッド電極71,72は、各々円板状を成すと共に、各々の上記カソード73に対向する位置に、カソード73からの電子80が通過する開口71a,72aを備える。第2グリッド電極72は、カソード73からの電子80を容器31内のターゲット32側に引っ張る電極である。また、第1グリッド電極71は、第2グリッド電極72によりターゲット32側に引っ張られる電子80をカソード73側に押し戻す電極であり、この第1グリッド電極71に供給する電圧を調整することで、ターゲット32側に向かう電子80が増減される。また、第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72aにより、図2に示すように、カソード73からの電子80をターゲット32に集束させる微小電子レンズ群が構成されている。
【0026】図1に戻って、第2グリッド電極72と集束電極25との間には、本実施形態の特徴を成すスペーサ8が介在している。このスペーサ8は、カソード73からターゲット32に向かう電子80が通過可能に筒状にされると共に軸線方向に所定長を有し、一方側の端部8bが第2グリッド電極72の端面に固定され、他方側の端部8cが集束電極25に当接される。この所定長を有するスペーサ8が第2グリッド電極72と集束電極25との間に介在することで、当該第2グリッド電極72と集束電極25との間隔が所定の間隔に設定されている。ここで言う所定の間隔とは、所望の焦点径を得るのに必要な第2グリッド電極72と集束電極25との間隔である。
【0027】このスペーサ8は、例えばステンレス等の導電体より成り、このスペーサ8を固定する上記第2グリッド電極72は、例えば耐熱性の良いMo(モリブデン)より成る。このように、本実施形態では、通常の溶接をし難いMoを第2グリッド電極72として用いているため、Ni(ニッケル)リボン7を複数個用いて抵抗溶接により第2グリッド電極72とスペーサ8とが連結されている。このNiリボン7による連結は、第2グリッド電極72の端面とスペーサ8の一方側の端部8b内周面との間でなされている。
…(中略)…
【0032】上記第1グリッド電極71に対しては、前述したピン5を介して所定の負の電圧が容器外部より供給される。また、ヒータ76、カソード73に対しては、他のピン、リード線を介して所定の電圧が容器外部より供給される。また、第2グリッド電極72に対しては、さらに他のピン、リード線72fを介してグランド電位が容器外部より供給される。この第2グリッド電極72に供給されるグランド電位は、これに電気的に接続されたスペーサ8、集束電極25、容器31,21にも供給される。
…(中略)…
【0034】この集束電極25の開口25aを介して容器21内に連通する容器31内には、図1に示すように、上記ターゲット32が設置されている。このターゲット32は、電子銃50からの電子80を受けてX線81を発生させるものであり、金属製の棒状体を成し、その軸方向を電子80が進入してくる方向に対して交差する向きに配置されている。このターゲット32の先端面32aは、電子銃50からの電子80を受ける面であり、その電子80が進入してくる前方の位置に配置され、入射される電子80と出射されるX線81が直交するように傾斜面にされる。また、ターゲット32には、正の高電圧が印加されている。
…(中略)…
【0046】また、スペーサ8を非導電体とすると、X線管1の動作時に、当該スペーサ8が帯電して、カソード73からの電子80が正常にターゲット32の先端面32aに集束されない虞があるが、本実施形態では、スペーサ8を導電体として、当該スペーサ8に第2グリッド電極72を介してグランド電位が供給されるため、スペーサ8の異常帯電が防止され、カソード73からの電子80を正常にターゲット32の先端面32aに集束できる。
…(後略)」
「【図1】
[図:0001434102000001.jpg]
【図2】
[図:0001434102000002.jpg]
」
(イ) 他の実施形態(【0050】~【0064】)
「【0060】以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であるというのはいうまでもなく、例えば、第4実施形態(図6参照)、第5実施形態(図7参照)においては、リボン10により、スペーサ8の一方側の端部8b外周面と第2グリッド電極72の外周面とを接合するようにしているが、第1実施形態(図1参照)、第2実施形態(図4参照)と同様に、スペーサ8の一方側の端部8b内周面側で接合を行うようにしても良い。
・・・(中略)・・・
【0063】また、上記実施形態においては、X線管として反射型のマイクロフォーカスX線管を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば透過型のマイクロフォーカスX線管にも適用できる。
【0064】さらにまた、焦点径もマイクロフォーカスに限らず、どのような焦点径を持つX線管に対しても同様に適用できる。」
イ 甲1発明の認定
前記アで摘記した記載事項から、甲1には、図1~図3に示される第1実施形態のX線管を透過型のマイクロフォーカスX線管に適用したもの(【0063】)について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる(甲1発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
<甲1発明>
「透過型のマイクロフォーカスX線管であって、(【0063】)
電子80を発生・放出する電子銃部2と、この電子銃部2からの電子80を受けてX線81を発生させるX線発生部3と、を備えており、これらの電子銃部2及びX線発生部3は、各構成部品を収容する筐体としての容器より各々の外郭が構成され、容器内には電子銃50及び陽極ターゲット32が各々配置されており、(【0021】)
容器内に配置された電子銃50は概略、発熱源としてのヒータ76と、このヒータ76により加熱されて電子80を発生・放出する熱電子源としてのカソード73と、このカソード73から放出された電子80を加速・集束させる第1、第2グリッド電極71,72と、この第2グリッド電極72と集束電極25との間に介在して当該第2グリッド電極72と集束電極25との間隔を所定の間隔に設定するスペーサ8と、上記第1、第2グリッド電極71,72、ヒータ76、カソード73に所定の電圧を容器外部より供給するための複数のピン5と、これらのピン5が貫通固定されると共に容器の蓋部として機能するステム4と、を備え、(【0022】)
上記第1グリッド電極71は、カソード73より集束電極25側に配置され、この第1グリッド電極71より集束電極25側に、上記第2グリッド電極72が配置され、この第2グリッド電極72は、第1グリッド電極71の集束電極25側に、複数のセラミック棒(絶縁体)9を介して支持され、(【0024】)
第1、第2グリッド電極71,72は、各々円板状を成すと共に、各々の上記カソード73に対向する位置に、カソード73からの電子80が通過する開口71a,72aを備え、第2グリッド電極72は、カソード73からの電子80を容器31内のターゲット32側に引っ張る電極であり、第1グリッド電極71は、第2グリッド電極72によりターゲット32側に引っ張られる電子80をカソード73側に押し戻す電極であり、この第1グリッド電極71に供給する電圧を調整することで、ターゲット32側に向かう電子80が増減され、また、第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72aにより、カソード73からの電子80をターゲット32に集束させる微小電子レンズ群が構成されており、(【0025】)
第2グリッド電極72と集束電極25との間には、スペーサ8が介在しており、(【0026】)
このスペーサ8は、例えばステンレス等の導電体より成り、このスペーサ8を固定する上記第2グリッド電極72は、例えば耐熱性の良いMo(モリブデン)より成り、(【0027】)
ターゲット32は、電子銃50からの電子80を受けてX線81を発生させるものである、(【0034】)
スペーサ8を非導電体とすると、X線管1の動作時に、当該スペーサ8が帯電して、カソード73からの電子80が正常にターゲット32の先端面32aに集束されない虞があるが、スペーサ8を導電体として、当該スペーサ8に第2グリッド電極72を介してグランド電位が供給されるため、スペーサ8の異常帯電が防止され、カソード73からの電子80を正常にターゲット32の先端面32aに集束できる、(【0046】)
マイクロフォーカスX線管」
(3) 甲3の記載事項及び甲3技術事項の認定
ア 甲3の記載事項
本願の出願前に発行された甲3には、次の事項が記載されている。
「本考案は多段加速電子銃の改良に関するものである。
従来一般に広く使用されている多段加速電子銃としては第1図に示す様な構造を有している。同図において1a及び1b(1bは図示せず)は先端にフィラメント2を保持したフィラメント取付台、3は前記フィラメント2から放出される電子の放出量を制御するためのウエーネルト電極、4,5,6,7及び8は放出された電子線を加速するための加速電極で、夫々の加速電極には図示はしないが高電圧分割用抵抗等を介して所要の加速電圧が印加されている。9a乃至9fは前記フィラメント取付台1、ウエーネルト電極3及び各加速電極間を夫々電気的に絶縁し、且つ機械的に固定するための円筒状の絶縁体で、該夫々の絶縁円筒の直径は全て同一に形成されている。10は前記絶縁円筒を収納するためのタンクで、内部には例えばフレオンガス等の絶縁ガス(図示せず)が充満してある。11は該タンクの下部に設置した電子顕微鏡の鏡体で、内部に集束レンズ12、試料室及び拡大レンズ系(図示せず)を順次設置してあり、又該鏡体11は連通管13を介して前記加速管に連通している。而し乍ら斯様な多段加速電子銃においては絶縁体内壁上での放電或はチャーヂ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために電子線軌道上から前記絶縁体9が直視(矢印aで示す状態)出来ない様にする必要がある。その為従来においては、同図から明らかな様に前記ウエーネルト電極3及び各加速電極4乃至8の光軸側は曲折させて光軸と平行に形成したり或は突出部14a,14b,14c,14d及び14eを設ける事により電子線軌道上から絶縁体9が直視出来ない様に構成している。而し乍らこのとき各電極間の放電防止の問題から各電極に設けた突出部14は対向する電極に接近させることが出来ないので、最終的には絶縁体の内壁を光軸から遠ざけなければならない。従って、この絶縁体の直径が大きくなるので装置(タンク)全体が大型化する欠点を有している。」(明細書1頁17行~3頁15行)
「第1図
[図:0001434102000003.jpg]
」
イ 甲3技術事項の認定
前記アで摘記した記載事項から、甲3には、第1図に示される多段加速電子銃に関して、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲3技術事項>
「多段加速電子銃において、(明細書1ページ17~18行)
多段加速電子銃は、先端にフィラメント2を保持したフィラメント取付台1、フィラメント2から放出される電子の放出量を制御するためのウエーネルト電極3、電子線を加速するための加速電極4~8、ウエーネルト電極3及び各加速電極間をそれぞれ電気的に絶縁し、かつ機械的に固定するための円筒状の絶縁体9b~9fを有し、(明細書1ページ19行~2ページ12行)
絶縁体内壁上での放電あるいはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために、ウエーネルト電極3及び各加速電極4~8の光軸側は曲折させて光軸と平行に形成したり、あるいは、突出部14a~14eを設けることにより、電子線軌道上から前記絶縁体9が直視できないようにすること(明細書2ページ19行~3ページ9行)」
(4) 甲2の記載事項及び周知技術1、2の認定
ア 甲2の記載事項
本願の出願前に発行された甲2には、次の事項が記載されている。
「【0014】
図1(a)は、本発明の放射線発生管の一実施形態の構成を説明する図である。図中、1は放射線発生管、2は陽極、3は絶縁管、4は陰極、5は導電性容器、6は配線引き出し用絶縁部材、7は誘電体、8は電子銃、9はターゲットである。
【0015】
本発明の放射線発生管1は、基本的に、管状の絶縁管3の一端に陽極2を、他端に陰極4を備えている。また、本例の電子銃8は、電子放出源11を備え、該電子放出源11には配線16によって電圧が供給される。また、本例の電子銃8は電子放出源11から放出される電子線15を引き出すための引き出し電極12と、電子線15を集束させるレンズ電極13を備えている。引き出し電極12とレンズ電極13はそれぞれ、配線17,18によって電位を制御される。配線16,17,18は陰極4の厚さ方向に貫通して配置された絶縁部材6を貫通して放射線発生管1の外に引き出されている。
【0016】
電子銃8から放出された電子線15は、不図示の高圧電源より陰極4及び陽極2との間に印加された電圧によって加速され、陽極2に取り付けられたターゲット9に衝突する。ターゲット9は放射線透過材料からなる支持基板9aの内側に電子線の照射によって放射線を放出する材料からなるターゲット層9bを備えており、電子線15は該ターゲット層9bに入射して放射線が放出される。本例では、ターゲット9は遮蔽部材10に取り付けられている。
【0017】
本発明に用いられる陽極2、陰極4の材料としては、コバール、鉄鋼、合金鋼、SUS材、又はAu、Ag、Cu、Ti、Mn、Mo、Ni等の金属、それらの合金等が挙げられる。絶縁管3の材料としては、Al2O3(アルミナ)、Si3N4、SiC、AlN、ZrO3等の所謂セラミック材料が挙げられるが、絶縁性を有する材料であれば適用される。
・・・(中略)・・・
【0042】
システム制御装置42は、放射線発生装置30と放射線検出装置41とを連携制御する。駆動回路31は、システム制御装置42の制御の下に、放射線発生管1に各種の制御信号を出力する。この制御信号により、放射線発生装置30から放出された放射線36は、被検体44を透過して検出器46で検出される。検出器46は、検出した放射線を画像信号に変換して信号処理部45に出力する。信号処理部45は、システム制御装置42による制御の下に、画像信号に所定の信号処理を施し、処理された画像信号をシステム制御装置42に出力する。システム制御装置42は、処理された画像信号に基づいて、表示装置43に画像を表示させるための表示信号を表示装置43に出力する。表示装置43は、表示信号に基づく画像を、被検体44の撮影画像としてディスプレイに表示する。放射線の代表例はX線であり、本発明の放射線発生管1、放射線発生装置30及び放射線撮影システムは、X線発生管、X線発生装置及びX線撮影システムとして利用することができる。X線撮影システムは、工業製品の非破壊検査や人体や動物の病理診断に用いることができる。」
「【図1】(a)
[図:0001434102000004.jpg]
」
イ 周知技術1、2の認定
前記アの記載事項から見て、以下の技術事項は周知技術であると認められる。
<周知技術1>
「X線発生管において、その材料が金属である陽極に取り付けられたターゲットを備えること(【0015】~【0017】・【0042】)」
<周知技術2>
「X線発生管において、管状の絶縁管の一端に陽極を、他端に陰極を備えること(【0015】・【0042】)」
4 本件発明1について
(1) 対比
ア 対比分析
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 本件発明1の「X線発生管」との特定事項について
甲1発明の「マイクロフォーカスX線管」は、本件発明1の「X線発生管」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「X線発生管」である点で一致する。
(イ) 本件発明1の「電子の照射によりX線を発生するターゲットと前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材とを含む陽極と、」「を有するX線発生管であって、」との特定事項について
a 甲1発明の「陽極ターゲット32」は、本件発明1の「ターゲット」に相当するとともに、「ターゲット」を含む「陽極」であるともいえる。また、甲1発明は、「ターゲット32は、電子銃50からの電子80を受けてX線81を発生させるものである」ことも勘案すれば、本件発明1と甲1発明は、「電子の照射によりX線を発生するターゲットを含む陽極」を有するX線発生管である点で共通する。
b 一方で、陽極について、本件発明1は、「前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材」を含むのに対して、甲1発明は、当該陽極部材を含むかどうか不明である点で相違する。
(ウ) 本件発明1の「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持するために管周方向に離散的に設けられた複数の絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と接続される陰極部材と、を含む陰極と、を有するX線発生管であって、」との特定事項について
a 甲1発明の「カソード73」は「ヒータ76により加熱されて電子80を発生・放出する」ものであるから、本件発明1の「電子を放出する電子放出部」に相当する。
b 甲1発明の「第1電極グリッド71」は、「この第1グリッド電極71に供給する電圧を調整することで、ターゲット32側に向かう電子80が増減され[る]」ものであるから、本件発明1の「引出電極」に相当し、本件発明1でいう「前記電子放出部からの電子の通過量を制御する」ものといえる。
c(a) 甲1発明の「第2グリッド電極72」は、「第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72aにより、カソード73からの電子80をターゲット32に集束させる微小電子レンズ群が構成されて[いる]」ものであるから、本件発明1の「集束電極」に相当し、本件発明1でいう「前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定する」ものであるといえる。
(b) 甲1発明は、「上記第1、第2グリッド電極71,72、ヒータ76、カソード73に所定の電圧を容器外部より供給するための複数のピン5」を備えることから、第2グリッド電極72には、所定の電圧が供給されることが理解でき、前記(a)も考慮すれば、当該第2グリッド電極72に供給される「所定の電圧」は、本件発明1の「集束電位」に相当する。したがって、甲1発明の「第2グリッド電極72」は、本件発明1でいう「電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され[る]」ものであるといえる。
(c) 甲1発明の「第2グリッド電極72」は、「第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72aにより、カソード73からの電子80をターゲット32に集束させる微小電子レンズ群が構成されて[いる]」ことからみて、甲1発明における第1グリッドと第2グリッド間の電場は、本件発明1でいう「集束電場」であるといえる。
また、本件特許の明細書には、集束電極が引出電極を通過した電子に作用させるのが「静電場」であることの明記はないところ、同【0034】には、引き出しグリッド電極は電子の通過量を経時的に制御することを意図して設けられたものであり、複数の電位が切り替えられて印加されること、集束グリッド電極には、電子放出部に対して所定の電位差を有した集束グリッド電位が印加されることが記載されている。そして、引き出しグリッド電極の電位が切り替えられれば、引き出しグリッド電極と集束グリッド電極間の電場は変化すると考えられるから、本件発明1の「静電場」とは、電子の通過量に応じて電位が切り替えられるときにも「静電場」であることまでは要せず、所定の電子の通過量においては「静電場」であれば足りると解するのが相当である。
これを甲1発明についてみると、甲1発明は、「第1グリッド電極71に供給する電圧を調整することで、ターゲット32側に向かう電子80が増減され[る]」ものであり、第1グリッドと第2グリッド間の電場は第1グリッド電極に供給される電圧に応じて変化するものと認められるが、ある電子の量においては第1グリッドと第2グリッド間の電場は静電場であるといえるから、甲1発明における第1グリッドと第2グリッド間の電場は、本件発明1でいう「静電場」であるといえる。
そうすると、甲1発明の「第2グリッド電極72」は、本件発明1でいう「前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ[る]」ものであるといえる。
(d) 甲1発明の「第2グリッド電極72」は、「第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72aにより、カソード73からの電子80をターゲット32に集束させる微小電子レンズ群が構成されて[いる]」ことから、本件発明1でいう「前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する」ものであるといえる。
d(a) 甲1発明は、「この第2グリッド電極72は、第1グリッド電極71の集束電極25側に、複数のセラミック棒(絶縁体)9を介して支持され[る]」ものであるから、甲1発明の「複数のセラミック棒(絶縁体)9」は、本件発明1の「複数の絶縁支持部材」に相当し、本件発明1でいう「前記引出電極と前記集束電極を電気的に絶縁し支持するために」「設けられた」ものといえる。
(b) 甲1発明においては、「複数のセラミック棒(絶縁体)9」がどのように配置されるかについての明示はないものの、甲1発明が「第1、第2グリッド電極71,72は、各々円板状を成すと共に、各々の上記カソード73に対向する位置に、カソード73からの電子80が通過する開口71a,72aを備え[る]」ものであることを考慮すれば、このような第1、第2グリッド電極71、72を支持する「複数のセラミック棒(絶縁体)9」は、本件発明1でいう「管周方向に離散的に」設けられたものであることは明らかである。
e 甲1発明の「電子銃50」のうち、前記a~dの構成を含む「ステム4」を除く部分は、本件発明1の「電子銃」に相当する。
f 甲1発明の「ステム4」は、「電子銃50」が備えるものであり、電子銃の他の部分と接続されるものであるから、前記eも勘案すると、本件発明1の「陰極部材」に相当し、本件発明1でいう「前記電子銃の少なくとも一部と接続される」ものといえる。
g 前記e及びfから、甲1発明の「電子銃50」、つまり「ステム4」を除く部分(前記e)、及び「ステム4」(前記f)からなる構造は、本件発明1の「陰極」に相当する。
h 前記a~gをまとめると、本件発明1と甲1発明は、「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持するために管周方向に離散的に設けられた複数の絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と接続される陰極部材と、を含む陰極と、」を有するX線発生管である点で一致する。
(エ) 本件発明1の「前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当し、」との特定事項について
a 甲1発明の「第1、第2グリッド電極71,72」が備える「カソード73からの電子80が通過する開口71a,72a」は、本件発明1の「前記引出電極と前記集束電極」が有する「電子通過孔」に相当する。
b 甲1発明は、「第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72aにより、カソード73からの電子80をターゲット32に集束させる微小電子レンズ群が構成されて[いる]」ものであるから、甲1発明の「第1、第2グリッド電極71,72の開口71a,72a」は、本件発明1でいう「前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当[する]」、「前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する」ものであるといえる。
c 前記a及びbをまとめると、本件発明1と甲1発明は、「前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当[する]」点で一致する。
(オ) 本件発明1の「前記電子銃は、前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記複数の絶縁支持部材のいずれもが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮り前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電性の遮蔽部を有している」との特定事項について
電子銃について、本件発明1は、「前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記複数の絶縁支持部材のいずれもが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮り前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電性の遮蔽部を有している」のに対して、甲1発明は、当該導電性の遮蔽部を有していない点で相違する。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点1で一致し、以下の相違点1及び2について相違する。
<一致点1>
「電子の照射によりX線を発生するターゲットを含む陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記ターゲット上に形成される焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ前記ターゲットに向けて照射される電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持するために管周方向に離散的に設けられた複数の絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と接続される陰極部材と、を含む陰極と、を有するX線発生管であって、
前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当する、
X線発生管」である点。
<相違点1>
陽極について、本件発明1は、「前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材」を含むのに対して、甲1発明は、当該陽極部材を含むかどうか不明である点。
<相違点2>
電子銃について、本件発明1は、「前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記複数の絶縁支持部材のいずれもが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮り前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する導電性の遮蔽部を有している」のに対して、甲1発明は、当該導電性の遮蔽部を有していない点。
(2) 相違点についての判断
前記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア) 当業者は、透過型のマイクロフォーカスX線管である甲1発明において、陽極ターゲット32の取付構造を具体化する必要があるところ、前記3(4)イで周知技術1として認定したとおり、「X線発生管において、その材料が金属である陽極に取り付けられたターゲットを備えること」は周知技術であるから、甲1発明において周知技術1を採用して、陽極ターゲット32をその材料が金属である陽極に取り付けるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(イ) このとき、その材料が金属である陽極とターゲットが電気的に接続されることは、X線発生管のターゲットには陽極電位が印加されるという技術常識から見て明らかであるから、当該陽極が、相違点1に係る本件発明1の「前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材」に相当することとなる。
(ウ) 以上のとおり、甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明に周知技術1を適用することにより、当業者が適宜なし得たことである。
イ 相違点2について
(ア) 甲1発明と甲3技術事項はいずれも、電極間を絶縁する絶縁体(甲1発明の「複数のセラミック棒(絶縁体)9」及び甲3技術事項の「絶縁体9b~9f」)を備えた電子銃に関するものである。そして、甲3技術事項は、「絶縁体内壁上での放電あるいはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止する」ことを課題とするものであるところ、甲1発明においても、「スペーサ8を非導電体とすると、X線管1の動作時に、当該スペーサ8が帯電して、カソード73からの電子80が正常にターゲット32の先端面32aに集束されない虞がある」ことが課題として挙げられている。ここで、甲1発明で帯電によりカソード73からの電子80が正常にターゲット32の先端面32aに集束されない虞があるとされているのは、第2グリッド電極72と集束電極25との間のスペーサ8が非導電体である場合についてであるが、当業者であれば、第1グリッド電極71と第2グリッド電極の間の複数のセラミック棒(絶縁体)9についても、電子線の軌道の近傍に位置する絶縁体である以上、帯電のおそれがあることを把握することができるし、複数のセラミック棒(絶縁体)9が帯電すれば、電子線の軌道近傍の電界分布が意図した電界分布とは異なるものになるおそれがあり、この結果、電子線の軌道もまた意図したものとは異なるものになるおそれがあることも、当業者には明らかなことである。
したがって、甲1発明において、「複数のセラミック棒(絶縁体)9」上での放電あるいはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために、甲3技術事項を適用して、これらの複数のセラミック棒(絶縁体)9によって絶縁される電極である「第1、第2グリッド電極71,72」の光軸側を曲折させて光軸と平行に形成したり、あるいは、突出部を設けたりすることにより、電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) このとき、電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにする「第1、第2グリッド電極71,72」に設けた突出部等の部分が、本件発明1の「前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記複数の絶縁支持部材のいずれもが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮[る]」「導電性の遮蔽部」に相当することとなる。
(ウ) さらに、本件発明1の「導電性の遮蔽部」が「前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する」点について検討する。
a まず、甲1発明は本件発明1と同様にX線発生管の発明であることを勘案すれば、甲1発明においても本件発明1と同様に、「前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子」が生じることは、自明の物理現象であると認められる。
b そして、前記aの自明な物理現象を踏まえれば、甲1発明において前記(イ)のように電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにすることにより、「第1、第2グリッド電極71,72」に設けた突出部等の部分が、「前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する」こともまた、甲1発明に甲3技術事項を適用した結果必然的に生じる物理現象にすぎない。
c したがって、前記(イ)で説示したように当業者が容易に想到し得た構成は、相違点2に係る本件発明1の「導電性の遮蔽部」が「前記電子通過路上で生成される中性の散乱金属粒子の前記絶縁支持部材上への堆積を抑制する」との構成を満たすこととなる。
(エ) 以上のとおり、甲1発明において相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明に甲3技術事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
ウ 総合検討
前記ア及びイにおいて検討したとおり、甲1発明において、相違点1、2に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本件発明1が奏する効果としては、本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 特許権者の主張について
ア 特許権者は、甲1発明の電子銃と甲3技術事項の多段加速電子銃とは、電子銃の構成、動作が異なることをもって、甲1発明の電子銃が備える複数のセラミック棒(絶縁体)9において、放電あるいはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するという課題を当業者が認識することはない旨を主張している。
しかしながら、複数のセラミック棒(絶縁体)9が電子線の軌道の近傍に位置する絶縁体である以上、当業者は帯電のおそれがあることを把握することができるし、複数のセラミック棒(絶縁体)9が帯電すれば、電子線の軌道近傍の電界分布が意図した電界分布とは異なるものになるおそれがあり、この結果、電子線の軌道もまた意図したものとは異なるものになるおそれがあることも、当業者には明らかなことであることは、前記(2)イ(ア)で説示したとおりであり、特許権者の主張は採用できない。
イ 特許権者はまた、甲1発明ではスペーサ8は帯電対策を考慮したスペーサ構造であるのに対して、セラミック棒(絶縁体)9はスペーサ8のように帯電対策を考慮したスペーサ構造ではないから、甲1発明におけるセラミック棒(絶縁体)9は帯電対策を講じる必要性を認識していないスペーサ構造である旨を主張している。
しかしながら、甲1発明においてスペーサ8を導電体とできるのは、第2グリッド電極72と集束電極25が電気的に接続されている(【0032】)、すなわち同電位であるからであるのに対して、第1グリッド電極71と第2グリッド電極72の電位は異なる(【0032】)から、セラミック棒(絶縁体)9を導電体とすることはできない。そして、甲1発明において、スペーサ8は帯電対策が必要であるのに対して、セラミック棒(絶縁体)9は帯電対策の必要がないと解すべき他の事情も見当たらない。
以上を総合すれば、セラミック棒(絶縁体)9をスペーサと同様に耐電対策のために導電体としないのは、耐電対策を講じる必要性がないからではなく、導電体とはできないからであると解するのが相当であるから、特許権者の主張は採用できない。
(4) 小括
以上検討のとおり、本件発明1は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件発明2について
(1) 対比
ア 対比分析
本件発明2と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「複数のセラミック棒(絶縁体)9」は、本件発明2の「絶縁支持部材」に相当する。
(イ) 本件発明2は、「管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管」を有するのに対して、甲1発明は、当該絶縁管を有していない点で相違する。
(ウ) 電子銃について、本件発明2は、「前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記絶縁支持部材が有さないように前記絶縁支持部材を遮り前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する導電性の遮蔽部を有する」のに対して、甲1発明は、当該導電性の遮蔽部を有していない点で相違する。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析及び前記4(1)アで示した本件発明1と甲1発明の対比分析を踏まえると、本件発明2と甲1発明は、以下の一致点2で一致し、以下の相違点3~5について相違する。
<一致点2>
「電子の照射によりX線を発生するターゲットを含む陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部からの電子の通過量を制御する引出電極と、前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定するように電圧源に電気的に接続され所定の集束電位が給電され、前記引出電極を通過した電子に集束電場として静電場を作用させ電子ビームを形成する集束電極と、前記引出電極と前記集束電極とを電気的に絶縁し支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、前記電子銃の少なくとも一部と電気的に接続される陰極部材と、を含む陰極と、を有するX線発生管であって、
前記引出電極と前記集束電極は、いずれも、前記電子放出部から前記ターゲットに向かう電子通過路を規定する電子通過孔を有し、前記電子通過路は前記電子放出部から放出された電子が前記集束電極を通過するまでの通過経路に該当する、
X線発生管」である点。
<相違点3>
陽極について、本件発明2は、「前記ターゲットと電気的に接続される陽極部材」を含むのに対して、甲1発明は、当該陽極部材を含むかどうか不明である点。
<相違点4>
本件発明2は、「管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管」を有するのに対して、甲1発明は、当該絶縁管を有していない点。
<相違点5>
電子銃について、本件発明2は、「前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記絶縁支持部材が有さないように前記絶縁支持部材を遮り前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する導電性の遮蔽部を有する」のに対して、甲1発明は、当該導電性の遮蔽部を有していない点。
(2) 相違点についての判断
前記相違点について検討する。
ア 相違点3について
相違点3は、前記4(1)イで示した相違点1と同内容であり、前記4(2)アで相違点1について検討したのと同様の理由により、甲1発明において相違点3に係る本件発明2の構成とすることは、甲1発明に周知技術1を適用することにより、当業者が適宜なし得たことである。
イ 相違点4について
(ア) 当業者は、透過型のマイクロフォーカスX線管である甲1発明において、陽極ターゲット32及びステム4を含む電子銃50を容器内に配置する具体的な構成としてX線管における各種周知の構成を採用できるところ、前記3(4)イで周知技術2として認定したとおり、「X線発生管において、管状の絶縁管の一端に陽極を、他端に陰極を備えること」は周知技術であるから、甲1発明において周知技術2を採用して、管状の絶縁管を設けた上で、その一端に陽極ターゲット32を含む陽極を、他端にステム4を含む電子銃50を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
(イ) このとき、管状の絶縁管が相違点4に係る本件発明2の「絶縁管」に相当する。管状の絶縁管の一端と他端は管軸方向の一端と他端を意味するから、当業者は、甲1発明において周知技術2を採用することにより、相違点4に係る本件発明2の「管軸方向の一端と他端において前記陽極部材と前記陰極部材とにそれぞれ接続される絶縁管」を有するとの構成に至ることとなる。
(ウ) 以上のとおり、甲1発明において相違点4に係る本件発明2の構成とすることは、甲1発明に周知技術2を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点5について
(ア) 前記4(2)イ(ア)及び(イ)で検討したのと同様に、甲1発明において、「複数のセラミック棒(絶縁体)9」上での放電あるいはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために、甲3技術事項を適用して、これらの複数のセラミック棒(絶縁体)9によって絶縁される電極である「第1、第2グリッド電極71,72」の光軸側を曲折させて光軸と平行に形成したり、あるいは、突出部を設けたりすることにより、電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、このとき、電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにする「第1、第2グリッド電極71,72」に設けた突出部等の部分が、本件発明2の「前記電子通過路から管径方向の外側に見て直視される部分を前記絶縁支持部材のが有さないように前記複数の絶縁支持部材を遮[る]」「導電性の遮蔽部」に相当することとなる。
(イ) さらに、本件発明2の「導電性の遮蔽部」が「前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する」点について検討すると、甲1発明に甲3技術事項を適用すれば、「第1、第2グリッド電極71,72」に設けた突出部等により、「複数のセラミック棒(絶縁体)9」上での放電あるいはチャージ等が防止されることとなり、このことは、本件発明2でいう「導電性の遮蔽部」が「前記絶縁支持部材の絶縁性を担保する」ことに他ならない。
(ウ) 以上のとおり、甲1発明において相違点5に係る本件発明2の構成とすることは、甲1発明に甲3技術事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
エ 総合検討
前記ア~ウにおいて検討したとおり、甲1発明において、相違点3~5に係る本件発明2の構成を備えるようにすることは、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点3~5を総合的に勘案しても、本件発明2が奏する効果としては、本件発明2の構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件発明2は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) 特許権者の主張について
特許権者は前記4(3)の本件発明1についてと同様の主張をしているが、これについては前記4(3)で説示したとおりである。
(4) 小括
以上検討のとおり、本件発明2は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 本件発明4~5について
「前記集束電極は、前記導電性の前記遮蔽部を含む」こと、及び「前記導電性の前記遮蔽部は、前記複数の絶縁支持部材が前記電子通過路から直視される部分を有さないように設けられる」ことは、甲1発明に甲3技術事項を適用した構成が自ずと備えることとなる。
したがって、本件発明4~5は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1並びに必要に応じて周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 本件発明6について
甲1発明における「開口」「72a」が設けられた部分が、本件発明6の「環状部」に相当する。
また、甲1発明に甲3技術事項を適用した構成において、電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにする「第2グリッド電極」「72」に設けた突出部等の部分が、本件発明6の「管状部」に相当する。
したがって、本件発明6は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1並びに必要に応じて周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 本件発明7~8について
甲1発明が本件発明8と同様にX線管の発明であることを勘案すれば、甲1発明においても本件発明8と同様に、「電子放出部に由来する金属粒子の内管径方向の外側に向かう成分」が生じることは、必然的な物理現象であると認められる。
そして、前記必然的な物理現象を踏まえれば、甲1発明に甲3技術事項を適用して、電子線軌道上から「複数のセラミック棒(絶縁体)9」が直視できないようにすることにより、本件発明8で追加的に特定された「前記電子放出部に由来する金属粒子のうち管径方向の外側に向かう成分が前記絶縁支持部材上に堆積することを低減する」こと、及び、本件発明7で追加的に特定された「前記絶縁支持部材の低抵抗化を抑制するように構成されている」こともまた、甲1発明に甲3技術的事項を適用した結果必然的に生じる物理現象にすぎない。
したがって、本件発明7~8は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1並びに必要に応じて周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
9 本件発明11について
前記5(2)イで相違点4について検討したとおりである。
したがって、本件発明11は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
10 本件発明12、13について
これらの発明で追加的に特定される事項は、いずれも文献を挙げるまでもない周知技術にすぎない。
したがって、本件発明12、13は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1並びに必要に応じて周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
11 取消理由2のまとめ
以上検討したとおり、本件発明1、2、4~8、11~13は、甲1発明、甲3技術事項及び周知技術1並びに必要に応じて周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2、4~8、11~13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1、2、4~8、11~13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1、2、4~8、11~13に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項3、9、10は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てのうち、当該請求項3、9、10に係る特許に対する申立ては、その対象が存在しないものとなった。したがって、当該申立てについては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700386