特許異議申立
2017-700342
スロットマシン
- 審判番号
- 2017-700342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-212615外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月07日
- 審決日
- 2017年11月07日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】佐伯 義文
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】平野 昌邦
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人 武和国際特許事務所
- 分類
- P1651.113-YAA(A63F) / P1651.121-YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6006396号発明「スロットマシン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6006396号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第6006396号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第6006396号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年8月9日に出願した特願2011-174426号の一部を平成27年10月29日に新たな特許出願としたものであって、平成28年9月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年4月7日付けで特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社より特許異議の申立てがなされたものであり、平成29年6月23日付け(発送:同年6月29日)で取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月28日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、これに対して、特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社より、同年10月13日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「前記事前決定手段の決定結果と前記導出操作手段の操作とに応じて表示結果を導出する導出制御手段と、」の後に
「遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利が付与された後、予め定められた潜伏期間に制御する潜伏期間制御手段と、」を加える。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「開始条件の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態に制御する有利状態制御手段と、」とあるのを
「前記潜伏期間制御手段により制御された前記潜伏期間が終了したときに成立する開始条件の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態に制御する有利状態制御手段と、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する特典付与手段と、」とあるのを、
「2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する第1特典付与手段と、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「を備える」とあるのを、
「を備え、」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項4で訂正された「を備え、」の後に
「前記第1特典付与手段は、前記潜伏期間に制御されているとき、または、前記有利状態への制御の開始を遅延させているときのいずれにおいても前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能であり、」を加える。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項5で訂正された「前記第1特典付与手段は、前記潜伏期間に制御されているとき、または、前記有利状態への制御の開始を遅延させているときのいずれにおいても前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能であり、」の後に
「前記有利状態制御手段は、前記有利状態に制御する権利が複数回付与されたときに、前記有利状態に複数回制御し、」を加える。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項6で訂正された「前記有利状態制御手段は、前記有利状態に制御する権利が複数回付与されたときに、前記有利状態に複数回制御し、」の後に
「前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段をさらに備え、」を加える。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項7で訂正された「前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段をさらに備え、」の後に
「前記第2特典付与手段は、
前記有利状態において前記特別表示結果が導出表示されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与し、
前記特殊制御により前記有利状態への制御の開始を遅延させている状態において前記特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与する、」を加える。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0008】に
「上記目的を達成するため、本発明の手段1にかかるスロットマシンは、
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部(可変表示装置2)を備え、
前記可変表示部を変動表示した後に表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン(スロットマシン1)において、
表示結果が導出される前に、導出が許容される表示結果を決定する事前決定手段(メイン制御部41:内部抽選処理)と、
遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段(ストップスイッチ8L、8C、8R)と、
前記事前決定手段の決定結果と前記導出操作手段の操作とに応じて表示結果を導出する導出制御手段(メイン制御部41:リール停止処理)と、
開始条件(潜伏期間の終了)の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態(AT)に制御する有利状態制御手段(メイン制御部41:ATへの制御)と、
2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利(AT権利)を付与する特典付与手段(メイン制御部41:ステップS106、S107(図14))と、
前記有利状態に制御する権利を有しており、かつ前記特定表示結果が連続して導出されている連続状態が継続しているときに、前記有利状態への制御の開始を遅延させる特殊制御(遅延制御)を行う特殊制御手段(メイン制御部41:遅延制御の実行(図16))と、
を備えることを特徴とする。」とあるのを、
「上記目的を達成するため、本発明の手段1にかかるスロットマシンは、
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部(可変表示装置2)を備え、
前記可変表示部を変動表示した後に表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン(スロットマシン1)において、
表示結果が導出される前に、導出が許容される表示結果を決定する事前決定手段(メイン制御部41:内部抽選処理)と、
遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段(ストップスイッチ8L、8C、8R)と、
前記事前決定手段の決定結果と前記導出操作手段の操作とに応じて表示結果を導出する導出制御手段(メイン制御部41:リール停止処理)と、
遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利が付与された後、予め定められた潜伏期間に制御する潜伏期間制御手段(メイン制御部41:潜伏期間の設定「図13))と、
前記潜伏期間制御手段により制御された前記潜伏期間が終了したときに成立する開始条件(潜伏期間の終了)の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態(AT)に制御する有利状態制御手段(メイン制御部41:ATへの制御)と、
2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利(AT権利)を付与する第1特典付与手段(メイン制御部41:ステップS106、S107(図14))と、
前記有利状態に制御する権利を有しており、かつ前記特定表示結果が連続して導出されている連続状態が継続しているときに、前記有利状態への制御の開始を遅延させる特殊制御(遅延制御)を行う特殊制御手段(メイン制御部41:遅延制御の実行(図16))と、
を備え、
前記第1特典付与手段は、前記潜伏期間に制御されているとき、または、前記有利状態への制御の開始を遅延させているときのいずれにおいても前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能であり、
前記有利状態制御手段は、前記有利状態に制御する権利が複数回付与されたときに、前記有利状態に複数回制御し、
前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果(ブドウ入賞)が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段(メイン制御部41:ステップS111、S112(図14))をさらに備え、
前記第2特典付与手段は、
前記有利状態において前記特別表示結果が導出表示されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与し、
前記特殊制御により前記有利状態への制御の開始を遅延させている状態において前記特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与する、
ことを特徴とする。」に訂正する。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、「遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利が付与された後、予め定められた潜伏期間に制御する潜伏期間制御手段」という発明特定事項を新たに加え、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0236】の「ATは、一般遊技状態中のATに制御されていないゲームでAT権利があると判定されると、ATに制御されるまでの潜伏期間が決定され、この潜伏期間を経過したときに制御される。」との記載、すなわち、潜伏期間の制御の開始前に予め潜伏期間が決定されるとともに、この予め決定された潜伏期間に制御され、潜伏期間が終了した時にATに制御される旨の記載、及び図13に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項1は、上記のとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、「遊技者にとって有利な有利状態に制御する」「開始条件」について「前記潜伏期間制御手段により制御された前記潜伏期間が終了したときに成立する」ものであることを特定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0236】の「ATは、一般遊技状態中のATに制御されていないゲームでAT権利があると判定されると、ATに制御されるまでの潜伏期間が決定され、この潜伏期間を経過したときに制御される。」との記載、すなわち、潜伏期間の制御の開始前に予め潜伏期間が決定されるとともに、この予め決定された潜伏期間に制御され、潜伏期間が終了した時にATに制御される旨の記載、及び図13に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項2は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(2)訂正事項3
ア 訂正の目的
下記の訂正事項7において「2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する特典付与手段」に加え、「前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段をさらに備え」ることを加える訂正をするため、それぞれの「特典付与手段」が異なる手段であることを明確化することを目的として、「2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する特典付与手段」を「2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する第1特典付与手段」と訂正するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記訂正事項3は、訂正前の「特典付与手段」を、他の手段である「第2特典付与手段」と識別するために「第1特典付与手段」とするものであって、実質的な変更をするものではない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項3は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4の訂正は、下記の訂正事項5ないし8において各構成を加える訂正を行うため、「を備える」の「る」に代えて、構成の区切りを示す読点とするものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記訂正事項4は、下記の訂正事項5ないし7の構成を加えるに当たり、構成の区切りを示す読点を加えるものである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項4は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、「前記第1特典付与手段は、前記潜伏期間に制御されているとき、または、前記有利状態への制御の開始を遅延させているときのいずれにおいても前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能」であるいう発明特定事項を新たに加え、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
願書に添付した図14のステップS101において「AT中か?」の判断がされ、「AT中」でない場合、及びステップS102において「継続カウンタ≠0?」の判断がされ、「継続カウンタ≠0」の場合には、ステップS103~S107において、押し順メロン当選の有無を判断して、AT権利を+1する処理、すなわち有利状態に制御する権利を新たに付与する処理を行うことが記載されている。
そして、ステップS101の「AT中か?」の判断は、願書に添付した明細書の段落【0252】における「当該ゲームの遊技状態をAT(潜伏期間を含まず、遅延制御が行われている期間を含む)としていたかどうかを判定する(ステップS101)。」ものであるから、上記「AT中」でない場合とは、潜伏期間に制御されているときを含むことは明らかである。また、ステップS102の「継続カウンタ≠0?」の場合とは、願書に添付した明細書の【0253】に「継続カウンタの値が0でなければ、当該ゲームはATの開始条件が成立していても遅延制御が行われて、AT対象役の報知が行われ得ないゲームであったので、ステップS103の処理に進む。」と記載されているとおり、遅延制御が行われていることを意味するものである。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項5は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的
訂正事項6は、「前記有利状態制御手段は、前記有利状態に制御する権利が複数回付与されたときに、前記有利状態に複数回制御」するものであるという発明特定事項を新たに加え、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
願書に添付した明細書の段落【0236】の「ATは、一般遊技状態中のATに制御されていないゲームでAT権利かあると判定されると、ATに制御されるまでの潜伏期間が決定され、この潜伏期間を経過したときに制御される。ATは、一定ゲーム数(例えば、50ゲーム)を消化することによって終了させられるが、ATの終了直後のゲームでもAT権利かあると判定されると、再び潜伏期間が決定され、この潜伏期間を経過すると新たなATに制御される。」との記載に基づいて導き出される構成である。
なお、上記オ(ウ)のとおり、「前記潜伏期間に制御されているとき」、「前記有利状態への制御の開始を遅延させているとき」は、既に「有利状態の権利を有している」ことを前提とし、さらに「前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能」であるから、前記有利状態に制御する権利が複数回付与可能なことは明らかである。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項6は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的
訂正事項7は、「前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段をさらに備え」るという発明特定事項を新たに加え、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
願書に添付した明細書の段落【0257】の「ブドウに入賞していれば、当該ゲームの遊技状態がAT(潜伏期間を含まず、遅延制御が行われている期間を含む)であるか否かに応じて定められた当選確率(ATの方が非ATよりも当選確率が高い)で、AT抽選を行い(ステップS110)、これに当選したかどうかを判定する(ステップS111)。AT抽選にハズレとなった場合には、そのままAT権利の付与に関する処理を終了する。AT抽選に当選した場合には、遊技者のAT権利を1増加させて(ステップS112)、AT権利の付与に関する処理を終了する。」、及び図14のステップS110、ステップS111、ステップS112の記載があり、上記「ブドウに入賞」し、「AT抽選に当選した場合には、遊技者のAT権利を1増加させ」ることは、2以上の所定回数連続して導出される「特定表示結果」とは異なる「特別表示結果」が導出されたときに、「有利状態に制御する権利を付与可能」といえるから、上記構成は、同明細書及び図面の記載に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項7は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的
訂正事項8は、「前記第2特典付与手段」は、「前記有利状態において前記特別表示結果が導出表示されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与し」、「前記特殊制御により前記有利状態への制御の開始を遅延させている状態において前記特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与する」という発明特定事項を新たに加え、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
願書に添付した明細書の段落【0257】の「ブドウに入賞していれば当該ゲームの遊技状態がAT(潜伏期間を含まず、遅延制御が行われている期間を合む)であるか否かに応じて定められた当選確率(ATの方が非ATよりも当選確率が高い)で、AT抽選を行い(ステップS110)、これに当選したかどうかを判定する(ステップS111)。AT抽選にハズレとなった場合には、そのままAT権利の付与に関する処理を終了する。AT抽選に当選した場合には、遊技者のAT権利を1増加させて(ステップS112)、AT権利の付与に関する処理を終了する。」、及び図14のステップS110、ステップS111、ステップS112の記載かおり、有利状態であるATに制御されているときの方が非ATよりも当選確率が高いこと、及びゲームの遊技状態がATである期間には、遅延制御が行われている期間が含まれること、に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項8は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的
訂正事項9は、訂正事項1ないし8に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の記載を、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に対応する記載に訂正するものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記訂正事項9は、明細書の発明の詳細な説明の記載を、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に対応する記載に訂正するものであり、訂正事項1ないし8は、それぞれ上記(1)~(8)のイに記載したとおり、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであるから、訂正事項9も同様の理由により、願書に添付した明細書等の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項9は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合する。
3 むすび
したがって、本件訂正の訂正事項1、2、5~8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合し、訂正事項3、4、9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(当審において請求項をA~Mに分説した。)。
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後に表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
B 表示結果が導出される前に、導出が許容される表示結果を決定する事前決定手段と、
C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
D 前記事前決定手段の決定結果と前記導出操作手段の操作とに応じて表示結果を導出する導出制御手段と、
E 遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利が付与された後、予め定められた潜伏期間に制御する潜伏期間制御手段と、
F 前記潜伏期間制御手段により制御された前記潜伏期間が終了したときに成立する開始条件の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態に制御する有利状態制御手段と、
G 2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する第1特典付与手段と、
H 前記有利状態に制御する権利を有しており、かつ前記特定表示結果が連続して導出されている連続状態が継続しているときに、前記有利状態への制御の開始を遅延させる特殊制御を行う特殊制御手段と、
を備え、
I 前記第1特典付与手段は、前記潜伏期間に制御されているとき、または、前記有利状態への制御の開始を遅延させているときのいずれにおいても前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能であり、
J 前記有利状態制御手段は、前記有利状態に制御する権利が複数回付与されたときに、前記有利状態に複数回制御し、
K 前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段をさらに備え、
L 前記第2特典付与手段は、
前記有利状態において前記特別表示結果が導出表示されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与し、
M 前記特殊制御により前記有利状態への制御の開始を遅延させている状態において前記特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与する、ことを特徴とするスロットマシン。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成29年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
1.訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開2003-52910号公報)に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
2.訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証(特開2008-301986号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、特許異議申立書において、証拠方法として甲第1、2号証を提出し、訂正前の請求項1に係る発明について、以下のとおり主張している。
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一のものであって、新規性を有しないものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2003-52910号公報
甲第2号証:特開2008-301986号公報
4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
取消理由で通知した甲第1号証(特開2003-52910号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0022】本発明は、複数の回転リール40をストップスイッチ50の操作により停止させ、所定の図柄61が所定の入賞態様に配列することにより入賞となる遊技機、例えばスロットマシンに適している。本発明は、特殊遊技を開始させるための遊技履歴を、回転リール40が停止した時に視認可能な図柄61が所定の配列となることとしたものである。この場合、「所定の配列」が入賞の態様である場合には、入賞回数を遊技履歴として記憶するものとなるが、入賞の有無に関わらず、特定の図柄61が特定の並びになったことを遊技履歴として記憶するものとしても良い。」
(イ)「【0042】そして、前記特殊遊技制御手段は、所定の入賞がn回連続した場合に、前記特殊遊技を開始可能に形成することができる。また、本発明に係る遊技機用プログラムは、遊技機を、複数の図柄を変動表示又は停止表示させるための図柄表示手段、図柄の変動表示を開始させるための図柄変動開始手段、変動表示されている図柄を停止表示させるための図柄変動停止手段、及び所定図柄を所定位置に停止させる停止制御を行うための図柄停止制御手段として機能させることができる。
【0043】このとき、前記図柄表示手段は、周囲に複数の図柄61を表示した回転リール40とし、この回転リール40の回転を制御するように形成することができる。この場合、図柄変動開始手段は、前記回転リール40の回転を開始させるためのスタートスイッチ30とすることができる。また、前記図柄変動停止手段は、回転リール40の回転を停止させるためのストップスイッチ50とすることができる。」
(ウ)「【0063】(遊技制御装置21)次に、遊技制御装置21について詳述する。遊技制御装置21は、スタートスイッチ30及びストップスイッチ50の操作により、回転リール40の回転及び停止を制御するためのものである。そして、この遊技制御装置21は、次の(1)乃至(3)の手段として機能する。
【0064】(1)通常遊技制御手段70
(2)特別遊技制御手段80
(3)当選抽選手段110
なお、前記通常遊技制御手段70は、通常遊技を行わせるために通常遊技に関する制御を行うものであり、前記特別遊技制御手段80は、特別遊技を行わせるために特別遊技に関する制御を行うものである。
【0065】また、遊技制御装置21としては、上記した(1)乃至(3)の手段に限定されるものではなく、他の手段を含んでいても良い。
(通常遊技制御手段70)通常遊技制御手段70は、通常遊技を行わせるためのものである。すなわち、メダルの投入若しくはベットスイッチ16の投入を条件に、または、「再遊技(Replay)」時には前遊技から所定時間経過を条件に、スタートスイッチ30を操作すると、リールユニット60が駆動され、三個の回転リール40が回転を開始する。
【0066】その後、ストップスイッチ50の一個を操作すると、当該対応する回転リール40の回転が停止する。そして、ストップスイッチ50を三個全て操作し終わると、三個の回転リール40の回転が全て停止する。このとき、表示窓12の入賞有効ライン上に、予め設定された図柄61が停止すると、ホッパーユニット65を介して所定枚数のメダルが払い出される。なお、メダルを払い出す代わりに、クレジットしても良い。
【0067】当選には、入賞により遊技メダルの払い出しを伴い、遊技者に利益を付与する小役当選と、この小役当選よりもさらに大きな利益を遊技者に付与する特別当選と、遊技メダルの払い出しは無いが、遊技メダルを新たに投入することなく再度の遊技を行うことができる「再遊技(Replay)」とを備えている。そして、その抽選結果がいずれかの役に当選となった場合、その当選に対応した当選フラグが成立する。そして、抽選結果が特別当選である場合に、特別当選フラグが成立し、この特別当選フラグ成立中に、リールユニット60の回転リール40の停止図柄61の組み合わせが、予め定められた所定の特別当選図柄61(例えば、入賞有効ライン上に「7」が三個揃うもの)と一致したことを条件に入賞し、遊技者に有利な特別遊技を行わせるように形成されている。一方、抽選により特別当選フラグが成立したが、回転リール40の停止図柄61の組み合わせが特別当選図柄61と一致していない場合には、それ以後の遊技に特別当選フラグ成立の権利が持ち越されるように設定されている。なお、小役の当選フラグは、当選フラグが成立した遊技で入賞させられない場合、当選フラグ成立の権利の次の遊技への持ち越しはない。
【0068】また、いずれかの当選フラグが成立中に、対応する当選図柄61を入賞有効ライン上に揃えることができるか否かは、回転リール40の回転速度が一定の場合、ストップスイッチ50のタイミングによるものである。具体的には、ストップスイッチ50を操作した後、190ms以内に回転リール40が停止するように設定されているため、ストップスイッチ50を操作した後、そのまま停止させるか、或いは190ms以内に停止可能な回転リール40の円周上の引き込み可能図柄61、例えば停止図柄から連続する4個の引き込み可能図柄61の中に、対応する入賞図柄61が含まれているような場合には、停止するまでの時間を遅らせて、回転リール40は入賞有効ライン上にその当選図柄61を引き込んで停止する。一方、かかる4個の引き込み可能図柄61の中に、対応する当選図柄61が含まれていないような場合には、入賞有効ライン上にその当選図柄61を引き込んで停止することができない。」
(エ)「【0076】(特殊遊技制御手段120)特殊遊技制御手段120は、特殊遊技を制御するためのものである。そして、特殊遊技制御手段120は、図1に示すように、第一特典遊技制御手段121及び第二特典遊技制御手段122を有している。第一特典遊技制御手段121は、第一の特典遊技を行わせるためのものであり、第二特典遊技制御手段122は、第二の特典遊技を行わせるためのものであるが、これについては後述する。
【0077】ここで、特典遊技とは、後述する遊技履歴記憶手段130の記憶した遊技履歴に基づいて開始される特殊遊技であって、通常遊技よりも遊技者に有利な遊技、すなわち遊技者に何らかの特典を与えるような遊技である。特典遊技としては、例えば、以下のような遊技を設けることができる。
(1)リプレイタイム遊技
リプレイタイム遊技とは、所定期間に亘り、「再遊技」の当選確率が高く設定された遊技期間である。」
(オ)「【0092】具体的には、例えば、特定の遊技履歴を特定の入賞(例えば再遊技入賞)とし、n=3、m=3と設定したと仮定する。この場合、「再遊技」が連続して3回入賞すると、第一特典遊技制御手段121が第一特典遊技を開始させる。一方、「再遊技」の連続入賞が連続して6回目となったときには、第二特典遊技制御手段122が第二特典遊技を開始させる。
【0093】このとき、第一特典遊技を例えばリプレイタイム遊技とし、第二特典遊技をアシストリプレイタイム遊技とすると、「再遊技」連続6回入賞を果たした場合には、第二特典遊技により、第一特典遊技より大きな特典が付与されることとなる。これは、第二特典遊技を大特典遊技として位置づけたものである。また、第一特典遊技を例えばアシストタイム遊技50ゲームとし、第二特典遊技はアシストタイム遊技100ゲームとすることにより、第二特典遊技を大特典遊技として位置づけることもできる。
【0094】なお、第一特典遊技は、第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定したとき(例えば連続入賞が5回の場合)に開始されるものとしても良いし、第一特典遊技の開始条件に該当したら第一特典遊技を開始し、その後さらに、第二特典遊技遊技の開始条件に該当した場合には、第二特典遊技を開始するようにしても良い。この場合、第一特典遊技の終了後に第二特典遊技を開始しても良いし、第一特典遊技中に第二特典遊技を開始しても良い。」
(カ)「【0110】なお、遊技履歴記憶手段130としては、上記の他にも、例えば遊技回数、特定期間中の遊技回数をカウントし記憶することもできる。
(当選抽選手段110)当選抽選手段110は、予め定めた抽選確率に基づいて当選役に係わる抽選を行うものである。そして、当選抽選手段110による抽選の結果、所定の当選役に当選である場合に当選フラグが成立し、この当選フラグ成立中に、回転リール40の停止図柄の組み合わせが予め定められた当選図柄と一致したことを条件に入賞し、遊技者にメダルの払い出しや、特別遊技等の利益が付与されるように設定されている。」
(キ)「【0129】なお、テーブル停止制御においても、当選フラグが成立しているときには、その当選フラグに対応する図柄が入賞有効ライン上に揃うように、予めテーブルの上で停止位置が決定されてあり、いわゆる引き込み設定の一種を備えているものである。また、当選フラグが成立していないときには、他の当選図柄が入賞有効ライン上に揃わないように、予めテーブルの上で停止位置が決定されてあり、いわゆる蹴飛ばし設定の一種を備えているものである。」
したがって、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明のa~hは、本件発明のA~Hに対応させて付した。
(甲1発明)
「a 複数の図柄61を変動表示させるため周囲に複数の図柄61を表示した回転リール40からなる図柄表示手段を備え(段落【0042】、【0043】)、
複数の回転リール40を停止させ、所定の図柄61が所定の入賞態様に配列することにより入賞となるスロットマシンにおいて(段落【0022】)、
b 回転リール40の停止前に、当選役に係わる抽選を行う当選抽選手段110と(段落【0110】)、
c 回転リール40の回転を停止させるためのストップスイッチ50と(段落【0043】)、
d ストップスイッチ50の操作により、回転リール40の停止を制御する遊技制御装置21であって、当選抽選手段110の抽選によるいずれかの当選フラグが成立中に、ストップスイッチ50を操作した後、そのまま停止させるか、例えば停止図柄から連続する4個の引き込み可能図柄61の中に、対応する入賞図柄61が含まれているような場合には、停止するまでの時間を遅らせて、回転リール40は入賞有効ライン上にその当選図柄61を引き込んで停止し、一方、かかる4個の引き込み可能図柄61の中に、対応する当選図柄61が含まれていないような場合には、入賞有効ライン上にその当選図柄61を引き込んで停止することができず、当選抽選手段110の抽選による当選フラグが成立していないときには、他の当選図柄が入賞有効ライン上に揃わないように、予めテーブルの上で停止位置が決定されてあり、いわゆる蹴飛ばし設定の一種を備えている遊技制御装置21と(段落【0063】~【0068】、【0110】、【0129】)、
f 遊技履歴記憶手段130の記憶した遊技履歴に基づいて開始される特殊遊技であって、通常遊技よりも遊技者に有利な遊技、すなわち遊技者に何らかの特典を与えるような遊技を制御する特殊遊技制御手段120と(段落【0076】、【0077】)、
g 特定の遊技履歴として例えば特定の入賞が連続して3回入賞すると第一特典遊技を開始させる第一特典遊技制御手段121と(段落【0092】)、
h 連続6回の特定の入賞を果たし場合には、第二特典遊技が付与されるが、第一特典遊技は、第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定したときに開始されるものとする制御手段と(段落【0093】、【0094】)、を備える
スロットマシン。」
(2)甲第2号証
取消理由で通知した甲第2号証(特開2008-301986号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0001】
本発明は、メダルを用いて遊技を行う回胴式遊技機(スロットマシン)に関する。」
(イ)「【0072】
ミッション演出では、内部当選したベル小役の入賞を所定のミッション達成必要回数(以下「ベル当て回数」ともいう。)だけ成立させることで、ミッションが達成されるようになっている。本実施例の遊技機1では、ベル当て回数が4回に設定され、内部当選したベル小役の入賞を連続して4回成立させることでミッションが達成されるように構成されている。なお、本発明の「特定条件」は、ミッション演出における達成すべきミッションの内容であり、「特定条件の達成」は内部当選したベル小役の入賞を所定のミッション達成必要回数だけ成立させることで実現される。」
(ウ)「【0077】
一方、ミッションが達成された場合には、所定の特典が遊技者に付与される。遊技者に付与される特典として、RT遊技中にベル小役の種類(ベルA、ベルB、ベルCのいずれか)を特定したベル小役の内部当選の報知が行われる。ベル小役の内部当選報知は、所定のベル小役報知期間だけ行われる。本実施例のベル小役報知期間は、所定回数の遊技(ベル報知ゲーム数)が実行されるまでの期間として設定されている。ミッションが達成された場合には、所定のベル小役報知期間として第1報知期間(本実施例では100ゲーム)が設定される。このベル小役の内部当選報知は、サブ制御基板220のCPUによって行われる。また、ベル小役の内部当選報知が行われる所定のベル小役報知期間が本発明の所定の報知期間に相当している。」
したがって、甲第2号証には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲2記載事項)
「ベル小役の入賞を連続して4回成立させることで、RT遊技中にベル小役の種類(ベルA、ベルB、ベルCのいずれか)を特定したベル小役の内部当選の報知が行われる特典が遊技者に付与されるスロットマシン(段落【0001】、【0072】、【0077】)。」
(3)甲第3号証
異議申立人が平成29年10月13日付けの意見書で提出した甲第3号証(特開2004-097575号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0007】
第3に、所定のゲーム数が経過した後、1セット分のATゲームが実行される。つまり、ATゲームの権利が発生しても直ちにATゲームが開始されるわけではなく、通常ゲームを経た後、ATゲームが開始される。そして、あるセットが終了し、所定数の通常ゲームが経過すると、次のセットが開始される。本明細書では、権利が発生したゲームから最初のATゲームの直前ゲームまでの期間、およびあるセットと次のセットとの期間を潜伏期間といい、実際に報知が行われるATゲームの期間を作動期間という。さらに、潜伏期間と作動期間とを合わせてAT期間といい、AT期間を除いた期間を通常期間という。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、AT期間又は作動期間において、AT権利の発生確率を高くするスロットマシンは知られていない。すなわち、従来のスロットマシンでは、AT期間又は作動期間において、セット数の上乗せの期待度は、通常期間と何ら変わることがなかった。ATゲームは上述したようにリールストップボタンの押し順等がプレイヤーに報知される。このため、プレイヤーは、ATゲームに移行することを期待しながら通常ゲームを楽しむが、通常ゲームからATゲームに移行すると、後はATゲームを消化するだけになってしまうという問題があった。」
「【0132】
以上の処理において、モードの遷移は以下の通りである。モード1からモード2への遷移は、ビッグボーナスゲームの終了を契機とする。モード2からモード1への遷移は、ビッグボーナスゲームの終了後に20ゲームを経過したことを契機とする。モード1からモード3への遷移は、AT権利が発生し、かつ、モード3抽選に当選したことを契機とする。モード3からモード1への遷移は、AT期間が終了したこと、又は、あるATゲームのセットが終了し次のセットの潜伏期間に移行したとき次のセットのモード3フラグが無効であることを契機とする。
【0133】
<1-5-2:AT権利発生処理>
次に、AT権利発生処理について説明する。図14は、AT権利発生処理におけるサブ基板30BのCPU55の動作を示すフローチャートである。まず、CPU55は、内部抽選データISDに基づいて、リプレイ賞に当選しているか否かを判定し(ステップS201)、リプレイ賞に当選していれば、さらにモードデータがモード3を指示するか否かを判定する(ステップS202)。」
「【0135】
換言すれば、モード3の場合には、リプレイ賞又はチェリー賞に当選していることを条件に権利抽選を実行し、モード1又はモード2の場合にはチェリー賞に当選していることを条件に権利抽選を実行する。つまり、AT期間においては、所定の条件(モード3)を充足すると、権利抽選へ移行する条件となる内部抽選の賞群(区分)の種類が増加する。これにより、内部抽選の各賞群又はハズレの当選確率、すなわち、抽選区分の幅を変更することなく、権利抽選を実行する機会を増やし、AT権利発生確率を高くすることができる。」
「【0145】
以上、説明したように本実施形態によれば、AT権利の抽選確率がモード3であれば、AT期間において、AT権利の発生確率を高確率にすることができるので、ATゲームの意味を単に入賞し易いものとするだけでなく、セットの上乗せを容易にできるという新たなゲーム性を付加することができる。また、モード3の抽選は、AT権利の発生に当選した際に実行され、モード3の抽選に当選すると、モード3フラグがセット数Sと対応付けられて記憶される。すなわち、将来のゲームにモード3を適用することを記憶し、所定の始動条件が充足されるとモード3を適用することができる。」
「【0157】
さらに、図14に示すステップ206では、モード3において第1抽選に当選した場合には高確率で第2抽選を実行したが、この場合の確率は100%であってもよい。そして、そのような場合には、第2抽選を省略して、第1抽選において当選していれば、AT権利を発生させてもよい。」
「【0161】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、所定の条件を充足する場合、特別ゲーム期間において移行権利の発生確率を高確率にすることができるから、特別ゲームの趣向性を大幅に向上させることができる。また、特別状態を記憶し、始動条件を充足することによって、将来のゲームで特別状態を適用することができるので、プレイヤーは特別状態に移行することを期待してゲームをプレイすることができる。」
したがって、甲第3号証には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲3記載事項)
「ATゲームの権利が発生したゲームから最初のATゲームの直前ゲームまでの期間、およびあるセットと次のセットとの期間を潜伏期間といい、実際に報知が行われるATゲームの期間を作動期間といい、さらに、潜伏期間と作動期間とを合わせてAT期間といい、AT期間を除いた期間を通常期間といい(【0007】)、
モード1からモード3への遷移は、AT権利が発生し、かつ、モード3抽選に当選したことを契機とし、モード3からモード1への遷移は、AT期間が終了したこと、又は、あるATゲームのセットが終了し次のセットの潜伏期間に移行したとき次のセットのモード3フラグが無効であることを契機とし(【0132】)、
モード3の場合には、リプレイ賞又はチェリー賞に当選していることを条件に権利抽選を実行し、モード1の場合にはチェリー賞に当選していることを条件に権利抽選を実行する、つまり、AT期間においては、所定の条件(モード3)を充足すると、権利抽選へ移行する条件となる内部抽選の賞群(区分)の種類が増加し、(【0135】)、
AT権利の抽選確率がモード3であれば、AT期間において、AT権利の発生確率を高確率にすることができる(【0145】)
スロットマシン(【0009】)。」
5 当審の判断
5-1 取消理由について
(1)対比
本件発明と甲1発明を対比する。なお、見出しの(a)~(h)は、甲1発明のa~hに対応させた。
(a)甲1発明の「複数の図柄61」及び「周囲に複数の図柄61を表示した回転リール40からなる図柄表示手段」は、それぞれ、本件発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報」及び「可変表示部」に相当する。また、甲1発明の「複数の回転リール40を停止させ、所定の図柄61が所定の入賞態様に配列することにより入賞となる」ことは、本件発明の複数の「前記可変表示部を変動表示した後に表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能な」ことに相当する。
したがって、甲1発明の「複数の図柄61を変動表示させるため周囲に複数の図柄61を表示した回転リール40からなる図柄表示手段を備え、複数の回転リール40を停止させ、所定の図柄61が所定の入賞態様に配列することにより入賞となるスロットマシン」は、本件発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、前記可変表示部を変動表示した後に表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。
(b)甲1発明の「回転リール40の停止前」は、本件発明の「表示結果が導出される前」に相当する。また、甲1発明の「当選抽選手段110」により「抽選」される「当選役」が、複数の回転リール40を停止させて配列することが許容されるものであることは明らかである。
したがって、甲1発明の「回転リール40の停止前に、当選役に係わる抽選を行う当選抽選手段110」は、本件発明の「表示結果が導出される前に、導出が許容される表示結果を決定する事前決定手段」に相当する。
(c)甲1発明の「回転リール40の回転を停止させるためのストップスイッチ50」は、遊技者が操作することは明らかであるから、本件発明の「遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段」に相当する。
(d)甲1発明の「ストップスイッチ50の操作により、回転リール40の停止を制御する遊技制御装置21であって、当選抽選手段110の抽選による何れかの当選フラグが成立中に、ストップスイッチ50を操作した後、そのまま停止させるか、例えば停止図柄から連続する4個の引き込み可能図柄61の中に、対応する入賞図柄61が含まれているような場合には、停止するまでの時間を遅らせて、回転リール40は入賞有効ライン上にその当選図柄61を引き込んで停止し、一方、かかる4個の引き込み可能図柄61の中に、対応する当選図柄61が含まれていないような場合には、入賞有効ライン上にその当選図柄61を引き込んで停止することができず、当選抽選手段110の抽選による当選フラグが成立していないときには、他の当選図柄が入賞有効ライン上に揃わないように、予めテーブルの上で停止位置が決定されてあり、いわゆる蹴飛ばし設定の一種を備えている遊技制御装置21」は、本件発明の「前記事前決定手段の決定結果と前記導出操作手段の操作とに応じて表示結果を導出する導出制御手段」の機能を有するといえる。
(f)甲1発明の「遊技履歴記憶手段130の記憶した遊技履歴に基づいて開始される特殊遊技であって、通常遊技よりも遊技者に有利な遊技、すなわち遊技者に何らかの特典を与えるような遊技を制御する特殊遊技制御手段120」は、本件発明の「開始条件の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態に制御する有利状態制御手段」に相当する。
(g)甲1発明の「特定の入賞」が「入賞する」ことは、本件発明の「特定表示結果が導出され」ることに相当する。
したがって、甲1発明の「特定の遊技履歴として例えば特定の入賞が連続して3回入賞すると第一特典遊技を開始させる第一特典遊技制御手段121」は、本件発明の「2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する第1特典付与手段」に相当する。
(h)甲1発明の「第一特典遊技は、第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定したときに開始される」ことは、「第一特典遊技」の「開始」が「第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定」するまで遅延されることといえる。
したがって、甲1発明の「連続6回の特定の入賞を果たし場合には、第二特典遊技が付与されるが、第一特典遊技は、第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定したときに開始されるものとする制御手段と、を備えるスロットマシン」は、本件発明の「前記有利状態に制御する権利を有しており、かつ前記特定表示結果が連続して導出されている連続状態が継続しているときに、前記有利状態への制御の開始を遅延させる特殊制御を行う特殊制御手段と、を備え」ることに相当する。
そうすると、本件発明と甲1発明は次の点で一致する。
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後に表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
B 表示結果が導出される前に、導出が許容される表示結果を決定する事前決定手段と、
C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、
D 前記事前決定手段の決定結果と前記導出操作手段の操作とに応じて表示結果を導出する導出制御手段と、
F’開始条件の成立に応じて、遊技者にとって有利な有利状態に制御する有利状態制御手段と、
G 2以上の所定回数連続して特定表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与する第1特典付与手段と、
H 前記有利状態に制御する権利を有しており、かつ前記特定表示結果が連続して導出されている連続状態が継続しているときに、前記有利状態への制御の開始を遅延させる特殊制御を行う特殊制御手段と、
を備える
スロットマシン。」
そして、本件発明と甲1発明は以下の点で相違する。
(相違点1)(構成E、F)
本件発明では「E 遊技者にとって有利な有利状態に制御する権利が付与された後、予め定められた潜伏期間に制御する潜伏期間制御手段」を備え、有利状態制御手段が遊技者にとって有利な有利状態に制御する開始条件は、「F 前記潜伏期間制御手段により制御された前記潜伏期間が終了したときに成立する」ものであるのに対し、甲1発明ではそのようなものではない点。
(相違点2)(構成I)
本件発明は「I 前記第1特典付与手段は、前記潜伏期間に制御されているとき、または、前記有利状態への制御の開始を遅延させているときのいずれにおいても前記有利状態に制御する権利を新たに付与可能であ」るのに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
(相違点3)(構成J)
本件発明は「J 前記有利状態制御手段は、前記有利状態に制御する権利が複数回付与されたときに、前記有利状態に複数回制御する」ものであるのに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
(相違点4)(構成K)
本件発明は「K 前記スロットマシンは、前記特定表示結果とは異なる特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御する権利を付与可能な第2特典付与手段」を備えるのに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
(相違点5)(構成L)
本件発明は「L 前記第2特典付与手段は、前記有利状態において前記特別表示結果が導出表示されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与」するものであるのに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
(相違点6)(構成M)
本件発明は「M 前記特殊制御により前記有利状態への制御の開始を遅延させている状態において前記特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与する」ものであるのに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点6について検討する。
異議申立人は、平成29年10月13日付けの意見書において、甲第3号証には、「権利が発生したゲームから最初のATゲームの直前ゲームまでの期間、およびあるセットと次のセットとの期間を潜伏期間といい、実際に報知が行われるATゲームの期間を作動期間という。さらに、潜伏期間と作動期間とを合わせてAT期間といい、AT期間を除いた期間を通常期間という。」(段落【0007】)の構成、及び「AT権利の抽選確率がモード3であれば、AT期間において、AT権利の発生確率を高確率にすることができる」(段落【0145】)」の構成から、要するに「AT権利の発生したゲームから最初のATゲームの直前ゲームまでの期間が潜伏期間であって、この潜伏期間終了後にATゲームの開始を遅延させる遅延制御が行われ、潜伏期間開始からAT権利の当選確率が高確率に制御され、遅延制御中はAT期間でない期間に比べAT権利の当選確率が高確率」となる構成が開示されていることからして、相違点6に係る本件発明の構成が記載されており、相違点6に係る本件発明の構成は、甲第1~3号証の記載から当業者に自明な事項、すなわち当業者における周知慣用技術にすぎない旨、主張する。
しかしながら、甲第3号証には、甲3記載事項、すなわち、潜伏期間と作動期間を合わせたAT期間において、権利抽選へ移行する条件となる内部抽選の賞群の種類を増加し(チェリー賞だけでなくリプレイ賞も)、AT権利の発生確率を高確率にすることが記載されているのみで、潜伏期間終了後に行われるATゲームの開始を遅延させる遅延制御については記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証にも、上記相違点6に係る本件発明の構成について、記載も示唆もされていない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
また、本件発明の「M 前記特殊制御により前記有利状態への制御の開始を遅延させている状態」に相当する、「特定の入賞が連続して3回入賞すると」「開始される」「第一特典遊技」の「開始」が「連続6回の特定の入賞を果たし場合」の「第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定」するまで「開始」されない状態を開示する甲1発明に対して、甲3記載事項の適用を検討するに、甲1発明の前記開示事項を甲3記載事項の潜伏期間と類似するものとして、甲1発明に甲3記載事項を適用し得たとしても、連続して3回入賞するより前の特定入賞の確率より、その後の特定の入賞の確率を高確率にして第二特典遊技を開始し易くすることまでは想到できるが、相違点6に係る本件発明の「特別表示結果」は構成Kにおいて「前記特定表示結果とは異なる」と特定されているから、特定入賞とは異なる入賞の確率を高確率にして、相違点6に係る本件発明の構成の「前記特別表示結果が導出されたときに、前記有利状態に制御されていない状態において前記特別表示結果が導出されたときよりも高い確率で前記有利状態に制御する権利を付与する」ことは、甲1発明及び甲3記載事項に基づいて容易に想到し得るものではない。
さらに、甲1発明の「特定の入賞が連続して3回入賞すると」「開始される」「第一特典遊技」の「開始」が「連続6回の特定の入賞を果たし場合」の「第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定」するまで「開始」されない状態を残しつつ、それとは別に、甲3記載事項を適用する動機付けは見出せないが、仮に適用し得たとしても、甲1発明の「特定の入賞が連続して3回入賞すると」「開始される」「第一特典遊技」の「開始」が「連続6回の特定の入賞を果たし場合」の「第二特典遊技の開始条件に該当しないことが確定」するまで「開始」されない状態をも、リプレイ賞のAT権利の発生確率を高確率にして相違点6に係る本件発明の構成に容易に想到し得るものではない。
そして、特別表示結果が導出表示されたときに高い確率で有利状態に制御する権利が付与される有利状態への制御の開始を遅延させている状態において、仮に、特別表示結果が導出表示されたときに高い確率で有利状態に制御する権利を付与しない場合には、有利状態への制御の開始を遅延させたことで遊技者に不満を与えてしまう虞があるが、本件発明は、上記相違点6に係る本件発明の構成により、特別表示結果が導出表示されたときに高い確率で有利状態に制御する権利を付与するため、つまり、有利状態への制御の開始の遅延が特別表示結果の導出表示時の権利の付与に影響を及ぼさないため、有利状態への制御の開始を遅延させたことで遊技者に不満を与えてしまうのを防ぐことができるという効果を奏するものである。
したがって、甲1発明に甲2記載事項、甲3記載事項を適用しても、上記相違点6に係る本件発明の構成に想到することはできない。
(3)まとめ
よって、本件発明は、上記相違点1~5を検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
そして、特許異議申立人の主張する理由、特許異議申立人が提出した証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことができない。
5-2 特許異議申立理由について
当審による平成29年6月23日付けの取消理由通知は、前記第3の2、3のように、特許異議申立の理由と同じ理由を包含するものであることから、特許異議申立理由は前記5-1において検討済みである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700342