特許異議申立
2017-700235
積層ポリエステルフィルム
- 審判番号
- 2017-700235
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-143538外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月06日
- 審決日
- 2017年11月17日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】岡田 数彦
- 【異議申立人】馬場 智理
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5989199号発明「積層ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5989199号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第5989199号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5989199号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成26年7月19日(優先権主張 平成26年1月7日 日本国)を国際出願日とする特願2014-148363号の一部を、平成27年7月20日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月19日にその特許権の設定登録がされた。
その後、請求項1及び2に係る特許について、特許異議申立人馬場智理(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年6月7日付けで取消理由が通知され、平成29年6月26日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、平成29年6月28日付けで申立人に対し本件訂正請求があった旨の通知がなされ、平成29年7月25日付けで申立人から意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出された。
2.本件訂正請求についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「平均粒径が0. 01~1.0μmの範囲」とあるのを、
「平均粒径が0. 05~1.0μmの範囲」に訂正する。
イ.訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0009】に、
「平均粒径が0. 01~1.0μmの範囲」とあるのを、
「平均粒径が0. 05~1.0μmの範囲」に訂正する。
(2)訂正の適否
ア.一群の請求項
訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1及び2による訂正は当該一群の請求項1及び2に対し請求されたものである。
イ.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「平均粒径」について、本件特許明細書の段落【0034】の「塗布層に用いる粒子の平均粒径は、塗布層の膜厚にも依存するので一概には言えないが、一般的には0.01~1.0μm、好ましくは0.05~0.8μm、より好ましくは0.1~0.7μm、特に好ましくは0.2~0.5μmの範囲である。」との記載に基づいて、「平均粒径」の数値範囲が「0. 05~1.0μm」であることを限定して特定するものである。
ゆえに、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の記載を、訂正事項1により訂正される請求項1の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
ウレタン樹脂および平均粒径が0. 05~1.0μmの範囲である粒子を含有し、膜厚が0. 02~ 1μmの範囲である塗布層を少なくとも片面に有するポリエステルフィルムであり、塗布層中の粒子の含有量が3~70重量%の範囲であり、当該塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
機能層のヘーズが8.0%以下である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
(2)取消理由の概要
当審において通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由通知において申立人の特許異議申立理由は全て採用した。
《理由1》
本件発明1及び2は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
《理由2》
本件発明1及び2は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物、甲1に記載された発明及び甲2~4に例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
《刊行物》
甲1.特開2008-169277号公報
甲2.特開2010-284943号公報
甲3.特開2003-48245号公報
甲4.国際公開第2008/146935号の再公表特許公報(発行日平成22年8月19日)
(3)判断
理由1及び2について
ア.甲1発明
甲1の実施例9に係る記載によれば、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。
「酸成分が2,6-ナフタレンジカルボン酸70モル%/イソフタル酸25モル%/5-ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されているポリエステル樹脂(Tg=80℃、平均分子量13000、屈折率1.57)28.5重量%と、酸成分がテレフタル酸90モル%/イソフタル酸5モル%/5-ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されているポリエステル樹脂(Tg=70℃、平均分子量13000、屈折率1.56)26重量%と、
数平均一次粒子径が10nmの酸化チタン微粒子40重量%と、
数平均一次粒子径が250nmのアクリルフィラー微粒子0.5重量%と、
からなる、膜厚100nmの塗布層をポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に有し、
フィルムのヘーズが4.0%を超え、塗布層上に、シーアイ化成社製CZR-10からなる厚み5μm、屈折率1.63のハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が2.0%<ヘーズ値≦4.0%である、ポリエチレンテレフタレートフィルム。」
イ.本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点1》塗布層中の粒子の平均粒径及び含有量に関し、
本件発明1では、「0.05~1.0μm」及び「3~70重量%」であるのに対し、甲1発明では、40重量%を占める「酸化チタン微粒子」が「10nm」及び「40重量%」で、「アクリルフィラー微粒子」が「250nm」及び「0.5重量%」である点。
《相違点2》フィルムのヘーズ値に関し、
本件発明1は、「当該塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」ものであるのに対し、
甲1発明は「フィルムのヘーズが4.0%を超え、塗布層上に、シーアイ化成社製CZR-10からなる厚み5μm、屈折率1.63のハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が2.0%<ヘーズ値≦4.0%」のものである点。
ウ.相違点の検討
(ア)相違点1について
本件発明1は、本件特許明細書の段落【0001】、【0003】、【0007】、【0009】、【0027】及び【0030】~【0033】の記載からみて、ハードコート層等の機能層を形成する用途において、塗布層に粒子を含有させ、光を拡散させることでヘーズ値を高くしておいて、機能層の加工後にヘーズ値が大きく下がり、機能層の加工・未加工の区別を付けやすくした積層ポリエステルフィルムを提供するものである。
一方、甲1発明は、【請求項1】、段落【0006】、【0008】の記載からみて、塗布層が高分子バインダーおよび酸化チタン微粒子を含有し、該酸化チタン微粒子の平均一次粒子径が4~25nm、塗布層における酸化チタン微粒子の含有量が0.5~55重量%であり、塗布層の塗膜厚さが8~220nmであることにより、透明性、易滑性に優れ、種々の光学用途に用いられる層との接着力に優れながら、さらに反射防止加工後の干渉ムラが実用上問題ないレベルにある光学用易接着性ポリエステルフィルムを提供するものである。
本件発明1における「平均粒径が0. 05~1.0μmの範囲である粒子」は、上記のとおり、これにより「光を拡散させる」ものであり、「塗布層中の粒子の含有量が3~70重量%の範囲」とされるものである。
甲1発明において、「光を拡散させる」という機能を発揮するのは、40重量%を占める「酸化チタン微粒子」であって、0.5重量%にすぎない「アクリルフィラー微粒子」は、ほとんど寄与しないと解されるから、甲1発明の「アクリルフィラー微粒子」は、本件訂正発明1の「粒子」に相当するとはいえないところ、甲1発明の「酸化チタン微粒子」の平均粒径は「10nm」、すなわち「0.01」μmであり、「0.05~1.0μm」の範囲にはない。
ゆえに、相違点1は、単なる表現の相違等の形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
そして、甲1の段落【0018】には、酸化チタン微粒子の平均一次粒子径が25nm(0.025μm)を超えると光学散乱が発生し塗布層の透明性が悪くなるから好ましくない旨が記載されていることを踏まえると、たとえ、「平均粒径が0. 05~1.0μmの範囲である粒子」を塗布層中に含有させることが、甲2~甲4の記載からみて周知技術であるといえたとしても、甲1発明における「酸化チタン微粒子」について「平均粒径が0. 05~1.0μmの範囲である」ようにすることには、阻害要因があり、当業者が容易になし得たこととはいえない。
なお、申立人は、申立人意見書において、甲1発明の平均粒径「250nm(0.25μm)」の「アクリルフィラー微粒子」が、本件発明1における粒子に相当する旨、主張する。
しかし、上記のとおり、「アクリルフィラー微粒子」は、本件発明1の「粒子」には相当せず、仮に、0.5重量%の「アクリルフィラー微粒子」が、本件発明1の「粒子」に相当するとしても、「粒子の含有量が3~70%の範囲」を満たさないから、上記主張は採用できない。
(イ)相違点2について
甲1発明は、ハードコート層形成前のヘーズ値が4.0%を超え、ハードコート層形成後のヘーズ値は、2.0%<ヘーズ値≦4.0%と減少するものの、このことから「塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」ことが、直ちにいえるものではない。
ここで、甲1発明は、「塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下すること」をその要件とすることなく、「透明性、易滑性に優れ、種々の光学用途に用いられる層との接着力に優れながら、さらに反射防止加工後の干渉ムラが実用上問題ないレベルにある光学用易接着性ポリエステルフィルムを提供する」という課題を解決したものであり、甲1には、「塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」ことを示唆する記載はないし、「機能層の加工・未加工の判別機能」について示唆する記載もない。
してみると、本件発明1の「当該塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」ことにより、機能層の加工・未加工の判別機能を当該塗布層に発揮させるようにしたことと、甲1発明の「フィルムのヘーズが4.0%を超え、塗布層上に、シーアイ化成社製CZR-10からなる厚み5μm、屈折率1.63のハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が2.0%<ヘーズ値≦4.0%」であることとは、たとえ、ヘーズ値の範囲の一部が重なり得るとしても、特定しようとする技術内容が明らかに異なるというべきである。
ゆえに、相違点2も、単なる表現の相違等の形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
そして、甲1発明において、「塗布層上に機能層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」ようにすることは、甲2~甲4には記載されていないし、示唆もされていないから、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ.まとめ
よって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、甲1発明及び甲2~4に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
そして、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としている、本件発明2は、上記と同様の理由により、甲1発明であるとはいえず、甲1発明及び甲2~4に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同条第2項の規定に違反して特許されたものでもないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700235