特許拒絶査定不服審判
2017-012946
THAのための最適接触機構
- 審判番号
- 2017-012946
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-511654外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月01日
- 審決日
- 2019年09月17日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
- 【請求人代理人】加藤 公延
- 【請求人代理人】大島 孝文
- 分類
- P18 .121-WZ (A61F) / P18 .575-WZ (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-511654「THAのための最適接触機構」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日国際公開、WO2013/169881、平成27年 6月11日国内公表、特表2015-516238〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)5月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年5月8日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。
平成28年12月19日付け:拒絶理由通知
平成29年 3月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月24日付け:拒絶査定
同年 9月 1日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
平成30年 8月30日付け:拒絶理由通知
同年12月 4日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 2月27日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和 元年 5月16日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和元年5月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年5月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項10の記載は、次のとおり補正された(補正箇所に下線を付した。)。
「【請求項10】
人工大腿骨コンポーネントであって、
大腿骨骨幹と、
前記大腿骨骨幹に連結される大腿骨頸部と、を備え、
前記大腿骨頸部の長手方向に沿って延在する頸部軸が、前記大腿骨骨幹の長手方向に沿って延在する大腿骨骨幹軸に対して35度以下の角度をなし、
前記大腿骨骨幹は、前記大腿骨頸部から延在するねじ付き端部を受容するように適合された第1のねじ付き空洞を含み、前記大腿骨骨幹は、前記第1のねじ付き空洞と交わる第2のねじ付き空洞を含み、ねじ付きコネクタが、前記第2のねじ付き空洞内に受容されて、前記第1のねじ付き空洞に受容されている前記ねじ付き端部と接触するように構成されており、
前記頸部軸は、前記大腿骨骨幹軸に対して所定の方向に傾いており、前記第2のねじ付き空洞内に受容されている前記ねじ付きコネクタは、前記所定の方向とは反対方向に前記大腿骨骨幹軸に対して傾いている、人工大腿骨コンポーネント。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成30年12月4日に補正された特許請求の範囲の請求項10の記載は次のとおりである。
「【請求項10】
人工大腿骨コンポーネントであって、
大腿骨骨幹と、
前記大腿骨骨幹に連結される大腿骨頸部と、を備え、
前記大腿骨頸部の長手方向に沿って延在する頸部軸が、前記大腿骨骨幹の長手方向に沿って延在する大腿骨骨幹軸に対して35度以下の角度をなし、
前記大腿骨骨幹は、前記大腿骨頸部から延在するねじ付き端部を受容するように適合された第1のねじ付き空洞を含み、前記大腿骨骨幹は、前記第1のねじ付き空洞と交わる第2のねじ付き空洞を含み、ねじ付きコネクタが、前記第2のねじ付き空洞内に受容されて、前記第1のねじ付き空洞に受容されている前記ねじ付き端部と接触するように構成されている、人工大腿骨コンポーネント。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項10に記載された発明を特定するために必要な事項である「頸部軸」及び「ねじ付きコネクタ」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項10に記載された発明と補正後の請求項10に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項10に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について、以下に検討する。
3-1 本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
3-2 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
当審において平成31年2月27日付けで通知した最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)で引用され、本願の優先権主張日(以下「本願優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2003-505147号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、理解のため当審が付した。以下同じ。)。
1a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 大腿骨内に実現される対応する縦孔内に導入される軸部と、大腿骨頚内に実現される対応する孔内に挿入され、前記軸部に結合する大腿骨頭とを備え、前記大腿骨頭が、関節球状端部と、骨盤内に埋め込まれた寛骨臼と、前記寛骨臼と大腿骨頭の前記球状端部との間に設けられた減摩寛骨臼カップとを有することを特徴とする脱臼防止両股義足。
・・・
【請求項7】 大腿骨頭を軸部へ固定するために、軸部の軸に沿って動作する止めねじが設けられることを特徴とする、前記請求項のうちの一項に記載の脱臼防止両股義足。」
1b:「【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、脱臼防止両股義足に関する。
【0002】
更に詳細には、本発明は、現存する義足により得られるものに対して、著しく高い下肢の可動性が得られるように実現した、上記の種類の義足に関する。
【0003】
現在市場で入手可能な股義足は、十分な歩行を可能にするものであるが、脱臼の可能性が高いという特徴がある。」
1c:「【0026】
まず同封の図面の図1~3に注目すると、本発明の股義足の好適な実施形態が示されており、これは全体が符号1で示されている。
【0027】
本発明の義足は複数の要素を備えており、その中には大腿骨3内に埋め込まれた軸部2がある(図2参照)。
【0028】
前記軸部2は、円錐台形密封もしくは接着するように、または別の種類の方法により実現され、チタン合金もしくはAISI316Lステンレス鋼等の金属材料、または他の抗拒絶性材料から構成される。
【0029】
符号4は大腿骨頭を示し、これは円錐台形結合したねじ山5により軸部2に結合している。前記大腿骨頭4はチタン合金、AISI316Lステンレス鋼、もしくはセラミック材料等の金属材料、または他の抗拒絶性材料から構成される。
【0030】
軸部2と大腿骨頭4とが埋め込まれると(図2)、好ましくはAISI316Lステンレス鋼等の金属材料から構成される止めねじ6により、これらが互いにロックする。」
1d:図3には、破線により軸部2の長手方向の軸が、また、同じく破線により大腿骨頭4の長手方向の軸が、それぞれ図示されているところ、大腿骨頭4の長手方向の軸は、軸部2の長手方向の軸に対して所定の方向に傾いており、かつ、大腿骨頭4の長手方向の軸が、軸部2の長手方向の軸に対して鋭角である所定の角度をなしていることが看取できる。
以上の記載を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「脱臼防止両股義足1であって、
軸部2と、
前記軸部2に結合する大腿骨頭4とを備え、
前記大腿骨頭4はねじ山5により軸部2に結合し、
前記、大腿骨頭4の長手方向の軸が、軸部2の長手方向の軸に対して鋭角である所定の角度をなし、
前記大腿骨頭4の長手方向の軸は、軸部2の長手方向の軸に対して所定の方向に傾いており、
大腿骨頭4を軸部2へ固定するために、軸部2の軸に沿って動作する止めねじ6が設けられる、脱臼防止両股義足1。」
(2)引用文献2
当審拒絶理由で引用され、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-65873号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
2a:「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人工器官に係り、股臼カップと大腿コンポーネントの形態をなし、関節運動時の脱臼の可能性を減少させた股関節置換システムに関するものである。」
2b:「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の人工股関節システムでは股関節の回旋運動による脱臼の発生を防止できなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来型の大腿コンポーネントはネック軸とステム軸とが135度前後の角度で連結されていた。そうしたシステムでは股関節の内旋外旋のような大腿骨軸を回転軸とした大腿回旋運動に際して、ネック軸はヘッド中心を頂点とした円錐の側面をなぞるような動きをする。一般にはネックの軌跡もまた、ある円錐領域の内面に接するものとなる。この円錐領域が、股臼カップのライナー領域と重なる程度に大きな動きにいたるときに脱臼が発生すると考えられる。そのため、この円錐領域を小さく、すなわち細身の領域にすることが脱臼防止に有効であることが示唆される。
【0006】
仮に、ネック軸とステム軸を同一直線上におき、大腿コンポーネント全体を直線的な構造にすると、円錐は最も細身の領域となり、大腿回旋運動に伴うネックとライナーとの接近や衝突は起こらず、脱臼の可能性は最小となる。ただし、ネック軸とステム軸が同一直線上にあることは、大腿骨に対するヘッド中心の位置関係が非生理的なものとなる不都合がある。そこで、ネック軸を大腿骨ステム軸と平行に近いまま内側に移動させた、いわば「クランク形態」にする必要がある。従来型大腿コンポーネントを、ネックとステムとが一箇所の方向転換で連結された「一角形態」と呼べるのに対して、本発明による大腿コンポーネントの「クランクネック」は2箇所で向きを変えて連結されているという意味で「二角形態」と表現出来る。この形態により、先の仮想的な直線的大腿コンポーネントと同様に、大腿回旋によるネックの大きな円錐運動は抑制され、脱臼も起こりにくい。そして大腿骨に対するヘッドの位置も生理的なものに出来る。」
以上の記載によれば、引用文献2には、次の技術が記載されている。
「大腿コンポーネントにおいて、ネック軸とステム軸を同一直線上におき、大腿コンポーネント全体を直線的な構造にすると、脱臼の可能性は最小となること。」
3-3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア)引用発明の「大腿骨頭4」は、「関節球状端部と、骨盤内に埋め込まれた寛骨臼と、前記寛骨臼と大腿骨頭の前記球状端部との間に設けられた減摩寛骨臼カップとを有する」(摘記事項1a)というものであるから、引用発明である「脱臼防止両股義足1」のうち、骨盤側に設けられる該「寛骨臼」及び「該減摩寛骨臼カップ」以外の大腿骨側部分は、その形状、機能等からみて、本願補正発明の「人工大腿骨コンポーネント」に相当し、同様に、「軸部2」は「大腿骨骨幹」に相当する。
また、引用発明の「大腿骨頭4」の大腿骨側部分は、該「関節球状端部」と「軸部2」とを連結するための棒状部分をも当然に有するものであるから、引用発明の「軸部2に結合する大腿骨頭4」は、本願補正発明の「大腿骨骨幹に連結される大腿骨頸部」に相当する。
イ)引用発明の「大腿骨頭4の長手方向の軸」は、本願補正発明の「大腿骨頸部の長手方向に沿って延在する頸部軸」に相当し、また、引用発明の「軸部2の長手方向の軸」及び「軸部2の軸」は、本願補正発明の「大腿骨骨幹の長手方向に沿って延在する大腿骨骨幹軸」に相当する。
そうすると、本願補正発明と引用発明とは、“前記大腿骨頸部の長手方向に沿って延在する頸部軸が、前記大腿骨骨幹の長手方向に沿って延在する大腿骨骨幹軸に対して鋭角である所定の角度をなし”ている点で共通する。
ウ)引用発明の「ネジ山5」は、その形状からみて、本願補正発明の「大腿骨頸部から延在するねじ付き端部」に相当するところ、引用発明では、「大腿骨頭4はねじ山5により軸部2に結合」するというのであるから、引用発明の「軸部2」が、当該「ねじ山5」を受け入れるための適宜の雌ねじ空間を含んでいることは明らかである。
また、引用発明の「止めねじ6」は、本願補正発明の「ねじ付きコネクタ」に相当するところ、引用発明では、「大腿骨頭4を軸部2へ固定するために、軸部2の軸に沿って動作する止めねじ6が設けられる」というのであるから、引用発明の「軸部2」には、当該「止めねじ6」を受け入れるための適宜の雌ねじ空間が含まれていることも明らかである。
さらに、引用発明では、「止めねじ6」が、「軸部2の軸に沿って動作する」結果、「大腿骨頭4を軸部2へ固定」するのであるから、当該「固定」のためには、上記の各雌ねじ空間は、互いに交わるものであって、止めねじ6が、ねじ山5と接触するように構成されていることも技術的に明らかといえる。
よって、上記の各「適宜の雌ねじ空間」を、それぞれ“第1のねじ付き空洞”、“第2のねじ付き空洞”と称すれば、本願補正発明と引用発明とは、“前記大腿骨骨幹は、前記大腿骨頸部から延在するねじ付き端部を受容するように適合された第1のねじ付き空洞を含み、前記大腿骨骨幹は、前記第1のねじ付き空洞と交わる第2のねじ付き空洞を含み、ねじ付きコネクタが、前記第2のねじ付き空洞内に受容されて、前記第1のねじ付き空洞に受容されている前記ねじ付き端部と接触するように構成されている”点で、一致する。
以上によれば、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
人工大腿骨コンポーネントであって、
大腿骨骨幹と、
前記大腿骨骨幹に連結される大腿骨頸部と、を備え、
前記大腿骨頸部の長手方向に沿って延在する頸部軸が、前記大腿骨骨幹の長手方向に沿って延在する大腿骨骨幹軸に対して鋭角である所定の角度をなし、
前記大腿骨骨幹は、前記大腿骨頸部から延在するねじ付き端部を受容するように適合された第1のねじ付き空洞を含み、前記大腿骨骨幹は、前記第1のねじ付き空洞と交わる第2のねじ付き空洞を含み、ねじ付きコネクタが、前記第2のねじ付き空洞内に受容されて、前記第1のねじ付き空洞に受容されている前記ねじ付き端部と接触するように構成されており、
前記頸部軸は、前記大腿骨骨幹軸に対して所定の方向に傾いている、人工大腿骨コンポーネント。
(相違点1)
頸部軸が、大腿骨骨幹軸に対してなす角度に関し、本願補正発明では、「35度以下の角度」であるのに対し、引用発明では、鋭角ではあるものの、その具体的な数値までは明らかでない点。
(相違点2)
第2のねじ付き空洞内に受容されているねじ付きコネクタに関し、本願補正発明では、「ねじ付きコネクタは、前記所定の方向とは反対方向に前記大腿骨骨幹軸に対して傾いている」のに対し、引用発明では、ねじ付きコネクタは、大腿骨幹軸に沿って動作するのであるから、大腿骨骨幹軸に対して傾きのない点。
3-4 判断
(1)相違点1について
引用文献2には、上記3-2(2)で示したとおり、「大腿コンポーネントにおいて、ネック軸とステム軸を同一直線上におき、大腿コンポーネント全体を直線的な構造にすると、脱臼の可能性は最小となること。」という技術が記載されている。
ここで、当該「大腿コンポーネント」、「ネック軸」、「ステム軸」、「ネック軸とステム軸を同一直線上におき大腿コンポーネント全体を直線的な構造にする」は、それぞれ、“人工大腿骨コンポーネント”、“頸部軸”、“大腿骨骨幹軸”、“頸部軸が大腿骨骨幹軸に対し35度よりも十分に小さな角度をなす”といい得るものであるから、上記の技術は、“人工大腿骨コンポーネントにおいて、頸部軸が大腿骨幹軸に対し35度よりも十分に小さな角度をなすと、脱臼の可能性は最小となること。”と言い換えることができる。
また、引用文献2には、「ただし、ネック軸とステム軸が同一直線上にあることは、大腿骨に対するヘッド中心の位置関係が非生理的なものとなる不都合がある。そこで、ネック軸を大腿骨ステム軸と平行に近いまま内側に移動させた、いわば「クランク形態」にする必要がある。」(上記3-2(2)の摘記事項2b)との記載もあるが、「クランク形態」であるか否かにかかわらず、頸部軸が大腿骨骨幹軸に対し十分に小さな角度をなすと脱臼の可能性が低くなることについては変わりがない。
そうすると、同じく脱臼防止を技術課題とする引用発明の「脱臼防止両股義足1」において、その頸部軸と大腿骨骨幹軸とのなす角度を、引用文献2に記載の技術に基づき最適化ないし好適化することは、当業者による通常の創作能力の発揮といえることから、脱臼防止の観点から同角度としてより小さな角度を採用することは当業者であれば容易に想到し得たことであって、その際、同角度の上限値として35度という数値を選択することも、当業者が適宜に設定し得た程度のことにすぎない。
(2)相違点2について
引用発明における大腿骨頭4の軸部2への固定機序は、その構造からして、止めねじ6をねじ込んで大腿骨頭4のねじ山5を圧接し、その圧接力に基づいて大腿骨頭4の回り止めを行うというものである。
このような機序を踏まえると、止めねじ6による圧接力をより効果的にねじ山5に伝えるためには、止めねじ6を、ねじ山5の長手方向軸方向に対しより垂直な方向からねじ込めばよいことは、当業者にとって技術的に自明であって、しかも、大腿骨頭4のより効果的な固定は人工大腿骨コンポーネントの設計上、当然に望まれる事項であるから、引用発明における止めねじ6のねじ込み方向を、大腿骨頭4に対しより垂直な方向へと変更すること、即ち、止めねじ6を、「(頸部軸の傾く)所定の方向とは反対方向に前記大腿骨骨幹軸に対して傾いている」ようにすることは、当業者であれば容易になし得た設計事項にすぎない。
また、引用発明の止めねじ6は、「軸部2の軸に沿って動作する止めねじ6」というものではあるが、引用文献1の記載をみても、止めねじ6の動作を「軸部2の軸に沿って」のみと制約すべき技術上の理由は見当たらず、しかも、図3から把握できる股義足の形状ないし構造からみて、軸部2の上部には、止めねじ6を「(頸部軸の傾く)所定の方向とは反対方向に前記大腿骨骨幹軸に対して傾いている」ように変更できる空間的な余裕を設けることが十分可能であるから、引用発明には、斯かる変更を妨げる事情もない。
(3)効果について
そして、上記の各相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3-5 小括
よって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成30年12月4日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、この出願の請求項10に係る発明は、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、その本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特表2003-505147号公報
引用文献2:特開2004-65873号公報
3 引用文献の記載事項
引用文献1及び2の記載事項(引用発明及び引用文献2に記載された技術)は、前記第2の[理由]3-2に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記第2の[理由]2で指摘した限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-012946