特許拒絶査定不服審判
2017-008033
携帯電子機器
- 審判番号
- 2017-008033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-093060外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月05日
- 審決日
- 2018年01月09日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】京セラ株式会社
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .575-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 93060「携帯電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-215838、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2013年4月25日の出願であって,平成28年9月28日付けで拒絶理由が通知され,平成28年11月30日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成29年3月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成29年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,平成29年7月20日に前置報告がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年3月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-9に係る発明は,下記の引用文献1-2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2013-073529号公報
2.国際公開第2012/128361号
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
なお,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-8に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,平成29年6月5日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
複数のオブジェクトを含む画面を表示する表示部と,
前記表示部を覆うように設けられ,ユーザからのタッチ入力を受け付けるタッチ入力部と,
前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ入力を受けたときに,タッチ位置が特定の領域にあるか否かを判断する位置判断部と,
前記位置判断部により前記タッチ位置が特定の領域にあると判断された場合に,ユーザによる前記タッチ入力を受け付けてから第1の時間が経過したか否かを判断する時間判断部と,
前記時間判断部により第1の時間が経過したと判断された場合は,前記表示部に表示されている前記複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを前記特定の領域における前記タッチ位置に表示する表示制御部と,
を有する携帯電子機器。」
なお,本願発明2-8の概要は以下のとおりである。
本願発明2-8は,本願発明1を直接又は間接的に引用した発明である。
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。
「【0012】
(第1実施形態)
図1から図3を参照しながら,第1実施形態に係るスマートフォン1の外観について説明する。図1から図3に示すように,スマートフォン1は,ハウジング20を有する。ハウジング20は,フロントフェイス1Aと,バックフェイス1Bと,サイドフェイス1C1~1C4とを有する。フロントフェイス1Aは,ハウジング20の正面である。バックフェイス1Bは,ハウジング20の背面である。サイドフェイス1C1~1C4は,フロントフェイス1Aとバックフェイス1Bとを接続する側面である。以下では,サイドフェイス1C1~1C4を,どの面であるかを特定することなく,サイドフェイス1Cと総称することがある。
【0013】
スマートフォン1は,タッチスクリーンディスプレイ2と,ボタン3A~3Cと,照度センサ4と,近接センサ5と,レシーバ7と,マイク8と,カメラ12とをフロントフェイス1Aに有する。スマートフォン1は,カメラ13をバックフェイス1Bに有する。スマートフォン1は,ボタン3D~3Fと,コネクタ14とをサイドフェイス1Cに有する。以下では,ボタン3A~3Fを,どのボタンであるかを特定することなく,ボタン3と総称することがある。
【0014】
タッチスクリーンディスプレイ2は,ディスプレイ2Aと,タッチスクリーン2Bとを有する。ディスプレイ2Aは,液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display),有機ELパネル(Organic Electro-Luminescence panel),又は無機ELパネル(Inorganic Electro-Luminescence panel)等の表示デバイスを備える。ディスプレイ2Aは,文字,画像,記号又は図形等を表示する。
【0015】
タッチスクリーン2Bは,タッチスクリーン2Bに対する指,又はスタイラスペン等の接触を検出する。タッチスクリーン2Bは,複数の指,又はスタイラスペン等がタッチスクリーン2Bに接触した位置を検出することができる。
【0016】
タッチスクリーン2Bの検出方式は,静電容量方式,抵抗膜方式,表面弾性波方式(又は超音波方式),赤外線方式,電磁誘導方式,及び荷重検出方式等の任意の方式でよい。以下では,説明を簡単にするため,タッチスクリーン2Bが接触を検出する指,又はスタイラスペン等は単に「指」ということがある。
【0017】
スマートフォン1は,タッチスクリーン2Bにより検出された接触,接触が行われた位置,接触が行われた時間及び接触が行われた位置に基づいてジェスチャの種別を判別する。ジェスチャは,タッチスクリーンディスプレイ2に対して行われる操作である。スマートフォン1によって判別されるジェスチャには,タッチ,ロングタッチ,リリース,スワイプ,タップ,ダブルタップ,ロングタップ,ドラッグ,フリック,ピンチイン,ピンチアウト等が含まれる。
【0018】
タッチは,タッチスクリーン2Bに指が触れるジェスチャである。スマートフォン1は,タッチスクリーン2Bに指が接触するジェスチャをタッチとして判別する。ロングタッチとは,タッチスクリーン2Bに指が一定時間以上触れるジェスチャである。スマートフォン1は,タッチスクリーン2Bに指が一定時間以上接触するジェスチャをロングタッチとして判別する。
【0019】
リリースは,指がタッチスクリーン2Bから離れるジェスチャである。スマートフォン1は,指がタッチスクリーン2Bから離れるジェスチャをリリースとして判別する。スワイプは,指がタッチスクリーンディスプレイ2上に接触したままで移動するジェスチャである。スマートフォン1は,指がタッチスクリーンディスプレイ2上に接触したままで移動するジェスチャをスワイプとして判別する。
【0020】
タップは,タッチに続いてリリースをするジェスチャである。スマートフォン1は,タッチに続いてリリースをするジェスチャをタップとして判別する。ダブルタップは,タッチに続いてリリースをするジェスチャが2回連続するジェスチャである。スマートフォン1は,タッチに続いてリリースをするジェスチャが2回連続するジェスチャをダブルタップとして判別する。」
「【0025】
図4を参照しながら,ディスプレイ2Aに表示される画面の例について説明する。図4は,ホーム画面の一例を示している。ホーム画面は,デスクトップ,又は待受画面と呼ばれることもある。ホーム画面は,ディスプレイ2Aに表示される。ホーム画面は,スマートフォン1にインストールされているアプリケーションのうち,どのアプリケーションを実行するかを利用者に選択させる画面である。スマートフォン1は,ホーム画面で選択されたアプリケーションをフォアグランドで実行する。フォアグランドで実行されるアプリケーションの画面は,ディスプレイ2Aに表示される。
【0026】
スマートフォン1は,ホーム画面にアイコンを配置することができる。図4に示すホーム画面40には,複数のアイコン50が配置されている。それぞれのアイコン50は,スマートフォン1にインストールされているアプリケーションと予め対応付けられている。スマートフォン1は,アイコン50に対するジェスチャを検出すると,そのアイコン50に対応付けられているアプリケーションを実行する。例えば,スマートフォン1は,メールアプリケーションに対応付けられたアイコン50に対するタップが検出されると,メールアプリケーションを実行する。 」
「【0035】
図5は,スマートフォン1の構成を示すブロック図である。スマートフォン1は,タッチスクリーンディスプレイ2と,ボタン3と,照度センサ4と,近接センサ5と,通信ユニット6と,レシーバ7と,マイク8と,ストレージ9と,コントローラ10と,カメラ12及び13と,コネクタ14と,加速度センサ15と,方位センサ16と,ジャイロスコープ17とを有する。
【0036】
タッチスクリーンディスプレイ2は,上述したように,ディスプレイ2Aと,タッチスクリーン2Bとを有する。ディスプレイ2Aは,文字,画像,記号,又は図形等を表示する。タッチスクリーン2Bは,ジェスチャを検出する。 」
「【0044】
ストレージ9は,例えば,制御プログラム9A,メールアプリケーション9B,ブラウザアプリケーション9C,テーブル9Dおよび設定データ9Zを記憶する。メールアプリケーション9Bは,電子メールの作成,送信,受信,及び表示等のための電子メール機能を提供する。ブラウザアプリケーション9Cは,WEBページを表示するためのWEBブラウジング機能を提供する。設定データ9Zは,スマートフォン1の動作に関する各種の設定機能を提供する。
【0045】
制御プログラム9Aは,スマートフォン1を稼働させるための各種制御に関する機能を提供する。制御プログラム9Aは,例えば,通信ユニット6,レシーバ7,及びマイク8等を制御することによって,通話を実現させる。制御プログラム9Aが提供する機能には,タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて,ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を行う機能が含まれる。なお,制御プログラム9Aが提供する機能は,メールアプリケーション9B等の他のプログラムが提供する機能と組み合わせて利用されることがある。」
「【0050】
コントローラ10は,例えば,制御プログラム9Aを実行することにより,タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて,ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を実行する。 」
「【0085】
(第2実施形態)
次に,図10から図13を参照して,本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態に係るスマートフォンの構成は,第1実施形態に係るスマートフォンと同様である。そこで,以下では,第2実施形態に係るスマートフォンをスマートフォン1として説明を行う。また,以下では,第1実施形態と共通する事項については説明を省略し,第1実施形態と異なる部分のみ説明を行う。
【0086】
図10は,第2実施形態に係るスマートフォンが行う制御の第1の例を示す図である。スマートフォン1は,ステップS31に示すように,第1実施形態における図7のステップS11と同様のホーム画面40をディスプレイ2Aに表示している。すなわち,ステップS31では,4つのアイコン50がホーム画面40の左上領域に配置されており,その他の領域にはアイコン50が配置されていない。 」
「【0093】
図12は,第2実施形態に係るスマートフォンが行う制御の第3の例を示す図である。ステップS51は,利用者が,図10のステップS31と同様のホーム画面40をディスプレイ2Aに表示しているスマートフォン1の右下部分を手に持った状態を示す。
【0094】
そして,ステップS51では,利用者の親指F1が,ステップS31と同様に,ホーム画面40の右下領域においてアイコン50が配置されていない領域Rをタップしている。この場合,スマートフォン1は,タッチスクリーンディスプレイ2を介して,ホーム画面40においてアイコン50が配置されていない領域Rに対するタップを検出する。
【0095】
スマートフォン1は,ステップS51でホーム画面40の領域Rに対するタップを検出すると,ステップS52に示す処理を行う。スマートフォン1は,ステップS52として,4つのアイコン50の中の“Mail”アイコンを,ステップS51でタップされた領域Rに向かって移動させる。ステップS52のホーム画面40に表示された点線の四角形の枠は,“Mail”アイコンがステップS51で配置されていた位置を示している。
【0096】
そして,ステップS53では,利用者の親指F1が,ステップS52に示す状態のホーム画面40における領域Rを再びタップしている。スマートフォン1は,ホーム画面40の領域Rに対するタップを検出する。
【0097】
スマートフォン1は,ステップS53でホーム画面40の領域Rに対するタップを検出すると,ステップS54に示す処理を行う。スマートフォン1は,ステップS54として,“Clock”アイコンを,ステップS53でタップされた領域Rに向かって移動させる。領域Rに向かって移動してきた“Clock”アイコンは,ステップS52およびS53で“Mail”アイコンが配置されていた位置に配置される。そして,“Mail”アイコンは,ステップS52およびS53で配置されていた位置から左下に移動している。このとき,スマートフォン1は,“Clock”アイコンが“Mail”アイコンをはじくように表示してもよい。」
「【0105】
以上に述べたように,第2実施形態に係るスマートフォン1は,ホーム画面40におけるアイコン50が配置されていない所定の領域Rがタップされると,ホーム画面40に配置されたアイコン50を,同じホーム画面40内で領域Rに向かって移動させる。これにより,装置の操作性を向上させることができる。例えば,スマートフォン1は,利用者が指でタッチスクリーンディスプレイ2に対する操作を行う場合に,アイコン50をタップされた領域に向かって移動させることで,ホーム画面40において指が届きやすい領域にアイコン50を表示することができる。
【0106】
また,図11に示す第2の例では,スマートフォン1は,タップが検出された領域Rに向かってアイコン50を移動させる際に,移動後のアイコン50のサイズを移動前のサイズよりも小さくする。これにより,装置の操作性をさらに向上させることができる。例えば,スマートフォン1は,アイコン50の移動が完了した状態で,アイコン50をホーム画面40において指が届きやすい領域に表示することができる。
【0107】
また,図12に示す第3の例では,スマートフォン1は,領域Rがタップされる度にアイコン50を一つずつ領域Rに向かって移動させる。これにより,装置の操作性をさらに向上させることができる。」
上記記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「文字,画像,記号又は図形等を表示するディスプレイ2Aと,複数の指,又はスタイラスペン等が接触した位置を検出するタッチスクリーン2Bとを有するタッチスクリーンディスプレイ2を有するスマートフォン1であって(【0013】-【0015】),
タッチスクリーン2Bにより検出された接触,接触が行われた位置,接触が行われた時間及び接触が行われた位置に基づいてジェスチャの種別を判別し(【0017】),
タッチスクリーン2Bに指が接触するジェスチャをタッチとして判別し(【0018】),
指がタッチスクリーン2Bから離れるジェスチャをリリースとして判別し(【0019】),
タッチに続いてリリースをするジェスチャをタップとして判別し(【0020】),
ディスプレイ2Aに表示されるホーム画面40に複数のアイコン50を配置することができ,例えば,メールアプリケーションに対応付けられたアイコン50に対するタップが検出されると,メールアプリケーションを実行し(【0025】-【0026】),
さらに,ストレージ9とコントローラ10とを有し(【0035】),
ストレージ9は,例えば,制御プログラム9A,メールアプリケーション9B,ブラウザアプリケーション9C,テーブル9Dおよび設定データ9Zを記憶し(【0044】),
制御プログラム9Aは,スマートフォン1を稼働させるための各種制御に関する機能を提供し,この制御プログラム9Aが提供する機能には,タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて,ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を行う機能が含まれ(【0045】),
コントローラ10は,例えば,制御プログラム9Aを実行することにより,タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて,ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を実行し(【0050】),
制御の例として(【0093】),
ステップS51では,利用者の親指F1が,ホーム画面40の右下領域においてアイコン50が配置されていない領域Rをタップすると,スマートフォン1は,タッチスクリーンディスプレイ2を介して,ホーム画面40においてアイコン50が配置されていない領域Rに対するタップを検出し(【0094】),
ステップS52として,4つのアイコン50の中の“Mail”アイコンを,ステップS51でタップされた領域Rに向かって移動させ(【0095】),
ステップS53では,利用者の親指F1が,ステップS52に示す状態のホーム画面40における領域Rを再びタップすると,スマートフォン1は,ホーム画面40の領域Rに対するタップを検出し(【0096】),
ステップS54として,“Clock”アイコンを,ステップS53でタップされた領域Rに向かって移動させ,領域Rに向かって移動してきた“Clock”アイコンは,ステップS52およびS53で“Mail”アイコンが配置されていた位置に配置され,“Mail”アイコンは,ステップS52およびS53で配置されていた位置から左下に移動し(【0097】),
このように領域Rがタップされる度にアイコン50を一つずつ領域Rに向かって移動させ,ホーム画面40において指が届きやすい領域にアイコン50を表示することができる(【0105】,【0107】),
スマートフォン1。」
2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落[0029]-[0036]及び図3の記載からみて,当該引用文献2には,タッチパネル2上の入力領域への長押下に関する制御として([0029]),利用者が指F1を文字入力領域54の内部でタッチパネル2に接触させ続けた場合,時間検出部38によって検出される操作時間に連動して,文字入力領域54における長押下に割り当てられている動作のうち操作時間に対応する動作をタッチパネル2に順次表示させ([0031],[0035]),表示される各動作は,メニュー55の選択項目の1つとなり,メニュー55では,最後に表示された動作が選択状態となり,全ての動作が表示される前に利用者が指F1をタッチパネル2から離すと,その時点で選択状態となっている動作を実行する([0036])という技術的事項が記載されていると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)引用発明との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
(ア)引用発明の「スマートフォン1」は,本願発明1の「携帯電子機器」に含まれる。
(イ)引用発明は,「ディスプレイ2Aに表示されるホーム画面40に複数のアイコン50を配置することができ」るものであり,引用発明における「複数のアイコン50」,この「複数のアイコン50」が配置される「ホーム画面40」は,それぞれ本願発明1の「複数のオブジェクト」,「画面」に含まれる。
そうすると,引用発明の「ディスプレイ2A」と本願発明の「表示部」とは,「複数のオブジェクトを含む画面を表示する」という点で共通するから,引用発明の「ディスプレイ2A」は,本願発明1の「表示部」に相当する。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「複数のオブジェクトを含む画面を表示する表示部」を有する点で一致する。
(ウ)下記a-cで示すように,本願発明1と引用発明とは,「ユーザからのタッチ入力を受け付けるタッチ入力部」を有する点で一致するといえる。
a 引用発明は,「複数の指,又はスタイラスペン等が接触した位置を検出するタッチスクリーン2B」を有しており,この「複数の指,又はスタイラスペン等」による「接触」は,「ユーザからの接触」であるといえる。また,この「タッチスクリーン2B」は,「接触」の「位置を検出」しているのであるから,「接触」を「受け付け」ていることは明らかである。したがって,引用発明の「タッチスクリーン2B」は,「ユーザからの接触を受け付ける」ものであるといえる。
b 一方,本願発明1は,「前記表示部を覆うように設けられ,ユーザからのタッチ入力を受け付けるタッチ入力部」を有しているが,この本願発明1における「タッチ入力」に関して,本願明細書では,「タッチ入力」という用語が用いられておらず,その定義は明記されていない。しかしながら,段落【0021】の「入力部113は,ユーザによるタッチを検出し,検出している間,単位時間(例えば1/60秒)毎に,タッチしている位置の座標値を,制御部111及び記憶部110に出力する。尚,本実施例において,タッチとは,ユーザが指等で入力部113を触ることであり,」との記載より,「入力部113」によって検出される「タッチ」が,本願発明1における「タッチ入力」を意味し,これは,「ユーザが指等で入力部113を触ること」,すなわち,入力部(タッチ入力部)に対するユーザからの「接触」であると解される。
c そうすると,引用発明の「タッチスクリーン2B」が「ユーザからの接触を受け付ける」ことは,本願発明1の「タッチ入力部」が「ユーザからのタッチ入力を受け付ける」ことに相当し,本願発明1と引用発明とは,「ユーザからのタッチ入力を受け付けるタッチ入力部」を有する点で一致する。
(エ)下記a-dで示すように,本願発明1と引用発明とは,「前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ操作を受けたときに,タッチ操作の位置が特定の領域にあるか否かを判断する手段」を有する点で一致するといえる。
a 本願発明1は,「前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ入力を受けたときに,タッチ位置が特定の領域にあるか否かを判断する位置判断部」を有している。ここで,上記(イ)で述べたとおり,「タッチ入力」とは,「タッチ(接触)」であると解される。
b 引用発明では,「ホーム画面40」に「複数のアイコン50」が配置されており,「タッチスクリーンディスプレイ2を介して,ホーム画面40においてアイコン50が配置されていない領域Rに対するタップを検出」すると,「“Mail”アイコン」を「タップされた領域Rに向かって移動させ」,「再びタップ」を検出すると,「“Clock”アイコン」を「領域Rに向かって移動させ」る。また,引用発明は,「例えば,メールアプリケーションに対応付けられたアイコン50に対するタップが検出されると,メールアプリケーションを実行するもの」,すなわち,「アイコン50に対するタップ」が検出されると,当該アイコンに対応付けられた「アプリケーションを実行」するものである。
このように,引用発明は,「アイコン50が配置されていない領域Rに対するタップ」を検出したときと,「アイコン50に対するタップ」を検出したときとで,異なる動作を行うものであるから,「タップ」が「アイコン50」と「アイコン50が配置されていない領域R」とのいずれに対するものかを判断していることは明らかである。そして,引用発明は,「コントローラ10」が,「タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて,ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を実行」するものであるから,上記の判断を「コントローラ10」が行っていることも明らかである。
そうすると,引用発明は,「複数のアイコン50が配置されたホーム画面40に対するタップを検出すると,当該タップがアイコン50が配置されていない領域Rに対するものであるか否かを判断するコントローラ10」を有しているといえる。
c 上記(イ)で述べたとおり,引用発明における「複数のアイコン50」は,本願発明1の「複数のオブジェクト」に含まれる。そして,「複数のアイコン50」が「ホーム画面40」に「配置され」ていることは,この「複数のアイコン50」がディスプレイ2Aに「表示されている」ことに他ならない。また,引用発明における「タップ」と本願発明1の「タッチ入力(タッチ)」とは,いずれも「タッチ操作」であるという点で共通する。さらに,引用発明の「アイコン50が配置されていない領域R」は,「アイコン50が配置されていない」という「特定の領域」であるといえるから,本願発明1の「特定の領域」に相当する。
d 上記a-cを総合すると,引用発明の「コントローラ10」と本願発明1の「位置判断部」とは,「前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ操作を受けたときに,タッチ操作の位置が特定の領域にあるか否かを判断する手段」であるという点で共通するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ操作を受けたときに,タッチ操作の位置が特定の領域にあるか否かを判断する手段」を有する点で一致する。
(オ)下記a-cで示すように,本願発明1と引用発明とは,「前記表示部に表示さている複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを指が届きやすい領域に表示する手段」を有する点で一致するといえる。
a 上記(エ)のbで述べたとおり,引用発明では,「ホーム画面40」に「複数のアイコン50」が配置されており,「タッチスクリーンディスプレイ2を介して,ホーム画面40においてアイコン50が配置されていない領域Rに対するタップを検出」すると,「“Mail”アイコン」を「タップされた領域Rに向かって移動させ」,「再びタップ」を検出すると,「“Clock”アイコン」を「領域Rに向かって移動させ」ること,すなわち,「領域Rがタップされる度にアイコン50を一つずつ領域Rに向かって移動させ」ることにより,「ホーム画面40において指が届きやすい領域にアイコン50を表示する」ことができる。ここで,「複数のアイコン50」が「ディスプレイ2A」に表示されていることは明らかである。
また,引用発明は,「コントローラ10」が,「タッチスクリーン2Bを介して検出されたジェスチャに応じて,ディスプレイ2Aに表示されている情報を変更する等の各種制御を実行」するものである。
そうすると,引用発明は,「ディスプレイ2Aに表示されている複数のアイコンのうち,“Mail”アイコンを領域Rに向かって移動させ,指が届きやすい領域に表示するコントローラ10」を有しているといえる。
b 引用発明における最初の「タップ」によって移動させられる「“Mail”アイコン」は,本願発明1における「第1のオブジェクト」に含まれる。また,引用発明が「“Mail”アイコン」を「タップされた領域Rに向かって移動させ」,「ホーム画面40において指が届きやすい領域にアイコン50を表示する」ことと,本願発明1の「表示制御部」が「第1のオブジェクトを前記特定の領域における前記タッチ位置に表示する」こととは,いずれもオブジェクト又はアイコンを「指が届きやすい領域に表示する」という点で共通している。
c そうすると,引用発明の「コントローラ10」と本願発明1の「表示制御部」とは,「前記表示部に表示さている複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを指が届きやすい領域に表示する手段」であるという点で共通するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記表示部に表示さている複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを指が届きやすい領域に表示する手段」を有する点で一致する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「複数のオブジェクトを含む画面を表示する表示部と,
ユーザからのタッチ入力を受け付けるタッチ入力部と,
前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ操作を受けたときに,タッチ操作の位置が特定の領域にあるか否かを判断する手段と,
前記表示部に表示されている前記複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを指が届きやすい領域に表示する手段と,
を有する携帯電子機器。」
(相違点)
(相違点1)一致点の「ユーザからのタッチ入力を受け付けるタッチ入力部」に関して,本願発明1では,「前記表示部を覆うように設けられ」ているのに対して,引用発明では,「タッチスクリーン2B」が「ディスプレイ2A」を「覆うように設けられ」ていることが明らかではない点。
(相違点2)一致点の「前記複数のオブジェクトが表示されている場合においてユーザによるタッチ操作を受けたときに,タッチ操作位置が特定の領域にあるか否かを判断する手段」に関して,本願発明1は,具体的手段である「位置判断部」が「判断」するのは,「タッチ入力を受けたときに,タッチ位置が特定の領域にあるか否か」であるのに対して,引用発明は,具体的手段である「コントローラ10」が「判断」するのは,「タップを検出すると,当該タップがアイコン50が配置されていない領域Rに対するものであるか否か」である点。
(相違点3)本願発明1は,「前記位置判断部により前記タッチ位置が特定の領域にあると判断された場合に,ユーザによる前記タッチ入力を受け付けてから第1の時間が経過したか否かを判断する時間判断部」を有するのに対して,引用発明は,このような「時間判断部」を有しない点。
(相違点4)一致点の「前記表示部に表示されている前記複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを指が届きやすい領域に表示する手段」に関して,本願発明1は,具体的手段である「表示制御部」が,「前記時間判断部により第1の時間が経過したと判断された場合は,前記表示部に表示されている前記複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを前記特定の領域における前記タッチ位置に表示する」のに対して,引用発明は,具体的手段である「コントローラ10」が,このような「時間判断部」の「判断」に依存しておらず,且つ,「“Mail”アイコン」を「アイコン50が配置されていない領域R」の「タッチ位置」に表示するものではない点。
事案に鑑み,まず上記相違点4について検討する。
引用発明は,「タッチスクリーン2Bに指が接触するジェスチャをタッチとして判別し」,「指がタッチスクリーン2Bから離れるジェスチャをリリースとして判別し」,「タッチに続いてリリースをするジェスチャをタップとして判別」する。また,「アイコン50に対するタップ」が検出されると,当該アイコンに対応付けられた「アプリケーションを実行」する。さらに,「アイコン50が配置されていない」「領域Rがタップされる度にアイコン50を一つずつ領域Rに向かって移動させ,ホーム画面40において指が届きやすい領域にアイコン50を表示することができる」ものである。
このような引用発明において,「領域R」の「タッチ位置」に「アイコン50」を表示すると,再度の「領域R」への「タップ」により,当該「領域R」に表示された「アイコン50」に対応付けられたアプリケーションを実行することとなり,「領域Rがタップされる度にアイコン50を一つずつ領域Rに向かって移動させ」ることができなくなってしまうという不都合が生じる。したがって,引用発明において「領域R」の「タッチ位置」に「アイコン50」を表示する構成とすることには,阻害要因がある。
一方,引用文献2には,上述したとおり,利用者が指F1を文字入力領域54の内部でタッチパネル2に接触させ続けた場合,時間検出部38によって検出される操作時間に連動して,文字入力領域54における長押下に割り当てられている動作のうち操作時間に対応する動作をタッチパネル2に順次表示させ,表示される各動作は,メニュー55の選択項目の1つとなり,メニュー55では,最後に表示された動作が選択状態となり,全ての動作が表示される前に利用者が指F1をタッチパネル2から離すと,その時点で選択状態となっている動作を実行するという技術的事項が記載されているが,順次表示される各動作の表示位置を,タッチパネル2に対して指F1が接触する位置とすることは記載されていない。また,仮にこの引用文献2に記載されている技術的事項を引用発明に付加できたとしても,引用発明において,「領域R」の「タッチ位置」に「アイコン50」を表示する構成とする合理的理由はない。
したがって,本願発明1は,相違点1-3を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-8について
本願発明2-8も,本願発明1の「前記時間判断部により第1の時間が経過したと判断された場合は,前記表示部に表示されている前記複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを前記特定の領域における前記タッチ位置に表示する表示制御部」と同一の構成を有するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定について
理由(特許法第29条第2項)について
本願発明1-8は,「前記時間判断部により第1の時間が経過したと判断された場合は,前記表示部に表示されている前記複数のオブジェクトのうち,第1のオブジェクトを前記特定の領域における前記タッチ位置に表示する表示制御部」という事項を有しており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-008033