特許拒絶査定不服審判
2017-005345
多地点協調送信モード
- 審判番号
- 2017-005345
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-524654外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月14日
- 審決日
- 2019年02月04日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルカテル-ルーセント
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】吉澤 弘司
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-524654「多地点協調送信モード」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/019636、平成27年 9月17日国内公表、特表2015-527839〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)7月1日を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年2月4日付け :拒絶理由通知書
平成28年8月1日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年8月2日 :物件提出書の提出
平成28年12月9日付け:拒絶査定
平成29年4月14日 :拒絶査定不服審判の請求
平成30年5月18日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成30年11月21日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年11月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。
「 ワイヤレス通信ネットワークにおけるユーザ機器を、1つまたは複数の送信ポイントから動的に変化する多地点協調送信を受信するよう動作するように前記ネットワークにおいて構成する方法であって、
前記ユーザ機器のために、前記ユーザ機器が、送信を受信することができる1つまたは複数の送信ポイントを決定し、前記ユーザ機器に関連する多地点協調セットに対して前記1つまたは複数の送信ポイントを割り付けるステップと、
前記ユーザ機器との通信のために、前記多地点協調セットの中の前記1つまたは複数の送信ポイントの1つまたは複数のオペレーション・モードをあらかじめ構成するステップと、
前記1つまたは複数の送信ポイントの前記1つまたは複数のあらかじめ構成されたオペレーション・モードの中の各モードにコードポイントを関連づけ、コードブックを形成するステップと、
前記コードブックを前記ユーザ機器に通知するステップと
を含み、
各コードポイントは、前記ユーザ機器との通信のための、前記多地点協調セットの中の前記1つまたは複数の送信ポイントの各オペレーション・モードに関連するセル基準信号パターンを示す、方法。」
なお、平成30年5月18日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の<優先権主張の効力について>に記載したとおり、本願は、特許協力条約規則17.1(a)、17.1(b)及び(bの2)、17.1(d)に該当せず、特許協力条約規則17.1(c)本文に規定する優先権の主張を無視することができる場合に該当し、規則17.1(c)ただし書きに規定する規則17.1(c)の規定によって優先権の主張を無視することができない場合には該当しないから、本願の優先権主張は認められない。
したがって、進歩性の判断の基準日は、国際出願日である2013年(平成25年)7月1日と認める。
第3 拒絶の理由
当審拒絶理由の概要は、「4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」であり、請求項1に対して主引用例として以下の6、及び「CRS patternと共にチャネル状態情報基準信号といえるZero power CSI-RS patternをシグナリングすること」を示す公知例として以下の2が引用されている。
2.ZTE,Downlink control signaling for CoMP,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #69 R1-122143,2012年 5月12日アップロード,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122143.zip
6.Alcatel-Lucent, Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Downlink Control Signalling for CoMP, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting #69 R1-122487, 2012年5月12日アップロード、URL、http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122487.zip
第4 引用例の記載、引用発明
1 引用例6の記載
当審拒絶理由で引用されたAlcatel-Lucent, Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Downlink Control Signalling for CoMP, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting #69 R1-122487, 2012年5月12日アップロード、URL、http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122487.zip(表題の当審訳:CoMPのためのダウンリンク制御シグナリング、以下「引用例6」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
(ア) 「2.2 Signalling for CRS Patterns
The CRS patterns in a CoMP cooperating set have to be indicated to the UE for rate matching around collided CRS REs. Since a CoMP measurement set will probably be 2 or 3 CSI-RS resources, the actual CoMP cooperating set with 1, 2 or 3 TPs could be selected for each UE according to different CoMP implementations. The CRS pattern of each cooperating TP can be conveyed by higher-layer signalling semi-statically.
In order to flexibly support dynamic CRS patterns for all CoMP schemes, a 3-bit signaling would need to be defined in the DCI formats as shown in Table 2:」(2葉1~7行、当審訳:
2.2 CRSパターンのためのシグナリング
一致しないCRS REの周りのレートマッチングのために、CoMP協調セット内のCRSパターンをUEに指示する必要がある。CoMP測定セットはおそらく2又は3のCSI-RSリソースであるから、異なるCoMPの実装に従って、各UEに対する、実際の、TPが1、2又は3であるCoMP協調セットを選択することができる。各協調TPのCRSパターンは、上位層シグナリングによって準静的に伝えられ得る。
全てのCoMPスキームについての動的CRSパターンを柔軟にサポートするために、表2に示されるようなDCIフォーマットで、3ビットシグナリングを定義する必要がある。)
(イ)
(2葉:当審訳:
表2 DCIのみによるCRSパターンのシグナリング
TP指示 | 説明
‘000’| TPは選択されない
‘001’| 第1のTPが協調セットとして選択される
‘010’| 第2のTPが協調セットとして選択される
‘011’| 第3のTPが協調セットとして選択される
‘100’| 第1及び第2のTPが協調セットとして選択される
‘101’| 第1及び第3のTPが協調セットとして選択される
‘110’| 第2及び第3のTPが協調セットとして選択される
‘111’| 3つの全てのTPが協調セットとして選択される)
(ウ)「Alternatively, instead of explicitly signalling every TP of a CoMP transmission in DCI, a hybrid RRC and DCI signal could be useful to reduce overhead and support dynamic CoMP switching with a certain performance trade-off. For example, considering 4 pre-configured sets of transmission points, then 2 bits in the DCI would be sufficient to indicate the actual combination dynamically. The patterns could for example be {(TP1), (TP1, TP2), (TP1, TP3), (TP1, TP2, TP3)}.」(2葉8~12行、当審訳:
代替的に、DCIでCoMP送信の全てのTPを明示的にシグナリングする替わりに、RRCとDCIとのハイブリッド信号は、オーバーヘッドを低減し、特定の性能トレードオフを伴う動的CoMPスイッチングをサポートするのに有用であり得る。例えば、予め構成された4つの送信ポイントセットを想定した場合、DCIの2ビットは、実際の組み合わせを動的に示すのに十分である。パターンは例えば{(TP1),(TP1,TP2),(TP1,TP3),(TP1,TP2,TP3)}とし得る。)
(エ)
(2葉、当審訳:
表3 ハイブリッド指示によるCRSパターンのシグナリング
TP指示 | 説明
‘00’ | RRCにより構成されたCRSパターン#1
‘01’ | RRCにより構成されたCRSパターン#2
‘10’ | RRCにより構成されたCRSパターン#3
‘11’ | RRCにより構成されたCRSパターン#4)
2 引用発明
(1) 引用例6は「CoMPのためのダウンリンク制御シグナリング」と題され、また上記1(ウ)の「動的CoMPスイッチングをサポートする」との記載によると、引用例6には「動的CoMPスイッチングをサポートするダウンリンク制御シグナリング」の方法が記載されているといえる。
(2) 上記1(ア)によると、引用例6には、「各UEに対する、実際の、TPが1、2又は3であるCoMP協調セットを選択する」ことが記載されているといえる。
(3) 上記1(イ)表2には、全てのCoMPスキームと3ビットのTP指示との対応付けが示されている。
そして、上記1(イ)表2には、‘001’とのTP指示に対して、第1のTPが協調セットとして選択され送信を行う、すなわち特定の1つのTPが単独で送信を行うとのCoMPスキームが、また‘100’とのTP指示に対して、第1及び第2のTPが協調セットとして選択され送信を行う、すなわち特定の複数のTPが協調して送信を行うCoMPスキームが予め構成されることが示されているといえる。
してみると、引用例6には、「全てのCoMPスキームと3ビットのTP指示とを対応付け、3ビットの各TP指示に対して、CoMP協調セットの中の特定の1つのTPが単独で送信を行うとのCoMPスキーム、又は、CoMP協調セットの中の特定の複数のTPが協調して送信を行うCoMPスキームを予め構成する」ことが記載されているといえる。
(4) 上記1(イ)表2、(ウ)及び(エ)表3によると、引用例6には、表2に示された「全てのCoMPスキームから4つの送信ポイントセットを予め構成し、表3の2ビットのTP指示と関連付ける」ことが記載されているといえる。
(5) 上記1(エ)表3によると、引用例6には、2ビットのTP指示は、RRCにより構成されたCRSパターンを示すことが記載されているといえる。
以上を踏まえると、引用例6には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「動的CoMPスイッチングをサポートするダウンリンク制御シグナリングの方法であって、
各UEに対する、実際の、TPが1、2又は3であるCoMP協調セットを選択し、
全てのCoMPスキームと3ビットのTP指示とを対応付け、3ビットの各TP指示に対して、CoMPセットの中の特定の1つのTPが単独で送信を行うとのCoMPスキーム、又は、CoMPセットの中の特定の複数のTPが協調して送信を行うCoMPスキームを予め構成し、
全てのCoMPスキームから4つの送信ポイントセットを予め構成し、2ビットのTP指示と関連付け、
2ビットのTP指示は、RRCにより構成されたCRSパターンを示す、方法。」
平成30年11月21日に提出された手続補正書により請求項1の「チャネル状態情報基準信号の表示」との技術事項が削除されたために、当審拒絶理由で「CRS patternと共にチャネル状態情報基準信号といえるZero power CSI-RS patternをシグナリングすること」を示す公知例として引用した「2.ZTE,Downlink control signaling for CoMP,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #69 R1-122143,2012年 5月12日アップロード,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122143.zip」は、割愛する。
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
1 まず、引用発明の「TP」、「CoMP協調セット」、「UE」、「CRSパターン」と、本願発明の「送信ポイント」、「多地点協調セット」、「ユーザ機器」、「セル基準信号パターン」とは表記が異なるのみであって同義である。
そして、ダウンリンク制御シグナリングは、ワイヤレス通信ネットワークにおけるユーザ機器を構成するためのシグナリングといえ、また、動的CoMPスイッチングは、1つまたは複数の送信ポイントから動的に変化する多地点強調送信をユーザ機器が受信する技術であるから、「動的CoMPスイッチングをサポートするダウンリンク制御シグナリングの方法」である引用発明は、「ワイヤレス通信ネットワークにおけるユーザ機器を、1つまたは複数の送信ポイントから動的に変化する多地点協調送信を受信するよう動作するように前記ネットワークにおいて構成する方法」といえる点で本願発明と共通する。
2 引用発明の「各UEに対する、実際の、TPが1、2又は3であるCoMP協調セットを選択し」との工程は、UEが送信を受信することができるTPを決定し、当該UEに関連するCoMP協調セットとして決定されたTPを割り付ける処理であるから、「前記ユーザ機器のために、前記ユーザ機器が、送信を受信することができる1つまたは複数の送信ポイントを決定し、前記ユーザ機器に関連する多地点協調セットに対して前記1つまたは複数の送信ポイントを割り付けるステップ」といえる点で本願発明と一致する。
3 3GPPの規格であるTR36.819V11.1.00(2011-12)の8ページ”5.1.3 CoMP categories”に記載されているように、CoMPスキームは複数のポイントから送信が行われるJT、及び、一つのポイントから送信が行われるDPS、CS/CBに分類されることは当業者における技術常識であり、また、「CoMPスキーム」を「オペレーション・モード」と呼称することは任意である。
してみると、引用発明の「特定の複数のTPが協調して送信を行うCoMPスキーム」は、JTに対応する「CoMP協調セットの中の複数のTPの1つのオペレーション・モード」といえ、また、引用発明の「特定のTPが単独で送信を行うCoMPスキーム」は、DPS、及びCS/CBに対応する「CoMP協調セットの中の1つTPの複数のオペレーション・モード」といえる。
したがって、引用発明の「全てのCoMPスキームと3ビットのTP指示とを対応付け、3ビットの各TP指示に対して、CoMP協調セットの中の特定の1つのTPが単独で送信を行うとのCoMPスキーム、又は、CoMP協調セットの中の特定の複数のTPが協調して送信を行うCoMPスキームを予め構成し」との工程は、「前記ユーザ機器との通信のために、前記多地点協調セットの中の前記1つまたは複数の送信ポイントの1つまたは複数のオペレーション・モードをあらかじめ構成するステップ」といえる点で本願発明と一致する。
4 引用発明の、全てのCoMPスキームから予め構成される4つの送信ポイントセットのそれぞれはCoMPスキームを表し、また、上記3のとおり、引用発明のCoMPスキームはオペレーション・モードといえる。
そして、引用発明の2ビットのTP指示が示す‘00’、‘01’、‘10’、‘11’との事項は「コードポイント」といえ、また、CoMPスキームと2ビットのTP指示との対応関係は「コードブック」といえるから、引用発明の「全てのCoMPスキームから4つの送信ポイントセットを予め構成し、2ビットのTP指示と関連付け」との工程は、「前記1つまたは複数の送信ポイントの前記1つまたは複数のあらかじめ構成されたオペレーション・モードの中の各モードにコードポイントを関連づけ、コードブックを形成するステップ」といえる点で本願発明と一致する。
5 引用発明の2ビットのTP指示は、UEとの通信のための、CoMPセットの中の前記1つまたは複数のTPの各オペレーション・モードといえるCoMPスキームと対応するから、引用発明の「2ビットのTP指示は、RRCにより構成されたCRSパターンを示す」との事項は、「各コードポイントは、前記ユーザ機器との通信のための、前記多地点協調セットの中の前記1つまたは複数の送信ポイントの各オペレーション・モードに関連するセル基準信号パターンを示す」といえる点で本願発明と一致する。
以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。
「 ワイヤレス通信ネットワークにおけるユーザ機器を、1つまたは複数の送信ポイントから動的に変化する多地点協調送信を受信するよう動作するように前記ネットワークにおいて構成する方法であって、
前記ユーザ機器のために、前記ユーザ機器が、送信を受信することができる1つまたは複数の送信ポイントを決定し、前記ユーザ機器に関連する多地点協調セットに対して前記1つまたは複数の送信ポイントを割り付けるステップと、
前記ユーザ機器との通信のために、前記多地点協調セットの中の前記1つまたは複数の送信ポイントの1つまたは複数のオペレーション・モードをあらかじめ構成するステップと、
前記1つまたは複数の送信ポイントの前記1つまたは複数のあらかじめ構成されたオペレーション・モードの中の各モードにコードポイントを関連づけ、コードブックを形成するステップと、
を含み、
各コードポイントは、前記ユーザ機器との通信のための、前記多地点協調セットの中の前記1つまたは複数の送信ポイントの各オペレーション・モードに関連するセル基準信号パターンを示す、方法。」
相違点
本願発明が「前記コードブックを前記ユーザ機器に通知するステップ」を含むのに対し、引用発明が、コードブックのコードポイントに相当する2ビットのTP指示に関連付けられた情報であるCRSパターンがRRCにより構成されるものの、コードブックをUEに通知するステップが特定されていない点。
第6 判断
引用発明のユーザ機器が、動的に変化する多地点強調送信を受信するために、コードポイントとオペレーション・モードとの対応関係、すなわち形成されたコードブックが必要であることは明らかであるから、引用発明に「前記コードブックを前記ユーザ機器に通知するステップ」を含むことは当業者が容易に想到し得る事項といえる。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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