特許拒絶査定不服審判
2017-004924
集積回路の設計
- 審判番号
- 2017-004924
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-510398外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月06日
- 審決日
- 2017年10月12日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-510398「集積回路の設計」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日国際公開、WO2013/166079、平成27年 7月 9日国内公表、特表2015-519744〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)4月30日(優先権主張 2012年4月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月24日付で審査請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、平成27年12月28日付で拒絶理由通知が通知され、平成28年6月6日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年11月28日付で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたものである。
これに対して、平成29年4月6日付で審判請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項8に係る発明は、平成28年6月6日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「半導体基板に複数のトレンチを第1の深さまで形成するステップであって、前記複数のトレンチの一部のトレンチが互いに平行である、ステップと、
前記複数のトレンチの1つおきのトレンチをマスキングするステップと、
前記複数のトレンチのマスキングしていないトレンチの深さを第2の深さまで深くするステップと、を含み、
前記複数のトレンチがそれぞれ、トレンチMOSFETのゲート構造を備える方法。」
第3 当審の判断
1 引用例について
(1)引用例1
ア 引用例1の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2012-59943号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(ア)「【0011】
半導体装置1は、上下電極構造のパワーMOSFETであり、図1(a)に示すように、n形(第1導電形)のドレイン層10と、ドレイン層10の上に設けられたn形のドリフト層11と、ドリフト層11の上に設けられたp形(第2導電形)のベース領域12と、を備える。ベース領域12の表面には、n形のソース領域13が選択的に設けられている。
【0012】
半導体装置1においては、ソース領域13の表面からベース領域12を貫通して、ドリフト層11に接する複数の第1のトレンチ20が設けられている。トレンチ20内の下側には、フィールドプレート絶縁膜21を介してフィールドプレート電極22が設けられている。フィールドプレート電極22の上には、ゲート電極26が設けられている。ゲート電極26は、トレンチ20内において、ゲート絶縁膜25を介して設けられている。フィールドプレート絶縁膜21の膜厚は、ゲート絶縁膜25の膜厚よりも厚い。
【0013】
それぞれのトレンチ20どうしのあいだには、ソース領域13の表面からベース領域12を貫通して、ドリフト層11に接する第2のトレンチ30が設けられている。トレンチ30内には、ゲート絶縁膜31を介してゲート電極32が設けられている。トレンチ30の下端は、トレンチ20の下端よりも浅い位置にある。トレンチ20と、トレンチ30とは、ベース領域12の表面と略平行な方向に、交互に配置されている。
ドレイン層10は、ドレイン電極80に接続されている。ソース領域13と、ベース領域12と、には、ソース電極81が接続されている。
【0014】
ドリフト層11の主面に対して垂直な方向からみて、トレンチ20およびトレンチ30は、図1(b)に示すように、略平行に延在している。トレンチ20およびトレンチ30が延在する方向を第1の方向とする。その結果、ゲート電極26、ゲート電極26の下側のフィールドプレート電極22、およびゲート電極26に隣接するゲート電極32は、それぞれ略平行に、ストライプ状に延在している。
【0015】
それぞれのゲート電極26は、半導体装置1の端部において、ゲートコンタクト90を経由して、共通のゲート配線92に接続されている。それぞれのゲート電極32は、ゲート電極32の端部において、ゲートコンタクト91を経由して、ゲート配線92に接続されている。それぞれのフィールドプレート電極22は、フィールドプレート電極22の端部において、ゲートコンタクト93を経由して、共通のフィールドプレート配線94に接続されている。」
(イ)「【0038】
半導体装置1を製造する方法について説明する。
図7は、半導体装置の製造過程を説明する要部断面模式図であり、(a)は、ドリフト層を形成する工程図、(b)は、トレンチを形成する工程図である。
【0039】
まず、図7(a)に示すように、半導体基板であるドレイン層10を準備し、ドレイン層10の上に、エピタキシャル成長法によってドリフト層11を形成する。続いて、トレンチ20を形成するためのマスク95をドリフト層11の上に選択的に形成する。
【0040】
次に、図7(b)に示すように、マスク95から開口されたドリフト層11にエッチング処理を施す。エッチング処理は、例えば、反応性イオンエッチング処理である。これにより、ドリフト層11内に、トレンチ20が選択的に形成される。
【0041】
図8は、半導体装置の製造過程を説明する要部断面模式図であり、(a)は、フィールドプレート絶縁膜を形成する工程図、(b)は、フィールドプレート電極を形成する工程図である。
【0042】
次に、図8(a)に示すように、トレンチ20内を高温酸化雰囲気に晒し、トレンチ20の内壁およびドリフト層11の表面にフィールドプレート絶縁膜21を形成する。
次に、図8(b)に示すように、トレンチ20内にフィールドプレート絶縁膜21を介してポリシリコン層22Aを形成する。ポリシリコン層22Aの形成は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により行う。
【0043】
図9は、半導体装置の製造過程を説明する要部断面模式図であり、(a)は、マスクを形成する工程図、(b)は、トレンチを形成する工程図である。
【0044】
次に、ドリフト層11の上のフィールドプレート絶縁膜21、およびドリフト層11の上のポリシリコン層22Aをエッチングした後、図9(a)に示すように、トレンチ30を形成するためのマスク96をドリフト層11の上に選択的に形成する。
【0045】
次に、図9(b)に示すように、マスク96から開口されたドリフト層11にエッチング処理を施す。エッチング処理は、例えば、反応性イオンエッチング処理である。これにより、ドリフト層11内に、トレンチ30が選択的に形成される。トレンチ30は、それぞれのトレンチ20のあいだに形成される。その後、マスク96を除去する。
【0046】
図10は、半導体装置の製造過程を説明する要部断面模式図であり、(a)は、エッチバックの工程図、(b)は、ゲート絶縁膜を形成する工程図である。
【0047】
次に、図10(a)に示すように、トレンチ20内のフィールドプレート絶縁膜21およびポリシリコン層22Aを選択的にエッチバックする。トレンチ20内をエッチバックする深さは、およそトレンチ30の深さと同じにする。これにより、トレンチ20の下側に、フィールドプレート絶縁膜21を介してフィールドプレート電極22が形成される。
【0048】
次に、図10(b)に示すように、トレンチ30の内壁、トレンチ20の内壁、およびフィールドプレート電極22の上端を高温酸化雰囲気に晒す。これにより、フィールドプレート電極22の上側およびトレンチ20の内壁に、ゲート絶縁膜25が形成される。トレンチ30の内壁には、ゲート絶縁膜31が形成される。
【0049】
図11は、半導体装置の製造過程を説明する要部断面模式図であり、(a)は、ゲート電極を形成する工程図、(b)は、エッチバックの工程図である。
【0050】
次に、図11(a)に示すように、トレンチ20、30内に、ポリシリコン層35を埋め込む。ポリシリコン層35の形成は、例えば、CVD法により行う。これにより、トレンチ20内には、ゲート絶縁膜25を介してゲート電極26が形成される。トレンチ30内には、ゲート絶縁膜31を介してゲート電極32が形成される。
【0051】
次に、図11(b)に示すように、トレンチ20、30の上、およびドリフト層11の上に形成されたポリシリコン層の不要部分をエッチバックにより除去する。ポリシリコン層の不要部分のエッチバックは、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により行ってもよい。これにより、ゲート電極26、フィールドプレート電極22、およびゲート電極32が形成する。この後、ドリフト層11の上に形成されたゲート絶縁膜31については除去し、ドリフト層11の表面を露出させる(図示しない)。
【0052】
図12は、半導体装置の製造過程を説明する要部断面模式図であり、(a)は、ベース領域およびソース領域を形成する工程図、(b)は、層間絶縁膜、ソース電極、およびドレイン電極を形成する工程図である。
【0053】
次に、図12(a)に示すように、ドリフト層11の表面に、p形の不純物を注入する。これにより、ドリフト層11の表面にベース領域12が形成される。この際、ベース領域12の底面は、ゲート電極26、32の下端よりも上側に位置するように調整される。続いて、ベース領域12の表面に、トレンチ20、30に接するソース領域13を選択的に形成する。
【0054】
次に、図12(b)に示すように、ゲート電極26、32の上側に、層間絶縁膜97を形成する。この後、ドレイン電極80、ソース電極81を形成する。このような製造過程によって、図1に示す半導体装置1が形成される。
次に、他の実施の形態について説明する。以下に示す実施の形態では、半導体装置1と同一の機能を有する部材に同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜詳細な説明を省略する。」
イ 引用例1発明について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「パワーMOSFETの製造方法であって、
ドレイン層10の上に、エピタキシャル成長法によってドリフト層11を形成し、
トレンチ20を形成するためのマスク95をドリフト層11の上に選択的に形成し、
マスク95から開口されたドリフト層11にエッチング処理を施し、ドリフト層11内に、トレンチ20を選択的に形成し、
トレンチ30を形成するためのマスク96をドリフト層11の上に選択的に形成し、
マスク96から開口されたドリフト層11にエッチング処理を施し、ドリフト層11内に、トレンチ30を選択的に形成し、トレンチ30は、それぞれのトレンチ20のあいだに形成される、
ことを含み、
前記パワーMOSFETは、
複数のトレンチ20およびトレンチ20の間に設けられたトレンチ30は略平行に延在し、
トレンチ30の下端は、トレンチ20の下端よりも浅い位置にあり、
ゲート電極26は、トレンチ20内において、ゲート絶縁膜25を介して設けられおり、
ゲート電極32は、トレンチ30内において、ゲート絶縁膜31を介して設けられている、
パワーMOSFETの製造方法。」
(2)引用例2
ア 引用例2の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許出願公開第2012/0043602号明細書(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「[0023] The key fabrication process techniques for making the new MOSFET described in this invention are also disclosed here. The first process technique is demonstrated through the sequence in FIGS. 7 to 18 .
[0024] Starting with an N+ substrate, an N- EPI layer with an initial doping concentration of N1 is grown on the substrate. This is followed by the oxidation process.
[0025] The first trench mask is applied to form the hard mask for trench etch (FIG. 7). The silicon etch step is carried out to create the trench followed by sacrificial oxidation step.
[0026] Then, the P-type dopant (e.g., Boron) is implanted into the trench bottom (FIG. 8). Note that multiple implant steps with different implant energy and dose can be utilized here.
[0027] After removal of the hard mask, a field oxide is grown on the silicon surface and the trench sidewall (FIG. 9).
[0028] The polysilicon deposition fills the trench followed by the polysilicon recess etchback as shown in FIG. 10 . At this point, the N-type dopant (e.g., Phosphorous) is implanted into the recessed trench sidewall to locally enhance the doping concentration of EPI layer (FIG. 10). Again, the multiple implant steps with different implant energy and dose can be utilized here also. A thermal anneal can be employed here to spread out this N-type dopant to form the N 2 layer.
[0029] Then, a second trench mask is employed to define the second trench opening (FIG. 11).
[0030] Next, the silicon is etched to form the second trench (FIG. 12).
[0031] After removal of the photoresist, an oxide filling and planarization process are carried out to fully fill all of the trenches (FIG. 13).
[0032] Using the active mask, the remaining oxide is etched further down into trench forming the trench bottom oxide layer (BOX) (FIGS. 14 a and 14 b). Note that, depending on the depth of the first polysilicon layer inside the deeper trench, the BOX layer can still cover the polysilicon layer as shown in FIG. 14 a, or can be completely removed as shown in FIG. 14 b.
[0033] Next, the gate oxide is grown along the trench sidewall (FIG. 15).
[0034] Then, the second polysilicon deposition/fill (FIG. 16) and etchback processes (FIG. 17) are performed for creating the gate polysilicon region. From here, the rest of the process steps are similar to the those described in copending Publication Nos. 2008/0073707 and 2009/0206924. The final device structure is displayed in FIG. 18 .」
(当審訳:[0023] 本発明において記載した新たなMOSFETを製造するための主要製造プロセス技術はここに開示されている。
[0024] N+基板から始めて、N1の初期のドーピング濃度を有するN-EPI層を基板上に成長させる。これは、酸化工程により実行される。
[0025] 第1トレンチマスクは、トレンチのエッチング用のハードマスクを形成する(図7)。シリコンエッチング工程が実行されてトレンチが形成され、続いて犠牲酸化工程が行われる。
[0026] P型ドーパント(例えば、ホウ素)がトレンチの底部に注入される(図8)。異なる注入エネルギー及びドーズ量を有する複数の注入工程を利用することもできる。
[0027] ハードマスクを除去した後、シリコンの表面とトレンチ側壁上にフィールド酸化膜を成長させる(図9)。
[0028] 図10に示すように、ポリシリコンの堆積によってトレンチが充填され、続いてポリシリコンの凹部エッチバックが行われる。ここで、N型ドーパント(例えば、リン)を凹部トレンチ側壁に注入し、EPI層のドーピング濃度が局部的に強化される(図10)。異なる注入エネルギー及びドーズ量を有する複数の注入工程がここでも利用できる。アニールはここでN型ドーパントを拡散させN2層を形成するのに使用することができる。
[0029] 次に、第2のトレンチマスクを用いて第2のトレンチ開口を画定する(図11)。
[0030] 次に、シリコンをエッチングして第2のトレンチを形成する(図12)。
[0031] フォトレジストを除去した後、全てのトレンチを完全に充填する酸化物充填および平坦化工程を行う(図13)。
[0032] アクティブマスクを使用して、残りの酸化物をトレンチ底部酸化物層を形成するトレンチ内(BOX)に更にエッチングする(図14(a)および図14(b))。より深いトレンチ内部の第1のポリシリコン層の深さに応じて、図14aに示すようにBOX層は依然としてポリシリコン層を覆うことができ、また、図14bに示すように除去することができる。
[0033] ゲート酸化物をトレンチの側壁に沿って成長させる(図15)。
[0034] そして、第2のポリシリコンの堆積/充填(図16)およびエッチバック工程(図17)は、ゲート・ポリシリコン領域を形成するごとに実行される。ここから以降の工程は、同時係属中の公開第2008/0073707及び第2009/0206924号に記載されているものと同様である。最終デバイス構造は、図18に表示される。)
(イ)「[0035] The second manufacturing process is demonstrated through FIGS. 19 to 26 . Starting with an N+ substrate, an N- epitaxial layer is grown, followed by the oxidation or oxide deposition.
[0036] A trench mask is applied to form the hard mask for silicon trench etch (FIG. 19).
[0037] After the silicon trench etch, a second mask is used to cover the trenches shown on the left and right, and then a silicon etch is utilized again to produce the deep trench in the center, followed by P-type dopant implantation (FIG. 20).
[0038] After removal of the photoresist and the oxide hard mask, a field oxide is grown on the silicon surface and the trench sidewall (FIG. 21).
[0039] The polysilicon fill/planarization and the recess etch are employed to form the structure shown in FIG. 22 . Note that the polysilicon layer in the shallow trench should be completely etched away at this process step.
[0040] Next, oxide filling and planarization are used to fully fill all of the trenches (FIG. 23).
[0041] After the oxide etchback to form the BOX layer, an N-type dopant (e.g., Phosphorous) is implanted into the recessed trench sidewall to locally enhance the doping concentration of EPI layer (FIG. 24). The rest of the process steps are generally the same as described above: FIG. 25 shows oxide growth and gate polysilicon fill; FIG. 26 shows gate poly etchback, etc.」
(当審訳:[0035] 第2の製造工程を図19から図26で示す。N+基板からはじめて、酸化又は酸化物の堆積によってN-エピタキシャル層を成長させる。
[0036] トレンチマスクは、シリコントレンチエッチング(図19)用のハードマスクを形成する。
[0037] シリコントレンチエッチングの後、第2のマスクを使用して左右に示されるトレンチを覆い、次にシリコンエッチングを利用して中央部に深いトレンチを形成し、続いてP型ドーパントの注入を行う(図20)。
[0038] フォトレジストおよび酸化物ハードマスクを除去したのち、シリコン表面とトレンチ側壁上にフィールド酸化膜を成長させる(図21)。
[0039] ポリシリコンの充填/平坦化および凹部のエッチングは、図22に示す構造を形成するために使用される。シャロートレンチ内のポリシリコン層はこの工程で完全にエッチングされなければならない。
[0040] 次に、使用されるすべてのトレンチを完全に酸化物で充填し、平坦化する(図23)。
[0041] BOX層を形成する酸化物をエッチバックしたのち、N型ドーパント(例えば、リン)を、EPI層のドーピング濃度が局所的に強化されるように、トレンチの側壁に注入する。この工程以降の工程は上述したものとほぼ同じです。図25は、酸化物の成長およびゲートポリシリコン充填部を示す図。図26は、ゲートポリシリコンのエッチバックなどが示されている。)
(ウ)FIG.18を参照すると、製造されたMOSFETは、深さの異なるトレンチが交互に並んでいることがわかる。
イ 引用例2記載事項について
上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の事項が記載されているものと認められる。
「交互に並んだ、深さの異なるトレンチを備える、MOSFETを製造する際に、次の2つの製造工程のうち、いずれか一方の製造工程により、深さの異なるトレンチを形成すること。
・第1の製造工程
第1トレンチマスクを形成し、シリコンエッチング工程が実行されてトレンチを形成し、
次に、第2のトレンチマスクを形成し、シリコンをエッチングして第2のトレンチを形成する。
・第2の製造工程
トレンチマスクを形成し、シリコンエッチング工程が実行されてトレンチを形成し、
シリコンエッチング工程の後、第2のマスクを使用して左右に示されるトレンチを覆い、次にシリコンエッチングを利用して中央部に深いトレンチを形成する。」
2 対比・判断
(1)本願発明と引用例1発明との対比
ア 引用例1発明の「パワーMOSFET」はトレンチ20および30が形成されているので、本願発明の「トレンチMOSFET」に相当する。
イ 引用例1発明では、パワーMOSFETのトレンチ20および30内にゲート絶縁膜25および31を介してゲート電極26および31が設けられているので、引用例1発明の「ゲート絶縁膜25および31」および「ゲート電極26および31」は、本願発明の「ゲート構造」に相当する。してみると、引用例1発明と本願発明は、「前記複数のトレンチがそれぞれ、トレンチMOSFETのゲート構造を備える方法。」である点で共通する。
ウ そうすると、本願発明と引用例1発明は、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「複数のトレンチがそれぞれ、トレンチMOSFETのゲート構造を備える方法。」
[相違点]
本願発明が、「半導体基板に複数のトレンチを第1の深さまで形成するステップであって、前記複数のトレンチの一部のトレンチが互いに平行である、ステップと、
前記複数のトレンチの1つおきのトレンチをマスキングするステップと、
前記複数のトレンチのマスキングしていないトレンチの深さを第2の深さまで深くするステップと、を含」んでいるのに対して、引用例1発明はそれらのステップを含んでいない点。
(2)相違点についての当審判断
引用例2の「第2の製造工程」の「トレンチマスクを形成し、シリコンエッチング工程が実行されてトレンチを形成」すること、および、「シリコンエッチング工程の後、第2のマスクを使用して左右に示されるトレンチを覆い、次にシリコンエッチングを利用して中央部に深いトレンチを形成する」ことは、それぞれ、本願発明の「半導体基板に複数のトレンチを第1の深さまで形成するステップであって、前記複数のトレンチの一部のトレンチが互いに平行である、ステップ」、および、「前記複数のトレンチの1つおきのトレンチをマスキングするステップと、前記複数のトレンチのマスキングしていないトレンチの深さを第2の深さまで深くするステップ」に相当する。
また、引用例2の「第1の製造工程」の「第1トレンチマスクを形成し、シリコンエッチング工程が実行されてトレンチを形成」すること、および、「第2のトレンチマスクを形成し、シリコンをエッチングして第2のトレンチを形成する」ことは、それぞれ、引用例1発明の「トレンチ20を形成するためのマスク95をドリフト層11の上に選択的に形成し、マスク95から開口されたドリフト層11にエッチング処理を施し、ドリフト層11内に、トレンチ20を選択的に形成」すること、および、「トレンチ30を形成するためのマスク96をドリフト層11の上に選択的に形成し、マスク96から開口されたドリフト層11にエッチング処理を施し、ドリフト層11内に、トレンチ30を選択的に形成し、トレンチ30は、それぞれのトレンチ20のあいだに形成」することに相当する。
そして、引用例2に記載されているように、「第1の製造工程」と「第2の製造工程」は、「交互に並んだ、深さの異なるトレンチを備える、MOSFETを製造する際に、深さの異なるトレンチを形成する」方法として当業者が適宜選択する方法であるから、引用例1発明の「パワーMOSFETであって、トレンチ20およびトレンチ30は略平行に延在し、トレンチ30の下端は、トレンチ20の下端よりも浅い位置にあ」る、トレンチを形成する際に、引用例1発明の方法に代え、引用例2の「第2の製造工程」を採用し、本願発明の「半導体基板に複数のトレンチを第1の深さまで形成するステップであって、前記複数のトレンチの一部のトレンチが互いに平行である、ステップと、前記複数のトレンチの1つおきのトレンチをマスキングするステップと、前記複数のトレンチのマスキングしていないトレンチの深さを第2の深さまで深くするステップと、を含」むようにすることは、当業者が容易に想到する事項である。
(3)小括
したがって、本願発明は、引用例1発明および引用例2に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求人の主張について
審判請求人は,平成29年4月6日付の審判請求書の「3-2.本願発明が特許されるべき理由」において,
「引用文献1に記載の発明においては、深いトレンチ20内のフィールドプレート絶縁膜21及びポリシリコン層22Aのエッチバックは、浅いトレンチ30のエッチングと同じプロセスによって同時に行われることにより、深いトレンチ20のエッチバックされた深さは、浅いトレンチ30の深さと実質的に同一になっているものと思料致します(引用文献1の段落0047~0048、図9、図10参照)。そして、引用文献1に記載の発明においては、MOSFETの重要かつ基礎的な機能に基づき、垂直トレンチ内の全てのゲートが同一の深さに存在することが非常に望ましくなります。もし、トレンチ20内のゲートとトレンチ30内のゲートが互いに異なる深さに存在すると、MOSFETの複数のチャネル領域における電流が異なってしまうという望ましくない状態につながります。そのため、引用文献1に記載の発明においては、上述のようなプロセスを採用することによって、トレンチ20内のゲート電極26と、トレンチ30内のゲート電極32とを、同じ深さに形成しているものと思料致します。
それに対して、引用文献2に記載の製造方法では、浅いトレンチと深いトレントの中に同じ深さに電極を形成することは意図されておらず、また、浅いトレンチと深いトレントの中に同じ深さに電極は形成されないものと思料致します。さらに、引用文献2に記載の製造方法では、深いトレンチ内の上部電極はフィールドプレートであるのに対して、浅いトレンチ内の電極は、MOSFETのゲートであるものと思料致します。そのため、引用文献2に記載の製造方法では、浅いトレンチと深いトレントの中に同じ種類の電極を形成することは意図されておらず、また、浅いトレンチと深いトレントの中に同じ種類の電極は形成されないものと思料致します。
そのため、引用文献1の発明を形成する方法として引用文献2に記載の方法を用いると、引用文献1の発明において非常に望まれている構成、即ち、トレンチ20内とトレンチ30内に、同じ種類の電極であるゲート電極26とゲート電極32が同じ深さに形成されている構成は得られないものと思料致します。そのため、当業者が、引用文献1の発明を形成する方法として引用文献2に記載の方法を用いたとしても本願請求項1、8に係る発明の構成とはならないものと思料致します。また、当業者が、引用文献1の発明を形成する方法として引用文献2に記載の方法を用いると、引用文献1に記載の発明の構成が望ましくない態様に変更されるため、そのような置き換えを行うことには阻害要因が存在するものと思料致します。」
と主張している。
しかしながら、引用文献1の段落【0045】~【0048】には,ドリフト層11をエッチングしてトレンチ30を形成した後,トレンチ20内をエッチバックすることが記載されていることから、上記主張の「引用文献1に記載の発明においては、深いトレンチ20内のフィールドプレート絶縁膜21及びポリシリコン層22Aのエッチバックは、浅いトレンチ30のエッチングと同じプロセスによって同時に行われる」ことは記載されていない。また、引用文献1の段落【0045】の「トレンチ20内をエッチバックする深さは、およそトレンチ30の深さと同じにする。これにより、トレンチ20の下側に、フィールドプレート絶縁膜21を介してフィールドプレート電極22が形成される。」の記載において、トレンチ20内をエッチバックする深さをトレンチ30の深さと同じにする理由は、その深さより下にフィールドプレート電極22を形成するためであり、トレンチ20内のゲート電極26とトレンチ30内のゲート電極32とを同じ深さにすることは何等記載されていない。
そして、引用文献1の段落【0012】には、トレンチ20内の下側にフィールドプレート電極22、上側にゲート電極26を設けることが記載されていることから、引用例1発明において引用文献2の「第2の製造工程」を採用して深さの異なるトレンチを形成したとしても、深さの深いトレンチ20内の下側にはフィールドプレート電極22を設けられ、上側にはゲート電極26を設けられることは明らかである。
よって、上記請求人の主張は,引用文献1の記載に基づかないものであり、また、引用例1発明に対して引用文献2に記載された「第2の製造工程」を採用することが阻害要因に該当するとは認められないので、上記請求人の主張を採用することはできない。
また、本願発明は、
「半導体基板に複数のトレンチを第1の深さまで形成するステップであって、前記複数のトレンチの一部のトレンチが互いに平行である、ステップと、
前記複数のトレンチの1つおきのトレンチをマスキングするステップと、
前記複数のトレンチのマスキングしていないトレンチの深さを第2の深さまで深くするステップと、を含み、
前記複数のトレンチがそれぞれ、トレンチMOSFETのゲート構造を備える方法。」
であり、「トレンチMOSFETのゲート構造」について、全てのゲート電極が同じ深さであるとの特定はされていないないから、その点においても、請求人の主張を採用することはできない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1および2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-004924