特許異議申立
2016-701138
容器詰トマト濃縮ソース
- 審判番号
- 2016-701138
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-165457
- 登録番号
- 特許第5941881号(P5941881)
- 請求日
- 2016年12月13日
- 審決日
- 2017年02月23日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】キッコーマン株式会社
- 【権利者代理人】栗原 浩之
- 【権利者代理人】山▲崎▼ 雄一郎
- 【権利者】日本デルモンテ株式会社
- 【権利者代理人】栗原 浩之
- 【権利者代理人】山▲崎▼ 雄一郎
- 【異議申立人】川田 真衣
- 【異議申立人代理人】桐山 大
- 審判長/審判官
- 審判長 千壽 哲郎
- 審判官 紀本 孝
- 審判官 佐々木 正章
- 分類
- P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L) / P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5941881号発明「容器詰トマト濃縮ソース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5941881号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5941881号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成25年8月8日に特許出願され、平成28年5月27日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人川田真衣より特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第5941881号の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1~4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】(本件発明1)
容器に充填してなる容器詰トマト濃縮ソースであって、
トマトが質量比で2~8倍に濃縮されたトマト濃縮物と、酢酸と、を含み、
前記トマト濃縮物の含有量が30~50質量%であり、前記酢酸の濃度が3.0~5.0質量%である
ことを特徴とする容器詰トマト濃縮ソース。
【請求項2】(本件発明2)
前記酢酸が食酢由来であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰トマト濃縮ソース。
【請求項3】(本件発明3)
鳥、牛、豚、魚から選択される少なくとも一種の食肉及び/又はその骨から抽出されたブイヨンをさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰トマト濃縮ソース。
【請求項4】(本件発明4)
たまねぎ又はニンニクの少なくとも1つの野菜をさらに含有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の容器詰トマト濃縮ソース。
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、以下の理由により、本件発明1~4についての特許を取り消すべき旨主張している。
(申立理由1)
請求項1~4に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由2)
請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(申立理由3)
本件発明1~4は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきものである。
(申立理由4)
本件発明1~4は、甲第2号証~甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきものである。
甲第2号証:全国公正取引協議会連合会ホームページ(最新改正施行日履歴 H24.10.04の「トマト加工品の表示に関する公正競争規約」のページ)、<URL:http://www.jfftc.org/rule_kiyaku/kiyaku_hyoji.html>
甲第3号証:村松安男、「高品質・高糖度のトマトつくり-低水分管理のしくみと実際-」、一般社団法人農山漁村文化協会、1992年8月25日、p.13-15
甲第4号証:松田敏生、外3名、「有機酸類の抗菌作用-各種pHにおける最小発育阻止濃度の検討-」、日本食品工業学会誌、第41巻、第10号、平成6年10月15日、p.687-701
第4 判断
1 申立理由1について
特許異議申立人は、本件明細書の実施例を参照しても「トマトが質量比で2~8倍に濃縮されたトマト濃縮物」が「保存性に優れた容器詰トマト濃縮ソースを提供」しているか否かを理解できず、実施例において用いたトマト濃縮物[a1]及び[a2]の「質量比」が開示されていないから再現による検証も困難であるため、課題「保存性に優れた容器詰トマト濃縮ソースを提供すること」及びその解決手段「トマトが質量比で2~8倍に濃縮されたトマト濃縮物と、酢酸と、を含み、前記トマト濃縮物の含有量が30~50質量%であり、前記酢酸の濃度が3.0~5.0質量%であることを特徴とする容器詰トマト濃縮ソース」との実質的関係を当業者が理解することはできない旨主張し、また、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された官能評価について理解できない旨主張する。(特許異議申立書8~13ページ)
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明に「例えば家庭で保存される時(以下、保存時)には、酢酸の濃度が比較的高い状態にあるため、静菌作用によって雑菌の繁殖を抑えることができる。」(【0008】)と記載され、実施例において保存時の酢酸濃度が3.0質量%以上のものは保存性が○であることを参酌すれば、「酢酸の濃度が3.0~5.0質量%」という、酢酸の濃度が比較的高い状態にあることで、雑菌の繁殖が抑えられ、「保存性に優れた容器詰トマト濃縮ソースを提供すること」との課題を解決できることが理解できる。
明細書に記載された実施例や比較例を再現し得なくとも、本件発明1~4を実施する上での支障とはならないし、「美味しさ」、「酸味のなさ」及び「トマト感」の各項目についての評価基準の記載がなく、【0065】【表3】に示された上記各項目毎の評価結果に理解しにくいところがあるとしても、総合評価の評価基準は【0063】に記載され、その結果が【0064】【表2】に示されているから、当業者は本件発明1~4を実施できるといえる。
なお、「美味しさ」、「酸味のなさ」及び「トマト感」の各項目についての評価基準は、総合評価の評価基準と同様のものと理解することができ、総合評価におけるトマト感についてのコメントは、「トマト感」個別の項目について述べたものではなく、計算上のトマト含有量が同じ場合に「トマト感」の官能評価結果が同じでなければならないとすべき理由もないから、【0065】【表3】に示された結果が理解できないものであるとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張は理由がなく、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
2 申立理由2について
特許異議申立人は、課題と解決手段との実質的関係を当業者が理解することはできないこと、発明の詳細な説明に記載された官能評価について理解できないことから、本件発明1~4は本件明細書の発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものではない旨主張し、また、「使用時の希釈倍率に基づいてトマト濃縮物や酢酸の割合を所定範囲に調節すること」が特許請求の範囲に反映されていないことから、発明特定事項が欠如している旨主張する。(特許異議申立書14~16ページ)
しかし、課題と解決手段との実質的関係や、発明の詳細な説明に記載された官能評価は、上記「1 申立理由1について」で検討したように、当業者が理解できるものであり、「容器詰トマト濃縮ソース」という物の発明について、その使用態様までを特定する必要はなく、トマト濃縮物や酢酸の含有割合は請求項1に特定されているから、発明特定事項が欠如しているともいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張は理由がなく、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項1号の要件を満たしていないとすることはできない。
3 申立理由3、4について
(1)甲第2号証~項第4号証の記載
甲第2号証には、「無塩可溶性固形分が8パーセント以上の濃縮トマトに、食塩及び香辛料を加えて調味し、食酢等を加えた、可溶性固形分が8パーセント以上25パーセント未満のトマトソース。」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
甲第3号証には、糖度4~6度の普通トマトが記載されている。
甲第4号証には、酢酸の抗菌作用について記載されており、pH7.0のとき、酢酸濃度が3.5%以上で菌の生育が抑制されることが示されている。
(2)判断
ア.本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも、本件発明1は「酢酸の濃度が3.0~5.0質量%である」のに対し、甲2発明は食酢の濃度が特定されていない点で相違する。
特許異議申立人は、甲第4号証を根拠に、酢酸の濃度が3.0~5.0質量%であることは甲第2号証に記載されているに等しいと主張する(特許異議申立書21~22ページ)が、甲第2号証には、酢酸濃度については記載がなく、酢酸の抗菌作用を利用する旨の記載もないのであるから、上記主張は採用できない。
そして、甲第2号証には食酢を加える旨の記載があるものの、酢酸の抗菌作用を利用することは記載されていないから、酢酸の抗菌作用に着目して甲第4号証に記載された酢酸濃度を採用する動機付けがあるとはいえない。加えて、酢酸濃度が高くなれば酸味が強くなることは明らかであるところ、トマトソースにおいて、3.0~5.0質量%の酢酸濃度が通常の範囲内であるとする証拠はなく、むしろ、本件明細書の記載によれば使用時の酢酸濃度が1.5質量%だと酸味が強く官能評価が×であることから、3.0~5.0質量%の酢酸濃度は、トマトソースにおける通常の範囲内とはいえない高濃度と認められる。本件発明1は使用時に希釈することを前提としていることから上記酢酸濃度を採用したものであるが、甲第2号証には、食酢等を加えたトマトソースを希釈して使用することは記載されていないから、酢酸の濃度を3.0~5.0質量%とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、甲第3号証及び甲第4号証を参酌しても、甲2発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ.本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲2発明ではなく、甲2発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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