特許異議申立
2016-701012
硬化性組成物
- 審判番号
- 2016-701012
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-263400外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月24日
- 審決日
- 2017年09月07日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.537-YAA(C08G) / P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5907708号発明「硬化性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5907708号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
特許第5907708号の請求項1ないし5、7、10ないし13に係る特許を維持する。
特許第5907708号の請求項6、8及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
特許第5907708号の請求項1ないし13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年12月1日(優先権主張 平成23年4月13日)に特許出願され、平成28年4月1日に設定登録され、同年4月26日に特許公報が発行され、その後、同年10月24日付けで特許異議申立人谷口真魚(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年1月30日付けで請求項1ないし13に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月4日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年5月15日付けで意見書が提出され、同年5月25日付けで請求項1ないし8、10ないし13に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月26日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年9月1日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、エタノール脱離型反応性ケイ素基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)」と記載されているのを、
「主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、トリエトキシシリル基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)を含み」と記載されているのを、
「主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)と、
硬化触媒として、4価の錫化合物(C)であるジオクチル錫化合物を含み」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「エタノール脱離型反応性ケイ素基を導入して得られる」と記載されているのを、
「トリエトキシシリル基を導入して得られる」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれかに記載の硬化性組成物」と記載されているのを、
「請求項1~5のいずれかに記載の硬化性組成物」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9のいずれかに記載の1液型硬化性組成物」と記載されているのを、
「請求項1~5、7、10のいずれかに記載の1液型硬化性組成物」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1~10のいずれかに記載の1液型硬化性組成物」と記載されているのを、
「請求項1~5、7、10のいずれかに記載の1液型硬化性組成物」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1~10のいずれかに記載の硬化性組成物」と記載されているのを、
「請求項1~5、7、10のいずれかに記載の硬化性組成物」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1~10のいずれかに記載の硬化性組成物」と記載されているのを、
「請求項1~5、7、10のいずれかに記載の硬化性組成物」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
ア 「エタノール脱離型反応性ケイ素基」を「トリエトキシシリル基」と減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1の「トリエトキシシリル基」は、本件特許明細書の段落【0009】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項1は、「エタノール脱離型反応性ケイ素基」を「トリエトキシシリル基」と減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2) 訂正事項2
ア 「主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)」に「硬化触媒として、4価の錫化合物(C)であるジオクチル錫化合物を含み」と付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2の「硬化触媒として、4価の錫化合物(C)であるジオクチル錫化合物を含み」は、本件特許明細書の段落【0078】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項2は、「主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)」に「硬化触媒として、4価の錫化合物(C)であるジオクチル錫化合物を含み」と付加して減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(3) 訂正事項3
ア 「エタノール脱離型反応性ケイ素基」を「トリエトキシシリル基」と減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1の「トリエトキシシリル基」は、本件特許明細書の段落【0009】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項1は、「エタノール脱離型反応性ケイ素基」を「トリエトキシシリル基」と減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(4) 訂正事項4
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項4は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項4は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(5) 訂正事項5、8ないし11
ア 訂正前の請求項6、8及び9の削除したことに伴い、引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 明瞭でない記載の釈明をするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(6) 訂正事項6
ア 訂正事項6は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項6は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項6は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(7) 訂正事項7
ア 訂正事項7は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項7は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 訂正事項7は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(8) 一群の請求項について
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1ないし13について、請求項2ないし13は、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし13に対応する訂正後の請求項1ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明13」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、下線は訂正箇所を示すものである。
「【請求項1】
主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、トリエトキシシリル基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)と、
主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)と、
硬化触媒として、4価の錫化合物(C)であるジオクチル錫化合物を含み、
有機重合体(A)の配合部数が、有機重合体(B)100重量部に対して30~80重量部であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
有機重合体(A)の主鎖がポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
有機重合体(A)が、1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤を用いて、複合金属シアン化物錯体触媒存在下でプロピレンオキシドを反応させたポリオキシプロピレン系重合体にトリエトキシシリル基を導入して得られることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項4】
1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤が炭素数3~8のアルコールであることを特徴とする、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤がn-ブタノールであることを特徴とする、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
主鎖骨格が分岐状のポリオキシアルキレン系重合体であり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する
有機重合体を含まない、請求項1~5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
硬化性組成物が1液型の硬化性組成物であることを特徴とする、請求項1~5、7のいずれかに記載の1液型硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~5、7、10のいずれかに記載の硬化性組成物を用いた建築用シーリング材。
【請求項12】
請求項1~5、7、10のいずれかに記載の硬化性組成物を用いたサイディングボードに施工されるシーリング材。
【請求項13】
請求項1~5、7、10のいずれかに記載の硬化性組成物を用いた石目地用シーリング材。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件特許発明1ないし5、7、8、10、11は、下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件特許発明12及び13は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証、甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許の請求項1ないし5、7、8、10ないし13に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
甲第1号証 特開平5-59267号公報
甲第6号証 特開2004-107608号公報
甲第7号証 特開2009-108246号公報
第5 取消理由(決定の予告)について判断
1 甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、「硬化性組成物」に関し、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】分子鎖に平均して1.5以上の加水分解性珪素基を有する分子量8000~50000の加水分解性珪素基含有の高分子重合体(I)及びその重合体100重量部に対し、分子鎖に平均して0.5~1.5未満の加水分解性珪素基を有する分子量300~8000未満の主鎖がポリエーテルである加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)を1~200重量部を含有する室温硬化性組成物。
【請求項2】高分子重合体(I)の主鎖が本質的にポリエーテルである請求項1の室温硬化性組成物。」
(2)「【0012】加水分解性珪素基含有の高分子重合体(I)は下記に述べるように官能基を有するポリエーテル化合物の末端に加水分解性珪素基を導入して製造される。
【0013】ポリエーテル化合物は、アルカリ金属触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、金属ポルフィリンなど触媒の存在下少なくとも1個の水酸基を有するヒドロキシ化合物などの開始剤にアルキレンオキシドなどのモノエポキシドなどを反応させて製造する水酸基末端のものが好ましい。ポリエーテル化合物の官能基数は2以上が好ましく、特に、2または3が好ましい。
【0014】ポリエーテル化合物としては、具体的にはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレンおよびこれらの共重合物があげられる。」
(3)「【0016】本発明の加水分解性珪素基としては、湿分で加水分解および架橋反応が起こる珪素基ならばよく、一般に知られている加水分解性珪素基が使用できる。
【0017】例えば、一般式(A)で表されるシリル基がよい。
-SiXa R3-a ・・・(A)
【0018】式中Rは炭素数1~20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、好ましくは炭素数8以下のアルキル基、フェニル基やフルオロアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等である。
【0019】Xは加水分解性基であり、たとえばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基、酸アミド基、ハイドライド基などがある。
【0020】これらのうち炭素原子を有する加水分解性基の炭素数は6以下が好ましく、特に4以下が好ましい。好ましい加水分解性基は炭素数4以下の低級アルコキシ基、特にメトキシ基やエトキシ基、プロポキシ基、プロペニルオキシ基等が例示できる。aは1、2または3であり、特に2または3であることが好ましい。」
(4)「【0028】加水分解性珪素基数は加水分解性珪素基含有の高分子重合体(I)の分子鎖中に平均して1.5~8特に1.6~4であることが好ましい。」
(5)「【0032】該ポリエーテルモノオールは炭素数1~20の脂肪族、脂環族および芳香族のアルコール、チオアルコール、2級アミン、カルボン酸等を開始剤として、上記公知の方法でアルキレンオキシドを開環重合させて得られる。」
(6)「【0034】本発明で使用する加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)における加水分解性基数は分子鎖中に平均して0.5~1.5未満であり、特に0.5~1.2が好ましい。
【0035】本発明で使用する加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)の分子量としては300~8000未満が好ましい。該化合物の分子量が8000以上の場合は、減粘剤としての効果が低くなるため好ましくない。特に300~6000が好ましい。もっとも好ましい分子量は2000~4000である。
【0036】本発明では加水分解性珪素基含有の高分子重合体(I)100重量部に対して、加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)を1~200重量部使用する。好ましくは1~100重量部、特に1~80重量部が好ましい。
【0037】本発明の組成物では、公知の種々の硬化触媒、充填剤、添加剤さらに必要ならば可塑剤等を含むことができる。
【0038】硬化触媒としては、各種の金属のカルボン酸塩やアセチルアセトナート錯体、アセト酢酸エステレート錯体、各種の酸および塩基物質が使用できる。具体的には、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛やジアルキルスズジカルボン酸塩、ジブチルスズビスアセチルアセトナート等の金属塩、及び有機アミン等があげられる。これらの触媒は単独あるいは併用して使用できる。」
(7)「【0042】
【実施例】以下に本発明の実施例をあげるが、これらに限定されるものではない。
[参考例1]2-エチルヘキサノールを開始剤として、特開平3-72527号公報記載の方法で複合金属シアン化物錯体触媒存在下にプロピレンオキシドを反応させてポリオキシプロピレンモノオールを製造し、次いで末端水酸基にアリルクロライドを反応させ不飽和基を導入した後、更にメチルジメトキシシランを反応させて、主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端基として、メチルジメトキシシリルプロピル基を有する分子量3200の添加剤Aを合成した。添加剤Aの粘度は25℃で620cpsであった。
【0043】[参考例2]2-エチルヘキサノールを開始剤として、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下プロピレンオキシドを開環重合し、分子量3000のポリオキシプロピレンモノオールとし、更にこのモノオールに対して等モルのメチルジメトキシシリルプロピルイソシアネートと反応させ、添加剤Bを合成した。添加剤Bの粘度は25℃で750cpsであった。
【0044】[参考例3]アリルアルコールを開始剤として、プロピレンオキシドを開環重合し、分子量2000の片末端アリルオキシ基含有のポリオキシプロピレンモノオールとし、続いてトリエチルアミン存在下、水酸基と等モルの塩化ベンゾイルと反応させた。反応混合物を5倍量のヘキサンで希釈し水洗してトリエチルアミン塩酸塩を除き、ヘキサンを留去して一方の末端がベンゾイルオキシ基のモノアリル体を得た。次に、常法により、塩化白金酸を触媒として、メチルジメトキシシランと反応させ、アリル基をメチルジメトキシシリルプロピル基に変換して分子量2200の添加剤Cを合成した。添加剤Cの粘度は25℃で700cpsであった。
【0045】[実施例1~3]グリセリンを開始剤とし複合金属シアン化物錯体触媒の存在下プロピレンオキシドを反応させて得られたポリオキシプロピレントリオールの末端に1分子当り平均2. 4個のメチルジメトキシシリルプロピル基を導入した分子量30000のシリル基含有ポリオキシプロピレンポリエーテル化合物100重量部に対し、添加剤A~Cを30重量部及び硬化触媒としてジブチルスズジラウレート1重量部、添加剤としてフェノール系酸化防止剤1重量部を添加して、均一な混合物とし、硬化前の粘度、硬化後の物性(50%モジュラス、破断強度、伸び)、及び硬化物を溶剤に浸した時の重量変化(重量減少率)を測定した。
【0046】[比較例4~5]実施例1~3で添加剤A~Cの代わりに、添加剤を含まないもの及び添加剤として、ジオクチルフタレート(DOP)を含むものについて、実施例1~3と同様の検討を行った。得られた結果を表1に示す。」
(8)「【表1】
」
(9)「【0048】
【発明の効果】本発明により、加水分解性珪素基を有する湿分硬化性の樹脂に対して、その柔軟性を低下させることなく樹脂組成物の粘度を低下させることができる。しかも本発明で使用する添加剤は移行性が非常に低いため、本発明の組成物をシーリング剤等に使用した場合シーリング部周辺の汚染や接着性への悪影響を及ぼすことがない。」
2 甲第1号証に記載された引用発明
上記記載事項(1)ないし(9)を踏まえ、特に上記記載事項(1)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「分子鎖に平均して1.5以上の加水分解性珪素基を有する分子量8000~50000の加水分解性珪素基含有し、主鎖が本質的にポリエーテルである高分子重合体(I)及びその重合体100重量部に対し、分子鎖に平均して0.5~1.5未満の加水分解性珪素基を有する分子量300~8000未満の主鎖がポリエーテルである加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)を1~200重量部を含有する室温硬化性組成物。」
3 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、その機能、性質からみて、後者の「分子鎖に平均して1.5以上の加水分解性珪素基を有する分子量8000~50000の加水分解性珪素基含有し、主鎖が本質的にポリエーテルである高分子重合体(I)」と前者の「主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000でメチルジメトキシシリル基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)」とは、「主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000で加水分解性珪素基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)」の限りで相当し、同様に「分子鎖に平均して0.5~1.5未満の加水分解性珪素基を有する分子量300~8000未満の主鎖がポリエーテルである加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)」と「主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、トリエトキシシリル基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)」とは、「主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、加水分解性珪素基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)」の限りで相当する。
また、後者の「高分子重合体(I)」「の重合体100重量部に対し」「低分子化合物(II)を1~200重量部を含有する」ことは、前者の「有機重合体(A)の配合部数が、有機重合体(B)100重量部に対して30~80重量部であること」と重複一致する。
以上の点からみて、本件特許発明1と引用発明とは、
[一致点]
「主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、加水分解性珪素基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)と、
主鎖骨格が直鎖状で、且つ、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリ(メタ)アクリル系重合体、飽和炭化水素系重合体のいずれかであり、数平均分子量が5,000~50,000で加水分解性珪素基を1分子中に平均して1.2~5個含有する有機重合体(B)を含み、
有機重合体(A)の配合部数が、有機重合体(B)100重量部に対して30~80重量部であることを特徴とする硬化性組成物。」
である点で一致し、
次の点で相違する。
[相違点]
相違点1
有機重合体(B)の加水分解性珪素基について、本件特許発明1では、メチルジメトキシシリル基と特定しているのに対して、引用発明では、メチルジメトキシシリル基の上位概念である加水分解性珪素基と特定している点。
相違点2
有機重合体(A)の加水分解性珪素基について、本件特許発明1では、トリエトキシシリル基と特定しているのに対して、引用発明では、トリエトキシシリル基の上位概念である加水分解性珪素基と特定している点。
相違点3
本件特許発明1では、硬化触媒として、4価の錫化合物(C)であるジオクチル錫化合物を含むのに対して、引用発明では、これを含んでいない点。
イ 判断
(ア)上記相違点1について
上記摘示事項(3)に照らせば、甲第1号証には、加水分解性珪素基含有の高分子重合体(I)が記載され、当該高分子重合体(I)の加水分解性珪素基として「-SiXa R3-a 」が例示されており、当該式中のRは、メチル基やエチル基であること、当該式中のXは、加水分解性基としてのメトキシ基であること及び「a 」は、「2」で有り得ることから、加水分解性珪素基が実質的にメチルジメトキシシリル基である。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
仮にそうでないとしても、上記摘示事項(3)に照らせば、引用発明の加水分解性珪素基をメチルジメトキシシリル基とすることは、当業者が容易になし得たものである。
(イ)上記相違点2について
上記摘示事項(3)に照らせば、甲第1号証には、加水分解性珪素基含有の低分子化合物(II)が記載され、当該低分子化合物(II)の加水分解性珪素基として「-SiXa R3-a 」が例示されており、当該式中のRは、メチル基やエチル基であること、当該式中のXは、加水分解性基としてのエトキシ基であること及び「a 」は、「3」で有り得ることから、加水分解性珪素基が実質的にトリエトキシシリル基をとり得る。
そして、特許異議申立人が提出した平成29年5月15日付けで意見書に添付された参考資料1(特開2003-155469号公報の段落【0011】)、 参考資料3(特開平4-283259号公報の段落【0028】)、参考資料4(特開平5-287186号公報の段落【0020】)及び参考資料5(信越シリコーンのカタログ「シランカップリング剤」2015年3月(2010年11月にも発行されている。)第4、5、14頁)によれば、加水分解性珪素基として、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基又トリエトキシシリル基が極めて一般的(技術常識)であるから、わずか4種からトリエトキシシリル基を選択することは、当業者が容易になし得ることである。
(ウ)上記相違点3について
引用発明の硬化触媒は、「ジアルキルスズカルボン酸塩」であるが、具体的化合物としては、甲第1号証の実施例において、「ジブチルスズジラウレート」が使用されているにとどまり、本件特許発明1の「ジオクチル錫化合物」は記載されていない。なお、特許異議申立人の主張する甲第1号証「オクチル酸スズ」(特許異議申立書第29頁4.(3)(i))は、本件特許発明1の「ジオクチル錫化合物」とは異なる化合物である。
また、特許異議申立人の提出した甲第1ないし7号証にも、「ジオクチル錫化合物」が記載ないし示唆されているとはいえないし、特許異議申立人の提出した平成29年9月1日付けの意見書に添付された参考資料6ないし10を参照しても、引用発明において、「ジアルキルスズカルボン酸塩」に代えて「ジオクチル錫化合物」を用いることが本件特許の出願時における技術常識であるともいえない。
したがって、引用発明において上記相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
(エ)よって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。
また、本件特許発明2ないし5、7、10ないし13は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、同様に、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。
第6 補足的判断
以下に、取消理由(決定の予告)とはしなかった異議申立の理由について簡単に検討する。
1 特許法第29条第1項第3号について
上記第5の3イ(ウ)で説示したように、引用発明が上記相違点3の発明特定事項を満たすとの立証はされていない。
そうすると、本件特許発明1が甲第1号証に記載された発明(引用発明)であるとはいえない。
また、本件特許発明1を含むその余の本件特許発明についても同様である。
よって、本件特許発明1ないし5、7、10ないし13は、特許法第29条の規定に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。
2 特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について
本件特許発明1ないし5、7、10ないし13の課題は、高復元性であるところ(段落【0007】)、実施例1は比較例よりの高復元性に優れているから(【表1】)、本件特許発明1ないし5、7、10ないし13は、上記課題を解決しているし、実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。
なお、特許異議申立人が実施例1よりも高復元性に優れていると主張する実施例2は、出願当初には実施例であったがその後の補正により、いわゆる参考例になったものであり、当初の発明の一部を発明の範囲から除外することは許されることであり、これとの比較において記載要件不備を主張することは妥当ではない。
よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。
3 特許法第36条第6項第2号について
発明の詳細な説明の段落【0037】及び段落【0037】との記載並びに請求項3の「1分子中に水酸基を1個のみ有する開始剤を用いて・・・トリエトキシシリル基を導入して得られる」との記載に照らせば、「片方の末端」の水酸基とトリエトキシシリル基の個数が同数の場合が「トリエトキシシリル基を平均して0.5個含有する」ことを意味し、他方、「片方の末端」全てにトリエトキシシリル基がある場合が「トリエトキシシリル基を平均して1.0個含有する」ことを意味すると解するのが相当である。
そうすると、請求項1の「主鎖骨格が直鎖状であり、数平均分子量が800~50,000で、トリエトキシシリル基を片方の末端にのみ1分子中に平均して0.5~1.0個含有する有機重合体(A)」の「1分子中に平均して0.5~1.0個含有する」とは、上記両極端の間の状態を意味することが明らかである。
よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし5、7、10ないし13に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし5、7、10ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項6、8及び9に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項6、8及び9に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立については対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-701012