審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-700671

除細動システムおよび除細動カテーテル

審判番号
2023-700671
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-569109
登録番号
7197516
請求日
2023年06月27日
審決日
2024年05月16日
公報発行日
2024年06月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社カネカ
  • 【権利者代理人】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
  • 【異議申立人】杉村 勝
審判長/審判官
  • 審判長 井上 哲男
  • 審判官 栗山 卓也
  • 審判官 小河 了一
分類
P1651.113-Y (A61N) / P1651.121-Y (A61N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7197516号発明「除細動システムおよび除細動カテーテル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7197516号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7197516号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2019年(平成31年) 1月29日(優先権主張 平成30年 2月 1日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和 4年12月19日にその特許権の設定登録がされ、同年12月27日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 5年 6月27日 :特許異議申立人杉村勝(以下「申立人」と いう。)による請求項1~13に係る特許 に対する特許異議の申立て 同 年11月22日付け:取消理由通知 令和 6年 1月26日 :特許権者による意見書の提出 第2 本件発明 本件特許の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 近位側にハンドル部を有し遠位側に心内電極を有する除細動カテーテルと、該除細動カテーテルにパルス電圧を印加する電源部とを含む除細動システムであって、 前記ハンドル部には、前記心内電極に接続されている第1コネクタ部が接続されており、前記電源部には前記第1コネクタ部に接続される第2コネクタ部が接続されており、 前記第1コネクタ部は、第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有し、 前記第2コネクタ部は、複数本の縦穴を備えている第2絶縁部材と、前記縦穴の内側面に形成されている第2電極と、前記第2絶縁部材を内包する第2筒部とを有し、 前記第1筒部は、前記第1筒部の近位端から遠位側に向かって順に、前記第1絶縁部材も前記第1電極も内包していない第3空間、前記第1絶縁部材を内包せず前記第1電極を内包している第2空間、前記第1絶縁部材の外方かつ前記第1筒部の内方に前記第2筒部の少なくとも一部を収容する第1空間を有していることを特徴とする除細動システム。 【請求項2】 前記第2絶縁部材の縦穴は、前記第2絶縁部材の遠位端から近位側に延びるように形成されており、前記縦穴の遠位側において内側面に前記第2電極が形成されていない部分を有している請求項1に記載の除細動システム。 【請求項3】 前記第1コネクタ部が前記第2コネクタ部に接続されている状態において、前記第1コネクタ部の第1絶縁部材と前記第2コネクタ部の第2絶縁部材とは互いに当接している請求項1または2に記載の除細動システム。 【請求項4】 前記第1コネクタ部が前記第2コネクタ部に接続されている状態において、前記第1コネクタ部の第1筒部の先端は前記第2コネクタ部の一部に当接しており、前記第2コネクタ部の第2筒部の先端は、前記第1コネクタ部のいずれの箇所にも当接していない請求項1~3のいずれか一項に記載の除細動システム。 【請求項5】 前記第2筒部は、近位側に、前記第2絶縁部材と前記第2電極を内包している第2空間を有し、遠位側に、前記第2絶縁部材も前記第2電極も内包していない第3空間を有している請求項1~4のいずれか一項に記載の除細動システム。 【請求項6】 前記第2筒部の軸方向における前記第3空間の長さは、前記第1筒部の軸方向における前記第3空間の長さよりも短い請求項5に記載の除細動システム。 【請求項7】 前記心内電極として、心内電極Aと心内電極Bが設けられ、 前記第1コネクタ部として、前記心内電極Aに接続されている第1-Aコネクタ部と、前記心内電極Bに接続されている第1-Bコネクタ部が設けられ、 前記第2コネクタ部として、前記第1-Aコネクタ部に接続される第2-Aコネクタ部と、前記第1-Bコネクタ部に接続される第2-Bコネクタ部が設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の除細動システム。 【請求項8】 前記第1-Aコネクタ部は前記第2-Aコネクタ部に接続されるが前記第2-Bコネクタ部に接続されない構成を有しており、前記第1-Bコネクタ部は前記第2-Bコネクタ部に接続されるが前記第2-Aコネクタ部に接続されない構成を有している請求項7に記載の除細動システム。 【請求項9】 前記第2コネクタ部には、前記第1コネクタ部との接続解除部が形成されている請求項1~8のいずれか一項に記載の除細動システム。 【請求項10】 前記除細動システムは、前記電源部に接続され、前記除細動カテーテルの計測データを心電図に変換する心電図表示部をさらに含み、 前記第2電極は、前記電源部の除細動カテーテルにパルス電圧を印加する電源に接続され、さらに前記心電図表示部に接続されているα第2電極と、前記電源に接続されず前記心電図表示部に接続されているβ第2電極とを含んでいる請求項1に記載の除細動システム。 【請求項11】 前記α第2電極と前記β第2電極との間の距離のうち最も短いものは、前記α第2電極同士の距離のうち最も短いものよりも長い請求項10に記載の除細動システム。 【請求項12】 遠近方向に延在しているチューブ部材と、該チューブ部材の遠位側に形成されている心内電極と、該チューブ部材の近位側に形成されているハンドル部と、一方が該ハンドル部を経由して前記心内電極に接続されており他方が電源部に接続される第1コネクタ部とを有する除細動カテーテルであって、 前記第1コネクタ部は、第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有し、 前記第1筒部は、前記第1筒部の近位端から遠位側に向かって順に、前記第1絶縁部材も前記第1電極も内包していない第6空間、前記第1絶縁部材を内包せず前記第1電極を内包している第5空間、前記第1絶縁部材の外方かつ前記第1筒部の内方に存在している第4空間を有していることを特徴とする除細動カテーテル。 【請求項13】 前記心内電極として、心内電極Aと心内電極Bが設けられ、 前記第1コネクタ部として、前記心内電極Aに接続されている第1-Aコネクタ部と、前記心内電極Bに接続されている第1-Bコネクタ部が設けられ、 前記複数の第1電極のうち一部は前記心内電極Aまたは前記心内電極Bに接続されているα第1電極であり、他部は前記心内電極Aにも前記心内電極Bにも接続されておらず前記チューブ部材の遠位側に形成されている心内電極Cに接続されているβ第1電極である請求項12に記載の除細動カテーテル。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由通知の概要 当審が令和 5年11月22日付けで特許権者に通知した、請求項1~13に対する取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由(進歩性) 請求項1~13に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~13係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特表2009-525588号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特許第3898754号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特許第4290894号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:米国特許第7896873号明細書(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特表2010-515538号公報(以下「甲5」という。) 甲第6号証:特許第3571939号公報(以下「甲6」という。) 甲第7号証:Phillips除細動器「HeartStart XL Defibrillator」のマニュ アル(以下「甲7」という。) 甲第8号証:写真 撮影対象 Phillips除細動器「HeartStart XL Defibril lator」の写真(以下「甲8」という。) 甲第9号証:ハートスタートXLの医療機器承認(承認番号:21400BZY0029 4000)(以下「甲9」という。) 甲第10号証:特許第3846737号公報(以下「甲10」という。) 第4 当審の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由(進歩性)についての判断 (1)甲号証の記載及び引用発明 ア 甲4の記載及び甲4発明 (ア)甲4には、以下の記載がある。 a「The present invention relates to an electric catheter for the electrotherapy or examination of cardiac tissue, i.e., of myocardium. On its proximal end, the electrode catheter has a terminal, using which the electrode line is connected to an electrical generator, an electrotherapy device, or even to an implant, such as a cardiac pacemaker or defibrillator. The therapy device is preferably a generator for high-frequency current for tissue ablation. On its distal end, the electrode catheter has one or more sensing electrodes or, additionally or alternatively, treatment electrodes. Electrode catheters of this type are known in particular in the field of electric physiology for detecting and treating stimulus conduction malfunctions in the heart and are also referred to as EP catheters (electrophysiology catheters). In the present case, this name is to include both mapping catheters for detecting myocardial stimulus conduction or ablation catheters for the local erosion of cardiac tissue (myocardium) or combinations of such electrode catheters. Such electrode catheters are used for the purpose of detecting the excitation propagation in the myocardium with the aid of sensing electrodes in a first step, in order to be able to recognize malfunctions of the excitation propagation in this way. Subsequently, by applying typically high-frequency AC current, which may be output in a targeted way via treatment electrodes, tissue erosion (ablation) may be caused, with the result that stimulus conduction no longer occurs where the cardiac tissue is eroded.」(第1欄第8-34行) (訳文「本発明は、心臓組織、すなわち心筋の電気治療または検査のための電気カテーテルに関する。電極カテーテルはその近位端に端子を有し、この端子を用いて電極線が発電機、電気治療装置、あるいは心臓ペースメーカーや除細動器のようなインプラントに接続される。治療装置は、好ましくは、組織焼灼のための高周波電流用の発電機である。電極カテーテルは、その遠位端に、1つまたは複数の検出電極、あるいは追加的または代替的に治療電極を有する。 この種の電極カテーテルは、特に電気生理学の分野で、心臓の刺激伝導障害を検出して治療するために知られており、EPカテーテル(電気生理学カテーテル)とも呼ばれる。この場合、この名称は、心筋刺激伝導を検出するためのマッピングカテーテル、または心臓組織(心筋)を局所的に侵食するためのアブレーションカテーテル、またはそのような電極カテーテルの組み合わせの両方を含むものとする。このような電極カテーテルは、このようにして励起伝搬の不具合を認識できるようにするために、第一段階として、検出電極の助けを借りて心筋における励起伝搬を検出する目的で使用される。その後、治療用電極を介して狙いを定めて典型的な高周波交流電流を印加することにより、組織の浸食(アブレーション)を引き起こし、その結果、心筋組織が浸食された部分では刺激伝導が起こらなくなる。」) b「The ablation catheter 10 illustrated in FIG.1 has a catheter shaft 12, which is also identified as an electrode catheter 12 in the framework of this description and the claims. The electrode catheter 12 carries two electrodes on its distal end, namely a tip electrode 14 and a ring electrode 16. The tip electrode 14 and the ring electrode 16 are used in the case of tissue erosion (ablation) for delivering high-frequency AC current to surrounding tissue in order to heat the tissue using the AC current enough that it erodes. At the proximal end, the electrode catheter 12 is connected to a handle 18, which has a holding part 20 and a displacement part 22. Holding part 20 and displacement part 22 are displaceable in relation to one another in a known way in the longitudinal direction of the holding part 20 in order to cause lateral deflection of a distal end section 24 of the electrode catheter 12. This is performed in a way known in principle with the aid of a control wire 28 guided in a lumen 26 (see FIG.3) of the electrode catheter 12, which is attached in the area of the distal end of the electrode catheter 12. … As noted, the electrodes 14 and 16 are used for delivering high-frequency AC current or ablation or also for sensing electrical potentials of the cardiac tissue, i.e., mapping. For both purposes, the electrodes 14 and 16 have to be electrically connected to a terminal 40, which is connected via a cable 42 to the handle 18.」(第5欄第42行-第6欄第20行)(訳文「図1に示されるアブレーションカテーテル10は、カテーテルシャフト12を有し、このシャフトは、本明細書および特許請求の範囲の枠組みにおいて電極カテーテル12としても特定される。電極カテーテル12は、その遠位端に2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16を担持する。先端電極14とリング電極16は、組織の浸食(アブレーション)の場合に、高周波の交流電流を周囲の組織に流し、交流電流を用いて組織を浸食する程度に加熱するために使用される。 近位端では、電極カテーテル12はハンドル18に接続されており、このハンドル18は保持部20と変位部22とを有している。保持部20と変位部22は、電極カテーテル12の遠位端部24の側方への偏向を引き起こすために、保持部20の長手方向に公知の方法で互いに対して変位可能である。これは、電極カテーテル12の遠位端部の領域に取り付けられた、電極カテーテル12の管腔26(図3参照)内に案内される制御ワイヤ28の助けを借りて、原理的に公知の方法で実行される。 … 前述したように、電極14および16は、高周波交流電流またはアブレーションを供給するため、あるいは心臓組織の電位を感知するため、すなわちマッピングのためにも使用される。両方の目的のために、電極14と16は、ケーブル42を介してハンドル18に接続された端子40に電気的に接続されなければならない。) c「 [図:0001411317000001.jpg] 」 (イ)上記(ア)a~cの記載事項によれば、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。 「心臓の刺激伝導障害を検出して治療するための電極カテーテル12を有し、 カテーテルシャフトである電極カテーテル12は、その遠位端に2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16を担持し、 電極カテーテル12は、近位端においてハンドル18に接続され、ハンドル18に接続された端子40を有することで、 全体としてアブレーションカテーテル10を構成しており、 電極14、16は、ケーブル42を介してハンドル18に接続された端子40に電気的に接続され、 この端子40を用いて電極線が発電機に接続されており、 先端電極14とリング電極16は、組織の浸食の場合に、高周波の交流電流を周囲の組織に流し、交流電流を用いて組織を浸食する程度に加熱するために使用され、 電極14、16を介して狙いを定めて高周波交流電流を印加することにより、組織の浸食を引き起こし、その結果、心筋組織が浸食された部分では刺激伝導が起こらなくなる、 アブレーションカテーテル10を備えた治療機器。」 イ 甲2の記載 (ア)甲2には、以下の記載がある。 a「人間の心臓の動きは、その心臓の各種の部位にて電気的活性が伝播することで制御される。心臓の副経路に異常があると、心室頻拍(ventricular tachycardia)及び心房粗動(atrial flutter)のような症状が生ずる可能性がある。こうした症状は極く一般的なものである。人口の約20%は、その生存中に、心臓に何らかの種類の異常があると考えられる。 一又は複数の電極が取り付けられ、操縦性があるカテーテルにより心臓を検査し、また、心臓内の電圧の測定及び波形を観察することにより心臓の機能の異常を検出することが可能であることを医者は知見している。医者が心臓の電気的活性の作用状態を理解したならば、次に、望むならば、切除(ablation)法により心臓の特定の一部を電気的に「切り離す」ことが可能である。多数の電極を使用する場合、該カテーテルは、心臓内で湾曲したとき、多数の測定を同時に行うことが可能である。このため、多数の電極を使用することは、心臓の状態を把握するのに必要な時間を短縮する。 心臓内の副経路に異常があるか否かを判断するため、心臓の電気的活性は、マッピング法により検出し且つ測定する。典型的なマッピング法は、心臓内の各種の位置を検査する遠隔制御式の電圧試験プローブとして、カテーテルに取り付けられた電気生理学的検出電極を利用する段階を含む。 この切除方法は、心臓の一つの部分から別の部分への電気信号の伝播を妨害する心臓の特定の部分に熱傷を与えるためにカテーテルを使用する破壊的な方法である。」(第2ページ第11-28行) b「心臓内カテーテルの検出電極、又は切除電極は、典型的に、タンタル、金、又は白金で出来ている。検出・切除カテーテル内には、1個程度と少ないか、又は5個以上という多数の電極を備えることが出来る。」(第2ページ第43-45行) c「心臓組織の切除により治療可能である異常は、一般的な不整脈、心室頻拍、心房細動、心房粗動、及びウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群(WPW)がある。典型的に、心室頻拍及びWPWは、先端に電極が付いた、変形可能で所定の湾曲した形状をしたカテーテルにより心臓組織に付与されたRF切除又は直流放電により治療されている。これらのカテーテルは、心臓を電気的にマッピングするために当該技術分野で使用されているものと同様の構造をしている。」(第3ページ第5-10行) d「図8及び図8a(更に、概略図的に図1)には、音響式カテーテルの基端に設けられた接続具7を駆動モータ20の接続具16に相互に接続する配置、及び駆動モータの中央シャフト43を通る電線の経路が示してある。中央シャフト及び接続具16は、電線が中空のモータ・シャフトを貫通する場合のように、共に回転する。該モータ・シャフトは、回転する電気継手27に接続し、該継手は、後端にて固定状態に保持され且つ一般的なBNC型のような適当な接続具を通じて固定の同軸状ケーブル45に接続されている。拡大図には、二つの組立体を共に押し付けたときに、モータ接続具16及び駆動シャフトの接続具7が係合して、これにより、電気的接触及び機械的接触の双方が為される状態が示してある。」(第14ページ第34-42行) e「 [図:0001411317000002.jpg] 」 f「 [図:0001411317000003.jpg] 」 g「 [図:0001411317000004.jpg] 」 h 図1から、接続具7と接続具16が接続されることが看取される。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「ハンドル18」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「ハンドル部」に相当し、以下同様に、 「2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16」は、「心内電極」に、 「近位端においてハンドル18に接続され」、「その遠位端に2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16を担持」する「電極カテーテル12」は、「近位側にハンドル部を有し遠位側に心内電極を有する除細動カテーテル」に、 「発電機」は、「電源部」に、 「端子40」は、「第1コネクタ部」に、それぞれ相当する。 そして、甲4発明の、「その遠位端に2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16を担持」する「電極カテーテル12」と、「ハンドル18」と、「端子40」とを有する「アブレーションカテーテル10」と、該端子40を用いて電極線が接続される「発電機」とからなる「アブレーションカテーテル10を備えた治療機器」は、本件発明1の「近位側にハンドル部を有し遠位側に心内電極を有する除細動カテーテルと、」「電源部とを含む除細動システム」に相当する。 また、甲4発明の「電極14、16は、ケーブル42を介してハンドル18に接続された端子40に電気的に接続され」る構造は、本件発明1の「前記ハンドル部には、前記心内電極に接続されている第1コネクタ部が接続されて」いる構造に相当する。 そうすると、両者は、 「近位側にハンドル部を有し遠位側に心内電極を有する除細動カテーテルと、電源部とを含む除細動システムであって、 前記ハンドル部には、前記心内電極に接続されている第1コネクタ部が接続されている除細動システム。」 である点で一致し、次の各点で相違する。 [相違点1] 本件発明1の電源部は、「該除細動カテーテルにパルス電圧を印加する」のに対し、甲4発明は、発電機がそのように特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1は、「前記電源部には前記第1コネクタ部に接続される第2コネクタ部が接続されており、前記第1コネクタ部は、第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有し、前記第2コネクタ部は、複数本の縦穴を備えている第2絶縁部材と、前記縦穴の内側面に形成されている第2電極と、前記第2絶縁部材を内包する第2筒部とを有し、前記第1筒部は、前記第1筒部の近位端から遠位側に向かって順に、前記第1絶縁部材も前記第1電極も内包していない第3空間、前記第1絶縁部材を内包せず前記第1電極を内包している第2空間、前記第1絶縁部材の外方かつ前記第1筒部の内方に前記第2筒部の少なくとも一部を収容する第1空間を有している」のに対し、甲4発明は、アブレーションカテーテル10が端子40を有する点。 イ 判断 事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。 甲4発明の「端子40」は、電極14、16の電極線を発電機に接続するための部材であることが特定されるに留まり、その具体的な形状・構造は明らかでないところ、甲2には、除細動カテーテルの端子として、上記相違点2における「第1コネクタ部」に係る具体構造は開示されていない。 そうすると、甲4発明の端子40の導電接続構造を具体的に特定して、上記相違点2に係る本件発明1の事項とすることは、甲4発明及び甲2の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 また、その他の甲号証及び周知・慣用技術を勘案しても、本件発明1の上記相違点2に係る事項は、それらに基いて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲4発明及び甲2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 (3)本件発明12について ア 対比 本件発明12と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「カテーテルシャフト」は、その機能及び構造からみて、本件発明12の「チューブ部材」に相当し、以下同様に、 「2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16」は、「心内電極」に、 「ハンドル18」は、「ハンドル部」に、 「発電機」は、「電源部」に、 「端子40」は、「第1コネクタ部」に、それぞれ相当する。 そして、甲4発明の、「その遠位端に2つの電極、すなわち、先端電極14およびリング電極16を担持」する「カテーテルシャフトである電極カテーテル12」と、近位端において接続される「ハンドル18」と、その近位端に有する「端子40」とを備えた「アブレーションカテーテル10」は、本件発明12の「遠近方向に延在しているチューブ部材と、該チューブ部材の遠位側に形成されている心内電極と、該チューブ部材の近位側に形成されているハンドル部と、」「第1コネクタ部とを有する除細動カテーテル」に相当する。 また、甲4発明の「電極14、16は、ケーブル42を介してハンドル18に接続された端子40に電気的に接続され」る構造は、本件発明12の「第1コネクタ部」の、「一方が該ハンドル部を経由して前記心内電極に接続されて」いる構造に相当する。 また、甲4発明の「アブレーションカテーテル10」が、「端子40を用いて電極線が発電機に接続され」ることから、甲4発明の「発電機に接続され」る「端子40」は、本件発明12の「他方が電源部に接続される第1コネクタ部」に相当する。 そうすると、両者は、 「遠近方向に延在しているチューブ部材と、該チューブ部材の遠位側に形成されている心内電極と、該チューブ部材の近位側に形成されているハンドル部と、一方が該ハンドル部を経由して前記心内電極に接続されており他方が電源部に接続される第1コネクタ部とを有する除細動カテーテル。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点3] 本件発明12は、「前記第1コネクタ部は、第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有し、前記第1筒部は、前記第1筒部の近位端から遠位側に向かって順に、前記第1絶縁部材も前記第1電極も内包していない第6空間、前記第1絶縁部材を内包せず前記第1電極を内包している第5空間、前記第1絶縁部材の外方かつ前記第1筒部の内方に存在している第4空間を有している」のに対し、甲4発明は、アブレーションカテーテル10が端子40を有する点。 イ 判断 上記相違点3について検討する。 甲4発明の「端子40」は、電極14、16の電極線を発電機に接続するための部材であることが特定されるに留まり、その具体的な形状・構造は明らかでないところ、甲2には、除細動カテーテルの端子として、上記相違点3における「第1コネクタ部」に係る具体構造は開示されていない。 そうすると、甲4発明の端子40の導電接続構造を具体的に特定して、上記相違点3に係る本件発明12の事項とすることは、甲4発明及び甲2の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 また、その他の甲号証及び周知・慣用技術を勘案しても、本件発明12の上記相違点3に係る事項は、それらに基いて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明12は、甲4発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 (4)本件発明2~11、13について 請求項2~11、13は、請求項1又は12を引用するものであるから、上記(2)又は(3)と同様の理由により、本件発明2~11、13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 2 取消理由通知に採用しなかった異議申立理由について (1)取消理由に採用しなかった異議申立理由は、次のとおりである。 ア 異議申立理由1(新規性) 請求項1~13に係る発明は、甲第1~6号証のいずれかに記載された発明であるから、当該請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 イ 異議申立理由2(進歩性) 請求項1~13に係る発明は、甲第1~3、5、6号証のいずかに記載された発明と周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)取消理由に採用しなかった異議申立理由について ア 異議申立理由1(新規性) 本件発明1は除細動システムに係る発明であるのに対し、甲1、3、5、6に記載された発明はいずれも、除細動システムに係るものではない。同様に、本件発明12は除細動カテーテルに係る発明であるのに対し、甲1、3、5、6に記載された発明はいずれも、除細動カテーテルに係るものではない。 また、甲2には、除細動システムを構成する除細動カテーテルが記載されている。しかし、当該カテーテルは、本件発明1が備える「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を備えておらず、また、本件発明12が備える「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を備えていない。 さらに、本件発明1が甲4に記載された発明でないことは、上記1(2)で検討したとおりであり、また、本件発明12が甲4に記載された発明でないことは、上記1(3)で検討したとおりである。 以上のとおりであるから、本件発明1、12は、甲1~6のいずれかに記載された発明ではない。そして、本件発明2~11、13は、本件発明1又は12の発明特定事項をすべて含む発明であるから、甲1~6のいずれかに記載された発明ではない。 よって、本件発明1~13に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。 イ 異議申立理由2(進歩性) 本件発明1は、「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を有する「除細動カテーテル」を備えた除細動システムに係る発明であるのに対し、甲1、3、5、6に記載された発明はいずれも、除細動システムに係るものではなく、当然に、本件発明1が備える上記「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を有する「除細動カテーテル」を備えていない。 また、甲2には、除細動システムを構成する除細動カテーテルが記載されている。しかし、当該カテーテルは、本件発明1が備える「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を備えておらず、また、本件発明12が備える「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を備えていない。そして、他の甲号証を参照しても、当該「第1コネクタ部」に相当する構成は記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1~3、5、6のいずれかに記載された発明と、他の甲号証に記載された周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。同様の理由で、「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」を有する「除細動カテーテル」に係る発明である本件発明12は、甲1~3、5、6のいずれかに記載された発明と、他の甲号証に記載された周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、甲10について付言すると、甲10には、細動除去器の全てのタイプについて電極コネクタ装置として使用することができる医用コネクタ装置であって、2つの電極パッドに接続する電気導線125に接続された、2つの導電性ソケットをもつケーブル・コネクタ105を備えた医用コネクタ装置100が記載されている(第4ページ第34-45行及び図1参照)。そして、当該「電極パッド」は、その機能からみて、本件発明1及び12の「除細動カテーテル」に対応する構成であるところ、当該「電極パッド」に電気導線125によって接続された「ケーブル・コネクタ105」は、2つの導電性ソケットを有する、いわゆる雌コネクタであって、本件発明1及び12が有する上記「第1絶縁部材と、該第1絶縁部材から突出する複数本の第1電極と、前記第1絶縁部材および前記第1電極とを内包する第1筒部とを有」する「第1コネクタ部」、いわゆる雄コネクタとは、雌雄が異なっている。そして、本件発明1及び12の「除細動カテーテル」が雄コネクタを有するとの事項は、本件特許の明細書【0007】の「カテーテル側の第1コネクタ部は、入口から奥まった部分にある第1空間と、複数本の第1電極を含み複雑な構造を有する第2空間とを有しており、これらの空間はいずれも比較的埃が溜まりやすい構造となっているところ、第1コネクタ部はカテーテルのハンドル部に接続されており、カテーテルによる施術ごとに新しいものを使用するため、第1コネクタ部に第1空間と第2空間が形成されていても、使用の際に第1空間や第2空間に埃が蓄積されることが起こりにくく、安全性が確保される。」との記載から把握される発明の課題の解決手段に相当する事項であることを踏まえると、本件発明1及び12をなすにあたって、雌コネクタが接続された電極パッドを備える医用コネクタ装置が記載された甲10の開示を参照することには、阻害要因があるというべきである。 さらに、甲8の「パッド側コネクタ」及び「電源側コネクタ」の写真について付言すると、パッド側コネクタに対して電源側コネクタが嵌合する際に当該電源側コネクタの外周の絶縁部材が入り込むパッド側コネクタの空間は、当該パッド側コネクタの外周の絶縁部材に隣接する空間であると解されるところ、当該空間は、本件発明1の「前記第1絶縁部材の外方かつ前記第1筒部の内方に前記第2筒部の少なくとも一部を収容する第1空間」にも、本件発明12の「前記第1絶縁部材の外方かつ前記第1筒部の内方に存在している第4空間」にも相当しない空間であるから、甲8の写真に示される公知のコネクタ構造を参照したとしても、本件発明1及び12に係る「第1コネクタ部」とすることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 以上のとおりであるから、本件発明1、12は、甲1~3、5、6のいずれかに記載された発明と、甲第1~10号証に記載された周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。そして、本件発明2~11、13は本件発明1又は12の発明特定事項をすべて含む発明であるから、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、本件発明1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、本件発明1~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700671

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決68件(杉村 勝、株式会社カネカ)
  • 2020-700610異議申立 / 2021-06-04 / 訂正認容スチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法
    同じ当事者: 杉村 勝、株式会社カネカ
  • 2025-700788異議申立 / 2026-04-27 / 訂正認容内視鏡用処置具
    同じ当事者: 株式会社カネカ
  • 2023-900056異議申立 / 2023-12-04 / 維持スリーディープロテックス、スリーデイプロテックス、サンデイプロテックス、プロテッ…
    同じ当事者: 株式会社カネカ
  • 2022-700875異議申立 / 2023-07-26 / 請求成立(取消)電動機駆動装置及び空気調和機
    同じ当事者: 杉村 勝
  • 2021-701070異議申立 / 2023-01-30 / 請求成立(取消)データ収集制御装置、データ収集制御システム、データ収集制御方法およびデータ収集制…
    同じ当事者: 杉村 勝
同じ論点・分野の審決(審決分類)269件(113・A61N、121・A61N)
  • 2020-700301異議申立 / 2021-03-29 / 訂正認容身体の運動機能障害を回復させる電流刺激装置及び電流刺激方法
    共通の審決分類: 113・A61N、121・A61N
  • 2019-700499異議申立 / 2020-12-25 / 訂正認容ホウ素中性子捕捉療法システム
    共通の審決分類: 113・A61N、121・A61N
  • 2024-014179拒絶査定不服審判 / 2026-05-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)電気刺激装置
    共通の審決分類: 113・A61N、121・A61N
  • 2023-021974拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)放射線治療に用いるためのリップルフィルタユニット、放射線治療計画作成及び送達のた…
    共通の審決分類: 113・A61N、121・A61N
  • 2024-011848拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 請求不成立平板電極
    共通の審決分類: 113・A61N、121・A61N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存