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商標異議申立

2023-900056

スリーディープロテックス、スリーデイプロテックス、サンデイプロテックス、プロテックス、プロ、ピイアアルオオ

審判番号
2023-900056
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2022-071548
登録番号
6655587
請求日
2023年03月03日
審決日
2023年12月04日
公報発行日
2024年02月22日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東英通商株式会社
  • 【権利者代理人】中道 佳博
  • 【権利者代理人】樋口 知久
  • 【異議申立人】株式会社 カネカ
  • 【異議申立人代理人】青木 宏義
  • 【異議申立人代理人】天田 昌行
  • 【異議申立人代理人】潮崎 宗
審判長/審判官
  • 審判長 冨澤 武志
  • 審判官 豊田 純一
  • 審判官 馬場 秀敏
分類
T1651.261-Y (W24) / T1651.262-Y (W24) / T1651.263-Y (W24) / T1651.271-Y (W24)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6655587号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6655587号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6655587号商標(以下「本件商標」という。)は、「3DProtex」の文字を標準文字で表してなり、令和4年6月21日に登録出願、第24類「熱により貼付する粘着性生地,合成繊維織物,不織布,布地,生地」を指定商品として、同年12月7日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりである。 (1)登録第2702326号商標(以下「引用商標1」という。)は、「PROTEX」の欧文字を横書きしてなり、平成2年10月8日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同7年1月31日に設定登録され、その後、同16年12月8日に、指定商品を、第24類「織物(畳ベリ地を除く。),畳ベリ地,メリヤス生地,フェルト,不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布」及び第26類「テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (2)登録第2702327号商標(以下「引用商標2」という。)は、「プロテックス」の片仮名を横書きしてなり、平成2年10月8日に登録出願、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同7年1月31日に設定登録され、その後、同16年12月8日に、指定商品を、第24類「織物(畳ベリ地を除く。),畳ベリ地,メリヤス生地,フェルト,不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布」及び第26類「テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類」とする指定商品の書換登録がされたものである。 なお、以下、引用商標1と引用商標2をまとめていう場合は、「11号引用商標」という。 2 申立人が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標は、11号引用商標及び以下の(1)ないし(4)であり、申立人が、遅くとも本件商標の登録出願日前に、同人らの業務に係る商品を表すものとして需要者の間に広く認識されるに至っていたものと主張するものであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第2499228号商標(以下「引用商標3」という。)は、「PROTEX」の欧文字を横書きしてなり、平成2年10月8日に登録出願、第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年1月29日に設定登録され、その後、同14年12月18日に、指定商品を、第17類「化学繊維(織物用のものを除く。)」及び第22類「織物用化学繊維」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (2)登録第2499229号商標(以下「引用商標4」という。)は、「プロテックス」の片仮名を横書きしてなり、平成2年10月8日に登録出願、第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年1月29日に設定登録され、その後、同15年2月5日に、指定商品を、第17類「化学繊維(織物用のものを除く。)」及び第22類「織物用化学繊維,織物用無機繊維(石綿を除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (3)登録第2499230号商標(以下「引用商標5」という。)は、「PROTEX」の欧文字を横書きしてなり、平成2年10月8日に登録出願、第15類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年1月29日に設定登録され、その後、同15年2月5日に、指定商品を、第17類「化学繊維糸(織物用のものを除く。),糸ゴム及び被覆ゴム糸(織物用のものを除く。)」及び第23類「糸(脱脂屑糸を除く。),脱脂屑糸」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (4)登録第2499231号商標(以下「引用商標6」という。)は、「プロテックス」の片仮名を横書きしてなり、平成2年10月8日に登録出願、第15類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年1月29日に設定登録され、その後、同15年2月5日に、指定商品を、第17類「化学繊維糸(織物用のものを除く。),糸ゴム及び被覆ゴム糸(織物用のものを除く。)」及び第23類「糸(脱脂屑糸を除く。),脱脂屑糸」とする指定商品の書換登録がされたものである。 なお、以下、11号引用商標及び引用商標3ないし引用商標6をまとめていう場合は「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して記載する場合があり、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略する。 1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性 (1)本件商標と11号引用商標の類否 ア 外観について 本件商標は、「3DProtex」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「3D」の文字は、「3次元(立体的)」を意味するありふれた略語(3Dimesion)であり、「Protex」の文字は、申立人が遅くとも1991年から使用する造語である(甲3、甲8の6ほか)。 そして、「生地、布地、織物」等の本件商標の指定商品(以下「本件商品」という。)が属する分野において、「3次元(立体的)」の意味合いで「3D」の語が一般に用いられる実情がある(甲4)。 加えて、本件商標を構成する「Protex」の文字は、構成中の中間に位置するにもかかわらず、「P」のみが大文字で表され、その他の「rotex」がすべて小文字で表された態様となっている。 以上から、本件商標は、「3D」の文字と「Protex」の文字が結合された構成であると容易に理解され、本件商品の取引の実情をも考慮すれば、「Protex」の文字が強い識別機能を発揮する要部として視覚上認識される。 これに対し、引用商標1は、申立人の造語である「PROTEX」の欧文字よりなる。 また、引用商標2は、申立人の造語である「プロテックス」の片仮名よりなる。 本件商標と引用商標1の外観を対比すると、本件商品との関係で識別機能が弱い「3D」の部分を除いた本件商標を構成する「Protex」の文字と、引用商標1を構成する「PROTEX」の欧文字は、大文字と小文字の差異にすぎず、すべてつづりを同じくする欧文字からなる。 本件商標と引用商標2の外観を対比すると、欧文字と片仮名で文字種別が異なるが、本件商品との関係で識別機能が弱い「3D」の文字を除いた本件商標を構成する「Protex」の文字と、引用商標2を構成する「プロテックス」は、いずれも申立人の造語である欧文字と片仮名を相互に変換したにすぎないものである。 したがって、本件商標と11号引用商標は、需要者が視覚を通じて記憶する全体的印象が互いに紛らわしく、両商標の外観は類似する。 イ 観念について 本件商標は、「3次元(立体)」を意味する語として一般にも親しまれた「3D」の文字と、申立人の造語である「Protex」よりなるため、「カネカの三次元プロテックス」といった一種の造語の意味合いを想起させ、需要者に認識される。 これに対し、11号引用商標は、いずれも申立人の造語である「PROTEX」の欧文字及び「プロテックス」の片仮名よりなるため、「カネカのプロテックス」といった一種の造語の意味合いを想起させ、需要者に認識される。 本件商標と11号引用商標の観念を対比すると、「3次元」の意味合いの有無で異なるが、この意味合いは本件商品との関係で商品の特徴等を表すにすぎないものであるため、いずれも申立人の造語である「カネカのプロテックス」といった意味合いをおおむね想起させることになる。 したがって、本件商標と引用商標より、需要者が想起する意味合いは相紛らわしく、両商標の観念は類似する。 ウ 称呼について 本件商標は、構成文字全体より、「スリーディープロテックス」の称呼が生じる。 また、本件商標は、本件商品との関係で「3D」の文字の識別機能が弱く、申立人の造語である「Protex」の文字の識別機能が強いため、これより「プロテックス」の称呼をも生じる。 これに対し、11号引用商標は、その構成文字より、「プロテックス」の称呼が生じる。 本件商標と11号引用商標の称呼を対比すると、「スリーディープロテックス」と「プロテックス」の称呼においては、「スリーディー」の音の有無で異なるが、「プロテックス」と「プロテックス」の称呼において、その音が共通する。 したがって、本件商標と11号引用商標から生じる称呼が需要者に与える全体的印象は、互いに紛らわしく、両商標の称呼は類似する。 (2)取引の実情について 本件商標を構成する「3D」の文字は、「三次元(立体)」を意味するありふれた略語(3Dimesion)であるところ、本件商品が属する取引分野において、「3次元(立体)」の意味合いで「3D」の語が一般に用いられる実情があること(甲4)を考慮すると、、本件商標を構成する「3D」の文字は、本件商品との関係で商品の特徴等を表し、出所識別機能が弱く、「Protex」の文字が、本件商品との関係で申立人の造語と認識され、出所識別機能を強く発揮する要部となる。 (3)参考審決・審査例について 「3D」の文字が「3次元(立体)」の意味合いで広く一般に知られ、その指定商品が属する取引分野によって、出所識別機能を果たさないと認定された例は、審決例の判旨にもみられ、これら審決例は、本件商標と商標の構成や指定商品の分野が異なるものであるが、本件商標を構成する「3D」の文字と「Protex」の文字の識別力の強弱の関係や取引の実情を考慮し、本件商標の要部を認定するに際し、参考になる(甲5の1,甲5の2)。 また、本件商品が属する取引分野において、「3D」の文字が「3次元、立体的」の意味合いを表し、出所識別機能を果たさないと判断された審査例は、当該案件の拒絶理由通知書でもみられるものであり、本件商標の要部を認定するに際し、参考になる(甲5の3~甲5の6)。 (4)本件商品と11号引用商標に係る指定商品の類否 本件商品と11号引用商標に係る指定商品(以下「引用商品」という。)を対比すると、「織物(畳ベリ地を除く。)」と「合成繊維織物」は、前者が後者を包含するため、一部が同一の商品であり、「不織布」は互いに同一の商品であり、その他の商品は、互いに同一の商品ではないが、商品の類否を判断する一般的基準である商品の生産部門・販売部門の共通性、原材料・品質の共通性、用途の共通性、需要者の範囲の共通性より、互いに類似する商品である。 (5)小括 したがって、本件商標と11号引用商標は、その外観、観念又は称呼等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、取引の実情を考慮して全体的に考察すれば、一般的出所混同を生じるおそれがある類似の商標である。 そして、本件商品と引用商品は、同一又は類似の商品である。 よって、本件商標は、11号引用商標と類似するものであるため、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性 (1)商標法第4条第1項第15号該当性の基準について 商標法第4条第1項第15号に該当するか否かは、ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度、イ その他人の標章の周知度、ウ その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか、エ その他人の標章がハウスマークであるか、オ 企業における多角経営の可能性、カ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性、キ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情の考慮事由に基づく事実を総合勘案して判断するとされている(甲7)。 (2)申立人について 申立人は、前身企業である鐘淵紡績株式会社(後の鐘紡を経てクラシエホールディングス、カネボウ化粧品)から非繊維事業をすべて分離し、1949年に鐘淵化学工業株式会社として創立され、同年に日用品から産業資材まで幅広い分野で使用されている代表的な汎用プラスチック(塩化ビニル樹脂)である「カネビニール」を開発し、1957年にアクリル系合成繊維「カネカロン」を開発し、翌年に品質管理の水準がきわめて高く社会への貢献度の大きな企業に対し、毎年1回与えられるデミング賞を受賞するなどし、創立から70年以上経過した現在は、4つの事業ドメインからなるソリューションを提供する企業となった(甲8の1~甲8の3)。 引用商標を構成する「PROTEX」の欧文字及び「プロテックス」の片仮名は、Quality of Life Solutions Unit(以下「本件ユニット」という。)の「Performance Fibers Solutions Vehicle」と呼ばれる繊維事業で用いる申立人が開発した機能性繊維のブランドである(甲8の1、甲8の3、甲8の4)。 (3)引用商標について 申立人のブランドである「PROTEX」の欧文字及び「プロテックス」の片仮名は、モダクリル繊維の特徴であるしなやかさや染色性に優れた点を活かしながら、高い難燃性を備えた申立人が開発した機能性繊維である。 この機能性繊維は、自己消化性を有した難燃繊維であり、様々な天然繊維や合成繊維と組み合わせても優れた難燃効果を発揮する応用範囲の広い繊維であり、幅広い用途で用いられるため、各種用途に最適な難燃レベル・品質のタイプに応じた次の製品ラインナップがある(甲8の5~甲8の9)。 (4)本件商標について 本件商標は、「3DProtex」の文字を標準文字で表してなる。 本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)について、同社ホームページの「プロフィール」では、申立人の本社と同じ大阪に位置する多様な特殊繊維素材を取り扱う商社であり、機能性素材、高品質なメンブレン、PUR用接着剤、合成皮革、技術サポート、新たな繊維素材の開発を専門にしていると紹介されており(甲10)、同社ホームページの「TEXTILE」では、「PROTEX」、「ROCK」及び「ARIAP RENE」の3ブランドが紹介され、「PROTEX」のブランドは、立体的なドット柄を特徴とするナイロントリコット生地であるなどと説明されている(甲10の3、甲10の4)。 かかる本件商標における取引の実情から、本件商標を構成する「3D」の文字は、「3次元、立体的」といった意味合いにより、本件商品の特徴等を表すものと理解されるというべきである。 (5)本件商標と引用商標の類似性の程度について 本件商標の要部と引用商標1、引用商標3及び引用商標5は、外観上、大文字小文字の差異にすぎないつづりを同じく欧文字からなり、観念上、「カネカのプロテックス」といった申立人の造語の意味合いをおおむね想起させ、称呼上、「プロテックス」の音が共通することから、両商標は類似する。 また、本件商標の要部と引用商標2、引用商標4及び引用商標6は、外観上、欧文字と片仮名を相互に変換したものであり、観念上、「カネカのプロテックス」といった申立人の造語の意味合いをおおむね想起させ、称呼上、「プロテックス」の音が共通することから、両商標は類似する。 加えて、本件商標を構成する、「3DProtex」の文字が、その構成全体で申立人の造語とは異なる特定の意味合いを想起させたり、強い出所識別機能を発揮する等の事情もない。 こうしたことから、本件商標を構成する「3D」の文字を、商品の特徴等を表すものと理解し、本件商標を構成する「Protex」の文字を、申立人の周知な出所表示と理解することになる。 そのため、本件商標を構成する、「3DProtex」の文字に接する需要者は、常にその構成全体で一体不可分の商標と認識するとは限らず、「3D」の文字と「Protex」の文字の結合からなる商標と認識し、「カネカの3次元プロテックス」と理解するおそれがある。 したがって、本件商標と引用商標は、その外観、観念または称呼等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、取引の実情を考慮して全体的に考察すれば、具体的出所混同を生じるおそれがある類似性の程度が高い商標である。 なお、仮に、本件商標と引用商標の類似性がさほど高いとはいえないとした場合であっても、引用商標の周知度に関する事実を総合勘案して判断すれば、本件商標の構成中に有する欧文字の「Protex」が需要者に印象付けられ、申立人の「PROTEX」又は「プロテックス」を連想するおそれがあるというべきである。 (6)引用商標の周知度について ア 使用期間 引用商標は、遅くとも1991年から現在に至るまで、30年以上にわたり継続的に使用されている(甲8の6、甲13の1ほか)。 イ 使用地域 引用商標は、申立人会社の事業拠点である我が国、米国、欧州、中国、インド、東南アジア、中東、アフリカなどで使用されている(甲8ほか)。 ウ 使用数量 引用商標が使用される事業ドメインである本件ユニットの連結売上高は、 2022年が1691億円、2021年が1410億円、2020年が1548億円、2019年が1567億円、2018年が1494億円である(甲11)。 引用商標が使用される商品が取り引きされるとき、請求書、インボイスなどの取引書類には、「PROTEX-C」、「PROTEX-S」などと、引用商標の文字がそのまま表示される(甲12の1、甲12の2)。 なお、甲第12号証の1の請求書は、No.1からNo.13のうち、引用商標が8項目を占めるところ、その請求書中、「今回お買い上げ額」には7桁(数千万円)の金額が記載され、「ご請求金額(売掛金残高)」には8桁(数億円)の金額が記載されていることが分かる。 甲第12号証の2の「INVOICE」は、「CONTRACT NO.」2項目のうち、引用商標が1項目であるところ、そのINVOICE中、「PROTEX-E」欄の「AMOUNT(EUR)」には、小数点以下2桁を除く6桁(数十万ユーロ)の金額が記載され、「G.TOTAL」にも、小数点以下2桁を除く6桁(数十万ユーロ)の金額が記載されることが分かる。 これらから、引用商標における売上高について、その取引の一例だけをみても、数千万円から数億円単位に及ぶ巨額の請求となることを推認させるものである。 また、帳簿書類などの取引書類には、「PROC(PROTEX-Cの略)」、「PROM(PROTEX-Mの略)」などと、引用商標の略称が表示されることになる(甲12の3)。 エ 広告宣伝の方法、期間、地域及び規模 引用商標は、遅くとも1991年から、現在に至るまで、本件商品が属する取引分野である繊維の業界において、例えば、繊維を専門とする学術誌(甲13)、繊維に関わる販促展示会(甲14)、繊維の専門紙(甲15)などで「PROTEX」の欧文字又は「プロテックス」の片仮名が表示され、何度も採り上げられるなどしてきた。 オ 需要者の認識度 引用商標を使用した素材は、需要者から高い評価を受けている。 例えば、1993年には、社団法人繊維学会において、引用商標を使用した複合難燃繊維「プロテックス」について、第19回(平成4年度)繊維学会賞技術賞が授与され、「プロテックス」にかかる技術開発が繊維工業の発展に貢献することが大きいと認められた(甲16) 2012年には、英国において、申立人が保有する「PROTEX」の登録商標に関して、フューチャー・ガーメント社ほかを提訴し、勝訴的な裁判上の和解をした。 この和解では、フューチャー・ガーメント社その他の被告は、「PROTEX」商標又は「PROTEX」商標に類似した紛らわしい表示の下での製品供給を許可する権限を有しているのは、申立人であることを認めた(甲17、甲15の34)。 このように、引用商標は、申立人が新たに技術開発した機能性繊維に使用されるとともに、申立人及び申立人が許諾した取引先が独占的に使用できるものである。 引用商標は、取引上、申立人により使用されるとともに、機能性繊維を扱う繊維産業の幅広い各種取引先によっても使用される。 これら日常使用の実績はもとより、引用商標に関わる学術的な実績や国内外の権利行使の実績も積み重ねられるため、繊維業界にかかる取引界において、引用商標は、申立人の強い出所識別標識として機能し、需要者の間で認識されることになる。 カ 小括 以上の各事実を総合勘案すれば、引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願日前に、申立人の業務に係る商品を表すものとして需要者の間に広く認識されるに至っていたものと評価されるべきである。 (7)引用商標が造語よりなるものであるかについて 引用商標は、「PROTEX」の欧文字又は「プロテックス」の片仮名より構成されるところ、親しまれた既成語ではなく、申立人の造語よりなるものであり、独創性の程度は高いものである。 (8)引用商標がハウスマークであるかについて 引用商標は、ハウスマークではないが、本件ユニットの繊維事業における申立人が開発した機能性繊維の主カブランドである(甲8)。 (9)企業における多角経営の可能性 申立人は、資本金約330億円、従業員数(連結)11,335人、売上高(連結2022年3月期)約6,915億円の企業規模を誇る我が国を代表するグローバル企業であり、化成品,食品,医薬品,医療機器,電子材料,合成繊維の製造・販売を手がけるなど、幅広い産業分野の企業を取引相手にすることから、世界経済の変化に伴い、今後も企業グループにおける多角経営が行われる可能性が当然にある(甲8)。 (10)本件商品と引用商標の指定商品の関連性について 本件商品と引用商標の指定商品は、互いに同一又は類似の商品であり、取引者及び需要者が共通することから、両商品の間には強い関連性がある。 また、本件商品「織物、不織布、布地、生地」等と、引用商標3ないし引用商標6の指定商品「織物用化学繊維、化学繊維、化学繊維糸、糸」とは、互いに類似の推定は働かない商品である。 しかしながら、繊維業界において、繊維素材を生産する繊維素材産業や繊維素材をテキスタイルにする工程を扱うテキスタイル産業は、いずれも原料・材料を生産することに加え、ここで生産された糸や生地の原料・材料から繊維製品を製造する繊維商社・アパレルメーカー・OEMやODMメーカーとも取引上密接不可分の関係にある(甲18)。 したがって、「織物、不織布、布地、生地」等と「織物用化学繊維、化学繊維、化学繊維糸、糸」とは、互いに競合先・取引先となり、取引分野・業界が共通することから、両商品の間には密接な関連性がある。 (11)参考裁判例・審決例 本件商標の登録が、商標法第4条第1項第15号に違反するべきものであることは、外観上、同文字種の一連の文字からなる構成中に、需要者に広く知られた商標を有する商標について、周知な商標を連想し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある旨の判断がなされた裁判例・審決例の判旨からも妥当するというべきである(甲19)。 (12)小括 以上の考慮事由に基づく事実を総合勘案して判断すれば、本件商標が本件商品に使用されたときには、その構成中に有する欧文字の「Protex」が需要者に印象付けられるため、申立人が開発した機能性繊維のブランドである「PROTEX」の欧文字又は「プロテックス」の片仮名を連想するおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、申立人の業務にかかる商品又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務にかかる商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について 申立人の主張及び同人が提出した全証拠によると、申立人は、1949年に創立され、経過した現在は、4つの事業ドメインからなるソリューションを提供する企業となっており、引用商標は、「本件ユニット」の「Performance Fibers Solutions Vehicle」と呼ばれる繊維事業で用いる申立人が開発した機能性繊維のブランドであること、繊維の業界において、学術誌、繊維に関わる販促展示会及び繊維の専門紙などで引用商標が採り上げられていること(甲13~甲15)、1993年に社団法人繊維学会において、引用商標を使用した複合難燃繊維「プロテックス」について、第19回(平成4年度)繊維学会賞技術賞が授与されたこと(甲16)は確認できる。 しかしながら、申立人が主張する本件ユニットの連結売上高は、引用商標が使用された商品のみの売上高であるのかについて疑問があり、また、申立人の主張する売上高が、他の同業者のそれと比較して判断することができないため、この売上高の多寡について確認することができない。 また、引用商標が使用された商品について、宣伝広告は、業界紙や学術誌等に限定されており、その他のメディアによる広告宣伝の方法やその提供手段、広告宣伝費等の引用商標の周知著名性を数量的に判断することができる証拠は提出されていない。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 本件商標と引用商標の類似性とその程度 (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「3DProtex」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「スリーディープロテックス」の称呼が生じるものである。 また、「3DProtex」の文字は、一般の辞書等に載録されている成語とは認められないものである。 したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「スリーディープロテックス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標について ア 引用商標1、引用商標3及び引用商標5について 引用商標1、引用商標3及び引用商標5は、上記第2の1(1)、上記第2の2(1)及び(3)のとおり、「PROTEX」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「プロテックス」の称呼が生じるものである。 また、「PROTEX」の欧文字は、一般の辞書等に載録されている成語とは認められないものである。 したがって、引用商標1、引用商標3及び引用商標5は、その構成文字に相応して「プロテックス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標2、引用商標4及び引用商標6について 引用商標2、引用商標4及び引用商標6は、上記第2の1(2)、上記第2の2(2)及び(4)のとおり、「プロテックス」の片仮名を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「プロテックス」の称呼が生じるものである。 また、「プロテックス」の片仮名は、一般の辞書等に載録されている成語とは認められないものである。 したがって、引用商標2、引用商標4及び引用商標6は、その構成文字に相応して「プロテックス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類似性及びその程度について ア 本件商標と引用商標1、引用商標3及び引用商標5の類似性及びその程度について 本件商標は、「3DProtex」の文字を標準文字で表してなり、引用商標1、引用商標3及び引用商標5は、「PROTEX」の欧文字を横書きしてなるところ、本件商標は8文字構成であるのに対し、引用商標1、引用商標3及び引用商標5は6文字構成であること、本件商標の構成中の1文字目及び2文字目の「3D」の文字が、引用商標1、引用商標3及び引用商標5には存在しないことから、この差異がこれらの商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、これらを離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 また、本件商標の構成文字より生じる「スリーディープロテックス」の称呼と引用商標1、引用商標3及び引用商標5より生じる「プロテックス」は、これらの構成音数が明らかに相違するため、これらをそれぞれ一連に称呼しても語調語感が相違し、称呼上、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標1、引用商標3及び引用商標5は、いずれも特定の観念が生じないため、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないものであるから、本件商標と引用商標1、引用商標3及び引用商標5の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、これらは相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり、別異の商標と判断するのが相当である。 イ 本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標6の類似性及びその程度について 本件商標は、「3DProtex」の文字を標準文字で表してなり、引用商標2、引用商標4及び引用商標6は、「プロテックス」の片仮名を横書きしてなるところ、本件商標は8文字構成であるのに対し、引用商標2、引用商標4及び引用商標6は6文字構成であること、本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標6は文字種が明らかに相違するため、この差異がこれらの商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、これらを離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 また、本件商標の構成文字より生じる「スリーディープロテックス」の称呼と引用商標2、引用商標4及び引用商標6より生じる「プロテックス」は、これらの構成音数が明らかに相違するため、これらをそれぞれ一連に称呼しても語調語感が相違し、称呼上、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標6は、いずれも特定の観念が生じないため、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないものであるから、本件商標と引用商標2、引用商標4及び引用商標6の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、これらは相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり、別異の商標と判断するのが相当である。 ウ まとめ 本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、これらは相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり、別異の商標と判断するのが相当である。 3 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について 上記2(3)のア及びイのとおり、本件商標と11号引用商標は、外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、これらは相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 そうすると、本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 4 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできず、上記2のウとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであり、別異の商標と判断するのが相当であるから、本件商品と申立人の業務に係る商品が同一又は類似する商品であり、これらが密接な関連性を有しているとしても、本件商標権者が、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人又は申立人の業務を表示するものと認識するとはいえないため、出所の混同が生じるおそれはない。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-900056

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