特許異議申立
2016-700944
着色組成物、カラーフィルタ及び表示素子
- 審判番号
- 2016-700944
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-154399外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月03日
- 審決日
- 2017年07月26日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5900203号発明「着色組成物,カラーフィルタ及び表示素子」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5900203号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第5900203号の請求項1ないし3,5ないし9に係る特許を維持する。
特許第5900203号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5900203号の請求項1~請求項9に係る特許(以下,それぞれ「本件特許1」~「本件特許9」といい,総称して「本件特許」という。)についての特許出願は,特願2012-154399号として平成24年7月10日(優先権主張 平成23年9月21日)に出願され,平成28年3月18日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について平成28年4月6日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成28年10月3日に,特許異議申立人 半谷 仁から特許異議の申立がされた(異議2016-700944号)。
その後の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成28年11月30日付け:取消理由通知書
平成29年 2月 2日付け:訂正請求書
平成29年 2月 2日付け:意見書(特許権者)
平成29年 3月 9日付け:意見書(特許異議申立人)
平成29年 4月18日付け:取消理由通知書
平成29年 6月 1日付け:訂正請求書
(以下,この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。なお,特許法120条の5第7項の規定により,平成29年2月2日付けの訂正請求書による訂正の請求は,取り下げられたものとみなす。)
平成29年 6月 1日付け:意見書(特許権者)
平成29年 7月 3日付け:意見書(特許異議申立人)
(この意見書を,以下「特許異議申立人意見書」という。)
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正事項
(1) 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は,「特許第5900203号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」というものである。
(2) 訂正事項
本件訂正請求において特許権者が求める訂正事項は,以下のとおりである。なお,下線は訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に,
「(A)着色剤として,(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種と,(a2)緑色着色剤とを含有し,」と記載されているのを,
「(A)着色剤として,(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種と,(a2)緑色着色剤とを含有し,
前記(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種として,キノフタロン系黄色顔料,又はキノフタロン系黄色顔料と黄色染料との混合物を含有し,」と訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に,「請求項4に記載の」と記載されているのを,「請求項3に記載の」と訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に,「請求項1~5のいずれか1項に記載の」と記載されているのを,「請求項1~3及び5のいずれか1項に記載の」と訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に,「請求項1~6のいずれか1項に記載の」と記載されているのを,「請求項1~3,5及び6のいずれか1項に記載の」と訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に,「請求項1~7のいずれか1項に記載の」と記載されているのを,「請求項1~3及び5~7のいずれか1項に記載の」と訂正する。
2 訂正の適否
以下,本件訂正請求による訂正前の請求項1を「訂正前請求項1」といい,訂正前請求項1に係る発明を「訂正前発明1」という。また,他の請求項や,訂正後の請求項についても同様とする。
(1) 120条の5第4項について
本件訂正請求は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である〔請求項1~請求項9〕ごとにされたものである。
したがって,本件訂正請求は,特許法120条の5第4項の規定に適合する。
(2) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は,訂正前発明1に対して,訂正前請求項4に記載された構成を加えて,訂正後発明1とする訂正である。また,請求項1の記載の訂正にともない,連動して訂正されたことになる請求項2~請求項9との関係においても,同様である。
したがって,訂正事項1による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項1による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は,請求項4を削除する訂正である。また,請求項4の記載の訂正にともない,連動して訂正されたことになる請求項5~請求項9との関係においても,同様である。
したがって,訂正事項2による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項3~訂正事項6について
訂正事項3~訂正事項6による訂正は,訂正事項2による訂正と整合するように,請求項5~請求項8の引用記載を訂正するものである。また,訂正事項3~訂正事項6による訂正にともない,連動して訂正されたことになる請求項との関係においても,同様である。
したがって,訂正事項3~訂正事項6による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項3~訂正事項6による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(5) 小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法120条の5第2項1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。また,本件訂正請求は,同法120条の5第4項の規定にも適合する。
したがって,訂正後の請求項〔1~9〕について,訂正を認める。
第3 取消理由についての判断
1 本件特許発明について
前記「第2」のとおり,本件訂正請求による訂正を認めることとなった。したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項3及び請求項5~請求項9に係る発明(以下,「本件特許発明1」などといい,総称する場合は「本件特許発明」という。)は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項3及び請求項5~請求項9に記載された,以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
(A)着色剤,(B)バインダー樹脂並びに(C)架橋剤を含有する着色組成物であって,
(A)着色剤として,(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種と,(a2)緑色着色剤とを含有し,
前記(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種として,キノフタロン系黄色顔料,又はキノフタロン系黄色顔料と黄色染料との混合物を含有し,
(C)架橋剤として,2個以上の重合性不飽和基を有し,且つ2個以上の重合性不飽和基のうち少なくとも1個が下記式(1)で表される基である化合物を含有する
ことを特徴とする着色組成物。
【化1】
〔式(1)において,R1は水素原子又はメチル基を示し,R2は炭素数1~10のアルカンジイル基を示し,mは1~5の整数を示し,「*」は結合手であることを示す。〕
【請求項2】
前記(C)架橋剤として,多価アルコール,(メタ)アクリル酸及びラクトン類を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートを含有する,請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
前記(C)架橋剤として下記式(2)で表される化合物を含有する,請求項1又は2に記載の着色組成物。
【化2】
〔式(2)において,6個のRは全てが前記式(1)で表される基であるか,又は6個のRのうち1~5個が前記式(1)で表される基であり,且つ残余が下記式(3)で表される基若しくは水素原子である。〕
【化3】
〔式(3)において,R3は水素原子又はメチル基を示し,「*」は結合手であることを示す。〕
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記キノフタロン系黄色顔料として,C.I.ピグメントイエロー138を含有する,請求項3に記載の着色組成物。
【請求項6】
前記2個以上の重合性不飽和基を有し,且つ2個以上の重合性不飽和基のうち少なくとも1個が前記式(1)で表される基である化合物の含有量が,前記(B)バインダー樹脂100質量部に対して10~98質量部である,請求項1~3及び5のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項7】
前記(a2)緑色着色剤として,ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを含有する,請求項1~3,5及び6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
請求項1~3及び5~7のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された画素を備えてなるカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを具備する表示素子。」
2 取消理由の概要
平成29年4月18日付けで特許権者に通知した,本件訂正による訂正前の本件特許1~本件特許9に対する取消理由は,概略,特許請求の範囲の請求項1の「但し,インクジェット用着色組成物を除く」という記載により,どのような着色組成物が除かれるのか明確であるとはいえない,というものである。
3 当合議体の判断
本件訂正請求により,「但し,インクジェット用着色組成物を除く」という記載は存在しないものとなった。
したがって,本件特許はもはや同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということができない。
第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由について
1 特許異議申立の理由の概要
特許異議申立の理由は,概略,本件特許発明1,2,3,7,8及び9は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,また,本件特許発明1~9は,甲1,甲2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同法同条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
甲1:特開2011-148910号公報
甲2:特開2011-132382号公報
なお,特許異議申立人は,周知技術を示す文献として以下の証拠を提出している。
甲3:特開平11-256053号公報
甲4:国際公開第2011-105227号
甲5:「カラーフィルターにおける新しい材料開発と製造プロセス 全集」,株式会社 技術情報協会,2006年7月31日発行,38~45頁
甲6:市村國宏監修,「カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス」,株式会社 シーエムシー出版,2010年12月18日普及版発行,79~81頁
甲7:「カラーフィルタ最新技術動向」,株式会社 情報機構,2005年5月31日発行,25~31頁
甲8:特開2011-128239号公報
甲9:特開平11-44955号公報
甲10:特開2001-59906号公報
甲11:特開2010-168531号公報
甲12:特開2011-28219号公報
2 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
以下,本件特許についての特許出願を,「本件出願」といい,本件出願の優先権主張の日を,「優先日」という。
(1) 甲1の記載
本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲1には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,インクジェット記録用インク組成物,及びカラーフィルター基板に関する。本発明のインクジェット記録用インク組成物は,例えば,液晶ディスプレイパネルのカラーフィルター基板の製造に好適に用いることができる。」
イ 「【背景技術】
…(省略)…
【0002】
薄型テレビジョンなどに利用されている液晶ディスプレイパネルには,主要な構成要素として,カラーフィルター基板と,液晶セル基板と,バックライトユニットとが含まれている。
…(省略)…
【0004】
従来,カラーフィルター基板の製造は,顔料が分散されたフォトレジスト液を透明基板上に塗布してから,乾燥,露光,現像,及び硬化などの工程を繰り返すことによって行われていた。そのため,生産性が低く,コスト低減の要求が高くなっている。
…(省略)…
こうした要求に従い,製造方法や製造設備の見直しが行われ,インクジェット法によるカラーフィルター基板の製造が注目されている。
…(省略)…
【0005】
インクジェット法によるフィルターセグメントの形成は,予め透明基板上にブラックマトリックスを設け,ブラックマトリックスで区分けされた領域内にインクジェット法によりインクを充填することによって実施する。しかしながら,従来の一般的なインクジェットインクは,吐出安定性などを確保する目的で低粘度にする必要があるため,顔料の含有量が5重量%前後と少ない。このようなインクを用いて,カラーフィルター基板の通常の膜厚のフィルターセグメントを形成しても,カラーフィルター基板として必要な濃度を提供することはできない。
…(省略)…
【0007】
従って,インクジェット法によるフィルターセグメントの形成におけるインキとしては,顔料を高濃度で微細分散して含有すると同時に,インクジェット法により基板上の所望の位置に安定して吐出させることのできる物性(低粘度)である事が求められる。更にカラーフィルター用インキとしては,近年表示性能の向上の為,高コントラスト比(ON状態とOFF状態における表示装置上の輝度の比)化が求められており,微細顔料を微細に分散する事も併せて求められる。
顔料の高濃度化/微細分散化/低粘度化を併せ持つ方法としては,顔料分散剤の利用が考えられる。顔料分散剤は,顔料に吸着する部位と,分散媒である溶剤と親和性の高い部位との構造を併せ持ち,この2つの機能の部位のバランスで性能が決まる。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は,顔料を高濃度にて微細分散して含有すると同時に,インクジェット法により基板上の所望の位置に安定して吐出させることのできる物性(低粘度化など),カラーフィルタとしての耐性(耐熱性/耐溶剤性など)を有するインク組成物を提供することにある。また,本発明の課題は,上記インクを用いてインクジェット法により形成されるカラーフィルター基板を提供することにある。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は,樹脂型分散剤(F),顔料(P),熱反応性化合物(G),および有機溶剤(H)を含んでなるインクジェット記録用インク組成物において,
樹脂型分散剤(F)が,片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と,ジイソシアネート(B)のイソシアネート基と,を反応してなる,両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基と,
少なくともポリアミン(C)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と,を反応させてなる樹脂型分散剤(F)であるインクジェット記録用インク組成物によって解決することができる。
…(省略)…
【0013】
又,本発明によるインク組成物の更に別の好ましい態様においては,前記熱反応性化合物(G)が,メラミン化合物,ベンゾグアナミン化合物,エポキシ化合物,オキセタン化合物,フェノール化合物,ベンゾオキサジン,ブロック化カルボン酸化合物,ブロック化イソシアネート化合物,カルボジイミド化合物,アクリレート系モノマー,又はシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上である。
【0014】
又,本発明によるインク組成物の更に別の好ましい態様においては,更に,バインダー樹脂(I)を含み,特には,前記バインダー樹脂が,熱可塑性樹脂である。
…(省略)…
【発明の効果】
【0018】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,顔料分散性に優れた前記樹脂型分散剤を含有しており,耐熱,耐薬品性が良好で,更に顔料濃度が高いにもかかわらず,低粘度,経時粘度安定性かつ吐出安定性が良好であり,充分な耐性と印字濃度の印刷層を提供することができる。また本発明のインクジェット記録用インク組成物を利用してカラーフィルター基板を製造する場合に,従来の方法と比較してはるかに効率よく高性能なカラーフィルターを生産することができる。」
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)樹脂型分散剤(F)
まず,本発明で用いる樹脂型分散剤(F)について説明する。
本発明のカラーフィルター用着色組成物に用いられる顔料分散剤は,片末端領域に2つのヒドロキシル基を有するビニル重合体(A)のヒドロキシル基と,及びジイソシアネート(B)のイソシアネート基と,を反応してなる,両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(E)のイソシアネート基と,少なくともポリアミン(C)を含むアミン化合物の一級及び/又は二級アミノ基と,を反応させることによって合成される。
【0020】
本発明の最大の特徴はこの顔料分散剤を使用することであり,従来公知の顔料分散剤では課題の解決が困難である。」
オ 「【0093】
(2)顔料(P)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,顔料(P)を含有している。
【0094】
顔料(P)としては,有機顔料,無機顔料,又はアセチレンブラック,チャンネルブラック,若しくはファーネスブラック等のカーボンブラックを用いることができ,顔料(P)は2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
有機顔料としては,ジケトピロロピロール系顔料,アゾ,ジスアゾ,若しくはポリアゾ等のアゾ系顔料,銅フタロシアニン,ハロゲン化銅フタロシアニン,若しくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料,アミノアントラキノン,ジアミノジアントラキノン,アントラピリミジン,フラバントロン,アントアントロン,インダントロン,ピラントロン,若しくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料,キナクリドン系顔料,ジオキサジン系顔料,ペリノン系顔料,ペリレン系顔料,チオインジゴ系顔料,イソインドリン系顔料,イソインドリノン系顔料,キノフタロン系顔料,スレン系顔料,又は金属錯体系顔料等を挙げることができる。
…(省略)…
【0099】
イエロー色着色組成物には,例えば,C.I.Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199等の黄色顔料を用いることができる。」
カ 「【0104】
(3)熱反応性化合物(G)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,熱反応性化合物(G)を含有している。
…(省略)…
【0105】
前記熱反応性化合物(G)としては,例えば,メラミン化合物,ベンゾグアナミン化合物,エポキシ化合物,オキセタン化合物,フェノール化合物,ベンゾオキサジン,ブロック化カルボン酸化合物,ブロック化イソシアネート化合物,カルボジイミド化合物,アクリレート系モノマー,又はシランカップリング剤を用いることができる。更に,前記熱反応性化合物として,少なくともメラミン化合物及び/又はベンゾグアナミン化合物を含む事が好ましい。メラミン化合物若しくはベンゾグアナミン化合物は,加熱処理後の変色が極めて小さく,少ない添加量で高い耐性を付与できる為に,熱反応性化合物の添加量を低減する事が可能となり,インキの高顔料濃度化や経時安定性の向上に繋がる。
…(省略)…
【0112】
アクリレートモノマーとしては,例えば,メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,グリセリンジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート,1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート,カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート,トリシクロデカニル(メタ)アクリレート,エステルアクリレート,メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル,エポキシ(メタ)アクリレート,又はウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル,(メタ)アクリル酸,スチレン,酢酸ビニル,ヒドロキシエチルビニルエーテル,エチレングリコールジビニルエーテル,ペンタエリスリトールトリビニルエーテル,(メタ)アクリルアミド,N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド,N-ビニルホルムアミド,又はアクリロニトリル等を挙げることができるが,必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0113】
アクリレートモノマーを用いる場合には,更に硬化性を向上させる目的で,重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては,加熱時に硬化性を向上させる目的で熱重合開始剤を用いてもよい。熱重合開始剤としては,有機過酸化物系開始剤,アゾ系開始剤等を挙げることができる。」
キ 「【0115】
(4)有機溶剤(H)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,有機溶剤(H)を含有している。」
ク 「【0121】
(5)顔料誘導体(D)
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,更に顔料誘導体(D)を含有することができる。」
ケ 「【0132】
(6)バインダー樹脂
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,更にバインダー樹脂を含有することができる。」
コ 「【0153】
(9)カラーフィルター基板
本発明のインクジェット記録用インク組成物を用いて,インクジェット法により,カラーフィルター基板を製造することができる。」
サ 「【0156】
以下,実施例によって本発明を具体的に説明するが,これらは本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例及び比較例中,部及び%は,重量部及び重量%を表す。
…(省略)…
【0157】
[1]顔料(P):
(1)レッド顔料A:C.I.Pigment Red 254
(2)レッド顔料B:C.I.Pigment Red 177
(3)グリーン顔料A:C.I.Pigment Green 36
(4)グリーン顔料B:C.I.Pigment Green 58
(5)イエロー顔料A:C.I.Pigment Yellow 138
(6)イエロー顔料B:C.I.Pigment Yellow 150
(7)ブルー顔料:C.I.Pigment Blue 15:6
(8)バイオレット顔料:C.I.Pigment Violet 23
[2]顔料誘導体(D):
…(省略)…
【0161】
顔料誘導体〔D-3〕
一般式(12):
【0162】
【化8】
…(省略)…
【0181】
[5]熱反応性化合物(G)
(1)三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有メラミン化合物 ニカラックMX-43
(2)三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有メラミン化合物 ニカラックMX-417
(3)三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物 ニカラックSB-401
(4)三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物 ニカラックBL-60
(5)日本化薬社製アクリルモノマー DPCA-60
(6)バイエル社製イソシアネート化合物 デスモジュールBL-4265
(7)日本化薬社製エポキシ化合物EPPN―201
(8)東亞合成社製アクリルモノマー アロニックスM-400
…(省略)…
【0184】
《実施例11》
グリーン顔料A 72部,イエロー顔料A 18部,顔料誘導体(D-3)10部,樹脂型分散剤(C6)溶液92部,樹脂型分散剤(C12)溶液40部,溶剤(13BGDA)242部をミキサーに入れて混合し,更にサンドミルに入れて分散を行い,分散体を得た。更にメラミン化合物(MX-43)20部,アクリルモノマー(アロニックスM-400),溶剤(13BGDA)173部を加えホモディスパにて混合した。ゴミや粗大物をフィルタ濾過し,顔料濃度14%のインクジェットインクを得た。
実施例11と同様にして,表3~5の組成表内の実施例12~14,比較例9,10の組成になるように分散,調液を行いインクジェットインクを得た。
…(省略)…
【0193】
【表4】
」
シ 「【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は,耐熱性,耐薬品性が良好で,更に顔料濃度が高いにもかかわらず,低粘度,経時粘度安定性かつ吐出安定性が良好である。また従来の方法と比較して,はるかに効率よく高性能なカラーフィルター,パッケージ,又は屋外看板などを生産することができる。」
(2) 甲1発明
以下,「C.I.Pigment Green 58」,「C.I.Pigment Yellow 150」及び「C.I.Pigment Yellow 138」を,それぞれ「PG58」,「PY150」及び「PY138」と記載する。
ア 甲1発明A
甲1の【0193】には,実施例13として,以下の発明が記載されている。
「 グリーン顔料として,「PG58」が72重量部,
イエロー顔料として,「PY150」が18部,
顔料誘導体として,「一般式(12)で表される化合物」が10部,
樹脂型分散剤が46部(固形分),
バインダー樹脂が20部,
熱反応性化合物として,「三和ケミカル社製イミノ基・メチロール基含有メラミン化合物 ニカラックMX-417」が20部,及び「日本化薬社製アクリルモノマー DPCA-60」が20部,
溶剤が481部,
になるように分散,調液を行ったインクジェットインク。
一般式(12)で表される化合物:
」
イ 甲1発明B
甲1の【0193】には,実施例12として,以下の発明が記載されている。
「 グリーン顔料として,「PG58」が72重量部,
イエロー顔料として,「PY138」が18部,
顔料誘導体として,「一般式(12)で表される化合物」が10部,
樹脂型分散剤が46部(固形分),
バインダー樹脂が20部,
熱反応性化合物として,「三和ケミカル社製アルコキシアルキル基含有メラミン化合物 ニカラックMX-43」が20部,及び「東亞合成社製アクリルモノマー アロニックスM-400」が20部,
溶剤が481部,
になるように分散,調液を行ったインクジェットインク。
一般式(12)で表される化合物:
」
(3) 甲2の記載
本件出願の優先日前に頒布された刊行物である甲2には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,カラーフィルタ用インクジェットインキ組成物,並びにこれを用いたカラーフィルタに関する。」
イ 「【背景技術】
【0002】
薄型テレビジョンなどに利用されている液晶ディスプレイパネルには,主要な構成要素として,カラーフィルター基板と,液晶セル基板と,バックライトユニットとが含まれている。
…(省略)…
【0004】
従来,カラーフィルター基板の製造は,顔料が分散されたフォトレジスト液を透明基板上に塗布してから,乾燥,露光,現像,及び硬化などの工程を繰り返すことによって行われていた。そのため,生産性が低く,コスト低減の要求が高くなっている。特に,液晶ディスプレイパネルの大型化に伴って,フォトレジストに替わる技術が求められてきた。
【0005】
こうした要求に従い,製造方法や製造設備の見直しが行われ,インクジェット法によるカラーフィルター基板の製造が注目されている。…(省略)…
【0006】
…(省略)…
しかしながら,インクジェット装置で吐出する場合,インクジェット装置で吐出する場合,ノズルでのわずかな乾燥によりインクの粘度増加が起こり,ノズルの目詰まりにつながる。さらにインキ中の固形成分が溶剤中で十分溶解し,溶解した成分の分子鎖が十分な広がりを保っていないとインクジェットヘッドにおけるピエゾの動きに追随することが難しく,偏飛行が発生し,安定吐出性が損なわれる。
さらに塗膜の乾燥,焼き付け時において十分な流動性がないと,ブラックマトリックスで区分けされた領域内の画素が凸型になることで画素平坦性が悪くなり画素内で色ムラが生じるという問題も起こる。
…(省略)…
【0008】
すなわち,インクジェット法により優れた画素平坦性を得るには,塗膜の乾燥時のみならず,焼き付け時において十分な流動性を付与する必要がある。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は,インクジェット法を用いたカラーフィルタ製造において,吐出安定性,画素部の平坦性に優れ,画素部内の色濃度のばらつきが小さく,色ムラのない表示品質に優れたカラーフィルタを製造可能なカラーフィルタ用インクジェットインキを提供することを目的とする。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は,少なくとも顔料,有機溶剤,バインダー成分,及びアクリルモノマーを含有し,前記アクリルモノマーの少なくとも1種が,ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物であることを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ組成物に関する。
また本発明は,上記インキに用いる溶剤として,常温における沸点が200℃以上である(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤,またはアルキレングリコールジアセテート系溶剤を少なくとも1種類以上含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインキ組成物に関する。
…(省略)…
【発明の効果】
【0014】
インクジェット法を用いたカラーフィルタ製造において,吐出安定性,画素平坦性を解決したインクジェットインキを提供することができた。」
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のインクジェットインキは,アクリルモノマーとしてε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物を含有することを特徴としている。
【0016】
一般に,アクリルモノマーは熱反応性物質として,塗膜耐性を付与するために用いられる。アクリルモノマーの中で,官能基数が多いほど焼き付け時における架橋密度が高く,優れた塗膜硬度と耐性が得られることが知られている。しかしながら,架橋密度が高いが故に塗膜の柔軟性が損なわれやすく,焼き付け時における流動性を付与することが難しい。
【0017】
高架橋密度を維持しながら,塗膜の柔軟性を得るには,熱流動に追随できるようアクリルモノマー自体の分子鎖を長くする必要がある。アクリルモノマーの分子鎖を長くする方法としては,多価アルコールの末端OH基をカルボン酸やラクトン等で変性させる方法が知られている。
【0018】
その中でもε-カプロラクトンで変性したものは,焼き付け時において柔軟性に優れるため,塗膜の熱流動性を付与するには特に好適であることが,本発明者による研究により明らかとなった。また,高架橋密度を得るため多官能のジペンタエリスリトールを用いて変性させたものは,塗膜の薬品耐性に優れるため,本発明で用いるアクリルモノマーとして好適であることが分かった。さらに,ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物は,インキ中の溶剤に対して十分溶解し,溶解した際に分子鎖が十分な広がりを保ちやすく,インクジェットヘッドにおけるピエゾの動きに追随しやすいことから,偏飛行など発生せず,優れた安定吐出性が得られやすいことが,本発明者による検討により明らかとなり本発明を完成した。
【0019】
本発明に用いることのできるアクリルモノマーとしては,ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物が挙げられ,具体的には,日本化薬(株)製KAYARADDPCA-20,KAYARAD DPCA-30,KAYARAD DPCA-60,KAYARAD DPCA-120等が挙げることができる。また,これらのアクリルモノマーを単独あるいは複数併用しても良い。」
(4) 甲2記載技術
甲2の課題及び課題解決手段(【0010】及び【0011】)からみて,甲2には,次の技術が記載されている(以下「甲2記載技術」という。)。
「 吐出安定性,画素部の平坦性に優れ,画素部内の色濃度のばらつきが小さく,色ムラのない表示品質に優れたカラーフィルタを製造可能なカラーフィルタ用インクジェットインキ組成物であって,
少なくとも顔料,有機溶剤,バインダー成分,及びアクリルモノマーを含有し,前記アクリルモノマーの少なくとも1種が,ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物である,
カラーフィルタ用インクジェットインキ組成物。」
(5) 周知技術
ア 甲5の記載
甲5の43頁11~12行には,カラーフィルターの緑色顔料に関して,次の記載がある。
「他の顔料と同様に緑色顔料も補色が使われるが,この場合,C.I.Pigment Yellow 138(構造式11)やC.I.Pigment 150(構造式12)が用いられている。」
(当合議体注:「C.I.Pigment 150」は「C.I.Pigment Yellow 150」を意味すると解される。)
イ 甲6の記載
甲6の80頁7~10行には,LCD用カラーフィルターのG色用の顔料に関して,次の記載がある。
「色純度を高める…ため,補色用顔料として着色力に優れるC.I. Pigment Yellow 150(ニッケル錯体)が主にテレビ用に,透過性に優れるC.I. Pigment Yellow 138(キノフタロン)が主にモニター用に混合使用されている。」
ウ 甲5及び甲6に記載された事項からみて,以下の技術は,周知技術である。
「カラーフィルターの緑色画素の補色用顔料として,PY150やPY138を使用すること。」
3 対比及び判断
(1) 対比
本件特許発明1と甲1発明Aを対比すると,以下のとおりとなる。
ア 着色剤
甲1発明Aの「グリーン顔料」,「イエロー顔料」及び「顔料誘導体」は,その化合物名ないし一般式からみて,それぞれ「緑色着色剤」,「黄色顔料」及び「黄色染料」である。
そうしてみると,甲1発明Aの「グリーン顔料」及び「顔料誘導体」は,それぞれ,本件特許発明1の「(a2)緑色着色剤」及び「黄色染料」に相当する。また,甲1発明Aの「イエロー顔料」と本件特許発明1の「キノフタロン系黄色顔料」は,「黄色顔料」の点で共通する。
また,甲1発明Aの「インクジェットインク」は,本件特許発明1の「着色組成物」が具備する,「(A)着色剤」「を含有する着色組成物であって」,「(A)着色剤として,(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種と,(a2)緑色着色剤とを含有し」の要件を満たす。
イ バインダー樹脂
甲1発明Aの「バインダー樹脂」は,本件特許発明1の「(B)バインダー樹脂」に相当する。
ウ 架橋剤
甲1発明Aの「熱反応性化合物」は,「日本化薬社製アクリルモノマー DPCA-60」ある。また,「DPCA-60」は,本件特許発明1の式(1)において,m=1,式(1)で表される基の数=6,R1が全て水素原子,R2がペンタン-1,5-ジイル基である化合物である(本件特許の明細書の【0053】)。
したがって,甲1発明Aの「熱反応性化合物」は,本件特許発明1の「(C)架橋剤」に相当するとともに,「(C)架橋剤として,2個以上の重合性不飽和基を有し,且つ2個以上の重合性不飽和基のうち少なくとも1個が」本件特許発明1の「式(1)で表される基である化合物を含有する」との要件も満たす。
エ 着色組成物
以上ア~ウからみて,甲1発明Aの「インクジェットインク」は,本件特許発明1の「着色組成物」に相当する。
(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1発明Aは,次の構成で一致する。
「 (A)着色剤,(B)バインダー樹脂並びに(C)架橋剤を含有する着色組成物であって,
(A)着色剤として,(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種と,(a2)緑色着色剤とを含有し,
(C)架橋剤として,2個以上の重合性不飽和基を有し,且つ2個以上の重合性不飽和基のうち少なくとも1個が下記式(1)で表される基である化合物を含有する
ことを特徴とする着色組成物。
【化1】
〔式(1)において,R1は水素原子又はメチル基を示し,R2は炭素数1~10のアルカンジイル基を示し,mは1~5の整数を示し,「*」は結合手であることを示す。〕」
イ 相違点1
本件特許発明1は,「(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種」として,「キノフタロン系黄色顔料,又はキノフタロン系黄色顔料と黄色染料との混合物を含有し」ているのに対して,甲1発明Aは,「(a1)黄色染料及びキノフタロン系黄色顔料よりなる群から選ばれる少なくとも1種」として,「キノフタロン系黄色顔料ではない黄色顔料(PY150)と黄色染料との混合物を含有し」ている点。
(3) 判断
相違点1に係る構成を克服して本件特許発明1の構成に到るためには,甲1発明Aの「PY150」を,キノフタロン系黄色顔料である「PY138」に替えれば良い。
ここで,「カラーフィルターの緑色画素の補色用顔料として,PY150やPY138を使用すること。」は,当業者において周知である。実際に,甲1の【0193】に記載された実施例11又は実施例12においては,イエロー顔料として,「PY138」が使用されている。
しかしながら,甲1の実施例11及び実施例12では,熱反応性化合物として,「DPCA-60」ではなく「M-400」が使用されている。そうしてみると,甲1に接した当業者が,仮に,「PY150」ではなく「PY138」を用いる際には,甲1の実施例11又は実施例12に倣って,「DPCA-60」ではなく「M-400」を使用すると考えるのが相当である。そして,「M-400」は,本件特許発明1の「(C)架橋剤」の要件を満たさない。
(当合議体注:「M-400」は,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物である。)
したがって,甲1発明Aを容易推考の出発点としては,本件特許発明1の構成には到らない。
なお,特許異議申立人は,甲1の【0193】に記載された実施例14に基づく容易推考についても申し立てているが,この場合についても,甲1発明Aと同様である。
(4) 甲1発明Bについて
本件特許発明1と甲1発明Bを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点2)
本件特許発明1の「着色組成物」は,(C)架橋剤として,2個以上の重合性不飽和基を有し,「且つ2個以上の重合性不飽和基のうち少なくとも1個が下記式(1)で表される基である」化合物を含有するのに対して,引用発明の「インクジェットインク」は,(C)架橋剤として,2個以上の重合性不飽和基を有するけれども,「且つ2個以上の重合性不飽和基のうち少なくとも1個が下記式(1)で表される基」ではない(下記式(1)において,m=0である)化合物を含有する点。
【化1】
〔式(1)において,R1は水素原子又はメチル基を示し,R2は炭素数1~10のアルカンジイル基を示し,mは1~5の整数を示し,「*」は結合手であることを示す。〕
相違点2についての判断は,以下のとおりである。
すなわち,甲1発明Bを容易推考の出発点として本件特許発明1の構成に到るためには,甲1発明Bの「M-400」を,本件特許発明1の架橋剤の要件を満たす「DPCA-60」等に替えれば良い。
ここで,甲2には甲2記載技術が記載されている。また,「画素部の平坦性に優れ,画素部内の色濃度のばらつきが小さく,色ムラのない表示品質に優れたカラーフィルタを製造」することは,当業者に自明な課題といえる。したがって,甲1発明Bにおいて,「M-400」を,「ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物」である「DPCA-60」等に替えることには,動機付けがある。
しかしながら,甲1に接した当業者が,仮に,「M-400」ではなく「DPCA-60」を用いる際には,甲1発明Aに倣って,「PY138」ではなく「PY150」を使用すると考えるのが相当である。
したがって,甲1発明Bを容易推考の出発点としても,本件特許発明1の構成には到らない。
(5) 念のため,当業者において,イエロー顔料と熱反応性化合物の組み合わせは随意であると仮定する。すなわち,当業者は,甲1の【0193】の表4に記載されたイエロー顔料と熱反応性化合物の組み合わせにとらわれることなく,イエロー顔料を「PY150」から「PY138」に替えたり,熱反応性化合物を「M-400」から「DPCA-60」に替えたりすることができると仮定する。
この場合,イエロー顔料と熱反応性化合物の組み合わせとしては,以下の4つの組み合わせが想定される。
組み合わせA:「PY138」と「DPCA-60」
組み合わせB:「PY138」と「M-400」
組み合わせC:「PY150」と「DPCA-60」
組み合わせD:「PY150」と「M-400」
ところで,本件特許の明細書の【0125】の表1には,顔料分散液と架橋剤の組み合わせが,以下の組み合わせであるものが開示されている。
実施例1:「PY150及びPY138」と「DPCA-60」
比較例1:「PY150及びPY138」と「MAX-3510」
参考例1:「PY150」と「DPCA-60」
参考例2:「PY150」と「MAX-3510」
(当合議体注:表1は以下の表である。ここで,「MAX-3510」は,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(【0126】)であるから,甲1でいえば「M-400」に対応するものと考えられる。そして,上記「組み合わせA」,「組み合わせB」,「組み合わせC」及び「組み合わせD」は,それぞれ「実施例1」,「比較例1」,「参考例1」及び「参考例2」に対応するものと考えられる。)
【表1】
そして,これら各例における,ポストベーク前後の透過率の変化を,【0127】の表2に基づいて計算すると,以下のとおりとなる。
実施例1:-0.7%
比較例1:-1.2%
参考例1:-0.9%
参考例2:-0.8%
(当合議体注:表2は以下の表である。)
【表2】
表2によると,参考例1と参考例2の透過率の低下は,誤差とも解しる程度の僅かな違いしかない。すなわち,イエロー顔料として「PY138」を含有しない(「PY150」のみである)場合には,ポストベーク前後の透過率の低下に,熱反応性化合物に依存した有意な差が生じない。他方,実施例1と比較例1の透過率の低下は,誤差とはいえない程度の大きな違いがある。すなわち,イエロー顔料として「PY138」を含有する場合には,ポストベーク前後の透過率の低下に,熱反応性化合物に依存した有意な差が生じる。
そうしてみると,イエロー顔料と熱反応性化合物の組み合わせが随意であると仮定することは妥当とはいえず,組み合わせに応じた異質な効果が生じうることに,配慮すべきものといえる。
特許異議申立人は,概略,甲1に記載された発明において甲2記載技術を採用してなるインクジェットインクは,ポストベーク後も画素平坦性を維持できるから光の乱反射がなく,透明性が上がることは当業者に自明であると主張する(特許異議申立書の16頁13~19行)。
しかしながら,仮に,特許異議申立人が主張する特許異議申立の理由のとおりならば,参考例2と参考例1との比較においても,ポストベーク後の透過率の低下に,熱反応性化合物に依存した有意な差が認められるはずであるが,そのような結果とはなっていない。
したがって,特許異議申立の理由によっては,当業者が本件特許発明1を容易に発明できたものであるとすることはできない。
(6) 他の本件特許発明について
本件特許発明2,本件特許発明3,本件特許発明5~本件特許発明6は,本件特許発明1の構成に対して,さらに他の発明特定事項を加えた発明である。
したがって,これら発明についても,当業者が容易に発明できたものであるということができない。
第5 まとめ
以上のとおり,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許1~本件特許3,本件特許5~本件特許9を取り消すことはできない。また,他にこれら特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして,請求項4は削除された。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700944