特許異議申立
2016-700920
軽量な石膏ボード、スラリー、及び、その製造方法
- 審判番号
- 2016-700920
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2009-535262
- 登録番号
- 特許第5894356号(P5894356)
- 請求日
- 2016年09月27日
- 審決日
- 2017年05月17日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】毛受 隆典
- 【権利者代理人】森川 泰司
- 【権利者代理人】雨宮 康仁
- 【権利者代理人】桜田 圭
- 【権利者代理人】石堂 毅彦
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 新居田 知生
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.121-YAA(C04B) / P1651.536-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B) / P1651.54 -YAA(C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第184条の18、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5894356号発明「軽量な石膏ボード、スラリー、及び、その製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5894356号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔14~19〕、〔20~24〕について訂正することを認める。
特許第5894356号の請求項1~24に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5894356号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~24に係る特許についての出願は、2007年10月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2006年11月2日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成28年3月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人金澤毅により特許異議の申立てがされ、平成28年11月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年2月23日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年4月5日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)請求項1に記載された「前記ボードは31pcf(約500kg/m3)以下の密度を有する」を、「前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。
(2)請求項14に記載された「前記ボードは31pcf(約500kg/m3)以下の密度を有する」を、「前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」に訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。
(3)請求項20に記載された「(3)乾燥後の前記ボードは35pcf(約560kg/m3)以下の密度を有する」を、「(3)乾燥後の前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)の密度を有する」に訂正する(以下、「訂正事項3」という。)。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1に記載された「軽量石膏ボード」の「密度」を「31pcf(約500kg/m3)以下」から「12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 訂正事項1に関連する記載として、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明には、実施例の表2の処方Bボード、表3の処方Dボード及び処方Eボード、並びに、表5~表7の試験ボード1~4、6~13について、1/2インチ厚の石膏ウォールボードのボード重量が500~1541Lb/MSFであることが記載されている。そして、前記ボード重量は、厚さが1/2インチの単位面積(1000平方フィート)あたりの重さ(ポンド)であり、前記ボード重量をボードの密度に換算すると、12~約37pcfとなることから、本件特許明細書には、軽量石膏ボードの密度が12~約37pcfであることが記載されていると認められる。よって、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項1は、「軽量石膏ボード」の「密度」の数値範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項1に係る訂正前の請求項2~7は、請求項1を引用するものであり、訂正事項1に係る訂正は一群の請求項に請求されたものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、請求項14に記載された「軽量石膏ボード」の「密度」を「31pcf(約500kg/m3)以下」から「12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 訂正事項2に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記(1)イのとおり、軽量石膏ボードの密度が12~約37pcfであることが記載されていると認められるから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項2は、「軽量石膏ボード」の「密度」の数値範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項2に係る訂正前の請求項15~19は、請求項14を引用するものであり、訂正事項2に係る訂正は一群の請求項に請求されたものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、請求項20に記載された「軽量石膏ボード」の「密度」を「35pcf(約560kg/m3)以下」から「12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3))」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 訂正事項3に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記(1)イのとおり、軽量石膏ボードの密度が12~約37pcfであることが記載されていると認められるから、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項3は、「軽量石膏ボード」の「密度」の数値範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項3に係る訂正前の請求項21~24は、請求項20を引用するものであり、訂正事項3に係る訂正は一群の請求項に請求されたものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕、〔14~19〕、〔20~24〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~24に係る発明(以下「本件発明1~24」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~24に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を含有する軽量石膏ボードであって、
石膏結晶マトリックスを含有する前記硬化石膏芯は、(i)50ミクロン未満の直径の細孔サイズを有する空隙、(ii)50ミクロンから100ミクロンの直径の細孔サイズを有する空隙、及び、(iii)走査電子顕微鏡写真像を用いて空隙を計測して前記硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する空隙から構成される細孔サイズ分布を有し、
前記石膏結晶マトリックスは、前記硬化石膏芯が、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有するように形成されており、且つ、
前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有することを特徴とする、軽量石膏ボード。
【請求項2】
前記ボードの密度は、24pcf(約380kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)である、請求項1に記載の軽量石膏ボード。
【請求項3】
前記50ミクロン未満の直径の細孔サイズを有する空隙は、10ミクロンから50ミクロンの細孔サイズを有する空隙を含む、請求項1又は2に記載の軽量石膏ボード。
【請求項4】
前記硬化石膏芯は、水、フォーム、スタッコ、ナフタレンスルホネート分散剤、及び、予めゼラチン化した澱粉を含むスラリーから形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項5】
前記硬化石膏芯は、スラリーから形成されており、該スラリーは、水、スタッコ、フォーム、スタッコの重量に基づいて0.5重量%から10重量%の量で存在する予めゼラチン化した澱粉であって、前記石膏ボードの芯の固さを該澱粉なしの石膏ボードの芯の固さよりも高くするために効果的な予めゼラチン化した澱粉、及び、スタッコの重量に基づいて0.1重量%から3.0重量%の量で存在するナフタレンスルホネート分散剤を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項6】
前記スラリーは、ナトリウムトリメタホスフェート、カリウムトリメタホスフェート、リチウムトリメタホスフェート、及び、アンモニウムトリメタホスフェートからなる群より選択されるトリメタホスフェート化合物であって、スタッコの重量に基づいて0.12重量%から0.4重量%の量で存在するトリメタホスフェート化合物をさらに含む、請求項5に記載の軽量石膏ボード。
【請求項7】
1/2インチ(約1.3cm)のボードの厚さで、前記ボードは、(i)1000lb/MSF(約5kg/m2)~1300lb/MSF(約6.3kg/m2)の乾燥重量、(ii)ASTM基準C-473に従って計測して、少なくとも36ポンド(16kg)の機械方向の平均曲げ強度、及び/又は、少なくとも107ポンド(48.5kg)の機械方向の横方向の平均曲げ強度、又は、(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項8】
2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を含有する軽量石膏ボードであって、
(a)前記硬化石膏芯は、空気空隙及び水空隙を含み、空気空隙対水空隙の体積比は、1.8:1から9:1であり、
(b)前記硬化石膏芯は、走査電子顕微鏡写真像を用いて空隙を計測して前記硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する空隙を含み、且つ、
(c)前記ボードは、24pcf(約380kg/m3)~31pcf(約500kg/m3)の密度を有し、前記硬化石膏芯は、ASTM基準C-473に従って計測した平均の芯の固さが、少なくとも11ポンド(5kg)であることを特徴とする、軽量石膏ボード。
【請求項9】
前記空気空隙対水空隙の体積比は、2.3:1から9:1である、請求項8に記載の軽量石膏ボード。
【請求項10】
前記硬化石膏芯は、水、フォーム、スタッコ、ナフタレンスルホネート分散剤、及び、予めゼラチン化した澱粉を含むスラリーから形成されている、請求項8又は9に記載の軽量石膏ボード。
【請求項11】
前記硬化石膏芯は、スラリーから形成されており、該スラリーは、水、スタッコ、フォーム、スタッコの重量に基づいて0.5重量%から10重量%の量で存在する予めゼラチン化した澱粉であって、前記石膏ボードの芯の固さを該澱粉なしの石膏ボードの芯の固さよりも高くするために効果的な予めゼラチン化した澱粉、及び、スタッコの重量に基づいて0.1重量%から3.0重量%の量で存在するナフタレンスルホネート分散剤を含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項12】
前記スラリーは、ナトリウムトリメタホスフェート、カリウムトリメタホスフェート、リチウムトリメタホスフェート、及び、アンモニウムトリメタホスフェートからなる群より選択されるトリメタホスフェート化合物であって、スタッコの重量に基づいて0.12重量%から0.4重量%の量で存在するトリメタホスフェート化合物をさらに含む、請求項11に記載の軽量石膏ボード。
【請求項13】
1/2インチ(約1.3cm)のボードの厚さで、前記ボードは、(i)1000lb/MSF(約5kg/m2)~1300lb/MSF(約6.3kg/m2)の乾燥重量、(ii)ASTM基準C-473に従って計測して、少なくとも36ポンド(16kg)の機械方向の平均曲げ強度、及び/又は、少なくとも107ポンド(48.5kg)の機械方向の横方向の平均曲げ強度、又は、(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを有する、請求項8から12のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項14】
2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を含有する軽量石膏ボードであって、
石膏結晶マトリックスを含有する前記硬化石膏芯は、(i)50ミクロン未満の直径の細孔サイズを有する空隙、(ii)50ミクロンから100ミクロンの直径の細孔サイズを有する空隙、及び、(iii)X線CTスキャニング技術(XMT)により得られた3次元画像を用いて空隙を計測して前記硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する空隙から構成される細孔サイズ分布を有し、
前記石膏結晶マトリックスは、前記硬化石膏芯が、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有するように形成されており、且つ、
前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有することを特徴とする、軽量石膏ボード。
【請求項15】
前記硬化石膏芯の密度は、24pcf(約380kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)である、請求項14に記載の軽量石膏ボード。
【請求項16】
前記硬化石膏芯は、芯の体積の75%から92%の全空隙体積を有する、請求項14又は15に記載の軽量石膏ボード。
【請求項17】
前記硬化石膏芯は、水、フォーム、スタッコ、ナフタレンスルホネート分散剤、及び、予めゼラチン化した澱粉を含むスラリーから形成されている、請求項14から16のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項18】
前記硬化石膏芯は、スラリーから形成されており、該スラリーは、水、スタッコ、フォーム、スタッコの重量に基づいて0.5重量%から10重量%の量で存在する予めゼラチン化した澱粉であって、前記石膏ボードの芯の固さを該澱粉なしの石膏ボードの芯の固さよりも高くするために効果的な予めゼラチン化した澱粉、及び、スタッコの重量に基づいて0.1重量%から3.0重量%の量で存在するナフタレンスルホネート分散剤を含む、請求項14から16のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項19】
前記スラリーは、ナトリウムトリメタホスフェート、カリウムトリメタホスフェート、リチウムトリメタホスフェート、及び、アンモニウムトリメタホスフェートからなる群より選択されるトリメタホスフェート化合物であって、スタッコの重量に基づいて0.12重量%から0.4重量%の量で存在するトリメタホスフェート化合物をさらに含む、請求項18に記載の軽量石膏ボード。
【請求項20】
(A)予めゼラチン化した澱粉、ナフタレンスルホネート分散剤、及び内部に分散したフォームを含む石膏スラリーを準備する工程、
(B)前記石膏スラリーを第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に配置しパネルを形成する工程、
(C)前記パネルを所定の大きさのボードに切断する工程、及び、
(D)前記ボードを乾燥させる工程、を含み、
石膏結晶マトリックスを含有する硬化石膏芯が、前記第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に、
(1)前記硬化石膏芯は、(i)50ミクロン未満の直径の細孔サイズを有する空隙、(ii)50ミクロンから100ミクロンの直径の細孔サイズを有する空隙、及び、(iii)走査電子顕微鏡写真像を用いて空隙を計測して前記硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する空隙から構成される細孔サイズ分布を有し、
(2)前記硬化石膏芯は、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有し、且つ、
(3)乾燥後の前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)の密度を有する、ように形成されることを特徴とする、軽量石膏ボードの製造方法。
【請求項21】
前記硬化石膏芯の密度は、24pcf(約380kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)である、請求項20に記載の軽量石膏ボードの製造方法。
【請求項22】
前記予めゼラチン化した澱粉は、スタッコの重量に基づいて0.5重量%から10重量%の量で存在し、
前記ナフタレンスルホネート分散剤は、スタッコの重量に基づいて0.1重量%から3.0重量%の量で存在する、請求項20又は21に記載の軽量石膏ボードの製造方法。
【請求項23】
前記石膏スラリーは、ナトリウムトリメタホスフェート、カリウムトリメタホスフェート、リチウムトリメタホスフェート、及び、アンモニウムトリメタホスフェートからなる群より選択されるトリメタホスフェート化合物であって、スタッコの重量に基づいて0.12重量%から0.4重量%の量で存在するトリメタホスフェート化合物をさらに含む、請求項22に記載の軽量石膏ボードの製造方法。
【請求項24】
1/2インチ(約1.3cm)のボードの厚さで、前記ボードは、(i)1000lb/MSF(約5kg/m2)~1300lb/MSF(約6.3kg/m2)の乾燥重量、(ii)ASTM基準C-473に従って計測して、少なくとも36ポンド(16kg)の機械方向の平均曲げ強度、及び/又は、少なくとも107ポンド(48.5kg)の機械方向の横方向の平均曲げ強度、又は、(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを有する、請求項20から23のいずれか1項に記載の軽量石膏ボードの製造方法。
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~24に係る特許に対して平成28年11月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1の「前記ボードは31pcf(約500kg/m3)以下の密度を有する」との特定事項、請求項14の「前記ボードは31pcf(約500kg/m3)以下の密度を有する」との特定事項、及び、請求項20の「乾燥後の前記ボードは35pcf(約560kg/m3)以下の密度を有する」との特定事項は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「国際出願明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえない。
よって、請求項1~24に係る特許は、特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号に該当する特許出願に対してされたものである。
(2)請求項1、8、20に記載された「走査電子顕微鏡写真像を用いて空隙を計測」、及び、請求項14に記載された「X線CTスキャニング技術(XMT)により得られた3次元画像を用いて空隙を計測」に関して、発明の詳細な説明には、具体的な測定方法や画像処理の条件などが記載されていないため、本件特許の請求項1~24に係る発明を当業者が実施できるように記載されていない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には不備があり、請求項1~24に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 取消理由に対する当審の判断
(1)特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号について
本件発明1には、軽量石膏ボードの密度に関して、「12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」ことが特定されている。
そして、国際出願明細書等には、軽量石膏ボードの密度について、明示的に記載されていないが、1/2インチ厚の「gypsum wallboard」(当審訳:石膏ウォールボード)の「Board weight」(当審訳:ボード重量)が記載されており、実施例における、TABLE 2及びTABLE 3のFormulation B,D,E、あるいは、TABLE 5~TABLE 7のTrial Board 1~4,6~13には、ボード重量が500~1541Lb/MSFであることが記載されている。そして、前記ボード重量は、厚さが1/2インチの単位面積(1000平方フィート)あたりの重さ(ポンド)であり、前記ボード重量をボードの密度に換算すると、12~約37pcfとなることから、国際出願明細書等には、軽量石膏ボードの密度が12~約37pcfであることが記載されていると認められる。
そうしてみると、本件発明1の上記特定事項は、国際出願明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえる。
本件発明14の「12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」との特定事項、及び、本件発明20の「12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)の密度を有する」との特定事項についても、同様に、国際出願明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえる。
したがって、本件特許に係る特許出願は、特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号に該当しない。
(2)特許法第36条第4項第1号について
ア 走査電子顕微鏡写真像を用いて空隙を計測、及び、X線CTスキャニング技術(XMT)により得られた3次元画像を用いて空隙を計測に関して、乙第1号証、乙第2号証、乙第3号証及び乙第5号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)乙第1号証:米国特許第6481171号明細書
「All samples are imaged in a Topcon SM300 SEM equipped with a solid state back-scattered electron detector. Images are selected visually such that the area being analyzed is only the continuous phase of set gypsum matrix including its evaporated water voids and excluding macro-sized discontinuities, e.g., foam air voids, paper fibers and the like, that are not part of the continuous phase of interlocking set gypsum matrix. The SEM analysis is conducted as described by King et al., "An Effective SEM-Based Image Analysis System for Quantitative Mineralogy," Kona Powder and Particle, No.11 (1993) which is incorporated by reference herein, using computer software described therein. The imaging analysis provides the evaporated water voids volume for the interlocking matrix of the set gypsum composition.」(第13欄49~64行、当審仮訳「すべてのサンプルは、半導体反射電子検出器を装備したトプコンSM300SEMで撮影された。画像は、分析される領域が、その蒸発水の空隙を含む硬化石膏基質の連続相のみであるように視覚的に選択され、大きなサイズの不連続点、例えば結合硬化石膏基質の連続相ではない泡の空隙、紙繊維などは除外した。SEM解析は、参照されて本明細書に組み入れられるKing et al., “An Effective SEM-Based Image Analysis System for Quantitative Mineralogy”, Kona Powder and Particle, No.11 (1993) の記載に従って、当該文献に記載されたソフトウェアを用いて行った。画像分析によって、硬化石膏組成物の結合基質での蒸発水の空隙容量が得られる。」)
(イ)乙第2号証:R.P.King et al., "An Effective SEM-Based Image Analysis System for Quantitative Mineralogy", KONA Powder and Particle, 1993, No.11, p.165-177
「This paper describes the development of an image analysis system based on an SEM equipped with secondary electron and back-scattered electron detectors, an image memory for the storage of digital images captured at slow scan speeds and a SUN workstation for image processing and image analysis. The algorithms and procedures described include a full range of linear-intercept analysis routines used in quantitative mineralogy.」(Abstract欄第2段落、当審仮訳「本論文では、二次電子及び反射電子検出器を備えたSEM、低走査速度で撮影したデジタル画像を保存するための画像メモリ、画像処理および画像解析用のSUNワークステーションに基づく画像解析システムの開発について記載する。記載されたアルゴリズム及び手順は、定量的鉱物学で用いられる線形切片解析一式を包含するものである。」)
「3.4 Basic stereological relationships that are used in quantitative mineralogy
Perhaps the most well-known and widely used stereological conversion relationships are those that relate point, linear and areal fractions to volume fractions
VV=AA=LL=PP (11)」(第171頁左欄第1~7行、当審仮訳「3.4 定量鉱物学で用いられる基本的な立体化関係
おそらく、もっともよく知られており、広く用いられている立体変換関係は、点、線、及び面積分画を体積分画に関連させるものである。
VV=AA=LL=PP (11)」)
「Table 1. List of stereological symbols
・・・
」(第176~177頁、当審注:表1には、式(11)のVVは体積密度、AAは面積密度、LLは線上の切片長密度、PPは点密度であることが示されている。)
(ウ)乙第3号証:Andreas Kayser et al., "A Closer Look at Pore Geometry", Oilfield Review, 2006.3.1, Volume 18, Issue 1, p.4-13(当審注:発行年月日は当審で確認済)
「At such resolutions, geoscientists can distinguish density or porosity contrasts inside a rock sample and can study pore space and pore connectivity in great detail. This μCT technology permits recognition of grains or cements with different mineralogical compositions (right). It has even been used to differentiate grains of the same type, such as those found in carbonates, where microporosity may vary between different grain types in the same rock.」(第8頁左欄第14~23行、当審仮訳「こうした解像度で、地球科学者は岩石サンプル内の密度又は間隙率コントラストを区別することができ、間隙空間及び間隙接続をとても詳細に研究することができる。このμCT技術は、異なる鉱物組成を有する粒子又はセメント(右図)の判別を可能にする。同じ岩石内の異なる粒子の間で微小空隙率が異なり得るようなカーボネートなどでみつかる同種の粒子を識別するためにこの技術は用いられてきた。」)
(エ)乙第5号証:Alvaro Videla et al., "Watershed Functions Applied to a 3D Image Segmentation Problem for the Analysis of Packed Particle Beds", Particle and Particle Systems Characterization, 2006.10, Volume 23, Issue 3-4, p.237-245(当審注:発行年月は当審で確認済)
「In an effort to advance the area of particle science and technology the University of Utah has been using cone beam X-ray microtomography as a major tool for the quantitative three dimensional (3D) analysis of packed beds of multiphase particles. In this regard, efficient imaging algorithms have been developed and applied in order to extend two dimensional (2D) image analysis techniques for the solution of three 3D problems. Based on this research, image analyses of different particle samples were carried out for identification, segmentation, and quantitative volume characterization of irregularly shaped particles. The whole analysis involves acquisition of a 3D image by X-ray microtomography and a sequence of image processing tools for thresholding, distance transformation, maxima detection using reconstruction by dilation, and a watershed 3D algorithm for segmentation and identification of irregularly shaped particles in three dimensions. Several examples of the 3D analysis for irregularly shaped particles are presented and the results discussed. Application of these algorithms is demonstrated by the determination of coal washability curves.」(Abstract欄、当審仮訳「ユタ大学は、粒子科学及び技術の領域を発展させるために、コーンビームX線マイクロトモグラフィーを多相粒子からなる充填層の3次元(3D)解析の主要なツールとして用いてきた。この点において、3つの3D問題の解決のための2次元(2D)画像分析技術を拡張するために、効率的な画像化アルゴリズムが開発・応用されている。この研究に基づき、不規則な形状の粒子の同定、分離、定量的体積解析のために、異なる粒子サンプルの画像分析が行われた。全ての解析は、X線マイクロトモグラフィーによる3D画像の取得と、閾値化、距離変換、ダイレーションによる再構築を用いた最大値検出、及び3次元の不規則形状粒子の分離と同定のためのウォーターシェード3Dアルゴリズムのための一連の画像処理ツールを伴う。不規則形状の粒子の3D解析例の数例が示され、その結果が議論される。これらのアルゴリズムの応用は、石炭の可選曲線の決定によって実証される。」)
イ 上記ア(ア)の記載事項によれば、乙第1号証には、石膏ボードの断面を走査電子顕微鏡で撮影し、乙第2号証に記載された画像解析を行うことによって、石膏ボードの内部の空隙サイズや体積比率を求めることが記載されているし、上記ア(イ)の記載事項によれば、乙第2号証には、線形切片解析を含むアルゴリズムを用いた画像解析法や面積密度から体積密度への立体変換についても記載されていることから、石膏ボードの空隙を走査電子顕微鏡写真像から計測する手段は周知技術といえる。
また、上記ア(ウ)の記載事項によれば、乙第3号証には、X線CTスキャニング技術によって、岩石内の間隙空間及び間隙率を測定することが記載されているし、上記ア(エ)の記載事項によれば、3次元の不規則形状粒子の分離と同定のためのウォーターシェード3Dアルゴリズムを用いた3D画像解析の技術について記載されていることから、鉱物等の3次元の不規則形状粒子の空隙を、X線CTスキャニング技術により得られた3次元画像を用いて計測する手段も周知技術といえる。
そうしてみると、これら周知技術に基づいて、石膏ボードの空隙を走査電子顕微鏡写真像、あるいは、X線CTスキャニング技術により得られる3次元画像を用いて計測することは、当業者にとって格別困難なことであるともいえないから、発明の詳細な説明には、本件特許の請求項1~24に係る発明を当業者が実施できる程度に記載されているといえる。
よって、本件特許明細書は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
(3)特許異議申立人の意見について
ア 上記(1)に関して、特許異議申立人は、国際出願明細書等のTable 7に示されたTrial Board 10は、ダストを低減するとの課題を解決することが記載されているが、Trial Board 10以外の結果は当該課題を解決しておらず、実施例といえないため、補正及び訂正の根拠とならないことを主張している(意見書第2頁第6行~第3頁第4行)。
しかしながら、国際出願明細書等には、TABLE 7のTrial Board 6~13に空気空隙のフォーム細孔サイズ分布が記載されているし、また、Formulation B、及び、Trial Board 3、4で空気空隙を形成する石けんの使用が記載されているように、Formulation B,D,E、及び、Trial Board 1~4においても、空気空隙が形成されているといえる。さらに、段落0024に「Harder wallboards favor dust capture in the air voids, since larger chunks or fragments of the set gypsum core are generated on working of these boards. In this case the dust fragments are too large for the water voids, but are trapped in the air voids.」(当審仮訳「より固いウォールボードは、空気空隙におけるダスト捕捉を選ぶ。それは、硬化石膏芯の大きな厚い切片または破片がこれらのボードの加工で発生するからである。この場合、ダスト破片は、水空隙にとり余りに大きいが、空気空隙には捕捉される。」)と記載されていることから、国際出願明細書等の全ての記載からみて、Formulation B,D,E、及び、Trial Board 1~4,6~9、11~13についても同様な効果を奏していると認められる。
したがって、Formulation B,D,E、及び、Trial Board 1~4,6~9、11~13についても、補正及び訂正の根拠となり得るから、特許異議申立人の上記主張に理由はない。
イ 上記(2)に関して、特許異議申立人は、乙第1号証及び乙第2号証は、100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する空隙を走査電子顕微鏡により測定できることを示すものでないこと、乙第3号証~乙第5号証は、X線CTスキャニング技術により石膏ボード内部の空隙サイズや体積比率を求めることを示す文献でないこと、並びに、X線CTスキャニング技術で石膏ボードの空隙を測定するためには石膏ボードに対応したアルゴリズムが必要なことから、乙第1号証~乙第5号証に記載された周知技術を参考したとしても、当業者が本件発明1~24を実施することができないと主張している(意見書第10頁第2行~第13頁第19行)。
しかしながら、走査電子顕微鏡写真像によって100ミクロンを超える直径の細孔サイズの空隙を測定できることは、本件特許明細書の図1~図8から明らかであるから、石膏ボードの空隙を走査電子顕微鏡写真像から計測できるとの上記周知技術を考慮すれば、石膏ボードの100ミクロンを超える直径の細孔サイズの空隙を含む空隙を測定することは、当業者にとって格別困難なことであるともいえない。
また、石膏ボードに対応したアルゴリズムが周知技術でないとしても、鉱物等の3次元の不規則形状粒子の空隙をX線CTスキャニング技術により得られた3次元画像を用いて計測する手段が周知技術であるから、これら周知技術に基づいて、X線CTスキャニング技術を用いて、石膏ボードの100ミクロンを超える直径の細孔サイズの空隙を含む空隙を測定することは、当業者にとって格別困難なことであるともいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張に理由はない。
4 取消理由において採用しなかった異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項について
ア 特許異議申立人は、訂正前の請求項1~24に係る発明は、甲第1号証(特表2004-521852号公報)、甲第2号証(特表2003-523910号公報)、甲第3号証(特表2004-508259号公報)及び甲第4号証(国際公開第2004/039749号)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであると主張している。
イ 甲第1号証~甲第4号証の記載事項
(ア)甲第1号証には、請求項1、段落0001、段落0002、段落0024、段落0028,段落0035~0037、段落0046、表1及び表2の実施例3の記載からみて、「プラスター(硫酸カルシウム二水和物)から製造された、平行面を有する中実のプレハブ構成要素であり、各面が厚紙、紙材、または無機質ファイバーにて覆われている軽量化プラスターボードであって、ASTM標準のC473メソッドBに従って測定された芯部の硬度が9.55DaNであり、芯部の密度が0.692である軽量化プラスターボード」の発明が記載されている。
(イ)甲第2号証には、請求項1、実験例3、図1の記載からみて、「永久変形の抗性が増大された硬化石膏を含む1/2インチ天井ボードであって、1000フィート当りの製品重量が1600ポンドである天井ボード」の発明が記載されている。
(ウ)甲第3号証には、請求項3、請求項6、段落0060、段落0064の記載からみて、「裏側と表側に紙を有する石膏ボード製品であって、石膏ボード製品内の泡の直径が80~300μmであり、泡の直径が≦80μmである微小な泡を含んでもよく、このボードの密度が32ポンド/ft3(0.52g/cm3)から35ポンド/ft3である石膏ボード製品」の発明が記載されている。
(エ)甲第4号証には、技術分野、実施例3の記載からみて、「高い強度を備えた石膏コア及び該石膏コアの石膏ボード用原紙との優れた接着性を有する軽量発泡石膏ボードであって、その密度が0.65g/cm3である軽量発泡石膏ボード」の発明が記載されている。
ウ 本件発明1~7について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された発明の「ASTM標準のC473メソッドBに従って測定された芯部の硬度が9.55DaN」であることは、1DaNが1.02kgfであることから、本件発明1の「硬化石膏芯が、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さ」であることに相当する。しかしながら、甲第1号証に記載された発明の当該硬度における硬化石膏芯の芯部の密度は「0.692」(当審注:技術常識から単位はg/cm3であるといえる。)、すなわち、692kg/m3であり、本件発明1の「12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」ことを満足しない。
したがって、甲第1号証に記載された発明は、本件発明1の「硬化石膏芯が、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有するように形成されており、且つ、前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」ことが特定されていない。
また、甲第1号証の段落0024には、「界面活性剤は、芯部の密度が0.77、特に0.74、さらに0.72よりも小さいプラスターボードを製造するのに使用される。しかしながら、芯部の密度は概ね0.48よりも大きい。」と記載され、芯部の密度を0.48(g/cm3)、すなわち、480kg/m3とすることは記載されているが、このときの平均の芯の固さが少なくとも11ポンド(5kg)であることは記載されていないし、示唆もされてない。
そして、石膏ボードの芯部の密度が小さくなるとその固さも小さくなるとの技術常識を考慮すると、甲第1号証に記載された発明において、芯部の密度を480kg/m3とし、且つ、ASTM C-473に準拠して測定した硬化石膏芯の固さを11ポンド(5kg)以上とすることを当業者が容易になし得たものとはいえない。
さらに、甲第2号証には、1/2インチ天井ボードの1000フィート当りの製品重量が1600ポンドであること、すなわち、ボード密度が38pcfであることが記載され、甲第3号証には、石膏ボードの密度が32~35pcfであることが記載され、甲第4号証には、軽量発泡石膏ボードの密度が0.65g/cm3、すなわち、650kg/m3であることが記載されているが、甲第2号証~甲第4号証にも、「硬化石膏芯が、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有するように形成されており、且つ、前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」ことは記載されていない。
したがって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~7は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものでない。
エ 本件発明8~24について
本件発明8の「前記ボードは、24pcf(約380kg/m3)~31pcf(約500kg/m3)の密度を有し、前記硬化石膏芯は、ASTM基準C-473に従って計測した平均の芯の固さが、少なくとも11ポンド(5kg)である」こと、本件発明14の「前記硬化石膏芯が、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有するように形成されており、且つ、前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)の密度を有する」こと、及び、本件発明20の「前記硬化石膏芯は、ASTM C-473に準拠して測定して、少なくとも11ポンド(5kg)の平均の芯の固さを有し、且つ、乾燥後の前記ボードは12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)の密度を有する」ことは、上記ウで検討したと同様に、甲第1号証~甲第4号証に記載されていないから、本件発明8及び本件発明8を引用する本件発明9~13、本件発明14及び本件発明14を引用する本件発明15~19、並びに、本件発明20及び本件発明20を引用する本件発明21~24は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になし得るものでない。
オ 以上のとおり、本件発明1~24は、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないから、特許異議申立人の上記主張に理由はない。
(2)特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号について
ア 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1、8、14及び20に記載された「硬化石膏芯」が「前記硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する」ことに関して、国際出願明細書等には、平均直径が10ミクロンよりも大きい空気空隙は全空隙体積の少なくとも60%であること(段落0021)、空気空隙のサイズは平均直径が100ミクロンより小さいことが好ましいこと(段落0026)、及び、100ミクロンよりも大きい空隙が20%である空隙/細孔サイズ分布が好ましいこと(段落0026)が記載されているのみであり、平均でない直径が100ミクロンを超える細孔サイズが硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占めることは、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえないから、請求項1~24に係る特許は、特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号に該当する特許出願に対してなされたものであると主張している(特許異議申立書第79頁第23行~第84頁第24行、意見書第3頁第27行~第9頁第10行)。
しかしながら、平均でない直径の細孔サイズに関して、国際出願明細書等の段落0026には、硬化石膏芯内の空隙/細孔のサイズ分布に関して、約100ミクロンより大きい(20%)、約50ミクロンから約100ミクロン(30%)そして約50ミクロンより小さい(50%)であることが記載されており、硬化石膏芯が全空隙体積の20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有することは記載されている。
さらに、段落0073~0077の実施例8には、空気空隙が65%である試験ボード10の走査電子顕微鏡の観測結果が記載されており、そして、測定結果の図4~図6の走査電子顕微鏡写真からは、直径が100ミクロンを超える細孔サイズの空隙が全空隙に対して20%を超えて存在することも見て取れる。
そうしてみると、国際出願明細書等には、直径が100ミクロンを超える細孔サイズの空隙が、全空隙に対して20%であること、及び、20%を超えて存在することも記載されているといえるから、「硬化石膏芯」が「前記硬化石膏芯の全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する」ことは、国際出願明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえる。
よって、特許異議申立人の上記主張に理由はない。
イ 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項2、8、15及び21に記載された軽量石膏ボードの密度が「24pcf(約380kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)」であることは、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえないから、請求項1~24に係る特許は、特許法第184条の18で読み替える同法第49条第6号に該当する特許出願に対してなされたものであると主張している(特許異議申立書第84頁第25行~第86頁第12行)。
しかしながら、上記3(1)で検討したとおり、国際出願明細書等には、軽量石膏ボードの密度が12~約37pcfであることが記載されていると認められる。
そうしてみると、軽量石膏ボードの密度が、24pcf(約380kg/m3)から31pcf(約500kg/m3)であることは、国際出願明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、国際出願明細書等に記載した事項の範囲内といえる。
よって、特許異議申立人の上記主張に理由はない。
(3)特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号について
ア 特許異議申立人は、訂正前の請求項1~24に係る発明に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、硬化石膏芯が全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する軽量石膏ボードについて記載も示唆もなされていないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができず、また、発明の詳細な説明には、前記軽量ボードを製造するための具体的な方法が記載されていないから、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないと主張している(特許異議申立書第86頁第14行~第88頁第4行、意見書第3頁第27行~第9頁第10行)。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0008には、硬化石膏芯が全空隙体積の20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有することは記載されている。また、段落0063~0066の実施例7には、10ミクロン超えの空気空隙の分布を変えた石膏ウォールボードの製造方法が記載されていると共に、段落0067~0070の実施例8には、実施例7の試験ボード10の走査電子顕微鏡の観測結果が記載されており、そして、測定結果の図4~図6の走査電子顕微鏡写真からは、直径が100ミクロンを超える細孔サイズの空隙が全空隙に対して20%超えて存在することが見て取れる。
そうしてみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、硬化石膏芯が全空隙体積の少なくとも20%を占める100ミクロンを超える直径の細孔サイズを有する軽量石膏ボード及びその製造方法が具体的に記載されている。
したがって、本件発明1~24は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるし、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1~24を実施できる程度に記載されているといえるから、特許異議申立人の上記主張に理由はない。
5 意見書に記載された新たな理由について
意見書において、特許異議申立人は、本件発明1~24は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された、ダストの発生を顕著に減少させるとの課題を解決する手段を反映していないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてないことを主張している。
しかしながら、当該主張は、特許異議申立書に記載した理由でないし、訂正請求に付随して生じる理由でもないから、当該主張は採用できない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700920