特許異議申立
2019-700351
高デンプンおよび高分散剤レベルで形成された石膏ウォールボードの微小構造特徴
- 審判番号
- 2019-700351
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-218178
- 登録番号
- 特許第6416074号(P6416074)
- 請求日
- 2019年04月26日
- 審決日
- 2020年12月10日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】森川 泰司
- 【権利者代理人】桜田 圭
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 日比野 隆治
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 末松 佳記
- 分類
- P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.536-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B) / P1651.572-YAA(C04B) / P1651.574-YAA(C04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6416074号発明「高デンプンおよび高分散剤レベルで形成された石膏ウォールボードの微小構造特徴」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6416074号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
特許第6416074号の請求項2~7、9、12~19に係る特許を維持する。
特許第6416074号の請求項1、8、10、11に対する特許異議申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6416074号の請求項1~19に係る特許についての出願は、2008年(平成20年)9月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年10月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2010-528049号の一部を、平成25年6月4日に新たな特許出願とした特願2013-117709号の一部を、平成27年11月6日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月12日にその特許権の設定登録がされ、同年10月31日に特許掲載公報の発行がされたものである。
そして、本件特許の請求項1~19に係る特許に対して、平成31年4月26日付けで、特許異議申立人金澤毅(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。
その後の経緯(提出書類等)は、概略、以下のとおりである。
令和 1年 7月17日付け 取消理由通知
同年10月21日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年12月 2日 意見書(申立人)
令和 2年 1月24日付け 訂正拒絶理由通知
同年 3月19日 意見書(特許権者)
同年 4月21日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 7月27日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年11月 4日 意見書(申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年7月27日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
なお、令和1年10月21日付けの訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、」と記載されているのを
「前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、」に訂正する(請求項2を引用する請求項4~7、9、12~19も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記固化石膏コアは、水、起泡剤、及びスタッコを含むスラリーから形成され、」と記載されているのを
「前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、」に訂正する(請求項3を引用する請求項4~7、9、12~19も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1から3のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2又は3に記載の」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1から4のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から4のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から3のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2又は3に記載の」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「前記スラリーは、さらに、アルファ化デンプンを含み、」と記載されているのを削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から6のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項8に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1から11のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7及び9のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1から12のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9及び12のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項1から13のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、12、及び13のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項15に
「請求項1から14のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から14のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項1から15のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から15のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項17に
「請求項1から16のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から16のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項18に
「請求項1から17のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から17のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項19に
「請求項1から18のいずれか1項に記載の」と記載されているのを
「請求項2から7、9、及び12から18のいずれか1項に記載の」に訂正する。
(21)訂正事項21
明細書の段落【0086】に
「少なくとも約50ミクロン以下~約200ミクロン」と記載されているのを
「約50ミクロン~約200ミクロン」に訂正する。
なお、訂正前の請求項4~19は、訂正前の請求項1~3を引用し、これら請求項1~19は一群の請求項を構成するところ、上記訂正事項1~20に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~19を訂正の単位として請求されたものである。
また、上記訂正事項21に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4号の規定に従い、この一群の請求項1~19を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1、9、11及び12について
訂正事項1、9、11及び12は、それぞれ、訂正前の請求項1、8、10及び11を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、それぞれ、訂正前の請求項2及び3のスラリーの組成を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付された明細書には、「スタッコ、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、任意によりガラス繊維、および適切な量の石鹸の泡を含む石膏含有スラリーを用いて形成された石膏ウォールボード」(段落【0012】)、「HYONIC 25 ASおよびPFM 33石鹸(・・・)のブレンドを用いた・・・例えば、試験ボード4は、HYONIC 25AS/HYONIC PFM 33の70/30重量/重量ブレンドで調製した。」(段落【0064】)、及び、「HYONIC 25 ASおよびPFM 33石鹸の95/5重量/重量ブレンド。」(段落【0078】の表8欄外)と記載されていることからして、訂正事項2及び3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
(3)訂正事項4~6、8、13~20について
訂正事項4~6、8、13~20は、それぞれ、訂正前の請求項4~7、12~19における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項2及び3によって訂正された請求項2及び3における「アルファ化デンプン・・・を含むスラリー」と重複する記載を削除するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項10について
訂正事項10は、上記訂正事項9によって削除された訂正前の請求項8における選択的引用請求項との引用関係を明らかにするとともに、その選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項21について
訂正事項21は、訂正前の明細書の段落【0086】の「一般に、試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、少なくとも約50ミクロン以下~約200ミクロンであった。」との記載における「~」の前の「少なくとも約50ミクロン以下」が不明瞭な記載であるところ、当該記載と対をなす同段落の「対照的に、対照ボードAにおける気泡間の平均壁厚は一般に約20~30ミクロンであった。」との記載における「~」の前が下限値であることに基づき、明瞭な記載に訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項2~7、9、12~19に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項2~7、9、12~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件発明2」などという。)。
「【請求項2】
2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記壁は、走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、
前記気泡は、走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり、
前記石膏結晶マトリックスは、ASTM C-473に基づいて、前記固化石膏コアの平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)となるように形成されており、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)である、
ことを特徴とする軽量石膏ボード。
【請求項3】
2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記起泡剤は、Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下であり、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記壁は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、
前記気泡は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり、
前記石膏結晶マトリックスは、ASTM C-473に基づいて、前記固化石膏コアの平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)となるように形成されており、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)である、
ことを特徴とする軽量石膏ボード。
【請求項4】
前記軽量石膏ボードの密度は、24pcf(約380kg/m3)~35pcf(約560kg/m3)である、請求項2又は3に記載の軽量石膏ボード。
【請求項5】
前記軽量石膏ボードの密度は、31pcf(約500kg/m3)以下である、請求項2から4のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項6】
前記軽量石膏ボードの密度は、24pcf(約380kg/m3)~31pcf(約500kg/m3)である、請求項2又は3に記載の軽量石膏ボード。
【請求項7】
前記アルファ化デンプンは、スタッコの重量に基づいて0.5重量%~10重量%の量で存在する、請求項2から6のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項9】
前記ナフタレンスルホン酸分散剤はスタッコの重量に基づいて0.1重量%~3重量%の量で存在する、請求項2から7のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項12】
前記気泡の前記平均孔径は直径で10ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7及び9のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項13】
前記気泡の前記平均孔径は直径で20ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7、9及び12のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項14】
前記気泡の前記平均孔径は直径で50ミクロンから100ミクロンの間である、請求項2から7、9、12、及び13のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項15】
前記壁の前記平均壁厚は50ミクロンから200ミクロンの間である、請求項2から7、9、及び12から14のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項16】
前記壁の前記平均壁厚は70ミクロンから120ミクロンの間である、請求項2から7、9、及び12から15のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項17】
前記壁は、走査型電子顕微鏡画像を用いて孔径を計測したとき、(i)100ミクロン超の直径の孔径を有する気泡、(ii)50ミクロン~100ミクロンの直径の孔径を有する気泡、及び(iii)50ミクロン未満の直径の孔径を有する気泡を画定する、請求項2から7、9、及び12から16のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項18】
前記固化石膏コアは、0.7~1.3の範囲の水/スタッコ比を用いて形成される、請求項2から7、9、及び12から17のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。
【請求項19】
前記軽量石膏ボードは、1/2インチ(約1.3cm)の厚さの前記軽量石膏ボードで、1000lb/MSF(約5kg/m2)~1400lb/MSF(約6.8kg/m2)の乾燥重量を有する、請求項2から7、9、及び12から18のいずれか1項に記載の軽量石膏ボード。」
2 取消理由(決定の予告)の概要について
訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明に対して、令和2年4月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1
訂正前の請求項3には、「前記壁は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚を有し、前記気泡は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であり」と記載されているところ、願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当該平均膜厚及び気泡直径は、X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて、具体的にどのような手順で壁厚及び気泡直径を測定して算出した数値であるのか明らかでない。
よって、訂正前の請求項3に係る発明及びこれを引用する同請求項4~7、9、12~19に係る発明は明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】、【0012】及び【0015】の記載からみて、石膏ウォールボードが実施例の微細構造及び特性を有するためには、石膏スラリーに、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸及びトリメタリン酸ナトリウムを含有することが重要といえるから、発明の詳細な説明の実施例に基づき、「水、スタッコ、及び起泡剤を含むスラリー」が、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸及びトリメタリン酸ナトリウムを含有することを特定しない訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明にまで拡張又は一般化できない。
よって、訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)取消理由3
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0086】の「試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、少なくとも約50ミクロン以下~約200ミクロンであった。」との記載は、試験ボードNo.14の気泡間の平均壁厚が、約50~200μmの範囲であることを示しているのかどうかが明らかでないため、発明の詳細な説明の記載は、当業者が訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって、訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)取消理由4
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0084】の「実施例8と同様に、試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。」との記載における「試験ボードNo.14」と「キャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)」との関係が明らかでないため、発明の詳細な説明の記載は、当業者が訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって、訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5)取消理由5
訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(引用文献一覧)
引用文献1:米国特許出願公開第2007/0048490号明細書
(甲第1号証)
引用文献2:米国特許第6342284号明細書
引用文献3:米国特許第6632550号明細書
3 引用文献の記載事項について
(1)引用文献1の記載事項
ア 「[0010] Gypsum wallboard made in accordance with the invention has high strength, yet much lower weight than conventional wallboards. ・・・」
(当審仮訳:[0010]本発明により製造される石膏ウォールボードは、従来のウォールボードより遙かに軽量にもかかわらず強さは大きい。・・・)
イ 「[0023] The rehydration of calcium sulfate hemihydrate (stucco) and consequent hardening requires a specific, theoretical amount of water (1 1/2 moles water/mole of stucco) to form calcium sulfate dihydrate crystals. However, the commercial process generally calls for excess water. This excess process water produces evaporative water voids in the gypsum crystal matrix which are generally substantially irregular in shape, and also are linked to other water voids, forming irregular channels in a generally continuous network between set gypsum crystals. In contrast, air (bubble) voids are introduced into the gypsum slurry using soap foam. The air voids are generally spherical/round in shape, and also are generally separated from other air voids and thus generally discontinuous. The water voids can be distributed within the walls of the air voids (see, for example, FIGS. 8-10).」
(当審仮訳:[0023]硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)の再水和およびその結果の硬化は、硫酸カルシウム2水和物の結晶を形成するために、特定の理論量の水(スタッコ1モルあたり1-1/2モルの水)を要する。しかし、工業上のプロセスは、一般に過剰の水を必要とする。この過剰のプロセスの水は、石膏結晶マトリックス中に蒸発性の水空隙を生じ、それらは、一般に実質的に不規則な形状をとり、そしてまた他の水空隙と結合し、硬化石膏結晶間のほぼ連続的な網状構造中に不規則なチャンネルを形成する。逆に、空気(気泡)空隙は、石けんフォームを使用して石膏スラリー中に導入される。空気空隙は、一般に、形状が球状かまたは円く、そしてまた一般に他の空気空隙から離れており、従って一般に不連続である。水空隙は、空気空隙の壁内に分布している(例えば図8-10参照)。)
ウ 「EXAMPLE 1
[0049] Sample Gypsum Slurry Formulations
[0050] Gypsum slurry formulations are shown in Table 1 below. All values in Table 1 are expressed as weight percent based on the weight of dry stucco. Values in parentheses are dry weight in pounds (lb/MSF).
」
(当審仮訳:実施例1
[0049]サンプル石膏スラリー配合物
[0050]石膏スラリー配合物が以下の表1に示されている。表1中のすべての値は、乾燥スタッコの重量に基づく重量パーセントとして表記されている。括弧中の値は、ポンドでの乾燥重量(lb/MSF)である。
)
エ 「EXAMPLE 2
[0051] Preparation of Wallboards
[0052] Sample gypsum wallboards were prepared in accordance with U.S. Pat. No. 6,342,284 to Yu et al. and U.S. Pat. No. 6,632,550 to Yu et al., herein incorporated by reference. This includes the separate generation of foam and introduction of the foam into the slurry of all of the other ingredients as described in Example 5 of these patents.」
(当審仮訳:実施例2
[0051]ウォールボードの調製
[0052]サンプル石膏ウォールボードを、本明細書において参照により援用される、Yuらの米国特許第6342284号明細書及びYuらの米国特許第6632550号明細書に準拠して調製した。これらの特許の実施例5に記載されている、個別の泡の発生及び他の処方成分のすべてスラリーへの泡の導入が含まれる。)
オ 「EXAMPLE 6
[0067] 1/2 Inch Ultra-Light Weight Gypsum Wallboard Plant Production Trials
[0068] Further trials were performed (Trial Boards 3 and 4) using Formulation B (Example 1) as in Example 2, except that the pregelatinized corn starch was prepared with water at 10% concentration (wet starch preparation) and a blend of HYONIC 25 AS and PFM 33 soaps (available from GEO Specialty Chemicals, Lafayette, Ind.) was used. For example, Trial Board 3 was prepared with a blend of HYONIC 25 AS and PFM 33 ranging from 65-70% by weight of 25 AS, and the balance PFM 33. For example, Trial Board 4 was prepared with a 70/30 wt./wt. blend of HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33. The trial results are shown in Table 6 below.
」
(当審仮訳:実施例6
[0067]1/2インチ超軽量石膏ウォールボードプラント製造試験
[0068]さらなる試験(試験ボード3および4)を、配合物B(実施例1)を用いて、アルファ化コーンデンプンを10%濃度(湿潤デンプン調製)に水で調製すると共に、HYONIC 25 AS及びPFM 33石鹸(Lafayette,IndianaのGEO Specialty Chemicals製)のブレンドを用いたこと以外は、実施例2のとおり実施した。例えば、試験ボード3を、65~70重量%の範囲のHYONIC 25 ASでのHYONIC 25 AS及びPFM 33のブレンドと、残量のPFM 33とで調製した。例えば、試験ボード4は、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33の70重量/30重量ブレンドで調製した。試験結果が以下の表6に示されている。
)
カ 「EXAMPLE 7
[0070] Percentage Void Volume Calculation in 1/2 Inch Thick Gypsum Wallboard Core As A Function of Board Weight and Saw Cutting Results
[0071] Further trials were performed in order to determine void volumes and densities (Trial Boards No. 5 to 13) using Formulation B (Example 1) as in Example 2, except that the pregelatinized corn starch was prepared with water at 10% concentration (wet starch preparation), 0.5% glass fiber was used, and naphthalenesulfonate (DILOFLO) was used at a level of 1.2% by weight as a 45% aqueous solution. Soap foam was made using a soap foam generator and introduced into the gypsum slurry in an amount effective to provide the desired densities. In the present example, soap was used at a level from 0.25 lb/MSF to 0.45 lb/MSF. That is, the soap foam usage was increased or decreased as appropriate. In each sample, the wallboard thickness was 1/2 inch, and the core volume was assumed to be uniform at 39.1 ft3/MSF. Void volumes were measured across 4 ft wide wallboard samples from which the front and back paper was removed. The front and back papers can have a thickness in the range 11-18 mil (each side). Void volumes/pore sizes and pore size distribution were determined by scanning electron microscopy (see Example 8 below) and X-ray CT-scanning technology (XMT).
」
(当審仮訳:実施例7
[0070]ボード重量及び鋸での切断結果の関数としての1/2インチ厚石膏ウォールボードコアにおける気泡容積割合計算
[0071]さらなる試験を、気泡容積及び密度(試験ボードNo.5~13)を測定するために、配合物B(実施例1)を用いて、アルファ化デンプンを10%濃度(湿潤デンプン調製)に水で調製し、0.5%ガラス繊維を用い、及びナフタレンスルホン酸(DILOFLO)を45%水溶液として1.2重量%のレベルで用いたこと以外は実施例2のとおり実施した。石鹸の泡発生機を用いて石鹸泡を形成し、所望の密度をもたらすために効果的な量で石膏スラリー中に導入した。本実施例において、石鹸は、0.25 lb/MSF~0.45 lb/MSFのレベルで用いた。すなわち、石鹸の泡の使用量は適切に増減した。各サンプルにおいて、ウォールボード厚は1/2インチであると共にコア容積は、39.1ft3/MSFで均一であると仮定した。気泡容積を、表紙及び裏紙を除去した4ft幅のウォールボードサンプルにわたって計測した。表紙及び裏紙は、11~18milの範囲の厚さを有することが可能である(各面)。気泡容積/孔径及び孔径分布は、走査電子顕微鏡検査(以下の実施例8を参照のこと)及びX線CTスキャンテクノロジー(XMT)により測定した。
)
キ 「EXAMPLE 8
[0074] Determination of Air Bubble Void Sizes and Water Void Sizes in Trial Board No. 10, and Gypsum Cryst al Morphology
[0075] Cast gypsum cubes (2 inch×2 inch×2 inch) from the plant trial to prepare Trial Board No. 10 were analyzed by scanning electron microscopy (SEM). Air bubble voids and evaporative water voids were observed and measured, as well as gypsum crystal size and shape.
[0076] Three sample cubes were made and labeled 11:08, 11:30, and 11:50, respectively. FIGS. 1 to 3 illustrate the air bubble void sizes and distribution for each sample at 15×magnification. FIGS. 4 to 6 illustrate the air bubble void sizes and distribution for each sample at 50×magnification.
[0077] At higher magnifications, water voids were observed, for example in the generally substantially larger air bubble void walls, as shown in FIGS. 7 to 10 for sample cube 11:50, up to 10,000× magnification. Almost all of the gypsum crystals were needles; few platelets were observed. The density and packing of the needles varied on the surfaces of the air bubble voids. Gypsum needles were also observed in the water voids in the air bubble void walls.」
(当審仮訳:実施例8
[0074]試験ボードNo.10におけるエアバブル気泡サイズ及び水泡サイズの測定、並びに、石膏結晶形態学
[0075]試験ボードNo.10を準備するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査型電子顕微鏡(SEM)により分析した。気泡の空隙及び気化した水の空隙が観察され、石膏の結晶の大きさ及び形状が測定された。
[0076]3つのサンプルキューブを形成し、それぞれに、11:08、11:30、及び11:50とラベルを付した。FIG.1~3は、エアバブル気泡サイズ及び各サンプルについての分布を15×倍率で示す。FIG.4~6は、エアバブル気泡サイズ及び各サンプルについての分布を50×倍率で示す。
[0077]高い倍率で、例えば10000倍の倍率でサンプルキューブ11.50について図7-10で示されるように、一般に実質的に大きな気泡の空隙壁で水空隙が観察された。殆どすべての石膏結晶は針状であり、小板は殆ど観察されなかった。針状物の密度および詰め込みは、気泡空隙の表面で変化した。石膏の針状物は、また気泡空隙の壁の水空隙で観察された。)
ク 「1. A low dusting gypsum wallboard comprising:
a set gypsum core formed between two substantially parallel cover sheets, the set gypsum core having a total void volume from about 75% to about 95%.」(特許請求の範囲)
(当審仮訳:1.実質的に平行な2枚のカバーシート間に形成され、全空隙体積の割合が約75%~約95%である固化石膏コアを含む低ダスト石膏ウォールボード。)
ケ 「
」
(上記イ及びキの記載を踏まえると、石膏結晶マトリックスは、気泡(空気間隙)及び気泡(空気間隙)を画定し隔てる壁を有していることが見て取れる。)
4 取消理由(決定の予告)の検討
(1)取消理由1について
乙第1号証(J.D. Miller et al., MINERALS & METALLURGICAL PROCESSING, 2004年, Vol.21, No.3, p.113-124)には、石炭粒子の充填粒子層に対する三次元X線コーンビームマイクロCTによる三次元解析について、乙第2号証(Alvaro Videla et al., Particle & Particle Systems Characterization, 2006年, Vol.23, p.237-245)には、石炭粒子などの充填層に対するコーンビームマイクロトモグラフィー解析について、乙第9号証(Andreas Kayser et al., Oilfield Review, 2006年, Vol.18, No.1, p.4-13)には、岩石サンプル等のμCT技術について、それぞれ記載されていることからして、鉱物のX線CTスキャンテクノロジー(XMT)測定及び解析方法は、本件特許に係る特許出願の優先日時点での周知技術といえるから、石膏ボードの内部構造をXMT測定及び解析することも周知技術であったと推認できる。
また、測定手法や測定条件等による測定結果のずれを防止するために、基準試料を用いた校正処理を行うことは一般的に行われていることである。
そうしてみると、本件特許明細書には、石膏ボードの内部構造の具体的なXMT測定及び解析方法が記載されていないものの、その方法は、周知技術であるXMT測定及び解析方法を用いて、基準試料を用いた校正処理を行うと共に、本件特許明細書の段落【0084】、【0089】及び【0090】に記載された走査型電子顕微鏡画像を用いた測定及び解析手順に準じて実施されたものとみるのが自然である。
よって、取消理由1は理由がない。
(2)取消理由2について
本件発明2及び3の「スラリー」は、それぞれ、「水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリー」及び「水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリー」に訂正され、本件発明2~7、9、12~19における「スラリー」は、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸及びトリメタリン酸ナトリウムを含有することが特定された。
よって、取消理由2に理由はない。
(3)取消理由3について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0086】は、「試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、約50ミクロン~約200ミクロンであった。」と訂正され、試験ボードNo.14の気泡間の平均壁厚が、約50~200μmの範囲であることが明らかになった。
よって、取消理由3に理由はない。
(4)取消理由4について
発明の詳細な説明の段落【0084】の「実施例8と同様に、試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。」との記載における「キャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)」は、段落【0056】~【0057】、【0071】~【0074】のキャスト石膏キューブに関する記載からして、「試験ボードNo.14」から直接得たものでなく、「試験ボードNo.14」を調製するため「プラント配合物試験14」から、2インチ×2インチ×2インチの金型を用いて形成したものとみるのが自然であり、「試験ボードNo.14」と「キャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)」との関係は明確といえる。
よって、取消理由4に理由はない。
(5)取消理由5について
ア 引用文献1に記載された発明(引用1発明)について
上記3(1)ア~エ、カ~ケに摘示した記載事項を、表7の試験ボードNo.10に注目して整理すると、引用文献1には、
「2枚のカバーシートの間に形成された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、石鹸、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸、トリメタリン酸ナトリウム、ガラスファイバーを含み、スコットの重量に基づく重量%として、石鹸が0.03重量%、アルファ化デンプンが6.4重量%、ナフタレンスルホン酸が0.58重量%、トリメタリン酸ナトリウムが0.30重量%であり、水/スコット比が1.21である石膏スラリー配合物から形成され、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
ウォールボード厚が1/2インチであり、ボードの単位面積当たりの重量が1000 lb/MSFである軽量石膏ボード。」
の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているものと認められる。
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用1発明との対比
引用1発明の「石鹸」、「ガラスファイバー」、「石膏スラリー配合物」は、それぞれ、本件発明2の「起泡剤」、「紙繊維及び/又はガラス繊維」、「スラリー」に相当する。
また、引用1発明の軽量石膏ボードの「ウォールボード厚が1/2インチであり、ボードの単位面積当たりの重量が1000 lb/MSFである」ことは、「密度」に換算すると、24pcf(=(1000 lb/1000ft2)/(1/24ft))となるから、本件発明2の「前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)である」ことを満足する。
したがって、本件発明2と引用1発明とは、
「2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、スタッコ、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、並びに、紙繊維及び/又はガラス繊維を含むスラリーから形成され、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)である、軽量石膏ボード」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本件発明2の起泡剤は、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」であるのに対して、引用1発明の石鹸は、具体的な成分が明らかでない点。
(相違点2)
本件発明2の壁は、「走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚」であるのに対して、引用1発明の壁は、壁厚が明らかでない点。
(相違点3)
本件発明2の気泡は、「走査型電子顕微鏡画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下」であるのに対して、引用1発明の気泡は、大きさが明らかでない点。
(相違点4)
本件発明2の固化石膏コアは、「ASTM C-473に基づいて」、「平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)」であるのに対して、引用1発明の固化石膏コアは、平均コア硬度が明らかでない点。
(イ)相違点の検討
まず、相違点1について検討すると、引用文献1には、上記3(1)オに摘示したとおり、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が65重量/35重量の石鹸ブレンド、及び、同70重量/30重量の石鹸ブレンドを用いることが記載されているものの、引用1発明の石鹸が、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤であるといえないから、上記相違点1は実質的なものである。
次に、当該相違点1に係る本件発明2の特定事項の容易想到性について検討すると、引用文献1~3には、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が70重量/30重量を超える石鹸ブレンドを使用することは記載されていなし、また、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33のブレンド割合を調整するとの技術思想も記載されていないから、引用1発明において、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤を使用することは、当業者が容易に想到できたものといえない。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明2は、引用文献1に記載された発明といえず、また、引用文献1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、引用文献1に、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が70重量/30重量の石鹸ブレンドを用いることが記載されていることを根拠にして、引用1発明の石鹸は、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤を用いている蓋然性が高いこと、及び、仮にそうでないとしても、引用1発明の石鹸として、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」である起泡剤を用いていることは、当業者であれば適宜なし得る設計事項に過ぎない旨を主張している(令和2年11月4日付け意見書(申立人)第6頁下から4行~第7頁下から2行)。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、引用文献1には、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33が70重量/30重量を超える石鹸ブレンドを使用することは記載されていなし、また、HYONIC 25 AS/HYONIC PFM 33のブレンド割合を調整するとの技術思想も記載されていないから、上記主張は採用できない。
ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用1発明との対比
引用1発明の「石鹸」、「石膏スラリー配合物」は、それぞれ、本件発明3の「起泡剤」、「スラリー」に相当する。
また、引用1発明の軽量石膏ボードの「ウォールボード厚が1/2インチであり、ボードの単位面積当たりの重量が1000 lb/MSFである」ことは、上記イ(ア)で検討したとおり、「密度」に換算すると、24pcfとなるから、本件発明3の「前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)である」を満足する。
したがって、本件発明3と引用1発明とは、
「2枚のカバーシートの間に配置された固化石膏コアを含む軽量石膏ボードであって、
前記固化石膏コアは、水、起泡剤、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、及びスタッコを含むスラリーから形成され、
前記固化石膏コアは石膏結晶マトリックスを含み、
前記石膏結晶マトリックスは前記石膏結晶マトリックス内に気泡を画定し隔てる壁を有し、
前記軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)である、軽量石膏ボード」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点5)
本件発明3の起泡剤は、「Hyonic 25 AS及びHyonic PFM 33を含み、Hyonic 25 AS:Hyonic PFM 33の重量比は70:30より大きく95:5以下」であるのに対して、引用1発明の石鹸は、具体的な成分が明らかでない点。
(相違点6)
本件発明3の壁は、「X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、30ミクロンから200ミクロンの平均壁厚」であるのに対して、引用1発明の壁は、壁厚が明らかでない点。
(相違点7)
本件発明3の気泡は、「X線CTスキャンテクノロジー解析による三次元画像を用いて計測して、(a)100ミクロン未満の直径の平均孔径を有し、及び/又は、(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下」であるのに対して、引用1発明の気泡は、大きさが明らかでない点。
(相違点8)
本件発明3の固化石膏コアは、「ASTM C-473に基づいて」、「平均コア硬度が少なくとも11ポンド(約5kg)」であるのに対して、引用1発明の固化石膏コアは、平均コア硬度が明らかでない点。
(イ)相違点の検討
まず、相違点5について検討すると、当該相違点5は、上記イ(イ)において検討した相違点1と同じ事項であるから、当該相違点1と同様に、相違点5は実質的なものであるし、また、相違点5に係る本件発明3の特定事項は容易想到の事項ということはできない。
したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明3は、引用文献1に記載された発明といえず、また、引用文献1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
エ 本件発明4~7、9、12~19について
本件発明4~7、9、12~19は、本件発明2又は3を引用するものであって、本件発明2又は3の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記イ及びウと同様の理由により、引用文献1に記載された発明といえず、また、引用文献1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
オ 小括
以上の検討のとおりであるから、取消理由5に理由はない。
5 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、発明の詳細な説明の実施例12において、試験ボード14の壁厚の平均値は、段落【0090】の手法により一意に定まるはずなのに、「少なくとも50ミクロン以下~200ミクロン」(段落【0086】)と記載されており、平均壁厚が正しく測定評価されていないため、試験ボード14が、発明の詳細な説明に記載された「ボード重量を軽量化しながら石膏ウォールボードの強度を高める」(段落【0008】)との課題(以下、「本件課題」という。)を解決できるか明らかでないし、また、試験ボード14が本件課題を解決できたとしても、訂正前の請求項2及び3に係る発明の特定事項を充足することにより、本件課題を解決できる合理的な理由も示されていないため、同請求項2~7、9、12~19に係る発明にまで拡張又は一般化できるとは認められないから、同請求項2~7、9、12~19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第12頁第6行~第13頁第9行、第57頁下から6行~第60頁下から5行)。
この点について検討するに、発明の詳細な説明の段落【0084】には、「試験ボードNo.14を調製するためのプラント試験からのキャスト石膏キューブ(2インチ×2インチ×2インチ)を走査電子顕微鏡検査(SEM)により分析した。」と記載され、この「キャスト石膏キューブ」は、上記4(4)で検討したとおり、「試験ボードNo.14」を調製するため「プラント配合物試験14」から金型を用いて別途形成したものといえるから、段落【0086】に記載された「試験ボードNo.14における気泡間の平均壁厚は、約50ミクロン~約200ミクロンであった。」とは、試験ボードNo.14とは別に形成された複数のキャスト石膏キューブのそれぞれの平均壁厚が約50ミクロン~約200ミクロンの範囲内であったことを示しているものといえる。
したがって、試験ボード14の壁厚は正しく測定評価されているといえるから、試験ボード14は、本件課題を解決できたものといえる。
次に、試験ボード14から本件発明2~7、9、12~19への拡張又は一般化について検討する。
発明の詳細な説明には、コア硬度のASTM規格が11 lbであること(段落【0065】の表6欄外の付記b)や、通常の対照ボードのボード重量が1587 lb/MSF(石膏ボード密度は約38pcf)であること(段落【0049】の表2)が記載されていることからして、本件発明2及び3の固化石膏コアの平均コア硬度が11ポンド(約5kg)以上であり、軽量石膏ボードの密度が12pcf(約190kg/m3)から35pcf(約560kg/m3)であれば、試験ボード14と同様に、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、発明の詳細な説明には、「スタッコ、アルファ化デンプン、ナフタレンスルホン酸分散剤、トリメタリン酸ナトリウム、任意によりガラス繊維、および適切な量の石鹸の泡を含む石膏含有スラリーを用いて形成された石膏ウォールボードは大きい気泡容積をもたらし、ここで、気泡を囲う(従って、気泡の間の)壁は、実質的により厚いと共に強化された表面を有し、従って、従来のウォールボード中に見られる気泡よりも強いことが予想外に見出された。大きい気泡容積はボード密度および重量を低減させると共に、より厚い強化された壁は、固化石膏コアの微小構造を強化することによってウォールボードをより強くする。」(段落【0012】)ことが記載されていることからして、固化石膏コアを形成するためのスラリー組成、起泡剤の種類と混合割合、及び、結晶マトリックス内の気泡の孔径や気泡間の平均壁厚は、固化石膏コアの平均コア硬度及び軽量石膏ボードの密度に関連する事項といえるから、起泡剤の混合割合、気泡の孔径、あるいは、気泡間の平均壁厚が、試験ボード14と異なる値であったとしても、固化石膏コアの平均コア硬度、及び、軽量石膏ボードの密度が、本件発明2又は3の数値範囲内であれば、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
そうしてみると、本件発明2~7、9、12~19は、試験ボード14から拡張又は一般化できたものと当業者が認識できるものである。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。
(2)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、訂正前の請求項2に係る発明で規定する「平均膜厚」の測定方法は、本件特許明細書段落【0090】に記載されているものの、同段落の「顕微鏡写真の水平縁部および垂直縁部」がどこを示しているのか明らかでないし、また、走査型電子顕微鏡で撮影する断面の位置や、走査型電子顕微鏡の機種の違いによる視野の広さにより、気泡及び気泡間の壁の大きさや数が大きく変化して、「平均膜厚」が変動するため、これら条件を特定しない訂正前の請求項2に係る発明は明確といえないから、訂正前の請求項2、4~7、9、12~19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第14頁第12~18行、第63頁下から4行~第64頁第25行)。
この点について検討するに、上記「顕微鏡写真の水平縁部および垂直縁部」は、例えば、図14の50×倍率での走査型電子顕微鏡写真の上下左右のそれぞれの端部を示していることは明らかである。
また、石膏ボードにおける気泡及び気泡間の壁の大きさや数は、巨視的に均一に分布しているものであるから、断面の位置や視野の広さによって、「平均膜厚」は変動するものといえないし、さらに、微視的に不均一に分布しているとしても、本件特許明細書段落【0090】の方法では、無作為な位置で撮影した10枚の走査型電子顕微鏡写真を用いて「平均膜厚」を算出しているから、断面の位置や視野の広さが「平均壁厚」に影響するともいえない。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。
(3)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、石膏結晶マトリックスに含まれる気泡を画定し隔てる壁の「平均膜厚」の具体的な制御方法が開示されておらず、訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る発明を当業者が実施できる程度に記載されていないから、同請求項2~7、9、12~19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第14頁下から3行~第15頁第8行、第64頁下から3行~第65頁第16行)。
この点について検討するに、発明の詳細な説明に記載された試験ボード14(実施例10~12)と試験ボード10(実施例7、8)の走査型電子顕微鏡写真(図14と図4~6)を比較すれば、石膏結晶マトリックス内の壁の「平均膜厚」は、起泡剤の種類や混合割合によって制御できると当業者であれば認識できるから、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。
(4)特許法第17条の2第3項所定の規定違反に係る申立理由について
申立人は、平成30年3月5日付けで手続補正された請求項2及び3の「前記気泡」が「(b)前記気泡の大多数の直径は100ミクロン以下であ」るとの特定事項は、本件特許の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に明示的に記載されたものでなく、また、自明な事項ともいえないから、訂正前の請求項2~7、9、12~19に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしてない補正をした特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第17頁第6~14行、第68頁第5行~第71頁下から2行)。
この点について検討するに、上記特定事項の「大多数」が、広辞苑によれば、「ほとんど全てといってよいほどの多い数。または半数以上」を意味していることから、上記特定事項は、直径が100ミクロン以下の気泡が半数以上から100%付近であることを示しているといえる。
そして、本件特許の願書に最初に添付された明細書の段落【0022】には、「平均気泡(バブル)サイズは直径約100ミクロン未満であることが好ましい。」と記載され、当該記載の「平均気泡(バブル)サイズは直径約100ミクロン未満である」ことには、気孔分布における直径100ミクロン以下の気孔の割合が半数付近であることから100%付近であることまでを含むものであるから、上記特定事項は、本件特許の願書に最初に添付した明細書特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、申立人の主張する上記申立理由に理由はない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項2~7、9、12~19に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項2~7、9、12~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1、8、10及び11に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700351