特許異議申立
2016-700918
燃料電池
- 審判番号
- 2016-700918
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-549108
- 登録番号
- 特許第5895108号(P5895108)
- 請求日
- 2016年09月26日
- 審決日
- 2017年04月20日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本碍子株式会社
- 【権利者代理人】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
- 【異議申立人】亀崎 伸宏
- 審判長/審判官
- 審判長 池渕 立
- 審判官 千葉 輝久
- 審判官 河本 充雄
- 分類
- P1651.4 -YAA(H01M) / P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第39条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5895108号発明「燃料電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5895108号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第5895108号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5895108号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、2015年5月22日(優先権主張 2014年5月26日 日本国、2015年 3月 2日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人亀崎伸宏(以下、「申立人」という。)により特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、平成28年11月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、この訂正の請求に対して申立人に意見を求めたところ、意見書の提出はなされなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成29年1月25日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
請求項1に記載の「0.1%以下である、」を「0.1%以下であり、
前記第1領域の厚みは、前記固体電解質層の全厚みの1/2以下である、」と訂正する。
2 訂正の可否について
訂正事項1に関連する記載として、願書に添付した明細書及び図面には、以下の記載がある。
「【0034】
なお、第1領域31の厚みは、1μm~10μmとすることができる。第2領域32の厚みは、3μm~20μmとすることができる。燃料極20との界面Pから第2領域32の第1領域側表面32Sまでの距離Lは、1μm~20μmとすることができ、10μm以下であることが好ましい。また、距離Lは、固体電解質層30の全厚みの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが更に好ましい。」
「【図1】
」
以上の記載から、「燃料極20との界面Pから第2領域32の第1領域側表面32Sまでの距離L」は、第1領域31の厚みであるといえるから、願書に添付した明細書及び図面には、第1領域の厚みは、固体電解質層の全厚みの1/2以下であることが記載されているといえる。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであるといえる。
そして、訂正事項1による訂正は、「第1領域」の厚みについて、「固体電解質層の全厚みの1/2以下である」ことを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3 当審の判断
1 訂正後の請求項1に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、符号A~Lについては、説明のために当審で付したものである(以下、「特定事項A」~「特定事項L」ということもある。)。
「【請求項1】
A ニッケルと酸素イオン伝導性材料を含有する燃料極と、
B 空気極と、
C 前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質層と、
を備え、
D 前記固体電解質層は、ジルコニア系材料を主成分として含有し、セリア系材料及びニッケルを副成分として含有しており、
E 前記固体電解質層は、前記燃料極上に配置される第1領域と、前記第1領域と前記空気極の間に配置される第2領域とを有し、
F 前記第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合は、0.5%以下であり、
G 前記第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3.0%以上であり、
H 前記第1領域におけるニッケルのジルコニウムに対する原子量比は、3.0at%以下であり、
I 前記第2領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、1.0%以上であり、
J 前記第2領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、0.1%以下であり、
K 前記第1領域の厚みは、前記固体電解質層の全厚みの1/2以下である、
L 燃料電池。」
2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 訂正前の請求項1に係る特許に対して平成28年11月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1に係る発明は、先願に係る特許第5770400号(申立人が提出した甲第8号証。)の請求項1に係る発明と実質同一であるから、請求項1に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものである(以下、「取消理由1という。」)。
(2) 本件発明の新規性・進歩性及び先後願の判断基準日について
申立人は、申立書の6頁21~25行において、本件発明の特定事項Dの一部(固体電解質層はニッケルを副成分として含有していること)、及び、特定事項Hについては、本件特許に係る出願の優先権主張の基礎とされた出願の当初明細書等には記載されていないため、本件発明の新規性・進歩性や先後願等の判断のための基準日は、実際の出願日である旨主張しているので、本件発明の新規性・進歩性及び先後願の判断基準日について検討する。
本件発明の特定事項Dのうち、「固体電解質層」は、「ニッケルを副成分として含有して」いるとの事項、及び、特定事項Hの「前記第1領域におけるニッケルのジルコニウムに対する原子量比は、3.0at%以下であ」るとの事項は、いずれも、本件特許に係る出願の優先権の基礎となる出願(特願2014-108395号及び特願2015-40495号、以下、これらをまとめて「優先権基礎出願」という。)の出願書類全体に記載されていない事項であるから、本件発明は、優先権基礎出願の出願書類全体に記載された構成要素と、本件特許に係る出願で新たに追加された構成要素を組み合わせた発明であるといえる。
したがって、本件発明は、優先基礎出願の出願書類の全体に記載した事項の範囲内のものであるとはいえないから、本件特許に係る出願についての、優先権の主張の効果は認められない。
よって、本件発明の新規性・進歩性及び先後願の判断のための基準日は、実際の出願日である2015年(平成27年)5月22日である。
(3) 先願発明
本件特許の先願に係る特許第5770400号(甲第8号証)の請求項1に係る発明(以下「先願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「ニッケルとジルコニアを含有する燃料極と、
空気極と、
前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質層と、
を備え、
前記固体電解質層は、ジルコニア系材料を主成分とし、セリア系材料を副成分としており、
前記固体電解質層は、前記燃料極上に配置される第1領域と、前記第1領域と前記空気極の間に配置される第2領域とを有し、
前記第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合は、0.5%以下であり、
前記第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3%以上であり、
前記第2領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、1.0%以上であり、
前記第2領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、0.1%以下である、
燃料電池。」
(4) 本件発明と先願発明との対比・判断
ア 本件発明と先願発明とを対比する。
本件特許明細書【0016】の「酸素イオン伝導性材料としては、例えば8YSZ、10YSZ(10mol%のイットリアで安定化されたジルコニア)及びScSZ(スカンジアで安定化されたジルコニア)などのジルコニア系材料や、CeO2(セリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)及びSDC(サマリウムドープセリア)などのセリア系材料が挙げられる。」との記載から、本件発明の「酸素イオン伝導性材料」は、「ジルコニア」を含んでいるといえるから、先願発明の「ジルコニア」は、本件発明の「酸素イオン伝導性材料」に相当し、先願発明の「ニッケルとジルコニアを含有する燃料極」は、本件発明の「ニッケルと酸素イオン伝導性材料を含有する燃料極」に相当する。
したがって、本件発明と先願発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
相違点1:固体電解質層について、本件発明は、「ジルコニア系材料を主成分として含有し、セリア系材料及びニッケルを副成分として含有して」いるのに対し、先願発明は、「ジルコニア系材料を主成分とし、セリア系材料を副成分として」いる点
相違点2:本件発明は、「前記第1領域におけるニッケルのジルコニウムに対する原子量比は、3.0at%以下であ」るのに対し、先願発明は、そのような特定がなされていない点
相違点3:本件発明は、「前記第1領域の厚みは、前記固体電解質層の全厚みの1/2以下である」のに対し、先願発明は、そのような特定がなされていない点
イ 相違点についての判断
まず、相違点3について検討する。
甲第8号証には、以下の記載がある。
「【0032】
なお、第1領域31の厚みは、1μm~10μmとすることができる。第2領域32の厚みは、3μm~20μmとすることができる。燃料極20との界面Pから第2領域32の第1領域側表面32Sまでの距離Lは、1μm~20μmとすることができ、10μm以下であることが好ましい。また、距離Lは、固体電解質層30の全厚みの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが更に好ましい。」
「【図1】
」
以上の記載から、「燃料極20との界面Pから第2領域32の第1領域側表面32Sまでの距離L」は、第1領域31の厚みであるといえるから、願書に添付した明細書及び図面には、先願発明の「第1領域の厚み」について、固体電解質層の全厚みの1/2以下であることが好ましいことは記載されているものの、当該「第1領域の厚み」は、必ずしも、固体電解質層の全厚みの1/2以下であるとはいえない。
また、本件特許の出願時において、先願発明の「第1領域の厚み」が、固体電解質層の全厚みの1/2以下であることが、周知技術又は慣用技術であると認めるに足りる証拠は提示されていない。
したがって、上記相違点3は実質的な相違点である。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明は先願発明と実質的に同一であるとはいえない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえず、取消理由1には理由がない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は以下の申立理由1~4のとおりである。
ア 申立理由1
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
イ 申立理由2
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
ウ 申立理由3
本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が確認できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
エ 申立理由4
本件特許の請求項1に係る発明は明確ではないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開2013-41809号公報
甲第2号証:特開2015-57771号公報
甲第3号証:中根清、「高分解能誘導結合プラズマ質量分析法による高純度ジルコニア中微量不純物の定量」、分析化学、公益社団法人日本分析化学会、2004年、Vol.53、No.3、p.147-152
甲第4号証:特開2001-118590号公報
甲第5号証:国際公開第2012/105579号
甲第6号証:岸本治夫、外9名、「熱力学解析による耐久性向上のための基盤技術開発」、2012年12月17日~18日、第21回SOFC研究発表会講演要旨集、SOFC研究会、p.40~43
甲第7号証:田川博章著、「固体酸化物燃料電池と地球環境」、第1版、株式会社アグネ承風社、2010年7月25日、p.111~112
(2) 各甲号証の記載
ア 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第1号証には、「燃料電池セル」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与したものであり、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(甲1a) 「【0007】
本発明の第1側面に係る燃料電池セルは、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極との間に配置され、ジルコニウムを含む固体電解質層と、固体電解質層と空気極との間に配置され、セリウムとジルコニウムを含むバリア層と、を備える。バリア層のうち空気極との接合領域におけるジルコニウム濃度の最大値は、固体電解質層におけるジルコニウム濃度の最大値を1とした場合、0.08以上0.4以下である。」
(甲1b) 「【0012】
≪燃料電池1の構成≫
燃料電池1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、燃料電池1の構成を示す断面図である。
【0013】
燃料電池1は、図1に示すように、燃料電池セル(以下、「セル」と略称する。)10と、集電部材20と、を備える。燃料電池1では、図示しないが、複数のセル10が集電部材20を介してy軸方向にスタックされている。
【0014】
以下、セル10の構成、集電部材20の構成、固体電解質層12およびバリア層14におけるジルコニウム濃度分布の順に説明する。
【0015】
〈セル10の構成〉
セル10は、燃料極11、固体電解質層12、中間層13、バリア層14および空気極15を備える。セル10は、y軸方向に直交するx軸方向に延びる薄板である。セル10は、セラミックス材料によって構成される。セル10の厚みは、例えば30μm~300μmであり、セル10の直径は、例えば5mm~50mmである。
【0016】
(燃料極11)
燃料極11は、セル10のアノードである。燃料極11は、セル10に含まれる他層を支持する基板(換言すれば「支持体」)としての機能を有していてもよい。
【0017】
燃料極11の材料としては、例えば、公知の燃料電池セルの燃料極に用いられる材料を用いることができる。具体的に、燃料極11は、酸化ニッケル‐イットリア安定化ジルコニア(NiO‐YSZ)及び/又は酸化ニッケル‐イットリア(NiO‐Y2O3)を主成分として含んでいてもよい。本実施形態において、「組成物Aが物質Bを主成分として含む」とは、好ましくは、組成物Aにおける物質Bの含量が60重量%以上であることを意味し、より好ましくは、組成物Aにおける物質Bの含量が70重量%以上であることを意味する。
【0018】
燃料極11の厚みは、例えば10μm~300μm程度であればよい。燃料極11の厚みは、燃料極11が基板として機能する場合、セル10に含まれる他層の厚みよりも大きくてもよい。
【0019】
(固体電解質層12)
固体電解質層12は、燃料極11と中間層13との間に配置される。固体電解質層12は、空気極15で生成される酸素イオンを透過させる機能を有している。
【0020】
固体電解質層12は、ジルコニウムを含んでいる。固体電解質層12は、ジルコニウムをジルコニア(ZrO2)として含んでもよい。固体電解質層12は、ジルコニアを主成分として含んでいてもよい。また、固体電解質層12は、ジルコニアの他に、イットリア(Y2O3)及び/又は酸化スカンジウム(Sc2O3)等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、安定化剤として機能する。固体電解質層12において、安定化剤のジルコニアに対するmol組成比(安定化剤:ジルコニア)は、3:97~20:80程度であればよい。すなわち、固体電解質層12の材料としては、例えば、3YSZ、8YSZ及び10YSZ等のイットリア安定化ジルコニアやスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)などのジルコニア系材料などを挙げることができる。
【0021】
固体電解質層12の厚みは、例えば30μm以下であればよい。
【0022】
なお、固体電解質層12とバリア層14におけるジルコニウム濃度分布の関係については後述する。
【0023】
(中間層13)
中間層13は、固体電解質層12とバリア層14との間に配置される。中間層13は、固体電解質層12およびバリア層14と共焼成されている。中間層13の厚みは、0.5μm以上であればよいが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
中間層13は、ジルコニウムとセリウムとを含んでいる。中間層13は、ジルコニウムをジルコニアとして、また、セリウムを酸化セリウム(CeO2:セリア)として含んでいてもよい。中間層13において、セリウム(又はセリア)とジルコニウム(又はジルコニア)とは混合されていればよいが、両者は固溶体を構成していることが好ましい。また、中間層13は、セリウム及びジルコニウムの他に、固体電解質層12やバリア層14に含まれる添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、固体電解質層12に含まれるイットリウム(Y)やスカンジウム(Sc)、或いは、バリア層14に含まれるガドリニウム(Gd)やサマリウム(Sm)などが挙げられる。
【0025】
また、中間層13は、図1に示すように、第1面13aと第2面13bと複数の気孔13cとを有している。中間層13は、第1面13aにおいて固体電解質層12に接合され、第2面13bにおいてバリア層14に接合されている。
【0026】
ここで、図2は、固体電解質層12、中間層13およびバリア層14におけるセリウム濃度分布とジルコニウム濃度分布の一例を模式的に示すグラフである。第1面13aは、図2に示すように、セリウム濃度とジルコニウム濃度とが一致するラインによって定義されている。また、中間層13の第2面13bは、断面におけるセリウム最大濃度の85%濃度のラインによって定義されている。
【0027】
なお、本実施形態において、各層の成分の「濃度」とは、各層における成分の平均含有量である。このような「濃度」は、例えば、原子濃度プロファイルによるライン分析、つまりEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)による特性X線強度の比較によって得ることができる。具体的には、セル10の厚み方向(図1のy軸方向)に平行な断面において、y軸方向に沿ってEPMAでライン分析を行うことにより、図2に示すような各元素の濃度分布データが取得される。なお、本実施形態では、EPMAは、EDS(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)を含む概念として用いられている。」
(甲1c) 「【0050】
≪燃料電池セル10の製造方法≫
次に、燃料電池セル10の製造方法の一例について説明する。ただし、以下に述べる材料、粒径、温度、及び塗布方法等の各種条件は、適宜変更することができる。
【0051】
まず、複数のセラミックグリーンシートを積層し熱圧着することによって、燃料極11となる第1材料層を形成する。セラミックグリーンシートは、例えば、酸化ニッケル(NiO)、ジルコニア系材料(例えば8YSZ)、造孔剤(例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))などによって構成される。
【0052】
次に、第1材料層上にジルコニア系材料によって構成されるセラミックグリーンシートを積層することによって、固体電解質層12となる第2材料層を形成する。
【0053】
次に、第2材料層上にセリア系材料によって構成されるセラミックグリーンシートを積層することによって、第1バリア層14aとなる第3材料層を形成する。
【0054】
次に、第1乃至第3材料層を脱脂後に1100~1350℃で1~20時間かけて共焼成することで共焼成体を形成する。これによって、第1材料層が燃料極11となり、第2材料層が固体電解質層12となり、第3材料層が第1バリア層14となる。」
(甲1d) 「【0077】
[実験例No.1~No.10の製作]
以下のようにして、実験例No.1~No.10に係るセルを作製した。なお、実験例No.1~No.10に係る作製条件の相違点は、第2バリア層の作製方法においてされている点である。
【0078】
まず、酸化ニッケル(NiO、平均粒径:0.8μm)、ジルコニア系材料(8YSZ、平均粒径:0.6μm)、及び造孔剤(PMMA、平均粒径:5μm)からなるセラミックグリーンシート(厚み200μm)を、800μmとなるように積層し熱圧着(60℃、3MPa)した。これによって、一体化された成形体を作製した。
【0079】
次に、成形体上に、別途作製された8YSZからなるセラミックグリーンシートと、GDCからなるセラミックグリーンシートと、を順次積層し熱圧着した。これによって、燃料極材料、ジルコニア系材料層、セリア系材料層が順次積層された積層体を作製した。
【0080】
次に、積層体を1400℃で1~20時間かけて共焼成した。これによって、燃料極材料から燃料極が形成され、ジルコニア系材料層から固体電解質層が形成され、セリア系材料層から第1バリア層が形成された。」
(甲1e) 「【0086】
[バリア層と固体電解質層における成分濃度の測定]
実験例No.1~No.10のセルを厚み方向に平行に切断し、FE‐EPMA(電界放射型電子プローブマイクロアナライザ)を用いて断面を元素マッピングすることによって、ジルコニウム及びセリウムについてのシグナル強度を測定した。1350℃で焼成されたサンプルの測定結果を一例として図4に示す。」
(甲1f) 「【図1】
」
(甲1g) 「【図2】
」
(甲1h) 「【図4】
」
イ 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第2号証には、「燃料電池用単セル,燃料電池,および燃料電池用単セルの製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(甲2a) 「【0008】
固体酸化物形燃料電池の特性変動の要因の一つに,固体酸化物形燃料電池を高温で作動させることによる各層界面を通しての元素拡散がある。例えば,燃料極層(アノード)-固体電解質層間において,燃料極層が含有する金属元素(Niなどのアノード含有元素)が固体電解質層に拡散すると,例えば,次のように,固体電解質層の抵抗が上昇する。電子伝導性の高いNiがイオン伝導性の高い固体電解質材料(YSZ等)中に拡散することで,YSZのイオン伝導性が阻害され,固体電解質層の抵抗が上昇する。また,拡散したNiがNiOとなって,YSZに固溶し,その後,Niに還元された時にYSZが立方晶から正方晶に相転移することで,抵抗値が上昇する。このように,固体電解質の抵抗が上昇することで,燃料電池の特性が劣化する。」
(甲2b) 「【0054】
本実施形態では,固体電解質層102が燃料極層115に含まれる金属元素115b(例えば,Ni,Mn,Coのいずれか)と同一の金属元素115b(金属酸化物)を含む。この結果,図4に示すように,長時間の運転後でも,固体電解質層102への金属元素115bの拡散が制限される。」
(甲2c) 「【0074】
(実施例)
以下,本発明の実施例につき説明する。
ここでは,実施例の固体電解質層102をYSZおよびNiOの混合物で構成した。具体的には,NiOを0.5mol%添加した。比較例の固体電解質層102xとして,NiOを添加しないYSZを用いた。燃料極層115には,NiO(金属元素115b(金属酸化物))を75mol%添加したYSZ(セラミック材料115a)を用いた。なお、NiOの添加量は、固体電解質層102に対して波長分散型X線分光分析装置(WDS)を用いて測定して得られるNiOの含有量に等しい。また、このYSZに含まれるイットリアは8mol%であった。」
ウ 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第3号証には、「高分解能誘導結合プラズマ質量分析法による高純度ジルコニア中微量不純物の定量」(標題)に関して、以下の事項が記載されている。
(甲3a) 「ジルコニアは,固体電解質,酸素センサー,耐熱材料などに用いられている.」(147頁左欄2~3行)
(甲3b) 「
」(151頁)
エ 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第4号証には、「高導電性固体電解質膜及びその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(甲4a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体電解質型燃料電池(以下SOFCとも言う)の固体電解質膜のような、多孔質セラミックス上に形成される高導電性素地の組成に関する。」
(甲4b) 「【0025】
【実施例2】実施例1と同様に固体電解質粉末として市販の10mol%イットリア添加ジルコニア粉末に、La、Mn、Co、Sr、Ca、Ni元素をそれぞれ1atomic%とSi元素を1atomic%秤量し、セラミックス製ボールを用いた湿式混合を行った。混合した粉末を乾燥したのち、金型にてプレス成形を行い1500℃で5時間焼成をすることで、プレス焼成体を得た。得られた焼成体を約1mm厚みとなるように研磨したのち、両面に白金電極と、1mm厚みの側面にリファレンス電極を取り付けることにより導電率測定サンプルを作製した。…」
オ 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第5号証には、「固体電解質材料およびこれを備えた固体酸化物形燃料電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(甲5a) 「[0006] しかし、従来のYSZおよび特開平11-354139に記載のSOFCを用いて、数百~数千時間の長期耐久試験を行うと、燃料ガスに含まれるSiなどの不純物が燃料極層側の固体電解質層に接触する際に結晶内のイットリアを引き抜き、固体電解質層の結晶変態(立方晶から正方晶へ変化)が生じることが明らかになった。また、燃料極層近傍において固体電解質層の一部が粉末化していることが確認された。」
(甲5b) 「[0011] 本発明の固体電解質材料の好ましい態様においては、ジルコニアには、固体電解質材料中のジルコニアと、イットリアと、ランタノイド酸化物との総物質量(総モル量)に対して、イットリアが8~15mol%、ランタノイド酸化物が1~5mol%固溶されていることを特徴とする。イットリア量が8~15mol%であることが好ましいのは、8mol%未満だと正方晶であり、15mol%超えでは菱面体晶が生じる可能性があり酸素イオン導電性が低下するためである。ランタノイド酸化物量が1~5mol%であることが好ましいのは、1mol%未満だと燃料ガスに含まれるSi等の不純物によるイットリア引き抜きを抑制する効果が低く、5mol%超えだと正方晶が生成し結晶変態が生じやすくなるためである。」
(甲5c) 「[0027](実施例1)
図2タイプのセルを製作し試験を行ったので説明する。ZrO2原料(平均粒径0.3μm)、Y2O3原料(平均粒径0.3μm)、CeO2原料(平均粒径0.3μm)を一般式89.5mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-0.5mol%(CeO2)で表される10Y0.5CeSZ組成になるように秤量し、溶媒エタノールの中で50hr湿式混合し、乾燥および粉砕後1200℃で焼結させた。該焼結体を粉砕して粉末にした後、バインダーPVAを前記粉末に対して5wt%加え、乳鉢で混合した。50MPaで前記PVAを含んだ粉末をプレス成形し、1450℃で5hr焼結させた。10Y0.5CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得た。厚み200μm程度まで研磨した後、酸素極層としてLSM(平均粒径2μm)を焼結後の厚みが20μmになるようスクリーン印刷で成膜し、反対面に燃料極層としてNiとYSZのサーメットになるよう40wt%NiO-60wt%YSZ(平均粒径2μm)を焼結後の厚みが20μmになるようスクリーン印刷で成膜し、1400℃で2hr焼結させた。
[0028](実施例2)
一般式89.5mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-0.5mol%(CeO2)で表される10Y0.5CeSZ組成の粉末に、バインダーPVAと共に、Al2O3を、固体電解質材料中のジルコニアと、イットリアと、ランタノイド酸化物との総物質量(総モル量)に対して、1mol%相当混ぜ合わせ、10Y0.5CeSZ1Al組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0029](実施例3)
一般式89.5mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-0.5mol%(CeO2)で表される10Y0.5CeSZ組成にAl2O3を、固体電解質材料中のジルコニアと、イットリアと、ランタノイド酸化物との総物質量(総モル量)に対して、1.5mol%相当混ぜ合わせ、10Y0.5CeSZ1.5Al組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例2と同様とした。
[0030](実施例4)
一般式89mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-1mol%(CeO2)で表される10Y1CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0031](実施例5)
一般式88mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-2mol%(CeO2)で表される10Y2CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0032](実施例6)
一般式85mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-5mol%(CeO2)で表される10Y5CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0033](実施例7)
一般式84mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)-6mol%(CeO2)で表される10Y6CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0034](実施例8)
一般式92mol%(ZrO2)-7mol%(Y2O3)-1mol%(CeO2)で表される7Y1CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0035](実施例9)
一般式91mol%(ZrO2)-8mol%(Y2O3)-1mol%(CeO2)で表される8Y1CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0036](実施例10)
一般式84mol%(ZrO2)-15mol%(Y2O3)-1mol%(CeO2)で表される15Y1CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0037](実施例11)
一般式83mol%(ZrO2)-16mol%(Y2O3)-1mol%(CeO2)で表される16Y1CeSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0038](比較例1)
一般式90mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)で表される10YSZ組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例1と同様とした。
[0039](比較例2)
一般式90mol%(ZrO2)-10mol%(Y2O3)で表される10YSZ組成にAl2O3を、固体電解質材料中のジルコニアと、イットリアと、ランタノイド酸化物との総物質量(総モル量)に対して、0.5mol%相当混ぜ合わせ、10YSZ0.5Al組成の緻密質な固体電解質層を得たこと以外は実施例2と同様とした。
[0040](試験方法)
図6に試験装置の概略を示す。ジルコニアチューブ105で保持された装置にガラスシール(SiO2+B2O3)104を置き、その上に作製したSOFC100を乗せた。さらにSOFC100の上面にジルコニアチューブ105を乗せた。実施例1~11および比較例1,2のSOFC上面にAirを、下面に97%N2+3%H2を流しながら電気炉106を1000℃まで昇温した。SOFC上面(第一層側)にAirを、下面に燃料ガス(70%H2+30%H2O)を流しながら1000℃で600hr保持した後、SOFC上面(第一層側)にAirを、下面に97%N2+3%H2を流しながら室温まで下げた。
[0041](分析1)
SOFC100をガラスシール104から引き剥がした後、ガラスシール104と接触したSOFC100の固体電解質層102表面をSEMおよびラマン分光法で分析し、粉末化の有無および結晶相を確認した。また、すべてのSOFCに対して試験前にラマン分光法で結晶相を確認した。
[0042] SEM観察はS-4100,Hitachi High-Technologies Co.,Japanを用いて、加速電圧15kV,1000倍で実施した。ラマン分光はNRS-2100,JASCO Co.,Japanを用いて、電解質表面のZr-O振動モードを分析した。検出器はトリプルモノクロメータを搭載し、波数分解能1cm-1、観察スポットφ8μm、励起波長523nmで測定した。
[0043][表1]
[0044] 表1に試験結果を示す。表記はc:立方晶、t:正方晶、r:菱面体晶である。比較例1、2はいずれも粉末化が確認されたのに対して、実施例1~11はいずれも粉末化は認められなかった。このことから本発明の組成を採用することで粉末化を抑制できることが確認された。また、結晶相については実施例1、2、7、8でt相に変態し、実施例11では630℃近傍で相変態を引き起こすr相が一部残った状態であったのに対して、実施例3、4、5、6、9、10はc相のままであった。実施例4~11で比較した場合、より好ましい組成は実施例4、5、6、9、10で用いたものであり、イットリアが8~15mol%、ランタノイド酸化物が1~5mol%固溶されていることがより好ましいことを確認した。さらに、実施例1~3で比較するとアルミナを1mol%より多く含有した実施例3がc相のままであり、より好ましい組成であることが確認できた。
[0045](分析2)
実施例3と実施例4および比較例1のSOFCについては、燃料極層103を剥がし、燃料極層103で覆われていた固体電解質層102表面についてSEMおよびラマン分光法で分析した。」
カ 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第6号証には、「熱力学的解析による耐久性向上のための基盤技術開発」(標題)に関して、以下の事項が記載されている。
(甲6a) 「実機の解体分析において、YSZ電解質の燃料極との界面近傍でYSZ電解質が立方晶から正方晶へと相変態していることを発見した[7]。」(42頁18~19行)
キ 本件特許に係る出願日前に頒布された甲第7号証には、「固体酸化物燃料電池と地球環境」(標題)に関して、以下の事項が記載されている。
(甲7a) 「…電解質は気相の水素と酸素を物理的に隔離するもので,酸素/還元雰囲気において安定であり,緻密であることも必要である.」(112頁6~8行)
(3)申立理由1、2(特許法第29条第1項第3号及び第2項)について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の前記(甲1b)の記載によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「酸化ニッケル-イットリア安定化ジルコニアを主成分として含有する燃料極と、
空気極と、
前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質層と、を備え、
前記固体電解質層は、ジルコニアを主成分として含有し、セリアを副成分として含有しており、
前記固体電解質層は、前記燃料極上に配置される燃料極側の部分と、前記燃料極側の部分と前記空気極の間に配置される中間層側の部分とを有する
燃料電池セル。」
イ 申立人の主張について
(ア) 申立人は、申立書の15頁下から3行~16頁1行において、甲第1号証の図2及び図4(前記(甲1g)及び(甲1h)参照。)から、「固体電解質層(12)における中間層(13)側とは反対側(燃料極(11)側)の部分、より具体的には、図中において横軸の値が約8.5μmから12μmまでの厚み約3.5μmの部分(以下、「燃料極側部分」という。)では、ジルコニウム濃度がほぼ100%であり、セリウム濃度がほぼ0%であること」が看取できる、と記載している。
(イ) しかしながら、以下a~cに示す理由により、甲第1号証の図2及び図4に基づく、ジルコニウム濃度及びセリウム濃度についての、前記の認定が妥当なものとは認められない。
a 甲第1号証の前記(甲1b)の【0026】の記載によれば、図2は「模式的に示すグラフ」にすぎないため、図2に記載されたデータは実際の測定に基づく数値が記載されているものとは認められない。
b 前記aにもかかわらず、甲第1号証の前記(甲1b)の【0027】の記載によれば、図2は、単なる模式的なグラフではなく、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)による特性X線強度の比較によって得られた実測に基づくグラフとも考えられるところ、この場合、図2においてCeのグラフ(一点鎖線の曲線)の左端の値は、0mol%ではなく、12.5mol%と読み取ることができる(注1)。
一方、図2において、Zrのグラフ(実線の曲線)の左端の値がほぼ100mol%と読み取れるので、Ceのグラフ(一点鎖線の曲線)の左端の値が12.5mol%と読み取れることと一見矛盾しているようにも見えるが、甲第1号証の例えば、前記(甲1a)には「バリア層のうち空気極との接合領域におけるジルコニウム濃度の最大値は、固体電解質層におけるジルコニウム濃度の最大値を1とした場合、0.08以上0.4以下である。」と記載されており、図2の右端の縦軸においても、Zr濃度として8mol%と40mol%のところに点線が引かれていることから推測して、図2におけるZr濃度が100mol%とは、固体電解質層におけるジルコニウムの濃度の最大値を100mol%として表された数値であると推定され、したがって、必ずしも、固体電解質層12の「燃料極側部分」がジルコニウムのみを含有し、セリウムを全く含有しないことを意味しているものではない、といえる。
そして、甲第1号証には、Ceのグラフについて、何を100mol%とするかについては記載がないため、上記した12.5mol%が、何を基準としたものか不明であり、結果として、図2から、固体電解質層12の「燃料極側部分」における、セリウムとジルコニウムの含有割合がどれだけであるかについては、明確な結論を得ることができない。
以上の検討から、甲第1号証の図2からは、固体電解質層12の「燃料極側部分」にはセリウムが、100mol%の基準が不明ながら、12.5mol%含まれているから、申立人が、固体電解質層12の「燃料極側部分」におけるセリウム濃度がほぼ0%であると認定していることは、明らかに誤りであるといえるけれども、固体電解質層12の「燃料極側部分」における、セリウムとジルコニウムの含有割合がどれだけであるかは甲第1号証の記載からは不明である。
したがって、甲第1号証の図2からは、固体電解質層12の「燃料極側部分」における、セリウムとジルコニウムの含有割合については認定することができない。
c 甲第1号証の前記(甲1e)の記載によれば、図4はFE-EPMA(電界放射形電子プローブマイクロアナライザ)を用いて断面を元素マッピングすることによってシグナル強度を測定した結果であるところ、固体電解質層12のうち、請求人のいう「燃料極側部分」におけるCeの割合は、Zr濃度比で0.08と看取できる。このとき、ジルコニウムとセリウムの総量に対するセリウムの割合は0.08/(1+0.08)=0.074=7.4%と算出されるから、本件発明における「0.5%以下」には該当しない。
(ウ) したがって、甲第1号証から、固体電解質層12の「燃料極側部分」における、セリウムとジルコニウムの含有割合については認定することができないから、申立人の前記主張は採用できない。
注1:下記の図2において、左端の縦軸はCe濃度(mol%)をリニアスケールで表しているものと認められるところ、左端の縦軸において、100%と85%の位置から、比例計算によって0%の位置を求めると、横軸よりも下方に位置することがわかる。そして、当該0%の位置に基づいて、Ceのグラフ(一点鎖線の曲線)の左端の値を求めると、12.5%と算出することができる。
【図2】
ウ 対比・判断
甲1発明と本件発明を対比すると、少なくとも、「固体電解質層」のうち、「燃料極上に配置される第1領域」「におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合」について、本件発明は「0.5%以下」であるのに対して、甲1発明は不明である点で相違している。
そして、甲1発明において、「固体電解質層」のうち、「燃料極上に配置される第1領域」「におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合」が、「0.5%以下」であると認めるに足りる証拠は提示されていない。
また、提出された甲号証のいずれにも、甲1発明において、「固体電解質層」のうち、「燃料極上に配置される第1領域」「におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合」を、「0.5%以下」とすることについては、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明は、甲1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 申立理由3(特許法第36条第6項第1号)について
ア 申立人の主張
申立理由3についての申立人の主張は、概略以下のとおりである(申立書の6頁最下行~9頁13行、37頁下から5行~41頁12行参照。)。
(ア) 本件発明の課題
本件特許明細書の【0003】、【0006】、【0007】、【0025】、【0028】、【0038】、【0040】、【0067】~【0070】の記載によれば、本件発明は、
i)燃料電池の運転環境下において固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶へと相変態すること、
ii)固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶に相変態すると固体電解質層の電気伝導度が低下すること、及び、
iii)正方晶系ジルコニアの強度は立方晶系ジルコニアの強度よりも大きいこと、を前提として、
焼成後の還元処理において固体電解質層が過剰に膨張することを抑制することにより燃料極と固体電解質層との界面にクラックが発生することを抑制して固体電解質層と燃料極との接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制することを課題としているといえる。
(イ) 数値範囲限定の時点について(以下、「申立理由3-1」という。)
前記(ア)で述べたように、本件発明の課題は、「焼成後の還元処理において固体電解質層が過剰に膨張することを抑制することにより燃料極と固体電解質との界面にクラックが発生することを抑制して固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制すること」等である。
ここで、燃料電池の運転環境下において、固体電解質層に含まれるジルコニアは立方晶から正方晶へと相変態する(本件特許明細書【0003】参照)。また、還元処理時や燃料電池の運転環境下において、固体電解質層に含まれるジルコニアやセリアが拡散することは、固体酸化物形燃料電池の技術分野における技術常識である。そのため、請求項1には、固体電解質層における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合と、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合(若しくは含有割合)についての数値範囲が特定されているところ、これらの割合(若しくは含有割合)は、還元処理や燃料電池の運転を行うことによって変化する。
一方、本件発明は、各数値範囲限定が、いつの時点で満たすべき数値範囲であるかを示す発明特定事項を含まないため、例えば、還元処理前には各数値範囲を満たさず、還元処理後にのみ各数値範囲を満たす態様や、長期間運転するまでは各数値範囲を満たさず、長期間運転した後にのみ各数値範囲を満たす態様を包含している。しかし、これらの態様では、「還元処理において固体電解質層が過剰に膨張することを抑制することにより燃料極と固体電解質との界面にクラックが発生することを抑制して固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制する」とするという本件発明の課題を解決できるとはいえない。
そのため、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(ウ) 固体電解質層に含まれるジルコニア系材料について(以下、「申立理由3-2」という。)
前記(ア)で述べたように、本件発明の課題は、「i)燃料電池の運転環境下において、固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶へと相変態すること、ii)固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶に相変態すると、固体電解質層の電気伝導度が低下すること、を前提として、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制すること」等である。
ここで、甲第5号証の【0011】によれば、イットリア量が8mol%未満のジルコニア系材料(例えば、3YSZ)は100%正方晶であるため、立方晶から正方晶への相変態は起こり得ない。
一方、本件発明は、固体電解質層に含まれるジルコニア系材料の詳細(例えば、イットリア量)を規定する発明特定事項を有さないため、イットリア量が8mol%未満のジルコニア系材料、すなわち、100%正方晶の結晶構造を有するジルコニア系材料が使用される態様を包含している。しかし、この態様では、「固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶へと相変態すること前提として、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制する」という本件発明の課題を解決できるとはいえない。
そのため、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(エ) 固体電解質層の厚みについて(以下、「申立理由3-3」という。)
前記(ア)で述べたように、本件発明の課題は、「焼成後の還元処理において固体電解質層が過剰に膨張することを抑制することにより燃料極と固体電解質との界面にクラックが発生することを抑制して固体電解質層と燃料極の接続性を維持すること」等である。
ここで、燃料極と固体電解質層との界面付近にクラックが発生するか否かは、固体電解質層の厚みによって大きく左右されることは、固体酸化物形燃料の技術分野における技術常識である。
一方、本件発明は、固体電解質層の厚みを限定する発明特定事項を含まないため、固体電解質層の厚みが極端に薄い(例えば、0.1μm)態様や、極端に厚い(例えば1000μm)態様を包含している。しかし、これらの態様では、「クラックが発生することを抑制する」とするという本件発明の課題を解決できるとはいえないか、そもそも、本件発明の課題が発生しない。
また、本件特許明細書の表1には、サンプルNo.1及びNo.11(固体電解質層の厚み:15μm(5μm+10μm))でクラックが発生し、それ以外のサンプル(固体電解質層の厚み:15~25μm)でクラックが発生しない結果となった実施例が示されているが、これらの記載、及び、当業者の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を、固体電解質層の厚みの限定のない本件発明まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
そのため、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(オ) 正方晶ジルコニアの割合の上限について(以下、「申立理由3-4」という。)
前記(ア)で述べたように、本件発明の課題は、「固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制すること」等である。
ここで、固体電解質層における正方晶ジルコニアの割合が過度に高いと、固体電解質層の電気伝導度が低下する(本件特許明細書【0006】、【0067】等参照。)。
一方、本件発明は、固体電解質層の第1領域における正方晶系ジルコニアの割合の下限値(3.0%)を限定する発明特定事項を含むが、正方晶系ジルコニアの割合の上限値を限定する発明特定事項を含まないため、正方晶系の割合が極端に大きい(例えば100%)態様を包含している。しかし、この態様では、「電気伝導度の低下を抑制する」という本件発明の課題を解決できるとはいえない。
また、本件特許明細書の表1には、サンプルNo.1及びNo.11以外のサンプル(第1領域における正方晶系ジルコニアの割合:3.0%~12.5%)で電気伝導度が大きい結果となった実施例が示されているが、これらの記載、及び、当業者の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を、正方晶系ジルコニアの割合の上限値の限定のない本件発明まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
そのため、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(カ) 固体電解質層に含まれるニッケルについて(以下、「申立理由3-5」という。)
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明が、「前記固体電解質層は、…ニッケルを副成分として含有して(いる)」という構成(特定事項Dの一部)、及び、「前記第1領域におけるニッケルのジルコニウムに対する原子量比は、3.0at%以下であ(る)」という構成(特定事項H)を採用すれば特定の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないから、出願時の技術常識に照らしても、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、本件発明は、発明の詳細な説明されたものではない。
イ 判断
(ア) 本件発明の課題解決手段について
前記申立理由3-1~3-5について検討する前に、固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制可能な燃料電池を提供する、という本件発明の課題を解決するための手段について、本件特許明細書の記載に基づいて確認する。
本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a) 「【0003】
一方で、燃料電池の運転環境下において、固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶へと相変態することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このジルコニアの相変態は、燃料極側から空気極側に向かって進行する傾向がある。
…
【0006】
しかしながら、ジルコニアの相変態が進行すると、固体電解質層の電気伝導度が低下してしまうという問題がある。そのため、固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ固体電解質層の電気伝導度の低下を抑えたいという要請がある。」
(本b) 「【0023】
(固体電解質層30の構成)
固体電解質層30は、図1に示すように、第1領域31と第2領域32を有する。第1領域31は、燃料極20上に配置される。第2領域32は、第1領域31上に配置される。
【0024】
第1領域31は、ジルコニア系材料を含有する。ジルコニア系材料としては、8YSZ、10YSZ及びScSZなどを用いることができる。第1領域31は、立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアを含有している。第1領域31において、立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3.0%以上である。
【0025】
また、第1領域31は、セリア系材料を含有していてもよい。セリア系材料としては、GDCやSDCなどが挙げられるがこれに限られるものではない。第1領域31において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、0.5%以下である。第1領域31は、セリア系材料を含有していなくてもよい。ただし、第1領域31が微量のセリア系材料を含有していたとしても、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合が0.1%以下であれば、第1領域31はセリア系材料を実質的に含有していないと言うことができる。このように、第1領域31におけるセリアの割合を制限することによって、焼成後の還元処理において第1領域31が過剰に膨張することを抑制することができる。
【0026】
また、第1領域31は、Niを含有する。第1領域31は、NiをNiOとして含有していてもよい。第1領域31が含有するNi又は/及びNiOは、ジルコニア系材料(立方晶系ジルコニア及び正方晶系ジルコニアの少なくとも一方)に固溶していてもよい。この場合、第1領域31が含有するNi又は/及びNiOは、ジルコニア系材料の粒子内に位置していてもよい。第1領域31におけるNiのZrに対する原子量比は0.0at%より大きく3.0at%以下である。」
(本c) 「【0028】
また、第2領域32は、セリア系材料を含有している。セリア系材料としては、GDCやSDCなどが挙げられるがこれに限られるものではない。第2領域32において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、1.0%以上である。このように、第2領域32におけるセリア系材料の割合を確保することによって、第2領域32における正方晶系ジルコニアの割合を抑制することができる。」
(本d) 「【0038】
次に、立方晶系ジルコニアを含有するジルコニア系材料粉末とNiO粉末(又はNi粉末)にテルピネオールとバインダーを混合して第1領域用スラリーを作製する。この際、ジルコニア系材料粉末に加えてセリア系材料を混合してもよいが、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合が0.5%以下となるように制限する。これによって、第1領域31における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合を3.0%以上とすることができる。また、NiO粉末は、NiのZrに対する原子量比が3.0at%以下となるように調整する。」
(本e) 「【0040】
次に、立方晶系ジルコニアを含有するジルコニア系材料粉末とセリア系材料粉末にテルピネオールとバインダーを混合して第2領域用スラリーを作製する。この際、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合が1.0%以上となるように各材料を秤量する。これによって、第2領域31における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合を0.1%以下とすることができる。」
(本f) 「【0067】
【表1】
…
表1に示すように、サンプルNo.1及びNo.11では、還元処理後において、燃料極と固体電解質層の第1領域との界面付近にクラックが観察された。これは、サンプルNo.1及びNo.11それぞれの固体電解質層の第1領域におけるセリアの割合が多かったことに起因して、還元処理時の第1領域の膨張量が燃料極に比べて大きくなったためである。また、正方晶系ジルコニアの強度は立方晶系ジルコニアの強度よりも大きいことが周知であるところ、第1領域における正方晶系ジルコニアの割合が低かったため、燃料極と第1領域との界面における十分な接続性を得られなかったことも原因の一つである。
【0068】
従って、第1領域31におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は0.5%以下が好ましく、立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は3.0%以上が好ましいことがわかった。」
(本g) 「【0069】
また、表1に示すように、サンプルNo.1及びNo.11では、セルの電気伝導度が低下した。これは、サンプルNo.1及びNo.11それぞれの固体電解質層の第2領域における正方晶系ジルコニアの割合が高すぎたためである。
【0070】
従って、第2領域32におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は1.0%以上が好ましく、立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は0.1%以下が好ましいことがわかった。」
(本h) 「【図1】
」
a 前記(本a)によれば、燃料電池の運転環境下において、固体電解質層に含まれるジルコニアが立方晶から正方晶へと相変態すると、固体電解質層の電気伝導度が低下してしまう。また、前記(本g)に、正方晶系ジルコニアの割合が高いと電気伝導度が低下することが記載されていることも合わせて勘案すると、正方晶系ジルコニアは立方晶系ジルコニアに比べて電気導電度が低いということがいえる。
b 前記(本b)によれば、前記(本h)参照すると、燃料極の上に、固体電解質層の第1領域、第2領域が順番に形成されている。
c 前記(本c)、(本g)によれば、第2領域において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合を、1.0%以上とすることによって、電気伝導度が低い正方晶系ジルコニアの割合を0.1%以下に抑制することができるので、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制することができる。
d 前記(本b)、(本f)によれば、第1領域において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合が高いと、燃料極に比べて第1領域の膨張量が大きくなって、界面付近にクラックが発生するが、第1領域において、上記セリア系材料の割合を0.5%以下とすることによって、焼成後の還元処理において第1領域が過剰に膨張することを抑制することができ、その結果、燃料極と固体電解質層の第1領域との界面付近におけるクラックの発生を抑制できるので、固体電解質層と燃料極の接続性を維持することができる。
e 前記(本d)、(本f)によれば、第1領域において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合を0.5%以下とすることによって、第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合を3.0%以上とすることができ、その結果、立方晶系ジルコニアよりも強度が大きい正方晶系ジルコニアの割合を高くすることができるので、燃料極と第1領域との界面における十分な接続性を得ることができる。
f 以上a~eをまとめると、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制する手段とは、固体電解質層の第2領域において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合を1.0%以上とすることによって、電気伝導度が低い正方晶系ジルコニアの割合を0.1%以下に抑制することである。
また、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制しながらも、固体電解質層と燃料極の十分な接続性を得るための手段とは、第1領域において、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合を0.5%以下とすることによって、焼成後の還元処理において第1領域31が過剰に膨張することを抑制するとともに、強度が大きい正方晶系ジルコニアの割合を3.0%以上とすることである。
したがって、本件発明は、「前記第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合は、0.5%以下であり、前記第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3.0%以上であり、前記第2領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、1.0%以上であり、前記第2領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、0.1%以下である」という特定事項を有することによって、固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制可能な燃料電池を提供することができるものと認められる。
(イ) 申立理由3-1について
前記ア(イ)に記載された事項である、還元処理時や燃料電池の運転環境下において、固体電解質層に含まれるジルコニアやセリアが拡散するかについて検討する。
本件特許明細書の【0055】に記載されているように、固体電解質層は1400℃で焼結されるものである。一方、固体酸化物形燃料電池の一般的な作動温度は500~800℃であり、同【0062】に記載されているように、還元処理は室温から750℃までの温度で行われるものであって、上記焼結温度よりもはるかに低い温度であるから、上記一般的な作動温度や還元処理温度では、ジルコニアやセリアは実質的に拡散することはなく、そのため、「第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合」について、「0.5%以下」であったものが「0.5%超」となったり、「第2領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合」について「1.0%以上」であったものが「1.0%未満」となったりすることはないといえる。なお、申立書には、還元処理時や燃料電池の運転環境下において、ジルコニアやセリアが拡散することを裏付ける証拠は提示されていない。
したがって、本件発明において特定された数値範囲、すなわち、「前記第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合は、0.5%以下であり、前記第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3.0%以上であり、前記第2領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、1.0%以上であり、前記第2領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、0.1%以下である」と特定された事項は、燃料電池の製造時に限らず、還元処理時や燃料電池の運転環境下にも維持されるものであるということができる。つまり、本件発明は、第1領域及び第2領域における、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合(若しくは含有割合)はほとんど変化しないので、上記数値範囲がいつの時点で満たすべきかを特定していなくても、本件発明が解決しようとする課題を解決できるものであるといえる。
なお、仮に、還元処理時や燃料電池の運転環境下において、第1領域及び第2領域における、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合(若しくは含有割合)が変化することがあるとすると、本件発明の燃料電池は、上記割合(若しくは含有割合)が本件特許の請求項1に記載された数値範囲内ではないものに移行する場合があり得る。
しかし、このように経時的に燃料電池の状態が移行する場合においても、前記(ア)で確認したように、本件発明において特定された「前記第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合は、0.5%以下であり、前記第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3.0%以上であり、前記第2領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合は、1.0%以上であり、前記第2領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、0.1%以下である」との条件が満たされている限りにおいて、本件発明の課題は解決される。そして、上記条件を満たさない状態に移行した燃料電池については、本件発明の上記課題が解決できないものではあるが、そのような燃料電池はそもそも本件発明には該当しないものであるから、上記条件を満たさない状態に移行し得るものであることをもって、本件発明がその課題を解決できないものであるとはいえない。
以上から、本件発明において、第1領域と第2領域における、ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合(若しくは含有割合)が、いつの時点で満たすべきかが特定されていないことによって、本件発明が、解決しようとする課題を解決できないということはできない。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできず、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
(ウ) 申立理由3-2について
本件発明の「固体電解質層」を構成する「第1領域」に注目すると、「ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合」は「0.5%以下」であり、本件特許明細書の前記(本b)の【0025】に「第1領域31は、セリア系材料を含有していなくてもよい。」と記載されていることからして、当該「0.5%以下」には0%も含まれるから、第1領域が副成分としてのセリア系材料を全く含まず、主成分のジルコニア系材料のみからなる態様が含まれている。そして、本件発明は、ジルコニア系材料の詳細(例えば、イットリア量)を規定する発明特定事項を有していないため、「第1領域」が、イットリア量が8mol%未満のジルコニア系材料のみからなる場合が含まれ得るところ、イットリア量が8mol%未満のジルコニア材料は、甲第5号証に記載されているように、100%正方晶であるため、「第1領域」における正方晶系ジルコニアの割合が100%である態様が含まれる。すると、当該態様において、「第1領域」にはセリア系材料が含まれず、還元処理時における「第1領域」の膨張を抑制することができるので、「固体電解質層」と「燃料極」の界面にはクラックが発生せず、「固体電解質層」と「燃料極」との接続性を維持することができるが、「第1領域」の全体が正方晶系ジルコニアであるため、ジルコニアが立方晶から正方晶に相変態することはないので、本件発明において解決しようとする課題である、立方晶から正方晶へと相変態に伴う電気伝導度の低下という課題がそもそも存在せず、したがって、本件発明の課題を解決しない場合が含まれているように見える。
しかしながら、本件発明の「固体電解質層」を構成する「第2領域」に注目すると、「立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合」が「0.1%以下」であるから、明示的な記載がなくても、「第2領域」のジルコニアが、イットリア量8mol%未満のジルコニア材料であることは除外されており、また、「第2領域」には、必ず立方晶系ジルコニアが含有されているので、「第2領域」においては、立方晶から正方晶へと相変態に伴って電気伝導度が低下するという課題が存在しているということができる。そして、前記(ア)で確認したように、「第2領域」において、立方晶から正方晶への相変態を抑制するために、本件発明において、「ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合」を「1.0%以上」としている。
したがって、本件発明の「固体電解質層」は「第1領域」と「第2領域」を有するものであるところ、「第1領域」には、立方晶系ジルコニアが全く含有されず、全てが正方晶系ジルコニアからなる態様が含まれるにもかかわらず、「第2領域」には、必ず立方晶系ジルコニアが含まれているから、「固体電解質層」の全体でみると、立方晶系ジルコニアが必ず含まれているといえるから、本件発明が、立方晶から正方晶へと相変態に伴う電気伝導度の低下という課題を有していることは明らかであり、当該課題を、「第2領域」において、「ジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の割合」を「1.0%以上」とすることにより解決しているということができる。
以上から、本件発明が、「固体電解質層」に含まれるジルコニア系材料の詳細(例えば、イットリア量)を規定する発明特定事項を有していないことによって、解決しようとする課題を解決できるとはいえないということはできない。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできず、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
(エ) 申立理由3-3について
前記ア(エ)では、「固体電解質層」の厚みが極端に薄い(例えば、0.1μm)態様では、クラックの発生を抑えることができず、極端に厚い(例えば1000μm)態様では、そもそもクラックが発生しないので、「固体電解質層」の厚みについて特定されていない本件発明は、「固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制可能」とするという本件発明の課題を解決できるとはいえないか、そもそも発明の課題が発生しないことが指摘されている。
しかしながら、「固体電解質層」の厚さとして、0.1μmや1000μmという値は、通常採用されることのない、極端に小さすぎる、又は、極端に大きすぎる値であり、これら通常採用されることのない非現実的な厚みを前提にして、本件発明が課題を解決するか否かを議論することは妥当なこととはいえない。なお、申立書において、「固体電解質層」の厚さとして、0.1μmや1000μmという値が、当業者が通常採用し得る厚さであることを裏付ける証拠は提示されていない。
また、本件特許明細書の表1によれば、サンプルNo.1(固体電解質層の厚み:15μm(5μm+10μm))はクラックが発生しているが、同じ厚さのサンプルNo.4はクラックが発生していないため、「固体電解質層」の厚みが15μmであることが、クラック発生の原因となっていると直ちにはいうことはできない。
なお、上記サンプルNo.1とNo.4は、15μmという同じ厚さの固体電解質層を有しているにもかかわらず、サンプルNo.1ではクラックが発生し、サンプルNo.4ではクラックが発生しないのは、サンプルNo.4は、第1領域のセリア系材料の割合が0.22%、正方晶の割合が4.8%であり、本件発明において特定された、セリア系材料の割合が「0.5%以下」、正方晶の割合が「3.0%以上」の範囲に入っているために、セリア系材料による過剰な膨張が抑制されるとともに、強度が大きくなっているためであるが、サンプルNo.1は、第1領域のセリア系材料の割合が2.0%、正方晶の割合が0.6%であり、本件発明において特定された、セリア系材料の割合が「0.5%以下」、正方晶の割合が「3.0%以上」の範囲に入っていないために、セリア系材料による過剰な膨張が抑制されておらず、強度も小さくなっているためであると考えられる。そして、これらサンプルの結果から、同じ厚さの固体電解質層であっても、「前記第1領域におけるジルコニア系材料とセリア系材料の総量に対するセリア系材料の含有割合は、0.5%以下であり、前記第1領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、3.0%以上であ」るとの条件を満たすものは、満たさないものに比べて、固体電解質層と燃料極の接続性を維持できるということができる。
以上から、本件発明は、「固体電解質層」の常識的な厚みの範囲において、厚みによらず、「固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制可能」とするという本件発明の課題を解決できるといえるから、本件発明が、「固体電解質層」の厚さが特定されていないことによって、解決しようとする課題を解決できるとはいえないということはできない。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできず、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
(オ) 申立理由3-4について
前記ア(オ)では、本件発明は、固体電解質層の第1領域において、正方晶系ジルコニアの割合の下限値(3.0%)を限定する発明特定事項を含むが、正方晶系ジルコニアの割合の上限値を限定する発明特定事項を含まないため、正方晶系の割合が極端に大きく(例えば100%)、したがって、電気伝導度が低くなる態様を包含しているので、本件発明は、「固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制」するという本件発明の課題を解決できるとはいえないし、本件特許明細書の記載、及び、当業者の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を、正方晶系ジルコニアの割合の上限値の限定のない本件発明まで拡張ないし一般化できるとはいえないと指摘されている。
しかしながら、仮に、第1領域において、正方晶系の割合が極端に大きい(例えば100%)場合を含むとしても、第2領域においては、「立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は、0.1%以下である」ために、本件発明は、第2領域において、電気伝導度の低下が抑制されているということができる。つまり、本件発明は、第1領域における正方晶系の割合が極端に大きいとしても、正方晶系の割合が抑制された第2領域を含むので、固体電解質層の全体でみれば、「固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制」するという本件発明の課題を解決できるということができる。
以上から、本件発明が、固体電解質層の第1領域における正方晶系ジルコニアの上限値を限定する発明特定事項を有していないことによって、解決しようとする課題を解決できるとはいえないということはできない。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできず、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
(カ) 申立理由3-5について
前記ア(カ)では、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明が、「固体電解質層」は、「ニッケルを副成分として含有して(いる)」という特定事項Dの一部、及び、「前記第1領域におけるニッケルのジルコニウムに対する原子量比は、3.0at%以下であ(る)」という特定事項Hを採用すれば特定の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないから、出願時の技術常識に照らしても、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと指摘されている。
しかしながら、前記(イ)~(オ)で検討したように、本件発明は、固体電解質層と燃料極の接続性を維持しつつ、固体電解質層の電気伝導度の低下を抑制可能な燃料電池を提供するという課題を解決できるものであるから、上記特定事項Dの一部及び特定事項Hを採用すれば特定の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないことは、前記(イ)~(オ)の検討による判断を左右するものではない。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないということはできない。
(5) 申立理由4(特許法第36条第6項第2号)について
ア 申立人の主張
申立理由4についての申立人の主張は、概略以下のとおりである。
(ア) 固体電解質層に含まれるジルコニア系材料について(以下、「申立理由4-1」という。)
本件発明は、固体電解質層に含まれるジルコニア系材料の詳細(例えば、イットリア量)を規定する発明特定事項を有さないものであるところ、甲第5号証の【0011】の記載によれば、イットリア量が8mol%未満のジルコニア系材料(例えば、3YSZ)は100%正方晶であることは技術常識であるため、本件発明において、固体電解質層に含まれるジルコニア系材料がイットリア量8mol%未満のジルコニア系材料であるとすると、「前記第2領域における立方晶系ジルコニアと正方晶系ジルコニアの総量に対する正方晶系ジルコニアの割合は0.1%以下である」という発明特定事項と矛盾するから、本件発明は、技術常識を考慮すると、発明を特定するための事項が不足していることが明らかであり、不明確である。
(イ) 正方晶系ジルコニアの割合及びセリア系材料の割合の上限について(以下、「申立理由4-2」という。)
本件発明は、固体電解質層の第1領域における正方晶系ジルコニアの割合の下限値(3.0%)を限定する発明特定事項を含むが、正方晶系ジルコニアの割合の上限値を限定する発明特定事項を含まない。また、本件発明は、固体電解質層の第2領域におけるセリア系材料の割合の下限値(1%)を限定する発明特定事項を含むが、セリア系材料の割合の上限値を限定する発明特定事項を含まないため、本件発明では、正方晶系ジルコニアの割合の範囲が3.0%~100%と非常に広範な範囲となっており、かつ、セリア系材料の割合の範囲も1%~100%非常に広範な範囲となっているから、本件発明は、技術常識に照らしても、発明の範囲が不明確である。
イ 判断
(ア) 申立理由4-1について
前記(4)イ(ウ)で検討したように、本件発明の「第2領域」のジルコニアが、イットリア量8mol%未満のジルコニア材料であることは除外されているから、申立人の「本件発明において、固体電解質層に含まれるジルコニア系材料がイットリア量8mol%未満のジルコニア系材料であるとすると」との主張は、その前提において誤っている。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
(イ) 申立理由4-2について
本件発明において、正方晶系ジルコニアの割合の範囲が3.0%~100%と非常に広範な範囲となっており、かつ、セリア系材料の割合の範囲も1%~100%非常に広範な範囲となっていることをもって、発明の範囲が不明確であるとする合理的な理由はないし、正方晶系ジルコニアの割合の範囲及びセリア系材料の割合の範囲が非常に広範な範囲であることが、発明の範囲を不明確にするという技術常識があるともいえない。
したがって、本件発明は、技術常識に照らして、発明の範囲が不明確であるとはいえない。
第4 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700918