特許異議申立
2016-700888
ハニカム構造体及びその製造方法
- 審判番号
- 2016-700888
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-545498外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月16日
- 審決日
- 2017年07月26日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5902826号発明「ハニカム構造体及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5902826号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7]について、訂正することを認める。
特許第5902826号の請求項1、3ないし7に係る特許を維持する。
特許第5902826号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
I.手続の経緯
特許第5902826号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成24年11月8日を国際出願日とするものであり、平成28年3月18日に特許権の設定登録がなされ、平成28年9月16日付けで特許異議申立人の三好道子より特許異議申立書が提出され、平成29年1月27日付けの取消理由を特許権者のイビデン株式会社に通知し、特許権者より同年3月30日付けで訂正請求及び意見書が提出され、同年4月7日付けの通知書を特許異議申立人に通知したところ、これに対する応答がなされなかったものである。
II.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年3月30日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による請求項1~7に係る訂正の内容は以下のア~オのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450~650℃とすることを特徴とする」と記載されているのを、「前記焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450~650℃とし、前記焼成工程における酸素濃度を30~50%とすることを特徴とする」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載」と記載されているのを、「請求項1に記載」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項に記載」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載」と記載されているのを、「請求項1、3、4のいずれか1項に記載」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載」と記載されているのを、「請求項1及び3~5のいずれか1項に記載」に訂正する。
(2)訂正の理由
ア 一群の請求項についての説明
訂正事項1~6に係る訂正前の請求項1~7は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって請求項1の記載が修正され、訂正事項2によって請求項2が削除されたことによって、連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明
(ア)訂正事項1
a 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正前の請求項2の構成で限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正前の請求項2の構成で限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正前の請求項2の構成で限定するものであるから、訂正前の請求項1の記載について、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(イ)訂正事項2
a 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載を削除するものであるから、訂正前の請求項2の記載について、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項2に記載された発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(ウ)訂正事項3~6
a 訂正の目的について
訂正事項3~6は、訂正前の請求項3~6について、訂正前の請求項2の記載の削除に整合するように、選択的に引用する請求項の一部を削除するするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3~6は、訂正前の請求項3~6について、訂正前の請求項2の記載の削除に整合するように、選択的に引用する請求項の一部を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
c 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3~6は、訂正前の請求項3~6について、訂正前の請求項2の記載の削除に整合するように、選択的に引用する請求項の一部を削除するものであるから、訂正前の請求項1の記載について、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明の対象や目的を変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
d 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全ての請求項について特許異議申立ての対象とされているため、訂正事項3~6に関して、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1-7]について、訂正することを認める。
III.本件特許発明について
上記のとおり訂正が認められるので、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、3~7に係る発明(以下「本件特許訂正発明1、3~7」という。)は、訂正後の請求項1、3~7に記載された次の事項のとおりのものと認める。(当審注:下線部は訂正箇所であり、特許権者が付与したものである。)
「【請求項1】
チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体の製造方法であって、
チタン酸化物、バナジウム原料、タングステン原料及び無機バインダを含む材料をハニカム状に成形し、ハニカム成形体を得る成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450~650℃とし、前記焼成工程における酸素濃度を30~50%とすることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
前記バナジウム原料がメタバナジン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記バナジウム原料中のバナジウム原子、及び前記タングステン原料中のタングステン原子のモル比(W/V)が0.8~1.2であることを特徴とする請求項1又は3に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記無機バインダが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程において、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む材料を用いて成形することを特徴とする請求項1及び3~5のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法。」
IV.特許異議申立について
特許異議申立人は、以下で示す甲第1号証ないし甲第5号証を証拠方法として提出すると共に、以下で示す(A)ないし(D)を特許異議申立理由として主張する、ものと認める。
ア 証拠方法
甲第1号証:特開2005-342710号公報
甲第2号証:特開2003-53147号公報
甲第3号証:特開2001-38206号公報
甲第4号証:特開2005-21780号公報
甲第5号証:特開昭63-36838号公報
イ 特許異議申立理由
(A)訂正前の請求項1、3および4に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。(以下、「申立理由(A)」という。)
(B)訂正前の請求項1ないし7に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第5号証記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(B)」という。)
(C)訂正前の請求項1には、「酸素濃度」が「21%以上」であると記載されているところ、本件特許明細書には、「酸素濃度」の「%」が重量%、容量%、モル量%のいずれであるかの明示がなく、「酸素濃度」が特定できないことからして、該請求項1およびこれを引用する請求項2ないし7の記載は、発明を明確に記載するものではなく、また、発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に実施することができる程度に記載するものではないので、特許法第36条第6項第2号および同条第4項第1号の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(C)」という。)
(D)訂正前の請求項1には、「酸素濃度」が「21%以上」と記載されているところ、従来技術(例えば、空気流通下での焼成)との境界が明らかにされていない、つまり、「酸素濃度」が「21%」であるガスと、「空気」との境界が明らかにされていないことからして、該請求項1およびこれを引用する請求項2ないし7の記載は、発明を明確に記載するものではなく、また、発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に実施することができる程度に記載するものではないので、特許法第36条第6項第2号および同条第4項第1号の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(D)」という。)
V.取消理由通知に記載した取消理由について
平成29年1月27日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(α)訂正前の請求項1、3ないし7に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、同甲第1号証に記載された事項、同じく本件出願前に頒布された甲第4号証に記載された事項および本件出願前の周知慣用技術(例えば、国際公開第2006/54718号(以下、「周知慣用技術(国際公開第2006/54718号)」という。)の特に【0041】【0042】【0048】【0056】【0059】参照)に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。」(以下、「取消理由(α)という。)
(β)訂正前の請求項1の「酸素濃度を21%以上とする」との記載について、酸素濃度を21%以上とするものが、酸素濃度(体積)が20.9476%である乾燥空気を含むかどうか不明確であるので、本件請求項1の記載は、ハニカム構造体の製造方法の発明を明確に記載するものではない。
また、当該請求項1を直接または間接的に引用する本件特許の訂正前の請求項3ないし7の記載も同じく、酸素濃度について、ハニカム構造体の製造方法の発明を明確に記載するものではなので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではない。(以下、「取消理由(β)」という。)
VI.甲第1号証に記載の発明
甲第1号証には、以下の記載がある。
(a)「本発明の耐熱性脱硝触媒は、基本的には、前述の担体とV2O5の原料液と金属酸化物の原料液とを混合して成形した後に焼成する方法、または、成形した担体基材にV2O5の原料液と金属酸化物の原料液とを含浸させた後に焼成する方法により調製される。触媒の形状および大きさは、処理ガス量や、反応器の形状、大きさ等により適宜選択される。触媒の形状は、ハニカム状、円柱状、球状、板状などが挙げられる。」(【0016】)
(b)「(1)メタバナジン酸アンモニウムを約10wt%モノエタノールアミン水溶液に溶解する。
(2)硝酸マンガン6水塩を純水に溶解する。
(3)硫酸チタン溶液を加熱溶解してメタチタン酸スラリーを得る。
(4)メタチタン酸スラリーに15wt%アンモニア水を加えてpH調整した後に加熱還流処理を1時間以上行う。
(5)上記の(4)のスラリーにパラタングステン酸アンモニウムを加え、更に、加熱還流処理を1時間以上行う。
(6)得られたスラリーを濾過し、得られたケーキを50~150℃の温度で3~50時間乾燥した後、400℃~650℃の温度で焼成し、冷却後に粉砕する。
(7)得られた粉末状のWO3-TiO22元系複合酸化物担体と上記の(1)と(2)で調製した水溶液とをニーダーで混練する。
(8)上記の(7)で得られた混練物に、(i)更に必要に応じ、成形助剤を加えて混練した混練物を押出成形し、50~150℃の温度で3~50時間乾燥した後、SV100~2000Hr-1の空気気流中、400~650℃の温度で焼成する、または、(ii)混練物を50~150℃の温度で3~50時間乾燥し、400~650℃の温度で焼成した後、成形助剤を加えて成形する。」(【0017】)
(c)「【0029】
実施例1:
メタバナジン酸アンモニウム347gとパラタングステン酸アンモニウム5水塩912gを80℃に加温した10wt%モノエタノールアミン水溶液6000gに溶解して原料液(1)を調製した。さらに硝酸マンガン(II)6水和物297gを80℃に加温した純水1000gに溶解して原料液(2)を調製した。TiO2粉末(石原産業製「MC-90」)7830g、成形助剤として、カオリン(ミノセラミックス社製)1000g、ポリエチレンオキサイド(明和化学工業社製「アルコックス E-30」)500gおよび結晶性セルロース(旭化成社製「アビセルTG-101」)200gを双腕型ニーダーで2時間混合した後、原料液(1)と原料液(2)を上記の双腕型ニーダーに添加し、3時間混練した。得られた混練物を押出機より3mm直径の円柱状に成形した。得られた成型物を130℃の温度で24時間乾燥し、次いで空気流通下、SV100Hr-1、温度450℃の条件下で3時間焼成し、表1に示す触媒(A)を得た。得られた触媒についてのV2O5飛散テスト及び脱硝性能評価の結果を表2及び表3に示す。」
上記(a)ないし(c)からして、甲第1号証には、「チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物及び成形助剤(カオリン)を少なくとも含む円柱状の触媒Aの製造方法であって、TiO2粉末(チタン酸化物)、メタバナジン酸アンモニウム(バナジウム原料)、パラタングステン酸アンモニウム(タングステン原料)、成形助剤(カオリン、ポリエチレンオキサイドおよび結晶性セルロース)を成形し、成形体を得る成形工程と、成形体を焼成する焼成工程と、を含み、焼成工程において、空気流通下で450℃の温度で焼成する、円柱状の触媒Aの製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
VII.当審の判断
(1)取消理由について
ア 取消理由(α)について
本件特許訂正発明1、3ないし7と甲1発明とを対比すると、少なくとも、前者は、「焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ」「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」のに対して、後者は、「焼成工程において、空気流通下で」「焼成する」点で相違している。
以下、上記相違点について検討する。
甲第1号証には、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もない。
また、甲第4号証には、「押出成形された成形物は、通常の方法で乾燥、焼成される。例えば、該成形物を50~200℃で1~50時間乾燥し、次いで400~800℃で0.5~10時間焼成して排ガス処理触媒を得る。」(【0017】)との記載があり、これからして、触媒の製造について、「400~800℃で焼成する」ことの記載はあるものの、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もない。
さらに、周知慣用技術(国際公開第2006/54718号)には、「なお、本発明の焼成体は、後述するように、本発明のゼオライト含有組成物を500~800℃焼成して作製することが好ましいため、基本的には上記アルカリ(土類)金属化合物として、800℃以下で熱分解するものを選択することが好ましい。」(【0048】)との記載があり、これからして、触媒の製造について、「500~800℃で焼成する」ことの記載はあるものの、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もない。
そして、本件特許明細書の【0097】【表1】には、実施例1(焼成時酸素濃度21%、有効V量0.3mmol)、実施例2(40%、0.34mmol)、比較例1(0%、0.27mmol)、比較例2(20%(空気中)、0.28mmol)について、それぞれの試験結果が、実施例1(NOxの浄化性能67%、熱耐久後のNOx浄化性能58%)、実施例2(71%、63%)、比較例1(62%、53%)、比較例2(64%、56%)となる、つまり、有効V量がほぼ0.3mmolで共通である実施例1、2、比較例1、2の内で、焼成時酸素濃度が40%の実施例2の結果(NOxの浄化性能、熱耐久後のNOx浄化性能)が最良になることの表示があるので、本件特許訂正発明1、3ないし7の発明特定事項の「「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことは、技術的意義を有する事項(NOxの浄化性能、熱耐久後のNOx浄化性能を良好にせしめる事項)であるということができる。
そうすると、「本件特許訂正発明1、3ないし7は、甲1発明、甲第1号証に記載された事項、甲第4号証に記載された事項および周知慣用技術に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。」とはいえないので、取消理由(α)をもって、本件特許訂正発明1、3ないし7を取り消すことはできない。
イ 取消理由(β)について
本件特許訂正発明1、3ないし7は、「焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ」「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことを発明特定事項にするものであり、「酸素濃度」が「21%」である場合は、排除されるものと認められる。
一方、取消理由(β)の「酸素濃度を21%以上とするものが、酸素濃度(体積)が20.9476%である乾燥空気を含むかどうか不明確である」は、「酸素濃度」が「21%」であることを前提にするものである。
そうすると、取消理由(β)は、合理性を欠くものであるといわざるを得ないので、これをもって、本件特許訂正発明1、3ないし7を取り消すことはできない。
(2)通知しなかった特許異議申立理由について
ア 申立理由(A)について
上記「(1)」の「ア 取消理由(α)について」で示したように、本件特許訂正発明1、3ないし7と甲1発明とを対比すると、少なくとも、前者は、「焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ」「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」のに対して、後者は、「焼成工程において、空気流通下で」「焼成する」点で相違している。
そうすると、「本件特許訂正発明1、3および4は、甲第1号証に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。」とはいえないので、申立理由(A)をもって、本件特許訂正発明1、3ないし7を取り消すことはできない。
イ 申立理由(B)について
上記「ア」で示した相違点について検討する。
甲第2号証には、「焼成は、窒素中または空気中において、300~700℃の温度で1~10時間加熱して行うのが好ましい。」(【0014】)、「120℃,12時間乾燥後、さらに空気中で500℃,3時間焼成し触媒を得た。」 (【0024】【実施例】、【0025】、【0027】、【0036】および【0040】)との記載があり、これらからして、触媒の製造について、「空気流通下で300~700℃の温度で焼成する」ことの記載はあるものの、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もない。
また、甲第3号証には、「【0053】(実施例1)TiCl4とその1/20量の珪酸エチル、SnCl2、Na2SiO3の添加剤を一種以上含む塩酸酸性水溶液に、複合酸化物を調製するのに必要な組成比のVCl3,MoCl5,CuCl2等の化合物を所定濃度担持するのに必要な量だけ加え、さらに水と5容量%のエタノールを加えて溶液中のTiCl4濃度を0.2モル/リットルに調製し、1モル/リットルのアンモニア水で中和し、共沈により得られた沈澱を120℃で20時間乾燥し、さらに250~550℃で2時間酸素雰囲気中で熱処理して、「表1」に示すような、チタニア系複合酸化物担体にV2O5またはバナジア系複合酸化物微粒子を担持させた触媒を得た。」との記載があり、これからして、触媒の製造について、「250~550℃で酸素雰囲気中で熱処理(焼成)する」ことの記載はあるものの、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もない。
さらに、甲第5号証には、「〔実施例1〕
TiO2換算濃度15%のTiOSO4水溶液1500gを20℃以下に冷却し、15%アンモニア水を徐々に加えてpHを8にして中和する。生成する水酸化チタン沈殿物をろ(当審注:「ろ」は、「さんずい」と「戸」からなる字体である。以下、同じ。)過し、ろ液にSO42-イオンが検出されなくなるまで水洗する。乾燥後、500℃で3時間空気中で焼成し、約200gの酸化チタン粉末を得た。」(3頁右上欄下から3行~同頁左下欄5行)および「〔比較例〕
担体1にメタバナジン酸アンモニウム及びパラタングステン酸アンモニウムの水溶液を含浸、乾燥後500℃で3時間空気中で焼成し、V2O50.5wt%、WO310wt%含有する触媒を得る。」(4頁右下欄6~10行)との記載があり、これからして、触媒の製造について、「空気中で500℃で焼成する」ことの記載はあるものの、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もない。
そして、上記「(1)」の「ア 取消理由(α)について」で示したように、甲第4号証にも、「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことについての記載も示唆もなく、また、本件特許明細書の【0097】【表1】には、実施例1(焼成時酸素濃度21%、有効V量0.3mmol)、実施例2(40%、0.34mmol)、比較例1(0%、0.27mmol)、比較例2(20%(空気中)、0.28mmol)について、それぞれの試験結果が、実施例1(NOxの浄化性能67%、熱耐久後のNOx浄化性能58%)、実施例2(71%、63%)、比較例1(62%、53%)、比較例2(64%、56%)となる、つまり、有効V量がほぼ0.3mmolで共通である実施例1、2、比較例1、2の内で、焼成時酸素濃度が40%の実施例2の結果(NOxの浄化性能、熱耐久後のNOx浄化性能)が最良になることの表示があるので、本件特許訂正発明1、3ないし7の発明特定事項の「焼成工程における酸素濃度を30~50%とする」ことは、技術的意義を有する事項(NOxの浄化性能、熱耐久後のNOx浄化性能を良好にせしめる事項)であるということができる。
そうすると、「本件特許訂正発明1、3ないし7は、甲第1号証ないし甲第5号証記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。」とはいえないので、申立理由(B)をもって、本件特許訂正発明1、3ないし7を取り消すことはできない。
ウ 申立理由(C)について
本件特許明細書には、「焼成時に導入する混合ガス中の酸素濃度を20%(空気中)としたこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体10’を作製した。」(【0093】[比較例2])との記載があり、これからして、空気中の酸素濃度は20%であるとの明示がある。
ここで、一般に、空気(乾燥空気)中の酸素濃度は、体積%およびモル量%で約21%であり、重量%で約23%であることは、極めてよく知られた技術常識であることからして、上記「酸素濃度を20%(空気中)とした」との記載における「%」は、体積%およびモル量%であるというべきである。
そうすると、申立理由(C)の「本件特許明細書には、『酸素濃度』の『%』が重量%、容量%、モル量%のいずれであるかの明示がな」いは、合理性を欠くものであるといわざるを得ないので、これをもって、本件特許訂正発明1、3ないし7を取り消すことはできない。
エ 申立理由(D)について
上記「(1)」の「イ 取消理由(β)について」で示したように、本件特許訂正発明1、3ないし7は、「酸素濃度」が「21%」である場合は、排除されるものと認められ、一方、申立理由(D)の「『酸素濃度』が『21%』であるガスと、『空気』との境界が明らかにされていない」は、「酸素濃度」が「21%」であることを前提にするものである。
そうすると、申立理由(D)の内の「『酸素濃度』が『21%』であるガスと、『空気』との境界が明らかにされていないことからして、」「発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に実施することができる程度に記載するものではないので、」「特許法第4項第1号の規定を満たすものではない。」は、合理性を欠くものであるといわざるを得ないので、これをもって、本件特許訂正発明1、3ないし7を取り消すことはできない。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)からして、特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によっては、訂正後の請求項1、3~7に係る特許を取り消すことはできない。
VIII.むすび
以上のとおり、訂正後の請求項1、3~7に係る特許を取り消すことはできず、また、他に訂正後の請求項1、3~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、訂正前の請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、該請求項2に対して、特許異議申立人の三好道子がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700888