特許異議申立
2016-700827
尋常性ざ瘡改善用外用組成物
- 審判番号
- 2016-700827
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-073952外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月06日
- 審決日
- 2017年03月29日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】奥村 一正
- 分類
- P1651.537-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.113-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5881879号発明「尋常性ざ瘡改善用外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5881879号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第5881879号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5881879号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年3月31日に特許出願され、平成28年2月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人奥村一正(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年11月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月20日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から平成29年3月2日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1の「(a)サリチル酸、(b)アラントイン、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、(c)エタノール、ならびに(d)2種以上の多価アルコールを含有し、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、尋常性ざ瘡改善用外用組成物。」を「(a)サリチル酸、(b)アラントイン、(c)エタノール、(d)1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される2種以上の多価アルコール、ならびに(e)水を含有し、(a)サリチル酸の含有量が0.1~1重量%、(b)アラントインの含有量が0.05~1重量%、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、尋常性ざ瘡改善用外用組成物。」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0013】
(a)サリチル酸は従来公知の物質であり、市販品を用いても良い。
【0014】
(a)成分の含有量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、該外用組成物中、(a)成分は0.001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、更に好ましくは0.1~1重量%が例示される。」
「【0015】
(b)アラントイン、その誘導体及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のうち、アラントインは別名5-ウレイドヒダントイン、グリオキシジウレイドとして知られている。(中略)(b)成分として好ましくはアラントイン、(中略)より好ましくはアラントインが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。」
「【0016】
(b)成分の含有量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、該外用組成物中、(b)成分は、アラントインに換算して(中略)更に好ましくは0.05~1重量%が例示される。」
「【0019】
(d)多価アルコールとして、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(中略)等が例示される。(中略)これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
(d)成分はこの限りにおいて制限されないが、肌へのなじみ及び/または刺激感、特に尋常性ざ瘡(にきび)部位への肌なじみ及び/または刺激感をより良好なものとする観点から、2種以上の多価アルコールを用いることが好ましい。」
「【0022】
本発明の外用組成物には、薬学的または香粧学的に許容される任意の成分を必要に応じて更に含有してもよい。このような任意の成分として、水、界面活性剤、(中略)特に外用の医薬品、外用の医薬部外品、化粧料等の皮膚に適用される外用組成物に用いられる公知の成分が例示される。(中略)
【0023】
例えば水として蒸留水、水道水、イオン交換水、純水、超純水が例示される。水の含有量も本発明の効果を妨げない限り制限されないが、水を含有する場合、本発明の外用組成物中、26~99重量%、より好ましくは46~90重量%、更に好ましくは59~80重量%、特に好ましくは60~70重量%が例示される。」
上記記載からみて、本件特許明細書には、「アラントイン、その誘導体およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種」について「好ましくはアラントイン」(【0015】)と記載され、「多価アルコール」について「1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリン等」(【0019】)が例示された上で「2種以上の多価アルコールを用いることが好ましい」(【0020】)と記載され、サリチル酸の含有量について「好ましくは0.1~1重量%」(【0013】~【0014】)と記載され、アラントインの含有量について「更に好ましくは0.05~1重量」(【0016】)と記載され、水を含有すること(【0022】~【0023】)も記載されているといえるから、本件特許明細書には「(a)サリチル酸、(b)アラントイン、(c)エタノール、(d)1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される2種以上の多価アルコール、ならびに(e)水を含有し、(a)サリチル酸の含有量が0.1~1重量%、(b)アラントインの含有量が0.05~1重量%、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、尋常性ざ瘡改善用外用組成物。」が記載されているものと認められる。
(2)上記訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、「2種以上の多価アルコールの種類」、「サリチル酸の量」、「アラントイン、その誘導体及びこれらの塩」、「アラントインの量」をそれぞれ限定するとともに、水を含有することを特定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
<本件発明1>
「(a)サリチル酸、(b)アラントイン、(c)エタノール、(d)1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される2種以上の多価アルコール、ならびに(e)水を含有し、(a)サリチル酸の含有量が0.1~1重量%、(b)アラントインの含有量が0.05~1重量%、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、尋常性ざ瘡改善用外用組成物。」
<本件発明2>
「多価アルコールの含有量が1~30重量%である、請求項1に記載の外用組成物。」
2.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成28年11月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<取消理由1>
訂正前の請求項1,2に係る発明の解決しようとする課題は、「サリチル酸とアラントインを含み、低温であっても析出が抑制された、安定性が一層優れた外用組成物を提供すること」であるが、訂正前の請求項1,2に係る発明は、アラントイン誘導体の種類や濃度、サリチル酸の濃度、多価アルコールの種類、溶媒の種類がそれぞれ特定されていないため、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、本件特許は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
<取消理由2-1>
訂正前の請求項1,2に係る発明は、引用文献1に記載された発明と周知技術(引用文献2~8を参照)に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、取り消されるべきものである。
<取消理由2-2>
訂正前の請求項1,2に係る発明は、引用文献等9に記載された発明と周知技術(引用文献2~8を参照)に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、取り消されるべきものである。
(2)判断
ア 取消理由1について
特許請求の範囲が、特許法第36条第6項第1号の要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、本件発明1,2の解決しようとする課題について検討するに、発明の詳細な説明の【0008】には、「そこで、本発明は、サリチル酸とアラントインとを共に用いながらも、尋常性ざ瘡の改善に有用な外用組成物を提供することを目的とする。特に、サリチル酸とアラントインはいったん析出すると室温に戻しても再溶解しないことから、低温であっても析出が抑制された、安定性が一層優れた外用組成物を提供することを目的とする。」と記載されているから、本件発明1,2の解決しようとする課題は、「サリチル酸とアラントインを含み、低温であっても析出が抑制された、安定性が一層優れた外用組成物を提供すること」であるといえる。
また、発明の詳細な説明には、本件発明1,2に含まれる上記課題を解決できる具体的な例として、実施例14~16(表3)並びに処方例13~18(【0044】、【表5】)が開示されており、これら具体的な例はいずれもサリチル酸を0.5重量%、アラントインを0.2重量%、エタノールを21.81重量%、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンから選ばれる2つの多価アルコールを5重量%ずつ含み、残りを水が占める組成を有するものである。
そして、本件発明1は1.に記載したとおりであって、アラントイン誘導体の種類がアラントインに特定されるとともにその濃度が上記具体的な例の近傍の範囲に特定され、サリチル酸の濃度も上記具体的な例の近傍の範囲に特定され、多価アルコールの種類も上記具体的な例で用いられたものとその類似物に特定され、溶媒の種類も水に特定されたものであり、上記具体的な例と同様の性質を有する蓋然性が高いから、当業者は発明の詳細な説明の記載から本件発明1が上記課題を解決できる範囲のものであると理解できる。
また、本件発明2は本件発明1について、多価アルコールの含有量を特定したものであるから、当業者は本件発明1と同様に、発明の詳細な説明の記載から本件発明2についても上記課題を解決できる範囲のものであると理解できる。
ところで、申立人は平成29年3月2日付け意見書において、本件特許発明に特有の効果は、析出抑制効果ではなく、肌なじみの向上効果及び刺激感の低減効果であって、これらの効果は本件発明1,2の全範囲にわたって得られるものではないから、本件発明1,2は特許法第36条第6項第1号の要件に適合しない旨主張している。しかしながら、上記のとおり、本件発明1,2の解決しようとする課題は「サリチル酸とアラントインを含み、低温であっても析出が抑制された、安定性が一層優れた外用組成物を提供すること」であるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、訂正後の本件特許は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすといえるから、取消理由1は理由がない。
イ 取消理由2-1について
(ア)引用文献の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(OTC医薬品事典2008~’09(一般用医薬品集第11版)、2008.04.25発行、387頁(異議申立書の甲第2号証))には、以下の記載がある。
(記載事項1)
「
」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2008-88127号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項2)
「【0026】
本発明のニキビ肌用皮膚外用組成物には上記必須成分の他、通常化粧品や医薬部外品のニキビ肌用皮膚外用組成物に用いられる成分を配合することができる。以下に具体的な配合可能成分を列挙する。上記必須成分と下記成分の一種又は二種以上とを配合し、本発明のニキビ肌用皮膚外用組成物を常法に応じて調製することができる。
【0027】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、(中略)等が挙げられる。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開平11-35443号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項3)
「【0002】
【従来の技術】従来、皮膚外用剤には、使用性・安全性の向上、肌への刺激性低下、防腐等種々の目的で、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl- ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、等の保湿剤が配合されている。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献4(特表2005-519126号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項4)
「【0060】
本願中に参考によって引用される、テキスト、"Transdermal Delivery of Drugs、A. F. Kydonieus (ED) 1987 CRL Pressにならびに米国特許第4,913,905号、第4,917,676号及び第5,032,403号に記載されるような、可塑剤、浸透促進剤、着色剤、及び保存剤を、本発明のパッチに含ませてもよく、パッチの最終重量の約10%以下で含むが、この量は活性成分や他の成分によって異なる。湿潤化剤でもある、グリセリンを、抗刺激薬としてまたは他の皮膚治療剤のデリバリーを調節するために添加してもよく、約0~約20重量%の量で存在してもよい。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献5(特開2011-241172号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項5)
「【0003】
しかしながら、このような従来の増粘剤には、皮膚外用剤の塗布後にべたつき感を残し、また、増粘剤によるゲルが使用時に僅かな力でくずれ難く、みずみずしい感触とならないという問題があった。
このような使用感触の問題を解消するため、例えば、アルコールを高配合した皮膚外用剤が開発されているが、同成分による皮膚刺激が強すぎるため、ひりつき感や発赤が生じてしまうことがあった。
そこで、さらにグリセリンなどの保湿剤を配合して刺激性を低下させることが考えられるが、そうした場合、製剤の塗布感触が重くなる他、べたつき感が増進するといった新たな問題が生じる。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献6(特開2010-189363号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項6)
「請求項5に記載の発明は、3価以上の多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化粧料である。前記例示の多価アルコールの中でも、グリセリンは、皮膚バリア機能、角質溶解効果、抗刺激性効果等の優れた機能が知られており、安価で簡便であるので好ましい。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献7(特開平9-87132号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項7)
「【0002】
【従来の技術】化粧水は、皮膚に塗布することにより、皮膚に水分や保湿成分を与え、モイスチャーバランスを保つことによって健やかな皮膚を保つ効果を持つものであり、また、目的に応じた成分を配合することにより、柔軟、収斂、清浄などの効果を持たせることができる。
【0003】このような効果、効能と同時に、化粧水には、使用する者にとって、心地好い使用感が感じられ、使用することによって心理的に満足感が得られることが重要である。化粧水を使用するときの心地好い使用感としては、清涼感、コク、なじみのよさ、などがあげられ、それらの使用感を向上させるために、清涼感の向上にはアルコールやメントールなどの清涼剤の配合、コクやなじみのよさの向上には保湿剤や増粘剤(粘液質)、エモリエント剤(油分)の配合などが行われている。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である引用文献8(特開平5-271042号公報)には、以下の記載がある。
(記載事項8)
「【0010】さらに、この発明では、前記ポリエチレングリコール以外の多価アルコールも必須成分として配合される。多価アルコールは、化粧料の肌へのなじみや伸びを良くする目的で配合され、具体的にはグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、分子量10万未満のポリエチレングリコールが例示できるが特に限定はされない。この多価アルコールは5~ 30 重量%配合される。この理由は、配合量が5重量%未満であると肌へのなじみや伸びが悪くなり、一方 30 重量%を越えて配合されても伸びが悪くなり、カミソリの刃の滑りが悪くなるためいずれの場合も好ましくないからである。」
(イ)引用文献1に記載された発明
記載事項1によれば、引用文献1には「メンソレータム アクネージア メディカルローション」について、有効成分としてサリチル酸0.5%、アラントイン0.2%、エタノール22.84%を含み、添加物として1,3-ブチレングリコールとキサンタンガム、パラベンを含み、ニキビに対する効能があり、外用液剤であることが記載されているといえる。
また、ローション等の液剤において、有効成分や添加物以外の成分は通常、水であり、「%」とは「重量%」を意味するから、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「サリチル酸、アラントイン、エタノール22.84%、1,3-ブチレングリコールと水を含有し、サリチル酸の含有量が0.5重量%、アラントインの含有量が0.5重量%、エタノールの含有量が22.84%である、ニキビ改善用外用液剤」
(ウ)対比と判断
1,3-ブチレングリコールは多価アルコールであり、ニキビとは尋常性ざ瘡である。
そうすると、本件発明1と引用発明1は「サリチル酸、アラントイン、エタノール、多価アルコール、ならびに水を含有し、(a)サリチル酸の含有量が0.1~1重量%、(b)アラントインの含有量が0.05~1重量%、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、尋常性ざ瘡改善用外用組成物。」という点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1では、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される2種以上の多価アルコールを含有しているのに対し、引用発明1では1,3-ブチレングリコールのみが含まれている点。
相違点1について検討する。
1,3-ブチレングリコール以外の多価アルコールを加えることは、引用文献1に記載されておらず、また、それを示唆するような記載も見あたらない。また、引用発明1において1,3-ブチレングリコールがどのような目的で配合されているかも不明である。
そうすると、例えば記載事項2にあるように、尋常性ざ瘡用の皮膚外用剤において、保湿を目的としてグリセリンやプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールを配合することはよく行われることであり(以下「周知技術1」という。)、保湿剤(グリセリン等)を配合することにより刺激感が低減されること(記載事項3~6を参照;以下「周知技術2」という。)や、保湿剤により肌なじみが向上すること(記載事項7,8を参照;以下「周知技術3」という。)がいずれもよく知られていることであるとしても、引用発明1の1,3-ブチレングリコールを保湿剤である他の複数の多価アルコールで置換する動機はない。
また、仮に周知技術1に基づいて、引用発明1における1,3-ブチレングリコールが保湿剤であると理解できるとしても、引用発明1には多価アルコールである1,3-ブチレングリコールが配合され保湿効果が得られているといえるから、周知技術1~3の存在を考慮すると、むしろ引用発明1において、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合する動機はない。
そればかりか、本件特許の明細書の表1,2の記載にもあるように、サリチル酸やアラントインの溶解安定性は溶媒の種類によって異なるものであって、その予見可能性は低いといえることを考慮すると、引用発明1において溶媒成分ともいえる1,3-ブチレングリコールを他の成分で置換したり、他の成分を追加することは、溶解安定性の観点から非常に困難であったといえるから、引用発明1において、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選択される一つ以上の多価アルコールを配合することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
他方、本件発明1は、サリチル酸やアラントインの析出を抑制しつつ、肌なじみを向上させ、刺激感を低減するという効果を有するものであるが、当該効果は引用文献1に記載も示唆もされていないから、本件発明1の効果は引用文献1の記載及び周知技術等から当業者が予想できる範囲のものとはいえない。
そうすると、本件発明1は、引用発明1と記載事項2~8から導かれる周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2は、本件発明1について、多価アルコールの含有量を特定したものであるから、本件発明1と同様に引用発明1と周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)申立人の主張について
申立人は平成29年3月2日付け意見書において、相違点1は周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得た事項である上、本件訂正発明1,2は肌なじみの向上効果及び刺激感の低減効果を奏し得ない部分を含み、加えてこれらの効果も周知技術及び技術常識から当業者が予測し得たものであるから、本件発明1,2は引用発明1と周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかしながら、(ウ)で説示したとおり、引用発明1において、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合する動機はないから、引用発明1において、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合して、本願発明1とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、(ウ)及びアで説示したとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、サリチル酸やアラントインの析出を抑制しつつ、肌なじみを向上させ、刺激感を低減するという効果が示されており、当該効果は本件発明1全体において奏されるものと理解できる。
そうすると、申立人の上記主張は採用できない。
(オ)小括
(ア)~(エ)で説示したとおり、本件発明1,2は引用発明1と周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2-1は理由がない。
ウ 取消理由2-2について
(ア)引用文献の記載
出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献等9(大人ニキビに。「アクネス25」シリーズ 誕生!、ロート製薬ホームページ内プレスリリース、2014.05.29掲載(異議申立書の甲第3号証))には、以下の記載がある。
(記載事項9)
「
(イ)引用文献等9に記載された発明
記載事項9によれば、引用文献等9には「メンソレータム アクネス 25メディカルローション」について、有効成分としてサリチル酸0.5%、アラントイン0.2%、エタノール22.84%を含み、添加物として1,3-ブチレングリコールとキサンタンガム、パラベンを含み、ニキビに対する効能があり、外用液剤であることが記載されているといえる。
また、ローション等の液剤において、有効成分や添加物以外の成分は通常、水であり、「%」とは「重量%」を意味するから、引用文献等9には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「サリチル酸、アラントイン、エタノール22.84%、1,3-ブチレングリコールと水を含有し、サリチル酸の含有量が0.5重量%、アラントインの含有量が0.5重量%、エタノールの含有量が22.84%である、ニキビ改善用外用液剤」
(ウ)対比と判断
1,3-ブチレングリコールは多価アルコールであり、ニキビとは尋常性ざ瘡である。
そうすると、本件発明1と引用発明2は「サリチル酸、アラントイン、エタノール、多価アルコール、ならびに水を含有し、(a)サリチル酸の含有量が0.1~1重量%、(b)アラントインの含有量が0.05~1重量%、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、尋常性ざ瘡改善用外用組成物。」という点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
本願発明1では、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される2種以上の多価アルコールを含有しているのに対し、引用発明2では1,3-ブチレングリコールのみが含まれている点。
以下、相違点2について検討する。
1,3-ブチレングリコール以外の多価アルコールを加えることは引用文献等9にも記載されておらず、また、それを示唆するような記載も見あたらない。そして、引用発明2において1,3-ブチレングリコールがどのような目的で使用されているかも不明である。
そうすると、イ(ウ)で説示した周知技術1~3がよく知られていることであったとしても、引用発明2の1,3-ブチレングリコールを保湿剤である他の複数の多価アルコールで置換する動機はない。
また、仮にイ(ウ)で説示した周知技術1に基づいて、引用発明2における1,3-ブチレングリコールが保湿剤であると理解できるとしても、引用発明2には多価アルコールである1,3-ブチレングリコールが配合され保湿効果が得られているといえるから、周知技術1~3の存在を考慮すると、むしろ引用発明2において、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合する動機はない。
そればかりか、イ(ウ)で説示したとおり、サリチル酸やアラントインの溶解安定性は溶媒の種類によって異なり、その予見可能性は低いといえることを考慮すると、引用発明2において1,3-ブチレングリコールを他の成分で置換したり、他の成分を追加することは、溶解安定性の観点から非常に困難であったといえるから、引用発明2において、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選択される一つ以上の多価アルコールを配合することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
他方、イ(ウ)で説示した本件発明1の効果は、引用文献等9に記載も示唆もされていないから、本件発明1の効果は引用文献等9の記載及び周知技術等から当業者が予想できる範囲のものとはいえない。
そうすると、本件発明1は、引用発明2と周知技術及び技術常識に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2は、本件発明1について、多価アルコールの含有量を特定したものであるから、当業者は本件発明1と同様に引用発明2と周知技術及び技術常識に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)申立人の主張について
平成29年3月2日付け意見書における申立人の取消理由2-2についての主張は、イ(エ)に記載したものと同様であって、同じくイ(エ)で説示したとおり採用できない。
(オ)小括
(ア)~(エ)で説示したとおり、本件発明1,2は引用発明2と周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2-2は理由がない。
3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立書に記載された特許異議申立事由の要旨は以下のとおりである。
<申立事由1>
訂正前の請求項1,2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の本件特許は、取り消されるべきものである。
<申立事由2>
訂正前の請求項1,2に係る発明は、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明と、甲第4号証および甲第5号証に記載された事項又は甲第6号証~甲第10号証により立証される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、訂正前の本件特許は、取り消されるべきものである。
<申立事由3>
訂正前の請求項1,2に係る発明のうち、発明の詳細な説明において「肌なじみ」や「刺激感」の評価結果が示されているのは、実施例14~16の外用組成物のみであるところ、これらの実施例の効果を訂正前の請求項1,2に係る発明の範囲全体にまで拡張乃至一般化することはできないから、本件特許は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)判断
ア 申立理由1について
(ア)甲第1号証(特表2010-502701号公報)の記載
甲第1号証には以下の記載がある。
(記載事項甲1-1)
「【0001】
本発明は、局所用組成物、特に薬剤を皮膚へ塗布するために使用される局所用組成物に関する。本発明はまた、(i)炎症、(ii)皮膚、骨、関節、および筋肉の侵害受容器の局部刺激によって生じる疼痛、ならびに(iii)炎症が発病の一要素である皮膚疾患に伴う疼痛を治療するための組成物に関する。本発明に関するこのような炎症性皮膚疾患の例は、偽性尋常性毛瘡(pseudofolliculitis barbae)である。」
(記載事項甲1-2)
「【0207】
<皮膚軟化剤>
本発明の組成物の両方の製剤特性(例えば該組成物を皮膚へ滑らかに塗布できること)を改善したり、所望の皮膚感覚を与えたりするために、皮膚軟化剤が該組成物中に含まれてもよい。このような皮膚軟化剤には例えば、シリコン材((環状および直鎖状の両方の)ジメチコン)、パンテチン誘導体(パンテノール、パントテン酸、パンテテイン、およびパンテチンなど)、ならびにアラントインが含まれる。
(中略)
【0211】
<角質溶解剤>
本発明の組成物は場合によっては、1種以上の角質溶解剤を含んでいる。本発明に使用される角質溶解剤は、αおよびβ-ヒドロキシカルボン酸またはβ-ケトカルボン酸、あるいはそれらの塩、アミド、またはエステルから選択されてもよい。より具体的にはαヒドロキシ酸としては、例えば特に限定されないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸、および一般のフルーツ酸が挙げられる。βヒドロキシ酸は、例えば特に限定されないが、サリチル酸およびその誘導体であるが、特に5-n-オクタノイルサリチル酸などのアルキル誘導体である。
【0212】
また本発明に使用される角質溶解剤は、レチノイド(レチノイン酸またはレチノール)およびそれの誘導体、過酸化ベンゾイル、ウレア、ホウ酸、アラントイン(例えばグリオキシルジウレイドまたは5-ウレイドヒダントイン)、硫黄、レソルシノール、およびヘキサクロロフェンから選択されてもよい。」
(記載事項甲1-3)
「
」
(記載事項甲1-4)
「
」
(記載事項甲1-5)
「
」
(記載事項甲1-6)
「
」
(イ)甲第1号証に記載された発明
記載事項甲1-1,1-3~1-6から、甲第1号証には以下の発明が記載されているといえる。
「サリチル酸0.15重量%、エタノール20重量%、プロピレングリコール2~10重量%、グリセリン3重量%、水を含有する外用組成物」(以下「甲1発明」という。)
また、記載事項1-2は、皮膚軟化剤や角質溶解剤を加えてもよいことを説示した上で、これらの一例としてアラントインを他の物質と並列で記載したものであって、甲1発明の組成において、皮膚軟化剤や角質溶解剤としてアラントインを選択して加えることまでを特定するものとはいえない。
(ウ)対比と判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は「(a)サリチル酸、(c)エタノール、(d)1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンからなる群より選択される2種以上の多価アルコール、ならびに(e)水を含有し、(a)サリチル酸の含有量が0.1~1重量%、(c)エタノールの含有量が18~23重量%である、外用組成物。」である点で一致するものの以下の点で相違するから、本件発明1は甲1発明ではない。
(相違点甲1-1)
本件発明1は(b)アラントインを0.05~1重量%含有するのに対して、甲1発明はアラントインを含まない点
(相違点甲1-2)
本件発明1は尋常性ざ瘡用外用組成物であるのに対し、甲1発明は外用組成物の用途が特定されていない点。
なお、相違点甲1-1について検討するに、記載事項甲1-2から、甲第1号証にはアラントインを添加することが示唆されているといえるから、甲1発明においてアラントインを添加することは当業者が容易に想到し得たことであるものの、甲第1号証にはアラントインの含有量についての記載が見あたらず、アラントインの含有量の上限が1%であるという技術常識が存在するわけでもないから、甲1発明においてアラントインを0.05~1重量%含有させることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、2.(2)イ(ウ)で説示したとおり、本件発明1は所定の組成を備えることにより、サリチル酸やアラントインの析出を抑制しつつ、肌なじみを向上させ、刺激感を低減するという効果を有するものである。そうすると、本件発明1は甲1発明と甲第1号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、同様に、本件発明2は、甲1発明ではなく、甲1発明と甲第1号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ)小括
(ウ)で説示したとおり、本件発明1,2は甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、申立理由1は理由がない。
イ 申立理由2について
(ア)甲第4号証~甲第10号証の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(OTC医薬品辞典2014-15(一般用医薬品集 第14版)、日本OTC医薬品情報研究会、2008年4月15日発行、367頁)の右欄には、以下の記載がある。
(記載事項甲4)
「
」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開2009-35488公報)には、以下の記載がある。
(記載事項甲5)
「【0037】
(実施例1)
一実施例としてのニキビ用外用剤は、洗浄石鹸、収斂化粧水、及びパウダージェルからなるものであり、それぞれの組成は次のとおりである。
【0038】
[洗浄石鹸]
(中略)
【0039】
[収斂化粧水]
配合成分 配合量(重量%)
エタノール 7.0%
グリコール酸 5.0%
1、3-ブチレングリコール 5.0%
グリセリン 5.0%
水酸化ナトリウム 2.0%
ベタイン 1.0%
サリチル酸ナトリウム 0.2%
酢酸トコフェロール 0.1%
ポリエチレングリコール-60水添ヒマシ油 0.1%
アラントイン 0.1%
精製水 残量 」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開2011-231082号公報)の右欄には、以下の記載がある。
(記載事項甲6-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソプロピルメチルフェノール0.2~1.0質量%、(B)1,3-ブチレングリコール、(C)グリセリン、及び(D)HLB15以上の非イオン性界面活性剤を含有し、
{(B)+(C)}/(A)で表される(A)成分に対する(B)及び(C)成分の合計量の含有質量比が40以上であり、(B)/(C)で表される(C)成分に対する(B)成分の含有質量比が1.5~3.5の範囲であり、かつ(E)エタノールの含有割合が10質量%以下であることを特徴とするにきび用外用剤組成物。
【請求項2】
更に、(F)サリチル酸を含有し、pHが2~5の範囲である請求項1記載のにきび用外用剤組成物。」
(記載事項甲6-2)
「【0001】
本発明は、にきび用外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
にきびや手指の殺菌を目的とした外用剤には、クリーム、乳液、液剤等があり、これらの中でも液剤は、広く塗布できる上べたつきが少ないため、広範に用いられている。
ところで、殺菌成分の中でイソプロピルメチルフェノール(以下、IPMPと略すことがある。)は、塩化ベンザルコニウムのようなカチオン性殺菌成分と比較して抗菌スペクトルが広い特徴を有することから、殺菌消毒剤やにきび治療薬に用いられている。
しかし、IPMPは水への溶解性が極めて低いため、従来は各種界面活性剤の配合やエタノールの配合により可溶化させていた。例えば、口腔用組成物として提案されている液剤では、IPMPの配合量が少ないので、HLBの高い界面活性剤のみで可溶化させていたが、にきび治療における有効量を配合すると、低温で析出してしまうという問題があった。エタノールを可溶化剤として加えることで、IPMPの析出は改善されるが、エタノールを可溶化に必要な配合量とすると、高濃度のエタノールにより使用時及び使用後に皮膚刺激感を伴うので、できるだけエタノールの使用量を抑えてIPMPを可溶化した外用剤が望まれていた。
(中略)
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、殺菌成分としてイソプロピルメチルフェノールを含有するにきび用外用剤組成物に、エタノールを多量に配合することなく、低温での外観安定性に優れ、皮膚刺激感を抑制したにきび用外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、IPMPの可溶化剤として界面活性剤の添加だけでは解決できなかった凍結復元時に出現するIPMPの析出を、エタノールを高濃度に配合することなく、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとを特定比率で配合することにより解決することができ、しかも皮膚刺激感を抑えたにきび用外用剤組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(FRAGRANCE JOURNAL、2009年5月号、(有)フレグナンスジャーナル社、2009年5月15日発行、61-64頁)には、以下の記載がある。
(記載事項甲7-1)
「3.スキンケア製剤での特性と応用
3-1.角質水分量への効果
肌への保湿性付与は、スキンケア化粧料の重要な機能の1つであり、グリセリンなどの多価アルコールや糖類がよく用いられている。そこで、植物由来プロパンジオールの角層水分量に及ぼす影響を検討した。
(中略)
試験サンプルは、「植物由来プロパンジオール10%水溶液」、「グリセリン10%水溶液」、「1,3ブチレングリコール(以下:BG)10%水溶液」、「プロピレングリコール(以下:PG)10%水溶液」、さらに「植物由来プロパンジオール5%+グリセリン5%併用水溶液」、「BG5%+グリセリン5%併用水溶液」、「PG5%+グリセリン5%併用水溶液」とし、測定は20℃、50RT%にて行った。
その結果を図1に示す。(中略)BGやPGについてもグリセリンと併用することで、単独の時より角層水分量の向上および持続傾向は認められたが、得られた保湿効果はグリセリン10%水溶液よりも下回っていた。」(62頁左欄22行~63頁左欄2行)
(記載事項甲7-2)
「
」
(記載事項甲7-3)
「その結果、「植物由来プロパンジオール5%+グリセリン5%併用水溶液」は、「グリセリン10%水溶液」よりもしっとり感やつるつる感、さっぱり感を肌に付与し、特につるつる感の付与に優れていた。「BG5%+グリセリン5%併用水溶液」は、グリセリン10%水溶液」よりもしっとり感やさっぱり感を付与したが、つるつる感については同程度であった。」(63頁11~18行)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(COSMETIC STAGE、Vol.4、No.5、(株)技術情報協会、2010年発行、62-65頁)には、以下の記載がある。
(記載事項甲8)
「
」
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(COSMETIC STAGE、Vol.9、No.1、(株)技術情報協会、2014年発行、68-70頁)には、以下の記載がある。
(記載事項甲9)
「保湿成分として使われる多価アルコールは、水酸基の位置と数及びその分子量に得供される。化粧品原料として最も多く使用されるグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールについて比較する。化粧水では、炭素数3と水酸基3のグリセリンが「重い(強いしっとり感)」、炭素数3と水酸基2の1,3-ブチレングリコールが「しっとり感」、炭素数3と水酸基2のプロピレングリコールは「軽いしっとり感」になる。」(69頁10~17行)
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(2006-07 大衆薬事典(一般用医薬品集 第10版)、日本大衆薬情報研究会、2014年発行、68-70頁)には、以下の記載がある。
(記載事項甲10)
「
」
(イ)対比と判断
甲第2号証は取消理由通知書の引用文献2、甲第3号証は取消理由通知書の引用文献等9であって、それぞれに記載された発明と本件発明1との相違点は2.(2)イ(ウ)と2.(2)ウ(ウ)でそれぞれ説示した相違点1,2である。
そして、以下に説示するとおり、相違点1,2は甲第4号証~甲第10号証の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものとはいえず、2.(2)イ(ウ)と2.(2)ウ(ウ)でそれぞれ説示したとおり、本件発明1,2は引用文献等1,9の記載及び周知技術等から当業者が予想し得ない効果を奏するものである。
記載事項甲4から、甲第4号証には有効成分としてサリチル酸0.5重量%、イソプロピルメチルフェノール0.3重量%、アラントイン0.2重量を含有し、1,3-ブチレングリコールとグリセリン、エタノール等と、水を含有する尋常性ざ瘡(ニキビ)用改善用外用剤が記載されているといえるが、甲第4号証には1,3-ブチレングリコールとグリセリンを両方含有する目的等が記載されているわけでもないから、甲第4号証は引用発明1,2においてジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合することを動機付けるものではない。
記載事項甲5から、甲第5号証には有効成分としてサリチル酸ナトリウム、アラントイン、1,3-ブチレングリコールとグリセリン、エタノール、水を含有する尋常性ざ瘡(ニキビ)用改善用外用剤が記載されているといえるが、甲第5号証には1,3-ブチレングリコールとグリセリンを両方含有する目的等が記載されているわけでもないから、甲第5号証は引用発明1,2においてジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合することを動機付けるものではない。
記載事項甲6-1,6-2から、甲第6号証には、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとHLB15以上の非イオン性界面活性剤を配合することにより、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を可溶化できることが記載されているといえるが、引用発明1,2においてアラントインやサリチル酸の溶解安定性を高めるという技術課題自体が本件の出願時において公知であったといえない上、イソプロピルメチルフェノールとアラントインやサリチル酸が同様の溶解特性を有しているという技術常識が存在するわけでもないから、甲第6号証は引用発明1,2においてジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合することを動機付けるものではない。
記載事項甲7-1~7-3から、甲第7号証には、ブチレングリコール5%+グリセリン5%併用水溶液の保湿効果がブチレングリコール10%の保湿効果よりも高い一方でグリセリン10%の保湿効果には劣ること、植物由来プロパンジオール5%とグリセリン5%併用水溶液の保湿効果が高いことが開示されているといえる。加えて、記載事項甲8、甲9、甲10から、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリン等を保湿目的で用いることは周知技術であったといえる。しかしながら、2.(2)イ(ウ)と2.(2)ウ(ウ)でそれぞれ説示したように、引用発明1,2においてどのような目的で1,3-ブチレングリコールが配合されているのか不明である上、引用発明1,2において溶媒成分ともいえる1,3-ブチレングリコールを他の成分で置換したり、他の成分を追加することは、溶解安定性の観点から困難であったといえるから、甲第7号証の記載や上記周知技術の存在を考慮しても、引用発明1,2においてジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びポリグリセリンから選ばれる1以上の多価アルコールをさらに配合することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
(イ)で説示したとおり、本件発明1,2は、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明と、甲第4号証および甲第5号証に記載された事項又は甲第6号証~甲第10号証により示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、申立理由2は理由がない。
ウ 申立理由3について
2.(2)アで説示したとおり、本件発明1,2の解決しようとする課題は、「サリチル酸とアラントインを含み、低温であっても析出が抑制された、安定性が一層優れた外用組成物を提供すること」であって、当業者は発明の詳細な説明の記載から本件発明1,2が上記課題を解決できる範囲のものであると理解できる。
そうすると、申立理由3は理由がない。
エ まとめ
ア~ウで説示したとおり、申立理由1~3はいずれも理由がない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700827