特許異議申立
2024-700772
挽肉様大豆加工食品およびその製造方法、並びに食品
- 審判番号
- 2024-700772
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-080165
- 登録番号
- 7438012
- 請求日
- 2024年08月15日
- 審決日
- 2025年12月19日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】オリエンタル酵母工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ITOH
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【異議申立人】奥村 一正
- 審判長/審判官
- 審判長 松田 成正
- 審判官 柴田 昌弘
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.113-YAA(A23J) / P1651.121-YAA(A23J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7438012号発明「挽肉様大豆加工食品およびその製造方法、並びに食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7438012号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。
特許第7438012号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7438012号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和2年4月30日を出願日とする出願であって、令和6年2月15日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月15日に特許異議申立人 奥村 一正(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年9月26日付けで手続補正指令(方式)がされ、同年10月22日に特許異議申立書を補正する手続補正書(方式)が提出され、同年11月29日付けで取消理由が通知され、令和7年1月31日に特許権者 オリエンタル酵母工業株式会社(以下「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年2月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月4日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月24日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年8月1日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、これに対し同年同月20日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
なお、令和7年1月31日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和7年7月24日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「加工澱粉0.2~2質量%」と記載されているのを、「加工澱粉1.5~2質量%」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による請求項1についての訂正は、加工澱粉の含有量の数値範囲をより狭い範囲にするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、訂正事項1による請求項1についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
訂正事項1による、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び3の訂正についても同様である。
(2)独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし4に対してされているので、訂正を認める要件として、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3に対しては、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 本件訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
粒状脱脂大豆蛋白10~22質量%と、油脂2~9質量%と、セルロースエーテル誘導体0.1~4質量%と、加工澱粉1.5~2質量%とを含み、
前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくともいずれかであり、
前記加工澱粉が、架橋澱粉であることを特徴とする挽肉様大豆加工食品。
【請求項2】
前記油脂の含有量が、4~8質量%である請求項1に記載の挽肉様大豆加工食品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の挽肉様大豆加工食品を使用したことを特徴とする食品。
【請求項4】
粒状脱脂大豆蛋白と、油脂と、セルロースエーテル誘導体と、加工澱粉とを混合して混合物を得る工程と、
ジュール加熱装置による通電加熱で該混合物を加熱殺菌する工程とを含み、
前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくともいずれかであり、
前記加工澱粉が、架橋澱粉であり、
挽肉様大豆加工食品における含有量が、前記粒状脱脂大豆蛋白は10~22質量%、前記油脂は2~9質量%、前記セルロースエーテル誘導体は0.1~4質量%、前記加工澱粉は0.2~2質量%であることを特徴とする挽肉様大豆加工食品の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
特許異議申立人が、令和6年8月15日に提出し、同年10月22日に提出した手続補正書(方式)により補正した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
なお、申立理由の番号は、当審において仮に付したものである。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2005-21163号公報
甲第2号証:一般社団法人日本植物蛋白食品協会 植物性たん白について(https://www.protein.or.jp/protein/)
甲第3号証:株式会社光洋商会 製品紹介 ソレイ社濃縮大豆たん白「アルファ5800IP」(https://www.koyojapan.jp/pdf/TOPIX_143.pdf)
甲第4号証:food ingredients1st > industry news > ソレイ社、特許取得済み膜技術を用いた大豆たんぱく質濃縮物を発売(https://www.foodingredientsfirst.com/news/Solae-Creates-Soy-Protein-Concentrates-Made-with-Patented-Membrane-Technology.html)
甲第5号証:米国特許出願公開第2020/0297857号明細書
甲第6号証:特開2020-48503号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和7年5月23日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
取消理由1(甲1を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであって、また、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
当審は、上記取消理由1並びに申立理由1及び2には、以下のとおり理由がないと判断する。
なお、取消理由1は、上記申立理由1及び申立理由2のうち、請求項1ないし3に係る理由と同旨であり、いずれも甲1を主たる証拠とする理由であるから、併せて検討する。
1 主な証拠に記載された事項等
(1) 甲1に記載された事項等
甲1には、「植物たんぱく質食肉類似物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
下記の各工程を含むことを特徴とする植物ベースの食肉類似物の製造方法:
メチルセルロースを水/氷混合物に添加し、引き続きメチルセルロースと水/氷混合物を混合してクリームを調製する工程;
変性グルテン中に混合する工程;
水中で高溶解性を有し且つ緩やかな加熱処理によってゲルを形成し得る植物たんぱく質成分中に混合してたんぱく質混合物を調製する工程;
油中に混合してエマルジョンベースを調製する工程;
変性食用澱粉と風味料成分中に混合して風味付けエマルジョンベースを調製する工程;および、
該風味付けエマルジョンベースを調理して植物ベースの食肉類似物を調製する工程。
・・・
【請求項12】
前記調理工程が約87.8℃(190°F)~約90.6℃(195°F)の温度に加熱することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記植物ベースの食肉類似物を約4.4℃(40°F)に冷却する工程;および前記植物ベースの食肉類似物を前記植物ベースの食肉類似物片に砕く工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記食肉類似物片が約3~12 mmの直径を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法に従って製造した前記植物ベースの食肉類似物。
【請求項16】
請求項13記載の方法に従って製造した前記植物ベースの食肉類似物片。
【請求項17】
下記の各工程を含むことを特徴とする植物バーガーパティーの製造方法:
植物ベースの食肉類似物片を少なくとも1種の食用つなぎ成分、風味付けエマルジョンベース、メチルセルロース、カラゲナンゲル混合物および風味料成分と混合する工程;および、得られた混合物をパティーに成形する工程。
・・・・
【請求項20】
前記少なくとも1種の食用つなぎ成分がクラッカー屑、トースト化小麦屑、変性澱粉、ミルクたんぱく質、小麦粉、マスタードまたは水和大豆たんぱく質生成物を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記食用つなぎ成分が、大豆たんぱく質濃縮物を含む水和大豆たんぱく質生成物である、請求項20記載の方法。
」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、植物たんぱく質製品、さらに詳細には、植物ベースの食肉類似物の製造方法に関する。」
・「【0010】
本発明の方法は、先ず、1~3質量%のメチルセルロースを45~65質量%の水/氷混合物に添加し、該メチルセルロースと水/氷混合物とを、得られる混合物がシェービングクリームのコンシステンシーを有するまで混合することを含む。上記水/氷混合物は、およそ等量の水と氷を含有する。他の割合の水と氷も、処理中の温度を得られる混合物が固化するようになる点よりも低く保持する限りにおいて適し得る。混合は、任意の商業的に入手可能なブレンダーまたはボウルカッターを使用することによって実施する。混合プロセスは、低チョッピング(切刻み)速度で開始して溢れ出を防止する。メチルセルロースを十分に分散させた後、チョッピング速度を上昇させる。チョッピングは、クリーム状混合物が得られるまで高速で続ける。
その後、3~10質量%の変性グルテン、例えば、活性小麦グルテン(Midwest Grain Products社、カンザス州アチソン)を上記メチルセルロースクリームに添加する。チョッピングを、グルテンが上記クリーム中に良好に混合するまで、上述したのと同じ方法で数分間続ける。
次に、上述したような高水溶性をさらにまた緩やかな加熱処理によるゲル形成能力を有する10~20質量%の植物たんぱく質成分を上記メチルセルロースクリーム中に混合してたんぱく質混合物を調製する。本発明において使用し得る適切な植物たんぱく質成分は、ミズーリ州セントルイス 63188のSolae社から入手し得るAlphaR 5800大豆たんぱく質濃縮物である。好ましくは、上記植物たんぱく質成分は、AlphaR 5812大豆たんぱく質濃縮物のような高分散性も有し得る。チョッピングは、上記植物たんぱく質成分が分散し良好に混合するまで数分間続け得る。
【0011】
次の工程は、10~15質量%の油を上記メチルセルロースクリーム中に添加してエマルジョンベースを調製することである。適切な油は、大豆油、キャノーラ油、とうもろこし油またはピーナツ油を含む。チョッピングは、上述した方法で続行する。
その後の工程は、5~10質量%の変性澱粉およびその後のデキストロースもしくはサクロースのような甘味料、塩、香辛料または食品着色剤を含む5~8質量%の風味料成分中への混合である。風味料成分は1度で添加し得るが、チョッピングは上述のようにして継続する。また、追加の水/氷混合物を添加して、風味付けしたエマルジョンベースの硬直を低減させ得る。その後、風味付けエマルジョンベースをケーシング中に詰め込む。ケーシングは、天然または人工、食用または非食用ケーシングのいずれかである。その後、詰め込んだエマルジョンベースを、コア温度が87.8℃(190°F)~約90.℃(195°F)に達するまで調理し得る。得られる生成物は、容易にスライスし得る植物ベースの食肉類似物である。
本発明の方法は、上記調理した植物ベースの食肉類似物をスライスまたは破砕して植物ベースの食肉類似物片とする前に、上記植物ベースの食肉類似物を約4.4℃(40°F)に冷却することを含み得る。任意の所望の大きさを、所望するタイプの食品に応じて製造し得る。菜食用バーガーパティーを製造するためには、上記植物ベースの食肉類似物片は約3~約12 mmの直径を有する。
風味付けエマルジョンベース、植物ベースの食肉類似物および植物ベースの食肉類似物片を製造する方法の特定の例は、実施例1に示している。
【0012】
さらに、本発明は、上記風味付けエマルジョンベースと上記植物ベースの食肉類似物の双方を使用する、植物バーガーパティーの製造方法も提供する。一般に、この方法は、15~25質量%の上記風味付けエマルジョンベース、5~20質量%の上記植物ベースの食肉類似物片、50~75質量%の少なくとも1種の食用つなぎ成分、0.1~1質量%のメチルセルロース、7~12質量%のカラゲナンゲル混合物および0.01~0.25質量%の風味料成分を一緒に混合することを含む。その後、植物バーガー混合物を任意の所望の大きさを有するパティーに成形する。
既知の食用つなぎ成分は、クラッカー屑、焼上げ小麦屑、変性澱粉、ミルクたんぱく質、小麦粉またはたんぱく質濃縮物を含む。実施例2に示す特定の配合においては、RESPONSER 4402大豆たんぱく質濃縮物およびRESPONSER 4320大豆たんぱく質濃縮物なる登録名を有するミズーリ州セントルイス 63188のSolae社のたんぱく質濃縮物の押出加工製品(供給元;Central Soya社、インディアナ州ホートウェーン)を食用つなぎ成分として使用している。RESPONSE 4402およびRESPONSE 4320は、構造的に粒状であり、70%のたんぱく質含有量を有する。これらのたんぱく質製品を配合中に添加することにより、バーガーの食感を改善し、ガスグリル上での燃上り(flaring)を減少させる。
上記カラゲナンゲル混合物は、バーガーパティーの肉様食感とジューシー性の保存を助長するゲル混合物である。カラゲナンゲル混合物は、種々の配合物を使用して製造し得る。カラゲナンゲル混合物を製造する方法の特定の例は、実施例3に示している。バーガーパティーは、176.7℃(350°F)の調理油中で約30秒間で炒め揚げることができる。調理温度および調理時間は、パティーの厚さに応じて変化する。調理油は、とうもろこし油およびピーナツ油のような任意の適切な植物油である。」
・「【0015】
[実施例1]
エマルジョンベース食肉類似物を製造するための方法および配合
水/氷混合物を、先ず、等量の氷と水を一緒に添加して50/50の水/氷混合物を調製することによって調製する。本実施例において必要とする水/氷混合物の総量および各成分の量を、表Iに示す配合に基づき算出する。水/氷混合物総量の約90%をボウルカッター(Meissnerカッター)に加え、次いで1.5質量%のメチルセルロースを加える。好ましくは、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical社のMETHOCELのような高ゲル化特性を有するメチルセルロースを使用する。チョッピング操作は、メチルセルロースが十分に分散するまで、低ナイフ速度で開始する。その後、ナイフ速度を全速即ち約3600 rpmに上昇させる。3~5分後、メチルセルロースは、容量を増大し、シェービングクリームと同様なコンシステンシーを有する。表Iに示すような計算量の活性小麦グルテンを上記メチルセルロースクリームに添加する。チョッピングは、低ナイフ速度で開始し、活性小麦グルテンが完全に分散した後に、全速に上昇させる。チョッピングをおよそ2~4分間継続する。その後、植物たんぱく質成分の計算量(16質量%)を上記たんぱく質混合物中にチョッピング操作によって混合する。好ましくは、上記植物たんぱく質成分は、高水溶解性を有し、緩やかな加熱処理によってゲルを形成し得るものである。約2~3分後、12.5質量%の大豆油またはキャノーラ油を添加する。とうもろこし油およびピーナツ油のような他の油類も使用可能である。チョッピングを、油が完全に分散するまで低速で、均質混合物が形成されるまで全速で続ける。その後、2.50質量%の変性澱粉(B990)、0.50質量%のデキストロース、5.0質量%の香辛料および0.25質量%の着色用物質を含む全ての他の乾燥成分を、水/氷混合物の残り(10%)と一緒に順次添加する。チョッピングを、約3~4分間、即ち、風味付けエマルジョンベースの均質混合物が得られるまで真空下に続ける。該風味付けエマルジョンベースは、水密容器中に入れるかあるいは水分不透過性ケーシング(プラスチックまたはセルロース製であり得る)中に詰めることができる。該風味付けエマルジョンベースは、コア温度が約87.8℃(190°F)~約90.6℃(195°F)に達するまで、油浴連続オーブン中で調理することができる。調理した製品は、その後、ケーシングを除去する前に、約4.4℃(40°F)に冷却し得る。調理した植物ベースの食肉類似物は、スライスするかあるいは切り刻んで好ましくは直径約3~12 mmの小粒子として、植物ベースの食肉類似物片を得ることができる。上記風味付けエマルジョンベースまたは植物ベースの食肉類似物片は、種々の菜食用食品中に混入させて菜食用食品の食感、口当たりおよびジューシー性を改善することができる。
【0016】
表I:風味付けエマルジョンベース/植物ベースの食肉類似物を製造するための配合
[図:0001434116000001.jpg]
1:Midwest Grain Products社、2:Grain Processing社、3:ミシガン州ミッドランドのDow Chemical社
【0017】
[実施例2]
植物バーガーパティーを製造するための方法および配合
RESPONSE 4402およびRESPONSE 4320(Solae社の登録大豆たんぱく質製品;供給元、Central Soya社)のような乾燥押出加工大豆たんぱく質濃縮物を、大豆たんぱく質製品1部当り水2部の割合の水で水和させる。その後、30質量%の水和RESPONSE 4402と30質量%の水和RESPONSE 4320を、20質量%の実施例1において調製したような風味付けエマルジョンベース混合物と一緒に混合する。各成分を一緒に混合した後、計算量のメチルセルロース(0.25質量%)を香辛料と一緒に上記混合物に添加する(表II参照)。次に、実施例1において述べた方法によって製造した植物ベースの食肉類似物片をカラゲナンゲル混合物(実施例3参照)と一緒にゆっくり添加して植物バーガー混合物を調製する。この植物バーガー混合物を、その後、バーガーパティーに成形する。その後、この植物バーガーパティーは、十分に調理し、即ち、176.7℃(350°F)の調理油中で約30秒間炒め揚げ、直ちに冷却し、凍結させ、包装することができる。
【0018】
表II:バーガーパティー用の配合
[図:0001434116000002.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に、実施例2について整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1調理前発明」、「甲1調理後発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1調理前発明>
「表IIの配合を有する、実施例2の調理前の植物バーガーパティー。」
(当審注:実施例2及び実施例2において使用される実施例1の風味付けエマルジョンベース及び植物ベースの食肉類似物片については、上記(1)を参照。以下、同様である。)
<甲1調理後発明>
「甲1調理前発明を使用した植物バーガーパティー。」
<甲1製法発明>
「表IIの配合に従って配合物を得る工程を含む、甲1調理前発明の植物バーガーパティーの製造方法。」
2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1調理前発明とを対比する。
甲1調理前発明の「大豆/キャノーラサラダ油」は本件特許発明1の「油脂」に、甲1調理前発明の「メチルセルロース」は本件特許発明1の「セルロースエーテル誘導体」に、甲1調理前発明の「変成澱粉B990」は、変性されていることから本件特許発明1の「加工澱粉」に、甲1調理前発明の「調理前の植物バーガーパティー」は本件特許発明1の「食品」に、それぞれ相当する。
各成分の量比について検討する。甲1調理前発明における「風味付けエマルジョンベース」は、表Iの記載から「大豆/キャノーラサラダ油」を12.5質量%、「変成澱粉B990」を2.5質量%、「メチルセルロース」を1.5質量%、それぞれ含むものである。そして、甲1調理前発明における「植物ベースの食肉類似物片」は、「風味付けエマルジョンベース」をコア温度が約87.8℃(190°F)~約90.6℃(195°F)に達するまで、油浴連続オーブン中で調理した後、約4.4℃(40°F)に冷却して得られる植物ベースの食肉類似物を直径約3~12 mmの小粒子としたものであり、調理の過程で水分が失われる可能性があるため、その正確な組成は明らかではないものの、水分が全く失われない場合には「風味付けエマルジョンベース」と同様の組成を有しているといえ、水分がすべて失われる場合には、「風味付けエマルジョンベース」において水/氷混合物が0質量%となった組成を有しているといえる。後者の場合、「植物ベースの食肉類似物片」における各成分の含有割合は、大豆/キャノーラサラダ油28.2質量%(12.5/(100-55.75)=28.2)、変性澱粉5.6質量%(2.5/(100-55.75)=5.6)、メチルセルロース3.4質量%(1.5/(100-55.75)=3.4)である。
表IIにおいて「風味付けエマルジョンベース」は20質量%、植物ベースの食肉類似物片」は10質量%、それぞれ含まれていることから、甲1調理前発明における含有量は、「植物ベースの食肉類似物片」の調理過程で水分が全く失われない場合には「大豆/キャノーラサラダ油」が3.75質量%、「変成澱粉B990」が0.75質量%である。そして、甲1調理前発明における「メチルセルロース」の含有量は、風味付けエマルジョンベース及び植物ベースの食肉類似物片に含まれる合計量0.45質量%に、表IIに記載された0.25質量%を加えた0.7質量%である。また、「植物ベースの食肉類似物片」の調理過程においてすべての水分が失われた場合には、甲1調理前発明における含有量は、「大豆/キャノーラサラダ油」が5.32質量%(12.5*20/100+28.2*10/100=5.32)、「変成澱粉B990」が1.06質量%(2.5*20/100+5.6*10/100=1.06)である。そして、甲1調理前発明における「メチルセルロース」の含有量は、風味付けエマルジョンベース及び植物ベースの食肉類似物片に含まれる合計量0.64質量%(1.5*20/100+3.4*10/100=0.64)に、表IIに記載された0.25質量%を加えた0.89質量%である。
そうすると、甲1調理前発明は、油脂を3.75ないし5.32質量%含むので、本件特許発明1の「油脂2~9質量%」を含みという発明特定事項を満たし、メチルセルロースを0.7ないし0.89質量%含むので、「セルロースエーテル誘導体0.1~4質量%」を含みという発明特定事項を満たすといえる。
以上のことから、本件特許発明1と甲1調理前発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「油脂2~9質量%と、セルロースエーテル誘導体0.1~4質量%と、加工澱粉とを含み、前記セルロースエーテル誘導体がメチルセルロースである食品。」
そして、本件特許発明1と甲1調理前発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1は「粒状脱脂大豆蛋白10~22質量%」を含むのに対し、甲1調理前発明は「水和RESPONSE 4402及び水和RESPONSE 4320を、それぞれ30質量%ずつ」含むものである点。
<相違点2>
加工澱粉について、本件特許発明1は、「加工澱粉が架橋澱粉である」のに対し、甲1調理前発明は、加工澱粉が「変成澱粉B990」である点。
<相違点3>
本件特許発明1の食品は「挽肉様大豆加工食品」であるのに対し、甲1調理前発明の食品は「調理前の植物バーガーパティー」である点。
<相違点4>
加工澱粉の含有割合について、本件特許発明1は、加工澱粉を「1.5~2質量%」含むのに対し、甲1調理前発明は、加工澱粉を「0.75ないし1.06質量%」含む点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
甲1には、甲1調理前発明が加工澱粉を1.5~2質量%含むことは記載されていないし、甲1及び他の証拠をみても、甲1調理前発明が加工澱粉を1.5~2質量%含む蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点4は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1調理前発明において、加工澱粉を1.5~2質量%含むようにする動機付けがなく、本件特許発明1は、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する、という本件特許発明1の構成から予測できた範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、甲1調理前発明において、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和7年8月20日に提出した意見書(2~5頁)において、以下の主張をしている。
甲1の【0011】には、「その後の工程は、5~10質量%の変性澱粉およびその後のデキストロースもしくはサクロースのような甘味料、塩、香辛料または着色剤を含む5~8質量%の風味料成分中への混合である。」と記載されており、さらに同【0012】には、「15~25質量%の上記風味付けエマルジョンベース、5~20質量%の上記植物ベースの食肉類似物片、50~75質量%の少なくとも1種の食用つなぎ成分、0.1~1質量%のメチルセルロース、7~12質量%のカラゲナンゲル混合物および0.01~0.25質量%の風味料成分を一緒に混合することを含む。」と記載されていることから、変性澱粉5質量%、風味エマルジョンベースを15質量%使用した場合は0.75質量%の変性澱粉を、変性澱粉10質量%、風味エマルジョンベースを25質量%使用した場合は2. 5質量%の変性澱粉を、つまり、0.75~2.5重量%の範囲添加することができることになる。
また、甲1の【0011】には5~10質量%の変性澱粉を混合することが記載されているにもかかわらず、甲1調理前発明は、風味エマルジョンベースに変性澱粉を2.5質量%しか使用していないので、甲1調理前発明の変性澱粉の添加量を2.5質量%から5質量%とした場合、変性澱粉として1.50~2.12となる。よって、当業者にとって、加工澱粉の添加範囲を1. 5~2. 0質量%とすることは、容易に想到できることである。
そして、甲1には、第1工程において風味付けエマルジョンベースと植物ベースの食肉類似物を調製する“2工程”法によって製造したパティーは1工程法によって製造したパティーよりもジューシーであること及び変性食用澱粉が増粘剤成分として機能することなどが記載されているから(【0007】)、増粘すること等による作業性や保形性の向上や、ジューシー感は甲1において示されており、本件特許発明1の効果は加工澱粉の数値範囲の内と外のそれぞれで量的に顕著な差がなく、有利な効果の顕著性は認められない。
イ 当審の判断
変性澱粉は食肉類似物片にも含まれることから、甲1の明細書の発明の詳細な説明の記載から把握できる変性澱粉の質量割合は、特許異議申立人が主張する0.75質量%~2.5質量%にはならず、少なくともより広い数値範囲に及んでいる。また、甲1調理前発明において、甲1の【0011】の記載にしたがって、5~10質量%の変性澱粉を混合する場合には、加工澱粉の添加範囲は1.5~4.24質量%になる。そして、甲1調理前発明において、変性澱粉のみに着目して、発明の詳細な説明から導き出される質量割合の中から1.5~2.0質量%という数値範囲を設定する動機付けは、甲1及び他の証拠をみても見いだすことができない。さらに、本件特許発明1が奏する、挽肉と同様の作業性、保形性、風味、ジューシー感、および食感を有し、更に優れた冷凍耐性を有する、という効果、特に優れた冷凍耐性を有する点は、本件特許発明1の構成から予測できた範囲を超える顕著なものである。
(4)本件特許発明1についてのまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1調理前発明ではなく、甲1調理前発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
3 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。
よって、本件特許発明2は、甲1調理前発明ではなく、甲1調理前発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件特許発明3は、甲1調理後発明ではなく、甲1調理後発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点5>
本件特許発明4は「ジュール加熱装置による通電加熱で該混合物を加熱殺菌する工程」を含むのに対し、甲1製法発明はそのように特定されていない点。
上記相違点5について検討する。甲1には、甲1製法発明がジュール加熱装置による通電加熱で混合物を加熱殺菌する工程を含むことは記載されていない。したがって、上記相違点5は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1製法発明において、ジュール加熱装置による通電加熱で混合物を加熱殺菌する工程を含むようにする動機付けはなく、本件特許の明細書の【0031】に示されているとおり、本件特許発明4は、これにより、固形感、食感が維持され、粒が大きく、繊維感が残り、また、過加熱による色焼けがない挽肉用大豆加工食品を得ることができる、という本件特許発明4の構成から予測できた範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、甲1製法発明において、相違点5に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由並びに特許異議申立書に記載した理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700772