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特許異議申立

2016-700672

プッシュスイッチ

審判番号
2016-700672
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2011-195825
登録番号
特許第5906377号(P5906377)
請求日
2016年08月03日
審決日
2017年06月06日
公報発行日
2017年08月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
  • 【権利者代理人】藤井 兼太郎
  • 【権利者代理人】鎌田 健司
  • 【権利者代理人】前田 浩夫
  • 【異議申立人】宮▲崎▼ 日出夫
審判長/審判官
  • 審判長 冨岡 和人
  • 審判官 中川 隆司
  • 審判官 内田 博之
分類
P1651.121-YAA(H01H) / P1651.841-YAA(H01H) / P1651.851-YAA(H01H) / P1651.854-YAA(H01H) / P1651.855-YAA(H01H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第2項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5906377号発明「プッシュスイッチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5906377号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5906377号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5906377号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成23年9月8日に特許出願され、平成28年4月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人宮▲崎▼日出夫(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年12月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月6日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人から、同年4月28日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1.本件訂正の内容 本件訂正請求による本件訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1に「前記保護シートは、前記押圧体が配された箇所から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。」とあるのを、「前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。」に訂正する。 (2)訂正事項2:明細書の段落【0015】に、「保護シートは、押圧体が配された箇所から、溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチとしたものである。」とあるのを、「保護シートは、押圧体の外縁から、溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチとしたものである。」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1に関連する記載として、本件訂正前の明細書の段落【0027】には、「そして、保護シート15の中央部分は、押圧体17の上端形状に沿って上方に突出し、その突出している上面位置が被操作箇所となっている。その被操作箇所は、平坦面やなだらかな球面状であると好ましい。そして、保護シート15は、上記被操作箇所から壁部11A上端に重なっている周縁部との間が周囲に向かうにつれて下がっていく傾斜状態になっている。この傾斜状態のものであれば、操作時に保護シート15から受ける影響を少なく抑えることができる。」との記載がある。 また、【図1】ないし【図3】によれば、保護シートは15は、円柱状の押体圧17の外縁から、壁部11Aの上面へ向けて傾斜していることが看取される。 したがって、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内において、「保護シート」の傾斜の態様に関して、「前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜している」と限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項2は、訂正事項1に伴って、明細書の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項1と同様に新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による本件訂正は特許法120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 電気的接続が行われるスイッチ接点部と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内に前記スイッチ接点部が配されたケースと、 前記凹部を覆う保護シートと、 前記保護シートの下方に配された押圧体と、を備え、 前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されており、 前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。 【請求項2】 前記溶着された箇所は、前記壁部の内周よりも外側に位置する請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項3】 前記溶着された箇所は、前記壁部の外周に沿って形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項4】 前記溶着された箇所は、少なくとも一部が0.1mm以上、0.2mm以下の線幅で形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。 【請求項5】 前記溶着された箇所は、前記凹部を全周に亘って囲むように形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。」 2.取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし5に係る発明に対して平成28年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証に記載された事項(刊行物2記載の技術事項1)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2)請求項2ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証に記載された事項(刊行物2記載の技術事項1及び刊行物2記載の技術事項2)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2ないし5に係る特許は、取り消されるべきものである。 3.甲各号証の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証(特開2011-100549号公報)には、「プッシュスイッチ」に関して、図面(特に、図1及び図2参照。)とともに、次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 本発明は、例えば携帯電話機の操作ボタン等に好適なプッシュスイッチに関する。 【背景技術】 【0002】 携帯電話機等の電子機器では、小型化及び薄型化に伴って操作ボタンもサイズが小さくされてきた。従来、このような電子機器では、ドーム状のスイッチであるプッシュスイッチが多く採用されている。」 イ.「【0009】 また、本発明のプッシュスイッチは、前記上部突起部が、前記下部突起部よりも外径が大きいことを特徴とする。 すなわち、このプッシュスイッチでは、上部突起部が下部突起部よりも外径が大きいので、上面が広い上部突起部により大きな組み込みズレにも対応可能であると共に小さい下部突起部により確実に可動接点バネの頭頂部を押し下げることができ、組み込み時のズレ量の許容値を上げることができる。 【0010】 また、本発明のプッシュスイッチは、前記上部突起部が、円板状に形成されていることを特徴とする。 すなわち、このプッシュスイッチでは、上部突起部が、円板状に形成されているので、組み込みズレが生じても押し子との接触面である上面が平坦面であるため、押し下げる力が斜め方向に加わり難く、真下方向に加わることで、より良好なクリック感を得ることができる。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、以下の効果を奏する。 すなわち、本発明に係るプッシュスイッチによれば、支持シートの上面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、支持シートの下面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された下部突起部と、を備えているので、組み込みズレが生じても、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われ、動作寿命を向上させることができる。したがって、本発明のプッシュスイッチを備えた携帯電話機等の電子機器では、小型で薄型であると共に多少の組み込みズレが生じても良好かつ安定したスイッチ操作の操作キーを得ることができる。」 ウ.「【0014】 本実施形態におけるプッシュスイッチ1は、図1及び図2に示すように、上面に収納凹部2aを有する基板2と、収納凹部2a内の中央に設けられた中央接点3及び該中央接点3を挟んで収納凹部2aの内周縁側に設けられた一対の周辺接点4と、一対の周辺接点4上に架設され押圧によって弾性反転して下方の中央接点3に接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネ5と、収納凹部2aの開口部を閉塞して基板2上に接着された可撓性の支持シート6と、該支持シート6の上面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された上部突起部7と、支持シート6の下面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された下部突起部8と、を備えている。 【0015】 上記基板2は、樹脂板等で形成された絶縁性基板部9と、該絶縁性基板部9の上面に貼り付けられ収納凹部2aとなる円形孔が形成された接着シート10と、で構成されている。すなわち、接着シート10は、両面接着シートであり、この上に支持シート6が接着される。 上記中央接点3及び周辺接点4は、収納凹部2aの底面にパターン形成された銅箔等で形成されている。中央接点3は、収納凹部2aの底面中央に円形状に形成され、一対の周辺接点4は、収納凹部2aの底面周縁に矩形状又は円弧状に中央接点3を中心とした点対称の位置にそれぞれ形成されている。また、中央接点3及び周辺接点4は、基板2の下面又は側端面等に形成された図示しない端子電極に電気的に接続されている。 【0016】 上記可動接点バネ5は、下方に押圧されて所定の押圧力を超えると、節度感を伴って下方に向けて弾性反転する断面円弧状の板バネである。 上記支持シート6は、接着シート10上に円形孔を覆って貼り付けられている。 この支持シート6は、絶縁樹脂フィルムで形成された保護シートであって防水シートとしても機能しており、収納凹部2a内を密封状態としている。 【0017】 上記上部突起部7及び下部突起部8は、硬質な樹脂でそれぞれ円板状に形成されている。また、上部突起部7は、下部突起部8よりも外径が大きく設定されている。例えば、上部突起部7が、直径1mmとされ、下部突起部8が直径0.5mmとされる。また、例えば、上部突起部7の厚さは、0.15mmとされ、下部突起部8の厚さは、0.095mmとされる。」 エ.「【0022】 このように本実施形態のプッシュスイッチ1では、支持シート6の上面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された上部突起部7と、支持シート6の下面かつ可動接点バネ5の頭頂部の直上に形成された下部突起部8と、を備えているので、組み込みズレが生じても、上部突起部7が押し下げられると下部突起部8が常に可動接点バネ5の中心を押圧して弾性反転させることができる。したがって、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われると共に、動作寿命を向上させることができる。」 オ.「【0029】 例えば、上記実施形態では、上述したように、上部突起部が円板状であることが好ましいが、下部突起部は、例えば下方に突出したドーム状でも構わない。 また、上記実施形態では、絶縁性基板部に接着シートを貼り付けて接着シートの円形孔によって収納凹部を形成すると共に支持シートを接着シートに貼り付けているが、接着シートを用いず、絶縁性基板部自体に円形状の穴部(収納凹部)を形成して、支持シートを絶縁性基板部の上面に接着剤等で直接貼り付けても構わない。」 カ.上記記載事項オ.の「上記実施形態では、絶縁性基板部に接着シートを貼り付けて接着シートの円形孔によって収納凹部を形成すると共に支持シートを接着シートに貼り付けているが、接着シートを用いず、絶縁性基板部自体に円形状の穴部(収納凹部)を形成して、支持シートを絶縁性基板部の上面に接着剤等で直接貼り付けても構わない。」との記載から、図1の実施形態の変形例として、絶縁性基板部自体に収納凹部を形成する形態が理解できる。そして、当該形態では、収納凹部は、壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部からなることは明らかであり、また、図1の記載を合わせみれば、支持シート6は、上部突起部7の外縁から、絶縁性基板部の壁部の上面の接着された箇所に向けて傾斜していることが理解できる。 これらの記載事項、認定事項び図面の図示内容を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「電気的接続が行われる可動接点バネ5及び中央接点3と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内に前記可動接点バネ5及び中央接点3が配された絶縁性基板部と、 前記凹部を覆う支持シート6と、 前記支持シート6の下方に配された下部突起部8と、を備え、 前記支持シート6と前記絶縁性基板部の前記壁部の上面は、接着剤により接着されており、 前記支持シート6は、上部突起部7の外縁から、前記接着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ1。」 (2)甲第2号証 甲第2号証(特開2002-331587号公報)には、「フィルム接着方法」に関して、図面(特に、図1(a)、図1(b)参照。)とともに、次の事項が記載されている。 キ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フィルム接着方法に係わり、更に詳しくは電気部品等のプラスチック成形体へ絶縁や封止等を目的としたプラスチックフィルムを接着する際のフィルム接着方法に関する。」 ク.「【0009】また、接着剤による接着では、プラスチック成形体が小い場合又は接着部の面積が小さい場合、その接着部に通常は液状である接着剤を塗布することになるから技術的に難しく、また、化学反応を起こす接着剤の場合は反応時の発生ガスの問題があり、更に、有機溶剤からなる接着剤の場合は接着部が変形しない程度の適正な塗布量を設定することが困難である。」 ケ.「【0011】 【課題を解決するための手段】先ず、請求項1記載の第1の発明のフィルム接着方法は、プラスチック成形体に透明又は半透明のプラスチックフィルムを接着するフィルム接着方法であって、上記プラスチック成形体の一面に、上記プラスチックフィルムを載置し、レーザ光により上記プラスチックフィルムを透過して上記プラスチック成形体を照射することにより、該プラスチック成形体の上記レーザ光による照射部を溶融させ、この溶融部により上記プラスチックフィルムを接着するように構成される。」 コ.「【0016】同図(a)に示すプラスチック成形体1は、例えばサーモスタットのハウジングであり、内部にはバイメタルを利用して開閉するサーモスタットの固定接点2と可動接点3が収容されており、外部には接点端子4が引き出されている。このプラスチック成形体1全体の大きさは、縦20mm、横10mm、高さ5mm程度のものである。 【0017】尚、このようなプラスチック成形体1の材料としては、比較的溶融温度が高いABS、66ナイロン、PBT樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、液晶ポリマ等の樹脂材が好適である。さらに熱硬化性樹脂でもよく、その場合は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いてよい。通常的には、これらの樹脂材を射出成形によって所望の形状に成形する。 【0018】このプラスチック成形体1の薄い肉厚の端面5の上にプラスチックフィルム6を載置する。このプラスチックフィルム6の材料としては、レーザ光を吸収しない材料が選択される。例えば無色透明のポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリイミド、塩ビ等が挙げられる。勿論、使用されるレーザ光を吸収しない材料であれば無色透明と限ることなく、有色透明でもよく、また半透明であっても良い。」 サ.「【0020】この状態で、端面5に向けて垂直にレーザ光8を照射する。この照射光は押さえのガラス板7及びプラスチックフィルム6を透過して直接プラスチック成形体1の端面5に照射される。そして、レーザ光8は、その照射点9において端面5を加熱して溶融させる。このように端面5の照射点9を溶融させながら、その照射点9を、端面5に対し相対的に移動させ、例えば同図(b)に示すように端面5に設定されたパターン9aに沿って一周させる。 【0021】これにより、プラスチック成形体1の端面5がパターン9aに従って溶融してプラスチックフィルム6に融着し、再び固結する。これにより、プラスチックフィルム6がプラスチック成形体1に接着される。図1(b)にパターン9aで示す接合(接着)部分の幅は0.1~0.2mm程度と極めて狭い。したがって、接合部の面積がどのように小さなプラスチック成形体に対しても、おおむねプラスチックフィルム6の接着が可能である。そして、上述したように、接着面での溶融が発生して、この溶融により接着するので、確実な接着が行われる。 【0022】尚、図1(b)にパターン9aで示す接合部分の周囲には、加熱と溶融に伴う変質部11が観察されるが、この程度の変質は、プラスチック成形体1にもプラスチックフィルム6に対しても悪影響を与えることはない。すなわち、接着によるプラスチック成形体1あるいはプラスチックフィルム6の変形などの悪影響は殆どない。」 シ.上記記載事項サ.の段落【0020】の「端面5に向けて垂直にレーザ光8を照射する。この照射光は押さえのガラス板7及びプラスチックフィルム6を透過して直接プラスチック成形体1の端面5に照射される。そして、レーザ光8は、その照射点9において端面5を加熱して溶融させる。」との記載及び上記記載事項サ.の段落【0021】の「プラスチック成形体1の端面5がパターン9aに従って溶融してプラスチックフィルム6に融着し、再び固結する。これにより、プラスチックフィルム6がプラスチック成形体1に接着される。」との記載並びに図1(a)及び(b)の記載から、「プラスチックフィルム6とプラスチック成形体1の端面5は、レーザ光8の照射により少なくとも一部が線状に溶着されていること。」(以下、「刊行物2記載の技術事項1」という。)が分かる。 ス.上記記載事項サ.の段落【0020】の「端面5に向けて垂直にレーザ光8を照射する。この照射光は押さえのガラス板7及びプラスチックフィルム6を透過して直接プラスチック成形体1の端面5に照射される。そして、レーザ光8は、その照射点9において端面5を加熱して溶融させる。」との記載及び上記記載事項サ.の段落【0021】の「プラスチック成形体1の端面5がパターン9aに従って溶融してプラスチックフィルム6に融着し、再び固結する。これにより、プラスチックフィルム6がプラスチック成形体1に接着される。図1(b)にパターン9aで示す接合(接着)部分の幅は0.1~0.2mm程度と極めて狭い。」との記載並びに図1(a)及び(b)の記載から、「プラスチックフィルム6とプラスチック成形体1の端面5は、レーザ光8の照射により、端面5の内周より外側の位置で端面5の外周に沿って、0.1~0.2mm程度の幅で端面5の外周に沿って、プラスチック成形体1の凹部を全周に亘って囲むように溶着されていること。」(以下、「刊行物2記載の技術事項2」という。)が分かる。 4.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「可動接点バネ5及び中央接点3」は本件発明1における「スイッチ接点部」に相当し、以下同様に、「絶縁性基板部」は「ケース」に、「支持シート6」は「保護シート」に、「下部突起部8」は「押圧体」に、「プッシュスイッチ1」は「プッシュスイッチ」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「接着剤により接着されて」は、「接着されて」という限りにおいて、本件発明1における「レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されて」と共通する。 以上の点からみて、本件発明1と引用発明とは、 [一致点] 「電気的接続が行われるスイッチ接点部と、 壁部と前記壁部で囲まれた上方開口の凹部とを有し、前記凹部内にスイッチ接点部が配されたケースと、 前記凹部を覆う保護シートと、 前記保護シートの下方に配された押圧体と、を備え、 前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、接着されており、 前記保護シートは、前記接着された箇所に向けて傾斜しているプッシュスイッチ。」 である点で一致し、次の各点で相違する。 [相違点1] 本件発明1では、「前記保護シートと前記ケースの前記壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されて」いるのに対して、引用発明では、「前記支持シート6と前記絶縁性基板部の前記壁部の上面は、接着剤により接着されて」いる点。 [相違点2] 本件発明1では、前記保護シートは、「前記押圧体の外縁から、前記溶着された箇所に向けて」傾斜しているのに対して、引用発明では、前記支持シート6は、「上部突起部8の外縁から、前記接着された箇所に向けて」傾斜している点。 (イ)判断 まず、相違点1について検討する。 甲第2号証には、前記3.(2)シ.の刊行物2記載の技術事項1が記載されている。 本件発明1と刊行物2記載の技術事項1とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、刊行物2記載の技術事項1における「プラスチックフィルム6」は本件発明1における「保護シート」に相当し、以下同様に、「プラスチック成形体1」は「ケース」に、「端面5」は「壁部の上面」に、「レーザ光8の照射」は「レーザー照射」に、それぞれ相当するから、刊行物2記載の技術事項1は、「保護シートとケースの壁部の上面は、レーザー照射により少なくとも一部が線状に溶着されていること。」ということができる。 そして、引用発明と刊行物2記載の技術事項1とは、スイッチの小型化を課題としているから(甲第1号証の段落【0002】、甲第2号証の段落【0009】参照。)、引用発明に刊行物2記載の技術事項1を適用して、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。 次に、相違点2について検討する。 甲第1号証の段落【0009】の「上部突起部が下部突起部よりも外径が大きいので、上面が広い上部突起部により大きな組み込みズレにも対応可能である」との記載、及び段落【0011】の「支持シートの上面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、支持シートの下面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された下部突起部と、を備えている」との記載からみて、甲第1号証には、大きな組み込みズレにも対応可能とするために、支持シート6の上面に下部突起部8より外径の大きな上部突起部7を形成することが記載されているが、甲第1号証には、下部突起部8の外縁から支持シート6を傾斜させることについての記載や示唆はない。 また、甲第2号証にも下部突起部の外縁から支持シートを傾斜させることについての記載や示唆はない。 したがって、引用発明及び甲第2号証に基いて、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)まとめ 以上のとおり、本件発明1は、引用発明及び甲第2号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ.本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、引用発明及び甲第2号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)異議申立人の主張について 異議申立人は、平成29年4月28日付けの意見書の添付書類として、参考資料1(米国特許出願公開2011/0036696号明細書)、参考資料2(特開2006-216291号公報)及び参考資料3(特開2010-257601号公報)を提出し、平成29年4月28日付けの意見書の第7ページの下から7行ないし同4行において「本件特許発明1の『前記保護シートは、前記押圧体の外縁から、前記溶着(接着)された箇所に向けて傾斜している』との構成は、周知である。」旨を主張する。 しかしながら、参考資料1ないし3に記載された事項からは、保護シートは、押圧体の外縁から傾斜しているとはいえるが、保護シートは、保護シートが接着された箇所に向けて傾斜していることは図示されていない。 そして、そもそも、前記(1)ア.(イ)の相違点2についての当審の判断のとおり、甲第1号証には、大きな組み込みズレにも対応可能とするために、支持シート6の上面に下部突起部8より外径の大きな上部突起部7を形成することが記載されているから、引用発明に参考資料1ないし3に記載された事項を適用する動機付けはない。 また、仮に引用発明に参考資料1ないし3に記載された事項を適用しても、参考資料1ないし3に記載された事項は、前述のように、保護シートは、保護シートが接着された箇所に向けて傾斜しているものではないから、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とはならない。 したがって、異議申立人の主張を採用することはできない。 第4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700672

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    共通の審決分類: 841・H01H、854・H01H、855・H01H
  • 2024-700238異議申立 / 2025-06-04 / 請求成立(取消)保護素子
    共通の審決分類: 121・H01H、851・H01H
  • 2024-700266異議申立 / 2025-01-17 / 訂正認容保護素子
    共通の審決分類: 121・H01H、851・H01H
  • 2021-700413異議申立 / 2021-11-05 / 訂正認容回路基板の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01H、851・H01H

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