特許異議申立
2016-700602
有機性排水の生物処理方法および装置
- 審判番号
- 2016-700602
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-080504外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月07日
- 審決日
- 2017年05月31日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.121-YAA(C02F) / P1652.851-YAA(C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5862597号発明「有機性排水の生物処理方法および装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5862597号の明細書、及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1~7〕、8について訂正することを認める。
特許第5862597号の請求項1ないし5、8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5862597号は、平成25年4月8日を出願日とする出願であって、特許請求の範囲に記載された請求項1~8に係る発明について、平成28年1月 8日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1ないし5,8に係る特許について、特許異議申立人 松本紀子 により特許異議の申立てがされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 7月 7日 特許異議の申立て
同年10月31日付け 取消理由通知
同年12月21日 訂正の請求、意見書の提出
平成29年 2月15日 特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項(1)~(5)からなるものである(下線部は訂正箇所)。
(1)訂正事項1
請求項1に「第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と記載されているのを、「該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と訂正する。
(2)訂正事項2
請求項2に「第1好気槽の担体充填率が10%以下であり、第2好気槽の担体充填率が10%以上である」と記載されているのを、「第1好気槽の担体充填率が10%以下である」と訂正する。
(3)訂正事項3
請求項8に「第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と記載されているのを、「該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書【0008】に「第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と記載されているのを、「該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と訂正する。
(5)訂正事項5
明細書【0009】に 「第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への
負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と記載されているのを、「該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1,3
訂正事項1,3は、請求項1,8において、第2好気槽の担体充填率について何ら特定されていなかったところ、それぞれ「該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1,3は、本件明細書【0026】の「第2好気槽3では、添加する担体の充填率を10%以上、特に20%以上とりわけ20~40%とすることが望ましい。」と記載されていることを根拠とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1により、請求項1に「該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり」と特定されたことにより、訂正前の請求項2の「第2好気槽の担体充填率が10%以上である」という重複する記載を削除するための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項4,5
訂正事項4,5は、それぞれ訂正事項1,3に係る訂正に伴って特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項4,5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7は一群の請求項であるから、上記訂正事項1,2,4は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正を認める
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下、項番に従って、「本件発明1」~「本件発明8」とする。)は,次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
有機性排水を嫌気槽で嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程と、その後少なくとも2段の好気槽で好気性生物処理する好気性生物処理工程とを有し、
該好気性生物処理工程では、第1好気槽において好気性細菌により生物処理して分散性細菌を生成し、該第1好気槽からの分散性細菌を含む第1好気処理水を、担体を有した第2好気槽に導入し、該第2好気槽において、原生動物又は後生動物に該細菌を捕食させる有機性排水の生物処理方法において、
前記嫌気性生物処理工程では、前記好気性生物処理工程全体のCODcr容積負荷が10kg/m3/d以下、かつ溶解性CODcr容積負荷が5kg/m3/d以下となるように嫌気処理し、
該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり、
第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項2】
請求項1において、第1好気槽の担体充填率が10%以下であることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、第2好気槽の担体で優占化している微小動物がヒルガタワムシであることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記嫌気性生物処理工程が汚泥返送を行わない一過式処理であることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記第2好気槽からの第2好気処理水を凝集沈殿分離、凝集加圧浮上分離及び、膜分離の少なくとも1つによって固液分離処理することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記第1好気処理水中の溶存硫化水素濃度が50mg-S/L以下となるように第1好気槽で好気性処理することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記第1好気槽の、担体を含む槽内液をポンプで循環することで、担体に付着した菌体の一部を剥離することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項8】
有機性排水を嫌気性生物処理する嫌気槽と、該嫌気槽処理水を好気性細菌により生物処理して分散性細菌を生成させる第1好気槽と、該第1好気槽からの第1好気処理水に含まれる分散性細菌を原生動物又は後生動物に捕食させる第2好気槽とを備えた有機性排水の生物処理装置において、
好気性生物処理工程全体のCODcr容積負荷が10kg/m3/d以下、かつ溶解性CODcr容積負荷が5kg/m3/d以下となるように嫌気処理し、
該第2好気槽の担体充填率が10~40%であり、
第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~5,8に係る特許に対して、平成28年10月31日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
●特許法第29条第2項
請求項1~5,8に係る発明は、刊行物1~8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(以下、「取消理由」という)。
記
刊行物1:「流動床式高負荷好気性生物膜処理プロセス PABIO MO
VERの実績紹介」,神鋼パンテック技報,1999年3月,
Vol.42,No.2,p.101-107(甲第2号証)
刊行物2:「流動床式高負荷好気性生物膜処理プロセス PABIO MO
VERの実証」,神鋼パンテック技報,1997年9月,
Vol.41,No.1,p.18-28(甲第3号証)
刊行物3:特開2005-279551号公報(甲第4号証)
刊行物4:「初歩から学ぶ水処理技術」,株式会社工業調査会,1999年
9月6日,p.24-27 (甲第5号証)
刊行物5:「水質環境工学-下水の処理・処分・再利用-」,技報堂出版株
式会社,1993年3月31日,p.64-67(甲第6号証)
刊行物6:「嫌気性生物処理技術の特徴と発展の流れ」,エバラ時報,
2010年10月,No.229,p.27-38(甲第7号証
)
刊行物7:特開2012-206042号公報(甲第8号証)
刊行物8:特開2011-224544号公報(甲第9号証)
3 刊行物1~8の記載事項、及び刊行物1に記載された発明
刊行物1の「1.PABIO MOVERの概要」、及び「2.実績紹介」の欄をみると、刊行物1には、有機性廃水を嫌気性処理設備により嫌気性処理を行った後、微生物を付着させるための担体を備えた2槽のリアクターからなる好気性処理設備により好気性生物処理する、有機性処理廃水の処理に関して記載されていると認められる。
また、当該有機性処理排水の処理において、好気性処理設備の1槽の水処理容量が2000mm×3400mm×4500mmであり(第3表)、設計値として、廃水の流量が600m3/d(第1表)、流入原水のSSが100mg/l(第2表)、BODが264mg/l(第2表)、設備出口の処理水のSSが162mg/l(第2表)、BODが80mg/l(第2表)であって、BOD負荷が2.6kg/m3d(p.106,左欄5行)であることが記載されている。
これらのことから、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機性廃水を嫌気性処理設備で嫌気性処理する嫌気性処理工程と、その後2槽の好気性処理設備で好気性処理する好気性処理工程とを有し、
該好気性処理工程では、第1好気槽において微生物により生物処理し、該第1好気槽からの処理水を、担体を有した第2好気槽に導入し、該第2好気槽において微生物により生物処理する有機性排水の生物処理方法において、
前記嫌気性処理工程では、前記好気性処理工程全体のBOD負荷が2.6kg/m3dとなるように嫌気処理する、有機性廃水の生物処理方法。」
(2)刊行物2
刊行物2には、有機性廃水の好気性処理設備である「PAVIO MOVER」に関して記載され(p.19,左欄13行~30行,第1図,p.24,右欄3行~13行)、実証試験において担体充填率を33~67%としたことが記載されている(p.22,左欄3行~19行,第4図)。
(3)刊行物3
刊行物3には、有機性排水を第一生物処理工程に導入して非凝集性細菌により生物処理し、該第一生物処理工程からの非凝集性細菌を含む処理水を第二生物処理工程に導入して活性汚泥処理する生物処理方法に関して記載されている(請求項1,【0013】,【0018】~【0020】)。
(4)刊行物4
刊行物4には、ブドウ糖など有機物のBOD値、及びCODcr値に関して記載されている(p.26,13,14行,p.27,図1.2)。
(5)刊行物5
刊行物5には、典型的な未処理汚水のBOD/COD比は0.4から0.8にまで変動することが記載されている(p.67,4行)。
(6)刊行物6
刊行物6には、嫌気性生物処理であるUSAB法において、グラニュール汚泥の処理性能を維持するために、前段で原水中のSSを除去する必要があることが記載されている(p.33,左欄2行~p.34,左欄1行)。
(7)刊行物7
刊行物7には、 好気処理槽は、CODcr負荷0.5~2kg/m3・d、特に0.7~1.5kg/m3・d(BOD負荷0.3~1.5kg/m3・d、特に0.5~1kg/m3・d)となるようにするのが好ましいことが記載されている(請求項1,【0020】)。
(8)刊行物8
刊行物8には、二段以上の多段に設けられた好気性生物処理槽の第一生物処理槽に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を第二生物処理槽以降の生物処理槽に通水して生物処理する有機性排水の生物処理方法が記載されている(請求項1)。
そして、第一生物処理槽に添加する担体の充填率を10%以下、望ましくは5%以下とすること(【0030】)、第二生物処理槽では、微小動物を維持するための多量の足場が必要となることから、添加する担体の充填率は0.5~40%とすることが望ましいこと(【0034】)、及び第二生物処理槽内の汚泥フロック、担体には固着性の濾過捕食型微小動物(ツリガネムシ、ヒルガタワムシ)が優先化すること(【0053】)などが記載されている。
4 取消理由についての判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、以下の点で相違していると認められる。
相違点1:本件発明1は、第1好気槽において好気性細菌により生物処理して分散性細菌を生成し、該第1好気槽からの分散性細菌を含む第1好気処理水を第2好気槽に導入し、該第2好気槽において、原生動物又は後生動物に該細菌を捕食させることが特定されているのに対し、引用発明は、そのような処理が行われているのかどうかは明らかでない点。
相違点2:本件発明1は、嫌気性生物処理工程では、前記好気性生物処理工程全体のCODcr容積負荷が10kg/m3/d以下、かつ溶解性CODcr容積負荷が5kg/m3/d以下となるように嫌気処理することが特定されているのに対し、引用発明は、好気性処理工程全体のBOD負荷が2.6kg/m3dとなるように嫌気処理するものである点。
相違点3:本件発明1は、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理することが特定されているのに対し、引用発明は、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷は明らかでない点。
ここで、相違点3について検討する。
刊行物1では、第2好気処理槽に流入する第1好気処理水のSS濃度は記載されていないから、下記ア、イの仮定のもとに、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷(以下、「担体負荷」ともいう。)を計算すると、以下のとおりである。
ア 第1好気槽において嫌気処理水SSが分解せず、BODが全て分解すると仮定した場合
刊行物1では、SSが100mg/l、BODが264mg/lの流量600m3/dの廃水を2槽で好気性処理し、処理水をSSを162mg/l、BODを80mg/lとする設計値が記載されているから、
当該好気性処理におけるBOD-SS転換率は、
(162-100)mg/l ÷(264-80)mg/l=0.337kg-SS/kg-BOD
となる。
ここで、1槽の処理水容量は、2m×3.4m×4.5m =30.6m3である。
そして、第1好気槽で原水中のBODが全て分解するとして、以下の計算を行う。
・嫌気処理水のSS濃度
100mg/l × 600m3/d ÷ 1000 = 60kg-SS/d
・嫌気処理水のBODに由来するSS
(264mg-0mg)/l × 600m3/d ÷ 1000 × 0.377 = 53.4kg-SS/d
そして、第2好気槽の担体充填率は、刊行物2を参照すると、33~67%の範囲であるといえるから、これを用いて第2好気槽の担体負荷を計算する。
・第2好気槽の担体負荷
○担体の充填率が67%の場合
(60 + 53.4)kg-SS/d ÷ (30.6m3 × 67%)= 5.5kg-SS/m3 -担体/d
○担体の充填率が33%の場合
(60 + 53.4)kg-SS/d ÷ (30.6m3 × 33%)= 11kg-SS/m3 -担体/d
そうすると、アの条件のもとでは、引用発明における第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷は、相違点3に係る本件発明1の担体への負荷の値の範囲内、すなわち、15kg-SS/m3-担体/d以下であるといえる。
なお、刊行物1の表4に示された運転データでは、流量が記載されておらず、また、第2好気槽から流出するSS濃度も記載されていないため、第2好気槽の担体負荷を導出できない。
イ 第1好気槽において嫌気処理水SSが分解され、BODが90%除去されると仮定した場合
本願実施例のように、嫌気処理水SS160mg/Lが、第1好気処理水SS264mg/Lに変換されるものであり、第1好気処理において、嫌気処理由来のSSがほとんど消費されず、 第2好気処理において、嫌気処理由来SSも好気処理水由来SSもいずれも同様に微小動物に捕食されると仮定すると、第2好気処理において、嫌気処理由来SSは、160/264倍だけ減少することになる。
そうすると、好気処理水における嫌気処理由来SSは、
100mg/L × (160/264) = 61mg/L
となるから、BOD-SS転換率を計算すると、
(162-61)mg/L ÷ (264-80) = 0.55kg-SS/kg-BOD
となる。
次に、第1好気槽と第2好気槽の容積が同じである場合、第1好気槽のみでは2倍の高負荷処理となることから、第1好気槽の汚泥転換率が2倍になると仮定すると、好気性処理におけるBOD-SS転換率は、
0.55kg-SS/kg-BOD × 2 = 1.1 kg-SS/kg-BOD
そして、第1好気槽でのBOD除去率を90%とすると、
・嫌気処理水のBODに由来するSS
(264-264×10%)mg × 600m3/d ÷ 1000 × 1.1 = 157kg-SS/d
第2好気槽の担体充填率33~67%の範囲において、担体の充填率33%、及び40%の場合の担体負荷を計算すると、
・第2好気槽の担体負荷
○担体の充填率が40%の場合
(60 + 157)kg-SS/d ÷ (30.6m3 × 40%)= 17.7kg-SS/m3 -担体/d
○担体の充填率が33%の場合
(60 + 157)kg-SS/d ÷ (30.6m3 × 33%)= 21.4kg-SS/m3 -担体/d
そうすると、イの条件のもとでは、引用発明における第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷は、相違点3に係る本件発明1の担体への負荷の値と一致しない。
以上のことから、上記ア、イのように、刊行物1において、担体負荷を計算するために仮定する条件によって算出される担体負荷は異なり、本件発明1の担体負荷を一義的に導出できない。そして、アの仮定が刊行物1において妥当することが明らかと認めるに足りる根拠があるともいえない。
よって、刊行物1,2の記載に基いて、上記相違点3に係る担体負荷を導出することができるとはいえず、また、刊行物3~8を参照したとしても、当該担体負荷を設定することを、当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は,引用発明及び各刊行物に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、取消理由に採用しなかった特許異議申立の証拠である、甲第1号証 (「食品工場排水の最適処理ハンドブック」,2002年4月30日,p.126,127)には、有機性排水を嫌気槽で嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程と、2段の好気槽で好気性生物処理工程とを有する有機性排水の生物処理方法について記載されているが、上記各刊行物と同様に、上記甲第1号証の記載を参照したとしても、上記相違点3に係る担体負荷について一義的に導出することはできない。
(2)本件発明2~5について
本件発明1が、引用発明及び各引用文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1を特定するための事項をすべて含む本件発明2~5についても、同様に、引用発明及び各刊行物に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1の「有機性排水の生物処理方法」に対応する「有機性排水の生物処理装置」であって、本件発明1と共通する「第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/d以下となるように第1好気槽で好気性処理する」ことを特定しているものである。
そうすると、本件発明8も、本件発明1と同様に、引用発明及び各刊行物に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたのであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、本件請求項1~5,8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5,8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700602