特許異議申立
2016-700507
ヒータおよびこれを備えたグロープラグ
- 審判番号
- 2016-700507
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-141915外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月02日
- 審決日
- 2017年01月04日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.113-YAA(H05B) / P1652.121-YAA(H05B) / P1652.536-YAA(H05B) / P1652.537-YAA(H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5829443号発明「ヒータおよびこれを備えたグロープラグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5829443号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。
特許第5829443号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5829443号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年10月30日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 平林恭子 より請求項1に対して特許異議の申立てがなされ、平成28年8月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成28年10月28日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、その後指定期間内に特許異議申立人より平成28年12月5日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
絶縁基体と、
該絶縁基体に埋設され、折返し形状をなしている抵抗体と、
前記絶縁基体に埋設され、先端側で前記抵抗体に接続されるとともに後端側で前記絶縁基体の表面に導出された一対のリードとを備えたヒータであって、
前記抵抗体と前記一対のリードとは軸方向に垂直な方向に重なって接続されていて、
前記抵抗体と前記一対のリードとの二つの境界面を通り前記リードの軸に垂直な断面を見たときに、前記二つの境界面である二つの境界線が、一方が他方に対して傾いていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記二つの境界面が全域にわたって平面であることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記一対のリードのそれぞれの軸の両方を含む平面に垂直な断面で見たときに、前記抵抗体と前記一対のリードとの境界線の傾きが先端側から後端側に向かって徐々に変化していることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のヒータと、前記一対のリードのうちの一方のリードと電気的に接続されて前記ヒータを保持する金属製保持部材とを備えたことを特徴
とするグロープラグ。」
2 平成28年10月28日付け訂正請求の訂正の内容
特許権者は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし4について、以下のとおり、特許請求の範囲の請求項1を減縮するとの訂正を請求する(以下、「訂正事項」という。また、下線部が訂正部分である。)。
「【請求項1】
絶縁基体と、
該絶縁基体に埋設され、折返し形状をなしている抵抗体と、
前記絶縁基体に埋設され、先端側で前記抵抗体に接続されるとともに後端側で前記絶縁基体の表面に導出された一対のリードとを備えたヒータであって、
前記抵抗体と前記一対のリードとは軸方向に垂直な方向に重なって接続されていて、
前記抵抗体と前記一対のリードとの二つの境界面を通り前記リードの軸に垂直な断面を見たときに、前記二つの境界面である二つの境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記二つの境界面が全域にわたって平面であることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記一対のリードのそれぞれの軸の両方を含む平面に垂直な断面で見たときに、前記抵抗体と前記一対のリードとの境界線の傾きが先端側から後端側に向かって徐々に変化していることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のヒータと、前記一対のリードのうちの一方のリードと電気的に接続されて前記ヒータを保持する金属製保持部材とを備えたことを特徴とするグロープラグ。」
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
上記訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
また、上記訂正請求は一群の請求項1ないし4について請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定についても適合するものである。
そして、以下の「第3」にて述べるとおり、本件特許の上記訂正後の請求項1に係る発明はその特許を取り消す理由がなく、本件特許の上記訂正後の請求項1を引用する請求項2ないし4に係る発明についてもその特許を取り消す理由がないので、特許異議の申立てがされていない請求項2ないし4についての、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定についても適合するものである。
4 むすび
したがって、上記訂正請求による訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。
第3 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 本件特許第5829443号の請求項1に係る発明
本件特許の請求項1に係る発明は、上記訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 平成28年8月30日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許の請求項1に係る発明(以下「特許発明1」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3) 特許異議申立書の甲号証及び記載事項等
1) 特許異議申立書の甲号証
甲第1号証: 国際公開第2008/105327号
2) 特許異議申立書の甲号証の記載事項等
甲第1号証には以下の事項が記載されている。
・「一般的に、セラミックヒータは、発熱抵抗体と給電用のリードとがセラミック基体の内部に配置された構造を有している。このようなセラミックヒータは、発熱抵抗体とリードとを別々に成形し、両者を部分的に重ねてセラミック基体と共に焼成することにより作製される。」([0002])
・「しかしながら、セラミックヒータを作製する際、発熱抵抗体3とリード5とが大きく位置ずれしたり、これらに応力が印加されることによって、図11A及び図11Bに示すように、発熱抵抗体3に突出部3cが形成されることがある。このような突出部3cが鋭角なクサビ形状である場合、この突出部を起点としたクラック等がリード及びセラミック基体に生じる可能性があった。」([0003])
・「本発明のセラミックヒータは、発熱抵抗体と、該発熱抵抗体に電力を供給するためのリードと、前記発熱抵抗体及び前記リードが埋設されたセラミック基体とを備えている。前記発熱抵抗体は、前記リードに接続される部分であって前記リードよりも幅が小さい接続部と、該接続部以外の部分である主要発熱部とを備えている。また、前記リードは、前記接続部が接続される端部に、前記リードの長手方向の一方及び厚み方向の一方のみに開口する凹部を備えている。そして、前記接続部の少なくとも一部が前記凹部内に位置している。」([0005])
・「図1~図3に示すように、第1の実施形態にかかるセラミックヒータ1(以下、ヒータ1ともいう)は、発熱抵抗体3と、発熱抵抗体3に電力を供給するためのリード5と、発熱抵抗体3及びリード5が埋設されたセラミック基体7とを備えている。発熱抵抗体3は、リード5に接続される部分であってリード5よりも幅が小さい接続部3aと、接続部3a以外の部分である主要発熱部3bとを備えている。また、リード5の接続部3aが接続される端部には、リード5の長手方向の一方及び厚み方向の一方のみに開口する凹部9が備えられている。そして、接続部3aの少なくとも一部が凹部9内に位置している」([0008])
・「本実施形態のヒータ1は、リード5が長手方向の一方及び厚み方向の一方のみに開口する凹部9を備え、接続部3aの少なくとも一部が凹部9内に位置している。これにより、発熱抵抗体3とリード5とが接続する部分において、発熱抵抗体3に突出部が形成されることが抑制される。結果として、焼成時及び/又は使用時のような急速な昇降温時においても、発熱抵抗体3とリード5の接続部分の近傍に熱応力が集中することが抑制されるので、上記のようなクラックの発生が抑制される。」([0011])
・「発熱抵抗体3はリード5を介して陽極側電極13及び陰極側電極11と電気的に接続されている。さらに、陽極側電極13及び陰極側電極11を介して外部電源(不図示)と接続される。そして、外部電源から電圧を印加することによって発熱抵抗体3で発熱させることができる。」([0012])
・「セラミック基体7としては、例えば、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、炭化物セラミックスのような絶縁性を備えたセラミックスを用いることができる。・・・」([0032])
・「図5に示すように、本実施形態の接続部3aは、長手方向に対して垂直な断面において台形の形状である。そして、接続部3aの上記断面が台形であることにより、第1の実施形態と比較して、発熱抵抗体3及びリード5にクラックが発生する可能性をさらに小さくできる。これは、下記の理由によるものである。」([0035])
・「図6に示すように、本実施形態の凹部9は、幅方向に対して垂直な方向の断面において、表面が曲面形状である。言い換えれば、接続部3aの表面のうち凹部9と接続する部分の表面が曲面形状である。これにより、第1の実施形態と比較して接続部3aの一部に熱応力が集中することが抑制されるので、接続部3a及び凹部9にクラックが生じる可能性を小さくできる。」([0038])
・「特に、図7A及び図7Bに示すように、長手方向に垂直な断面における凹部9の表面形状が、略円弧状であることがより好ましい。これにより、熱応力をほぼ均等に分散させることができるので、接続部3aの一部に熱応力が集中することがさらに抑制される。結果として、接続部3a及び凹部9にクラックが生じることをより抑制できる。」([0039])
・「[図1]本発明の第1の実施形態にかかるセラミックヒータの厚み方向に対して垂直な方向の断面図である。
[図2A]図1に示す実施形態のリードの長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
[図2B]図2Aに示す断面図における接続部及びリードの拡大断面図である。
[図3]図1に示す実施形態の幅方向に対して垂直な方向の断面図である。
・・・
[図5]本発明の第2の実施形態にかかるセラミックヒータの、長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
[図6]本発明の第3の実施形態にかかるセラミックヒータの、長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
[図7A]図6に示す実施形態の変形例であって発熱抵抗体の、長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
[図7B] 図7Aに示す断面図における接続部及びリードの拡大断面図である。
・・・」([0094])
・図1にはセラミックヒータの厚み方向に対して垂直な方向の断面図が示されており、発熱抵抗体3はその主要発熱部3bにおいて折返し形状をなしていること、および一対のリード5はその先端側で前記発熱抵抗体3の接続部3aに接続されるとともにその後端側でそれぞれ陰極側電極11および陽極側電極13を介してセラミック基体7の表面に導出されていることが示されており、また、図2A、図5、図6及び図7Aにはセラミックヒータの、長手方向に対して垂直な方向の断面図が示されており、発熱抵抗体3と一対のリード5とは接続部3aと凹部9との部分において軸方向に垂直な方向に重なって接続されていること、および2つの接続部3aと2つの凹部9との境界がなす長手方向に対して垂直な断面における境界線が同じ形状・配置であることも示されている。
これらの事項を総合すると、甲第1号証には、以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。
「絶縁性を備えたセラミック基体7と、
該絶縁性を備えたセラミック基体7に埋設され、折返し形状をなしている発熱抵抗体3と、
前記絶縁性を備えたセラミック基体7に埋設され、先端側で前記発熱抵抗体3の接続部3aに接続されるとともに後端側でそれぞれ陰極側電極11および陽極側電極13を介して絶縁性を備えたセラミック基体7の表面に導出された一対のリード5とを備えたセラミックヒータ1であって、
前記発熱抵抗体3と前記一対のリード5とは軸方向に垂直な方向に重なって接続されていて、
2つの接続部3aと2つの凹部9との2つの境界がなす長手方向に対して垂直な断面における2つの境界線がそれぞれ同じ形状・配置であるセラミックヒータ1。」
(4) 対比・判断
特許発明1と甲1発明とを対比すると、用語の意味内容や機能・構造からして、甲1発明の「絶縁性を備えたセラミック基体7」は特許発明1の「絶縁基体」に相当し、以下同様に、「熱抵抗体3」及び「接続部3a」は「抵抗体」に、「リード5」及び「凹部9」は「リード」に、「セラミックヒータ1」は「ヒータ」に、それぞれ相当している。
また、甲1発明の一対のリード5が「先端側で前記発熱抵抗体3の接続部3aに接続されるとともに後端側でそれぞれ陰極側電極11および陽極側電極13を介して絶縁性を備えたセラミック基体7の表面に導出された」態様は特許発明1の一対のリードが「先端側で前記抵抗体に接続されるとともに後端側で絶縁基体の表面に導出された」態様に相当している。
そうすると、両者は
「絶縁基体と、
該絶縁基体に埋設され、折返し形状をなしている抵抗体と、
前記絶縁基体に埋設され、先端側で前記抵抗体に接続されるとともに後端側で前記絶縁基体の表面に導出された一対のリードとを備えたヒータであって、
前記抵抗体と前記一対のリードとは軸方向に垂直な方向に重なって接続されているヒータ。」
で一致し、以下の点で相違している。
[相違点] 特許発明1では「前記抵抗体と前記一対のリードとの二つの境界面を通り前記リードの軸に垂直な断面を見たときに、前記二つの境界面である二つの境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」のに対し、甲1発明では「2つの接続部3aと2つの凹部9との2つの境界がなす長手方向に対して垂直な断面における2つの境界線がそれぞれ同じ形状・配置である」点。
上記相違点について検討する。甲1発明の「2つの接続部3aと2つの凹部9との2つの境界」は、凹部9が「長手方向の一方及び厚み方向の一方のみに開口する凹部」([0011])であるから、2つの境界面をなしているといえる。したがって、甲1発明の「2つの接続部3aと2つの凹部9との2つの境界がなす長手方向に対して垂直な断面における2つの境界線」は、特許発明1の「前記抵抗体と前記一対のリードとの二つの境界面を通り前記リードの軸に垂直な断面を見たときに、前記二つの境界面である二つの境界線」に相当している。そうすると、上記相違点は、特許発明1では「境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」のに対し、甲1発明では「境界線がそれぞれ同じ形状・配置である」点であると言い換えられる。
ここで、特許発明1において、境界線が直線であるとか曲線であるとか、どのような形態であるか特定されていないことを考慮しても、甲1発明の「境界線がそれぞれ同じ形状・配置である」態様は、特許発明1の「境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」態様と明らかに相違する。そうすると、特許発明1は、甲1発明であるとはいえない。
なお、本件特許異議申立人は、平成28年12月5日付け意見書において、特許発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明(甲1発明)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである旨、及び、特許請求の範囲の請求項1に記載された「二つの境界面である二つの境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」点について、「二つの境界線の形状が同一である場合」と「二つの境界線の形状が異なっている場合」が考えられるところ、本件特許明細書には、「二つの境界線の形状が異なっている場合において、一方の全体が他方の全体に対して傾いているか否かを判断する方法」が記載されておらず、当業者はどのように実施するかを理解できないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を取り消すべきものである旨、主張している。
しかしながら、甲1発明は「2つの接続部3aと2つの凹部9との2つの境界がなす長手方向に対して垂直な断面における2つの境界線がそれぞれ同じ形状・配置である」ところ、甲第1号証に記載されているように「クラック等がリード及びセラミック基体に生じる可能性」([0003])を小さくする([0011]、[0035]、[0038]及び[0039])ものであって、「境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」か否かといった技術思想を備えるものではないから、「境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」ようにすることに動機付けがあるとはいえないし、たとえ製造誤差の範囲で僅かに傾くことがあるとしても本来的に傾いているとはいえない。したがって、甲1発明をして上記相違点に係る特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。また、本件特許明細書の【0019】ないし【0032】には図1及び図2を参照して特許発明1の実施例が記載されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
したがって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
1) 理由1(特許法第29条第2項)
請求項1に係る特許は、甲第1号証に記載された発明に基き、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである。
2) 理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1の「二つの境界面である二つの境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」という記載は、請求項3に係る「一対のリードのそれぞれの軸の両方を含む平面に垂直な断面で見たときに、抵抗体と一対のリードとの境界線の傾きが先端側から後端側に向かって徐々に変化している」態様を含むので、一対のリードのそれぞれの軸の両方を含む平面ヒータの軸方向に順次見ていくと、図5に記載のような「お互いの境界面が平行な平面を有する」構成も含んでいるから、明確でない。
3) 理由3(特許法第36条第4項第1号)
請求項1の「二つの境界面である二つの境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」という記載について、境界線は少なくとも直線である場合と、曲線である場合が考えられるところ、発明の詳細な説明には境界線が曲線である構成が記載されておらず、当業者は、境界線を曲線にして実施しようとした場合にどのように実施するかを理解できず、発明の詳細な説明は請求項1に係る発明を、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
4) 理由4(特許法第36条第6項第1号)
特許請求の範囲にはクロストーク現象の発生を決定づける因子である二つの境界面間の距離が全く特定されておらず、クロストーク現象の発生条件がサポートされていない。
(2) 上記特許異議申立理由についての判断
1) 理由1(特許法第29条第2項)について
上記「1 (4)」の「なお書き」にて、上記[相違点]について検討したとおり、甲1発明をして上記相違点に係る特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、特許発明1は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2) 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1の「二つの境界面である二つの境界線が、一方の全体が他方の全体に対して傾いている」という記載について、請求項3に係る「一対のリードのそれぞれの軸の両方を含む平面に垂直な断面で見たときに、抵抗体と一対のリードとの境界線の傾きが先端側から後端側に向かって徐々に変化している」を含むとしても、一対のリードのそれぞれの軸の両方を含む平面ヒータの軸方向に順次見ていくと、図5に記載のような「お互いの境界面が平行な平面を有する」構成は、そもそも請求項1で特定しているとおり、排除されている。よって、上記記載が明確でないとはいえない。
3) 理由3(特許法第36条第4項第1号)について
請求項1の「境界線」は少なくとも直線である場合と、曲線である場合が考えられるところ、発明の詳細な説明には境界線が直線である実施例が、例えば本件特許明細書の【0019】ないし【0032】には図1及び図2を参照して特許発明1の実施例が記載されているから、発明の詳細な説明は請求項1に係る発明を、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
4) 理由4(特許法第36条第6項第1号)について
請求項1にはクロストーク現象の発生を決定づける因子である二つの境界面間の距離が全く特定されていないものの、クロストーク現象の発生を前提とした解決手段が請求項1に特定されているといえるから、二つの境界面間の距離に係るクロストーク現象の発生条件が特定されていないことをもって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に特許発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700507