特許異議申立
2016-700095
粘着剤および粘着シート
- 審判番号
- 2016-700095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-079021外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月05日
- 審決日
- 2017年04月25日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5758673号発明「粘着剤および粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5758673号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第5758673号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨
1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第5758673号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2011-79021号、以下「本願」という。)は、平成23年3月31日に出願人リンテック株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりなされた特許出願であり、平成27年6月12日に特許権の設定登録がなされたものである。
2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成28年2月5日付けで異議申立人清水すみ子(以下「申立人」という。)により「特許第5758673号の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された発明についての特許を取消すべきである。」という趣旨の本件異議申立がなされた。
3.以降の経緯
以降の本件異議申立事件に係る経緯は以下のとおりである。
平成28年 6月 1日付け 取消理由通知
平成28年 7月15日 面接(特許権者)
平成28年 7月22日付け 期間延長請求書
(受理日:同年7月25日)
平成28年 7月27日付け 通知書(特許権者あて・延長許可)
平成28年 9月 1日 意見書・訂正請求書
平成28年 9月12日付け 通知書(申立人あて)
平成28年10月14日付け 意見書
(受理日:同年10月17日)
平成28年12月15日付け 審尋(特許権者あて)
平成29年 2月20日 回答書
第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第5号証を提示し、取消理由として、概略、以下の(1)ないし(4)が存するとしている。
(1)本件発明1ないし7は、いずれも、甲第1号証ないし甲第5号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
(2)本件発明1ないし8は、いずれも、甲第1号証ないし甲第5号証のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)
(3)本件特許の請求項1に関して、同項の記載が不備であり、請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8の各記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1ないし8に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由3」という。)
(4)本件特許の請求項1に関して、同項に係る発明が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえず、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由4」という。)
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2007-126559号公報
甲第2号証:特開2000-109771号公報
甲第3号証:特表2009-507255号公報
甲第4号証:特開2008-285221号公報
甲第5号証:特開平10-306267号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲5」と略していう。)
第3 平成28年9月1日付け訂正請求の適否について
1.訂正請求の内容
平成28年9月1日付けの訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「溶液重合法により得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体」
とあるのを、
「溶液重合物である(メタ)アクリル酸エステル重合体」
と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「ゲル分率が45~90%」
とあるのを、
「ゲル分率が55~90%」
と訂正する。
2.一群の請求項について
上記訂正前の特許請求の範囲において、請求項2ないし8はいずれも請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定された「一群の請求項」であり、上記訂正事項1及び2を含む上記訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであって、特許法第120条の5第4項の規定を満たすものである。
3.訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無について
(1)訂正事項1
上記訂正事項1は、訂正前の「溶液重合法により得られた」という物の製造方法による記載を、物の種別を表す「溶液重合物である」との表現に訂正し、単に明確化を図ったものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項1による訂正は、単に表現ぶりを訂正したものであるから、新たな技術的事項を導入するものでもなく、請求項1に係る特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもないことが明らかであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものと認められる。
(2)訂正事項2
上記訂正事項2は、ゲル分率の範囲につき、下限値を上げることにより、その範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項2による訂正は、ゲル分率の範囲を減縮し、もって特許請求の範囲を実質的に減縮するものであるから、新たな技術的事項を導入するものでもなく、請求項1に係る特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもないことが明らかであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものと認められる。
(3)小括
以上のとおり、上記訂正事項1及び2を含む上記訂正請求に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定する目的要件を満たすものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。
4.訂正に係るまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正請求に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定する目的要件を満たすものであり、同法同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定を満たすものであるから、当該訂正は適法なものである。
第4 本件特許請求の範囲に記載された事項
上記第3のとおり、上記訂正請求は適法であり、訂正後の本件特許請求の範囲の請求項1ないし8には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
溶液重合物である(メタ)アクリル酸エステル重合体および架橋剤を含有する粘着性組成物を架橋した粘着剤であって、
ゲル分率が55~90%であり、
ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が100万~250万である
ことを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
重量平均分子量が60万~250万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、
重量平均分子量が8000~30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を架橋してなる成分と
を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5~50質量部であることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤。
【請求項4】
架橋前の前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、構成成分として、反応性の官能基含有モノマーを1質量%超、50質量%未満含有することを特徴とする請求項2または3に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、前記反応性の官能基と反応可能な架橋性基を有する架橋剤(C)との反応によって架橋されたことを特徴とする請求項4に記載の粘着剤。
【請求項6】
基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤からなることを特徴とする粘着シート。
【請求項7】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。」
(以下、上記請求項1ないし8に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)
第5 当審の判断
当審は、
訂正された本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る記載及び同各項に記載された事項で特定される本件発明1ないし8については、上記取消理由1ないし4につきいずれも理由がないから、本件発明1ないし8についての特許はいずれも取り消すことができないもの、
と判断する。
以下、詳述する。
I.取消理由1及び2について
1.各甲号証の記載事項及び記載された発明
上記取消理由1及び2は、いずれも本件特許が特許法第29条に違反してされたものであることに基づくものであるから、当該理由につき検討するにあたり、申立人が提示した甲1ないし5に記載された事項の摘示及び当該事項に基づく甲1ないし5に係る各引用発明の認定をそれぞれ行う。なお、以下の摘示における下線は、当審が付した。
(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア.甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)に由来する構造単位(構造単位(a))を主成分とし、下記単量体(b)に由来する構造単位(構造単位(b))を0.1~10mol%含有し、任意成分として下記単量体(c)を0.01mol%以下含有してもよい重量平均分子量50,000~500,000であるアクリル樹脂(1)と、
構造単位(a)を主成分とし、構造単位(c)を0.5~8mol%含有し、構造単位(b)を含有していてもよく、重量平均分子量が1,000,000~1,500,000であるアクリル樹脂(2)とからなり、
アクリル樹脂(1)及び(2)の合計100重量部に対し、アクリル樹脂(1)を10~50重量部含有するアクリル樹脂組成物において、
アクリル樹脂(1)に含まれる構造単位(b)に由来する水酸基濃度[b]と、アクリル樹脂(2)に含まれる構造単位(b)に由来する水酸基濃度[b’]と、アクリル樹脂(2)に含まれる構造単位(c)に由来する極性官能基濃度[c]との関係が式(I)を充足することを特徴とするアクリル樹脂組成物。
(a):下記式(A)で表される(メタ)アクリル酸エステル
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数1~14のアルキル基またはアラルキル基を表す。R2のアルキル基の水素原子またはアラルキル基の水素原子は炭素数1~10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。)
(b):少なくとも1つの水酸基と一つのオレフィン性二重結合を分子内に含有する単量体
(c):カルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一つの極性官能基と、一つのオレフィン性二重結合を分子内に含有する単量体
【請求項2】
アクリル樹脂(2)に含まれる構造単位(c)に由来する極性官能基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂組成物と架橋剤とを配合してなる粘着剤。
【請求項4】
架橋剤がイソシアネート系架橋剤であること特徴とする請求項3に記載の粘着剤。
【請求項5】
架橋剤が、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートにポリオールを反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートを2量体化したもの、及びトリレンジイソシアネートを3量体化したものからなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤であることを特徴とする請求項3又は4に記載の粘着剤。
【請求項6】
さらにシラン化合物を含有することを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項7】
光学フィルムの両面または片面に請求項3~6のいずれかに記載の粘着剤を積層してなる粘着剤付光学フィルム。
【請求項8】
光学フィルムが、偏光フィルム及び/又は位相差フィルムであることを特徴とする請求項7に記載の粘着剤付光学フィルム。
【請求項9】
光学フィルムが、さらにアセチルセルロース系フィルムを保護フィルムとして貼着してなる光学フィルムであることを特徴とする請求項7又は8に記載の粘着剤付光学フィルム。
【請求項10】
粘着剤付光学フィルムの粘着剤層に、さらに剥離フィルムを積層してなる請求項7~9のいずれかに記載の粘着剤付光学フィルム。
【請求項11】
請求項7~9のいずれかに記載の粘着剤付光学フィルムの粘着剤層にガラス基材を積層してなる光学積層体。
【請求項12】
請求項10に記載の粘着剤付光学フィルムから剥離フィルムを剥離したのち、剥離して得られた粘着剤層にガラス基材を積層してなる光学積層体。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の光学積層体から粘着剤付光学フィルムを剥離したのち、剥離して得られたガラス基材に、粘着剤付光学フィルムを再び積層してなる光学積層体。」
(1b)
「【0034】
本発明に用いられるアクリル樹脂(1)の製造方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法などが挙げられる。
また、アクリル樹脂(1)の製造において、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤はアクリル樹脂(1)の製造に用いられる全ての単量体の合計100重量部に対して0.1~5重量部程度、使用される。
・・(中略)・・
【0036】
アクリル樹脂(1)の製造方法としては、中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法の具体例としては、所望の単量体及び有機溶媒を混合して単量体の濃度を20重量%以上、好ましくは30~60重量%の混合液に調製したのち、窒素雰囲気下にて、重合開始剤を添加して、40~90℃程度、好ましくは60~80℃程度にて3~10時間程度攪拌する方法などが挙げられる。また、反応を制御するために、用いる単量体や重合開始剤を重合中に添加したり、有機溶媒に溶解したのち添加してもよい。
ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。
【0037】
かくして得られるアクリル樹脂(1)の分子量としては、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)の標準ポリスチレン換算による重量平均分子量が、通常、50,000~500,000である。重量平均分子量が50,000以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間の浮き、剥れが低下する傾向があり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、重量平均分子量が500,000以下であると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜け、色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0038】
本発明に用いられるアクリル樹脂(2)の製造方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法などが挙げられ、中でも、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法の具体例としては、所望の単量体及び有機溶媒を混合して単量体の濃度を40重量%以上、好ましくは50~60重量%の混合液に調製したのち、窒素雰囲気下にて、重合開始剤を0.001~0.2重量部程度添加し、40~90℃程度、好ましくは50~70℃程度にて8時間以上、好ましくは、10~12時間程度攪拌する方法などが挙げられる。
アクリル樹脂(2)で用いられる重合開始剤は、アクリル樹脂(1)で用いられたものと同様の重合開始剤が用いられる。また、有機溶媒としては、アクリル樹脂(1)で用いられたものと同様の有機溶媒が用いられる。
【0039】
かくして得られるアクリル樹脂(2)の分子量としては、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)の標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)が、1,000,000~1,500,000である。重量平均分子量が1,000,000以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着剤層との間の浮き、剥れが低下する傾向があり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。重量平均分子量が1,500,000以下であると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜け、色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。」
(1c)
「【0049】
本発明の粘着剤付光学フィルムとは、上記粘着剤と光学フィルムとからなるものであり、その製造方法としては、例えば、剥離フィルムの上に有機溶剤に希釈させた粘着剤を塗布し、60~120℃で0.5~10分間程度加熱して有機溶媒を留去して、粘着剤層を得る。次いで、粘着剤層に光学フィルムを貼合したのち、温度23℃、湿度65%の雰囲気下であれば、5~20日程度熟成させ、架橋剤が十分反応したのち、剥離フィルムを剥離して粘着剤付光学フィルムを得る方法;前記と同様に粘着剤層を得たのち、得られた剥離フィルムと粘着剤層との2層の積層体を、剥離フィルムと粘着剤層とが交互になるように多層に組み合わせたのち、温度23℃、湿度65%の雰囲気下であれば、5~20日程度熟成させ、架橋剤が十分反応したのち、剥離フィルムを剥離し、代わって光学フィルムを貼合し、さらに剥離フィルムを剥離して粘着剤付光学フィルムを得る方法などが挙げられる。
ここで、剥離フィルムは、粘着剤層を形成する際の基材である。熟成中や粘着剤付光学フィルムとして保存する際に塵や埃などの異物から粘着剤層を保護する基材である場合もある。剥離フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、離型処理(シリコーン処理等)が施されたものなどが挙げられる。」
(1d)
「【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。また不揮発分は、JIS K-5407に準じた測定方法で行った。具体的には粘着剤溶液を任意の重量、シャーレにとり防爆オーブンにて115℃、2時間乾燥させた後の残留不揮発分重量を最初に測りとった溶液の重量に対して割合で表したものである。粘度は、25℃でブルックフィールド粘度計により測定した値である。重量平均分子量測定は装置を用いて標準ポリスチレン換算より、試料濃度5mg/ml、試料導入量100μml、カラムとして東ソー(株)製:TSKgel G6000HXL2本、TSKgel G5000HXL2本を順次、直列したものを用い、温度40℃、流速1ml/minの条件で、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて求めた。
【0057】
<アクリル樹脂の製造例>
(重合例1)
冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた反応器に、酢酸エチル222部を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としたあと、内温を75℃に昇温した。アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)0.55部を酢酸エチル12.5部に溶かした溶液を全量添加したあと、内温を69~71℃に保ちながら、単量体(a)としてアクリル酸ブチル36部、メタクリル酸ブチル44部、アクリル酸メチル20部の混合溶液を3時間かけて反応系内に滴下した。その後、内温69~71℃で5時間保温し、反応を完結した。GPCのポリスチレン換算の重量平均分子量100,000であった。
【0058】
(重合例2~7)
表1に示すモノマー組成とし、重合例1とほぼ同様にして反応を完結した。
【0059】
【表1】
【0060】
(重合例8)
(a)としてアクリル酸ブチル99部、単量体(c)としてアクリル酸1.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を65℃に昇温したのち、AIBN0.2部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。その後、内温65℃で6時間保温し、その後AIBN0.4部を酢酸エチル20部に溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、さらに2時間反応させて重合を完結した。GPCのポリスチレン換算の重量平均分子量1,150,000、Mw/Mnは8.0であった。
【0061】
(重合例9)
重合例(8)と同様の反応器に、アセトン81.8部、単量体(a)としてアクリル酸ブチル(以下BAという)98.9部、単量体(c)としてアクリル酸(以下AAという)1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)0.14部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、単量体を除くアクリル樹脂の濃度(以下、反応濃度という場合がある)が35重量%になるようにアセトン溶剤を添加速度17.3重量部/hrで連続的に反応器に添加しながら内温54~56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。重量平均分子量1,200,000、Mw/Mnは3.9であった。
【0062】
(重合例10)
重合例(8)と同様の反応容器にアセトン80部、(a)としてアクリル酸ブチル95部、単量体(c)としてアクリル酸5部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、AIBN0.1部をアセトン3部に溶かした溶液を全量添加した。その後、内温55℃で1時間保温し、その後アセトンを6時間かけて滴下し、さらに4時間反応させて重合を完結した。GPCのポリスチレン換算の重量平均分子量1,570,000、Mw/Mnは3.4であった。
表2に重合例8から10のモノマー組成比及び分子量、分子量分布をまとめた。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例1)
<粘着剤の製造例>
アクリル樹脂(1)及び(2)を、表3の重量比率で混合し、アクリル樹脂組成物の酢酸エチル溶液を得た。得られた溶液の不揮発分100部に、架橋剤であるトリレンジイソシアネートのアダクト体(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業製)2部(不揮発分)と、シラン化合物(商品名:Y11597、東レダウコーニング製)0.1部とを混合させ、本発明の粘着剤を得た。
【0065】
<粘着剤付光学フィルム及び光学積層体の製造例>
このようにして得られた粘着剤を、アプリケーターを用いて離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、商品名:PET3811)の離型処理面に乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、90℃で1分間乾燥させ、シート状の粘着剤を得た。次いで、光学フィルムとして偏光フィルム(ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させて延伸したものの両面にトリアセチルセルロース系保護フィルムで挟んだ3層構造にしたフィルム)を用い、該光学フィルム上に、前記で得られた粘着剤を有する面をラミネーターによって貼り合せたのち、温度23℃、湿度65%の条件で10日間熟成させて粘着剤層が設けられた粘着剤付き光学フィルムを得た。続いて、該粘着剤付光学フィルムを液晶セル用ガラス基板(コーニング社製、1737)の両面にクロスニコルになるように貼着し、光学積層体を得た。これらを下記要領で評価、分類して結果を表4に示した。
【0066】
<光学積層体の白ヌケ性>
光学積層体を80℃、Dryで96時間保管した後の白ヌケの発現状態を以下の4段階で評価した。
◎:白ヌケが全くみられない。
○:白ヌケがほとんど目立たない。
△:白ヌケがやや目立つ。
×:白ヌケが顕著にみとめられる。
【0067】
<光学積層体の耐湿熱性>
光学積層体を60℃、90%RHで96時間保管した後の外観変化を以下の4段階で評価した。
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著にみとめられる。
【0068】
<光学積層体の耐熱性>
光学積層体を80℃、Dryで96時間保管した後の外観変化を以下の4段階で評価した。
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著にみとめられる。
【0069】
<光学積層体の耐ヒートショック性(耐HS性)>
光学積層体を60℃に加熱後、-20℃に降温、さらに60℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)とし、100サイクル保管した後の外観変化を以下の4段階で評価した。
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著にみとめられる。
【0070】
<リワーク性>
リワーク性の評価は次のように行った。まず、前記光学積層体を25mm×150mmの試験片に調製した。次に、この試験片を貼付装置(富士プラスチック機械(株)製「ラミパッカー」)を用いて液晶セル用ガラス基板に貼付し、50℃、5kg/cm2(490.3kPa)で20分間オートクレーブ処理を行った。続いて70℃で2時間加熱処理を行い、50℃のオーブン中にて48時間保管した後、23℃、相対湿度50%RH雰囲気中にてこの貼着試験片を300mm/minの速度で180°方向に剥離し、下記要領で分類したガラス板表面の状態を観察した結果を、表4に示した。
ガラス板表面の状態によりリワーク性の評価を以下の4段階で行った。
◎:ガラス板表面に曇りおよび糊残りが全くみられない。
○:ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△:ガラス板表面に曇り等が認められる。
×:ガラス板表面に糊残りが認められる。
【0071】
(実施例2~5および比較例1~7)
実施例1に準じてアクリル樹脂(1)及び(2)を表3に示す重量比で混合し、アクリル樹脂組成物の酢酸エチル溶液を得た。得られた溶液の不揮発分100部に、架橋剤と、シラン化合物とを混合させ、本発明の粘着剤を得た。
表3にアクリル樹脂(1)および(2)の混合重量比、架橋剤種および量、シラン化合物種および量をまとめた。
【0072】
【表3】
【0073】
表3中のM1、M3、X1、X2、Y1,Y3、Z1及びZ3は以下に示すような意味を表し、[b]、[c]、[b]/([b]+[b’]+[c])×100は式(II)及び(III)によって求めることができる。尚、アクリル樹脂(2)には単量体(b)を用いなかったことから、[b’]=0である。
【0074】
[b]=([X1×Z1×Y1/100]/M1)×1000/(X1+X2)・・・(II)
X1:アクリル樹脂(1)の使用量(g)(不揮発分)
X2:アクリル樹脂(2)の使用量(g)(不揮発分)
Y1:アクリル樹脂(1)製造時の単量体(b)の仕込み量(重量%)
M1:アクリル樹脂(1)の製造時に用いられた単量体(b)の分子量
Z1:アクリル樹脂(1)の製造時に用いられた単量体(b)1分子あたりの水酸基数
【0075】
[c]=([X2×Z3×Y3/100]/M3)×1000/(X1+X2)・・・(IV)
Y3:アクリル樹脂(2)製造時の単量体(c)の仕込み量(重量%)
M3:アクリル樹脂(2)の製造時に用いられた単量体(c)の分子量
Z3:アクリル樹脂(2)の製造時に用いられた単量体(c)1分子あたりの極性官能基数
【0076】
表3中のシラン化合物の略号を以下に示す。
コロネートL:日本ポリウレタン工業(株)製トリレンジイソシアネートアダクト体「コロネートL」
D-110N:三井武田ケミカル(株)製キシレンジイソシアネートアダクト体「タケネートD-110N」
Y11597:東レダウコーニング(株)製シラン剤「Y11597」
X-41-1805:信越化学工業製シリコーンアルコキシオリゴマー「X-41-1805」
KBM403:信越化学工業製シランカップリング剤「KBM403」
【0077】
【表4】
」
イ.甲1に記載された発明
上記甲1には、上記記載(特に下線部)からみて、
「(メタ)アクリル酸のアルキル又はアラルキルエステル単量体(a)に由来する構造単位(構造単位(a))を主成分とし、少なくとも1つの水酸基と一つのオレフィン性二重結合を分子内に含有する単量体(b)に由来する構造単位(構造単位(b))を0.1~10mol%含有し、任意成分としてカルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一つの極性官能基と、一つのオレフィン性二重結合を分子内に含有する単量体(c)を0.01mol%以下含有してもよい重量平均分子量50,000~500,000である、溶液重合法により得られたアクリル樹脂(1)と、
上記構造単位(a)を主成分とし、上記構造単位(c)を0.5~8mol%含有し、上記構造単位(b)を含有していてもよく、重量平均分子量が1,000,000~1,500,000である、溶液重合法により得られたアクリル樹脂(2)とからなり、
アクリル樹脂(1)及び(2)の合計100重量部に対し、アクリル樹脂(1)を10~50重量部含有するアクリル樹脂組成物と、
イソシアネート系架橋剤とを含有する組成物を
十分に架橋してなる粘着剤組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明1」という。)及び
「甲1発明1の粘着剤組成物からなる粘着剤層を光学フィルムの両面又は片面に設けてなる粘着剤付光学フィルム。」
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているものと認められる。
(2)甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
ア.甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。(なお、以下の摘示において、丸数字は「○1」のように表現する。)
(2a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材と、粘着剤層とを有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は重量平均分子量60万~200万の高分子量ポリマーと、
重量平均分子量50万以下の低分子量ポリマーとを含む粘着剤組成物を用いて形成されることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】 前記低分子量ポリマーは前記高分子量ポリマー100重量部に対し0.1~50重量部含まれる請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】 前記低分子量ポリマーを構成するモノマーの少なくとも一種が前記高分子量ポリマーを構成するモノマーである請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】 前記粘着剤組成物は該粘着剤組成物100重量部に対し架橋剤を5重量部以下含む請求項1ないし3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】 前記高分子量ポリマーおよび前記低分子量ポリマーは各々前記架橋剤と反応可能な官能基を有するモノマーを共重合してなる請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】 前記基材は偏光板である請求項1ないし5のいずれかに記載の粘着シート。」
(2b)
「【0021】高分子量ポリマーとしては、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等いずれであってもよいが、アクリル系ポリマーからなるものが好ましい。アクリル系ポリマーを用いることにより、耐候性、凝集性の良好な粘着剤層を形成することができる。また、無色透明の粘着剤層を容易に形成することができる。
【0022】例えば、アクリル系ポリマーからなる高分子量ポリマーの場合、粘着性を与える主モノマー成分、接着性や凝集力を与えるコモノマー成分、架橋点や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体から構成することができる。
【0023】主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0024】コモノマー成分としてはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0025】官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、N-メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0026】これらの各成分を用いることにより、粘着剤組成物の粘着力、凝集力が向上する。また、このようなアクリル系ポリマーは、分子中に不飽和結合を有しないため、光や酸素に対する安定性の向上を図ることができる。さらに、モノマーの種類や分子量の選択により、用途に応じた品質、特性を備える粘着剤組成物を得ることができる。
・・(中略)・・
【0029】本発明の粘着剤組成物は、重量平均分子量50万以下の低分子量ポリマーを含む。低分子量ポリマーは、高分子量ポリマーがなす3次元構造の間に入り込み、その凝集力を緩和して可塑性を与える働きをする。これにより、粘着剤層3の弾性、柔軟性を向上させることができる。また、粘着剤層3の濡れ性が向上し、基材2との密着性を維持しつつ基材2の収縮応力を十分に吸収、緩和することができる。したがって、粘着シート1Aが湿熱下におかれ、収縮応力が作用しても基材としての偏光板はずれを生じることがないため、白ヌケ、色ムラが防止される。
【0030】低分子量ポリマーとしては、高分子量ポリマーに挙げられるポリマーと同様のものを使用することができる。低分子量ポリマーの重量平均分子量は50万以下であるが、1万~50万であることが好ましく、3万~40万がさらに好ましい。低分子量ポリマーの重量平均分子量が50万を超えると、高分子量ポリマーの3次元構造の間に入り込み難くなり、可塑化作用が十分に発揮されず、上記白ヌケ、色ムラの防止を図ることができない。
【0031】また、低分子量ポリマーの添加量が比較的多い場合、ブリードアウトし、凝集破壊を招くおそれがある。
【0032】低分子量ポリマーは、該低分子量ポリマーを構成するモノマーの少なくとも一種が高分子量ポリマーを構成するモノマーであるものが好ましい。すなわち、高分子量ポリマーがモノマーAおよびモノマーBからなる共重合体である場合、低分子量ポリマーは、モノマーAおよびモノマーBのうち少なくともいずれかを共重合成分として含むものであることが好ましい。これにより低分子量ポリマーと高分子量ポリマーとの相溶性の向上を図ることができる。なお、低分子量ポリマーを構成するモノマーの少なくとも一種が高分子量ポリマーを構成するモノマーであれば、ホモポリマーであっても他のモノマー成分を含むコポリマーであってもよい。
【0033】さらに、低分子量ポリマー中の高分子量ポリマーを構成するモノマーと同じモノマーの割合は、低分子量ポリマーを構成する全モノマー100重量部に対し20重量部以上であることが好ましく、50重量部以上がより好ましい。かかるモノマーをこの割合とすることにより、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーとの相溶性が向上し、また粘着剤層の凝集力を維持することができる。
【0034】このような低分子量ポリマーは、粘着剤組成物中に高分子量ポリマー100重量部に対し0.1~50重量部含まれることが好ましく、3~30重量部含まれることがより好ましい。低分子量ポリマーが0.1重量部未満であると、粘着剤層3の可塑化が十分に達成されない場合がある。したがって、基材2の収縮応力を十分に吸収、緩和することができず、白ヌケ、色ムラを確実に防止することができない場合がある。一方、低分子量ポリマーが50重量部を超えると凝集破壊を招き、粘着剤層3の基材2への密着性、接着性を低下させるおそれがある。」
(2c)
「【0035】本発明に用いられる粘着剤組成物は、架橋処理を施す架橋型および架橋処理を施さない非架橋型のいずれのものも用いることができるが、架橋型のものがより好ましい。架橋型のものを用いる場合、凝集力のより優れた粘着剤層を形成することができる。
【0036】架橋型の粘着剤組成物の場合、架橋処理(硬化)の方法としては、例えばエポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等の架橋剤を添加する方法や放射線を照射する方法等が挙げられる。
【0037】粘着剤組成物に架橋剤を添加する場合、架橋剤は粘着剤組成物100重量部に対し5重量部以下含まれることが好ましい。粘着剤組成物がこの程度の量の架橋剤を含むことにより、粘着剤層3の凝集力をより良好に向上させることができる。
【0038】この場合、高分子量ポリマーは架橋剤と反応可能な官能基を有するモノマーを共重合してなるものであることが好ましく、高分子量ポリマーおよび低分子量ポリマーが、各々架橋剤と反応可能な官能基を有するモノマーを共重合してなるものであることがさらに好ましい。これにより、粘着剤層のリワーク性が向上する。
【0039】また、低分子量ポリマーは、架橋剤と反応可能な官能基を有するモノマーを10重量部以下共重合してなることがより好ましく、0.1~5重量部含むことがさらに好ましい。
【0040】低分子量ポリマー中、架橋剤と反応可能な官能基を有するモノマーが10重量部を超えると、架橋剤との結合に積極的に関与し、粘着剤層を過剰に硬化させてしまうおそれがある。
【0041】上記架橋剤と反応可能な官能基を有するモノマーとしては、上記高分子量ポリマーの官能基含有モノマー成分と同様のものが挙げられる。」
(2d)
「【0058】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0059】1.粘着シートの作製
基材として偏光板を用い、下記の組成の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成し粘着シートを作製した。
【0060】(実施例1)
○1粘着剤組成物
高分子量ポリマー:100重量部(Mw(重量平均分子量)=150万)(アクリル酸ブチル/アクリル酸=95/5)
【0061】低分子量ポリマー:10重量部(Mw=10万)(アクリル酸ブチル/ヒドロキシエチルアクリレート=99.5/0.5)
なお、アクリル酸は架橋剤と反応可能な官能基(COOH基)を有するモノマーであり、ヒドロキシエチルアクリレートは架橋剤と反応可能な官能基(OH基)を有するモノマーである。
【0062】架橋剤:0.1重量部(トリメチロールプロパントリレンジイソシアナート)
【0063】○2基材
トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/トリアセチルセルロースフィルムの3層積層体の偏光板(厚さ:180μm)
【0064】○3離型シート
ポリエステルフィルム(片面側にシリコーン処理を施したもの)(リンテック(株)社製 SP PET38)、厚さ:38μm
【0065】上記○1の粘着剤組成物を調製し、この調製物を○3の離型シート4上に塗布して乾燥し、○2の基材2の片面に転写することにより粘着剤層3(厚さ:25μm)を形成した。これを常温で7日間シーズニングを行い、図1に示すような粘着シート1Aを作製した。
【0066】さらに、粘着シート1Aの粘着剤層3の基材2が積層された面と反対側の面に、上記○1の粘着剤組成物を位相差板5(1/4波長板、ポリカーボネートフィルム製、厚さ:60μm)の片面に塗布、乾燥して形成された第2の粘着剤層6を積層し、さらに粘着剤層6の位相差板5と積層する面と反対側の面に離型シート4を貼付した粘着剤シート1Bを作製した。
【0067】(実施例2)
低分子量ポリマーとして、アクリル酸ブチルのホモポリマー(Mw=30万)を20重量部添加した以外は実施例1と同様にして粘着シート1Aおよび1Bを作製した。
【0068】(実施例3)
高分子量ポリマーとして、アクリル酸ブチル/2-ヒドロキシエチルメタクリレート=95/5(Mw=130万)を用い、また低分子量ポリマーの添加量を高分子量ポリマー100重量部に対し10重量部とし、さらに架橋剤の添加量を0.15重量部とした以外は実施例2と同様にして粘着シート1Aおよび1Bを作製した。
【0069】なお、2-ヒドロキシエチルメタクリレートは架橋剤と反応可能な官能基(OH基)を有するモノマーである。
【0070】(実施例4)
放射線硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4重量部、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5重量部を添加し、架橋剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の組成の粘着剤組成物を調製した。
【0071】これを実施例1と同様に離型シート上に塗布して乾燥する。粘着剤組成物に紫外線を照射した後、基材の片面に転写することにより粘着剤層(厚さ:25μm)を形成した。これを常温で1日間シーズニングを行い、図1に示すような粘着シート1Aおよび1Bを作製した。
【0072】(比較例1)
低分子量ポリマーを添加せず、高分子量ポリマーの重量平均分子量を210万とした以外は実施例1と同様にして粘着シート1Aおよび1Bと同じタイプの粘着シートを作製した。
【0073】(比較例2)
低分子量ポリマーを添加せず、高分子量ポリマーの重量平均分子量を40万とし、架橋剤の添加量を1.0重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0074】(比較例3)
低分子量ポリマーを添加しないで、可塑剤としてトリメリット酸トリオクチルを7重量部添加した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0075】2.粘着シートの粘着特性評価
上記実施例1~4および比較例1~3で作製された粘着シートについて、以下の粘着特性評価を行った。
【0076】まず、各実施例および比較例で作製された粘着シートを、液晶セル用ガラス板(日本板硝子(株)製「Hコートガラス」)の両面に直交ニコルになるように貼着した。
【0077】次いで、これを○1 90℃、Dryで1000時間、○2 60℃、90%RHで1000時間の各耐久条件に各々投入した後、粘着剤層の耐久性および基材の寸法変化による残留応力に起因して生じる白ヌケ、色ムラの発現状態を目視で観察した。なお、粘着シート1Aについては白ヌケ、粘着シート1Bについては色ムラの状態について評価を行った。
【0078】粘着剤層の耐久性の評価は、以下の4段階で行った。
◎:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
×:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著にみとめられる。
【0079】白ヌケまたは色ムラの発現状態の評価は、以下の4段階で行った。
◎:白ヌケ、色ムラが全くみられない。
○:白ヌケ、色ムラがほとんど目立たない。
△:白ヌケ、色ムラがやや目立つ。
×:白ヌケ、色ムラが顕著にみとめられる。
【0080】また、リワーク性の評価は次のように行った。
まず、各粘着シートから25mm×150mmの試験片を作製した。
【0081】次に、この試験片を貼付装置(富士プラスチック機械(株)製「ラミパッカー」)を用いて液晶セル用ガラス板(日本板硝子(株)製「Hコートガラス」)に貼付し、50℃、5kg/cm2で20分間オートクレーブ処理を行った。続いて70℃で2時間加熱処理を行なった後、23℃、相対湿度65%RH雰囲気中にてこの貼着試験片を300mm/minの速度で180°方向に剥離した後、ガラス板表面の状態を目視で観察した。
【0082】ガラス板表面の状態によりリワーク性の評価を以下の4段階で行った。
◎:ガラス板表面に曇りおよび糊残りが全くみられない。
○:ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△:ガラス板表面に曇り等が認められる。
×:ガラス板表面に糊残りが認められる。
以上の結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】これらの結果から明らかなように、実施例1~4の粘着シート(粘着剤層付き偏光板)によれば、液晶セルに貼着して使用した場合、耐久性に優れ、かつ白ヌケおよび色ムラを防止できることが確認された。さらに、リワーク性に優れ、粘着シートを剥離した場合にも、糊残りや表面の曇りを生じないものであることがわかった。
【0085】さらに紫外線硬化性ポリマーを添加した粘着剤組成物を用いた実施例4では、粘着剤組成物は硬化性に優れており、シーズニングが1日で良好な粘着剤層が形成されることがわかった。
【0086】これに対し、比較例1の粘着シートでは、高分子量ポリマーの重量平均分子量が大きすぎるため粘着剤層の柔軟性に劣り、耐久性およびリワーク性は優れているものの白ヌケおよび色ムラが著しいものであった。比較例2の粘着シートは、高分子量ポリマーの重量平均分子量が小さ過ぎるため粘着剤層の凝集力が不足し、耐久性、リワーク性に劣り、白ヌケ等も著しいものであった。さらに、比較例3では、可塑剤を添加しているため、耐久性があり、白ヌケ、色ムラが認められないものの、リワーク性に劣るものであった。
【0087】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の粘着シートの粘着剤層は、柔軟性および基材に対する密着性等に優れ、高温高湿の厳しい環境下に長時間おかれても基材に対し粘着剤層が浮き、剥れ等を生じることがない。また、湿熱条件下での基材の寸法変化に起因する応力を粘着剤層が吸収・緩和するため、粘着シートの端部等における局部的な応力集中を軽減することができる。
【0088】このため、例えばTN液晶セル(TFT)の白ヌケ、STN液晶セルの色ムラ等、基材である偏光板等における不均一な応力分布に起因する光学的欠陥を防止することができる。
【0089】また、リワーク性に優れ、一度貼着した粘着シートを剥離しても被着体の表面に糊残りやくもりを生じることがない。
【0090】さらに、本発明の粘着シートは、比較的簡易な構成で上記効果を得ることができ、その製造が容易である。」
イ.甲2に記載された発明
上記甲2には、上記記載(特に下線部)からみて、
「架橋剤と反応可能な官能基を含有する重量平均分子量60万~200万の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の高分子量ポリマー100重量部と、
架橋剤と反応することができる官能基を含有する重量平均分子量50万以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の低分子量ポリマー0.1~50重量部とを含み、
さらに、イソシアナート系化合物などの架橋剤を含有する組成物を用いて架橋してなる粘着剤組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明1」という。)及び
「偏光板などの基材と、粘着剤層とを有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、甲2発明1の粘着剤組成物を用いて形成されている粘着シート。」
に係る発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されているものと認められる。
(3)甲3の記載事項及び甲3に記載された発明
ア.甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルの炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、
下記数式(1)で示されるゲル分率が10~55%であり、
・・(中略)・・
粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び
分子量分布が2.0~7.0であることを特徴とする偏光板用アクリル系粘着剤組成物:
ゲル分率(%)=B/A×100 (1)
膨脹比=C/B (2)
(上記式で、Aはアクリル系粘着剤組成物の質量を示し、
Bは常温で、エチルアセテートに48時間、浸漬後のアクリル系粘着剤組成物の不溶解分の乾燥質量を示し、
Cは常温で、エチルアセテートに48時間、浸漬後のエチルアセテートによって膨脹された不溶解分の質量(アクリル粘着剤不溶解分の質量+浸透溶剤の質量)を示す。)。
・・(中略)・・
【請求項4】
(メタ)アクリル系共重合体は、
アルキル基が2~14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80~99.8重量部;
多官能性架橋剤0.01~10重量部;及び
上記多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系0.01~5重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
アルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体が、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
架橋性単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4に記載のアクリル系粘着剤組成物。
・・(中略)・・
【請求項8】
多官能性架橋剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及び金属キレート系化合物よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
・・(中略)・・
【請求項11】
アルキルの炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させて架橋用構造用アクリル系重合体を製造する段階;
アルキルの炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させて未架橋構造用アクリル系重合体を製造する段階;及び
上記架橋構造用アクリル系重合体及び未架橋構造用アクリル系重合体を混合する段階;を含むことを特徴とする請求項1に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
・・(中略)・・
【請求項13】
反応が、溶液重合法、光重合法、バルク重合法、サスペンション重合法、及びエマルジョン重合法よりなる群から選択される重合方法で製造されることを特徴とする請求項11又は12に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項14】
ビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体は、水酸基を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項15】
偏光フィルムの一面または両面に、請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物で形成された粘着剤層を含むことを特徴とする粘着偏光板。
・・(後略)」
(3b)
「【実施例】
【0060】
〔製造例1:アクリル系共重合体(A-1)の製造〕
窒素ガスが還流及び温度調節が容易な冷却装置を備えた1L反応器に、下記表1に示した組成のように、n-ブチルアクリレート(BA)98重量部、ヒドロキシメタクリレート2.0重量部で構成される単量体の混合物を投入した。そして、溶剤として、エチルアセテート(EAc)120重量部を投入した。酸素を除去するために、窒素ガスを60分間パージ(purging)した後、温度は60℃に保持し、反応開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を投入し、8時間、反応した。反応後、エチルアセテート(EAc)で希釈し、固形分15重量%、重量平均分子量が1,600,000、分子量分布4.9のアクリル系共重合体(A-1)を製造した。
【0061】
〔製造例2、3:アクリル系共重合体A-2、A-3の製造〕
上記製造例1で、下記表1のように、 高分子量アクリル系共重合体(A-1)の組成を基準に、各成分の一部を添加しないか、部分添加して高分子量アクリル系共重合体(A-2とA-3)を製造した。これに対する結果値は表1に示した。
【0062】
〔製造例4、5、6:アクリル系共重合体(B-1、B-2、B-3)の製造〕
上記製造例1で、下記表1のように、高分子量アクリル系共重合体(A-1)の組成を基準に、各成分の一部を添加しないか、部分添加して高分子量アクリル系共重合体(B-1、B-2、B-3)を製造した。その結果は表1に示した。
【0063】
〔製造例7:低分子量体アクリル系共重合体(L-1)の製造〕
上記製造例1で、下記表1のように、 高分子量アクリル系共重合体(A-1)の組成を基準に、各成分の一部を添加しないか、部分添加して低分子量アクリル系共重合体(L-1)を製造した。これに対する結果値は、表1に示した。
【0064】
〔製造例8、9:アクリル系共重合体(I-1、I-2)の製造〕
上記下記表2のように、第1段階反応で水酸基含有単量体が含まれる組成で、製造例1のような条件で、水酸基含有高分子量アクリル系共重合体を、まず製造した後、第1段階で製造した高分子の存在下で、第2段階組成で表2の組成のように投入し、同じ組件で反応した後、最終高分子量アクリル重合体を得た。
【0065】
〔実施例1〕
<配合>
上記の準備段階で得られた高分子量アクリル系共重合体(A-1)固形分20重量部に対して高分子量アクリル系共重合体(B-1)を固形分80重量部になるように混合した後、ここに、多官能性架橋剤としてイソシアネート系トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(TDI-1)0.1重量部を投入し、コーティング性を考慮して適正の濃度で希釈し、均一に混合した後、離型紙にコーティングして乾燥した後、30ミクロンの均一な粘着層を得た。
<合板過程>
上記で製造された粘着層を、膜厚185ミクロンのヨード系偏光板に粘着加工した。得られた偏光板を適切なサイズで切断し、評価に用いた。上記粘着剤が適用された偏光板に関し、以下の評価の結果を下記の表3aに示した。
【0066】
〔実施例2~7〕
下記表3aの配合比のように実施例1の配合を基準に一部を配合しないか、部分配合することによって上記実施例1と同様の方法でアクリル系共重合体を配合及び合板過程を実施した。以後、実施例1と同様の方法で耐久信頼性及び光透過均一性を評価し、その結果を表3aに示した。
【0067】
〔比較例1~6〕
表3bで示されるように、下記表2の配合比のように実施例1の配合を基準に、一部を配合しないか、部分配合することによって上記実施例1と同様の方法でアクリル系共重合体を配合及び合板過程を実施した。以後、実施例1と同様の方法で耐久信頼性及び光透過均一性を評価し、その結果を表3bに示した。
【0068】
<偏光板特性テスト>
A.耐久信頼性
上記実施例1で製造された粘着剤がコーディングされた偏光板(90mm×170mm)をガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)の両面に光学吸収軸がクロスされた状態で接着した。この時、加えられた圧力は約5kg/cm2であり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。この試片を、耐湿熱特性を把握するために、60℃の温度及び90%の相対湿度条件下で、1,000時間放置した後、気泡や剥離の発生の有無を観察した。耐熱特性は80℃の温度で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生の有無を観察した。試験片の状態を評価する直前に、常温で24時間放置した後、実施した。また、上記で製造された粘着偏光板を5ケ月以上放置後、上記の方法で信頼性を評価した。信頼性に対する評価基準は次の通りである。
○:気泡や剥離現象無し
△:気泡や剥離現象若干発生
×:気泡や剥離現象多量発生
【0069】
B.光透過均一性(光漏れ)
上記と同じ試片を用いて、光透過度の均一性を調べるために、バックライトを利用して暗室で光が漏れる部分があるかを観察した。光透過均一性を試験する方法としてはコーティングされた偏光板(200mm×200mm)をガラス基板(210mm×210mm×0.7mm)に90度で交差して両面に接着し、観察する方法を採択した。光透過性の均一性は次のような基準で評価した。
◎:光透過性の不均一現象が肉眼で判断し難い
○:光透過性の不均一現象が若干ある
△:光透過性の不均一現象が多少ある
×:光透過性の不均一現象が多量ある
【0070】
C.粘着剤ピット欠陥(貯蔵弾性率)
粘着剤ピット不良は、粘着剤の弾性率(貯蔵弾性率)が高いほど少ない。粘着剤の弾性率はレオメトリックス(Rheometrics)社のRMS-800を利用して測定した。直径が8mmの平行板フィクスチャー(Fixture)を用いて、温度30℃で、粘着剤の膜厚1mm、変形率10%、周波数1rad/sec条件下で、貯蔵弾性率(storage modulus)を測定して粘着剤の弾性率を測定しており、測定された貯蔵弾性率を通じて下記の通りに判断した。
5点:粘着剤ピット不良が大変少ない(貯蔵弾性率>1.8×104Pa)
4点:粘着剤ピット不良が少しある(1.4×104Pa<貯蔵弾性率<1.7×104Pa)
3点:粘着剤ピット不良が多少ある(1.0×104Pa<貯蔵弾性率<1.3×104Pa)
2点:粘着剤ピット不良がたくさんある(0.8×104Pa<貯蔵弾性率<1.0×104Pa)
1点:粘着剤ピット不良が非常に多い(0.8×104Pa<貯蔵弾性率)
【0071】
D.粘着剤はみ出しの測定
トムソン(Thompson)カッターを利用して上記合板後の偏光板を切断し、各偏光板の切断面を顕微鏡で観察し、次ぎのような基準で評価した。
3点:切断面の粘着剤のはみ出し程度が良好(0.2mm未満)
2点:切断面の粘着剤のはみ出し程度が多少不良(0.2~0.5mm)
1点:切断面の粘着剤のはみ出し程度が激しい(0.5mm以上)
【0072】
E.ゲル分率の測定
上記配合過程で乾燥された粘着剤を約10日間、恒温恒湿室(23℃、60%RH)に放置した後、約0.3gの粘着剤を#200ステンレス金網に入れて100mLのエチルアセテートに浸漬し、常温、暗室で3日間保管後、不溶解分を分離後、不溶解分を70℃オーブンで4時間、乾燥後、質量を測定した。
【0073】
F.膨脹比
上記ゲル含量測定時、不溶解分を分離した後、不溶解分と不溶解分に含まれていた(膨脹された)溶剤の重量を測定し、乾燥後、不溶解分の質量で割り、膨脹比を求めた。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
上記表1及び2で、略語は次の通りに定義される。
n-BA:n-ブチルアクリレート、
EHA:エチルヘキシルアクリレート、
2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル、
EAc:エチルアセテート。
【0077】
【表3A】
【0078】
【表3b】
【0079】
上記表3aの結果より、本発明の実施例1~7の場合、耐久信頼性、光漏れ特性に優れており、また粘着剤生産時、作業性と関連した粘着剤はみ出し、粘着剤ピット不良が少ない。反面、比較例1の場合、膨脹比が非常に高く、架橋構造が緩すぎて耐久性が不足しており、比較例2の場合には、ゲル含量が高く、膨脹比が低すぎて架橋構造が緻密過ぎ、応力緩和特性が不足して光漏れが改善されない場合である。比較例3の場合は、ゾルの分子量が低すぎて耐久性が不足した場合であり、比較例4は従来の技術である低分子量体を混合し、光漏れを改善した場合である。この場合には、モジュラスが急激に減少し、偏光板作業性が大きく劣る。比較例5の場合は、従来の技術のように多官能性架橋剤量を少量添加し、低いゲル含量を調節した場合や架橋構造が緩く、膨脹比が非常に大きく、これにより耐久性が大きく不足する場合であり、比較例6の場合は、一般的なゲル含量調節条件で粘着剤の応力緩和が大きく不足する場合である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上記のように、本発明は粘着耐久性などの主要特性を変化させることなく、高温・多湿条件下で長期間使用時、偏光板の収縮により発生される応力を緩和させ、光漏れ改善に効果があり、最終粘着剤のモジュラスの高い偏光板用アクリル系粘着剤組成物を提供することができる。従って、本発明は上記粘着剤組成物を液晶表示装置の偏光板に適用し、長時間使用しても応力集中による光漏れ現象を防止することができ、高いモジュラスによって優れた作業性を得ることができる。」
イ.甲3に記載された発明
上記甲3には、上記記載(特に下線部)からみて、
「アルキルの炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を溶液重合法により反応させてなる架橋用構造用アクリル系重合体と、アルキルの炭素数が1~12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を溶液重合法により反応させてなる未架橋構造用アクリル系重合体とを混合してなる混合物に、イソシアネート系化合物などの多官能性架橋剤を反応させて架橋してなる、アルキル基が2~14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80~99.8重量部、(ポリ)イソシアネート系などの多官能性架橋剤0.01~10重量部及び当該多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体0.01~5重量部を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、ゲル分率が10~55%であり、粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上である偏光板用アクリル系粘着剤組成物。」
に係る発明(以下「甲3発明1」という。)及び
「偏光フィルムの一面又は両面に、甲3発明1の偏光板用アクリル系粘着剤組成物で形成された粘着剤層を有する粘着偏光板。」
に係る発明(以下「甲3発明2」という。)が記載されているものと認められる。
(4)甲4の記載事項及び甲4に記載された発明
ア.甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に、主成分としての(メタ)アクリル酸エステル及び全モノマー成分100重量部に対して0.3~4重量部のカルボキシル基含有モノマーを含むアクリル系モノマー混合物のエマルション重合により得られ、且つガラス転移温度が-30~-15℃であるアクリルエマルション系重合体を主成分とするアクリル系粘着剤からなる粘着剤層が設けられていることを特徴とする電子部品搬送用水分散型アクリル系粘着テープ又はシート。
【請求項2】
アクリルエマルション系重合体のゲル分率が、50~70%である請求項1記載の電子部品搬送用水分散型アクリル系粘着テープ又はシート。
【請求項3】
アクリルエマルション系重合体のゾル分の分子量が、100万~300万である請求項1又は2記載の電子部品搬送用水分散型アクリル系粘着テープ又はシート。
・・(後略)」
(4b)
「【0035】
さらに、アクリルエマルション系重合体のゲル分率を調整するために、前述したアクリルエマルション系重合体を重合する際に多官能モノマー成分を共重合させること以外に、架橋剤が添加されていてもよい。
【0036】
架橋剤としては、例えば、多官能性のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などが挙げられる。なお、多官能性とは2官能性以上のことを意味する。
【0037】
このような架橋剤の具体的な例としては、例えば、N,N,N′,N′-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名「テトラッドC」三菱ガス化学社製)、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、商品名「エポクロスWS-500」(日本触媒社製)などのオキサゾリン系架橋剤、商品名「ケミタイトPZ-33」(日本触媒社製)などのアジリジン系架橋剤、トリレンジイソシアネート(ブロック)などのブロックイソシアネート系架橋剤、商品名「エラストロンBN-69」(第一工業製薬社製)などの水分散イソシアネート系架橋剤、商品名「カルボジライトV-02」(日清紡績社製)、商品名「カルボジライトV-02-L02」(日清紡績社製)、商品名「カルボジライトV-04」(日清紡績社製)、商品名「カルボジライトE-01」(日清紡績社製)、商品名「カルボジライトE-02」(日清紡績社製)などのカルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。
【0038】
また、アクリルエマルション系重合体を重合する際に、カルボニル基を有するモノマー(例えば、ダイアセトンアクリルアミドなど)を共重合させ、さらにカルボニル基と反応するヒドラジン系架橋剤と併用してもよい。このようなヒドラジン系架橋剤としては、例えばアジピン酸ジヒドラジド、商品名「アミキュアVDH」「アミキュアUDH」(味の素ファインテクノ社製)などのヒドラジン系架橋剤などが挙げられる。
【0039】
これらの架橋剤は、アクリルエマルション系重合体の組成や分子量などに応じて、アクリルエマルション系重合体のゲル分率が所望の範囲内となるような量で添加される。例えば、架橋剤としてヒドラジン系架橋剤を添加する場合、アクリルエマルション系重合体100重量部に対して、0.1~3重量部(好ましくは、0.3~1重量部)程度である。また、架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、アクリルエマルション系重合体を形成するアクリル系モノマー混合物には、ゲル分率の調整のために、上記以外の架橋剤(例えば過酸化水素系架橋剤など)が添加されていてもよい。
【0040】
アクリルエマルション系重合体のゲル分率は、50~70%、好ましくは55~68%、さらに好ましくは60~65%に調整される。ゲル分率が50%未満であると、リード部への糊が残る不具合(リード部への糊残り)が発生する場合がある。70%よりたかくなると、リード部への密着性が低下し、電子部品や中間品を保持できなくなる不具合が発生する場合がある。」
(4c)
「【0076】
基材としては、粘着テープ又はシート用の基材として公知の基材から適宜選択して用いることができる。具体的には、基材としては、特に制限されず、例えばプラスチック系基材(例えばプラスチックフィルムやシートなどのプラスチック系基材)、金属系基材(例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔などの金属箔や金属板など)、繊維系基材(例えば、布、不織布、ネット、アラミド繊維による基材など)、紙系基材などの薄葉体を用いることができる。
【0077】
中でも、作業性の点から、プラスチック系基材や紙系基材が好ましく、特に紙系基材(紙基材)が好ましい。」
(4d)
「【実施例】
【0098】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、水:180重量部、アクリル酸n-ブチル:50重量部、メタクリル酸n-ブチル:49重量部、アクリル酸:1重量部、およびノニオンアニオン系界面活性剤(商品名「ハイテノールLA16」第一工業製薬社製):2重量部を乳化機で乳化して得られたエマルジョン溶液を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。以後、重合中の内浴温度は55℃に制御した。ここに、重合開始剤(商品名「V-50」和光純薬工業社製):0.05重量部及び水:2重量部からなる重合開始剤水溶液を添加し重合を開始させた。重合開始から5時間後、反応を完了した。その後、10重量%のアンモニア水で中和してアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(A)」と称する場合がある)を作製した。
アクリルエマルション系重合体(A):100重量部に、架橋剤[1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン;商品名「テトラッドC」三菱ガス化学社製]を0.1重量部(対粘着剤固形分100重量部)を添加してアクリル系粘着剤を作製した。
該作製したアクリル系粘着剤を、紙製基材としてのクレープ紙(商品名「C-30M」三木特種製紙社製、厚み:0.125mm)上に、乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布し、乾燥してアクリル系粘着シートを作製した。
【0100】
(実施例2)
エマルジョン溶液に含まれるモノマー成分を、アクリル酸2-エチルヘキシル:50重量部、メタクリル酸n-ブチル:49重量部、アクリル酸:1重量部としたこと以外は、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(B)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(B)を用いてアクリル系粘着剤を作製してから、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0101】
(実施例3)
エマルジョン溶液に含まれるモノマー成分を、アクリル酸n-ブチル:60重量部、メタクリル酸n-ブチル:39重量部、アクリル酸:1重量部としたこと以外は、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(C)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(C)を用いてアクリル系粘着剤を作製してから、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0102】
(実施例4)
アクリルエマルション系重合体(A):100重量部に、架橋剤[1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン;商品名「テトラッドC」三菱ガス化学社製]を0.1重量部(対粘着剤固形分100重量部)、ロジン系粘着付与剤(商品名「スーパーエステルE730-55」荒川化学工業社製、軟化点:125℃)を10重量部添加してアクリル系粘着剤を作製した。
続いて、該作製したアクリル系粘着剤を用いて、実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0103】
(実施例5)
アクリルエマルション系重合体(C):100重量部に、架橋剤[1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン;商品名「テトラッドC」三菱ガス化学社製]を0.1重量部(対粘着剤固形分100重量部)、粘着付与剤(商品名「ハリエスターSK501NS」ハリマ化成社製;23℃で液状)を5重量部添加してアクリル系粘着剤を作製した。
続いて、該作製したアクリル系粘着剤を用いて、実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0104】
(比較例1)
エマルジョン溶液に含まれるモノマー成分を、アクリル酸2-エチルヘキシル:49重量部、アクリル酸n-ブチル:49重量部、アクリル酸:2重量部としたこと以外は、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(D)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(D)を用いてアクリル系粘着剤を作製してから、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0105】
(比較例2)
エマルジョン溶液に含まれるモノマー成分を、アクリル酸n-ブチル:27重量部、メタクリル酸n-ブチル:72重量部、アクリル酸:1重量部としたこと以外は、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(E)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(E)を用いてアクリル系粘着剤を作製してから、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0106】
(比較例3)
エマルジョン溶液に含まれるモノマー成分を、アクリル酸n-ブチル:50重量部、メタクリル酸n-ブチル:50重量部としたこと以外は、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(F)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(F)を用いてアクリル系粘着剤を作製してから、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
しかし、比較例3は、重合体(F)作製中に大量に生じた凝集物によって、粘着シートとして使用することはできなかった。
【0107】
(比較例4)
エマルジョン溶液に含まれるモノマー成分を、アクリル酸n-ブチル:50重量部、メタクリル酸n-ブチル:45重量部、アクリル酸:5重量部としたこと以外は、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(「アクリルエマルション系重合体(G)」と称する場合がある)を作製した。
続いて、実施例1と同様の処方にてアクリルエマルション系重合体(G)を用いてアクリル系粘着剤を作製してから、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0108】
(比較例5)
アクリルエマルション系重合体(A):100重量部に、架橋剤[1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン;商品名「テトラッドC」三菱ガス化学社製]を1重量部(対粘着剤固形分100重量部)添加してアクリル系粘着剤を作製した。
続いて、該作製したアクリル系粘着剤を用いて実施例1と同様の処方にてアクリル系粘着シートを作製した。
【0109】
(評価)
実施例及び比較例のアクリル系粘着シートについて、以下の測定方法又は評価方法によって、ガラス転移温度、ゲル分率、ゾル分の分子量、リード部の固定性(引抜力)、リード部への糊残り性、低温特性を測定又は評価した。測定結果及び評価結果は表1に示した。
・・(中略)・・
【0111】
(ゲル分率)
実施例及び比較例のアクリル系粘着シートにおいて、アクリル系粘着剤の主成分であるアクリルエマルション系重合体のゲル分率は、試料約0.1gをサンプリングして精秤し、これを約50mlの酢酸エチル中に室温で1週間浸積したのち、溶剤不溶分を取り出し、130℃で約1時間乾燥して、秤量することにより、下記式をもちいて算出した。
アクリルエマルション系重合体のゲル分率(重量%)=[(浸積・乾燥後の重量)/試料の重量]×100
なお、アクリルエマルション系重合体のゲル分率の測定では、エマルションを蒸発乾燥して得られる固形分を試料として用いた。
【0112】
(ゾル分の分子量)
実施例及び比較例のアクリル系粘着シートにおいて、アクリル系粘着剤の主成分であるアクリルエマルション系重合体のゾル分の重量平均分子量(ゾル分の分子量)は、試料約0.1gをサンプリングして精秤し、これを約50mlの酢酸エチル中に室温で1週間浸積したのち、不溶分とゾル分が溶解した酢酸エチル溶液を分離する。ゾル分が溶解した酢酸エチル溶液から酢酸エチルを30℃で減圧乾燥し、GPC(ゲル・パーミッションクロマトグラフィー)により測定した。
装置:(製品名)HLC-8120GPC[東ソー社製]
カラム:(カラム品番)TSKgel GMHHR-H(S)[東ソー社製]×2(2カラム連結)
流量:0.5ml/min
注入量:100μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
注入試料濃度:0.1重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量は、ポリスチレン換算により算出した。また、アクリルエマルション系重合体のゾル分の分子量の測定では、エマルションを蒸発乾燥して得られる固形分を試料として用いた。
・・(中略)・・
【0116】
【表1】
【0117】
表1において、「-」は、評価に至らなかったことを意味する。
【0118】
表1より、実施例のアクリル系粘着シートは、引抜力が15(N/15mm)以上であり、且つ低温特性が良好であり、リード部の固定性が優れていることが確認でき、またリード部への糊残り性も良好であることが確認できた。
一方、比較例1のアクリル系粘着シートは、アクリル系粘着剤の主成分であるアクリルエマルション系重合体のガラス転移温度が低いため、リード線に対して部分的に糊残りがみられた。比較例2のアクリル系粘着シートでは、アクリル系粘着剤の主成分であるアクリルエマルション系重合体のガラス転移温度が高いため、低温特性が不良であり、低温時のリード線の固定性に劣っていた。比較例3のアクリル系粘着シートは、カルボキシル基含有モノマーを含まないので、粘着剤の安定性が悪く、評価に至らなかった。比較例4のアクリル系粘着シートは、カルボキシル基含有モノマーの量が多いので、リード線全面に糊残りがみられ、リード部への糊残り性の点で劣っていた。比較例5のアクリル系粘着シートは、アクリル系粘着剤の主成分であるアクリルエマルション系重合体のゲル分率の値が高く、アクリル系粘着剤の主成分であるアクリルエマルション系重合体のゾル分の重量平均分子量が低いため、引抜力が低く、低温特性が不良であり、リード線の固定性の点で劣っていた。」
イ.甲4に記載された発明
上記甲4には、上記記載(特に下線部)からみて、
「主成分としての(メタ)アクリル酸エステル及び全モノマー成分100重量部に対して0.3~4重量部のカルボキシル基含有モノマーを含むアクリル系モノマー混合物のエマルション重合により得られ、且つガラス転移温度が-30~-15℃であるアクリルエマルション系重合体を主成分とし、イソシアネート系架橋剤により架橋してなる、ゲル分率が50~70%、ゾル分の分子量が100万~300万であるアクリル系粘着剤組成物。」
に係る発明(以下「甲4発明1」という。)及び
「プラスチックフィルムなどの基材の少なくとも片面に、甲4発明1のアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成された粘着テープ。」
に係る発明(以下「甲4発明2」という。)が記載されているものと認められる。
(5)甲5の記載事項及び記載された発明
ア.甲5の記載事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
(5a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(a)成分~(e)成分を含有してなる光重合性組成物を、剥離性の表面を有するフィルム基材の剥離面に塗布し、光重合させて得られる自着性シートであって、該自着性シートの接着層の部分架橋ポリマーのゲル分率が5~60重量%であり、ゾル分の重量平均分子量が50000~700000であり、且つ、ガラス転移温度が-10℃~+30℃であることを特徴とする自着性シート。
(a)成分:アルキル基の炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート
(b)成分:上記(a)成分と共重合可能な不飽和二重結合を有するビニル系モノマー
(c)成分:光重合開始剤
(d)成分:一分子中に2個以上の不飽和二重結合を有する多官能ビニル系化合物
(e)成分:ラジカル連鎖移動剤
【請求項2】 光重合性組成物が、上記(a)成分60~100重量部、(b)成分0~40重量部、(c)成分0.01~5重量部、(d)成分0.01~2重量部、(e)成分0.005~2重量部、さらに、(f)成分として重量平均分子量が2000~30000のエチレン-ブチレン系マクロマー1~50重量部を含有してなることを特徴とする請求項1記載の自着性シート。
・・(後略)」
(5b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、主として結束用等として好適な自着性シートに関する。
【0002】
【従来の技術】 従来より、種々の部材の結束や固定用(以下、単に「結束用」と記す)等として、柔軟なフィルム基材の両面に粘着剤層を設けてなる粘着シートもしくは粘着テープ(以下、単に「粘着シート」と記す)が、その接合簡便性を生かして、広く使用されている。このような結束用粘着シートには、粘着剤層同士の接着性(以下、「自着性」と記す)に優れていると共に、高温環境下もしくは低温環境下でも容易に剥離しないという性能が要求されている。」
(5c)
「【0025】 第1発明による自着性シートは、上述した(a)成分~(e)成分を含有してなる光重合性組成物を、剥離性の表面を有するフィルム基材の剥離面に塗布し、光重合させて得られるが、該自着性シートの接着層の部分架橋ポリマーのゲル分率が5~60重量%、好ましくは10~40重量%、であり、ゾル分の重量平均分子量が50000~700000であり、且つ、ガラス転移温度が-10℃~+30℃であることが必要である。
【0026】 上記接着層の部分架橋ポリマーのゲル分率が5重量%未満であると、高温での凝集力が不十分となり、コールドフローを起こして、自着性シートの側面(サイド)がべたつき易くなることがあり、逆に60重量%を超えると、相互拡散して自着するまでの時間が長くなり、接着層同士を接着しても自着性シートの有する内部応力によって剥離が生じることがある。
【0027】 上記接着層の部分架橋ポリマーのゲル分率は、前述した(d)成分である多官能ビニル系化合物(架橋剤)の種類や量を適正に選択し、架橋度を適正な範囲とすることにより調整することが出来る。
【0028】 又、上記接着層のゾル分の重量平均分子量が50000未満であると、凝集力が乏しくなって自着性シートにべたつきが発生することがあり、逆に700000を超えると、相互拡散して自着するまでの時間が長くなり過ぎることがある。
【0029】 上記接着層のゾル分の重量平均分子量は、前述した(d)成分である多官能ビニル系化合物(架橋剤)と(e)成分であるラジカル連鎖移動剤の種類や量を適正に選択し、複合させることにより調整することが出来る。」
(5d)
「【0071】
【発明の実施の形態】 本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味し、「%」は、特に記載の無い限り、「重量%」を意味する。
【0072】(実施例1)
【0073】(1)光重合性組成物の調製
セパラブルフラスコ中に、(a)成分として2-エチルヘキシルアクリレート60部、(b)成分としてN-ビニルピロリドン40部、(c)成分として商品名「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)0.1部、(d)成分としてヘキサンジオールジアクリレート0.05部及び(e)成分としてラウリルメルカプタン0.05部を投入し、均一に攪拌混合した後、窒素ガスを30分間パージして系内の溶存酸素を除去し、光重合性組成物を調製した。
【0074】(2)自着性シートの作製
上記で得られた光重合性組成物を、10℃に維持されている冷却ステンレス板に密着させた剥離性の表面を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)基材の剥離面上に、塗布厚みが500μmとなるように塗布し、その塗布面上に、剥離性の表面を有するPETフィルム(厚み38μm)の剥離面を積層した。次いで、長さ600mm、40Wのケミカルランプを紫外線の光源として使用し、その照射面の光強度が2mW/cm2となるようにケミカルランプの高さを設定して、積層されたPETフィルム面を介して5分間紫外線を照射し、光重合性組成物の光重合を行った後、PETフィルム基材を剥離して、非粘着性の表面を有する自着性シートを得た。尚、上記光強度は、波長365nmに最大感度を有する光強度測定機(型式「UVR-1」、東京光学機械社製)を用いて測定した光強度である。
【0075】(3)評価
上記で得られた自着性シートの性能(○1ゲル分率、○2重量平均分子量、○3ガラス転移温度、及び、○4電線結束性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。尚、評価は、特に記載の無い限り、23℃-65%RHの雰囲気下で行った。
【0076】 ○1ゲル分率
自着性シートから採取された試料100gを50ccのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、23℃-65%RHの雰囲気下で24時間放置した。次いで、得られた膨潤ゲル溶液を200メッシュのステンレス製膜で濾過した後、濾過残存物の乾燥重量を測定し、試料重量に対する比率を算出してゲル分率(%)を求めた。
【0077】 ○2重量平均分子量
上記ゲル分率の評価中に得られた溶出したゾル分を0.4μmのポアサイズを有するテフロンフィルターで濾過し、濾液を得た。次いで、得られた濾液のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成された溶出時間及び分子量検量線から計算された所謂ポリスチレン換算分子量として重量平均分子量を求めた。
【0078】 ○3ガラス転移温度
粘弾性スペクトロメータを用いて、10Hzの振動周波数でのtanδのピーク温度を求め、ガラス転移温度(℃)とした。
【0079】 ○4電線結束性
自着性シートによって10本の電線を結束し、自着性シート面同士の接着状態(初期自着性)を観察すると共に、接着直後及び接着3日後に強制剥離して、剥離状態を観察した。
【0080】(実施例2)
光重合性組成物の調整において、その配合組成を(a)成分として2-エチルヘキシルアクリレート50部、(b)成分としてN-ビニルピロリドン30部、(c)成分として「イルガキュアー184」0.1部、(d)成分としてヘキサンジオールジアクリレート0.04部、(e)成分としてラウリルメルカプタン0.02部、(f)成分として商品名「KRATON LIQUID Polymer HPVM-1251」(Shell Chemical社製)10部及び粘着付与樹脂(商品名「アルコンP-120」、荒川化学工業社製)20部としたこと以外は実施例1と同様にして、自着性シートを得た。
【0081】(比較例1)
光重合性組成物の調整において、(e)成分であるラウリルメルカプタンを含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして、自着性シートを得た。
【0082】 実施例2及び比較例1で得られた2種類の自着性シートの性能を実施例1と同様にして評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0083】
【表1】
【0084】 表1に示されるように、本発明による実施例1又は実施例2の自着性シートは、優れた初期自着性を示すと共に、接着直後は再剥離が可能であるにもかかわらず、経時後(接着3日後)は優れた接着状態を発現する。
【0085】 これに対し、光重合性組成物中に(e)成分であるラジカル連鎖移動剤を含有しない比較例1の自着性シートは、部分架橋ポリマーのゲル分率及びゾル分の重量平均分子量が高過ぎるため、初期自着性が不十分であるのみならず、経時後(接着3日後)は自然剥離していた。
【0086】
【発明の効果】 以上述べたように、第1発明~第3発明による自着性シートは、優れた自着性を有すると共に、低温環境下でも優れた初期接着性を発揮し、且つ、高温環境下に長期間放置されても容易に剥離せず、耐久性に優れるので、各種部材の結束用や固定用等として好適に用いられる。
【0087】 例えば、自動車のワイヤーハーネスの結束等に用いた場合、自着性シートがコールドフローすることによって、束ねたワイヤーハーネスの隙間を次第に埋めていくだけでなく、車両中の配線孔も埋めていくので、高いシール効果を発揮すると共に、ある程度埋めた後は、架橋による凝集力によりコールドフローを停止するので、長時間後に配線孔に隙間が生じることもない。
【0088】 又、第1発明~第3発明による自着性シートを凹凸の表面を有する難接着性の無機建材等の表面に貼り付けた場合、自然に凹凸面に追従して接着していき、最終的には優れた接着性を発揮するので、接着剤やシーリング剤等としても好適に用いられる。」
イ.甲5に記載された発明
上記甲5には、上記記載(特に下線部)からみて、
「(a)成分:2-エチルヘキシルアクリレート60重量部
(b)成分:N-ビニルピロリドン40重量部
(c)成分:商品名「イルガキュアー184」なる光重合開始剤0.1重量部
(d)成分:ヘキサンジオールジアクリレート0.05重量部
の(a)成分~(d)成分を含有してなる光重合性組成物を、剥離性の表面を有するPETフィルム基材の剥離面に塗布し、光重合させて得られる自着性シートの接着層を構成する組成物であって、該組成物の部分架橋ポリマーのゲル分率が80重量%であり、ゾル分の重量平均分子量が2,000,000であり、且つ、ガラス転移温度が9.2℃である組成物。」
に係る発明(以下「甲5発明1」という。)及び
「上記(a)成分~(d)成分を含有してなる光重合性組成物を、剥離性の表面を有する2枚のPET透明フィルム基材のうち一方のフィルム基材の剥離面上に塗布し、塗布した組成物を挟持するように他方のフィルム基材の剥離面を重ね、基材を透過させるように紫外線(光)を照射し光重合させて得られる甲5発明1の組成物からなる接着層を有する自着性シート。」
に係る発明(以下「甲5発明2」という。)が記載されているものと認められる。
2.取消理由1及び2についての検討
事案に鑑み、本件発明1ないし8につき、それぞれ、取消理由1及び2に関して併せて検討する。
(1)本件発明1について
ア.甲1に係る発明に基づく検討
甲1に記載された発明を主たる引用発明とする本件発明1に関する取消理由1及び2につき併せて検討すると、本件発明1と甲1発明1とは、下記の点で相違し、その余で一致するものと認められる。
相違点1:本件発明1では、「粘着剤」の「ゲル分率が55~90%であり」また「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が100万~250万である」のに対して、甲1発明1では、当該「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」につき特定されていない点
そこで、上記相違点1につき検討するにあたり、甲1発明1に係る「組成物」は、本件発明1の「粘着剤組成物」と同程度の「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」となるか否かにつき検討する。
特許権者が平成29年2月20日付け回答書に添付した乙第4号証実験成績証明書の結果を参酌すると、甲1に記載された各実施例(実施例1ないし5)に係る「粘着剤組成物」(摘示(1d)参照)において、本件発明1の「粘着剤」と同程度の「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」になるということはいえず、また、ほかに、甲1発明1の「粘着剤組成物」であっては、本件発明1の「粘着剤」と同程度の「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」になるものと理解すべき技術常識又は立証が存するものともいえない。
してみると、甲1発明1に係る「組成物」は、本件発明1の「粘着剤組成物」と同程度の「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」となるということはできないから、上記相違点1は、実質的な相違点であって、甲1発明1において、当業者が所望に応じて架橋後の粘着剤組成物のゲル分率及びゾル分の重量平均分子量の範囲を規定することにより、適宜なし得ることということもできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明1と同一であるということはできず、当業者が甲1発明1に基づき容易に発明をすることができたものということもできない。
イ.甲2に係る発明に基づく検討
甲2に記載された発明を主たる引用発明とする本件発明1に関する取消理由1及び2につき併せて検討すると、本件発明1と甲2発明1とは、下記の点で相違し、その余で一致するものと認められる。
相違点2:本件発明1では、「粘着剤」の「ゲル分率が55~90%であり」また「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が100万~250万である」のに対して、甲2発明1では、当該「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」につき特定されていない点
相違点3:本件発明1では、「溶液重合物である(メタ)アクリル酸エステル重合体」であるのに対して、甲2発明1では、「高分子量ポリマー」及び「低分子量ポリマー」の製造における重合法につき特定されていない点
しかるに、上記相違点2につき検討すると、相違点2は、上記ア.で検討した相違点1と実質的に同一であると理解されるところ、甲2には、上記「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」に係る開示がなく、甲2発明1の「粘着剤組成物」であっても、本件発明1の「粘着剤」と同程度の「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」になるであろうと当業者が理解することができる技術常識又は立証が存するものともいえないから、上記相違点1につき説示した理由と同様の理由により、上記相違点2は、実質的な相違点であって、甲2発明1において、当業者が所望に応じて架橋後の粘着剤組成物のゲル分率及びゾル分の重量平均分子量の範囲を規定することにより、適宜なし得ることということはできない。
してみると、上記相違点3につき検討するまでもなく、本件発明1は、相違点2により、甲2発明1と同一であるということはできず、また、当業者が甲2発明1に基づき容易に発明をすることができたものということもできない。
ウ.甲3に係る発明に基づく検討
甲3に記載された発明を主たる引用発明とする本件発明1に関する取消理由1及び2につき併せて検討すると、本件発明1と甲3発明1とは、下記の点で相違し、その余で一致するものと認められる。
相違点4:「ゲル分率」につき、本件発明1では「55~90%」であるのに対して、甲3発明1では「10~55%」である点
しかるに、上記相違点4につき検討すると、上記「ゲル分率」の範囲につき、「55%」の一点につき重複するかに見えるところ、本件発明1においては、55%を超え80%以下の範囲を指向するものと解されるのに対して、甲3には、「ゲル分率」が21~33%である実施例の場合には耐久信頼性及び光漏れ(耐性)に優れるのに対し、「ゲル分率」を60%とした場合につき「比較例2」とされ応力緩和性能に劣るとされている(摘示(3b)【表1】及び【表2】参照)ことからみて、甲3発明1において、「ゲル分率」は実質的に55%を下回るものを指向していることが明らかであって、55%を含めた55%以上のものとすることにつき、実質的な相違点であるとはいえるとともに、当業者が適宜なし得ることとすることはできない。
したがって、本件発明1は、相違点4により、甲3発明1と同一であるということはできず、甲3発明1に基づき当業者が容易に発明することができたものということもできない。
エ.甲4に係る発明に基づく検討
甲4に記載された発明を主たる引用発明とする本件発明1に関する取消理由1及び2につき併せて検討すると、本件発明1と甲4発明1とは、「アクリル系共重合体」の製造に係る「重合法」の点で相違し、その余で一致するものと認められる。
しかるに、特許権者が平成28年9月1日付け意見書(第12頁第11行~第14頁第15行)において主張するとおり、甲4発明1に係る「エマルジョン重合(乳化重合)」により「アクリル系共重合体」を製造する際、乳化剤等の使用が必要であり、本件発明1における「溶液重合物であるアクリル系共重合体」を使用した場合とは区別できるであろうことが推認され、その推認を覆すべき技術常識又は立証はないから、上記「アクリル系共重合体」の製造に係る「重合法」の点は、実質的な相違点であると認められる。
また、甲1(【0034】及び【0038】)並びに甲3(【請求項13】、更に必要ならば【0048】)にもそれぞれ記載されているとおり、偏光板などの光学フィルム用の(メタ)アクリル系粘着剤組成物に使用する(メタ)アクリル系重合体の製造において、溶液重合法とエマルジョン重合法(乳化重合法)は、並列的選択肢としていずれも当業界で周知慣用される重合法であるから、甲4発明1におけるエマルジョン重合(法)による(メタ)アクリル系重合体の製造に代えて、溶液重合法による製造により(メタ)アクリル系重合体を製造することは、当業者が所望に応じて適宜なし得ることであるものの、当該重合法の差異により製造される「粘着剤組成物」は、それぞれ区別できるものであるから、有意な効果を奏しているものと認められ、格別な効果上の差異が存するものと認められる。
してみると、本件発明1は、甲4発明1と同一であるということはできず、甲4発明1(及び甲1又は甲3の開示)に基づき容易に発明することができたものということもできない。
オ.甲5に係る発明に基づく検討
甲5に記載された発明を主たる引用発明とする本件発明1に関する取消理由1及び2につき併せて検討すると、本件発明1と甲5発明1とは、「アクリル系共重合体」の製造に係る「重合法」の点及び当該「アクリル系共重合体」を含有する組成物を架橋して粘着剤組成物とする「架橋方法」の点で相違するものと認められる。
しかるに、甲5発明1に係る「光重合性組成物」「を光重合してなる」「組成物」においては、「ヘキサンジオールジアクリレート」なる架橋性モノマーを使用し架橋重合体とすることにより「ゲル分率が80重量%、ゾル分の分子量が200万である」との特性を有しているのであるものの、特許権者が平成28年9月1日付け意見書(第14頁第16行~第15頁第23行)において主張するとおり、当該「光重合性組成物」が、いわゆる「無溶剤型粘着剤組成物」であることから、本件発明1に係る架橋後の「粘着剤組成物」とその化学構造(特に特許権者が主張する「推定構造」の点)が実質的に同一であるということはできず、同一であろうと認識できるような技術常識又は立証が存するものでもない。
してみると、上記「アクリル系共重合体」の製造に係る「重合法」の点及び当該「アクリル系共重合体」を含有する組成物を架橋して粘着剤組成物とする「架橋方法」の点は、実質的な技術的相違点であるというべきものであり、当業者が所望に応じて適宜なし得ることということはできない。
したがって、本件発明1は、甲5発明1と同一であるということはできず、また、甲5発明1に基づき容易に発明をすることができたものということもできない。
カ.小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、上記甲1ないし甲5のいずれかに記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲5に記載された各発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、本件発明1に係る上記取消理由1及び2については、いずれも理由がない。
(2)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、いずれも本件発明1を直接又は間接に引用するものである。
してみると、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、上記甲1ないし甲5のいずれかに記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲5に記載された各発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないのであるから、本件発明2ないし8についても、上記甲1ないし甲5のいずれかに記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲5に記載された各発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、本件発明2ないし8に係る上記取消理由1及び2についても、いずれも理由がない。
(3)取消理由1及び2についての検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし8に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであるいうことはできないから、同法第113条第2号に該当するものではなく、いずれも取り消すことはできない。
II.他の取消理由について
念のため、申立人が主張する他の取消理由(取消理由3及び4)についても検討する。
1.取消理由3について
申立人が主張する取消理由3は、申立書第25頁第18行~第22行の記載からみて、上記訂正前の本件請求項1における「溶液重合法により得られた」なる記載につき、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスに係る発明特定事項であり、(特許を受けようとする発明が)明確でない、というものと認められる。
しかるに、当該記載については、上記訂正により「溶液重合物である」との物の種別を表す表現となり、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスに係る発明特定事項ではないから、解消されているものと認められる。
したがって、上記取消理由3は、理由がない。
(なお、先の取消理由通知では、この取消理由は通知しなかった。)
2.取消理由4について
申立人が主張する取消理由4は、申立書第25頁第23行~第26頁第3行の記載からみて、本件請求項1に記載の「ゲル分率が55~90%」(訂正後)及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量が100万~250万」なる各事項の実現手段につき、請求項2ないし5に係る手段が発明の詳細な説明に開示されているのみであり、本件請求項1の記載は発明の詳細な説明の開示に対して広く、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない、というもの、すなわち、いわゆるサポート要件に係るものと認められる。
しかるに、請求項の記載に係るサポート要件の適否については、その請求項に記載された事項で特定される発明が、当該発明の解決しようとする課題を解決できるであろうと、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき当業者が認識することができるか否かによって判断すべきもの(必要ならば知財高裁特別部平成17年(行ケ)10042号判決参照)であるところ、請求項に記載された事項を実現する手段の一部が明細書の発明の詳細な説明に開示されていないからといって、直ちにサポート要件に適合しないということはできない。
また、本件特許に係る明細書の実施例及び比較例に係る結果の対比からみて、上記「ゲル分率」及び「ゾル分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による重量平均分子量」の要件を具備することにより、偏光板等の光学部材に適用した際の「耐光漏れ性」及び「耐久性」の両方に優れた粘着剤が得られていることが看取できるから、本件請求項1に記載された事項を具備するものであれば、本件発明1の解決しようとする課題を解決できるであろうと当業者が認識できるものと認められ、本件請求項1の記載が、サポート要件に適合しないものであるということはできない。
したがって、上記取消理由4についても、理由がない。
(よって、先の取消理由通知においても、この取消理由について通知しなかった。)
3.小括
以上のとおり、上記取消理由3及び4については、いずれも理由がなく、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許が、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものということはできないから、同法第113条第4号に該当するものともいえず、取り消すことはできない。
III.当審の判断のまとめ
以上を総合すると、申立人が主張する上記取消理由1ないし4は、いずれも理由がなく、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、いずれも取り消すことができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人の主張及び証拠によって、上記訂正後の本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、いずれも取り消すことができない。
また、ほかに本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり、決定する。
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2016-700095