特許異議申立
2016-700069
照明装置
- 審判番号
- 2016-700069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2010-294562外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月28日
- 審決日
- 2017年07月24日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】板谷 康夫
- 【権利者代理人】板谷 真之
- 【異議申立人】特許業務法人 プロテック
- 分類
- P1652.113-YAA(F21S) / P1652.121-YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5760193号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5760193号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。
特許第5760193号の請求項1-9、14-17に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第5760193号の請求項1~17に係る特許についての出願は、平成27年6月19日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人特許業務法人プロテック(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1~9、14~17に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成28年4月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月7日に訂正請求がなされ、同年9月9日に補正対象書類名を訂正請求書とする手続補正書が提出され、同年9月15日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年10月17日付けで特許異議申立人より意見書が提出され、平成29年1月25日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年3月29日に訂正請求がなされ、同年4月18日に補正対象書類名を訂正請求書とする手続補正書及び意見書が提出され、同年5月12日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年6月14日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
なお、平成28年7月7日になされた訂正請求(同年9月9日に提出された手続補正書により補正されている。)は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2.訂正の適否について
1.訂正の内容
平成29年3月29日になされた訂正請求(同年4月18日に提出された手続補正書により補正されている。)による訂正(以下「本件訂正請求」という。)の内容は、次のとおりである(下線部は訂正箇所を示すものである。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のように訂正する。
【訂正前】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、複数の透明ELパネルの出射光が重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、
各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする照明装置。」
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0008】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記課題を解決するため、本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、複数の透明ELパネルの出射光が重合した光を照射することを特徴とする。」
【訂正後】
「上記課題を解決するため、本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする。」
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置」
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0009】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「上記照明装置において、前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることが好ましい。」
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記透明ELパネルは、一方の面に陽極及び陰極端子が、他方の面に前記陽極及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。」
【訂正後】
「前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。」
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0010】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記透明ELパネルは、一方の面に陽極及び陰極端子が、他方の面に前記陽極及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることが好ましい。」
【訂正後】
「上記照明装置において、前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることが好ましい。」
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0015】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。」
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0016】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。」
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0017】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。」
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「透明ELパネル」に関し、訂正前の請求項2及び請求項3の発明特定事項を付加して限定するとともに、「前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され」ることを限定し、さらに、「EL素子がパネル枠に組み込まれて構成された」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3は、請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「透明ELパネル」に関し、願書に添付した明細書の段落【0029】の「パネル枠21には、一方の面に陽極端子22a及び陰極端子22bが、他方の面に陽極端子22a及び陰極端子22bに夫々対応する端子受け部23a,23bが設けられる。各端子22a,22bは凸形状に、また、端子受け部23a,23bは凹形状に形成され、各端子22a,22bが端子受け部23a,23bに嵌まり込むことにより、ELパネル2同士が電気的に接続される。」との記載に基づき限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4は、上記訂正事項3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5は、請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「陽極及び陰極端子」に関し、願書に添付した明細書の段落【0029】の「陽極端子22aと陰極端子22bとは、夫々異なる形状に形成されており、陽極端子22aは、陰極用の端子受け部23bに嵌まり込まないように、陰極端子22bは、陽極用の端子受け部23aに嵌まり込まないように構成されている。」との記載に基づき限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6は、上記訂正事項5に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7、9、11は、引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8、10、12は、上記訂正事項7、9、11に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)一群の請求項について
訂正事項1、3、5、7、9、11に係る訂正前の請求項1~17について、請求項2~17は、請求項1を引用するものであるから、請求項1~17は一群の請求項である。そして本件訂正請求は、かかる一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
(11)明細書の訂正について
訂正事項2、4、6、8、10、12の明細書の訂正は、請求項1~17に関係するものであり、本件訂正請求は、請求項1~17の全てを対象とするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
3.小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~17〕についての訂正を認める。
第3.特許異議申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~17に係る発明(以下「本件特許発明1~17」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載した事項により特定される次のとおりのものであ。
「【請求項1】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、
各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置
【請求項3】
前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記器具本体は、前記複数の透明ELパネルを収容する筐体を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記筐体は、該筐体の内面に設けた溝部に押さえ部材が嵌め込まれ、該押さえ部材が、前記透明ELパネルを前記溝部で保持することを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記器具本体は、前記透明ELパネルに対向する部分が、光反射性を有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
光反射層を有するELパネルを更に備え、該光反射層を有するELパネルが、重ね合わされた前記複数の透明ELパネルの最外部に配置されることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項9】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項10】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項11】
前記器具本体は、前記透明ELパネルのスライド方向に直交する方向に複数並設されたスライド溝を備えることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記透明ELパネルが、スライド扉の窓部に配設されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記透明ELパネルによって引き戸が構成されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
前記複数の透明ELパネルを個別に点灯制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項15】
前記複数の透明ELパネルは、夫々発光色が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項16】
前記複数の透明ELパネルの発光色は、RGB三原色を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項17】
前記複数の透明ELパネルは、発光面の面積が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の照明装置。」
2.取消理由の概要
訂正前の請求項1~9、14~17に係る特許に対して平成29年1月25日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
本件の請求項1、2、4、6、7、14~17に係る発明は、刊行物1に記載されている発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
記
刊行物1:特開2005-190768号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開2007-335146号公報(甲第2号証)
3.刊行物の記載事項
(1)刊行物1には、次の事項が図面と共に記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
(1a)「【0001】
本発明は、有機電界発光素子を用いた照明装置に関する。」
(1b)「【0003】
本発明は、上記要求に鑑みなされたものであり、照度を自由に設定可能な、有機電界発光素子を用いた新規な構成の照明装置を提供することをその課題とする。」
(1c)「【0015】
《第一の照明装置》
図1に、第一の照明装置10の断面構成を示す断面模式図を示す。図1に示すように、第一の照明装置10は、第一の有機エレクトロルミネッセンスデバイスとしての有機エレクトロルミネッセンスデバイス(以下、適宜「有機ELデバイス」と表記する。)11を備え、有機ELデバイス11の光取出側に、第二の有機エレクトロルミネッセンスデバイスとしての有機ELデバイス12及び有機ELデバイス13を備える。また、第一の照明装置10は、その外部を覆う筐体14を備える。
【0016】
有機ELデバイス11は、透明基板110の一方の面に有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」と表記する。)111が設けられたボトムエミッション型のデバイスである。
有機ELデバイス12は、透明基板120の一方の面に有機EL素子121が設けられたボトムエミッション型のデバイスであり、有機ELデバイス11の光取出側に配置されている。
有機ELデバイス13は、透明基板130の一方の面に有機EL素子131が設けられたボトムエミッション型のデバイスであり、有機ELデバイス11及び有機ELデバイス12の光取出側に設けられる。
【0017】
図1における矢印H11は、有機ELデバイス11における透明基板110が有機EL素子111と接する面(以下、適宜「EL面」と表記する。)の法線であり、矢印が示す方向は、有機ELデバイス11の光が発せられる方向を示す。有機ELデバイス11は、矢印H11以外の方向にも光を発するが(有機EL素子111は一般に等方向光出射特性を有するが)、照明装置10として利用される光は、主として矢印H11方向の光並びにこの矢印を中心として一定の角度範囲内の方向へ発せられる光である。以下、矢印で示す方向を、有機ELデバイスの光出射方向(正面方向)と適宜記載する。
図1における矢印H12及びH13は、それぞれ、有機ELデバイス12、13の光出射方向を示す。
【0018】
有機ELデバイス11、12及び13は、それぞれ、電圧が印加されることで、有機EL素子111、121及び131から光が発せられる。
なお、有機ELデバイス11、12及び13(有機EL素子111、121及び131)は、それぞれ別個の駆動回路と接続していてもよく、同一の駆動回路と接続していてもよい。また、互いに並列に接続されていてもよく、直列に接続されていてもよい。さらに、上記三つの有機ELデバイスの内の二つが同一の駆動回路に接続されていたり、互いに並列に接続されていたり、互いに直列に接続されていたりしてもよい。
【0019】
筐体14は、装置外部を覆い、最も光取出側に設けられた第二の有機ELデバイスである有機ELデバイス13から出射された光を装置外部へ取り出すための機構である窓部141を備える。窓部141は、有機ELデバイス13から「出射された」光を取り出す機構であるため、有機ELデバイス13の有機EL素子131から「発せられた」光のみならず、好ましくは、有機ELデバイス11や12から「発せられた」光も透過できる位置に設けられる。例えば図1に示すように、各透明基板110、120及び130のEL面を互いに平行に設定し、各有機ELデバイス11、12及び13の光出射方向が平行になるようにし、この光出射方向に窓部141を設ければよい。」
(1d)「【0027】
また、従来の照明装置では、実現できない照度を実現できる。
従来は、求められている輝度を発することのできる有機ELデバイスが実在しない場合には、新規な有機発光材料等を開発したり、新規な素子構造を開発したりするなどしなければならなかった。
これに対して、照明装置10は、求められている照度を実現するためには、第二の有機ELデバイスの数を変更するだけでよい。これは、有機ELデバイスが、透明基板及び透明な有機EL素子で構成されているため、すべての有機ELデバイスから発せられた光を窓部141から装置外部へ出射できるからである。」
(1e)「【0029】
(効果2:種々の色を表現できる)
照明装置10は、各有機ELデバイスは、他の少なくとも一つの有機ELデバイスと、発する色の色度が異なるようにすることで、一つの有機ELデバイスのみを用いた照明装置では表現することの難しい色を表現することができる。
例えば、有機ELデバイス11から赤色の光を発するようにし、有機ELデバイス12から緑色の光を発するようにし、有機ELデバイス13から青色の光を発するようにし、各デバイスから発せられる光の量を調整すれば、窓部141から照明装置10外部へ出射される光の色を白色にすることができる。
当然、他の色を表現することもできる。また、各有機ELデバイスが同一の色の光を発するようにしてもよい。
【0030】
(効果3:使用不能になりにくい、修理が容易)
照明装置10は、一つ若しくは複数の有機ELデバイスが壊れるなどしても、実質的に照明装置として機能することができる。
例えば、一つ若しくは複数の有機ELデバイスが光を発しなくなってしまったとしても、他の有機ELデバイスが光を発することができれば、照明装置として実質的に機能することができる。また、光を発しなくなってしまった有機ELデバイスのみを交換すれば、照明装置10の初期性能と同等の性能(照度等)を得ることが可能となる。つまり、一つの有機ELデバイスで構成された照明装置と比較して、照明装置10の全部品を交換したり、全部品を修理したりする必要がなくなる可能性が高い。」
(1f)「【0034】
(変形例1:筐体14の内側に光反射性能を有する部材を設ける)
例えば、鏡面14の内側に光反射性能を有する部材(光反射手段)を設けるとよい。これにより、有機ELデバイスから窓部141方向へ向かわなかった光の一部又は全部を、窓部141へ進ませ、窓部141から照明装置10外部へ出射させることが可能となる。したがって、光反射手段を設けない構成と比べて、照明装置10外部へ出射される光の量を多くする(光取出効率を高くする)ことが可能となる。
【0035】
光反射手段は、公知の手段を採用すればよく、これを筐体14内に配置すればよい。
例えば、筐体14の内側の一部又は全面を鏡面としてもよい。このように鏡面とするには、筐体14とされた際に光反射性能を有する材料によって筐体14を構成したり、光反射性能を有する金属や樹脂などの部材を筐体14の内側に貼り合わせたり蒸着させたりするなどすればよい。」
(1g)「【0041】
(変形例3:有機ELデバイスの一つ若しくは複数を、他のデバイスとは別個に点灯/非点灯制御できるようにする)
有機ELデバイスのうちの一つ若しくは複数を、他のデバイスとは別個に点灯/非点灯できるようにすれば、照明装置10から出射される光の量を調整することが可能となる。なお、各有機ELデバイスの点灯/非点灯をそれぞれ制御できるようにしてもよい。また、一つ若しくは複数の有機ELデバイスに印加する電圧の大きさを調整できるようにしてもよい。」
(1h)「【0070】
(有機EL素子111、121、131)
有機EL素子111、121及び131は、透明電極と背面電極との間に、両電極に電圧が印加されることで発光する有機発光材料を含有する有機層が狭持された構成であり、公知の有機EL素子における公知の層構成及び公知の材料の層にすればよく、公知の製造方法によって製造できる。
【0071】
第二の有機ELデバイスである有機EL素子121及び131の背面電極は透明である必要がある。
第一の有機ELデバイスである有機EL素子111の透明電極は、背面電極よりも光取出側(窓部141側)となるように設けられる必要がある。また、有機EL素子111の背面電極を光反射性電極とすれば、各有機ELデバイスから、窓部141とは反対方向へ発せられた光を窓部141側へ進ませることが可能となる。
まず、有機層について説明する。」
(1i)「【0078】
電子注入輸送層は、陰極(本例では背面電極42)・・・」
(1j)「【0080】
透明電極は、一方が陽極として機能し・・・」
(1k)「【0081】
陽極形成用の材料としては、・・・
これらの材料の内、金属や合金等を用いる場合には、光を透過できるようにするために十分薄く成膜する必要がある。」
(1l)「【0091】
陰極は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、イオンプレ-ティング法、電子ビ-ム蒸着法などの公知の薄膜成膜法によって形成できる。
次に、有機EL素子に設けてもよいその他の層について説明する。」
(1m)「【0107】
《第三の照明装置30》
第三の照明装置30は、光取出側に設けられた有機ELデバイスほど、有機EL素子の面積が広くなるようにされている点以外は、第一の照明装置と同様に構成でき、また、同様に変形することができる。」
(2)刊行物2には、次の事項が図面と共に記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、複数の発光パネルで構成される発光パネルシステムに関するものである。」
(2b)「【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単に各発光パネルの電気的な導通を図ることができ、かつ、良好な外観を得ることができる発光パネルシステムを提供することを目的とする。」
(2c)「【0011】
図1に、本発明の一実施形態に係る発光パネルシステム1Aを示す。なお、本実施形態では、図1の左右方向を左右方向、図1の上下方向を前後方向として説明する。
【0012】
発光パネルシステム1Aは、左右方向に並んで配置される複数(図1では2つ)の発光パネル2Aを備えている。
【0013】
前記各発光パネル2Aは、図2に示すように、隣り合う発光パネル2Aが合決り状に連結できるように、所定の厚み(例えば2~3cm程度)を有するパネル部分の下端部から右方に突出する第1張り出し部4aと、前記パネル部分の上端部から左方に突出する第2張り出し部5aとを備えており、隣り合う発光パネル2Aの第1張り出し部4aと第2張り出し部5aとが上下に重なり合うようになっている。
【0014】
第1張り出し部4aの上面には陽極端子6Bおよび陰極端子7Bが、第2張り出し部5aの下面には陽極端子6Aおよび陰極端子7Aがそれぞれ前後に並んで設けられている。これらの陽極端子6A,6B同士および陰極端子7A,7B同士は、左右方向に延びる直線上に並ぶ位置に設けられており、隣り合う発光パネル2Aの第1張り出し部4aと第2張り出し部5aとが重ね合わされたときに、陽極端子6A,6B同士および陰極端子7A,7B同士が接触するようになっている。そして、一番左に配置される発光パネル2Aの陽極端子6Aおよび陰極端子7Aに電源が接続され、一番右に配置される発光パネル2Aの陽極端子6Bおよび陰極端子7Bに絶縁性のダミー部材9Aが接続されるようになる。 【0015】
具体的には、前記各発光パネル2Aは、図3に示すように、透明基板4と、この透明基板4の上面に配置される発光素子3と、この発光素子3を覆うカバー体5とを有している。なお、図3(a)では、カバー体5を二点鎖線で示している。
【0016】
前記透明基板4は、例えばガラス等で構成されており、前後方向の寸法(例えば30cm)よりも左右方向の寸法が僅かに長い矩形板状をなしている。
【0017】
前記発光素子3は、有機ELを利用したものであり、透明基板4の上面に順次積層される第1電極31、発光層32、および第2電極33と、これらを覆うように配設される封-止層34とからなっている。なお、発光素子3としては、有機ELを利用したものに限らず、無機ELを利用したものであってもよい。」
(2d)「【0021】
前記カバー体5は、絶縁性の材料で構成されており、下方に開口する容器状の本体部5bを有している。この本体部5bは、平面視で正方形となる形状に形成されており、前記透明基板4の右端部を残すようにして当該透明基板4の上面を略全面的に覆っている。すなわち、透明基板4の右端部が、カバー体5よりも右方に張り出す第1張り出し部4aとなっている。そして、本体部5bは、透明基板4の上面に接着剤等で接合されている。」
(2e)「【0024】
前記陽極端子6Aおよび陰極端子7Aは、第2張り出し部5aの下面およびカバー体5の本体部5bの左端面に沿うように正面視で略L字状をなしている。この陽極端子6Aおよび陰極端子7Aは、第2張り出し部5aの下面に設けられることによって当該下面に上方から支持されている。一方、前記陽極端子6Bおよび陰極端子7Bは、上方に突となる形状に形成されていて、下方に押圧されると弾性変形するようになっている。この陽極端子6Bおよび陰極端子7Bは、第1張り出し部4aの上面に設けられることによって当該上面に下方から支持されている。このため、陽極端子6Bおよび陰極端子7Bは、図4に示すように、下方に弾性変形しながら陽極端子6Aまたは陰極端子7Aに接触するようになる。
【0025】
なお、陽極端子6A,6B同士および陰極端子7A,7B同士は、少なくとも一方が弾性変形しながら接触するようになっていればよく、陽極端子6Aおよび陰極端子7Aも下方に突となる形状に形成されていてもよいし、陽極端子6Aおよび陰極端子7Aのみが下方に突となる形状に形成されていてもよい。」
(2f)「【0032】
また、前記実施形態では、発光素子3が並列接続されるようになっているが、図5に示す変形例の発光パネルシステム1Bのように、発光素子3を直列接続することも可能である。」
4.刊行物1に記載された発明
刊行物1の上記記載事項(1a)~(1m)から、以下の事項が認定できる。
・記載事項(1h)の段落【0070】の「有機EL素子111、121及び131は、透明電極と背面電極との間に、両電極に電圧が印加されることで発光する有機発光材料を含有する有機層が狭持された構成であり」との記載、段落【0071】の「有機EL素子111の透明電極は、背面電極よりも光取出側(窓部141側)となるように設けられる必要がある。」との記載、及び【図1】に示された透明基板110,120,130と有機EL素子111,121,131の配置関係から、有機EL素子111,121,131は、透明基板110,120,130上に陽極である透明電極、発光層及び陰極である透明な背面電極を順に積層して成ることが理解できる。
・記載事項(1c)の段落【0017】の記載内容及び【図1】の図示内容から、照明装置10は、複数の有機ELデバイス11,12,13の光出射領域が互いに重なり合い、該複数の有機ELデバイス11,12,13の出射光が重合した光を照射するものといえる。また、(1d)の段落【0027】の「照明装置10は、求められている照度を実現するためには、第二の有機ELデバイスの数を変更するだけでよい。これは、有機ELデバイスが、透明基板及び透明な有機EL素子で構成されているため、すべての有機ELデバイスから発せられた光を窓部141から装置外部へ出射できるからである。」との記載から、前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され、重ね合わされたときに、各有機ELデバイス11,12,13の出射光を重合した光を照射することが理解できる。
以上の記載事項(1a)~(1m)、上記認定事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「透明基板110,120,130上に陽極である透明電極、発光層及び陰極である透明な背面電極を順に積層して成る有機EL素子111,121,131で構成した複数の有機ELデバイス11,12,13と、前記複数の有機ELデバイス11,12,13の光出射領域が互いに重なり合うように前記有機ELデバイス11,12,13を所定の位置に固定する筐体14と、を備え、
前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され、重ね合わされたときに、各有機ELデバイス11,12,13の出射光を重合した光を照射し、
有機ELデバイス11,12,13は、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続されている照明装置10。」
5.対比・判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と刊行物発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
・後者の「透明基板110,120,130」は前者の「透光性の基板」に相当する。
・後者の「陽極である透明電極」及び「陰極である透明な背面電極」は、記載事項(1k)及び記載事項(1l)に、金属や合金等を成膜することで形成することが記載されているから、前者の「透明導電膜から成る陽極」及び「透明導電膜から成る陰極」に相当する。
・後者の「発光層」は前者の「発光層」に相当する。
・後者の「有機ELデバイス11,12,13」は、記載事項(1c)の段落【0017】の記載内容及び【図1】を参酌すると透明であるから、それを構成する「有機EL素子111,121,131」も透明である。そうすると、後者の「有機EL素子111,121,131で構成した複数の有機ELデバイス11,12,13」は前者の「透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネル」に相当する。
・後者の「有機ELデバイス11,12,13を所定の位置に固定する筐体14」は前者の「透明ELパネルを保持する器具本体」に相当し、後者の「照明装置10」は前者の「照明装置」に相当する。
・後者の「前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され、重ね合わされたときに、各有機ELデバイス11,12,13の出射光を重合した光を照射し」と前者の「前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し」とは、「前記複数の透明ELパネルは、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し」の限度で共通する。
そうすると、両者は、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射する照明装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本件特許発明1は、「前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され」るのに対し、
刊行物発明は、「前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され」る点。
〔相違点2〕
本件特許発明1は、「透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネル」であり、「各々の前記透明ELパネルは、一方の面に陽極端子及び陰極端子が、他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられている」のに対し、
刊行物発明は、「複数の有機ELデバイス11,12,13」がパネル枠に組み込まれて構成されているか明らかでなく、また「有機ELデバイス11,12,13は、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続されている」ものであるが、有機ELデバイス11,12,13を互いに並列に接続する際の具体的な電気的接続構造も明らかでない点。
(イ)判断
事案に鑑み〔相違点2〕を先に検討する。
刊行物2には、先の1(2)の記載事項(2a)~(2f)及び【図1】~【図4】の図示内容を総合すると、「透明基板4の上面に配置される発光素子3と該発光素子3を覆う下方に開口する容器状の本体部5bを有するカバー体5とからなる複数の発光パネルシステム1A,2Aを左右方向に並んで配置する接続構造において、複数の発光パネルシステム1A,2Aが、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続さるものであり、各々の発光パネルシステム1A,2Aは、右端面に沿うように配置され上方に突となる形状に形成されている陽極端子6B及び陰極端子7Bが、左端面に沿うように前記陽極端子6B及び陰極端子7Bに夫々対応する正面視で略L字状をなしている陽極端子6A及び陰極端子7Aが設けられていること」が記載されている。(以下「刊行物2に記載されている事項」という。)
刊行物2に記載されている事項には、複数の発光パネルシステム1A,2Aが、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続されている発光パネルシステムにおいて、各々の発光パネルシステム1A,2Aは、一方の面に陽極端子及び陰極端子が、他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることが開示されているといえる。
しかしながら、刊行物2に記載されている事項の「カバー体5」は「透明基板4の上面に配置される発光素子3」(本件特許発明1の「透明のEL素子」に相当する。)を覆う形状であり、枠状ではないから本件特許発明1の「パネル枠」に相当するものとはいえない。また、当該「カバー体5」は文字どおり「発光素子3」をカバーするもの、つまり外部からの異物等の侵入を防止するためのものと考えられるから、「カバー体5」を枠状に設計変更することには阻害要因が存在する。
したがって、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用しても相違点2に係る本件特許発明1の構造には至らないので、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用しても上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
イ 本件特許発明2、4、6、7、14~17について
本件特許発明2、4、6、7、14~17は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 小括
以上、検討したとおり、本件特許発明1、2、4、6、7、14~17は、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、取消理由によっては、請求項1、2、4、6、7、14~17に係る特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(2-1)異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
ア 訂正前の請求項1、2、4~7、14~17に係る発明は、刊行物発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
イ 訂正前の請求項3に係る発明は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 訂正前の請求項8、9に係る発明は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び甲第3号証(特開2008-186599号公報)に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2-2)当審の判断
ア 特許異議申立理由アについて
第3.5.ア(ア)で述べたように、本件特許発明1と刊行物発明とは、〔相違点1〕及び〔相違点2〕で相違するから、本件特許発明1は刊行物発明ではない。
本件特許発明2、4~7、14~17は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に刊行物発明ではない。
イ 特許異議申立理由イについて
本件特許発明3は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 特許異議申立理由ウについて
(ア)本件特許発明8について
a 対比
先の5.(1)ア(ア)に述べた対比関係を踏まえて、本件特許発明8と刊行物発明とを対比すると、
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備える照明装置。」の点で一致し、以下の〔相違点3〕で相違する。
〔相違点3〕
本件特許発明8は、「前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射する」構成を有しているのに対し、
刊行物発明は、かかる構成を備えていない点。
b 判断
〔相違点3〕について 検討する。
甲第3号証の段落【0016】、段落【0017】及び段落【0021】並びに【図1】を参酌すると、甲第3号証には「面発光部を有するメインパネル1に対して同じく面発光部を有する各サブパネル2,3,4を回動自在に支持すること」(以下「甲第3号証に記載されている事項」という。)が記載されているといえるが、メインパネル1及び各サブパネル2,3,4の出射光を重合した光を照射するものではないから、刊行物発明に刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項を適用しても上記相違点3に係る本件特許発明8の構成に至らない。
したがって、本件特許発明8は、当業者であっても刊行物発明、刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
(イ)本件特許発明9について
a 対比
先の5.(1)ア(ア)に述べた対比関係を踏まえて、本件特許発明9と刊行物発明とを対比すると、
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備える照明装置。」の点で一致し、以下の〔相違点4〕で相違する。
〔相違点4〕
本件特許発明9は、「前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射する」構成を有しているのに対し、
刊行物発明は、かかる構成を備えていない点。
b 判断
〔相違点4〕について 検討する。
上記〔相違点3〕で検討したとおり、甲第3号証に記載されている事項は、メインパネル1及び各サブパネル2,3,4の出射光を重合した光を照射するものではないから、刊行物発明に刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項を適用しても上記相違点4に係る本件特許発明9の構成に至らない。
したがって、本件特許発明9は、当業者であっても刊行物発明、刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は理由がない。
第6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700069