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特許異議申立

2025-700239

照明器具

審判番号
2025-700239
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-150930
登録番号
7540563
請求日
2025年02月27日
審決日
2026年03月23日
公報発行日
2026年06月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱電機株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
  • 【権利者】三菱電機照明株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
  • 【異議申立人】末久 真弘
審判長/審判官
  • 審判長 倉橋 紀夫
  • 審判官 藤崎 詔夫
  • 審判官 横溝 顕範
分類
P1651.112-YAA(F21S) / P1651.113-YAA(F21S) / P1651.121-YAA(F21S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7540563号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7540563号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7540563号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7540563号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年5月28日に出願された特願2018-101508号の一部を令和4年6月14日に新たな特許出願とした特願2022-95606号の一部を令和5年9月19日に新たな特許出願としたものであって、令和6年8月19日に特許権の設定登録がされ、同年8月27日に特許掲載公報が発行された。 その後、特許異議申立人末久真弘(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。 本件特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年 2月27日 :特許異議の申立て(全請求項) 同年 5月16日 :手続補正書(方式)、手続補正書(方式) の提出 同年 8月25日付け:取消理由通知書 同年10月23日 :特許権者より訂正請求書及び意見書の提出 同年12月 9日 :申立人より意見書の提出 第2 本件訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年10月23日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 請求項1に 「前記カバーは、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きい照明器具。」 とあるのを 「前記カバーは、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きく、 前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は傾いている照明器具。」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0006】に 「前記カバーは、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きいことを特徴とする。」 とあるのを 「前記カバーは、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きく、前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は傾いていることを特徴とする。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、「前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は傾いている」との構成を追加することで、「前記傾斜部の垂線方向」を具体的に特定し、限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項との関係を検討すると、【図1】及び【図14】には、光源ユニット100が水平方向を向いているのに対して、傾斜部214の垂線方向は斜め下方に傾いていることが明示されている。 そうすると、ライトユニットが向く方向に対して傾斜部の垂線方向は傾いていることが、本件明細書等に記載されていると認められる。 したがって、訂正事項1は、本件明細書等の記載により導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項の規定に適合する。 そして、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴う、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。 4 訂正についてのむすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 壁面又は天井面に取り付けられた底面と、 長尺状のライトユニットと、 検知範囲に人が存在するか否かを検知して前記ライトユニットを点灯制御する制御ユニットと、 前記底面と反対側に前記ライトユニットが取り付けられた取付凹部と、 前記ライトユニットの短手方向の少なくとも一方の側に設けられ、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜し、前記制御ユニットを露出させる開口が形成された傾斜部と、 を備え、 前記制御ユニットは、前記傾斜部の前記開口を通って外部空間へ突出した突出部を有し、 前記突出部は、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜したカバーを有し、 前記カバーは、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きく、 前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は傾いている照明器具。 【請求項2】 前記ライトユニットは、光源部と、前記光源部に対して前記取付凹部と反対側で前記光源部を覆うとともに、前記取付凹部と反対側へ向かって突出している透光カバーと、を有する請求項1に記載の照明器具。 【請求項3】 前記ライトユニットの長手方向において前記ライトユニットの外側に配設された非常光源部を有する請求項1または請求項2に記載の照明器具。 【請求項4】 前記非常光源部が非常時に要求される機能を維持しているかどうかを点検するときに操作される点検スイッチを有する点検部が前記傾斜部に取り付けられた請求項3に記載の照明器具。」 第4 取消理由の概要と当審の判断 1 取消理由の概要 訂正前の本件特許に対して令和7年8月25日付け取消理由通知で通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 取消理由1(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 取消理由2(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然実施をされた発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 取消理由と請求項及び引用文献について (1)引用文献等一覧 以下、甲第○号証を「甲○」という。 甲4 :パナソニック株式会社製“直付XLF433CTN LE9"の仕様図 甲4の1:甲4が「仕様図」である旨が記載されているホームページの写し 甲5 :パナソニック株式会社「お知らせ」 " LED階段通路誘導灯(非常用照明器具兼用型)の点灯時間確認(緊急点検)に関するお施主様への大切なお願い" 甲5の1:甲5が「お知らせ」である旨が記載されているホームページの写し (2)取消理由と証拠の関係 理由1 請求項1~4:甲4 理由2 請求項1~4:甲4 2 取消理由についての当審の判断 (1)甲4~甲5の1から認定できる事項 ア 甲4について 甲4には、パナソニック株式会社製の組合せ品番”直付XLF433CTN LE9”、本体品番”NNLF41035”について、以下のことが示されている。 (ア)「 [図:0001436168000001.jpg] 」 (イ)「 [図:0001436168000002.jpg] 」 (ウ)「 [図:0001436168000003.jpg] 」 (エ)「 [図:0001436168000004.jpg] 」 (オ)「 [図:0001436168000005.jpg] 」 (カ)「 [図:0001436168000006.jpg] 」 (キ)「 [図:0001436168000007.jpg] 」 (ク)「 [図:0001436168000008.jpg] 」 (ケ)「 [図:0001436168000009.jpg] 」 (コ)上記(ア)~(ケ)の記載から、以下のことが看取できる。 a 上記(イ)及び(ウ)によれば、背面図に示された「4-12×20穴(取付用)」が、壁面又は水平天井に取り付けるための穴であることが分かるから、本体1の背面が壁面又は水平天井に取り付けられると認められる。 b 上記(イ)によれば、本体1は、山型箱形状であることが看取できる。 c 上記(イ)及び(エ)によれば、高輝度LEDを光源とするライトバー3は長尺状であることが看取できる。 d 上記(ク)及び(ケ)によれば、センサ6は、検知範囲に人などの動体を検知するとライトバー3を点灯することが理解できる。 e 上記(イ)によれば、本体1の背面と反対側には、ライトバー3が取り付けられているから、本体1には、ライトバー3を取り付ける取付部があることが理解できる。 f 上記(イ)によれば、プレート2の下側部分は、ライトバー3の短手方向の下側において、ライトバー3から離れるにつれて背面に近づくように傾斜していることが看取できる。 g 上記(イ)によれば、プレート2の下側部分は、ライトバー3の短手方向の下側にセンサ6が設けられていることが看取できる。 h 上記(イ)によれば、センサ6は、プレート2の下側部分から外部空間へ突出した突出部を有していることが看取できる。 i 上記(イ)によれば、センサ6は、短手方向においてライトバー3から離れるにつれて背面に近づくように傾斜した形状を有していることが看取できる。さらに、その形状の傾斜角度は、プレート2の下側部分の傾斜角度と等しいかそれよりも大きいことが看取できる。 j 上記(イ)(エ)(オ)によれば、ライトバー3は、高輝度LEDと、高輝度LEDに対して取付部と反対側で高輝度LEDを覆うとともに、取付部と反対側へ向かって突出しているポリカーボネートプリズム(乳白)のカバーとを有していることが看取できる。 k 上記(イ)によれば、ライトバー3の長手方向において、ライトバー3の外側に非常用光源部が配設されていることが看取できる。 l 上記(イ)及び(カ)によれば、非常用光源部を自動的に定格時間非常点灯し蓄電池の状況を自己点検するときに押される自己点検スイッチと、結果を表示するLEDが、プレート2に設けられていることが看取できる。 m 上記(イ)によれば、ライトバー3が向く方向と、プレート2の下側部分の垂線方向は、略同じ方向であることが看取できる。 イ 甲4の1について 甲4は、甲4の1に記載されている以下のリンクからダウンロードしたPDFファイルである。 「 [図:0001436168000010.jpg] 」 そうすると、甲4は「仕様図」といえる。 ウ 甲5について 甲5には、" LED階段通路誘導灯(非常用照明器具兼用型)の点灯時間確認(緊急点検)に関するお施主様への大切なお願い"として、以下のことが示されている。 (ア)「 [図:0001436168000011.jpg] 」 (イ)「 [図:0001436168000012.jpg] (中略) [図:0001436168000013.jpg] 」 (ウ)上記(ア)及び(イ)の記載から、以下のことが看取できる。 a パナソニック株式会社の販売するLED階段通路誘導灯のうち、階段灯天井直付型(壁直兼用)の品番NNLF41035は、その発売年月が「2017年6月」であること。 b 上記aを踏まえると、品番NNLF41035を用いたLED階段通路誘導灯が、「2017年6月」から販売され、施主により施工設置されていたと認められる。 エ 甲5の1について 甲5は、甲5の1に記載されている以下のリンクからダウンロードしたPDFファイルである。 「 [図:0001436168000014.jpg] 」 オ 公然実施発明 (ア)上記ア~エに示すように、甲4に記載された本体品番NNLF41035を用いたLED階段通路誘導灯が、「2017年6月」から販売され、施主により施工設置されていたと認められる。 ここで、甲4に示されるライトバー品番 NNL4310FN LE9の発売年月は不明だが、仮に、当該ライトバーが本件特許の出願日後に発売されていたとしても、上記ウ(ウ)bに示すように、本体品番NNLF41035を用いたLED階段通路誘導灯が本件特許の出願日前に発売、施工設置されていたということは、ライトバー品番 NNL4310FN LE9と略同様のライトバーと、当該本体品番 NNLF41035と、を組み合わせたLED階段通路誘導灯の販売、施工設置、又は使用が本件特許の出願日前に実施されていたと認められる。 したがって、以下の発明が本件特許出願前に公然実施されていたといえる。 <公然実施発明4> 「山型箱形状の本体1と、 壁面又は水平天井に取り付けられる本体1の背面と、 長尺状のライトバーと、 検知範囲に人などの動体を検知するとライトバーを点灯するセンサ6と、 背面と反対側にライトバーが取り付けられた本体1の取付部と、 ライトバーの短手方向の下側に設けられ、短手方向においてライトバーから離れるにつれて背面に近づくように傾斜し、センサ6が設けられたプレート2の下側部分と、を備え、 センサ6は、プレート2の下側部分から外部空間へ突出した突出部を有し、 センサ6の突出部は、短手方向においてライトバーから離れるにつれて背面に近づくように傾斜した形状を有し、 センサ6の突出部の形状は、傾斜角度がプレート2の下側部分の傾斜角度と等しいかそれよりも大きく、 ライトバー3が向く方向と、プレート2の下側部分の垂線方向は、略同じ方向であり、 ライトバーの長手方向においてライトバーの外側に配設された非常用光源部を有し、 非常用光源部を自動的に定格時間非常点灯し蓄電池の状況を自己点検するときに押される自己点検スイッチと、結果を表示するLEDが、プレート2の下側部分に設けられた、 本体品番NNLF41035を用いたLED階段通路誘導灯。」 (2)本件発明1について(取消理由1及び取消理由2) ア 対比 (ア)本件発明1と公然実施発明4を対比すると、後者の「壁面又は水平天井」は前者の「壁面又は天井面」に相当し、以下同様に、「本体1の背面」と「背面」は「底面」に、「ライトバー」は「ライトユニット」に、「本体品番NNLF41035を用いたLED階段通路誘導灯」は「照明器具」に、それぞれ相当する。 (イ)公然実施発明4の「検知範囲に人などの動体を検知するとライトバーを点灯する」態様は、本件発明1の「検知範囲に人が存在するか否かを検知して前記ライトユニットを点灯制御する」態様に相当するから、公然実施発明4の「センサ6」は、本件発明1の「制御ユニット」に相当する。 (ウ)公然実施発明4の「背面と反対側にライトバーが取り付けられた」態様は、本件発明1の「前記底面と反対側に前記ライトユニットが取り付けられた」態様に相当するから、公然実施発明4の「本体1の取付部」と、本件発明1の「取付凹部」とは、「取付箇所」の点で共通する。 (エ)公然実施発明4の「ライトバーの短手方向の下側に設けられ、短手方向においてライトバーから離れるにつれて背面に近づくように傾斜し」ている態様は、本件発明1の「前記ライトユニットの短手方向の少なくとも一方の側に設けられ、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜し」ている態様に相当し、公然実施発明4の「プレート2の下側部分」に「センサ6が設けられた」態様と、本件発明1の「傾斜部」に「前記制御ユニットを露出させる開口が形成された」態様とは、「傾斜部」に「前記制御ユニットが設けられた」態様の点で共通するから、以上の限りにおいて公然実施発明4の「プレート2の下側部分」は、本件発明1の「傾斜部」に相当する。 (オ)上記(エ)を踏まえると、公然実施発明4の「センサ6は、プレート2の下側部分から外部空間へ突出した突出部を有し」ている態様と、本件発明1の「前記制御ユニットは、前記傾斜部の前記開口を通って外部空間へ突出した突出部を有し」ている態様とは、「前記制御ユニットは、前記傾斜部から外部空間へ突出した突出部を有し」ている態様の点で共通する。 (カ)公然実施発明4の「センサ6の突出部は、短手方向においてライトバーから離れるにつれて背面に近づくように傾斜した形状を有し」ている態様と、本件発明1の「前記突出部は、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜したカバーを有し」ている態様とは、「前記突出部は、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜した形状を有し」ている態様の点で共通する。 (キ)上記(カ)を踏まえると、公然実施発明4の「センサ6の突出部の形状は、傾斜角度がプレート2の下側部分の傾斜角度と等しいかそれよりも大き」い態様と、本件発明1の「前記カバーは、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大き」い態様とは、「前記形状は、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きい」態様の点で共通する。 (ク)そうすると両者は、 「壁面又は天井面に取り付けられた底面と、 長尺状のライトユニットと、 検知範囲に人が存在するか否かを検知して前記ライトユニットを点灯制御する制御ユニットと、 前記底面と反対側に前記ライトユニットが取り付けられた取付箇所と、 前記ライトユニットの短手方向の少なくとも一方の側に設けられ、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜し、前記制御ユニットが設けられた傾斜部と、 を備え、 前記制御ユニットは、前記傾斜部から外部空間へ突出した突出部を有し、 前記突出部は、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜した形状を有し、 前記形状は、傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きい 照明器具。」 の点で一致し、以下の点で一応相違する。 〔相違点4-1〕 ライトユニットの取付箇所に関し、本件発明1は、取付「凹」部であるのに対して、公然実施発明4の取付部は、凹んでいるか否か不明な点。 〔相違点4-2〕 傾斜部と制御ユニットの関係について、本件発明1は、傾斜部に「前記制御ユニットを露出させる開口が形成され」ており、制御ユニットの突出部が「前記傾斜部の前記開口を通って」外部空間へ突出しているのに対して、公然実施発明4は、プレート2の下側部分にセンサ6が通る開口が形成されているのか否か不明な点。 〔相違点4-3〕 突出部に関し、本件発明1は、「カバー」を有しているのに対して、公然実施発明4は、カバーの有無が不明な点。 〔相違点4-4〕 本件発明1は、前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は「傾いている」のに対して、公然実施発明4は、ライトバー3が向く方向と、プレート2の下側部分の垂線方向は、「略同じ方向」である点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点4-4から検討する。 相違点4-4は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、公然実施発明4ではない。 上記(1)ア(ウ)に示すとおり、公然実施発明4は、「水平天井及び壁面横取付専用器具」であるから、ライトバー3、センサ6の突出部、及びプレート2の下側部分が向く方向は、水平天井及び壁面横取付状態で最適化された方向となっている。 そうすると、公然実施発明4は、ライトバー3が向く方向や、プレート2の下側部分の垂線方向を変更することの阻害事由があるし、少なくとも、ライトバー3が向く方向に対してプレート2の下側部分の垂線方向を傾けることの動機付けがない。 したがって、他の証拠について検討するまでもなく、公然実施発明4において、相違点4-4に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、令和7年12月9日提出の意見書(以下「意見書」という。)において、概略、以下のような主張をしている。 主張(意見書5~6ページ) 甲1及び甲2にあるように、ライトユニットが向く方向に対して傾斜部の垂線方向を傾けることは周知技術であるから、本件訂正発明1は、甲4と周知技術とから、当業者にとって容易に発明をすることができたものである。 上記主張について検討する。 上記イで説示したとおり、公然実施発明4は、ライトバー3が向く方向や、プレート2の下側部分の垂線方向を変更することの阻害事由があるし、少なくとも、ライトバー3が向く方向に対してプレート2の下側部分の垂線方向を傾けることの動機付けがない。 そうすると、ライトユニットが向く方向に対して傾斜部の垂線方向を傾けることが周知技術であったとしても、公然実施発明4において、当該周知技術を採用することが容易になし得たものということはできない。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点4-1~3について検討するまでもなく、本件発明1は、公然実施発明4ではなく、また、公然実施発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について(取消理由1及び取消理由2) 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、公然実施発明4ではなく、公然実施発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~4は、甲4に示される公然実施された発明ではないし、甲4に示される公然実施された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものということはできない。 したがって、取消理由1及び2によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由 申立人は、令和7年5月16日提出の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、取消理由通知で採用しなかった以下の特許異議申立理由を主張している。 申立理由(甲1を主引例とする進歩性) 本件特許発明1~4は、甲1に記載された発明、及び甲2~4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 当審の判断 (1)甲1について 甲1には、その記載から、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、主な参照箇所を括弧内に示す。 「天井や壁等の被取り付け部に設置される照明器具200と、(【0013】、【0014】、【図1】、【図2】) 長尺状の光源ユニット101と、(【0014】、【図1】) 光源ユニット101の外部の事象、例えば人体の存在の有無等を観測し、観測の結果に応じて、光源ユニット101の光源部110の点灯状態を調整するよう点灯装置160を制御するセンサユニット300と、(【0016】、【0023】、【図2】) を備え、 照明器具200は、 光源ユニット101の一部が挿入される収容凹部210と、(【0058】、【図2】) 光源ユニット101が照明器具200 に装着された状態で、保持部120の保持背面124に対して斜めに延びる一対の外側壁222と、を備え、(【0056】、【図2】) 片側の外側壁222には、センサユニット300と干渉することを回避するための切り欠き214が設けられており、(【0056】、【図2】、【図13】) センサユニット300は、外側壁222の切り欠き214から器具本体201の外側に配置された第1収納部410を有し、(【0038】、【0056】、【0078】、【図2】、【図6】) 第1収納部410は、高さ方向D3の一端に形成された端面411を有し、(【0036】、【図6】~【図10】) 光源ユニット101が向く方向に対して、外側壁222の垂線方向は傾いており、端面411の垂線方向は略同じ方向である(【0056】、【図2】、【図6】、【図7】) 照明装置100。(【0014】)」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)後者の「天井や壁等の被取り付け部に設置される」態様は、前者の「壁面又は天井面に取り付けられた」態様に相当するから、後者の「照明器具200」のうち「被取り付け部」に取り付けられる部分は、前者の「底面」に相当する。 (イ)後者の「光源ユニット101」は前者の「ライトユニット」に相当する。 (ウ)後者の「光源ユニット101の外部の事象、例えば人体の存在の有無等を観測し、観測の結果に応じて、光源ユニット101の光源部110の点灯状態を調整するよう点灯装置160を制御する」態様は、前者の「検知範囲に人が存在するか否かを検知して前記ライトユニットを点灯制御する」態様に相当するから、後者の「センサユニット300」は、前者の「制御ユニット」に相当する。 (エ)後者の「収容凹部210」は、前者の「取付凹部」に相当する。 そして、後者の「収容凹部210」は、「照明器具200」のうち「被取り付け部」に取り付けられる部分の反対側において「光源ユニット101の一部が挿入される」ものであるから、その挿入態様は、前者の「前記底面と反対側に前記ライトユニットが取り付けられた」態様に相当する。 (オ)後者の「外側壁222」は、「斜めに延びる」ものであるから、前者の「傾斜部」に相当する。 後者の「外側壁222」が「一対」あることは、前者の「傾斜部」が「前記ライトユニットの短手方向の少なくとも一方の側に設けられ」ていることに相当する。 後者の「外側壁222」が「光源ユニット101が照明器具200に装着された状態で、保持部120の保持背面124に対して斜めに延びる」態様は、光源ユニット101の短手方向において、光源ユニット101から離れるにつれて、照明器具200のうち被取り付け部に取り付けられる部分に近づくように傾斜しているといえるから、その態様は、前者の「前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜し」ている態様に相当する。 後者の「切り欠き214」は、前者の「開口」に相当する。 そして、後者の「片側の外側壁222には、センサユニット300と干渉することを回避するための切り欠き214が設けられて」いる態様は、「センサユニット300」が「外側壁222の切り欠き214から器具本体201の外側に配置された」ものであることを踏まえると、前者の「前記制御ユニットを露出させる開口が形成された」態様に相当する。 (カ)後者の「外側壁222の切り欠き214から器具本体201の外側に配置された」態様は、上記(オ)を踏まえると、前者の「前記傾斜部の前記開口を通って外部空間へ突出した」態様に相当するから、後者の「第1収納部410」は、前者の「突出部」に相当する。 (キ)後者の「端面411」は、センサユニット300の第1収納部410を覆っている部分であるから、前者の「カバー」に相当する。 そして、後者の「第1収納部410は、高さ方向D3の一端に形成された端面411を有」することと、前者の「前記突出部は、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜したカバーを有」することとは、「前記突出部は、カバーを有」することの点で共通する。 (ク)後者の「光源ユニット101が向く方向に対して、外側壁222の垂線方向は傾いて」いる態様は、前者の「前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は傾いている」態様に相当する。 (ケ)以上の限りにおいて、後者の「照明装置100」は、前者の「照明器具」に相当する。 (コ)そうすると両者は、 「壁面又は天井面に取り付けられた底面と、 長尺状のライトユニットと、 検知範囲に人が存在するか否かを検知して前記ライトユニットを点灯制御する制御ユニットと、 前記底面と反対側に前記ライトユニットが取り付けられた取付凹部と、 前記ライトユニットの短手方向の少なくとも一方の側に設けられ、前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜し、前記制御ユニットを露出させる開口が形成された傾斜部と、 を備え、 前記制御ユニットは、前記傾斜部の前記開口を通って外部空間へ突出した突出部を有し、 前記突出部は、カバーを有し、 前記ライトユニットが向く方向に対して前記傾斜部の垂線方向は傾いている照明器具。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> カバーに関し、本件発明1は、「前記短手方向において前記ライトユニットから離れるにつれて前記底面に近づくように傾斜した」カバーであり、さらに、前記カバーは、「傾斜角度が前記傾斜部と等しい、または前記傾斜部よりも大きく」されているのに対して、甲1発明の「端面411」は、「光源ユニット101が向く方向に対して、」「端面411の垂線方向は略同じ方向」とされている点。 イ 判断 甲1発明の「端面411」に関し、甲1には、「また、第1収納部410の端面411には段差が設けられ、高い段414に、センサ311の少なくとも一部を外部に露出させる開口部412、低い段415に、つまみ331の少なくとも一部を外部に露出させる開口部413が設けられる。高い段414の開口部412は、開口部412から突出するセンサ311のレンズ部分の外周と同じ形状及び大きさになるように形成される。このため、開口部412から筐体320の内部への塵埃の進入を防ぐことができる。低い段415の開口部413は、開口部413から突出するつまみ331のスライド方向において、スイッチカバー330の鍔部332よりも小さく、つまみ331よりも十分大きく、かつ、スライド方向と垂直な方向において、鍔部332よりも小さく、つまみ331の大きさ以上となるように形成される。このため、つまみ331をスライド可能としつつ、開口部413から筐体320の内部への塵埃の進入を防ぐことができる。スイッチカバー330の鍔部332は、塵埃の進入の防止だけでなく、低い段415の内側の面に接触することで、スイッチカバー330がスイッチ314に確実に嵌まるようにして、操作された際にスイッチカバー330がスイッチ314からずれることを抑制し、操作性を向上させる役割を持つ。」(【0038】)(なお、下線は当審で付した。)と記載されている。 すなわち、甲1発明は、センサ311のレンズ部分が向く方向と「端面411」の垂線方向が略同じ方向であるから、「端面411」の高い段414の開口部412が、センサ311のレンズ部分の外周と同じ形状及び大きさになるように形成されることで、開口部412から筐体320の内部への塵埃の進入を防ぐことができるものである。 そうすると、甲1発明は、センサ311のレンズ部分が向く方向と、「端面411」の垂線方向は、略同じ方向でなければならないと解される。 一方、甲1発明のセンサ311のレンズ部分が向く方向は、「センサユニット300」が「光源ユニット101の外部の事象、例えば人体の存在の有無等を観測し、観測の結果に応じて、光源ユニット101の光源部110の点灯状態を調整するよう点灯装置160を制御する」ために、光源ユニット101が向く方向と略同じ方向となっている。 そうすると、甲1発明は、センサ311のレンズ部分が向く方向と、光源ユニット101が向く方向と略同じ方向でなければならないと解される。 以上を総合すると、甲1発明は、光源ユニット101が向く方向と端面411の垂線方向は略同じ方向でなければならないから、端面411を傾斜させることの阻害事由があるし、少なくとも、端面411を傾斜させることの動機付けがない。 また、センサ311のレンズ部分が向く方向と、光源ユニット101が向く方向を、略同じ方向として維持しつつ、端面411だけを傾斜させようとしても、開口部412から筐体320の内部への塵埃の進入を防ぐための構造変更が必要になるし、端面411の形状や、端面411にあるレンズ・スイッチ等の部材の配置等についても変更が必要になるところ、そのような変更が容易であることを示す証拠はないし、設計的事項ということもできない。 したがって、甲2~4について検討するまでもなく、甲1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものといえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、申立書において、概略、以下のような主張をしている。 主張(申立書17~18ページ) 甲2~4には、突出部が、短手方向においてライトユニットから離れるにつれて底面に近づくように傾斜したカバーを有する点、カバーの傾斜角度が傾斜部と等しい、または傾斜部よりも大きい点が記載されている。 甲1と甲2~4は、照明器具に関する発明であり、センサ等を取り付ける構成で共通しているので、甲1に甲2~4を適用する動機付けがある。 上記主張について検討する。 上記イで説示したとおり、甲1発明は、光源ユニット101が向く方向と端面411の垂線方向は略同じ方向でなければならないから、端面411を傾斜させることの阻害事由があるし、少なくとも、端面411を傾斜させることの動機付けがない。 そうすると、甲2~4に、突出部が、短手方向においてライトユニットから離れるにつれて底面に近づくように傾斜したカバーを有する点、カバーの傾斜角度が傾斜部と等しい、または傾斜部よりも大きい点が記載されているとしても、甲1発明において、甲2~4の記載技術を採用することが容易になし得たものということはできない。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲1発明及び甲2~4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものということはできない。 したがって、申立理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700239

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