特許訂正審判
2016-390126
外科用シーラント
- 審判番号
- 2016-390126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2016-009257外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月05日
- 審決日
- 2017年01月19日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】国立研究開発法人 物質・材料研究機構
- 分類
- P141 .841-Y (A61L) / P141 .853-Y (A61L) / P141 .854-Y (A61L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第131条の2第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5995128号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5995128号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5995128号は、平成28年1月20日に出願したものであって、請求項1ないし6に係る発明について同年9月2日に特許権の設定登録がされ、その後、同年10月5日に訂正審判の請求がなされ、同年11月11日付けで訂正拒絶理由通知が通知され、これに対して、同年12月9日に審判請求書に添付された訂正明細書及び審判請求書の請求の理由が補正されるとともに意見書が提出された。
第2 平成28年11月11日付け訂正拒絶理由の概要
訂正事項5及び6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内でするものではない(第126条第5項)、又は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該請求項の記載を引用しないものとすることのいずれを目的とするものにも該当しない(特許法第126条第1項ただし書き)。
第3 平成28年12月9日付け手続補正の適否
1.補正の内容
平成28年12月9日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、審判請求書における「(2)訂正事項」の
「オ.訂正事項5
明細書、段落0025に「リン酸緩衝生理食塩水(PBS)」と記載されているのを、「リン酸緩衝液」に訂正する。
カ.訂正事項6
明細書、段落0033に「PBS」と記載されているのを「リン酸緩衝液」に訂正する。」
を、
「オ.訂正事項5
明細書、段落0025に「緩衝溶液」と記載されているのを、「緩衝液」に訂正する。」に補正するものである。
2.本件補正についての当審の判断
本件補正は、明細書、段落0025に「緩衝溶液」と記載されているのを、「緩衝液」に訂正するという、審判請求時(本件補正前)に申し立てていなかった訂正事項を追加するものであるということができる。すなわち、本件補正は実質的に請求書の請求の趣旨を変更するものであり、審判請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第1項の規定に違反するものであるといわざるをえない。
しかしながら、当合議体は、事案に鑑み、上述の要旨変更を問わないこととする。
第4 請求の趣旨、訂正の内容
本件訂正審判の趣旨は、補正後の本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正すること、すなわち下記訂正事項に係る訂正を求めるものである。
1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において「~NH-CR1R2」と記載されているのを、「~NH-CHR1R2」に訂正する。
2.訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0012】に「~NH-CR1R2」と記載されているのを、「~NH-CHR1R2」に訂正する。
3.訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0014】に「1~20モル%」と記載されているのを、「1~30モル%」に訂正する。
4.訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0014】に「1/99~20/80」と記載されているのを、「1/99~30/70」に訂正する。
5.訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0025】に「緩衝溶液」と記載されているのを、「緩衝液」に訂正する。
第5 当審の判断
1.訂正の目的について (特許法第126条第1項ただし書)
(1)訂正事項1について
本件訂正前請求項1及び本件訂正前明細書(特許明細書)の請求項1に「R1は疎水性基であり、R2は水素原子または疎水性基である」と記載されていること、及び疎水性基については、本件訂正前明細書の【0013】に「該疎水性基は、炭素数6~18のアルキル基であり、分岐を含んでいてもよい。」と記載されていることからみて、R1及びR2は1価の基であることは明らかである。そして、Nとの結合をあわせてみても、本件訂正前請求項1の「~NH-CR1R2」の式では、炭素原子の結合手が3つしかなく、技術常識に反するものであることから、炭素原子にはさらに1価の基が結合しているはずであるが、その結合しているはずの1価の基の記載が欠落したものと理解できるため、該記載が欠落したままの本件訂正前請求項1の「~NH-CR1R2」は、明りょうでない記載であるといえる。
そして、記載が欠落している1価の基が何であるかについて検討すると、本件訂正前請求項1の「~NH-CR1R2」の式に関連して、本件訂正前明細書には、以下のとおり記載されている。
「【0029】
(2)誘導体化
工程(1)で得られたゼラチン水溶液に、導入する疎水性基を有する誘導体化薬剤を添加し、所定時間撹拌して反応させる。該誘導体化薬剤としては、上記疎水基を有するアルデヒドもしくはケトン、例えばドデカナール、テトラデカナール、デシルエチルケトンが使用される。反応温度は30~80℃、反応時間は0.5~12時間であり、通常、撹拌するだけでゼラチンのアミノ基にシッフ塩基(~N=CR1R2)を介してアルキル基が結合されたゼラチンを得ることができる。アルデヒドの使用量は、所望の誘導化率に相当する化学量論量に対して1~4倍とする。より好ましくは、1~2倍とする。
【0030】
次いで、該シッフ塩基を還元して上記式(1)の構造とする。還元剤としてはシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(NaBH(OAc)3)、2-ピコリンボラン、ピリジンボラン等の、公知の還元剤を使用することができる。これらのうち、2-ピコリンボランが好ましい。ピコリンボランは安定性であり、水性溶媒中でアルデヒドもしくはケトンの還元アミノ化反応を一段(ワンポット)で行うことが可能である。また、80~90%の収率を達成することができ、これはシアノ水素化ホウ素ナトリウムが70~75%であるのに比べて顕著に高い。2-ピコリンボランの使用量は、誘導体化薬剤の当量に対して1~3当量であることが好ましい。」
上記記載によれば、シッフ塩基(~N=CR1R2)を還元して、式(1)である本件訂正前請求項1の「~NH-CR1R2」の構造とするものであるから、記載が欠落している、炭素原子に結合した1価の基は水素原子であることは当業者が当然理解するところである。
以上を要すると、炭素原子に結合しているべき1価の基の存在が欠落していて明瞭でない記載である、本件訂正前請求項1の「~NH-CR1R2」を、その欠落している水素原子の存在を明記し、「~NH-CHR1R2」という明瞭な記載としたのであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)訂正事項2について
本件訂正前明細書の段落【0012】に「~NH-CR1R2」と記載されているのを、「~NH-CHR1R2」に訂正することは、上記(1)で検討したとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前明細書の段落【0014】において、疎水性基が結合されたイミノ基の、原料ゼラチン中のアミノ基量に対するモル%の数値範囲の記載について、本件訂正前請求項1の「(c)該ゼラチン誘導体中のイミノ基/アミノ基(モル比)が1/99~30/70である」との記載を言い換えた「ゼラチン中のアミノ基量に対するイミノ基が1~30%」と整合させるため、上限値の20モル%を30モル%に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(4)訂正事項4について
本件訂正前明細書の段落【0014】に「1/99~20/80」と記載されているのを、「1/99~30/70」に訂正することは、本件訂正前請求項1の「(c)該ゼラチン誘導体中のイミノ基/アミノ基(モル比)が1/99~30/70である」との記載に整合させるため、「20/80」を「30/70」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
(5)訂正事項5について
本件訂正前明細書の段落【0025】に「緩衝溶液」と記載されているのを、本件訂正前明細書の【0039】【0040】の「緩衝液」との記載に整合させるため、「緩衝液」に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
2.新規事項追加について(特許法第126条第5項)
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、願書に最初に添付された明細書の段落【0013】【0029】【0030】の記載に基づき、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。そして、訂正後の本件特許明細書の段落【0013】【0029】【0030】も変わらない。
したがって、上記訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、上記2.(1)で検討したとおり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、上記訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、願書に最初に添付された明細書の段落【0014】の記載に基づき、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。そして、訂正後の本件特許明細書の段落【0014】も変わらない。
したがって、上記訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
(4)訂正事項4について
上記訂正事項4は、上記2.(3)で検討したとおり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、上記訂正事項4は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
(5)訂正事項5について
上記訂正事項5は、願書に最初に添付された明細書の段落【0039】【0040】の記載に基づき、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。そして、訂正後の本件特許明細書の段落【0039】【0040】も変わらない。
したがって、上記訂正事項5は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。
3. 特許請求の範囲の拡張・変更について(特許法第126条第6項)
(1)訂正事項1について
上記訂正事項は、炭素原子に結合しているべき1価の基の存在が欠落していて明瞭でない記載を、その欠落している記載を明記したものであり、特許請求の範囲の記載内容を実質的に変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2~5について
上記訂正事項2~5は、上記「1.訂正の目的について (特許法第126条第1項ただし書)」で検討したとおり、本件訂正前明細書の明瞭でない記載を訂正するものであり、本件特許請求の範囲を訂正するものではない。そして、これらの訂正が、本件特許請求の範囲を変化させるものではないことも明らかである。
したがって、上記訂正事項2~5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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