特許拒絶査定不服審判
2016-011667
ニンジン汁の旨味強化方法、ニンジン汁の製造方法及びニンジン汁
- 審判番号
- 2016-011667
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-194861外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月04日
- 審決日
- 2017年06月27日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カゴメ株式会社
- 分類
- P18 .113-Z (A23L) / P18 .121-Z (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-194861号「ニンジン汁の旨味強化方法、ニンジン汁の製造方法及びニンジン汁」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 63735号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月30日の出願であって、平成28年6月10日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年8月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
第2 平成28年8月4日の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、
「ニンジン汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、
ブランチされるのは、剥皮されたニンジンであること、及び
搾られるのは、ブランチされたニンジンであることであり、
ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)は、75度より大きく、かつ、80度以下であり、それによって、ニンジン汁のグルタミン酸濃度及びグアニル酸濃度が増加することで、ニンジン汁の旨味が強化される、
こと。」
と補正された(下線は、補正箇所を示す。)。
上記補正は、少なくとも、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である、「ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)」を、補正前の「75度より大きい」とされていたことから、補正後の「75度より大きく、かつ、80度以下であり」と、より範囲を限定するものを含むものであり、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
1 引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平10-313835号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1a) 「【請求項2】 生ニンジンを皮むき状態で1日以上経過させることなく、ニンジンを70~80℃の水中で内部温度が70~80℃に達するまでブランチングし、その後破砕し搾汁する工程を有するニンジンジュースの製造方法。」
(1b) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、凝集の起こらない高品質で安定した性状のニンジンジュースを製造する方法に関する。」
(1c) 「【0003】
【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる発明の如く、ニンジンを破砕した後にブランチングを行うと、加熱臭は付かなくなるものの、生臭さが強くなり飲みにくくなる傾向がある。では、上記発明を、単にブランチングした後破砕するように変更すればよいかと言うと、品温80~90℃到温となるようにブランチングした場合、搾汁液に加熱臭が付く問題があるし、この加熱臭を避けるために品温の到達温度を下げると凝集が発生するようになりかえって品質を低下させてしまう。
【0004】また、品温を80~90℃に到達させるために沸騰水中でブランチングを行うと、搾汁率が低下し、香味も悪くなることが明らかになってきた。
【0005】そこで本発明は、かかる問題点に鑑みて、ニンジンジュース製造における凝集の原因を解明し、その上で、ニンジンをブランチングした後破砕する製造法において、生臭さが低く、凝集を生じることがない高品質で安定した性状のニンジンジュースを歩留り良く得られるニンジンジュースの製造方法を提供せんとする。」
(1d) 「【0006】
【課題を解決するための手段】かかる課題解決のための本発明のニンジンジュースの製造方法は、生ニンジンを剥皮し、皮むき状態で1日以上経過させることなく、ニンジンのペクチンエステラーゼ活性を完全に失活させ、かつペクチナーゼ活性残存率を60%以下とするように酵素失活処理し、その後破砕、搾汁することを特徴とする。
【0007】本発明においては、生ニンジンを洗浄したものを剥皮する。そして、皮むき後1日以上、好ましくは12時間以上経過しない間に上記酵素失活処理する。皮むき状態で1日以上経過すると、例えば品温が90℃に達するまで十分にブランチングしても凝集の発生を防ぐことが難しくなる。
【0008】本発明の酵素失活処理は、ニンジンのペクチンエステラーゼ活性を完全に失活させ、かつペクチナーゼ活性残存率を60%以下に処理するものである。ペクチンエステラーゼ活性が完全に失活しないか、或いはペクチナーゼ活性残存率が60%以上であると、凝集が発生する可能性がある。
【0009】本発明におけるニンジンのペクチンエステラーゼ活性を完全に失活させ、かつペクチナーゼ活性残存率を60%以下にするように酵素失活処理方法としては、例えばニンジンを70~80℃の水中で内部温度が70~80℃に達するまでブランチングするのが好ましい。かかる方法において、ブランチングを行う水温が70℃より低いとペクチン分解酵素の働きにより凝集が発生するようになり、80℃より高い温度では収率が減少し、かつ加熱臭が付くようになる。」
(1e) 「【0019】(ブランチング温度試験)市販のニンジンを水洗浄した後、剥皮し、2cm角ダイスにカットした。これを50~100℃の各温度に設定した水中で内部温度が50~100℃に達するまでブランチングを行い(例えば、70℃の水中でニンジン内部温度が70℃に達するまでブランチングを行い、この時の温度を70℃とする。以下、同様)、その後、破砕し、ネルろ過により搾汁し、遠心分離(3000rpm,10分)してニンジンジュースとした。また、比較例としてブランシングを行わないジュースを作成した(無処理区)。
【0020】表1は、ブランチング温度試験により得られた各ジュースについてのブランチング温度、凝集評価、ペクチナーゼ活性残存率(%)、ペクチンエステラーゼ活性残存率(%)、搾汁率(重量%)、Brix、滴定酸分(W/W %) 、pH、色調を示したものであり、図1、図2及び図3は、ブランチング温度、brix、収率、酵素活性との関係を示したグラフである。
【0021】なお、上記凝集評価は、各ジュースを5%クエン酸でpH4.2に調整した後、80℃で2分間加熱し、その後の凝集を肉眼で観察し、凝集が認められた場合を+として評価した。搾汁率(重量%)は、次の数式により算出した。」
(1f) 「【0024】表1の結果により、70℃以上でのブランチングにより凝集は防止された。また、図3の結果より、凝集が防止された70℃でのブランチングでは、ペクチナーゼ活性は60%以下に低下し、ペクチンエステラーゼ活性は完全に失活していた。さらに80℃では、ペクチナーゼ活性は30%以下に低下し、ペクチンエステラーゼ活性は完全に失活していた。これより、凝集を防止するにはペクチナーゼ活性を60%以下に低下させると共に、ペクチンエステラーゼ活性は完全に失活させる必要があると考えられる。また、図1及び図2の結果より、収率及びbrixはブランチング温度の上昇に伴い低下するため、ブランチング温度は70~80℃が好ましいと判断することができる。」
(1g) 「【0028】(官能試験)実施例として、市販のニンジン(オーストラリア産、ウェスタンレッド)を水洗し剥皮した後、2cm角ダイスにカットし、これを70~80℃の水中で内部温度が70~80℃に達するまでブランチングした。他方、比較例として、沸騰水中で内部温度が90℃に達するまでブランチングした。その後、実施例及び比較例ともに、破砕し、ネルろ過により搾汁し、遠心分離(3000rpm,10分)してニンジンジュースとし、官能評価を行った。官能評価は、男性10名、女性10名のパネラーにより、実施例と比較例のうちでどちらが好ましいかを2点比較で評価した。また、Brix、pH、滴定酸分(酸度) 、及び凝集の有無を上記測定方法に従って測定し、あわせてこれらの結果を表3に示した。」
(1h)「【表1】
」
以上より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「生ニンジンを皮むき状態で1日以上経過させることなく、ニンジンを70~80℃の水中で内部温度が70~80℃に達するまでブランチングし、その後破砕し搾汁する工程を有するニンジンジュースの製造方法。」
2 対比
引用発明の「ニンジンジュース」、「皮むき状態」の「生ニンジン」、「ブランチング」及び「破砕し搾汁する」ことは、その作用・機能からみて、それぞれ本願補正発明の「ニンジン汁」、「剥皮ニンジン」、「ブランチ」及び「搾られる」ことに相当する。
また、引用発明の「ニンジンジュース」は、「ブランチングし、その後破砕し搾汁する」ことにより得られるので、引用発明は、本願補正発明の「搾られるのは、ブランチされたニンジンであること」を有するものである。
引用発明の「生ニンジンを皮むき状態で1日以上経過させることなく、ニンジンを70~80℃の水中で内部温度が70~80℃に達するまでブランチングし」ていることは、本願補正発明の「ブランチされるのは、剥皮ニンジンであること」に相当する。また、引用発明の「ブランチング」により「70~80℃に達する」「内部温度」は、本願補正発明の「ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)」に相当する。
また、引用例1において、引用発明のブランチング温度について、70度及び80度としたものが試験され、それぞれ凝集が生じず、好ましい範囲のものとして記載されていることから(上記記載事項(1e)~(1h)。)、引用発明は、70度から80度の温度範囲においても、同様に好適な温度範囲のものと認められる。
そうすると、引用発明の「ニンジン」が「内部温度が70~80℃に達するまでブランチング」されていることと、本願補正発明の「ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)は、75度より大きく、かつ、80度以下であ」ることとは、「ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)は、75度より大きく、かつ、80度以下であ」る範囲で一致する。
以上のことを踏まえると、引用発明の「ニンジンジュースの製造方法」は、「ブランチング」されるのは、「皮むき状態」の「ニンジン」であること、及び、「破砕し搾汁」されるのは、「ブランチング」された「ニンジン」であること、の工程で、少なくとも構成されているといえる。
そうすると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
ニンジン汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、
ブランチされるのは、剥皮ニンジンであること、及び
搾られるのは、ブランチされたニンジンであることであり、
ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)は、75度より大きく、かつ、80度以下である、
こと。
[相違点1]
ブランチされたニンジンが至る温度について、本願補正発明は、「それによって、ニンジン汁のグルタミン酸濃度及びグアニル酸濃度が増加することで、ニンジン汁の旨味が強化される」と特定しているのに対して、引用発明は、そのような特定をしていない点。
3 判断
本願補正発明は、「ニンジン汁の製造方法」についての発明であり、製造方法における工程として、特定されている事項は、「ブランチされるのは、剥皮ニンジンであること」、及び「搾られるのは、ブランチされたニンジンであることであり」及び「ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)は、75度より大きく、かつ、80度以下であ」ることである(以下これらの事項と「特定事項A」という。)。
一方、本願補正発明において特定される「それによって、ニンジン汁のグルタミン酸濃度及びグアニル酸濃度が増加することで、ニンジン汁の旨味が強化される」との事項は、上記特定事項Aの工程を経て得られるニンジン汁について、単に、「グルタミン酸」、「グアニル酸」及び「旨味」の性状を説明しているに過ぎないものであり、ニンジン汁の製造方法として、製造工程を具体的に限定するものではないことは明らかである。
そして、上記したように、本願補正発明は、引用発明とニンジン汁の製造工程において、具体的な違いがないことより、その製造工程を経て得られるニンジン汁の性状において、引用発明と相違すると認めることはできない。
そうすると、相違点1は、ニンジン汁の製造方法において実質的な相違点ではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明と実質的に同一のものである。
4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年8月4日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年4月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「ニンジン汁の製造方法であって、その構成は、少なくとも、以下の工程であって、
ブランチされるのは、剥皮されたニンジンであること、及び
搾られるのは、ブランチされたニンジンであることであり、
ブランチされたニンジンが至る温度(以下、「ブランチング温度」という。)は、75度より大きい、
こと。」
2 引用例の記載事項及び記載された発明
上記拒絶理由で引用された刊行物である引用例1の記載事項及び記載された発明は上記の「第2 1」に記載されたとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「かつ、80度以下であり、それによって、ニンジン汁のグルタミン酸濃度及びグアニル酸濃度が増加することで、ニンジン汁の旨味が強化される、」との特定を省き、本願補正発明が「それを構成するのは、」及び「以下の工程であり、」と特定していたものを、それぞれ「その構成は、」及び「以下の工程であって、」とするものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3 判断」に記載したとおり、引用発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、本願発明も、同様に、引用発明と同一なものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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