特許拒絶査定不服審判
2024-005069
包装済み葉野菜及びその製造方法並びに葉野菜の生産方法
- 審判番号
- 2024-005069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-149078
- 請求日
- 2024年03月26日
- 審決日
- 2025年09月22日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カゴメ株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 澤田 真治
- 分類
- P18 .121-Z (A01G) / P18 .575-Z (A01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-149078「包装済み葉野菜及びその製造方法並びに葉野菜の生産方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月16日出願公開、特開2022- 43674〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年9月4日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和5年 7月19日付け 拒絶理由通知
同年 9月19日受付 意見書及び手続補正書
同年12月21日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月26日 謄本の送達日)
令和6年 3月26日受付 審判請求書及び手続補正書
第2 令和6年3月26日に受付された手続補正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月26日に受付された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、令和5年9月19日受付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項4及び9における、
(補正前)
「【請求項4】
包装済み葉野菜の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、
包装:ここで包装されるのは、水耕栽培された葉野菜であり、その包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下である。」及び
「【請求項9】
葉野菜の生産方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、かつ、当該栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である。」のそれぞれを、
審判請求時に提出された手続補正書(令和6年3月26日受付)の特許請求の範囲の請求項1及び6における、
(補正後)
「【請求項1】
包装済み葉野菜の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、
包装:ここで包装されるのは、水耕栽培された葉野菜であり、その包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下である。」及び
「【請求項6】
葉野菜の生産方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、かつ、当該栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である。」にする補正を含むものである(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。
2 補正の適否
2-1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、本件補正前の請求項4及び9に記載した発明を特定するために必要な事項である「水耕栽培」に関して、「当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ」ることを限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1及び6に係る発明は、補正前の請求項4及び9に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち補正後の特許請求の範囲の請求項1及び6についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0035】、【0036】及び【0043】等の記載に基づくものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
2-2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1及び6に係る発明(以下、それぞれを「本件補正発明1」及び「本件補正発明6」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明1及び6は、次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
包装済み葉野菜の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、
包装:ここで包装されるのは、水耕栽培された葉野菜であり、その包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下である。
【請求項6】
葉野菜の生産方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、
かつ、当該栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である。」
(2)引用文献1の記載事項、引用発明
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-60441号公報(平成29年3月30日公開)(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の栄養素を豊富に含むベビーリーフに関する。
【背景技術】
【0002】
「ベビーリーフ」とは、一般的には、主にレタス類、葉物野菜、ハーブなどの幼葉を摘んだものを数種類ミックスしたもののことである。発芽後10~30日程度の若い葉菜の総称を意味し、具体的には、例えば、レタス(ロロロッサ、デトロイト、レッドロメイン、レッドオーク等)、ミズナ、ホウレンソウ、ビート、カラシナ等がある。ただし、これら上記野菜を使用しなければベビーリーフではないとするような規定はなく、若い葉を使用していればベビーリーフとみなされている。
【0003】
近年、日本でもベビーリーフの生産がなされており、各地に水耕、土耕の産地が広がっている。「ベビーリーフ」に入れられている野菜類は、アメリカでは殆どがレタスの仲間であるが、日本では日本人の口に合うように様々な“日本的”な野菜も入っている。日本野菜だけでなく、中国野菜、イタリア野菜などを含めて実に多彩である。具体例としてはサニーレタス、グリーンカール、サラダナ、みず菜、グリーンマスタード、ルッコラ、ホウレン草、小松菜、赤高菜、ロメイン、レッドオーク、ターサイ、小紅菜、ロロロッサ、レッドアジアンマスタード、ピノグリーン、ホワイトケール、レッドケール、デトロイトなどが挙げられる(特許文献1)。
【0004】
一方で、同時期に収穫した数種類の野菜を用いるベビーリーフ生産においては、野菜の傷みを最小限に抑えるために、できるだけ近い距離で各種野菜の幼葉を栽培し、短時間で野菜の混合や包装などの処理を行う必要がある。このことから、用いる野菜の種類は、非特許文献1に開示されるように季節や産地によって制限されることが多く、その制限を超えた野菜種の組合せについては検討された例がなかった。
非特許文献2には、栄養素を計算するための資料として、食品可食部100g当たりの食品成分の含有量が示されている。」
「【0057】
以下、閉鎖型植物工場でのベビーリーフの生産について詳細に説明する。
閉鎖型植物工場は、太陽光が当たらない植物工場を意味し、温度、湿度、二酸化炭素濃度、人工光の波長及び照射時間などが制御された空間で植物を栽培するシステムである。閉鎖型植物工場を用いることにより、光の制御が可能なので、野菜の種類に合わせた好適な日照を調整するこができ、野菜の品質が安定するという効果や、外気に含まれる病原菌の感染を防ぐことができるという効果がある。さらに、温度、湿度、気流などの栽培環境条件の精密制御が可能となり、各種野菜の生長速度をコントロールできる、及び各種野菜の最適栽培環境を整えることによって栄養価の高い野菜を栽培できるという効果が得られる。
【0058】
閉鎖型植物工場としては、環境制御された部屋と、該環境制御された部屋内に設置され植物栽培容器を載置する植物栽培容器棚と、該植物栽培容器棚の近接部に配され植物体に光を近接照射する照明を含むシステムが例示される。植物栽培容器棚は複数段に配置可能である。
【0059】
閉鎖型植物工場でのベビーリーフの生産においては、各種野菜を水耕栽培法で栽培する。本明細書において水耕栽培とは、土を使用しない養液栽培のことをいい、ロックウールなどの固形培地に定着させた植物を養液中で栽培する方法や、緩傾斜の平面上に養液を薄く流下させる薄膜水耕法(NFT:Nutrient Film Technique)と、溜めた養液中で栽培する湛液型水耕法(DFT:Deep Flow Technique)等がある。薄膜水耕法(NFT)は、植物を保持するための複数の穴を開けたパネルを栽培台に載置し、該穴に植物を挿通して保持し、養液を供給して栽培する方法である。湛液型水耕法(DFT)は、養液(液肥)の流動により十分な酸素を根部に供給して養分吸収を促進し、さらに液肥の温度及び濃度を含む根圏環境も安定化し、栽培環境を一定に整えるという利点がある。」
「【0067】
次に、野菜の栽培期間中の気温の制御について説明する。なお、本明細書において栽培期間における「気温」とは、栽培する野菜付近の空気の温度を意味する。よって、例えば、野菜の半径30cm以内に設置された温度計で、植物栽培容器棚の棚面から10cm~15cmの高さの位置で測定した温度を気温とする。環境制御された部屋全体の温度を一定とした場合には部屋全体の温度を気温とし、部屋内に設置された植物栽培容器棚ごとに温度を設定した場合には各棚の温度を気温と称する。
【0068】
植物工場内の気温は、通常10℃以上、好ましくは15℃以上であり、また、通常40℃以下、好ましくは37℃以下である。
主に日本国内で露地栽培した場合に収穫期が5月~10月にあたる野菜である、夏野菜を栽培する際の気温は、好ましくは24℃以上、より好ましくは26℃以上であり、また、好ましくは40℃以下、より好ましくは37℃以下である。
主に日本国内で露地栽培した場合に収穫期が10月~5月にあたる野菜である、冬野菜のする際の気温は、好ましくは18℃以上、より好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは28℃以下、より好ましくは26℃以下である。
植物工場内の気温は、野菜の栽培期間中、一定に維持していてもよいし、期間を区切って変更してもよい。気温を変更する場合には、昼温度と夜温度を変更すると味が良くなる。昼温度と夜温度の差を6℃以上にすると、甘味が出て、食味が向上する。また、播種直後の発芽の段階では、野菜の種類に拠らず23~25℃に調整することが好ましい。
【0069】
栽培期間中の気温制御は、閉鎖型植物工場における任意の方法で行うことができ、例えば、エアーコンディショナー、クーラー、ヒーター又はこれらの組み合わせである。寒冷地における温度制御手段としては、通常、植物工場内を所定温度に加温する暖房装置が用いられている。具体的には、例えばボイラーや温風型加温機、電気式ヒーター、発熱ランプ、ヒートポンプ等を用いた暖房装置・加温装置が使用され、植物工場内の空気や水耕栽培に用いる養液を所定温度に加温・温度制御することができる。
【0070】
次に、野菜の栽培期間中の養液の制御について説明する。なお、本明細書において栽培期間における「液温」とは、植物栽培容器中で栽培する野菜付近の養液の温度を意味する。
上記の気温制御に基づき、水耕栽培に用いる養液の温度(以下、液温ともいう。)も通常これに従って変動する。しかしながら、必ずしも液温が変動する必要はなく、液温が植物栽培容器棚の中で一定である、又は気温制御の温度勾配とは異なる範囲で液温が変動するように制御されていてもよい。なお、「液温が一定である」とは、植物栽培容器棚の各段での温度差が±2℃以内、好ましくは±1℃以内であることをいう。
【0071】
液温は、栽培期間中常に一定である必要はなく、20~30℃、好ましくは23~27℃の範囲内で変動してもよく、したがって植物栽培容器棚の各段による気温制御に応じて液温も変動してもよいが、栽培期間中に期間を区切った間隔で変動するように制御されていてもよい。
【0072】
栽培期間中の養液の温度(液温)制御は、閉鎖型植物工場における任意の方法で行うことができ、例えば、養液を循環させている場合には、タンク内にヒーター又は冷却器を入れ、タンクから送り出す養液の温度を制御する方法等が挙げられる。なお、液温は、同一室内の気温に関係なく各植物栽培容器棚で異なる温度に制御してもよい。
【0073】
各種野菜の栽培最適条件は、栽培期間における湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度を制御することによっても、最適化することができる。
栽培期間中の植物工場内の二酸化炭素濃度は、通常300ppm以上、好ましくは500ppm以上であり、また、通常5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下である。
栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下である。
【0074】
閉鎖型植物工場で各野菜の最適栽培条件で栽培された各種野菜は、季節を問わず安定して栄養価が高く、一般にもっとも栄養価が高いとされる「旬」に収穫される野菜と同程度の栄養価を有する。特にベビーリーフを構成する若い葉は、成熟した葉野菜よりも栄養価が高いことが知られているが、本発明で用いられる野菜は、その品質を生産地や季節を問わずに一定に維持することができる。
【0075】
[ベビーリーフの製造方法]
上述の方法で得られた各野菜の幼葉を、所定の組合せ及び配合比で混合して、ベビーリーフを製造することができる。野菜の混合方法は特に限定されず、人の手で混合したり、混合装置を用いて混合してもよいが、混合装置を用いて閉鎖空間内で混合する方法が、衛生面で優れている。
特に、閉鎖型植物工場で得られた野菜を混合装置を用いて閉鎖空間内で混合して得られたベビーリーフは、汚染の可能性が極めて低いため、袋詰めされたベビーリーフをそのまま洗わずに食することができる点でメリットがある。」
イ 引用発明
上記記載事項に摘記した引用文献1に記載された事項及び認定事項より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める(根拠となる段落を併記した。以下同じ。)。
「得られた各野菜の幼葉を、所定の組合せ及び配合比で混合して、ベビーリーフを製造するベビーリーフの製造方法であって(【0075】)、
閉鎖型植物工場でのベビーリーフの生産においては、各種野菜を水耕栽培法で栽培し(【0059】)、
閉鎖型植物工場は、温度、湿度、二酸化炭素濃度、人工光の波長及び照射時間などが制御された空間で植物を栽培するシステムであって、外気に含まれる病原菌の感染を防ぐことができるという効果があり、さらに、温度、湿度、気流などの栽培環境条件の精密制御が可能となり、各種野菜の最適栽培環境を整えることによって栄養価の高い野菜を栽培できるという効果が得られ(【0057】)、
閉鎖型植物工場としては、環境制御された部屋と、該環境制御された部屋内に設置され植物栽培容器を載置する植物栽培容器棚と、該植物栽培容器棚の近接部に配され植物体に光を近接照射する照明を含むシステムが例示され、植物栽培容器棚は複数段に配置可能であり(【0058】)、
野菜の栽培期間中の気温の制御について、栽培期間における「気温」とは、栽培する野菜付近の空気の温度を意味し、部屋内に設置された植物栽培容器棚ごとに温度を設定した場合には各棚の温度を気温と称し(【0067】)、
各種野菜の栽培最適条件は、栽培期間における湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度を制御することによっても、最適化することができ、栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であり(【0073】)、
閉鎖型植物工場で得られた野菜を混合装置を用いて閉鎖空間内で混合して得られたベビーリーフは、汚染の可能性が極めて低いため、袋詰めされたベビーリーフをそのまま洗わずに食することができる(【0075】)、
ベビーリーフの製造方法。」
(3)周知技術
ア 引用文献2
(ア)記載事項
新たに提示する本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-28号公報(平成24年1月5日公開)(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設に関するものである。」
「【0004】
いずれにしても植物を栽培する施設においては、気流を利用して温度、湿度や炭酸ガス濃度等を植物の育成に最適な状態に維持しており、植物を良好に生育させる点でこの気流が必要且つ重要な役割を担っている。
一般的に、植物の葉面での炭酸ガス吸収や蒸散は、無風条件下では抑制されてしまうため、ある程度の気流速度(例えば、数十cm/s)がある方が好ましい。そのため、温度、湿度や炭酸ガス濃度等の室内分布を向上させるために、気流速度を高める場合があるが、強い気流が植物に連続的にあたると生育不良や葉擦れ等が生じるので、適度な微風速を維持することが好ましい。
【0005】
ここで、植物工場による植物の栽培について簡単に説明する。通常、植物工場では水耕栽培によって植物を栽培する場合が多いので、この水耕法による栽培について説明する。
図3に示すように、水耕法は、発砲スチロール製等の栽培ベッド100に孔100aを開け、その孔100aに培地等を利用して植物Pを植え付け、さらにその栽培ベッド100を培養液Wが溜められた栽培トレイ101の上に設置して、植物Pの根に培養液Wを吸収させながら栽培する方法である。なお、栽培トレイ101は、栽培棚102上に設置されている。
そして、図示しない空調システムによって気流が室内を循環するようになっており、栽培されている植物Pに適度な微風速の気流があたるように構成されている。」
「【0021】
以下、本発明に係る植物栽培施設の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態の植物栽培施設1は、図1に示すように育成環境が制御された室内Rで植物Pを栽培する施設であって、植物Pが栽培される栽培床2と、この栽培床2上に隙間Dを開けて重ねられる栽培パネル3と、栽培床2と栽培パネル3との間に画成された隙間Dに空気(気体)を送り込む空調機構4と、を備えている。
なお、本実施形態では、植物Pを水耕栽培により栽培する場合を例に挙げて説明する。
【0022】
上記室内Rの天井部には、蛍光灯やLED等の照明装置5が配設されており、植物Pの育成に必要な十分の光量が確保されている。その他、室内Rの環境は、温度、湿度や二酸化濃度等が植物Pの育成に最適な状態となるように制御されている。
また、室内Rには、栽培棚6が設置されており、この栽培棚6上に栽培床2が設置されている。本実施形態の栽培床2は、培養液Wが貯液された栽培トレイ(貯液トレイ)10と、この栽培トレイ10と栽培パネル3との間に配設された栽培ベッド11と、を備えている。」
「【0030】
上記空調機構4は、空気を室内Rに送り込む吹き出し部20と、送り込まれた空気を室内Rで循環させながら、栽培ベッド11と栽培パネル3との間に画成された隙間D、即ち床下空間に送り込む通風部21と、を備えている。
吹き出し部20は、例えば室内Rの天上部付近に配設されており、室内Rに空気を微風速で吹き出している。通風部21は、例えば攪拌用ファンであり、室内Rの空気を攪拌することで該室内Rを循環させると共に、上記隙間Dに積極的に空気を送り込んでいる。
【0031】
次に、このように構成された植物栽培施設1を利用した植物栽培について説明する。
この植物栽培施設1によれば、植物Pの栽培中において、栽培ベッド11と栽培パネル3と間に画成された隙間Dに空気を送り込むことができ、この送り込んだ空気を複数の通気用孔3bを通じて栽培パネル3の上方に吹き出させることができる。そのため、栽培床2で栽培されている植物Pの根元付近から上方に空気を吹き出させることができ、根元から上方に向かう気流を作り出すことができる。
【0032】
従って、植物群落内Aにおいても気流を確実に発生させることができ、栽培されている植物P全体に均一な気流を与えることができる。よって、育成ムラをなくし、植物Pの生産量を向上させることが可能であるうえ、植物Pの生育を早めることが期待できる。
【0033】
また、通風部21を利用して室内Rに空気を循環させることができるので、植物Pの根元から上方に向かった気流を滞らせることなく循環させることができ、植物P全体により均一に気流を与え易い。しかも、この循環している空気を栽培ベッド11と栽培パネル3との間に画成された隙間Dに再度効率良く送り込むことができるので、植物Pの根元から上方に向かう気流を途切らせることなく連続的に作り出し易い。
また、適度な風速の気流を植物群落内Aに作り出すことが可能であるので、室内Rを循環させる気流の風速を高める必要がない。そのため、一部の植物Pに気流が強くあたってしまうことを防ぐことができ、植物Pの生育不良や葉擦れ等を防ぐことができる。」
(イ)引用文献2記載の技術事項
上記(ア)に摘記した引用文献2に記載された事項より、引用文献2には次の事項が記載されている(以下「引用文献2記載の技術事項」という。)。
「水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設において(【0001】)、
気流を利用して温度、湿度や炭酸ガス濃度等を植物の育成に最適な状態に維持し(【0004】)、
空調システムによって気流が室内を循環するようになっており、栽培されている植物Pに適度な微風速の気流があたるように構成され(【0005】)、
植物Pが栽培される栽培床2と、この栽培床2上に隙間Dを開けて重ねられる栽培パネル3と、栽培床2と栽培パネル3との間に画成された隙間Dに空気(気体)を送り込む空調機構4と、を備え(【0021】)、
室内Rの環境は、温度、湿度や二酸化濃度等が植物Pの育成に最適な状態となるように制御され(【0022】)、
空調機構4は、空気を室内Rに送り込む吹き出し部20と、送り込まれた空気を室内Rで循環させながら、栽培ベッド11と栽培パネル3との間に画成された隙間D、即ち床下空間に送り込む通風部21と、を備え(【0030】)、
植物Pの栽培中において、栽培ベッド11と栽培パネル3と間に画成された隙間Dに空気を送り込むことができ、この送り込んだ空気を複数の通気用孔3bを通じて栽培パネル3の上方に吹き出させることができ、栽培床2で栽培されている植物Pの根元付近から上方に空気を吹き出させることができ、根元から上方に向かう気流を作り出すことができ(【0031】)、
通風部21を利用して室内Rに空気を循環させることができるので、植物Pの根元から上方に向かった気流を滞らせることなく循環させることができ、植物P全体により均一に気流を与え易いこと(【0033】)。」
イ 引用文献3
(ア)記載事項
新たに提示する本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2018/020935号(平成30年2月1日公開)(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「[0013] 本実施の形態の水耕栽培装置100は、宿根草の水耕栽培に適している。宿根草は、多年生の植物11のうち、生育に適さない時期(多くの場合冬であるが、夏のこともある)には地上部が枯れてしまうが、その時期をすぎると発芽して再び生育を始めるものをいう。
[本実施の形態における水耕栽培装置の構造]
図面を参照して、本実施の形態の水耕栽培装置100を説明する。
図1及び図2に示されるように、実施の形態の水耕栽培装置100は、筐体200内に設置されている。筐体200は、例えばコンテナや小屋のような内部空間を構成するものである。筐体200には、扉(図示せず)が設けられ、栽培者は、その扉を開閉することにより、筐体200に入ることができる。筐体200内の空間が水耕栽培装置100の地上空間Bを構成している。」
「[0048] 上記をまとめると、本実施の形態における水耕栽培装置100は、植物11を育成する育成槽1と、風を供給する送風部3と、送風部3から送られた風を植物11へと誘導する送風配管4と、を有している。送風配管4は、相互に略平行となる第一配管4aと、第二配管4bとを備え、第一配管4a及び第二配管4bは、それぞれの管長手方向に複数の送風孔41が設けられ、植物11に対して送風部3が風を供給する。
[0049] 本実施の形態の水耕栽培方法は、第一配管4a内の風の向きと第二配管4b内の風の向きとを略逆向きにして、送風部3が植物11へ風を誘導する工程を含む。これにより、地上空間Bの広さに関わらず、地上空間B全体へ空気を流入させることができる。また、空気が地上空間B全体へ均一に供給され、温度、湿度及び二酸化炭素濃度を一定、すなわち地上空間B全体で均一にすることができる。また、植物11の配置位置によらず、植物11の成長の度合いの均一さを向上させることができる。」
(イ)引用文献3記載の技術事項
上記(ア)に摘記した引用文献3に記載された事項より、引用文献3には次の事項が記載されている(以下「引用文献3記載の技術事項」という。)。
「コンテナや小屋のような内部空間を構成する筐体200内に設置される水耕栽培装置100を用いた水耕栽培に関し([0013])、
筐体200内の空間が水耕栽培装置100の地上空間Bを構成しており([0013])、
水耕栽培装置100は、植物11を育成する育成槽1と、風を供給する送風部3と、送風部3から送られた風を植物11へと誘導する送風配管4と、を有し、送風配管4は、相互に略平行となる第一配管4aと、第二配管4bとを備え、第一配管4a及び第二配管4bは、それぞれの管長手方向に複数の送風孔41が設けられ、植物11に対して送風部3が風を供給し([0048])、
水耕栽培において、第一配管4a内の風の向きと第二配管4b内の風の向きとを略逆向きにして、送風部3が植物11へ風を誘導し、これにより、空気が地上空間B全体へ均一に供給され、温度、湿度及び二酸化炭素濃度を一定、すなわち地上空間B全体で均一にすることができること([0049])。」
ウ 周知技術
上記ア(イ)引用文献2記載の技術事項及びイ(イ)引用文献3記載の技術事項を総合すると、
「水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設において、植物栽培の温度や湿度の最適化(均一化)のために植物に送風すること。」は本願出願前に植物栽培施設における水耕栽培の分野で周知(以下「周知技術」という。)であると認められる。
(4)対比
ア 本件補正発明1について
本件補正発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「各野菜の幼葉を、所定の組合せ及び配合比で混合し」て「製造」した「ベビーリーフ」は、本件補正発明1の「葉野菜」に相当する。
(イ)引用発明の「ベビーリーフを製造するベビーリーフの製造方法」において、「閉鎖型植物工場で得られた野菜を混合装置を用いて閉鎖空間内で混合して得られたベビーリーフは、汚染の可能性が極めて低いため、袋詰めされたベビーリーフをそのまま洗わずに食することができる」ものであることからみて、「ベビールーフ」が「混合装置を用いて閉鎖空間内で混合して得られた」後に「袋詰め」される工程が含まれることは自明であるから、引用発明の「ベビーリーフの製造方法」は本件補正発明1の「包装済み葉野菜の製造方法」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「ベビーリーフの生産」において「各種野菜を水耕栽培法で栽培」するものであることは、本件補正発明1の備える工程のうちの「水耕栽培」であって「ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であ」ることに相当する。
(エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明に「ベビーリーフ」が「袋詰め」される工程が含まれることは自明であるから、引用発明は、本件補正発明1の工程のうち、「包装:ここで包装されるのは、水耕栽培された葉野菜であ」ることに相当する構成を備える。
(オ)本件補正発明1の「当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であ」ることと、引用発明の「水耕栽培」において、「各種野菜の栽培最適条件は、栽培期間における湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度を制御することによっても、最適化することができ、栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であ」ることは、「水耕栽培の際の相対湿度は、所定範囲であ」る点で共通する。
(カ)上記(ア)~(オ)によれば、本件補正発明1と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
<一致点>
「包装済み葉野菜の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、当該水耕栽培は、相対湿度は、所定範囲であり、
包装:ここで包装されるのは、水耕栽培された葉野菜である。」
<相違点1>
本件補正発明1では、「当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ」るのに対して、
引用発明では、「気流などの栽培環境条件の精密制御が可能とな」る「閉鎖型植物工場」内での水耕栽培ではあるものの、「栽植空間に風を当てながら行われ」ているか不明である点。
<相違点2>
本件補正発明1では、「栽植空間に風を当てながら行われる」「際」「の、」「栽植空間の相対湿度は、95%未満であ」るのに対して、
引用発明では、「栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であ」である点。
<相違点3>
本件補正発明1では、「包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下である」のに対して、
引用発明では、その点が不明である点。
イ 本件補正発明6について
本件補正発明6と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、「閉鎖型植物工場でのベビーリーフの生産においては、各種野菜を水耕栽培法で栽培」するのであるから、「ベビーリーフの生産において」「各種野菜を水耕栽培法で栽培」しており、「水耕栽培」が「栽培」の方法の工程として含まれているといえる。
そうすると、引用発明の「ベビーリーフの生産においては、各種野菜を水耕栽培法で栽培」する方法は、本件補正発明6の「葉野菜の生産方法」に相当する。
(イ)上記ア(ウ)及び(オ)と同様に、引用発明は、本件補正発明6の工程のうち、「水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であ」ることに相当する構成を備え、本件補正発明6の「当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であ」ることと、引用発明の「水耕栽培」において、「各種野菜の栽培最適条件は、栽培期間における湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度を制御することによっても、最適化することができ、栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であ」ることは、「水耕栽培の際の相対湿度は、所定範囲であ」る点で共通する。
(ウ)引用発明は、「各種野菜を水耕栽培法で栽培し」ており、「植物栽培容器棚」には栽培している各種野菜が存在する空間があることは明らかであって、刈り取り位置よりも上部の空間があることも明らかである。
そうすると、本件補正発明6の「当該栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である」ことと、引用発明とは、「栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である」点で共通する。
上記(ア)~(ウ)によれば、本件補正発明6と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点4及び5で相違する。
<一致点>
「葉野菜の生産方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、当該水耕栽培は、相対湿度は、所定範囲であり、
栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である。」
<相違点4>
本件補正発明6では、「当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ」るのに対して、
引用発明では、「気流などの栽培環境条件の精密制御が可能とな」る「閉鎖型植物工場」内での水耕栽培ではあるものの、「栽植空間に風を当てながら行われ」ているか不明である点。
<相違点5>
本件補正発明6では、「水耕栽培」の「栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、かつ、当該栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である。」のに対して、
引用発明では、「栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であ」り、単に、ベビーリーフの生産において各種野菜が存在する空間があって、刈り取り位置よりも上部の空間がある点。
(5)当審の判断
ア 本件補正発明1について
(ア)相違点1について
上記(3)ウのとおり、植物栽培施設における水耕栽培の分野において、「水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設において、植物栽培の温度や湿度の最適化(均一化)のために植物に送風すること。」は周知技術であって、植物に送風すると、植物に対してのみ送風されるのではなく、植物の周囲の空間に対しても当然に送風されることとなるから植物を栽培している空間に対しても送風されることとなることは明らかである。
よって、上記周知技術は、本件補正発明1の「水耕栽培」が、「栽植空間に風を当てながら行われ」ることに相当する構成を有しているといえる。
そして、引用発明は、「温度、湿度、気流などの栽培環境条件の精密制御が可能」なものであるから、引用発明において環境栽培条件を制御する手段の一部として上記周知技術を採用し、水耕栽培を「栽植空間に風を当てながら行われ」るものとして相違点1に係る本件補正発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点2について
引用発明は、「各種野菜の栽培最適条件は、栽培期間における湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度を制御することによっても、最適化することができ、栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であ」るから、気温の制御に代えて、又は、加えて湿度を制御することも示唆されており、「相対湿度を95%以下」で制御することが示唆されているといえる。
そして、本願の明細書の実施例には、相対湿度が95%を挟む試験区として、96.8%(試験区5-2)と94.9%(試験区5-4)があるのみで、相対湿度が95%未満であることに技術的意味が認められない。
そうすると、上記(ア)の判断を踏まえ、引用発明において、上記周知技術を採用し、「栽植空間に風を当てながら行われ」るものとする際に栽培環境条件の制御として、気温の制御に代えて、又は、加えて湿度を制御することとして、相対湿度の数値範囲を最適な数値とすることは当業者が適宜なし得ることである。
ここで、引用発明は、「野菜の栽培期間中の気温の制御について、栽培期間における「気温」とは、栽培する野菜付近の空気の温度を意味し、部屋内に設置された植物栽培容器棚ごとに温度を設定した場合には各棚の温度を気温と称し」ており、「各種野菜の栽培最適条件は、栽培期間における湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度を制御することによっても、最適化することができ、栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下であ」って、「湿度、二酸化炭素濃度及び養液中の肥料濃度」が、いずれの場所のものであるのかについて明らかではないものの、「栽培する野菜付近の空気の温度」である「気温の制御」に代えて、又は、加えて湿度の制御としても良いことが示唆されていることから、相対湿度を制御するのであれば、気温の制御と同様に栽培する野菜付近の位置(本件補正発明1の「栽植空間」に相当)で測定するようにすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、引用発明において、相対湿度を栽培する野菜付近の位置で測定するようにして、95%以下であった相対湿度を95%未満とし相違点2に係る本件補正発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(ウ)相違点3について
引用発明では、包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は不明であるものの、「汚染の可能性が極めて低く、そのまま洗わずに食することができる」ものである。一方、袋詰めから流通して消費者が食べるまである程度の時間が経過したときの一般生菌数は、弁当及びそうざいの衛生規範(昭和54年06月29日環食第161号)において、「サラダ、生野菜等の未加熱処理のものは、検体1gにつき細菌数(生菌数)が1,000,000以下であること。」と規定されており、その点が技術常識であることを踏まえると、引用発明において、その規定に従い一般生菌数が1.0E+06CFU/g以下であるようにすることは明らかである。
よって、相違点3は実質的な相違点ではない。又は、少なくとも当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明1の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術の奏する効果から、当業者が予測することができる程度のものである。
イ 本件補正発明6について
(ア)相違点4について
上記ア(ア)で説示したとおり、植物に送風すると、植物に対してのみ送風されるのではなく、植物の周囲の空間に対しても送風されることとなることが明らかである。
そして、上記ア(ア)で検討したとおり、引用発明は、「温度、湿度、気流などの栽培環境条件の精密制御が可能」なものであるから、引用発明において栽培環境条件を制御する手段の一部として上記周知技術を採用し、水耕栽培を「栽植空間に風を当てながら行われ」るものとして相違点4に係る本件補正発明6の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点5について
上記ア(イ)で検討したとおり、相違点5のうち「相対湿度」が「栽植空間」のものであるか否か不明の点は、「栽培する野菜付近の空気の温度」である「気温の制御」に代えて、又は、加えて湿度の制御としても良いことが示唆されていることから、相対湿度を制御するのであれば、気温の制御と同様に栽培する野菜付近の位置(本件補正発明6の「栽植空間」に相当)で測定するようにすることは当業者が容易になし得たことである。
そして、上記ア(ア)の判断を踏まえると、引用発明において、上記周知技術を採用し、「栽植空間に風を当てながら行われ」るものとする際に栽培環境条件の制御として、気温の制御に代えて、又は、加えて相対湿度を制御することとして、その際に、95%以下であった相対湿度を95%未満とすることは上記ア(イ)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明6の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術の奏する効果から、当業者が予測することができる程度のものである。
(6)審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年3月26日受付の審判請求書において、次の点について主に主張をする。
「(3)理由2に対して
当該理由は、解消しました。
すなわち、本願の請求項1に係る発明と、引用文献に記載のものを対比すると、両者の相違点は、以下のとおりです。
相違点A:本願の請求項1では、水耕栽培が栽植空間に風を当てながら行われることが特定されているのに対して、引用文献1には、その旨記載がない点
相違点B:本願の請求項1では、包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下であることが特定されているのに対して、引用文献1には、その旨記載がない点
相違点Aに関して、引用文献1には、記載も示唆もありません。そして、本願発明において、栽植空間に風を当てながら水耕栽培を行うことによって、葉野菜に水滴が付着するのを抑制し得るため、一般生菌数を低くすることが可能です(本願明細書段落[0030]乃至[0033]、並びに[0034]乃至[0049])。
相違点Bに関して、審査官殿は、引用文献1に記載のものが、相対湿度55~95%であるため、相違点Bは一致点である蓋然性が高いと判断されています。しかしながら、どのように相対湿度を制御しても、液面近辺において常に湿度を55~95%にすることは困難であり、さらに、本願発明のように風を当てていることの記載もないため、引用文献1に記載の植物にどの程度水滴が付着しているのかも不明です。そのため、相違点Bに関して、引用文献1に記載の発明が一致している蓋然性が高いということまで言うことはできません。
以上より、引用文献1に基づき、当業者は、相違点A及びBに想到することはできません。
よって、本願の請求項1は、引用文献1に基づき当業者が容易に想到し得たものではありません。本願の請求項2乃至10についても同様です。」
そこで、審判請求人の上記主張についてそれぞれ検討する。
なお、審判請求人が主張する相違点Aは、上記(4)アの相違点1及び上記(4)イの相違点4に対応し、同相違点Bは、上記(4)アの相違点3に対応する。
ア 相違点Aに関する主張について
上記(5)ア(ア)及びイ(ア)で検討したとおり、「水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設において、植物栽培の温度や湿度の最適化(均一化)のために植物に送風すること。」は周知技術であって、引用発明に上記周知技術を採用して、相違点1に係る本件補正発明1の構成及び相違点4に係る本件補正発明6の構成とすることは当業者が容易になし得たことであるから、引用文献1に記載がないことのみで相違点Aに想到することができないといえるものではない。
また、上記(5)ア(イ)で説示したとおり、引用発明は、「栽培する野菜付近の空気の温度」である「気温の制御」に代えて、又は、加えて湿度を制御することも示唆されていることから、相対湿度を制御するのであれば、気温の制御と同様に栽培する野菜付近の位置で測定するようにすることは当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明1の「水耕栽培」が「栽植空間に風を当てながら行われ」ることは、「水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設において、」「植物に送風する」周知技術との間に差異を生じる特定はなされていない以上、相違点Aに係る本件補正発明1及び6の構成である「栽植空間に風を当てながら行われ」ることにより一般生菌数を低くする効果は周知技術から期待される程度のものである。
また、後述するように、引用発明は、閉鎖型植物工場で得られた野菜を閉鎖空間内で混合して得られた汚染の可能性が極めて低いベビーリーフを製造するものであるから、引用発明に周知技術を適用した場合において、本件補正発明1及び6と比べて、一般生菌数を低く抑えることが可能でないといえる事情もない。
イ 相違点Bに関する主張について
引用文献1は、「温度、湿度、二酸化炭素濃度、人工光の波長及び照射時間などが制御された空間で植物を栽培するシステム」(【0057】)であって、「栽培期間中の植物工場内の相対湿度は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また、通常100%以下、好ましくは95%以下である。」(【0073】)のであって、引用発明では「温度、湿度、二酸化炭素濃度、人工光の波長及び照射時間などが制御され」ることは、植物にとって良い環境とすることを目的とすることは明らかであり、植物に近い位置、すなわち、栽培している植物近傍の湿度を制御することに困難性があるとはいえないから、「どのように相対湿度を制御しても、液面近辺において常に湿度を55~95%にすることは困難であ」るとはいえない。
また、風を当てることに関しては、上記アのとおり、「水耕栽培等により植物を栽培する植物栽培施設において、植物栽培の温度や湿度の最適化(均一化)のために植物に送風すること。」は周知技術を採用することにより容易になし得たことである。
そして、上記(5)ア(ウ)で説示したとおり、相違点3(請求人が主張する相違点B)は実質的な相違点ではない。又は、少なくとも当業者が容易になし得たことである。
審判請求人は、また、引用文献1に記載の植物にどの程度水滴が付着しているか不明であることを根拠に、相違点Bに係る一般生菌数について一致している蓋然性が高いとまではいえず、引用文献1に基づき、当業者が相違点A及びBに想到することができない旨主張する。
ここで、本件補正発明1及び6は、「栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満」と特定されるものであるところ、引用発明に周知技術を適用して「栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満」とすることが当業者が容易になし得たことであることは、上記(5)ア(ア)及び(イ)において説示したとおりである。
また、一般生菌数は、上記(5)ア(ウ)で説示したように、衛生規範に基づいて規定されている値であるところ、栽培時の植物に付着している水滴の量のみではなく、植物工場のクリーン度や袋詰めする環境、その後の保管期間中の温度などにも依拠するものであることは技術常識であり、水耕栽培時の栽培条件だけではなくそれ以降の工程における条件にも依拠するものである以上、本件補正発明1及び6において「栽植空間に風を当てながら行われ、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であ」ることのみにより必ずしも達成されるとはいえない。そして、引用発明に周知技術を適用した場合、引用発明のベビーリーフは、閉鎖型植物工場で得られた野菜を閉鎖空間内で混合して得られた汚染の可能性が極めて低いベビーリーフなのであるから、チルド保管等の周知慣用の適切な管理によって、一般生菌数は、衛生規範に基づく値1.0E+06CFU/g以下となされる蓋然性が高い。または、その値とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
ウ まとめ
湿度の管理は、必ずしも送風だけに限るものではなく、本件補正発明1及び6においても、湿度を管理する要素については特定されておらず、湿度と菌の繁殖について、多湿であれば菌が繁殖しやすいことや、送風によって湿度を制御できることは一般的な常識であるから、引用発明に上記周知技術を採用した際に、送風によって湿度を下げて菌の繁殖を抑えるという効果については当業者が予測し得る範囲内のものである。
よって、上記審判請求人の主張を採用することはできない
(7)まとめ
上記(1)~(6)より、本件補正発明1及び6は、当業者が、引用発明及び周知技術から容易に発明できたものである。
したがって、本件補正発明1及び6は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4及び9に係る発明は、令和5年9月19日受付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項4及び9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項4及び9に係る発明(以下「本願発明4」及び「本願発明9」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項4】
包装済み葉野菜の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、
包装:ここで包装されるのは、水耕栽培された葉野菜であり、その包装時から96時間乃至168時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下である。
【請求項9】
葉野菜の生産方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
水耕栽培:ここで水耕栽培されるのは、葉野菜であり、その際の栽植空間の相対湿度は、95%未満であり、かつ、当該栽植空間とは、植えられた葉野菜が存在する空間であり、かつ、葉野菜の刈取り位置よりも上部の空間である。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由(進歩性)について
・請求項 4、9
・引用文献等 1
<引用文献等一覧>
1.特開2017-60441号公報
3 引用文献1の記載事項、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2017-60441号公報(上記第2〔理由〕2-2(2)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2〔理由〕2-2(2)引用文献1の記載事項、引用発明」に記載したとおりである。
4 対比・当審の判断
本願発明4及び9(上記「第2〔理由〕1(補正前)」)は、本件補正発明1及び6(上記「第2〔理由〕1(補正後)」)から上記「第2〔理由〕2 2-1」において検討したとおり、「当該水耕栽培は、栽植空間に風を当てながら行われ」ることを省いたものである。
そうすると、本願発明4及び9の特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものである本件補正発明1及び6が引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、上記相違点1が削除された本願発明4及び上記相違点4が削除された本願発明9は引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明4及び9は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005069