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特許拒絶査定不服審判

2024-000805

加熱調理用固形状ペースト組成物及びその製造方法

審判番号
2024-000805
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-181866
請求日
2024年01月17日
審決日
2025年11月17日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社Mizkan Holdings
  • 【請求人代理人】中島 勝
審判長/審判官
  • 審判長 天野 宏樹
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 柴田 昌弘
分類
P18 .55 -Z (A23L) / P18 .113-Z (A23L) / P18 .121-Z (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
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特願2020-181866「加熱調理用固形状ペースト組成物及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月 4日出願公開、特開2021- 10381〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特願2020-181866号(以下、「本件出願」という。)は、令和2年2月14日(優先権主張令和1年9月6日、平成31年2月15日)を国際出願日とする特願2020-518103号の一部を、令和2年10月29日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和5年 1月12日提出:手続補正書 同年 3月31日付け:拒絶理由通知書 同年 8月 4日提出:意見書、補正書 同年10月 6日付け:拒絶査定 令和6年 1月17日提出:審判請求書、手続補正書 第2 令和6年1月17日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月17日に提出された手続補正書による補正を却下する。 [理由] 1 令和6年1月17日に提出された手続補正書による補正の内容 令和6年1月17日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、下記(1)に示すものから下記(2)に示すものに補正するものである。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。 (1)本件補正前(すなわち、令和5年8月4日に提出された手続補正書による補正後)の特許請求の範囲 「【請求項1】 植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)小麦の含有割合が50%以下である植物性食材を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。 【請求項2】 植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)植物性食材を含有するペースト生地組成物(但し魚粉を含有する組成物を除く)を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。 【請求項3】 植物性食材における小麦の含有割合が25%以下である、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 植物性食材がグルテンを含有しない、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。 【請求項5】 更に下記の段階(iv)を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。 (iv)前記段階(iii)後に、雰囲気の相対湿度(RH%)が50RH%超の環境下で湿潤処理する段階。 【請求項6】 前記段階(iv)の湿潤処理を、下記の式1を満たす条件下で行う、請求項5に記載の方法。 A×T≧40 (式1) 〔式中、Aは、雰囲気の相対湿度(RH%)を示し、Tは、湿潤処理時間(hr)を示す。但し、A>50RH%である。〕 【請求項7】 前記段階(ii)及び前記段階(iii)を加圧条件下で行う、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。 【請求項8】 前記加圧条件が0.1MPa以上の圧力を印加する条件である、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記段階(i)におけるペースト生地組成物が、下記処理Aを加えた後に超音波処理をした場合における粒子径分布d90が1000μm以下のペースト生地組成物である、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。 [処理A] 微細化豆類6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼによって、20℃で3日間処理する。 【請求項10】 前記エクストルーダーが1軸エクストルーダー又は2軸エクストルーダーである、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。 【請求項11】 前記段階(ii)の混練時間が0.1分間以上60分間以内である、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。 【請求項12】 前記段階(iii)における降温温度が、95℃以下である、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。 【請求項13】 更に下記の段階(v)を含む、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。 (v)少なくとも前記段階(iii)の後に、組成物をエクストルーダーから麺状に押し出し成形する段階。 【請求項14】 請求項1~13の何れか1項の方法により植物性食材におけるでんぷん粒が破壊され、更に乾燥処理段階を経て製造された、下記(1)から(4)を全て充足する乾燥基準含水率が20質量%以下の加熱調理用固形状ペースト組成物。 (1)不溶性食物繊維を乾燥質量換算で3質量%以上含有する。 (2)でんぷんを乾燥質量換算で10質量%以上含有する。 (3)タンパク質を乾燥質量換算で4質量%以上含有する。 (4)90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下である。 【請求項15】 請求項14に記載の組成物を粉砕してなる、粉砕組成物。 【請求項16】 請求項15に記載の粉砕組成物を凝集してなる、粉砕組成物凝集体。 【請求項17】 ペースト生地組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)小麦の含有割合が50%以下である植物性食材を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。 【請求項18】 ペースト生地組成物の結着性を抑制する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)植物性食材を含有するペースト生地組成物(但し魚粉を含有する組成物を除く)を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)小麦の含有割合が50%以下である植物性食材を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20~60質量%となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。 【請求項2】 植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)豆類を含有するペースト生地組成物(但し魚粉を含有する組成物を除く)を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20~60質量%となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。 【請求項3】 植物性食材における小麦の含有割合が25%以下である、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 植物性食材がグルテンを含有しない、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。 【請求項5】 更に下記の段階(iv)を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。 (iv)前記段階(iii)後に、雰囲気の相対湿度(RH%)が50RH%超の環境下で湿潤処理する段階。 【請求項6】 前記段階(iv)の湿潤処理を、下記の式1を満たす条件下で行う、請求項5に記載の方法。 A×T≧40 (式1) 〔式中、Aは、雰囲気の相対湿度(RH%)を示し、Tは、湿潤処理時間(hr)を示す。但し、A>50RH%である。〕 【請求項7】 前記段階(ii)及び前記段階(iii)を加圧条件下で行う、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。 【請求項8】 前記加圧条件が0.1MPa以上の圧力を印加する条件である、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記段階(i)におけるペースト生地組成物が、下記処理Aを加えた後に超音波処理をした場合における粒子径分布d90が1000μm以下のペースト生地組成物である、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。 [処理A] 微細化豆類6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼによって、20℃で3日間処理する。 【請求項10】 前記エクストルーダーが1軸エクストルーダー又は2軸エクストルーダーである、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。 【請求項11】 前記段階(ii)の混練時間が0.1分間以上60分間以内である、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。 【請求項12】 前記段階(iii)における降温温度が、95℃以下である、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。 【請求項13】 更に下記の段階(v)を含む、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。 (v)少なくとも前記段階(iii)の後に、組成物をエクストルーダーから麺状に押し出し成形する段階。 【請求項14】 請求項1~13の何れか1項の方法により植物性食材におけるでんぷん粒が破壊され、更に乾燥処理段階を経て製造された、下記(1)から(4)を全て充足する乾燥基準含水率が20質量%以下の加熱調理用固形状ペースト組成物。 (1)不溶性食物繊維を乾燥質量換算で3質量%以上含有する。 (2)でんぷんを乾燥質量換算で10質量%以上含有する。 (3)タンパク質を乾燥質量換算で4質量%以上含有する。 (4)90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下である。 【請求項15】 請求項14に記載の組成物を粉砕してなる、粉砕組成物。 【請求項16】 請求項15に記載の粉砕組成物を凝集してなる、粉砕組成物凝集体。 【請求項17】 ペースト生地組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)小麦の含有割合が50%以下である植物性食材を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20~60質量%となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。 【請求項18】 ペースト生地組成物の結着性を抑制する方法であって、下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)豆類を含有するペースト生地組成物(但し魚粉を含有する組成物を除く)を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、水分含量が乾燥質量換算で20~60質量%となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階であって、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行う段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整する段階。」 2 本件補正の適否 新規事項の追加(特許法第17条の2第3項)の有無について検討する。 (1)願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)に記載された事項 当初明細書等には、以下の事項が記載されており、【0104】~【0128】には、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物、その製造方法及びその品質改善方法の実施例が記載されている。なお、下線は、当初明細書等において付されていたものと当審が付したものがある。 ・「【請求項1】 下記(1)から(4)を全て充足する、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物。 (1)不溶性食物繊維を乾燥質量換算で3質量%以上含有する。 (2)でんぷんを乾燥質量換算で10質量%以上含有する。 (3)タンパク質を乾燥質量換算で4質量%以上含有する。 (4)90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下である。」 ・「【請求項11】 下記の段階(i)から(iii)を含む、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物の製造方法。 (i)微細化豆類を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、比力学的エネルギー(SME)値350kJ/kg以上の条件下で混練する段階。 (iii)前記段階(ii)後の組成物温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させる段階。」 ・「【請求項24】 下記の段階(i)から(iii)を含む、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物の品質改善方法。 (i)微細化豆類を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有率が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有率が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有率が乾燥質量換算で4質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、比力学的エネルギー(SME)値350kJ/kg以上の条件下で混練する段階。 (iii)前記段階(ii)後の組成物温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させる段階。」 ・「【請求項35】 前記品質改善が、前記組成物の加熱調理後における、結着及び/又は弾性低下の抑制である、請求項24~34のいずれか1項に記載の方法。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1に記載の技術は、好適な加熱温度及び加熱時間の幅が狭く、加熱が不十分であると結着防止効果が損なわれ、他方加熱し過ぎると麺表面に焦げ付きが生じて食品としての品質が低下するため、一定の品質を安定的に供給することが困難という課題があった。また、特許文献2及び特許文献3に記載の技術は何れも、麺同士の結着を抑制でき、その方法は比較的簡便ではあるが、料理酒や多糖類の風味が付与されてしまうという課題が残されていた。 本発明の課題は、加熱調理後、時間が経過しても結着しにくい加熱調理用固形状ペースト組成物及びその製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、従来の技術にはない豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維、及びでんぷんによる効果に着目し、これらの各含有量を特定値以上に制御したうえで、特定条件下にて水で処理したときの濁り具合を指標とし、水中における成分溶出を抑制することで、上記課題が解決された加熱調理用固形状ペースト組成物が得られることを見出した。また、当業者の技術常識では小麦等に含有されるグルテンが変性するため通常採用されていない高温高圧条件に着目し、微細化豆類を含有する原料を特定条件下にて処理することで、上記加熱調理用固形状ペースト組成物を簡便な方法で製造できることを新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいて更に鋭意研究を進めることにより、下記の発明を完成させるに至った。」 ・「【0011】 [I:加熱調理用固形状ペースト組成物] 本発明は、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物(以下、「本発明の固形状ペースト組成物」とも称する。)に関する。 本発明において「加熱調理」とは、一般的に、火やマイクロ波を用いて直接的に、又は、水や空気等の媒体を通じて間接的に、食品に熱を加えることで、食品の温度を上げる調理方法をいい、一般的に、例えば約70℃以上、典型的には80℃~180℃程度の加熱温度で、例えば1分以上60分以内の時間に亘って調理することを表す。調理方法として、例えば、焼く、煮る、炒める、蒸す等を挙げることができるが、これらに限定されない。 本発明において「固形状」とは、加熱調理されてもその形状を保持できる程度の固形性を有することを表し、「ペースト組成物」とは、豆類等の食材を混練して製造した食品組成物を表す。」 ・「【0017】 [豆類] 本発明の固形状ペースト組成物は、豆類を含有する。豆類の性状は特に制限されないが、微細化された豆類(微細化豆類)であることが好ましい。本発明において「微細化豆類」とは、超音波処理後の粒子径d90が1900μm以下である豆類をいう。ここでいう微細化豆類には、生地組成物中の微細化豆類が加工に伴ってペースト組成物中において溶融し混然一体となった状態のものも含まれる。本発明の固形状ペースト組成物に含まれる微細化豆類の超音波処理後の粒子径d90は、1500μm以下が好ましく、1000μm以下が更に好ましく、中でも800μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下がより好ましい。また、下限は特に制限されないが、工業上の生産効率という観点から、例えば通常1μm以上、さらには3μm以上である。また、本発明の固形状ペースト組成物に含まれる微細化豆類の超音波処理後の粒子径d50は、1500μm以下が好ましく、1000μm以下が更に好ましく、中でも800μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下がより好ましい。また、下限は特に制限されないが、工業上の生産効率という観点から、例えば通常1μm以上、さらには3μm以上である。ここで、本発明において「粒子径d90」及び「粒子径d50」とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、ある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、それぞれ10:90及び50:50となる粒子径として定義される。また、本発明において「超音波処理」とは、特に断りがない限り、周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理をすることを意味する。なお、超音波処理後の粒子径d90及びd50の測定条件については、後記に従うものとする。」 ・「【0021】 本発明の固形状ペースト組成物は、所定量以上のでんぷんを含む豆類を含有することで、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるという本発明の効果を顕著に奏しつつ、組成物が切れにくくなるという効果が奏されるため好ましい。その原因は定かではないが、豆類中のタンパク質と食物繊維がでんぷんと相互作用することで効果が奏されている可能性がある。」 ・「【0025】 [不溶性食物繊維] 本発明の固形状ペースト組成物は、不溶性食物繊維を含有する。本発明において「不溶性食物繊維」とは、人の消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分のうち、水に不溶のものを指す。その定量には、例えば日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、プロスキー変法等を用いることができる。 本発明の固形状ペースト組成物は、不溶性食物繊維の含量が多い場合でも、ボソボソとした食感の組成物とならないため有用である。その原因は定かではないが、高温高圧処理により、豆類中のタンパク質と食物繊維がでんぷんと相互作用してネットワーク構造を形成することで、不溶性食物繊維の食感が改善されている可能性がある。」 ・「【0031】 また、本発明の固形状ペースト組成物の製造加工前の原料として用いられる微細化豆類に含まれる不溶性食物繊維が、所定範囲の大きさを有することが好ましい。具体的には、豆類に含有される不溶性食物繊維の超音波処理後の粒子径d90が、通常1000μm以下であることが好ましく、中でも900μm以下、更には800μm以下、又は700μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下であることがより好ましい。また、下限は特に制限されないが、工業上の生産効率という観点から、例えば通常1μm以上、さらには3μm以上である。また、同様に、原料の微細化豆類に含まれる不溶性食物繊維の超音波処理後の粒子径d50が、通常1000μm以下であることが好ましく、中でも900μm以下、更には800μm以下、又は700μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下であることがより好ましい。また、下限は特に制限されないが、工業上の生産効率という観点から、例えば通常1μm以上、さらには3μm以上である。不溶性食物繊維の超音波処理後の粒子径d90及びd50が前記上限を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。その理由は定かではないが、不溶性食物繊維は非常に強固な構造を有するため、原料となる微細化豆類に粗大な不溶性食物繊維が存在すると、固形状ペースト組成物の場合と同様、でんぷん等のネットワーク構造形成を阻害し、本発明の効果が発揮されるのを阻害するためと考えられる。なお、原料となる微細化豆類に含まれる不溶性食物繊維のサイズは、固形状ペースト組成物に含まれる不溶性食物繊維のサイズと同様の手法で測定することができる。」 ・「【0032】 [でんぷん] 本発明の固形状ペースト組成物は、でんぷんを所定割合以上含有することで、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるという本発明の効果が奏される。その原因は定かではないが、豆類中のタンパク質と食物繊維がでんぷんと相互作用してネットワーク構造を形成し、その結果として本発明の効果を奏している可能性がある。」 ・「【0034】 また、本発明の固形状ペースト組成物は、豆類に由来するでんぷんを所定割合以上含有することで、組成物同士が結着しにくい品質となるため好ましい。具体的には、本発明の固形状ペースト組成物全体のでんぷんに対する、豆類に由来するでんぷんの比率が、乾燥質量換算で通常10質量%以上であることが好ましく、中でも20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に実質的に100質量%であることが好ましい。」 ・「【0035】 [タンパク質] 本発明の固形状ペースト組成物は、タンパク質を所定割合以上含有することで、加熱調理されても組成物が結着しにくいという効果が奏される。その原因は定かではないが、豆類中のタンパク質と食物繊維がでんぷんと相互作用してネットワーク構造を形成し、その結果として本発明の効果を奏している可能性がある。」 ・「【0037】 また、本発明の固形状ペースト組成物は、豆類に由来するタンパク質を所定割合以上含有することで、組成物同士が結着しにくい品質となるため好ましい。具体的には、本発明の固形状ペースト組成物全体のタンパク質に対する、豆類に由来するタンパク質の比率が、乾燥質量換算で通常10質量%以上であることが好ましく、中でも20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に実質的に100質量%であることが好ましい。」 ・「【0045】 即ち、本発明の固形状ペースト組成物は、90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が、通常25%以下であるが、好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下、更に好ましくは15%以下である。前記ヘイズ値の下限は特に制限されないが、工業上の生産効率という観点から、例えば通常0%以上、好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.6%以上である。なお、本発明において「ヘイズ値」とは、拡散透過率を全光線透過率で割り返すことで求められる数値であり、具体的には、「ヘイズ値(%)=拡散透過率/全光線透過率×100」という式で算出される。前記式中、「全光線透過率」とは、反射、散乱を考慮した光線透過率であり、「拡散透過率」とは、試料を透過する光線のうち、光線の方向と平行状態に存在している成分を除いた拡散光の透過率である。これらの全光線透過率及び拡散透過率は、積分球式光電光度法による濁度測定器(WA6000T(日本電色工業株式会社製))を用いて、20℃に調整したサンプルを、光路長5mmの石英セルに入れ、蒸留水を対照とした透過測定によって、定法に従って測定する。」 ・「【0053】 [その他の食材] 本発明の固形状ペースト組成物は、豆類以外に、任意の1又は2以上の食材を含んでいてもよい。斯かる食材の例としては、植物性食材(野菜類、芋類、きのこ類、果実類、藻類、穀類、種実類等)、動物性食材(魚介類、肉類、卵類、乳類等)、微生物性食品等が挙げられる。これら食材の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。 【0054】 [II:加熱調理用固形状ペースト組成物の製造方法] 本発明の固形状ペースト組成物を調製する方法は、特に制限されるものではなく、前記の各種要件を充足する組成物が得られる限りにおいて、任意の手法を用いることができる。具体的には、本発明の固形状ペースト組成物の前記の材料、例えば微細化豆類と、任意により用いられるその他の食材、調味料、及びその他の成分とを混合すればよい。必要に応じて加熱や成型等の処理を加えてもよい。中でも、前記の材料を前記の組成を満たすように混合したペースト生地組成物を、所定の高温加圧条件下で混練した後、膨化しないように降温させる特定の方法(以下適宜「本発明の製造方法」と称する。)を用いることで、本発明の固形状ペースト組成物を効率的に製造することが可能である。」 ・「【0057】 [高温条件での混練処理(段階(ii))] 前記段階(i)で得られたペースト生地組成物を、所定の高温条件下で混練する。このように高温条件で混練することで、組成物中の不溶性成分が流出しにくくなる。特に、一定の高温加圧条件下で混練を行うことで、斯かる不溶性成分が流出防止される効果が高められる。その理由は定かではないが、一定の高温条件下、好ましくは高温加圧条件下での処理によって、ペースト生地中のタンパク質、でんぷん、不溶性食物繊維が組成物表面に複合体を形成し、特に不溶性成分の流出を抑えている可能性がある。一方、精製でんぷんを原料として使用した通常の冷麺等は、特に食物繊維をごく僅かしか含有しないため、不溶性成分の溶出が抑えられず、本発明の効果を奏さないと考えられる。 【0058】 混練時の具体的な高温加圧条件は、特に制限されるものではないが、以下の通りである。混練時の温度の下限としては、通常100℃以上、中でも105℃以上、更には110℃以上、特に115℃以上とすることが好ましい。混練時の下限温度を前記とすることで、不溶性成分の溶出が抑えられ、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるという本発明の特性を有する固形状ペースト組成物、換言すれば、前述のヘイズ値が前記所定値以下に抑えられた本発明の固形状ペースト組成物を得ることが可能となる。一方、混練時の温度が低すぎると、組成物中のでんぷん、タンパク質、不溶性食物繊維が好適なネットワーク構造を形成できず、加熱調理後に、組成物中の不溶性成分が組成物外に流出し、組成物同士が結着しやすくなる場合がある。」 ・「【0081】 エクストルーダーによる段階(ii)の混練時の温度は、制限されるものではないが、高温下で行うことが好ましい。具体的には、エクストルーダーによる混練時の温度の下限は、通常100℃以上とすることが好ましく、中でも110℃以上、更には120℃以上とすることがより好ましい。特に、エクストルーダーの非フライトスクリュー部位の温度を、通常100℃以上とすることが好ましく、中でも110℃以上、更には120℃以上とすることがより好ましい。エクストルーダーによる混練時の温度を、前記下限値以上の温度とすることで、組成物中のでんぷん粒構造が破壊されやすくなる。特に、豆類及び種実類に由来するでんぷん粒構造はその構造がより強固であるため、斯かる高温下での混練はより有用である。一方、エクストルーダーによる混練時の温度の上限は、制限されるものではないが、通常200℃以下が好ましく、中でも190℃以下、更には180℃以下、又は170℃以下、特に160℃以下とすることがより好ましい。」 ・「【0105】 なお、以下の実施例及び比較例の調製に使用した微細化豆類は、以下のとおりである。 (1)黄色エンドウマメを原料とした粉末状の「乾燥イエローピー」 (2)粉末状の「乾燥グリーンピース」 (3)粉末状の「乾燥シロエンドウマメ」 (4)粉末状の「乾燥緑豆」 (5)粉末状の「乾燥ブルーピー」 (6)粉末状の「乾燥ヒヨコマメ」 (7)粉末状の「乾燥インゲンマメ」 (8)粉末状の「乾燥レンズ豆」 (9)粉末状の「乾燥紫花豆」 なお、微細化豆類は、本明細書に記載の方法により測定した超音波処理後の粒子径d90がいずれも1900μm以下であった。」 (2)新規事項の追加の有無に関する当審の判断 新規事項の追加の有無について、特に、本件補正後の請求項17に係る発明及び請求項1に係る発明について検討する。 ア 請求項17に係る発明について 本件補正後の請求項17に係る発明は、段階(i)において調整するペースト生地組成物が「小麦の含有割合が50%以下である植物性食材」を含有することを特定するものの、上記ペースト生地組成物が豆類を含有するか否かを何ら特定するものではないので、豆類を含有しないペースト生地組成物も含むものである。 一方、当初明細書等の発明の詳細な説明の【0007】には、「豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維、及びでんぷんによる効果に着目し、これらの含有量を特定値以上に制御」して課題を解決したことが記載されており、同【0011】、【0017】及び【0021】には、本発明の固形状ペースト組成物が「豆類を含有する」ことが記載されており、同【0031】には、本発明の固形状ペースト組成物の製造加工前の原料として用いられる「微細化豆類に含まれる不溶性食物繊維」の粒子径が本発明の効果に関与していることが記載されており、同【0034】には「豆類に由来するでんぷん」を、同【0037】には「豆類に由来するタンパク質」を、所定割合以上含有することで、組成物同士が決着しにくい品質となることがそれぞれ記載されていることからみて、当初明細書等には、加熱調理用固形状ペースト組成物が豆類を含有することが課題解決手段であることを前提とした発明が記載されているといえ、【0056】の段階(i)において調製するペースト生地組成物についても、豆類を含有することを前提としているといえる。そして、当初明細書等の【0104】~【0128】に記載された実施例には、段階(i)で豆類を含有するペースト生地組成物を調製し、所定の高温加圧条件下で処理した加熱調理用固形状ペースト組成物が、保管後の弾性低下や結着性、喫食による食感が優れることが記載されており、豆類を含有しない原料を用いた比較例としては、小麦100%を用いた比較例3のみが記載されている。 以上のことから、当初明細書等には、段階(i)で「小麦の含有割合が50%以下である植物性食材」を含有し、豆類を含有しないペースト生地組成物を用いた場合に、保管後の弾性低下や結着性、喫食による食感について実施例と同様の効果が得られることは記載されていないし、比較対象としてさえも「小麦の含有割合が50%以下である植物性食材」を含有し、豆類を含有しないペースト生地組成物を調製することは記載されていない。 また、一般に、植物性食材に含まれるタンパク質や食物繊維、でんぷん等の化学構造や立体構造等は、その由来となる植物の種類により異なり、「豆類」に含まれるタンパク質、食物繊維、でんぷん等があらゆる植物性食材に共通に含まれるという技術常識は存在しないところ、それらの分子量、反応性官能基の種類、量、枝分かれ等の立体構造等が異なれば、生じる化学反応及び反応物の物性も異なるというのが本願出願時における技術常識である。これを本願についてみれば、当初明細書等には「従来の技術にはない豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維、及びでんぷんによる効果に着目」したこと(【0007】)及び「豆類中のタンパク質と食物繊維がでんぷんと相互作用してネットワーク構造を形成し、その結果として本発明の効果が奏されている可能性がある」こと(【0032】及び【0035】)が記載されていることから、出願時の技術常識を参酌しても、タンパク質、食物繊維及びでんぷんの種類が当初明細書等に記載されたものとは異なる、豆類を含有しない任意の植物性食材を含有するペースト生地組成物を用いた場合にも、所定の加熱加圧条件下で処理したときに、豆類由来のものを含むペースト生地組成物を用いた場合と同様に相互作用してネットワーク構造を形成し、その結果として豆類を含有する場合と同様の効果を奏すること、すなわち、保管後の弾性低下を抑制する等の効果を奏することが、当初明細書等の記載から当業者に自明な事項であるとはいえない。 以上をまとめると、段階(i)におけるペースト生地組成物として、豆類を含有しないものを包含する組成物についての、保管後の弾性低下を抑制する方法である本件補正後の請求項17に係る発明は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。 イ 請求項1に係る発明について 本件補正後の請求項1に係る発明は、段階(i)において調整するペースト生地組成物が「小麦の含有割合が50%以下である植物性食材」を含有することを特定するものの、上記ペースト生地組成物が豆類を含有するか否かを何ら特定するものではないので、豆類を含有しないペースト生地組成物も含むものである。そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、段階(ii)における混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値(以下、単に「ヘイズ値」という。)が、25%以下となるまで混練を行うことを特定するものである。 当初明細書等の発明の詳細な説明の【0007】には、豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維及びでんぷんの含有量を特定値以上に制御したうえで、「特定条件下にて水で処理したときの濁り具合を指標とし、水中における成分溶出を抑制することで、上記課題が解決された加熱調理用固形状ペースト組成物が得られることを見出した」ことが記載されており、同【0044】には、ヘイズ値が所定値以下であることで、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるという本発明の効果が奏される原因について、「組成物表面にでんぷん、タンパク質、食物繊維がネットワーク構造を形成することによって、比較的サイズの大きい組成物を構成する組織が流出することを抑制している」と記載されており、同【0058】には、混練時の下限温度を所定の温度とすることで「不溶性成分の溶出が抑えられ、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるという本発明の特性を有する固形状ペースト組成物、換言すれば、前述のヘイズ値が前記所定値以下に抑えられた本発明の固形状ペースト組成物を得ることが可能となる。」と記載されており、同【0084】には、「ペースト生地組成物に対して、このような過酷な高温高圧条件下での混練処理を施すことにより、ヘイズ値が調製され、それに伴い組成物同士の結着性や喫食性が改善するという効果は、従来は全く知られていなかった」と記載されており、ヘイズ値について「所定値以下」とは、同【0045】等の記載からみて、「25%以下」であるといえる。 そうすると、当初明細書等の記載からは、豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維及びでんぷんの含有量を特定値以上に制御したペースト生地組成物を、エクストルーダーを用いて所定の高温高圧条件下で混練することにより、組成物表面にでんぷん、タンパク質、不溶性食物繊維がネットワーク構造を形成させ、ヘイズ値が25%以下となったものは、不溶性成分の溶出が抑えられ、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるといえるものの、豆類を含有しないペースト生地組成物は、豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維、でんぷんを含有しないから、当初明細書等に記載された機序でヘイズ値が25%以下になることは自明ではなく、不溶性成分の溶出が抑えられることも自明ではない。 そして、上記アに記載した本願出願時の技術常識を踏まえると、タンパク質、食物繊維及びでんぷんの種類が当初明細書等に記載されたものとは異なる、豆類を含有しないペースト生地組成物を用いた場合にも、所定の加熱加圧条件下で処理したときに、豆類由来のものを含むペースト生地組成物を用いた場合と同様に相互作用してネットワーク構造を形成し、その結果として本発明と同様の効果を奏することが、当初明細書等の記載から自明な事項であるとはいえない。 以上をまとめると、当初明細書等には、段階(i)において調整するペースト生地組成物として豆類を含有しないペースト生地組成物を用いた場合については、豆類を含有し、豆類由来のタンパク質、不溶性食物繊維、及びでんぷんを含むペースト生地組成物を用いた場合と同様に相互作用してネットワーク構造を形成し、ヘイズ値が25%以下になり、不溶性成分の溶出が抑えられ、加熱調理後の組成物が結着しにくく、なめらかさが保持されるという本発明と同じ効果が得られる発明として記載されたものではなく、出願時の技術常識を参酌しても、そのような発明が当初明細書等の記載から自明な事項であるとはいえない。 したがって、段階(i)におけるペースト生地組成物として、豆類を含有しないものを包含する組成物についての、段階(ii)における混練後の組成物のヘイズ値が、25%以下となるまで混練を行うことを特定する本件補正後の請求項1に係る発明は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。 (3)請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている ア 請求人の主張 (ア)請求人の主張(1) 段落[0011]は「「ペースト組成物」とは、豆類等の食材を混練して製造した食品組成物を表す」(下線強調は請求人による)とされており、食材は必ずしも豆類に限定されておりません。また、その他の段落も、あくまでも原出願の請求項に記載の発明(加熱調理用固形状ペースト組成物及びその製造方法)との関連でペースト生地組成物が豆類を含有すると述べているのであり、本分割出願の請求項に記載の発明(植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法等)との関連で豆類を必須としているのではありません。 (イ)請求人の主張(2) 明細書の段落[0077]~[0082]には、植物性食材を含む固形状ペースト組成物をエクストルーダーを用いて所定条件下で混練することにより、組成物中のでんぷん粒構造が破壊される旨が明記されており、段落[0081]には、「豆類及び種実類に由来するでんぷん粒構造はその構造がより強固であるため、斯かる高温下での混練はより有用である」との記載がある。でんぷん粒構造がより強固である豆類について、100℃以上の高温且つ所定の強混練条件(所定のSME及び/又はフライト割合)下で混練することによりでんぷん粒構造が破壊されることについては、豊富な実施例が存在するところ、豆類と比較して構造が強固でないその他の植物性食材についても、上記条件下での混練によりでんぷん粒構造が破壊されることは、技術常識に鑑みて当業者には自明である。 イ 請求人の主張についての当審の判断 (ア)請求人の主張(1)について 本願明細書の【0011】には「本発明は、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物・・・に関する。」と記載されているので、請求人が主張する同段落の「豆類等の食材」という記載は、豆類を必須成分として含み、かつ、豆類以外の食材を含み得ることを意味する記載といえ、豆類を含まない食材を意味するものと解することはできない。他の段落の記載についても、上記(2)ア及びイに記載したとおり、豆類を含有するペースト生地組成物を前提とするものであり、出願時の技術常識を参酌しても、豆類を必須としていない発明がそれらの段落の記載から自明な事項であるとはいえない。 よって、請求人の主張は採用することができない。 (イ)請求人の主張(2)について 請求人が指摘する【0081】の記載は、「豆類及び種実類に由来するでんぷん粒構造」が強固であることを記載しているに過ぎず、上記(2)ア及びイで検討したことを踏まえると、出願時の技術常識を参酌しても、当初明細書等の記載から、豆類以外の植物性食材に存在する全てのでんぷんが、豆類に由来するでんぷんと同じ化学的性質及び物理的性質を備え、豆類由来のでんぷんと同様のネットワーク構造を形成し、ヘイズ値が25%以下になることが自明な事項であったとはいえない。したがって、段階(i)において調整するペースト生地組成物が含有する植物性食材の種類を何ら限定しない本件補正後の請求項1に係る発明は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 また、段階(ii)において、豆類を含有しないペースト生地組成物を含む組成物について、混練後の組成物のヘイズ値が25%以下になるまで混練を行うことを含む、植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法である本件補正後の請求項1に係る発明は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 よって、請求人の主張は採用することができない。 (4)補正の適否についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、本件補正は、少なくとも請求項1及び17に記載した事項について、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、令和5年8月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明17」という。)は、上記第2 1(1)に示した本件補正前の請求項1及び17に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、令和5年3月31日付け拒絶理由通知により通知された次の理由を含むものである。 ・令和5年8月4日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(以下、「新規事項の追加」という。)。 ・本願発明17は、引用文献9(国際公開第2020/166713号)に記載された発明であるか、同発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同法同条2項の規定により、特許を受けることができない(以下、「引用文献9を主たる証拠とする新規性・進歩性」という。)。 3 現査定の拒絶の理由についての判断 (1)新規事項の追加(特許法第17条の2第3項)について 当審は、令和5年8月4日付け手続補正書でした補正のうち、少なくとも本願発明1及び17についての補正は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものではないと判断する。 以下にその理由を述べる。 ア 本願発明17について 本願発明17は、段階(i)において調整するペースト生地組成物が豆類を含有するか否かを何ら特定するものではないので、豆類を含有しないペースト生地組成物を含む組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法であるという点で、本件補正後の請求項17に係る発明と共通する。 そして、豆類を含有しないペースト生地組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法が、当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等に記載された事項から自明な事項であるともいえないことは、上記第2 2(2)アに記載したとおりである。 したがって、令和5年8月4日付け手続補正書でした補正のうち、請求項17についての補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 イ 本願発明1について 本願発明1は、段階(i)において調整するペースト生地組成物が豆類を含有するか否かを何ら特定するものではないので、段階(ii)において、豆類を含有しないペースト生地組成物を含む組成物の混練後のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行うことを含む、植物性食材のでんぷん粒を破壊する方法であるという点で、本件補正後の請求項1に係る発明と共通する。 そして、段階(ii)において、豆類を含有しないペースト生地組成物の混練後のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行うことは、当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等に記載された事項から自明な事項であるともいえないことは、上記第2 2(2)イに記載したとおりである。 したがって、令和5年8月4日付け手続補正書でした補正のうち、請求項1についての補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 ウ 新規事項の追加についてのまとめ 上記ア及びイに記載したとおり、令和5年8月4日付け手続補正書でした補正のうち、少なくとも請求項1及び17に記載した事項についての補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 (2)引用文献9を主たる証拠とする新規性・進歩性について ア 本願の出願日について 上記(1)に記載したとおり、令和5年8月4日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本願は適法にされた分割出願であるとはいえず、その出願日は、現実の出願日である令和2年10月29日である。 イ 引用文献9の記載事項及び引用文献9に記載された発明 (ア)引用文献9に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2020/166713号には、以下の記載がある。なお、下線は、当審が付したものと、文献に元々記載されていたものがある。 ・「[請求項26] 下記の段階(i)から(iii)を含む、豆類を含有する加熱調理用固形状ペースト組成物の品質改善方法。 (i)微細化豆類を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有率が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有率が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有率が乾燥質量換算で4質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下で混練する段階。 (iii)前記段階(ii)後の組成物温度を、組成物が膨化しない温度まで低下させる段階。」 ・「[請求項38] 前記品質改善が、前記組成物の加熱調理後における、結着及び/又は弾性低下の抑制である、請求項26~37のいずれか1項に記載の方法。」 ・「[0104] 以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。 [0105] なお、以下の実施例及び比較例の調製に使用した微細化豆類は、以下のとおりである。 (1)黄色エンドウマメを原料とした粉末状の「乾燥イエローピー」 (2)粉末状の「乾燥グリーンピース」 (3)粉末状の「乾燥シロエンドウマメ」 (4)粉末状の「乾燥緑豆」 (5)粉末状の「乾燥ブルーピー」 (6)粉末状の「乾燥ヒヨコマメ」 (7)粉末状の「乾燥インゲンマメ」 (8)粉末状の「乾燥レンズ豆」 (9)粉末状の「乾燥紫花豆」 なお、微細化豆類は、本明細書に記載の方法により測定した超音波処理後の粒子径d90がいずれも1900μm以下であった。 [0106]I.実施例1~12及び比較例1~3: [加熱調理用固形状ペースト組成物の調製] (組成) 粉末状の「乾燥イエローピー」を用いて、表1に記載した条件で加熱調理用固形状ペースト組成物を製造した。なお、実施例9~12においては、組成物中の微細化豆類の乾燥質量割合が75%、50%、30%、15%となるように「小麦粉末」を配合し、また比較例3においては、原料として小麦100%を用いた。 [0107](超音波処理後d50) 微細化豆類の「超音波処理後d50(μm)」については、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、以下の条件に従い測定した。測定時の溶媒としてはエタノールを用いた。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用した。測定アプリケーションソフトウェアとしては、DMS2(Data Management System version 2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用した。測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSet zeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入した。測定試料は、超音波処理を行っていないサンプルを投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行った。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値として採用した。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限:2000.00μm、測定下限:0.021μmとした。 [0108](アミラーゼ・プロテアーゼ処理後・超音波処理後d90) 微細化豆類(材料)の「アミラーゼ・プロテアーゼ処理後・超音波処理後d90(μm)」については、以下の手順で測定した。即ち、微細化豆類6質量%懸濁液を、0.4容量%プロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼで20℃3日間処理した後、処理後の組成物に超音波処理を行い、その後の粒子径分布(d90)をレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した。より具体的には、微細化豆類300mgを5mLの水と共にプラスチックチューブに入れ、20℃で1時間程度膨潤させた後、小型ヒスコトロンで粥状の物性となるまで処理し(10000rpm、15秒程度)、処理後サンプル2.5mLを分取し、プロテアーゼ(タカラバイオ社製proteinase K)10μL、α-アミラーゼ(Sigma社製α-Amylase from Bacillus subtilis)0.5mgを加え、20℃にて3日反応させた後、処理後組成物に超音波処理を行った上で、粒子径分布(d90)を前述の条件でレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。 [0109] 組成物の「アミラーゼ・プロテアーゼ処理後・超音波処理後d90(μm)」についても、微細化豆類の場合と同様の方法で測定した。 [0110](加工条件) 加熱加圧に際しては2軸エクストルーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、HAAKE Process11、スクリュー径11mm×2、スクリュー長41cm、セグメント式、同方向回転スクリュー)を使用し、約10g/分のフィード流量で、約3分の処理時間で、表1に記載された条件で行った。 原料投入時の加水量は、対粉末%で計算した(対粉末%とはペースト生地組成物における、原料粉末の乾燥質量に対する水の添加量を表す。例えば「加水量(対粉末%)」50とは、原料粉末1質量部に対して、水0.5質量部添加を表す)。また、最高到達温度はエクストルーダーのバレル中央部(原料投入口と吐出口の中間地点)における温度として測定し、そのエクストルーダーバレル内における滞留時間の過半(さらには非フライトスクリュー部位)において「非加熱(外部加熱なし、サンプル温度概ね30~40℃程度)」、「80℃」、「120℃」、「180℃」となるように加熱条件を調整し、処理時圧力は吐出圧力(出口圧力)が0.1MPa以上となるように加圧条件を調整した。また、押出し口での出口温度は、加圧下で組成物が膨化しない程度の温度(100℃未満)になるように、表1に記載された温度に調整し、その後大気圧下に押し出し成型した。 [0111](後工程・湿潤処理) 上記押出し成形した加熱調理用固形状ペースト組成物のうち表1に「常温乾燥の有無」の「有」、「冷蔵乾燥の有無」の「有」と記載されたものについては、表1に記載された条件で、水分含量20質量%以下かつ水分活性値が0.85以下となるまで通風乾燥した(「冷蔵乾燥」は雰囲気温度4℃にて、「常温乾燥」は雰囲気温度20℃にて、16時間程度の通風乾燥である。また「40℃乾燥」は雰囲気温度40℃にて、24時間程度の通風乾燥である)。」 ・「[0113] [表1] [図:0001431576000001.jpg] 」 ・「[0114][分析及び官能評価] 実施例1~37及び比較例1~7で得られた加熱調理用固形状ペースト組成物について、下記の分析及び官能評価を行った。 [0115](90℃、5分間加熱後の不溶性成分流出測定) 各組成物1質量部を、40質量部の水(90℃)中に投入し、90℃、5分間恒温処理後の水を採取し、そのヘイズ値を測定した。ヘイズ値の測定は積分球式光電光度法による濁度測定器(WA6000T(日本電色工業株式会社製))を用いて、20℃に調整したサンプルを、光路長5mmの石英セルに入れ、蒸留水を対照とした透過測定によって、定法に従って測定した。また測定時の水の外観についてコメントを記載した。 [0116](可溶性成分流出測定) 上記のように調製した各組成物(事前に表面に付着している粉末等を組成物表面に傷をつけないようにハケで除去した)1質量部を、10質量部の希釈ヨウ素溶液(0.25mM)に投入し、常温(20℃)で5分間静置後、0.20μmフィルター(Millex-LG、0.20μm親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、13mm)でろ過した。次いで、希釈ヨウ素溶液(0.25mM)の吸光度(500nm)と、ろ液の吸光度(500nm)を、光路長10mm角セルを用いて分光光度計(島津製作所社製UV-1800)により測定した。そして、得られた吸光度から、両者の差分(組成物添加後のヨウ素溶液のろ液の吸光度-組成物添加前のヨウ素溶液の吸光度)を求めた。また測定時の希釈ヨウ素液への組成物からの成分流出状況についてコメントを記載した。 [0117](官能評価) 上記のように調製した各組成物1質量部と、比較対象として市販のパスタ(ママースパゲティ1.4mm)とを、10質量部の水中で90℃、5分間加熱調理したものについて、官能評価を行った。具体的には、加熱調理後の組成物を紙皿に静置し、常温(20℃)で10分間静置した。その後、訓練された官能検査員10名が料理を試食前の物性、喫食時の食味について「保管後の弾性低下」、「結着性」、「喫食による評価」について下記の基準で評価を行った。そして、官能検査員10名の評点の平均値を算出し、小数第1位を四捨五入して最終評点とした。 [0118] 「保管後の弾性低下」の評価基準 常温静置前(加熱調理直後)の組成物品質との比較で、下記の5段階で評価した。 5:保管前後で弾性が低下しない 4:保管前後で弾性があまり低下しない 3:保管前後で弾性がやや低下するが、品質として問題がないレベル 2:保管前後で弾性が低下する 1:保管前後で弾性が大きく低下する [0119] 「結着性」の評価基準 常温(20℃)で10分間静置後の組成物について、10本程度の組成物を持ち上げた際の組成物同士の結着しやすさを下記の5段階で評価した。また、評価時の組成物の切れやすさについて、コメントを記載した。 5:組成物同士が結着していない 4:組成物同士が一部で結着する 3:組成物同士が半数程度結着する 2:組成物同士が大半で結着する 1:組成物同士がほぼ全て結着する [0120] 「喫食による評価」の評価基準 常温(20℃)で10分間静置後の組成物について、市販のパスタの食感と比して組成物の食感を下記の5段階で評価した。 5:市販のパスタより、なめらかに感じられ、優れる 4:市販のパスタより、ややなめらかに感じられ、やや優れる 3:市販のパスタと、なめらかさが同程度である 2:市販のパスタより、ややなめらかさが感じにくく、やや劣る 1:市販のパスタより、なめらかさが感じられず、劣る [0121] 官能検査員としては、下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。 A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。 B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。 C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。 また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値から算出し、更にパネラー間のばらつきを評価するために標準偏差を算出した。」 ・「[0122][結果] 実施例1~12及び比較例1~3で得られた加熱調理用固形状ペースト組成物の分析及び官能評価の結果を下記の表2-1及び表2-2に示す。 [0123] [表2-1] [図:0001431576000002.jpg] [表2-2] [図:0001431576000003.jpg] 」 (イ)引用文献9に記載された発明 引用文献9に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、引用文献9には、次の発明(以下、「引用発明9」という。)が記載されていると認められる。 引用発明9 「2軸エクストルーダーに、黄色エンドウ豆を原料とした粉末状の「乾燥イエローピー」を100%含む微細化豆類を投入し、ペースト生地組成物における原料粉末の乾燥質量に対して50質量%の水を添加し、その後、最高到達温度120℃、混練時SME値811kJ/kgで混練し、エクストルーダーの出口温度を70℃とする、実施例1の方法。」 (当審注:実施例1については、上記(ア)を参照されたい。) ウ 対比 本願発明17と引用発明9とを対比する。 引用発明9における「黄色エンドウ豆を原料とした粉末状の「乾燥イエローピー」を100%含む微細化豆類」は、本願発明17における「小麦の含有割合が50%以下である植物性食材」に相当し、引用発明9における「2軸エクストルーダー」は、本願発明17における「エクストルーダー」に相当する。 そして、引用発明9は、微細化豆類を投入し、ペースト生地組成物における原料粉末の乾燥重量に対して50質量%の水を添加しているので、植物性食材を含有するペースト生地組成物を調整しているといえ、その水分含量は乾燥質量換算で50質量%であるから、水分含量が乾燥質量換算で20質量%以上となるように調整するという、本願発明17の発明特定事項を満たす。また、引用発明9は、最高到達温度120℃、混練時SME値811kJ/kgで混練しているので、温度100℃以上200℃以下、且つ、(A)及び/又は(B)を満たす条件下、(A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である、(B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である、という、本願発明17の発明特定事項を満たす。さらに、引用発明9は、混練時の最高到達温度が120℃であるのに対し、エクストルーダーの出口温度が70℃なので、混練後に組成物の温度を低下させるものであるといえる。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 (一致点) 「下記の段階(i)から(iii)を含む方法。 (i)小麦の含有割合が50%以下である植物性食材を含有するペースト生地組成物を、水分含量が乾燥質量換算で20質量%以上となるように調整する段階。 (ii)前記段階(i)後の組成物を、温度100℃以上200℃以下、且つ、下記(A)及び/又は(B)を満たす条件下で、エクストルーダーを用いて混練する段階。 (A)比力学的エネルギー(SME)値が350kJ/kg以上である。 (B)前記エクストルーダーのバレル全長に対するフライトスクリュー部位長の比率が95%以下且つニーディング効果を有する部位長の比率が5%以上である。 (iii)前記段階(ii)後の組成物の温度を低下させるように、エクストルーダーの出口温度を調整する段階。」 そして、両者は以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明17は、ペースト生地組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法であるのに対し、引用発明9はそのように特定されていない点。 (相違点2) 本願発明17は、段階(i)において、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上、となるように調整するのに対して、引用発明9はそのように調整することが記載されていない点。 (相違点3) 本願発明17は、段階(ii)において、混練後の組成物を90℃、40倍量の水中で当該組成物を5分間恒温処理した後の水のヘイズ値が25%以下となるまで混練を行うのに対し、引用発明9は、どの程度まで混練を行うのかが特定されていない点。 (相違点4) 本願発明17は、段階(iii)において、組成物が膨化しない温度まで低下させるようにエクストルーダーの出口温度を調整するのに対し、引用発明9は、70℃までエクストルーダーの出口温度を調整する点。 エ 判断 (ア)相違点1について 引用文献9の[表2-2]には、実施例1において得られた加熱調理用固形状ペースト組成物が、保管後の弾性低下の官能検査において5:保管前後で弾性が低下しないと評価されたことが記載されているので、引用発明9は、ペースト生地組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法であるといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。 仮に、引用発明9がペースト生地組成物の保管後の弾性低下を抑制する方法であるとまではいえないとしても、引用文献9には、品質改善方法として弾性低下を抑制することが記載されているので(請求項26を引用する請求項38)、引用発明の方法を弾性低下を抑制する方法とすることは当業者であれば容易になしえることであり、[表2-2]の記載からみて、その効果も引用発明9の構成から当業者が予期し得る範囲を超えるものではない。 (イ)相違点2について 引用文献9の[表2-1]には、実施例1において得られた加熱調理用固形状ペースト組成物が、不溶性食物繊維を17質量%、でんぷんを37質量%、タンパク質を22質量%、水分を5質量%含むことが記載されている。各成分の含有量を乾燥質量に換算すると、不溶性食物繊維を18質量%(17/0.95=17.9)、でんぷんを39質量%(37/0.95=38.9)、タンパク質を23質量%(22/0.95=23.1)含むこととなる。 加熱調理用固形状ペースト組成物は、段階(i)から(iii)を行った後に得られるものであり、段階(i)において調整されるペースト生地組成物とは異なるものの、段階(ii)から(iii)の高温高圧処理を行うと、本願出願時の技術常識からみて、でんぷんやタンパク質などの成分が分解されることはあっても、これらが増加することは考えにくいので、実施例1において、段階(ii)から(iii)の処理を行う前のペースト生地組成物も、少なくとも[表2-1]に記載された加熱調理用固形状ペースト組成物と同量以上の不溶性食物繊維、でんぷん及びタンパク質を含有する蓋然性が高いといえる。 そうすると、引用発明9において、段階(i)で調整されたペースト生地組成物は、少なくとも、不溶性食物繊維を18質量%、でんぷんを39質量%、タンパク質を23質量%含む蓋然性が高いといえるから、相違点2は実質的な相違点ではない。 仮に、実施例1において、段階(i)におけるペースト生地組成物が、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上であるとはいえないとしても、引用文献9には、弾性低下の抑制を含む品質改善方法において、段階(i)において、微細化豆類を含有するペースト生地組成物を、不溶性食物繊維の含有率が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有率が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有率が乾燥質量換算で4質量%以上となるように調整することが記載されているので(請求項26)、実施例1の段階(i)におけるペースト生地組成物について、不溶性食物繊維の含有量が乾燥質量換算で3質量%以上、でんぷんの含有量が乾燥質量換算で10質量%以上、タンパク質の含有量が乾燥質量換算で4質量%以上となるように調整することは当業者であれば容易になしえることであり、その効果も引用発明9の構成から当業者が予期し得る範囲を超えるものではない。 (ウ)相違点3について 引用文献9の[表2-2]には、実施例1において得られた加熱調理用固形状ペースト組成物のヘイズ値が、2.1%であったことが記載されているので、段階(ii)においてヘイズ値が25%以下となるまで混練が行われたものであるといえる。 よって、相違点3は実質的な相違点ではない。 (エ)相違点4について 引用文献9の[0110]には、押出し口での出口温度は、加圧下で組成物が膨化しない程度の温度(100℃未満)になるように、表1に記載された温度に調整したことが記載されているので、相違点4は実質的な相違点ではない。 オ 請求人の主張について 請求人は審判請求書(5頁)において、拒絶査定の拒絶の理由のうち、引用文献9を主たる証拠とする新規性・進歩性について、本分割出願が分割要件を充足しないことを大前提としているが、令和5年8月4日付け手続補正書による補正は新規事項に該当せず、本分割出願は分割要件を充足しているので、これらの拒絶理由も存在しない、と主張している。 しかし、上記(1)に記載したとおり、令和5年8月4日付け手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、請求人の主張は受け入れられない。 カ 引用文献9を主たる証拠とする新規性・進歩性についてのまとめ 上記ア~オに示したとおり、本願発明17は、引用文献9に記載された発明であり、また、引用文献9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (3)原査定の拒絶の理由についてのまとめ 上記(1)及び(2)に記載したとおり、本願発明1及び17は「新規事項の追加」の拒絶理由により拒絶すべきものであり、本願発明17は「引用文献9を主たる証拠とする新規性・進歩性」の拒絶理由により拒絶すべきものである。 第4 むすび 以上のとおり、令和5年8月4日付け手続補正書による本願発明1及び17の補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、本願発明17は、同法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-000805

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