特許拒絶査定不服審判
2016-010509
美容器
- 審判番号
- 2016-010509
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-250916外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月12日
- 審決日
- 2017年05月23日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A61H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-250916号「美容器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年5月30日出願公開、特開2013-103086号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年11月16日の出願であって、平成27年8月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月2日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされたが、平成28年4月5日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年7月12日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記平成27年11月2日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
ハンドルの先端側に一対のボールを、相互間隔をおいてそれぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器において、
該美容器の側面視で、前記支持軸の軸線は、前記ハンドルの先端側かつ下方を向き、
前記ボールは、前記支持軸の先端を覆う非貫通形状であることを特徴とする美容器。」
第3 引用文献記載の発明及び事項
これに対して、原査定の平成27年8月28日付け拒絶の理由に引用された、本件出願の出願日前に頒布され又は利用可能となった引用文献である登録実用新案第3159255号公報(以下「引用文献1」という。)、及び特開2000-24065号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の発明又は事項が記載されていると認められる。なお、下線は当審において付したものである。
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「マグネット美容ローラ」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
柄本体部と、柄本体部に回転自在に保持されるローラ部とによって構成され、
前記柄本体部が、使用者によって保持される所定の長さの把持部と、該把持部から該把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し且つお互いが第2の角度で開くように前記把持部の一端から延出する一対のローラ保持部とによって構成され、且つ
前記ローラ部が、磁石によって形成されると共に前記ローラ保持部のそれぞれに回転自在に保持されることを特徴とするマグネット美容ローラ。
【請求項2】
前記ローラ部の側面には、軸方向に所定の間隔で、樹脂リングが配設されることを特徴とする請求項1記載のマグネット美容ローラ。
【請求項3】
前記ローラ部の先端部が、球面突出状に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のマグネット美容ローラ。」
イ「【技術分野】
【0001】
本考案は、磁気を発生するローラによって皮膚、特に顔の皮膚を刺激することによって美容効果を上げることのできるマグネット美容ローラに関する。」
ウ「【背景技術】
【0002】
特許文献1(実開平3-116836号公報)は、先端が丸みを帯びた多数の突起を有する金属性ローラが、棒状の柄の一端に、柄の軸方向にローラの回転軸が整合するように取り付けられた美容ローラを開示する。
【0003】
特許文献2(実開平8-159号公報)は、軸ハンドルの先端に吸磁性部材を介して磁性転動ローラを着脱できるようにした磁気転動式健康美容器具を開示する。
【0004】
特許文献3(特開2004-242770号公報)は、2個の円筒状ローラと、該円筒状ローラを回転自在に支持する支持部材と、前記各ローラを回転させるための駆動機構とを備えるローラ装置において、前記支持部材が、前記各ローラの軸方向が平行となるように各ローラを支持し、前記駆動機構が、各ローラが皮膚に当接した時に、各ローラが皮膚を引っ張る方向に回転させる美容ローラ装置を開示する。
【0005】
特許文献4(実用新案登録第3123693号公報)は、所定の長さを有するハンドルと、該ハンドルに設けられたマッサージ用のローラとを備え、前記ハンドルが、少なくとも先端側が二本になるように形成されると共に、その二本の先端部にそれぞれローラが設けられ、さらに、前記ハンドル若しくはローラに、ローラの取り付け角度を変えるための角度変位手段を設けた美容マッサージ器を開示する。」
エ「【考案が解決しようとする課題】
【0007】
ローラで皮膚を刺激することは血液の循環を促し、肌に潤いや艶を与えることはすでに公知である。この効果をさらに促進するために、特許文献1では、ローラの周囲に多数の突起を形成し、皮膚への刺激を向上させるようにし、特許文献2では、皮膚刺激と共に、皮膚に磁力を与え、血液の循環を良くし、筋肉を和らげることによって美容的効果を向上させるようにした。さらに、特許文献3では、ローラを自動的に動かすことによって、労力の低減を図ることが提案され、特許文献4では、ローラのフェイス面に当たる角度を調整可能とし、効率よく皮膚を刺激できるものが提案された。
【0008】
しかしながら、上述したような従来の美容ローラにおいては、ローラの回転状態が良好でなく皮膚への刺激が十分でない、構造が複雑である、皮膚への接触状態が良好でないなどの不具合があった。
【0009】
このため、本考案は、ローラの回転が円滑であると共に、皮膚への接触状態が良好であると共に磁気による効果も付加したマグネット美容ローラを提供するものである。」
オ「【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のことから、本考案に係るマグネット美容ローラは、柄本体部と、柄本体部に回転自在に保持されるローラ部とによって構成され、前記柄本体部が、使用者によって保持される所定の長さの把持部と、該把持部から該把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し且つお互いが第2の角度で開くように前記把持部の一端から延出する一対のローラ保持部とによって構成され、且つ前記ローラ部が、磁石によって形成されると共に前記ローラ保持部のそれぞれに回転自在に保持されることを特徴とするものである。
【0011】
これによって、円筒状のローラ部が、使用者の手によって保持される把持部に対して第1の角度で傾斜し且つ第2の角度が開くことになるため、ローラ部の側面が顔面等の良好に接触することが可能となるものである。尚、第1の角度としては、20°~60°の範囲内であることが望ましく、特に40°であることが望ましい。また、第2の角度としては、100°~140°の範囲内であることが望ましく、特に120°であることが望ましい。
【0012】
また、前記ローラ部は、磁石、特にフェライトインジェクション磁石からなる円筒状のもので、その先端部は、球面突出状に形成されることを特徴とする。さらに、前記ローラ部の側面には、軸方向に所定の間隔で、樹脂リングが配設されるものである。尚、樹脂リングとしては、フッ素樹脂リング、テフロン(登録商標)(PTFE)リング等があるが、シリコンリングが望ましい。また、天然ゴム等の天然由来の樹脂からなるリングであっても良いものである。
【0013】
これによって、ローラ部の先端が球面突出状に形成されることから、ローラ部端部で顔面等の皮膚を刺激することも可能となるものである。また、ローラ部がフェライトインジェクション磁石によって形成されているので、磁気による血行促進効果を得ることができるものである。さらにまた、ローラ部側面に樹脂リングを配設したことによって、ローラ部と皮膚との摩擦抵抗を向上させることができるため、ローラ部を確実に回転させることが可能となるものである。また、ローラ部の側面と樹脂リングによって、皮膚との接触面に凹凸が形成されることから、皮膚への刺激を向上させることもできるものである。」
カ「【考案の効果】
【0016】
本考案によれば、使用者によって保持される柄本体部に対して、ローラ部が第1の角度で手前側に傾斜し且つ第2の角度が開いていることから、顔面の皮膚に効率的に接触すると共に、樹脂リングが肌に密着するため、ローラ部を皮膚に沿って円滑に移動させることができると共にローラ部表面が凹凸となるため、効率的に皮膚に刺激を与えることができ、美容効果を向上させることができるものである。さらに、ローラ部が磁石によって形成されていることから、磁力による血流の改善も期待できるものである。」
キ「【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本考案に係るマグネット美容ローラの全体斜視図である。
【図2】本考案に係るマグネット美容ローラの柄本体部の正面図である。
【図3】本考案に係るマグネット美容ローラの柄本体部の側面図である。
【図4】本考案に係るマグネット美容ローラのローラ部の断面図である。」
ク「【実施例】
【0019】
以下、本考案の実施例について、具体的に説明する。・・・(中略)・・・
【0022】
前記ローラ部5は、図4に示すように、フェライトインジェクション磁石から円筒状に形成され、一端に球面状に突出する先端部51を一体に具備するローラ本体部50と、このローラ本体部50の側面52に装着された複数の樹脂リング6とによって構成される。この樹脂リング6は、シリコンリングであり、前記側面52の軸方向に所定の間隔で形成された環状溝55に装着されるものである。
【0023】
また、前記ローラ部5のローラ本体部50には、軸方向に形成された小径孔53と大径孔54とが連設され、小径孔53には前記ローラ保持部4の小径部4bが挿通され、大径孔54には前記小径部4bに固着されたベアリング8が挿入され、前記大径孔54の内周面に固定される。これによって、前記ローラ部5は、前記ローラ保持部4に対して回転自在に保持されるものである。」
(2)引用発明
引用文献1の上記記載事項アないしキを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明」という。)
「柄本体部と、柄本体部に回転自在に保持されるローラ部とによって構成され、
前記柄本体部が、使用者によって保持される所定の長さの把持部と、該把持部から該把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し且つお互いが第2の角度で開くように前記把持部の一端から延出する一対のローラ保持部とによって構成され、且つ
前記ローラ部が、磁石によって形成されると共に前記ローラ保持部のそれぞれに回転自在に保持されるマグネット美容ローラ。」
(3)引用文献1事項
引用文献1の上記記載事項ク及び図4を踏まえると、引用文献1には、さらに、以下の技術事項が記載されているといえる。(以下「引用文献1事項」という。)
「マグネット美容ローラのローラ部5において、ローラ本体部50の一端に先端部51を一体に具備するとともに、軸方向に小径孔53及び大径孔54を連設するように構成し、該小径孔53及び該大径孔54にローラ保持部4を挿通することにより、該ローラ部5を該ローラ保持部4に対して回転自在に保持すること。」
2 引用文献2
引用文献2には、「マッサージ具」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)引用文献2に記載された事項
ア「【0006】
【発明の実施の形態】図1のマッサージ具1は、回転軸体8と、その回転軸体8の両端に嵌着した弾性体であるマッサージ部2とその回転軸体8を支持する把持部4とから成る。上記の弾性体であるマッサージ部2は、左右2つの円柱体3、3から成るが、球体、或いは回転楕円体等を用いてもよい。2つの内側側面部3aが顎の輪郭を中心にして両側から顎の皮膚表面に当接するため、マッサージ効果のある部位、即ち顎の表情筋にマッサージを行える道具となる。
(2)引用文献2事項
上記記載事項アを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて整理すると、引用文献2には、以下の事項が記載されているものと認める。(以下「引用文献2事項」という。)
「回転軸体8と、その回転軸体8の両端に嵌着したマッサージ部2とその回転軸体8を支持する把持部4とから構成されるマッサージ具1であって、該マッサージ部2は、左右2つの円柱体3、3から構成され、該円柱体3の内側側面部3aを皮膚表面に当接してマッサージを行うものにおいて、該円柱体3、3に代えて、球体を用いるようにしたこと。」
第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると以下のとおりである。
まず、引用発明の「使用者によって保持される所定の長さの把持部」と「把持部の一端から延出する一対のローラ保持部とによって構成され」た「柄本体部」が本願発明の「ハンドル」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「把持部の一端から延出する」「ローラ保持部」は「支持軸」に、「マグネット美容ローラ」は「美容器」に、「回転自在に保持される」は「回転可能に支持した」に相当することも明らかである。
次に、引用発明の「ローラ部」は、その機能及び技術常識に照らせば、本願発明の「ボール」と、「回転体」である限りにおいて共通する。
そうすると、引用発明の「柄本体部と、柄本体部に回転自在に保持されるローラ部とによって構成され」「ローラ部が、磁石によって形成されると共に」「把持部の一端から延出する一対のローラ保持部」「のそれぞれに回転自在に保持されるマグネット美容ローラ」は、その機能及び技術常識を踏まえれば、本願発明の「ハンドルの先端側に一対のボールを、相互間隔をおいてそれぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器」と、「ハンドルの先端側に一対の回転体を、それぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器」である限りにおいて共通する。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「ハンドルの先端側に一対の回転体を、それぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器。」
そして、本願発明と引用発明とは、少なくとも形式的には以下の2点で相違している。
<相違点1>
回転体に関して、本願発明は「ボール」であり「ボールは、支持軸の先端を覆う非貫通形状である」のに対して、引用発明は「ローラ部」であるものの、その形状は特定のものに限定されていない点。
<相違点2>
本願発明は、一対のボールが「相互間隔をおいて」支持されており、「美容器の側面視で、支持軸の軸線は、ハンドルの先端側かつ下方を向」いているのに対して、引用発明は、柄本体部の一対のローラ保持部が「把持部から把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し且つお互いが第2の角度で開くように」構成されている点。
第5 相違点の検討
1 相違点1について
引用文献2には、引用文献2事項のとおり、「回転軸体8と、その回転軸体8の両端に嵌着したマッサージ部2とその回転軸体8を支持する把持部4とから構成されるマッサージ具1であって、該マッサージ部2は、左右2つの円柱体3、3から構成され」るものにおいて、「該円柱体3、3に代えて、球体を用いるようにしたこと」が記載されている。
そして、引用発明の美容器と引用文献2事項のマッサージ具1とは、その基本構成やマッサージの機能の点において共通ないし類似していることから、引用文献2事項を引用発明に適用することには、十分な動機付けがある。しかも、引用発明のローラ部の形状は、特定のものに限定されていないから、引用文献2事項を適用することに阻害要因はない。
してみれば、引用文献2事項を引用発明に適用して、引用発明のローラ部の形状を球体にするとともに、引用文献1事項にも照らして、非貫通形状とし、もって相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。
2 相違点2について
引用発明は、柄本体部の一対のローラ保持部が「把持部から把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し且つお互いが第2の角度で開くように」構成されているものである。
ここで、引用発明の柄本体部のローラ保持部は「把持部から把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し」ているところ、かかる傾斜態様は、引用文献1の図面のうち、マグネット美容ローラの「側面視」に係る図3(マグネット美容ローラの柄本体部の側面図)に図示されている。当該図3において、把持部3の中心線(一点鎖線)に対して、αの角度で右斜め上方向を向いているローラ保持部4の中心線(一点鎖線)は、本願発明の「支持軸の軸線」に相当するものであり、当該図3の右側を「下方」とし、かつ柄本体部2のローラ保持部4の側を「先端側」と定義すれば、ローラ保持部4の中心線の方向は「柄本体部2の先端側かつ下方」と言い換えることができる。
また、引用発明の一対のローラ保持部は、「お互いが第2の角度で開くように」構成されているところ、該ローラ保持部に保持された一対のローラ部は、引用文献1の図1及び2にも照らせば、互いに「相互間隔をおいて」保持されていることは、明らかである。
そうすると、相違点2は、形式的なものであって、実質的な相違点であるとはいえない。
3 請求人の主張について
請求人は、引用文献1のローラ部の形状をボール状とする点について、以下の2点を挙げて、本願発明が進歩性を有する旨主張している(審判請求書5頁4行~8頁17行)。
(1)阻害要因について
引用文献1のローラ部の形状をボール状とすることに阻害要因がある。
すなわち、引用文献1に記載された発明の解決課題(段落0008~0009)に対応して、引用文献1の段落0011には「円筒状のローラ部・・・ローラ部の側面が顔面等の良好に接触することが可能となる」と記載されており、当該解決課題の一つである「皮膚への接触状態を良好」にする手段として「円筒状のローラ部」を採用したことが明らかである。実際に、ローラ部の形状が「円筒状」であれば、円筒状をなすローラ部の全長にわたって皮膚に接触させることも可能となり、「皮膚への接触状態を良好」にするためのローラ部の形状として「円筒状」は合理的な形状である。
したがって、引用文献1の「ローラ部」は、発明の作用(皮膚への接触状態を良好にする)を発揮するため「円筒状」を要し、「ボール状」とすると当該作用を発揮できない。
(2)組合せの動機付けについて
引用文献2の「ボール状」を引用文献1のローラ部に適用する動機付けは存在しない。
すなわち、引用文献2の円柱体3は、一対の回転軸8bの角度が180度であることを前提として「ボール状」(球体、回転楕円体)でも良いとされたものである。引用文献2には、その図1及び図2に示されるように、一対の円柱体3の回転軸8bは、直線状、すなわち180度の角度で形成されている。一方で、他の角度で形成する点についての開示ないし示唆は、引用文献2にはない。回転軸8bは、それ自体が回転するものであり(段落0008)、その回転方向も常に一定方向に規制される(段落0016)。仮に、一対の回転軸8bの角度が180度でないとすれば、把持部4に対して回転軸8bが偏心回転することとなり、その回転方向は常に一定方向とはならない。したがって、一対の回転軸8bの角度が180度であることを要する。
しかしながら、請求人の上記主張は採用することができない。その理由は以下のとおりである。
上記(1)については、引用文献1のローラ部の形状は、皮膚への接触状態を良好にするために「円筒状」を要するとの主張は、引用文献1の従来技術、課題解決手段等を含む記載全体とは整合しない。
すなわち、引用文献1の「背景技術」の記載によれば、従来の美容ローラとして挙げられたものは、「特許文献1」は、多数の突起を有する金属性ローラが、棒状の柄の一端に、柄の軸方向にローラの回転軸が整合するように取り付けされた美容ローラであり、「特許文献2」は、軸ハンドルの先端に磁性転動ローラを着脱できるようにした磁気転動式健康美容器具であり、「特許文献3」は、2個の円筒状ローラ、該円筒状ローラを支持する支持部材等を備え、該支持部材が各ローラの軸方向が平行となるように各ローラを支持する美容ローラ装置であり、「特許文献4」は、ハンドルと、該ハンドルに設けられたローラとを備え、該ハンドルが少なくとも先端側が二本になるように形成され、該二本の先端部にそれぞれローラが設けられ、該ハンドル又はローラにローラの取付角度を変える手段を設けた美容マッサージ器である。
このように、「特許文献1」、「特許文献2」及び「特許文献4」については、ローラ部の形状について特段の言及はなく、「特許文献3」は「円筒状のローラ」を備えたものである。そうすると、従来技術の記載からは、皮膚への接触状態が良好でないとの問題点とローラ部の形状との間に何らかの関係があるとは言い難く、むしろ、「円筒状のローラ」であっても当該問題点を解決することはできない、ということもできる。
また、引用文献1の「実用新案登録請求の範囲」、「課題を解決するための手段」(【0010】)及び「考案の効果」(【0016】)には、ローラ部の形状を「円筒状」に限定する旨の記載は見当たらず、皮膚への接触状態が良好でないとの問題点を解決する課題解決手段として、「円筒状のローラ」を採用したとすることもできない。
この点、確かに、引用文献1には、課題解決手段を記載した段落【0010】に引き続いて、段落【0011】には「円筒状のローラ部」との記載がある。しかしながら、当該「円筒状のローラ部」の記載は、「実用新案登録請求の範囲」、「課題を解決するための手段」(【0010】)及び「考案の効果」(【0016】)の記載とは整合しておらず、また、「背景技術」の記載とも整合していないことは上記検討から明らかである。
したがって、当該「円筒状のローラ部」の記載をもって、皮膚への接触状態を良好にするために「円筒状」を要するとはいえない。
また、「皮膚への接触状態を良好」にするためのローラ部の形状として「円筒状」が合理的な形状であるとの主張を裏付ける引用文献1の記載や技術常識があるともいえない。
上記(2)については、上記1で検討したとおり、引用発明と引用文献2事項を組み合わせる動機付けとしては、柄本体部ないしは把持部の一端にマッサージ部たるローラ部を回転自在に設けたマッサージ具という基本構成や、回転するローラ部を皮膚に接触してマッサージ効果を得るという機能の点において共通していることで足りるというべきである。
請求人は、引用文献2の円柱体3は、一対の回転軸8bの角度が180度であることを前提として「ボール状」(球体、回転楕円体)でも良いとされたものであると主張するが、仮にかかる主張が妥当であるとしても、そのことをもって、直ちに、組合せの動機付けがないとすることはできない。引用発明と引用文献2事項の組合せの動機付けは、両者の間における、技術分野、課題、課題解決手段、作用・機能等の共通性といった幅広い観点から検討すべきものである。
なお、請求人の上記主張は、引用文献2の回転軸8bの角度が両者を組み合わせる阻害要因であるとの趣旨と理解することもできる。しかしながら、仮に請求人の上記主張をかかる趣旨のものであると理解したとしても、かかる主張は、引用文献2の記載や技術常識による裏付けを欠くものである。
4 小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1事項及び引用文献2事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1事項及び引用文献2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-010509