特許拒絶査定不服審判
2016-008382
ワイヤレス・マイクロ/ナノ・センサを有する空気ばね及びその製造方法
- 審判番号
- 2016-008382
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-538801外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月07日
- 審決日
- 2017年03月22日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレイションズ エルエルシー
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】田中 達也
- 分類
- P18 .121-WY (F16F) / P18 .575-WY (F16F) / P18 .572-WY (F16F) / P18 .561-WY (F16F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-538801「ワイヤレス・マイクロ/ナノ・センサを有する空気ばね及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔2012年5月18日国際公開、WO2012/064625、平成25年12月19日国内公表、特表2013-545047、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、2011年11月7日(優先権主張外国庁受理2010年11月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年7月17日付けで拒絶理由が通知され、同年10月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年2月2日付け(発送日:同年2月9日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。
第2.平成28年6月7日の特許請求の範囲を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年10月23日の手続補正書により補正された)下記Aに示す請求項1及び2の記載を、下記Bに示す請求項1及び2の記載へと補正することを含むものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
空気ばねであって、
第1の端部部材と、
前記第1の端部部材から離間されるとともに外壁を含む第2の端部部材と、
前記第1および第2の端部部材の間で延びるばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定するとともに、前記空気ばねの全高が変化すると前記第2の端部部材の前記外壁に沿って変位させられるローリングローブを形成する、前記エラストマー体と、
前記ばね壁部の前記ローリングローブ内に配置され、前記空気ばねの1つまたは2つ以上の物理的特性に関するワイヤレス信号データをそれぞれが提供可能な複数のセンサを含むセンサ層とを備え、前記複数のセンサがそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法である空気ばね。
【請求項2】
空気ばねであって、
第1の端部部材と、
前記第1の端部部材から離間される第2の端部部材と、
前記第1および第2の端部部材の間で延びるばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定し、前記ばね壁部は、少なくとも第1のばね壁部分および第2のばね壁部分によって構成される複数のベローズを含み、前記複数のベローズは、前記第1および第2のばね壁部分の間で前記ばね壁部を取り囲むガードルフープを有する、前記エラストマー体と、
前記第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部に前記ばね壁部の前記複数のベローズの少なくとも1つに沿って配置されたセンサ層において、前記空気ばねの1つまたは2つ以上の物理的特性に関するワイヤレス信号データをそれぞれが提供可能な複数のセンサを含む前記センサ層とを備え、前記複数のセンサがそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法である空気ばね。」
B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
空気ばねであって、
第1の端部部材と、
前記第1の端部部材から離間されるとともに外壁を含む第2の端部部材と、
前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定するとともに、前記空気ばねの全高が変化すると前記第2の端部部材の前記外壁に沿って変位させられるローリングローブを形成する、前記エラストマー体と、
前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つおよび前記ローリングローブの内部に配置され、前記空気ばねの1つまたは2つ以上の物理的特性に関するワイヤレス信号データをそれぞれが提供可能な複数のセンサを含むセンサ層とを備え、前記複数のセンサがそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法である空気ばね。
【請求項2】
空気ばねであって、
第1の端部部材と、
前記第1の端部部材から離間される第2の端部部材と、
前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定し、前記ばね壁部は、少なくとも第1のばね壁部分および第2のばね壁部分によって構成される複数のベローズを含み、前記複数のベローズは、前記第1および第2のばね壁部分の間で前記ばね壁部を取り囲むガードルフープを有する、前記エラストマー体と、
前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つの内部に配置されるとともに、前記第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部に前記ばね壁部の前記複数のベローズの少なくとも1つに沿って配置されたセンサ層において、前記空気ばねの1つまたは2つ以上の物理的特性に関するワイヤレス信号データをそれぞれが提供可能な複数のセンサを含む前記センサ層とを備え、前記複数のセンサがそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法である空気ばね。」
(上記アンダーラインは補正箇所を示すもので請求人が付したものである。)
2.本件補正の適否
本件補正は、請求項1に関して、「前記第1および第2の端部部材の間で延びるばね壁部」を「前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部」と補正(以下、「補正事項1-1」という。)し、また、「前記ばね壁部の前記ローリングローブ内に配置」を「前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つおよび前記ローリングローブの内部に配置」と補正(以下、「補正事項1-2」という。)するものである。
まず、補正事項1-1について検討すると、「ばね壁部」が、「前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有する」と限定するものである。
次に、補正事項1-2について検討すると「センサ層」の配置に関して、「前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つおよび前記ローリングローブの内部に配置」と限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、請求項1に関する補正事項1-1及び補正事項1-2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、請求項2に関して、「前記第1および第2の端部部材の間で延びるばね壁部」を「前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部」と補正(以下、「補正事項2-1」という。)し、また、「前記第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部に前記ばね壁部の前記複数のベローズの少なくとも1つに沿って配置」を「前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つの内部に配置されるとともに、前記第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部に前記ばね壁部の前記複数のベローズの少なくとも1つに沿って配置」と補正(以下、「補正事項2-2」という。)するものである。
まず、補正事項2-1について検討すると、「ばね壁部」が、「前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有する」と限定するものである。
次に、補正事項2-2について検討すると「センサ層」の配置に関して、「前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つの内部に配置されるとともに、前記第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部に前記ばね壁部の前記複数のベローズの少なくとも1つに沿って配置」と限定するものである。
そして、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、請求項2に関する補正事項2-1及び補正事項2-2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
さらに、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明1」という。)、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、「本件補正発明2」という。)及び「本件補正発明1または本件補正発明2」を引用する請求項2ないし15に係る発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
2-1.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2009-535699号公報(以下、「刊行物」という。)には、「ワイヤレス・マイクロ/ナノ・センサを有するエラストマー物品」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。下線は当審で付した。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー物品からデータを取得するシステムであって、前記システムが、
本体を有するエラストマー物品と、
前記エラストマー物品により担持され、マイクロスケール・センサ以下の大きさの少なくとも1つのセンサと、
前記センサとワイヤレス方式で通信して、前記センサからデータを取得するデータ収集装置と、
前記エラストマー物品をモニタするための前記センサからの前記データを処理するために、前記データ収集装置と通信するデータプロセッサと、
を具えるシステム。」
イ.「【請求項26】
前記センサは、温度、応力、歪、剪断、振動または化学反応を含む、前記タイヤの少なくとも1つの物理的性質に関するデータを提供するように構成される請求項18に記載のタイヤ。」
ウ.「【0006】
本発明は、エラストマー物品内に配置された、あるいはエラストマー物品に接続されたセンサから、エラストマー物品のデータを取得するためのセンサシステムを提供する。センサシステムは、データをワイヤレス通信によって取得する。センサは、物品内に埋設されるのに十分に小さいマイクロスケールまたはナノスケールのセンサである。このようなセンサは、エラストマー材料内の閉塞(occlusion)を回避するのに十分に小さいエラストマー材料と結合して構成することができる。」
エ.「【0013】
本願明細書に記載されている実施例は空気入り自動車タイヤに関するものであるが、エアレスタイヤおよびソリッドタイヤのような他のタイヤ、空気ばね、コンベヤーベルト、屋根材、スポーツ用品等を含む他のエラストマー物品もまた、類似の構造および実施形態のセンシングシステムを使用してモニタできるということを認識されたい。
【0014】
ワイヤレスセンサ104は、検出データをセンサの遠隔に位置するデータ収集装置106(リーダとしても知られている)に供給する。データ収集装置106を、タイヤ102の内部、タイヤ102の上、車両の内部、車両の上に取り付けることもできるし、両者の遠隔にある検査装置内に取り付けることもできる。ワイヤレスセンサ104は、データを、データ収集装置106が読み出し可能な電磁センサ信号の形で、ワイヤレス方式で供給することによって、それらの間の物理的接続の必要を回避している。センサ104と収集装置106との間のワイヤレス通信は、参照符号112で示され、センサをタイヤに取り付ける際、あるいは、センサをタイヤ内に埋め込む際に、汎用性に優れる。
オ.「【0019】
センサ104が材料またはコンポーネントに埋設されるとき、各センサ104は埋設位置の閉塞になることを回避するのに十分に小さい。閉塞は、周囲のエラストマーと類似した物性を有さない、エラストマーに埋設される異物である。閉塞は、エラストマーの望ましくない性能に至る。センサ104は、センサの特性およびセンサの周りの材料の特性に応じて閉塞になることを回避するために、マイクロスケールおよびナノスケールとすることができる。一実施例において、各センサは、20ミクロン以下である。センサが配置される場所に応じて、個々のセンサの他の寸法は、数十から数百平方ミリメートルの大きさから、カーボンブラックと同じくらい、さらには、顕微鏡のレンジまでサイズダウンした大きさにわたる範囲とすることができる。」
カ.「【0026】
センサ104を用いて、タイヤ全体にわたって、タイヤのコンポーネント全体にわたって、あるいは、タイヤのある特定の位置の近傍に分布した複数のセンサを用いて、タイヤの物理構造をモニタすることができる。意図的にあるいは無作為に配置されたセンサ104を、センサ層によって担持することができる。これらのセンサは、アレイまたはセンサ・メッシュを形成することができる。センサアレイは、2次元アレイ(1つのセンサ厚は幅および長さを有している)または3次元アレイ(複数のセンサ厚は長さおよび幅を有している)とすることができる。メッシュまたはアレイは、カーブした構成を有し、タイヤコンポーネントに適合することができる。センサ層は、エラストマーあるいはプラスチック基板上に導電性インクを使用しているプリント技術によって形成でき、タイヤ成形工程中にタイヤに組み込まれる。独立センサあるいは関連センサの全ての回路を、このような基板上にプリントできる。さらに、導電性ポリマーは、これらの回路を作製するために、またはタイヤ内のアンテナ構造またはセンサのために使用することができる。センサ層の実施例を、図4および5に示す。層は連続的あるいは分離したパッチの組合せとすることができる。隣接材料が層を通して各々接触できる複数の開口部を層に定めることができる。層のいずれの表面も、テクスチャード加工してもよいし、曲面を有してもよい。タイヤの周りの半径方向あるいは周方向に帯状の層にセンサを位置付けることが好適である。半径方向にU型の断面は、タイヤサイドウォールをモニタするのに役立つ。帯状の層は、例えばベルト端144をモニタするのに好適なタイヤの隣接領域に配置することができる。
【0027】
ワイヤレスセンサを繰り返しサンプリングすることによって、各センサから放射される検出信号の相対強度を得るために、タイヤ構造のマップを創作できる。このマップは、タイヤが使用開始されたときに生成されて格納されるタイヤのイニシャルマップと比較することができる。イニシャルマップを、タイヤ内のRFIDチップに配置されている固有のタイヤ識別番号に関連させて格納する、あるいはセンサと共に格納することができる。信号強度またはマップの1つ以上の領域からのデータの変化は、タイヤの特定の位置の変化を示すことができる。これらの変化は、タイヤ気室120内、あるいは、タイヤ自体の構造内(例えば、トレッド内、サイドウォール内、ビード内、ターンアップ域内またはキャップ近傍)の温度変化、歪変化および圧力変化を含むことができる。これらの変化を用いて、種々のコンポーネントの性能変化を示すことができる。アクティブ・サスペンション・システムで使われるとき、この変化は、サスペンション・セットアップを変更するのに用いられる。」
キ.「【0030】
タイヤ102の様々な領域(例えば、特に、トレッド140、補強ベルト142(補強ベルト142は、一般的に、層143として図面に描かれた反対方向に傾斜するコードのプライを含む)、ベルト端144、ボディコードプライ146、ビード領域148、インナーライナー130およびサイドウォール150)を、センサ104によってモニタすることができる。例えば、応力および歪みセンサ104を用いて、タイヤサイドウォール150またはボディコードプライ146をモニタすることができる。図2に表す他の実施例では、温度センサ104を用いて、補強ベルト142の端144をモニタすることができる。図2では、センサ104を、端144に隣接するリング形の層またはリング形のトレッド内に配置するができる。図2では、センサ104を層142の端部の中に埋設することもできる。センサ104をサイドウォール150内に配置するとき、サイドウォール150内において、形成される仕事および/またはエネルギーを、タイヤ102の運転履歴を記録する方法でモニタすることができる。データ処理装置110は、このデータを使用して、これらの検出されたパラメータがタイヤの好ましい運転条件を上回っていないかどうかを測定し、運転手にこのような指示を与えることができる。類似したタイヤを制御試験装置上で走らせて、センサ104からデータの許容範囲を決めることによって、好ましい運転条件を決定することができる。データ処理装置がこれらの許容範囲を用いて、タイヤの状況をモニタすることができる。」
ク.記載事項カ.の段落【0027】の「これらの変化は、タイヤ気室120内、あるいは、タイヤ自体の構造内(例えば、トレッド内、サイドウォール内、ビード内、ターンアップ域内またはキャップ近傍)の温度変化、歪変化および圧力変化を含むことができる。」及び記載事項キ.の「タイヤ102の様々な領域(例えば、特に、トレッド140、補強ベルト142(補強ベルト142は、一般的に、層143として図面に描かれた反対方向に傾斜するコードのプライを含む)、ベルト端144、ボディコードプライ146、ビード領域148、インナーライナー130およびサイドウォール150)を、センサ104によってモニタすることができる。」との記載並びに図1によれば、タイヤ102は、ビード領域148、サイドウォール150、トレッド140を有することが分かる。
コ.記載事項イ.の「前記センサは、温度、応力、歪、剪断、振動または化学反応を含む、前記タイヤの少なくとも1つの物理的性質に関するデータを提供する」との記載、記載事項エ.の「ワイヤレスセンサ104は、データを、データ収集装置106が読み出し可能な電磁センサ信号の形で、ワイヤレス方式で供給することによって、それらの間の物理的接続の必要を回避している。」との記載、記載事項カ.の段落【0026】の「センサ104を用いて、タイヤ全体にわたって、タイヤのコンポーネント全体にわたって、あるいは、タイヤのある特定の位置の近傍に分布した複数のセンサを用いて、タイヤの物理構造をモニタすることができる。意図的にあるいは無作為に配置されたセンサ104を、センサ層によって担持することができる。」との記載及び記載事項キ.の「タイヤ102の様々な領域(例えば、特に、トレッド140、補強ベルト142(補強ベルト142は、一般的に、層143として図面に描かれた反対方向に傾斜するコードのプライを含む)、ベルト端144、ボディコードプライ146、ビード領域148、インナーライナー130およびサイドウォール150)を、センサ104によってモニタすることができる。例えば、応力および歪みセンサ104を用いて、タイヤサイドウォール150またはボディコードプライ146をモニタすることができる。」との記載並びに図1によれば、センサ層は複数のセンサ104を含み、センサ104は、トレッド140、ビード領域148およびサイドウォール150の内部に配置され、タイヤ10の少なくとも1つの物理的性質に関するワイヤレス通信のデータを提供可能であることが分かる。
サ.記載事項オ.の「センサ104は、センサの特性およびセンサの周りの材料の特性に応じて閉塞になることを回避するために、マイクロスケールおよびナノスケールとすることができる。一実施例において、各センサは、20ミクロン以下である。センサが配置される場所に応じて、個々のセンサの他の寸法は、数十から数百平方ミリメートルの大きさ」との記載及び図1によれば、センサ104は、厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法」であることが分かる。
上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、本件補正発明1に則って整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「タイヤ102であって、
前記タイヤ102のトレッド140、ビード領域148およびサイドウォール150の内部に配置され、前記タイヤ102の少なくとも1つの物理的性質に関するワイヤレス通信のデータをそれぞれが提供可能な複数のセンサ104を含むセンサ層を備え、前記複数のセンサ104がそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法であるタイヤ102。」
2-2.対比・判断
(1)本件補正発明1について
本件補正発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「少なくとも1つの物理的性質」は、本件補正発明1における「1つまたは2つ以上の物理的特性」に相当し、以下同様に、「ワイヤレス通信のデータ」は「ワイヤレス信号データ」に、「センサ104」は「センサ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「タイヤ102」は、「エラストマー物品」という限りにおいて、本件補正発明1における「空気ばね」と共通し、また、引用発明における「タイヤ102のトレッド140、ビード領域148およびサイドウォール150」は、「壁部」という限りにおいて、本件補正発明1における「ばね壁部」と共通する。
したがって、本件補正発明1と引用発明とは、
「エラストマー物品であって、
壁部の内部に配置され、前記エラストマー物品の1つまたは2つ以上の物理的特性に関するワイヤレス信号データをそれぞれが提供可能な複数のセンサを含むセンサ層とを備え、前記複数のセンサがそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法であるエラストマー物品。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本件補正発明1においては、「エラストマー物品」が「空気ばね」であり、「壁部」が「ばね壁部」であって、「第1の端部部材と、前記第1の端部部材から離間されるとともに外壁を含む第2の端部部材と、前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定するとともに、前記空気ばねの全高が変化すると前記第2の端部部材の前記外壁に沿って変位させられるローリングローブを形成する、前記エラストマー体と、前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つおよび前記ローリングローブの内部に配置され」る「複数のセンサを含むセンサ層とを備え」るのに対し、引用発明においては、「エラストマー物品」が「タイヤ」であり、「壁部」が「タイヤ102のトレッド140、ビード領域148およびサイドウォール150」であって、複数のセンサを設ける位置が異なる点。
上記相違点1について検討する。
エラストマー物品の一種である空気ばねとして、「第1の端部部材と、前記第1の端部部材から離間されるとともに外壁を含む第2の端部部材と、前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定するとともに、前記空気ばねの全高が変化すると前記第2の端部部材の前記外壁に沿って変位させられるローリングローブを形成する、前記エラストマー体とを備える空気ばね。」は、周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開平10-82446号公報の空気ばね10、【図1】、及び、特開2007-63735号公報のトラック用空気バネ、【図2】参照。)である。
ここで、刊行物の上記2-1.(1)エ.の段落【0013】における「本願明細書に記載されている実施例は空気入り自動車タイヤに関するものであるが、エアレスタイヤおよびソリッドタイヤのような他のタイヤ、空気ばね、コンベヤーベルト、屋根材、スポーツ用品等を含む他のエラストマー物品もまた、類似の構造および実施形態のセンシングシステムを使用してモニタできるということを認識されたい。」との記載からみて、刊行物には、センサを有するエラストマー物品として、タイヤの他に空気ばねが挙げられていることから、エラストマー物品の実施の形態が「タイヤ」である引用発明において、エラストマー物品の実施の形態として「空気ばね」を採用する動機付けは十分にあるといえる。
しかしながら、刊行物には、単に、センサ104をトレッド140、ビード領域148、サイドウォール150等の内部に配置することが開示されているにとどまり、「空気ばね」の特定の位置である「ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つおよびローリングローブの内部」を選択し、これらの位置にセンサを配置することに関しては、記載も示唆もなされていない。
したがって、引用発明に上記周知技術1を適用したとしても、上記相違点1に係る本件補正発明1の構成に至ることが容易想到であるとはいえない。
よって、本件補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(2)本件補正発明2について
本件補正発明2と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「少なくとも1つの物理的性質」は、本件補正発明1における「1つまたは2つ以上の物理的特性」に相当し、以下同様に、「ワイヤレス通信のデータ」は「ワイヤレス信号データ」に、「センサ104」は「センサ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「タイヤ102」は、「エラストマー物品」という限りにおいて、本件補正発明2における「空気ばね」と共通し、また、引用発明における「タイヤ102のトレッド140、ビード領域148およびサイドウォール150」は、「壁部」という限りにおいて、本件補正発明2における「ばね壁部」と共通する。
したがって、本件補正発明2と引用発明とは、
「エラストマー物品であって、
壁部の内部に配置され、前記エラストマー物品の1つまたは2つ以上の物理的特性に関するワイヤレス信号データをそれぞれが提供可能な複数のセンサを含むセンサ層とを備え、前記複数のセンサがそれぞれ厚さ20ミクロン以下、面積数百平方ミリメートル以下の寸法であるエラストマー物品。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点2]
本件補正発明2においては、「エラストマー物品」が「空気ばね」であり、「壁部」が「ばね壁部」であって、「第1の端部部材と、前記第1の端部部材から離間される第2の端部部材と、前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定し、前記ばね壁部は、少なくとも第1のばね壁部分および第2のばね壁部分によって構成される複数のベローズを含み、前記複数のベローズは、前記第1および第2のばね壁部分の間で前記ばね壁部を取り囲むガードルフープを有する、前記エラストマー体と、前記ばね壁部の前記第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つの内部に配置されるとともに、前記第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部に前記ばね壁部の前記複数のベローズの少なくとも1つに沿って配置されたセンサ層とを備え」るのに対し、引用発明においては、「エラストマー物品」が「タイヤ」であり、「壁部」が「タイヤ102のトレッド140、ビード領域148およびサイドウォール150」であって、複数のセンサを設ける位置が異なる点。
上記相違点2について検討する。
エラストマー物品の一種である空気ばねとして、「第1の端部部材と、前記第1の端部部材から離間される第2の端部部材と、前記第1および第2の端部部材の間で延びるとともに、前記第1の端部部材に固定される第1の開口端部と前記第2の端部部材に固定される第2の開口端部とを有するばね壁部をなすエラストマー体において、前記ばね壁部は、前記第1および第2の端部部材の間に配置される気体充填ばね気室を少なくとも部分的に画定し、前記ばね壁部は、少なくとも第1のばね壁部分および第2のばね壁部分によって構成される複数のベローズを含み、前記複数のベローズは、前記第1および第2のばね壁部分の間で前記ばね壁部を取り囲むガードルフープを有する、前記エラストマー体と備える空気ばね。」は、周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2007-63735号公報の一般的な空気バネ、【図1】、及び、特開2000-310266号公報の空気バネ2、【図4】参照。)である。
ここで、刊行物の上記2-1.(1)エ.の段落【0013】における「本願明細書に記載されている実施例は空気入り自動車タイヤに関するものであるが、エアレスタイヤおよびソリッドタイヤのような他のタイヤ、空気ばね、コンベヤーベルト、屋根材、スポーツ用品等を含む他のエラストマー物品もまた、類似の構造および実施形態のセンシングシステムを使用してモニタできるということを認識されたい。」との記載からみて、刊行物には、センサを有するエラストマー物品として、タイヤの他に空気ばねが挙げられていることから、エラストマー物品の実施の形態が「タイヤ」である引用発明において、エラストマー物品の実施の形態として「空気ばね」を採用する動機付けは十分にあるといえる。
しかしながら、刊行物には、単に、センサ104をトレッド140、ビード領域148、サイドウォール150等の内部に配置することが開示されているにとどまり、「空気ばね」の特定の位置である「ばね壁部の第1および第2の開口端部のうちの少なくとも1つの内部」及び「第1および第2のばね壁部分の少なくとも一方の内部にばね壁部の複数のベローズの少なくとも1つに沿っ」た位置を選択し、これらの位置にセンサを配置することに関しては、記載も示唆もなされていない。
したがって、引用発明に上記周知技術2を適用したとしても、上記相違点2に係る本件補正発明2の構成に至ることが容易想到であるとはいえない。
よって、本件補正発明2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(3)「本件補正発明1または本件補正発明2」を引用する請求項3ないし15に係る発明について
「本件補正発明1または本件補正発明2」を引用する請求項3ないし15に係る発明は、本件補正発明1または本件補正発明2を引用し、本件補正発明1または本件補正発明2を更に限定するものであるので、本件補正発明1または本件補正発明2と同様に、引用発明及び上記周知技術1に基いて、または、引用発明及び上記周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、「本件補正発明1または本件補正発明2」を引用する請求項3ないし15に係る発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
2-3 むすび
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。
第3.本願の請求項1ないし15に係る発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし15に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記第2.2-2(1)で検討したとおり、本願の請求項1に係る発明については、引用発明及び上記周知技術1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、上記第2.2-2(2)で検討したとおり、本願の請求項2に係る発明については、引用発明及び上記周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項3ないし15に係る発明については、いずれも本願の請求項1に係る発明または本願の請求項2に係る発明の発明特定事項を全て含むものであるから、引用発明及び上記周知技術1に基いて、または、引用発明及び上記周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-008382