特許拒絶査定不服審判
2016-004978
個別化治療診断のためのマーカータンパク質絶対量の定量方法
- 審判番号
- 2016-004978
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-064145外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月05日
- 審決日
- 2017年01月05日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人東北大学
- 【請求人代理人】廣田 雅紀
- 分類
- P18 .121-Z (C07K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 64145「個別化治療診断のためのマーカータンパク質絶対量の定量方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-197258〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月23日の出願であって、主な経緯は次のとおりである。
平成27年 5月27日付け 拒絶理由通知書
平成27年 8月 3日 意見書・手続補正書
平成27年12月28日付け 拒絶査定
平成28年 4月 5日 審判請求書
第2 本願発明
本願請求項1~3に係る発明は、平成27年8月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。そのうち、本願請求項3に係る発明(以下、「本願発明3」という)は、以下のとおりのものである。
「【請求項3】
配列番号1~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる定量対象ペプチドを備えることを特徴とする、患者に対する個別化治療のためのキット。」
第3 引用例の記載事項
1.引用例1
原査定の拒絶理由で引用文献2として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2010-85103号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。
また、下線は当審にて付記したものである。以下、同様である。
(1)「質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1~412のいずれかに示されるヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチド。」(請求項1)
(2)「請求項1~3のいずれかに記載のペプチドにおいて、ペプチドを構成するアミノ酸の1個以上が、15N,13C,18O,及び2Hのいずれか1以上を含むことを特徴とする安定同位体標識ペプチド。」(請求項4)
(3)「請求項1~3のいずれかに記載のペプチド、及び、請求項4に記載の安定同位体標識ペプチドを備えた、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用キット。」(請求項5)
(4)「本発明のアミノ酸配列によって構成されるペプチドを用いた質量分析による代謝酵素タンパク質の定量法により、従来法では困難であった代謝酵素タンパク質の定量を、簡便、かつ迅速に、更に、精度よく行うことが可能となる。また、本発明の代謝酵素タンパク質の定量法は、抗体を使用せずに、代謝酵素タンパク質を定量することできるので、従来もっとも時間のかかっていた抗体作製の段階を省略することができ、更に、抗体が作製できない代謝酵素についても定量が可能となって、適用範囲の広い、精度の高い細胞内タンパク質である代謝酵素タンパク質の定量法を提供することができる。従って、本発明を利用した代謝酵素タンパク質の定量法は、薬物の相互作用、個人差、毒性の解明において大きく貢献が期待できるものである。特に、新薬の開発に際しては、新薬候補物質がどのような代謝酵素をどの程度発現を変動させるかは相互作用や毒性を予測する上で非常に重要な意義を有しており、新薬開発における開発促進に多大な貢献が期待できる。」(【0014】)
(5)「同様に、GSTK1の部分配列である配列番号325に示されるアミノ酸配列;GSTM1の部分配列である配列番号326に示されるアミノ酸配列;GSTM2の部分配列である配列番号327~328に示される各アミノ酸配列;GSTM3の部分配列である配列番号329に示されるアミノ酸配列;GSTM4の部分配列である配列番号330に示されるアミノ酸配列;GSTM5の部分配列である配列番号331に示されるアミノ酸配列;GSTP1の部分配列である配列番号332に示されるアミノ酸配列;GSTT1の部分配列である配列番号333~334に示される各アミノ酸配列;GSTT2の部分配列である配列番号335に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれGSTM1、GSTM2、GSTM3、GSTM4、GSTM5、GSTT1、GSTT2を定量することができる。」(【0026】)
(6)「同様に、P450Rの部分配列である配列番号350~359に示される各アミノ酸配列;MGMTの部分配列である配列番号360~361に示される各アミノ酸配列;dCKの部分配列である配列番号362~363に示される各アミノ酸配列;CDAの部分配列である配列番号364に示されるアミノ酸配列;からなる各ペプチドも本発明のペプチドであり、当該各ペプチドを用いてそれぞれP450R、MGMT、dCK、CDAを定量することができる。」(【0029】)
2.引用例1に記載された発明
上記記載事項(1)及び(3)より、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。
「質量分析装置を用いた代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いるペプチドであって、配列番号1~412のいずれかに示されるヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなるペプチドを備えた、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用キット。」
第4 対比
本願発明3と引用発明を対比すると、引用発明のペプチドは、代謝酵素群の一斉タンパク質定量に用いることから、本願発明3の「定量対象ペプチド」に相当する。
そうすると、両者は「配列番号に示されるアミノ酸配列からなる定量対象ペプチドを備えることを特徴とする、キット。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本願発明3のペプチドは、配列番号1~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるのに対して、引用発明のペプチドは、配列番号1~412のいずれかに示されるヒト代謝酵素タンパク質の部分アミノ酸配列からなる点。
相違点2:
本願発明3は、患者に対する個別化治療のためのキットであるのに対して、引用発明は、代謝酵素群の一斉タンパク質定量用キットである点。
第5 当審の判断
上記相違点1,2について検討する。
相違点1について:
上記記載事項(5)の下線部分にあるとおり、引用例1の配列番号332に示されるアミノ酸配列はGSTP1の部分配列であり、配列表には配列番号332としてアミノ酸配列「Thr Leu Gly Leu Tyr Gly Lys」が記載されている。
また、上記記載事項(6)の下線部分にあるとおり、引用例1の配列番号360,361に示される各アミノ酸配列はMGMTの部分配列であり、
配列表には、配列番号360としてアミノ酸配列「Glu Trp Leu Leu Ala His Glu Gly His Arg」が、配列番号361としてアミノ酸配列「Thr Thr Leu Asp Ser Pro Leu Gly Lys」が、それぞれ記載されている。
そして、引用発明が規定する配列番号1~412のうち、配列番号332,360,361に示されるアミノ酸配列はそれぞれ、本願発明3が規定する配列番号1~308のうち、配列番号123,125,126に示されるアミノ酸配列とそれぞれ完全に同一であるから、引用発明は、本願発明3と同一のペプチドを備えるキットが規定されているといえる。
よって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
相違点2について:
上記記載事項(4)の下線部分にあるとおり、引用例1には、引用発明の代謝酵素タンパク質の定量法が薬物の相互作用、個人差、毒性の解明において大きく貢献が期待できるという課題が記載されているといえ、ここでいう薬物の個人差は個人による薬物の感受性の違いであるから、個別化治療への道筋となることは当該技術分野の当業者であれば当然に理解するものと認められる。
また、引用例1において「配列番号に示されるアミノ酸配列からなるペプチドをキットに含ませること」については、平成27年5月27日付け拒絶理由通知書において、原審審査官によって既に認定されていたところである。
そうすると、上述した課題をもとに、引用発明のキットを患者に対する個別化治療のためのキットとすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
そして、本願発明3の効果についても、引用例1の記載から格別顕著な効果を奏しているものとも認められない。
第6 審判請求人の主張
平成28年4月5日付け審判請求書において審判請求人は、配列番号1~308のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる定量対象ペプチドを選定することができたのは、本発明者らが、「LC/MS/MSによるタンパク質定量の感度を向上させる」という課題を解決するために試行錯誤を行い、且つ様々な検討と考察を加えた結果、3つの新しい知見を得ることに成功したことに裏付けられていること、引用文献1~10の記載を組み合わせても、本願発明の配列番号1~308のペプチドを選定することは、当業者といえども到底想致し得ることではなく、引用文献1~10の各々には、たまたま本願の配列番号に示されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列からなるペプチドが1ないし10個記載されているが、本願の配列番号1~308のペプチドを選定することを示唆する記載が全く見受けられないことを主張している。
しかしながら、本願発明3は、既に特定のペプチドを備えたキットであって、用いるペプチドの選定については発明特定事項として何ら考慮する必要のないことである。そして、引用例1に、本願の配列番号1~308のペプチドを選定することを示唆する記載がなくとも、引用発明は、本願の配列番号1~308のペプチドのうち、配列番号123,125,126に示されるアミノ酸配列からなるペプチドが明確に規定されているのであるから、当該ペプチドは、本願の発明の詳細な説明に記載されている手法で選定せずとも、引用例1の記載から得られるものである。
よって、上記主張は採用の限りではない。
したがって、本願発明3は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。
第7 結び
以上のとおりであるから、本願請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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