特許拒絶査定不服審判
2023-011343
容積測定ローディング流量を低減し、そして結合及び溶出クロマトグラフィー精製の生産性を増大するためのインライン生成物濃縮
- 審判番号
- 2023-011343
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-533542
- 請求日
- 2023年07月06日
- 審決日
- 2025年03月27日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
- 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 浩
- 審判官 中根 知大
- 審判官 荒木 英則
- 分類
- P18 .121-Z (C07K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-533542「容積測定ローディング流量を低減し、そして結合及び溶出クロマトグラフィー精製の生産性を増大するためのインライン生成物濃縮」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月25日国際公開、WO2020/131246、令和 4年 2月 8日特許出願公表、特表2022-513463〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年11月11日(パリ条約による優先権主張 2018年12月20日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 6月29日付け 拒絶理由通知書
令和5年 1月 5日 意見書、手続補正書の提出
同 年 2月28日付け 拒絶査定
同 年 7月 6日 審判請求書、手続補正書の提出
同 年 8月16日 手続補正書(方式)(請求の理由の補正)の提出
令和6年 2月27日 上申書の提出
第2 令和5年7月6日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年7月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
(補正前)「【請求項1】
目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法であって、目的の生体分子をバイオリアクターにおいて発現させて目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;前記生成物サンプルを清澄化操作に供し、得られた清澄化された生成物を、シングルパス接線流濾過に供して濃縮生成物サンプルを形成すること;並びに前記濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供して前記濃縮生成物サンプルから不純物を取り除くことを含み、
生成物サンプルがアフィニティクロマトグラフィーカラムのすぐ上流にあるシングルパス接線流濾過に供されるか、または
当該方法が前記濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供する直前にある無菌濾過に供することをさらに含み、かつ、当該生成物サンプルが無菌濾過に供する直前にあるシングルパス接線流濾過に供される、方法。」
から、
(補正後)「【請求項1】
目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法であって、目的の生体分子をバイオリアクターにおいて発現させて目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;前記生成物サンプルを清澄化操作に供し、得られた清澄化された生成物を、生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らすシングルパス接線流濾過に供して濃縮生成物サンプルを形成すること;並びに前記濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供して前記濃縮生成物サンプルから不純物を取り除くことを含み、
生成物サンプルがアフィニティクロマトグラフィーカラムのすぐ上流にあるシングルパス接線流濾過に供されるか、または
当該方法が前記濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供する直前にある無菌濾過に供することをさらに含み、かつ、当該生成物サンプルが無菌濾過に供する直前にあるシングルパス接線流濾過に供される、方法。」(以下、「本件補正発明」という。)
に補正された。(下線部は補正箇所である。)
2.補正の適否
本件補正は、「濃縮生成物サンプルを形成する」際に供される「シングルパス接線流濾過」について、本願の願書に添付した明細書(以下、「本願明細書」という。)の段落0015の「特定の実施形態において、インライン生成物濃縮は、捕捉クロマトグラフィーの上流のシングルパス接線流濾過などによって、実施される。インライン濃縮を加えることは、割り当てられた処理時間に影響を与えず、より低い体積流速にて操作する(同じ時間の長さにおいてより少ない体積を処理する)ことを可能にする。さらに、インライン濃縮は同時に生成物濃縮を上げるので、比例して体積が減少する間、生成物質量流速は変わらない。」(下線は当審で付した。)との記載に基づき、「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らすシングルパス接線流濾過」に限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものを含むと認められる。
そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)(以下、「独立特許要件」という。)について、以下で検討する。
3.独立特許要件の検討
(1)特許法第29条第2項(いわゆる進歩性の欠如)について
ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物であるMerck KGaA, White Paper, Single-pass tangential flow filtration, a versatile application to streamline biomanufacturing, Nov-2018, Lit. No. MK_WP2787EN Ver. 1.0, p.1-8(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献は英文であるため、以下では当審による訳文を示す。また、下線は当審合議体が付加した。
(ア)1ページ
「シングルパス接線流濾過は、バイオ製造を効率化するアプリケーションである。
バイオ医薬品業界の現在の傾向は、製造効率と製品品質を犠牲にすることなくコストとフットプリントを削減できる高い容量プロセスの導入を推進している。バイオ製造プロセスにおいてこのような利便性を実現するステップは、シングルパス接線流濾過(シングルパスTFF)による限外濾過である。
シングルパスTFFは、下流処理内のさまざまなステップでモノクローナル抗体、治療用タンパク質、ワクチンの精製に使用されてきた既存のTFF技術を強化したアプローチである。このTFFモードでは、供給物溶液が直列に配置された一連のフィルターに一度送られ、透過液と濃縮された保持液が生成される。シングルパスTFFのワンススルーフローパスには、フットプリント、せん断露出、作業量とホールドアップ量が削減されるという利点があり、結果としてプラントの生産性が向上する。
シングルパスTFFで解決できる処理上の課題には、
・タンク容量を超えて増加するプール容量
・限定された工場床面積
・高希釈のため達成できない目標濃度
がある。
シングルパスTFFのバイオ製造プロセスへの組み込みは、既存のPellicon(R)カセットを使用すると簡単に達成される。Merckの実績あるPellicon(R)カセットの幅広い種類は、ユーザーが設定できるシングルパスTFF機能と、幅広い分子および変換ターゲットへの適用性を提供する。」
(引用文献では、「Pellicon(R)」の「(R)」は「○にR」で記載されているが、システム上の制約で表示できないため「(R)」として記載した。以下も同様である。)
(イ)2ページ左欄~右欄(「What is single-pass TFF」の項)
「シングルパスTFFとは
従来のTFFは、バッチモードで動作し、並列に組み立てられたフィルターを通して供給物/保持液を再循環させ、目的の変換が達成されるまで続く(図1A、以降バッチTFFと呼ぶ。)。シングルパスTFFは、この濾過プロセスに対する別のアプローチである。この方法では、より長い供給物チャネルパスを使用して、1回のポンプパスで目的の変換を達成する(図1B)。再循環ループがないため、保持液は下流に流れ、ホールドアップ量が削減され、プールタンクの必要性がなくなり、連続処理が可能になる。
シングルパスTFFでは、膜上での供給物滞留時間が長くなるため、製品の変換が向上する。直列に構成されたカセットは、同じ総膜面積で並列に構成されたカセットよりも供給物チャネルの流路が長くなる。これにより、供給物の滞留時間が長くなり、透過効率が向上するため、1度のポンプ通過後に高い濃縮係数(10倍超)を達成できる。
供給物滞留時間は、安定した低供給物流速(バッチTFFの約1/10)でも制御される。たとえば、供給物流速0.5L/分/m2により供給物量0.3L/m2で稼働すると、滞留時間は約35秒になる。供給物流速が低い場合(0.5L/分/m2未満)、滞留時間が長くなり、それに応じて1回の通過後の保持液濃度が高くなる(図2)。」
(ウ)2ページ 図1
「
[図:0001426242000001.jpg]
図1 従来のバッチTFF(A)の並列構成と比較して、シングルパスTFF(B)は、フィルターを1回通過した後に濃縮された保持液を生成するため、スペースを制限する再循環ループが不要になる。」
(なお、説明文中の「保持液」は図中の「Retentate」の訳語にあたる。)
(エ)2ページ 図2
「
[図:0001426242000002.jpg]
図2 供給物流速が低い場合、供給物の滞留時間が長くなり、結果として保持液の濃度が高くなる。」
(オ)3ページ左欄~右欄(「Versatility in bioprocessing」の項)
「生物製剤の製造において、シングルパスTFFはインライン容量削減を可能にし、タンク要件の削減、後続のステップの規模の縮小、脱塩のためのインラインバッファー添加による濃縮、高い最終濃度と高い製品回収率の促進を実現する。シングルパスTFFの設置面積が小さいため、バイオ製造プロセス内の容量削減が必要な場所であればどこでも、カラムクロマトグラフィーステップの前後や最終的な濃縮および処方時など、インライン濃縮ステップを簡単に導入できる (図3)。」
(カ)3ページ 図3
「
[図:0001426242000003.jpg]
(各ステップの訳語は、左からバイオリアクター、清澄化、プロテインA捕捉、ウイルス不活化、深層濾過、陽イオン交換精製、陰イオン交換精製、ウイルス除去、濃縮・透析濾過、最終濾過。)
・強化された捕捉:より高速なロード;低力価で高容量の製品プールを濃縮して下流の生産性を向上する。
・工程内容積削減:プールタンクの制約を克服するために、拡大した製品容積を濃縮する。
・強化研磨:強化研磨によりカラムの生産性とプロセス経済性が向上する。
・最終限外濾過:より高い最終濃度とより高い収量を達成する。
図3 シングルパスTFFは、バイオ製造プロセス内のどこにでも組み込まれ、量の課題に対処できる。」
(なお、図の矢印と図の下部にある項目の説明は色分けされており、項目の1番目は一番左の矢印と同じ赤色、項目の2番目は左から2、4、6番目の矢印と同じ桃色、項目の3番目は左から3、5番目の矢印と同じ緑色、そして項目の4番目は一番右の矢印と同じ青色である。)
(キ)4ページ 左欄(「Before chromatography」の項)
「クロマトグラフィー前
カラムクロマトグラフィー前のインライン濃縮により、ローディングが高速化され、カラムの収容能力が増大し、プラントの稼働率と生産性が向上する(図4A)。プロテインA前シングルパスTFFは、収穫後のタンクサイズが制限されている場合に、カラムローディング時間を短縮し、製造プロセスのボトルネックを解消するために、低力価の分子を大量に処理するのに最適である。
さらに、イオン交換クロマトグラフィー前のシングルパスTFFにより、ポリッシングステップの効率が向上する。ポリッシングを強化すると、pHと導電率を調整するための希釈要件が軽減され、最終的にはカラムの生産性が向上し、消耗品の使用が削減され、プロセスの経済性が向上する。」
(ク)4ページ 図4A
「
[図:0001426242000004.jpg]
」
イ 周知例の記載
(ア) 周知例1の記載
本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である国際公開第2015/195453号(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、周知例1は英語で記載されているので、訳文で示す。
a 請求の範囲
「1.以下の工程を含む、標的タンパク質を非標的タンパク質から分離するためのプロセス。
a)標的タンパク質および非標的タンパク質を含有する液体試料を得る工程;
b)試料中の標的タンパク質および非標的タンパク質の濃度を増加させてクロマトグラフィー装置に送達するための濃縮供給物を生成する工程;
c)濃縮供給物をクロマトグラフィー装置に送達する工程;
d)クロマトグラフィー装置内の非標的タンパク質から標的タンパク質を分離する工程;
e)クロマトグラフィー装置から標的タンパク質を回収する。
2.試料中の標的タンパク質および非標的タンパク質の濃度は、接線流濾過(TFF)プロセスを使用して増加される、請求項1に記載の方法
3.TFFプロセスは、シングルパスTFF(SPTFF)または再循環TFFプロセスである、請求項2に記載のプロセス
……
7.クロマトグラフィー装置が、1)陰イオン交換クロマトグラフィー媒体又は疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体;2)サイズ排除クロマトグラフィー媒体;3)耐塩性膜吸着剤;または4)アフィニティークロマトグラフィー媒体を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
……
16.アフィニティークロマトグラフィー媒体が、プロテインA媒体、プロテインG媒体、または固定化金属イオン媒体である、請求項7に記載の方法。
……」
b 段落0024
「典型的には、クロマトグラフィー装置(例えば、クロマトグラフィーカラム、クロマトグラフィーカートリッジ)はクロマトグラフィー媒体に基づいて選択する。当業者は、特定の標的タンパク質の分離/精製に適したクロマトグラフィー媒体を容易に決定することができる。典型的な分離媒体(例えば、クロマトグラフィー樹脂、クロマトグラフィービーズ、クロマトグラフィー膜、クロマトグラフィー繊維)は……アフィニティークロマトグラフィー媒体(プロテインA親和性媒体、プロテインG親和性媒体、固定化金属イオン親和性媒体)、及び混合モード媒体を含むが、これらに限定されない。」
c 実施例2(段落0034~0035)
「[0034] 実施例2:プロテインAアフィニティークロマトグラフィー前の液体供給物の濃縮は、クロマトグラフィー媒体のコストを低減する。
[0035] ProSep (R) Ultra Plus (PUP)培地(EMD Millipore)という、プロテインAベースの親和性クロマトグラフィー媒体について、結合-溶出プロセスのためのクロマトグラフィー媒体のコストにおける、SPTFFにより液体供給サンプルを濃縮することによる効果を計算した。結果は、SPTFF(図3)を使用して、液体フィード内のタンパク質濃度を約5g/Lに増加させることによって、PUP媒体1グラム当たりのコストが有意に低減されたことを示している。」
(イ) 周知例2の記載
本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特表2015-522019号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 特許請求の範囲
「【請求項1】
標的分子を精製するための方法であって、
(a)標的分子および1種類以上の不純物を含むサンプルを提供する工程と、
(b)サンプルに少なくとも1種類の沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを回収する工程と、
(c)工程(b)から得た浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを含む結合および溶出のクロマトグラフィー工程を行い、これによって、標的分子を含む溶出物を得る工程と、
(d)溶出物に対し、2種類以上の媒体の使用を含むフロースルー精製を行う工程と
を含み、少なくとも2つの工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われ、方法が、1つの結合および溶出のクロマトグラフィー工程のみを含む、方法。
……
【請求項16】
(c)の結合および溶出のクロマトグラフィー工程は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
プロテインAアフィニティクロマトグラフィーは、硬質親水性ポリビニルエーテルポリマー、孔径が制御されたガラスおよびアガロースからなる群から選択されるマトリックスに接続したプロテインAリガンドを使用する、請求項16に記載の方法。
……
【請求項45】
サンプルから標的分子を精製するための方法であって、
(a)細胞培養物を含むバイオリアクターを提供する工程と、
(b)バイオリアクターに沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって浄化されたサンプルを得る工程と、
(c)浄化されたサンプルを、少なくとも2種類の分離ユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィー工程に連続的に移し、これによって溶出物を得る工程と、
(d)溶出物を1種類以上のウイルス不活性化剤と混合するために、工程(c)から得た溶出物を、インラインスタティックミキサまたは調整槽に連続的に移す工程と、
(e)フロースルーモードの溶出物を活性炭と接触させ、続いてアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてインラインスタティックミキサおよび/または調整槽と接触させてpHを変え、続いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてウイルス濾過媒体と接触させることを含む、工程(d)の後の溶出物を、フロースルー精製操作に連続的に移す工程と、
(f)工程(e)から得たフロースルーサンプルを、望ましいバッファー中、望ましい濃度で配合する工程と
を含み、処理工程は、互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルがひとつの処理工程から次の処理工程へと連続して流れることができ、および(b)から(f)の少なくとも2つの処理工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われる、方法。
【請求項46】
サンプルから標的分子を精製するための方法であって、
(a)細胞培養物を含むバイオリアクターを提供する工程と、
(b)バイオリアクターに沈殿剤を加え、1種類以上の不純物を除去し、これによって、浄化されたサンプルを得る工程と、
(c)浄化されたサンプルに、塩、洗剤、界面活性剤およびポリマーからなる群から選択される1種類以上の添加剤を加える工程と、
(d)浄化されたサンプルに対し、少なくとも2種類の分離ユニットを使用するプロテインAアフィニティクロマトグラフィー工程を行い、これによって溶出物を得る工程と、
(e)工程(d)から得た溶出物を、インラインスタティックミキサまたは調整槽を用いてウイルス不活性化薬剤にさらす工程と、
(f)フロースルーモードの溶出物を活性炭と接触させ、続いてアニオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてインラインスタティックミキサおよび/または調整槽と接触させてpHを変え、続いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体と接触させ、続いてウイルス濾過媒体と接触させることを含む、ウイルス不活性化後の溶出物をフロースルー精製操作に接触させる工程と、
(g)工程(f)から得たフロースルーサンプルを、望ましいバッファー中、望ましい濃度で配合する工程と
を含み、処理工程は、互いに流体連結するように接続し、この結果、サンプルがひとつの処理工程から次の処理工程へと連続して流れることができ、および(b)から(g)の少なくとも2つの処理工程が、これらの経過時間の少なくとも一部で同時に行われる、方法。
……」
b 実施例7(段落0316~0324)
「【0316】
[実施例7]
活性炭を用いたアフィニティ捕捉溶出物からの可溶性および不溶性の不純物の同時除去 この代表的な実験では、活性炭は、セルロース媒体に充填されると、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程(即ち、捕捉工程)からの溶出物から得た不溶性(即ち、粒状)および可溶性の不純物を除去することができることを示した。
【0317】
今日、産業で使用される多くの従来の方法では、プロテインAアフィニティ捕捉工程の後、多くは、デプスフィルタを使用し、典型的にはカチオン交換の結合および溶出のクロマトグラフィー工程である次の工程の前に不溶性不純物(即ち、粒状物)を除去する。
【0318】
本明細書に記載する方法では、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィーの後のデプスフィルタの使用が必要ない。顕著なことに、プロテインAの結合および溶出のクロマトグラフィー工程の後に活性炭を用いることによって、カチオン交換の結合および溶出のクロマトグラフィー工程の必要性がなくなるだけではなく、デプスフィルタを使用する必要性もなくなる。このことは、例えば、典型的に使用される工程を省くため、全体的な費用の低下、処理時間および全体的な物理的なフットプリントの低下を含む多くの利点を与える。
【0319】
本明細書に示すように、活性炭の使用によって、可溶性の不純物(例えば、HCP)および不溶性の不純物(例えば、粒状物)の両方を同時に除去する。
【0320】
モノクローナル抗体MAb04の細胞培養物に対し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを行い、本方法の次の工程に適した溶液状態を変えるために、1.0Mトリス塩基を滴下し、溶出プールのpHを4.8から7.5に調整する。しかし、溶液のpHを上げると、濁度が上がり、この場合には、28.7NTUであると測定される。この溶液は、以下、MAb04プロテインA溶出物と呼ぶ。
【0321】
直径が5/8インチ、厚みが5mmの活性炭-セルロース媒体のシートの円板部分を切断し、注意深く、直径が15mmのOmnifit(登録商標)Chromatography Columns(SKU:006BCC-25-15-AF.Diba Industries.Inc.、Danbury、CT06810 USA)にのせ、カラム容積0.89mLを得る。カラムに、25mMトリス(pH7)を流す。約40mLの濁ったMAb04プロテインA溶出物を流速0.20mL/分でカラムに流し、滞留時間4.5分を得る。4つの10mLのフラクションを集める。それぞれの個々のフラクションと、すべての4つのフラクションで構成される合わせたプールについて、濁度を評価し、HCPおよびMAbの濃度を分析する。Cygnus Technologies、Southport.NC.USAから市販されるカタログ番号F550のELISAキットを用い、キット製造業者のプロトコルに従ってHCP分析を行う。Poros(登録商標)A Protein A分析カラムを取り付けたAgilent HPLCシステムを用い、MAb濃度を測定する。結果を表Vにまとめている。
【0322】
この結果は、活性炭が、予想できないことに、プロテインA溶出物からの不溶性不純物(即ち、粒状物質)および可溶性不純物(即ち、HCP)の両方の同時除去に有効であることを示す。プロテインA溶出物の濁度は、28.7NTUから9.9NTUに低下し、一方、HCPの濃度は、758ppmから104ppmまで低下する。
【0323】
この結果は、活性炭が、セルロース媒体に充填されたとき、可溶性不純物および不溶性不純物の両方を除去するために使用することができることを示す。
【0324】
【表5】
[図:0001426242000005.jpg]
」
ウ 引用発明及び対比
引用文献は、シングルパス接線流濾過の装置とそのバイオ製造への適用方法を記載した販売会社の製品パンフレットと認められ、当該引用文献の「バイオプロセスにおける多用途性」の項目において、図3を引用しながら、シングルパス接線流濾過の設置箇所について「カラムクロマトグラフィーステップの前後や最終的な濃縮および処方時など」を例示している。そして、当該図3にバイオリアクター、清澄化、プロテインA捕捉、ウイルス不活化、深層濾過、陽イオン交換精製、陰イオン交換精製、ウイルス除去、濃縮・透析濾過、及び最終濾過のステップを含む生物製剤の製造プロセスが図示されるとともに、シングルパス接線流濾過の導入箇所が矢印で示されていること、また、図示されるステップの中で生物製剤成分が生成されるのは一番左にあるバイオリアクターのステップのみであって、これが最初のステップにあたること、一番右にあるステップである最終濾過が最後のステップにあたると理解するのが自然であることを踏まえると、図3の生物製剤の製造プロセスにおいて、各ステップは左から右へと順次進行すると解すべきものといえる(ア(オ)~(カ))。
また、図3において矢印で示されるシングルパス接線流濾過の導入箇所は、以下の図
「
[図:0001426242000006.jpg]
」
で示される「プロテインA捕捉」、「陽イオン交換精製」及び「陰イオン交換精製」のステップの直前直後と、シングルパス接線流濾過と同じ図で示される「濃縮・透析濾過」の箇所であって、これらの矢印の箇所がシングルパス接線流濾過の設置箇所に関する前記「カラムクロマトグラフィーステップの前後や最終的な濃縮および処方時など」との記述と対応していることからみて、上記の図が「カラムクロマトグラフィー」を表していることが読み取れる。したがって、引用文献には、「プロテインA捕捉」のステップもカラムクロマトグラフィーにより実施されることが実質的に示されている。これは、ア(キ)において、「クロマトグラフィー前」について、「プロテインA前シングルパスTFF」と記載されるとともに、「クロマトグラフィー前」を図示した図4A(ア(ク))では、供給物が入り透過液と保持液が出てくる
[図:0001426242000007.jpg]
の部分(a)と、部分(a)から保持液が供給される
[図:0001426242000008.jpg]
の部分(b)が記載されており、供給物が入り透過液と保持液が出てくるとの機能を有する部分(a)がシングルパスTFFにあたり、保持液が供給される部分(b)が「プロテインA」によるクロマトグラフィーにあたること、「プロテインA捕捉」はクロマトグラフィーによるものであることが理解できることとも整合する。
そして、クロマトグラフィーは精製手段であり、不純物の除去という機能があることは当業者に自明の事項といえる。
以上のことから、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「バイオリアクター、清澄化、プロテインA捕捉、ウイルス不活化、深層濾過、陽イオン交換精製、陰イオン交換精製、ウイルス除去、濃縮・透析濾過、及び最終濾過の順番で各ステップが実施される生物製剤の製造プロセスであって、プロテインA捕捉、陽イオン交換精製、及び陰イオン交換精製はいずれもクロマトグラフィーによるものであり、シングルパス接線流濾過(シングルパスTFF)がプロテインA捕捉の前若しくは後、陽イオン交換精製の前若しくは後、陰イオン交換精製の前若しくは後、又は、濃縮・透析濾過として組み込まれる製造プロセス。」
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「生物製剤」、「清澄化」、及び「シングルパス接線流濾過(シングルパスTFF)」は、本件補正発明の「目的の生体分子」、「清澄化操作」、及び「シングルパス接線流濾過」に相当する。また、引用発明のバイオリアクターを用いるステップは生物製剤成分が生成されるステップであるとともに、その後に精製操作を含んでおり、バイオリアクターからの生成物が生物製剤成分に加えて不純物を含むことが明らかであるから、引用発明の「製造プロセス」は本件補正発明の「目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法」に相当するとともに、引用発明のバイオリアクターを用いるステップは、本件補正発明の「目的の生体分子をバイオリアクターにおいて発現させて目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること」に相当する。
さらに、引用発明の「プロテインA捕捉」は、その語義からプロテインAを用いて対象物を捕まえる機能を意味したものといえるところ、クロマトグラフィーによる「プロテインA捕捉」がモノクローナル抗体のような抗体を精製する際に使用されるアフィニティクロマトグラフィーであることは、周知例1、2にも記載されるように当業者において明らかである。そうすると、引用発明の「クロマトグラフィー」による「プロテインA捕捉」は、本件補正発明における「アフィニティクロマトグラフィー」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは
「目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法であって、目的の生体分子をバイオリアクターにおいて発現させて目的の生体分子及び不純物を含む生成物サンプルを形成すること;前記生成物サンプルを清澄化操作に供すること;サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供してサンプルから不純物を取り除くことを含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
シングルパス接線流濾過について、本件補正発明では、「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らす」ものであることが特定されるのに対し、引用発明では、その点について特定されない点。
(相違点2)
生成物サンプルがシングルパス接線流濾過に供される時点について、本件補正発明では「アフィニティクロマトグラフィーカラムのすぐ上流」の時点であるか、又は、「当該方法(当審注:本件補正発明の方法)が前記濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供する直前にある無菌濾過に供することをさらに含」むことを前提に「無菌濾過に供する直前」の時点であると特定されるのに対し、引用発明では、「プロテインA捕捉のクロマトグラフィーの前若しくは後、陽イオン交換精製のクロマトグラフィーの前若しくは後、陰イオン交換精製のクロマトグラフィーの前若しくは後、又は、濃縮・透析濾過」の時点である点。
エ 判断
上記ウで挙げた相違点1及び2について、検討する。
(ア) 相違点1について
本件補正発明における「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らすシングルパス接線流濾過に供して濃縮生成物サンプルを形成する」との限定内容からみて、本件補正発明における「生成物質量流速」が単位時間あたりにシングルパスTFFを通過する生成物サンプル中の生成物質量、「体積流速」は単位時間あたりにシングルパスTFFを通過する生成物サンプルの体積を指すことがわかる。
この点を踏まえると、「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らす」との機能は、単純に言えば濃縮された結果生じることをいうにすぎず、単にシングルパス接線流濾過が本質的に備える機能を表現したものであると解される。
したがって、引用文献に記載されたシングルパス接線流濾過についてもそのような機能を有するものといえるから、相違点1は実質的な相違点にはあたらない。
また、「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らす」との機能が濃縮された結果生じることを単純に記載したものではないと解した場合であっても、以下のとおり、当業者が当然になし得た事項といえる。
すなわち、引用文献では、シングルパスTFFに溶液を供給すると、透過液と濃縮された保持液が生成されること、濃縮の程度は溶液の供給物流速に応じて変化することが記載されるとともに、具体的な濃縮の程度についての試験結果に関する図2で示された供給物流速と保持液の濃度との関係は、供給物流速が低下するにしたがって保持液の濃度が上昇している。この点を踏まえると、供給物流速が低下(又は上昇)した場合、これにあわせて保持液の濃度も上昇(又は低下)することが示されたものといえ、また、保持液に含まれる生物製剤成分の質量は保持液における生物製剤成分の濃度と保持液体積との積であることから、保持液中に含まれる生物製剤の質量も供給物流速の変化に応じて変化するものといえる(ア(ア)~(エ))。そして、引用文献に記載される生産性や経済性という観点からみて、シングルパスTFFでの濃縮以降のステップに供することのできる単位時間あたりの生物製剤の量が低下する事態を回避しようとすることは、当業者が当然に認識することといえる。そうすると、引用発明にシングルパスTFFを組み込む場合において、溶液供給時の単位時間あたりの供給物流速を減らしつつ、同じ時間にシングルパスTFFを通過する保持液中に含まれる生物製剤成分の質量が変化しないものとすることは、当業者が当然になし得た事項といえる。
よって、相違点1は、実質的な相違点にはあたらないか、当業者が当然になし得た事項といえる。
(イ) 相違点2について
引用文献の図3には、シングルパスTFFが組み込まれる時点として「プロテインA捕捉」の前が赤色の矢印で示されるとともに、同じ赤色のテキストで「強化されたキャプチャ:より高速なロード;低力価で高容量の製品プールを濃縮して下流の生産性を向上する。」と、他の時点、ポイントとは区別して記載されており、「プロテインA捕捉」の前にシングルパスTFFを組み込むことで、低力価で高容量の製品プールを濃縮してより高速なロードが可能となり、下流の生産性が向上することが記載されたものといえる(ア(オ)~(カ))。そうすると、引用発明において、下流の生産性向上を図る目的で「プロテインA捕捉」の前にシングルパスTFFを組み込むことは当業者が容易に想到し得た事項といえる。
(ウ) まとめ
これらの点を踏まえると、引用発明に基づいて、上記相違点1及び2に係る構成を導き出し、引用発明において清澄化操作後の生成物を、
「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らすシングルパス接線流濾過に供して濃縮生成物サンプルを形成」し、
「濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供して前記濃縮生成物サンプルから不純物を取り除く」ようにして、
「生成物サンプルがアフィニティクロマトグラフィーカラムのすぐ上流にあるシングルパス接線流濾過に供される」
ものとして本件補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
オ 本件補正発明の効果について
本願明細書には、目的の生体分子及び不純物を含むサンプルを精製するための方法としてシングルパスTFFを用いた本件補正発明による方法を用いることによる試験結果は記載されていないから、本願明細書には参酌できる格別の効果はみあたらず、そもそも本件補正発の効果については上記エにおいて述べたとおりであるから、引用文献から予測可能なものである。
カ 小括
以上からすると、本件補正発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(2)審判請求人の主張
ア 審判請求人は、上記(1)ウ~オの観点に対し、令和5年8月16日に提出された手続補正書(方式)で補正された「請求の理由」、及び、令和6年2月27日に提出された上申書において、以下の(ア)、(イ)の理由を述べて、本件補正発明は引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものとなった旨を主張する。
(ア) アフィニティクロマトグラフィーへのサンプルのローディングについて
引用文献には、図3及び図4Aにおいて、「プロテインA補足カラム」の前にSPTFFデバイスによる処理を行うともに、「プロテインA補足カラム」から「プロテインA補足カラム」へのアウトプットに対して緩衝剤を添加して、サンプルの「プロテインA補足カラム」へのより速いローディングを可能にしており、これにより、プラントのランレートと生産性の向上を可能にする旨が記載されている。
これに対し、本件補正発明では、生成物サンプルをSPTFFデバイスに通して得られる濃縮生成物サンプルをあえて緩衝剤を添加せず体積流速を落とした状態で、アフィニティクロマトグラフィーにローディングするものであり、サンプルの処理に必要とされるカラムの数を減らすことで生産性を上げることになり、引用文献の記載からはこのような効果を期待しない。
(イ) 本件補正発明の奏する効果について
本願明細書には、本件補正発明に関し、体積流量を減らすことで、必要とされるカラムの数を減らすことになり、処理の間により頻繁に回されなければならないカラムの使用数が減ることで、同じ物質を同じ時間で処理するために必要な樹脂が少なくなるため、クロマトグラフィー樹脂のより効率のよい利用を可能にし、これが生産性を改善し、そして費用を下げることになり、システム内のポンプの負荷を減らし、より多くの生成物質量を処理することが可能な、より小さなシステムを可能とすることができるといった利点がある。
イ 上記アの(ア)、(イ)の主張について検討する。
(ア) アフィニティクロマトグラフィーへのサンプルのローディングについて
審判請求人の主張中、「プロテインA補足カラム」は、図3の「Protein A Capture」との記載や図4Aに関する説明((1)ア(キ)~(ク))からみて、「プロテインA捕捉カラム」の誤記と解される。また、『「プロテインA補足カラム」から「プロテインA補足カラム」へのアウトプット』との記載では「プロテインA補足カラム」での循環操作に関する主張となり、上申書における対応する部分の記載や本件補正発明とも整合しないことを踏まえると、これは『「SPTFFデバイス」から「プロテインA補足カラム」へのアウトプット』の誤記と理解すべきものといえる。以下では、これらのように解して検討する。
引用文献の図4Aに記載される緩衝剤(buffer)については、図中の記載以外の説明がない一方、アフィニティクロマトグラフィーにおいて、緩衝剤を使用するのはローディング時だけでなく溶出時等も含まれることは当業者における技術常識である。これらの点を踏まえると、図4Aの「緩衝剤」との記載は、溶出等の際にカラムに流し込む緩衝剤の流路を概念的に表記するためのものと理解するのが自然な解釈である。したがって、図3及び図4Aの記載のみにもとづいて、SPTFFデバイスからプロテインA捕捉カラムへのアウトプットに対して緩衝剤を添加して、サンプルのプロテインA捕捉カラムへのより速いローディングを可能しているとの審判請求人の主張は採用できない。
また、本件補正発明では「シングルパス接線流濾過に供して濃縮生成物サンプルを形成」し、その後に「前記濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供して前記濃縮生成物サンプルから不純物を取り除くこと」が特定されるものの、濃縮生成物サンプルをアフィニティクロマトグラフィーに供する際にその他の成分を添加することが否定されているわけではない。そして、段落0028には、用語「サンプル」に関して「標的タンパク質又は目的のタンパク質と混合して見出される、希釈剤、緩衝液、洗浄剤及び夾雑する種、屑などを含んでもよい。」との記載があり、サンプルに緩衝液が含まれる場合が包含されていると解されるところ、ローディングや溶出時に緩衝条件を規定する必要があり、緩衝剤を使用して調整されることは技術常識であるといえる。そうすると、本件補正発明において、生成物サンプルをSPTFFデバイスに通して得られる濃縮生成物サンプルをあえて緩衝剤を添加せず体積流速を落とした状態で、アフィニティクロマトグラフィーにローディングする場合に限定されると解すべき事情はない。
(イ) 本件補正発明の奏する効果について
審判請求人の主張する効果は、要するに体積流量を減らすことによりもたらされる効果といえるが、シングルパスTFFによる濃縮で体積流量を減少させることができることや、濃縮され体積が減少することは(1)エで検討したとおりであり、それに基づく効果も当業者が予測しうる範囲のものであるといえるから、上記効果が格別顕著であるとは認められない。
ウ 審判請求人によるアの主張は、イで検討したとおりであるから、いずれも採用できない。
(3)むすび
以上検討したところによると、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
令和5年7月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年1月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1において、補正前の【請求項1】に記載したとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
第4 原査定の拒絶理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由2の概要は、以下のとおりである。
(理由2)本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない
第5 当審の判断
本願発明は、本件補正発明における「シングルパス接線流濾過」に関し「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らす」との限定を有しないものであり、「シングルパス接線流濾過」が「生成物質量流速を変えることなく、生成物サンプルの体積流速を減らす」場合を含むものである。
そして、引用文献に記載された事項、引用発明、対比及び判断は、上記第2の3.(1)ア~オに記載したとおりなので、本願発明は依然として引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-011343