特許拒絶査定不服審判
2016-000972
超音波画像を使用した高速解剖学的マッピング
- 審判番号
- 2016-000972
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2010-285661外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月22日
- 審決日
- 2016年11月07日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
- 【請求人代理人】加藤 公延
- 【請求人代理人】大島 孝文
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2010-285661「超音波画像を使用した高速解剖学的マッピング」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月 7日出願公開、特開2011-131062〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年12月22日(パリ条約による優先権主張:2009年12月23日(US)米国)を出願日とする特許出願であって、平成26年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月27日付けで拒絶理由が通知され、同年4月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月17日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同月29日に請求人に送達された。
これに対し、平成28年1月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、それと同時に手続補正書が提出された。
その後、同年3月9日に前置報告書が作成され、同年3月16日及び7月6日に上申書が提出されたものである。
第2 平成28年1月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年1月22日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
(1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項10の記載を次のとおりに補正する補正事項をその一部に含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項11の記載
「【請求項11】
コンピュータソフトウェアであって、プログラム命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な媒体に記録され、前記命令は、プロセッサにより読み取られた際、前記プロセッサに、3D基準座標系内で異なるそれぞれの位置を有する、生きている被験者の身体内の腔の複数の二次元(2D)超音波画像を受信させ、それぞれの前記2D超音波画像内で前記腔の内部内の位置に対応するピクセルを識別させ、前記複数の前記2D画像からの前記識別ピクセルを前記3D基準座標系内に登録して、前記腔の前記内部に対応する容積を規定させ、前記腔の内部内の位置に対応する複数のピクセルを収集することにより、そして、前記複数のピクセルの境界となる外側表面を見出すことにより、前記腔の内面を表す前記容積の外側表面を再構築させる、コンピュータソフトウェア。」(当審注:「前記腔の内面内の位置に対応する複数のピクセルを収集する」は、「前記腔の内部内の位置に対応する複数のピクセルを収集する」の誤記であると認定した。)
イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項10の記載
「【請求項10】
コンピュータソフトウェアであって、プログラム命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な媒体に記録され、前記命令は、プロセッサにより読み取られた際、前記プロセッサに、3D基準座標系内で異なるそれぞれの位置を有する、生きている被験者の身体内の腔の複数の二次元(2D)超音波画像を受信させ、それぞれの前記2D超音波画像内で前記腔の内部内の位置に対応するピクセルを識別させ、前記複数の前記2D画像からの前記識別ピクセルを前記3D基準座標系内に登録して、前記腔の前記内部に対応する容積を規定させ、前記腔の内部内の位置に対応する複数のピクセルを収集することにより、そして、前記複数のピクセルの境界となる外側表面を見出すことにより、前記腔の内面を表す前記容積の外側表面を再構築させ、
前記プロセッサが、閾値を設定し、指定された閾値未満のそれぞれのグレースケール値を有する前記ピクセルを、前記腔の前記内部に属しているとして分類するよう構成されている、コンピュータソフトウェア。」(以下、「本件補正発明」という。下線は、本件補正による補正箇所を示す。)(当審注:上記アと同様に、「前記腔の内面内の位置に対応する複数のピクセルを収集する」は、「前記腔の内部内の位置に対応する複数のピクセルを収集する」の誤記であると認定した。)
(2)本件補正の目的について
上記請求項10についての補正事項は、本件補正前の請求項11に、「前記プロセッサが、閾値を設定し、指定された閾値未満のそれぞれのグレースケール値を有する前記ピクセルを、前記腔の前記内部に属しているとして分類するよう構成されてい」るとの事項を追加することにより、特許請求の範囲を減縮するとともに、発明特定事項を限定するものであって、それらにより、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が変更されるものでもないから、当該補正事項による補正の目的は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するものである。
そこで、本件補正後の請求項10に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
2 独立特許要件についての検討
(1)特許法第29条第2項違反について
ア 引用例及びその記載事項
(ア)引用例1
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-305361号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加した。)。
a 「【0027】
通常は医師であるシステムのユーザーは、対話式ディスプレイに表示されたイメージを精査する。ユーザーは、1または複数のイメージにおける臓器のフィーチャーを特定する目的の輪郭を手動でマークする(タグ付けとも呼ぶ)ためにディスプレイを用いる。これに加えて、または別法では、目的の輪郭は、輪郭検出ソフトウエアによって自動的にタグ付けされる。イメージプロセッサが、残っているタグ付けされていないイメージの少なくとも一部における対応する輪郭を特定し、再構築する。次いで、イメージプロセッサは、複数の超音波イメージおよび各イメージが撮られた対応するプローブの座標に基づいて3D構造モデルを構築し、目的の輪郭を用いてこのモデルの3D構造をセグメント化する。」
b 「【0045】
また、本発明の実施形態に従って、解剖学的構造をモデリングするための別のコンピュータソフトウエア製品を提供する。このコンピュータソフトウエア製品は、プログラム命令が保存されたコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。コンピュータは、このプログラム命令を読み取ると、超音波センサのそれぞれの空間位置で超音波センサを用いて解剖学的構造の超音波イメージを取得し、空間位置における超音波センサの位置および向きの座標を測定し、超音波イメージの解剖学的構造のフィーチャーを指す目的の輪郭をマークし、測定された位置および向きの情報に基づいて3D空間に目的の輪郭および超音波イメージの少なくとも一部を表示する。」
c 「【0077】
一般に、位置決定プロセッサおよびイメージプロセッサは、ここに記載する機能を実行するためにソフトウエアにプログラムされ、汎用コンピュータを用いて実行される。このソフトウエアは、例えばネットワークを介して電子的形態でコンピュータにダウンロードすることもできるし、またCD‐ROMなどの有形の媒体で、コンピュータで使用することもできる。位置決定プロセッサおよびイメージプロセッサは、別々のコンピュータまたは1つのコンピュータを用いて実行することもできるし、またシステム20の別の計算機能に統合することもできる。これに加えて、または別法では、少なくとも一部の位置決定機能およびイメージ処理機能は、専用のハードウエアを用いて行うことができる。」
d 「【0082】
超音波イメージのセットを取得したら、イメージプロセッサが、手動タグ付けステップ52で、1または複数のこれらのイメージを医師に示す。別法では、ステップ52はステップ50に含めることができる。イメージの濃淡により、医師が、心室、血管、および弁の壁部などの構造を特定することができる。医師は、超音波イメージを精査して、標的構造の壁部または境界を表す目的の輪郭を特定する。医師は、トラックボールなどのポインティング装置45を用いて目的の輪郭を通常はタグ付けして、ディスプレイ44に目的の輪郭をマークする(図5に、例示的なタグ付けされた2Dイメージが示されている)。ポインティング装置は、別法では、ディスプレイ44に接続されたマウス、タッチスクリーン、タッチタブレット、または任意の他の好適な入力装置とすることができる。ディスプレイ44とポインティング装置45の組合せが、対話式ディスプレイ、すなわちユーザーにイメージを示してコンピュータがイメージのマークの位置を求めることができるようにユーザーがイメージにマークを付けることができる手段の一例である。他のタイプの対話式ディスプレイも当業者には明らかであろう。
【0083】
医師は、この要領でイメージのセットから1または複数のイメージの輪郭にタグ付けすることができる。医師はまた、行っている医療処置に適した、様々な解剖学的な印やアーチファクトをタグ付けすることもできる。医師は、アブレーションなどの後の医療処置で接触または進入すべきではない「進入禁止」部分を同様に特定することができる。
【0084】
一部の実施形態では、目的の輪郭が半自動でタグ付けされる。例えば、イメージプロセッサは、好適な輪郭検出ソフトウエアを実行することができる。この実施形態では、ソフトウエアは、自動的に1または複数の2Dイメージを検出し、このようなイメージに輪郭を記す。次いで、医師は、対話式ディスプレイを用いて自動的に検出される輪郭を再検討し編集する。」
e 「【0086】
次いで、イメージプロセッサが、3D座標割当てステップ56で、イメージのセットで特定された目的の輪郭に3D座標を割り当てる。ステップ52では医師が2Dイメージにタグをマークするが、3D空間におけるこれらのイメージの平面の位置および向きは、ステップ50でイメージとともに保存されたポジション情報から分かる。したがって、イメージプロセッサは、2Dイメージにおける各ピクセルまたは任意のピクセル、特にタグ付けされた輪郭に対応するピクセルの3D座標を決定することができる。座標を割り当てる場合、イメージプロセッサは通常、上記したように、ポジションセンサと超音波センサと間のポジションおよび向きのオフセットを含む保存された較正データを用いる。
【0087】
一部の実施形態では、目的の輪郭は離散した点を含む。このような実施形態では、位置決定プロセッサが、このような離散した各点に対して3D座標を割り当てる。加えて、位置決定プロセッサは、心室などの表面または容積部(表面によって画定される)の離散した点に対して3D座標を割り当てる。したがって、1または複数の2D超音波イメージまたはこの超音波イメージの3Dモデルに対する事前取得イメージの重ね合わせを、輪郭、離散した点、表面、または容積部を用いて行うことができる。
【0088】
一部の実施形態では、イメージプロセッサは、3D空間に適切に配置された1または複数の2D超音波イメージを表示する(例えば図6を参照)。任意で、目的の輪郭を、適切に配置された2Dイメージにマークすることができる。」
f 「【0089】
イメージプロセッサは、3D再構築ステップ58で、標的構造の3D骨格モデルを生成する。イメージプロセッサは、3D空間における一部または全ての2Dイメージからタグ付けされた輪郭を整列させて骨格モデルを作成する(図7の例示的な骨格モデルを参照)。一部の実施形態では、イメージプロセッサは、「ワイヤメッシュ」型のプロセスを用いて、骨格モデルに対して表面を作成し、標的構造の立体3D形状を生成する。イメージプロセッサは、生成された3Dモデル上に目的の輪郭を投射する。このモデルは通常、医師に示すためにディスプレイ44に表示される(図8‐図10の例示的な3Dモデルを参照)。」
g 「【0094】
ここに開示した方法を実行する場合、ステップ50-60の順番は変更することができ、これらのステップを対話式に繰り返すことができる。例えば、医師が、第1の連続した2Dイメージを取得し、これらに手動でタグを付けることができる。次いで、医師は、戻って別のイメージを取得し、第1の連続したイメージのタグ付けされた輪郭を用いて、システムによってこれらの別のイメージを自動的にタグ付けさせることができる。次いで、医師は、完全な3Dモデルを作成し、これを精査することができる。一部分でこのモデルが十分に正確でない場合、医師は、3Dモデルを正確にするべく追加のイメージのセットを取得する決定を行うことができる。これに加えて、または別法では、医師は、イメージまたは3Dモデルを精査した後、1または複数のイメージの手動のタグ付けを変更するか、または自動タグ付けプロセスを無効にする決定を行うことができる。標的構造の高品質の3Dモデルを得るために、医師が、ステップ50-60を他の順序で行うこともできる。これに加えて、または別法では、これらのステップの一部を、例えば、ロボット制御下で自動的に行うことができる。」
h 「【0098】
図4は、カテーテル28が特定のポジションで、超音波トランスデューサによって取得された2D超音波イメージを示している。このイメージは、心臓の異なる2つのフィーチャー80および82を示している。この形態の複数の超音波イメージは、図3の方法の超音波スキャニングステップ50に従って、カテーテルの異なるポジションで取得した。
【0099】
図5は、フィーチャー80および82がそれぞれ、輪郭84および86でマークされた図4の超音波イメージを示している。図4は、右心房に配置されたカテーテルを撮ったものである。この2D超音波イメージでは、フィーチャー80は僧帽弁を表し、フィーチャー82は大動脈弁を表している。これらの輪郭は、上記した図3の方法の手動タグ付けステップ52に従ってユーザーによって手動でタグ付けされた。輪郭84および86は、3D動作容積部の解剖学的構造をマークし、医師が医療処置の際にこのような構造を容易に確認することができる。」
i 「【0107】
図7は、標的構造の骨格モデルを示している。この例では、標的構造は、上記した図3の方法の3D再構築ステップ58に従って、イメージプロセッサで生成される右心室を含む。骨格モデルを生成する前に、イメージプロセッサは、自動タグ付けステップ54に従って、タグ付けされていない超音波イメージに輪郭84および86をトレースし再構築する。図7は、3D空間に投射された元の輪郭84および86を示している。輪郭88は、医師によってタグ付けされた他の輪郭からイメージプロセッサによって自動的に再構築された。
【0108】
図8は、イメージプロセッサによって生成された右心室の立体3Dモデルを示している。一部の輪郭88が立体モデルにオーバーレイされている。加えて、左心室を示す輪郭89も図面で見ることができる。右心室の表面が、上記した図3の方法のオーバーレイステップ60に従って、電極46で測定された電気活性地図90にオーバーレイされている。この地図は、異なる色で異なる電位の値を示している(図8では、異なった陰影パターンで示している)。」
j 図1
k 図2
l 図3
m 図4
n 図5
o 図7
p 図8
(イ)引用発明1
a 上記(ア)bから理解できる事項
(a)上記(ア)bの段落【0045】における「解剖学的構造」に関して、上記(ア)dの段落【0082】において、「標的構造」との語が用いられる文の前文で「心室、血管、および弁の壁部などの構造を特定する」と記載されていることからすると、「標的」とされる「解剖学的構造」に「心室」が含まれることは明らかである。
(b)上記(ア)bの段落【0045】における「超音波センサを用いて」「取得させ」る「超音波イメージ」は、上記(ア)eの段落【0098】の「超音波トランスデューサによって取得された2D超音波イメージ」との記載からすると、「2D超音波イメージ」を指すことは明らかである。
(c)上記(ア)bの段落【0045】における「目的の輪郭をマークさせ」ることは、コンピュータがプログラム命令を読み取るときに実行される一連の処理のうちの1つであるから、「自動的に」行われるものであることは明らかである。このことは、上記(ア)aの段落【0027】、上記(ア)dの段落【0084】、上記(ア)gの段落【0094】における、輪郭検出ソフトウエア等を用いて「自動的に」輪郭がタグ付けされる旨の記載からも裏付けられる。
(d)上記(a)ないし(c)のとおりであるから、引用例1から、「コンピュータが、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されたプログラム命令を読み取ると、超音波センサのそれぞれの空間位置で超音波センサを用いて心室である解剖学的構造の2D超音波イメージを取得させ、空間位置における超音波センサの位置および向きの座標を測定させ、2D超音波イメージの心室である解剖学的構造のフィーチャーを指す目的の輪郭を自動的にマークさせ、測定された位置および向きの情報に基づいて3D空間に目的の輪郭および2D超音波イメージを表示させる、コンピュータソフトウエア」との事項が読み取れる。
b 上記(ア)dから理解できる事項
(a)上記(ア)dの段落【0082】における「イメージ」も、上記a(b)と同様に、「2D超音波イメージ」を指すものであるといえる。
(b)上記(ア)dの段落【0082】の「標的構造」に「心室」が含まれることは、上記a(a)で説示したとおりであるとともに、「壁部または境界」は、「表面」を含意するものであるから、上記(ア)dの段落【0082】の「標的構造の壁部または境界」は、「心室の表面」であるといえる。このことは、上記(ア)eの段落【0087】にも、「心室」「の表面」との記載からも裏付けられる。
(c)上記(a)および(b)のとおりであるから、引用例1から、「複数の2D超音波イメージにおいて、濃淡により、心室の構造を自動的に特定するとともに、心室の表面を表す目的の輪郭を自動的にマークさせ」るとの事項が読み取れる。
c 上記(ア)eから理解できる事項
上記(ア)eの段落【0087】の記載に鑑みると、引用例1から、「心室の表面により画定される心室の容積部に対して3D座標を割り当てさせ」るとの事項が読み取れる。
d 上記(ア)fから理解できる事項
上記(ア)fの段落【0089】の記載に鑑みると、引用例1から、「目的の輪郭全てを整列させて作成した骨格モデルに対して、心室の表面を作成し、心室の立体3D形状を生成させる」るとの事項が読み取れる。
e 上記aないしdを踏まえつつ、上記(ア)aないしpの記載内容を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「コンピュータが、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されたプログラム命令を読み取ると、超音波センサのそれぞれの空間位置で超音波センサを用いて心室である解剖学的構造の2D超音波イメージを取得させ、空間位置における超音波センサの位置および向きの座標を測定させ、2D超音波イメージの心室である解剖学的構造のフィーチャーを指す目的の輪郭を自動的にマークさせ、測定された位置および向きの情報に基づいて3D空間に目的の輪郭および2D超音波イメージを表示させる、コンピュータソフトウエアであって、
複数の2D超音波イメージにおいて、
濃淡により、心室の構造を自動的に特定するとともに、心室の表面を表す目的の輪郭を自動的にマークさせ、
心室の表面により画定される心室の容積部に対して3D座標を割り当てさせ、
目的の輪郭全てを整列させて作成した骨格モデルに対して、心室の表面を作成し、心室の立体3D形状を生成させる、
コンピュータソフトウエア。」
(ウ)引用例2
本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-11581号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。
a 「【0017】
送受信部12は、対象組織である心臓左室を含む空間内にプローブ10を介して超音波を送受波する。そして、心臓左室を含む三次元空間内における複数のエコーデータを各時相のボリューム毎に取得して三次元データメモリ14に記憶する。反転二値化処理部16は、三次元データメモリ14に納められた各ボクセルのエコーデータのエコー値に対して反転処理および二値化処理を施す。つまり、比較的エコー値が小さい左室内の心腔部に相当するボクセルを高輝度値のボクセルとし、比較的エコー値が大きいその他の部位に相当するボクセルを低輝度値のボクセルとする。」
(エ)引用例3
本願の優先権主張日前に頒布され、特開平5-137728号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。
a 「【0002】
【従来の技術】従来の超音波診断装置において或る診断部位について三次元画像を作成するには、上記診断部位について例えば数10スライス分の白黒断層像(Bモード像)を収集し、これらの白黒断層像上で明るく光って見える血管壁や心筋壁などをエッジ抽出という画像処理手法を用いてその境界を検出し、これらの境界のデータをボクセル法などの三次元画像作成手法により数10スライス分つなぎ合わせることにより、血管や心臓などの三次元画像を作成していた。」
b 「【0013】次に、このように構成された超音波診断装置を使用して実施する三次元画像作成方法について、図1を参照して説明する。まず、図2に示す超音波送受信部2で探触子1を駆動し、図1(a)に示すように、被検体の診断部位の例えば血管10に対して適宜の間隔でずらしながら、数スライスから数10スライス分の断層像I1,I2,…,Inを撮像する。このとき、上記各断層像I1~Inの血流部分B1,B2,…,Bnについては例えばドプラ効果を利用して血流成分を検出し、図2に示すCFM像作成回路4で上記血流部分B1~Bnに色を付けて表示するCFM像を作成する。
【0014】このようにして得られた各断層像I1~Inは、図1(b)に示すように、血管10内の血流部分B1~Bnのみに色が付けられて、それらの画像データは図2に示す画像メモリ5に格納される。その後、この画像メモリ5から上記断層像I1~Inの画像データを読み出し、図2に示す三次元画像演算作成回路8に取り込む。そして、この三次元画像演算作成回路8により、上記各断層像I1~Inのデータを処理して血流の有る部分(B1~Bn)とその周りの血流の無い部分との境界を検出し、これらの境界を各断層像I1~In内における血管内壁W1,W2,…,Wnとする。さらに、図1(b)に示すように、これらの血管内壁W1~Wnのデータを取り出し、例えばボクセル法などの三次元画像作成手法により数10スライス分をつなぎ合わせる。これにより、血管内壁の三次元画像Wが作成される。」
c 「【0016】なお、図1(b)に示すように、各断層像I1~Inについて検出した血管内壁W1~Wnのデータを用いて、血管10の周長及び断面積などの諸元を自動的に計測することもできる。また、図1においては、血管10についてその内壁を検出し血管内壁の三次元画像Wを作成、表示する場合について説明したが、例えば心臓の内壁についても同様の手法で三次元画像を作成し表示することができる。」
d 図1
(オ)引用例4
本願の優先権主張日前に頒布され、特開平7-47066号公報(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。
a 「【0012】超音波観測を行う際には、超音波プローブ3を体腔内へ挿入し、システムコントローラ10の制御に基づき送受信部5及び駆動部4によって超音波プローブ3をリニアラジアル方向に駆動して生体内へ超音波を送受波することによって、体腔内の3次元領域のエコーデータが取り込まれるようになっている。得られたエコーデータは、フレームメモリ6に格納され、DSC7,D/Aコンバータ8を経てモニタ9にリアルタイムのエコー画像(超音波観察画像)として表示される。また同時に、DSC7の後段からデジタル信号として連続した複数の2次元画像(体腔断面画像)データの形で画像処理部2へ送られるようになっている。なおこのとき、2次元画像データの画像サイズや画像間の距離などの付帯データも同時に画像処理部2へ送られる。」
b 「【0017】まず、物体表面抽出処理として、ステップS1で、画像データ記憶装置13に格納されている3次元領域のエコー画像データ(3次元データ)を付帯データと共に読み出し、ステップS2で、図3の32に示すように、連続した2次元画像(体腔断面画像)を操作用端末16等で指定した枚数分表示する。」
c 「【0018】次いで、ステップS3で、図3の33に示すように、体腔断面画像における体腔内の水(または血液,体液等)の信号を除去して体腔表面位置を抽出する。水の信号は、体腔壁面の信号より低い値を持つので、適切なしきい値を設定することで水の信号を除去して体腔表面の位置を抽出することができる。そして、全ての2次元画像データにおいて体腔表面位置の抽出を行った後に、ステップS4で、該抽出した体腔表面位置及び除去した水信号の位置(以下、水信号位置と称する)を主記憶装置12等の記憶装置へ書き込む。」
d 「【0021】次いで、ステップS7で、ステップS3において抽出された水信号位置データのうちで、ステップS5で設定された3次元表示範囲にある部分のデータのみを図3の37Aに示すように切り出した後、連続的な値となるよう補間して、ステップS6と同様に図3の37Bに示すように2次元投影変換を行うことにより、図3の37Cの斜線部のように3次元表示された画像上における水信号位置範囲の座標を抽出し、主記憶装置12等の記憶装置へ書き込む。」
e 「【0022】次に、画像合成処理として、ステップS8で、ステップS3において抽出された体腔表面データのうちで、ステップS5で設定された3次元表示範囲にある部分のデータのみを図3の38に示すように切り出した後、連続的な値となるように補間する。」
f 「【0027】すなわち、体腔表面についてはサーフェスモデル法によって表面の2値化されたデータのみを扱って3次元表示を行うようにし、体腔断面においてのみ階調性を有する3次元データを基に3次元表示を行うようにしたため、処理時間を短縮できると共に、エコーデータが本来有する物体情報に基づく階調性を失うことなく良好な3次元表示を行うことができる。」
g 「【0030】なお、本実施例では体腔内の水信号を除去して表面を抽出したが、水以外の血液や体液などの場合でも同様に体腔表面を抽出可能である。」
h 図1
i 図2
j 図3
(カ)引用例5
本願の優先権主張日前に頒布され、特開2006-346248号公報(以下、「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。
a 「【0025】
S101では、生体内の三次元領域に対して超音波が送受波され、これによってボリュームデータが取得される。ボリュームデータは三次元空間内における各アドレスで取得されたエコーデータによって構成される。ここで、各アドレスはボクセルとして位置づけられ、各エコーデータはボクセルデータに相当する。ボリュームデータは、例えば、2Dアレイ振動子を有する超音波探触子を用いることによって取得でき、あるいは、1Dアレイ振動子を機械的に走査する超音波探触子によって取得することができる。」
b 「【0026】
S102では、ボリュームデータに対して二値化処理が施される。すなわち、三次元空間内には組織部と腔部とが含まれ、それらをデータ上、弁別するために二値化処理が実行される。例えば、所定のエコーレベルを基準としてそれより大きな値を有するエコーデータが組織部のエコーデータであるとみなされ、それよりも小さなエコーデータが腔部(液体部)のエコーデータであるとみなされる。その場合、基準となるレベルは適宜可変設定するのが望ましい。本実施形態においては、腔部のエコーデータに対して値0が与えられ、組織部のエコーデータに対して値1が与えられる。その逆であってもよい。二値化処理に先立って、ノイズ除去や平滑化などの処理をボリュームデータに対して施してもよい。
【0027】
図2の(A)には三次元空間10内において取得されたボリュームデータに対して二値化処理を実行した結果が模式図と示されている。符号12は組織部(臓器)を表しており、符号14は組織部12内の腔部を表している。腔部14には例えば体液あるいは血液などが存在する。液体からのエコーデータのレベルは一般に小さく、これに対し、組織部12からのエコーデータのレベルは一般に大きいため、上記の二値化処理によって組織部12と腔部14とを弁別することが可能である。組織部12は、本体部分12Aとその内壁面から腔部14側へ突出した突起12Bとを有する。ここで、組織部12は例えば胆嚢であり、突起12Bは胆嚢に存在するポリープである。このポリープはイボ状あるいはキノコ状などの各種の形体を有しているが、一般にその根本部位すなわち付け根部分は組織内壁から立ち上がっておりあるいはくびれ形状を有している。山状に盛り上がるポリープなどもその付け根を判定可能な限りにおいて本発明に係る突起抽出の対象となる。
【0028】
二値化処理後のボリュームデータに対しては以下に説明する境界面抽出処理が実行されるが、それに先だって、ノイズ除去や滑らか処理などを施すようにしてもよい。例えばそのような処理については上記の特開2004-159997号公報などにも記載されている。」
c 「【0029】
図1に示すS103においては、組織部と腔部との間の境界面が抽出される。すなわち、上記のS102において二値化処理を行った結果として組織部のデータと腔部のデータとが識別されているため、それに基づいて境界面の抽出を行える。具体的には、図2の(B)で示すように、三次元空間内において、組織部12と腔部14との間の境界面16がデータ処理によって抽出される。この場合においては、公知の三次元空間フィルタを用いることが可能である。そのようなフィルタとしては、水平/垂直方向のエッジを抽出するSobelフィルタ、水平方向又は垂直方向のエッジを抽出するPrewittフィルタ、二次微分(差分)を利用したラプラシアンフィルタ、注目ボクセルを基準とした8方向の内で特定方向のエッジを抽出するグラジエントエッジ強調フィルタ、水平/垂直/対角線方向のエッジを抽出するシフト差分エッジ抽出フィルタ、等が知られている。
【0030】
本実施形態では、各データが二値のいずれかの値に規格化処理されていることを前提として三次元的な微分方法を用いて境界検出を行っている。具体的には、図3に示すような三次元フィルタ20が利用されている。このフィルタ20は、中心のボクセル22の値がHすなわち1であり、その周辺の六近傍のボクセルの中に1つでも値Lすなわち0が存在する場合にはその中心のボクセルを境界面上のボクセルであるとみなすものである。ボリュームデータに対して図3に示されるようなフィルタ20をスキャンし、各データに対してフィルタ処理を実行をすることにより、最終的に境界面上における各ボクセルに対して値1が与えられ、それ以外のボクセルについては値0が与えられることになる。これによって境界面の抽出がなされる。」
d 図1
e 図2
f 図3
(キ)引用例6
本願の優先権主張日前に頒布され、特開2002-306480号公報(以下、「引用例6」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。
a 「【0039】(3-1)概 略
ここで、3次元的な形状再構成の流れを説明する。図4が3次元的な形状を再構成する流れを説明する図である。
【0040】例えば、図4(a)のような直方体のボクセルデータの再構成のために、2つの方法がある。
【0041】第1の方法は、図4(b)のようにある面に平行な複数のスライスを考え、それぞれのスライスで2次元の断面像を作成し、それらの2次元画像に対して輪郭線抽出を行う方法である。
【0042】第2の方法は、図4(c)のようにある軸を中心とした放射線状のスライスを考え、それぞれのスライスで2次元の断面像を作成し、それらの2次元画像に対して輪郭線抽出を行う方法である。
【0043】第1の方法(図4(b))のようなスライスを考える場合は、図4(d)のように輪郭線を抽出し、図4(f)のように輪郭線をスライスの位置に配置して3次元的な形状を復元する。
【0044】第2の方法(図4(c))のようなスライスを考える場合にも、図4(c)のように輪郭線を抽出し、図4(f)のように輪郭線をスライスの位置に配置して3次元的な形状を復元する。
【0045】なお、スライスとスライスの間の輪郭線については、隣接しているスライスの輪郭線を補間してもよい。」
b 「【0049】例えば、動的輪郭線を用いる場合には、図5(a)のように画像上に複数の制御点を配置し、画素の輝度勾配の大きい画素を領域のエッジとして、各制御点がエッジ上に到達するように探索を進める。」
c 「【0065】画像表示部3では、抽出された輪郭線形状と断面像を表示したり、再構成された3次元形状をワイヤーフレーム・モデルやサーフェースレタリング・モデルで表示したりすることもできる。これによりユーザは表示結果を見て、対象としている臓器の状態を観察することができる。」
d 図4
(ク)周知技術1
a 上記(ウ)、(オ)及び(カ)の記載内容を総合すると、引用例2、4及び5には、以下の周知技術1が記載されている。
「超音波イメージにおいて、信号レベルが、所定の閾値未満の部分を身体の中空部、閾値以上の部分を組織であるとして、身体の中空部と組織を識別するとともに、両者の境界を決定すること」
(ケ)周知技術2
a 上記(エ)ないし(キ)の記載内容を総合すると、引用例3ないし6には、以下の周知技術2が記載されている。
「身体の中空部の3次元形状データを求め、求められた身体の中空部の3次元形状データに基づいて身体の中空部の表面を特定すること」
イ 対比及び判断
(ア)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「コンピュータ読み取り可能な媒体」、「保存」、「プログラム命令」は、それぞれ、本件補正発明の「コンピュータ読み取り可能な媒体」、「記録」、「プログラム命令」に相当する。
また、一般に「コンピュータ」は、「プロセッサ」を備えるものであるから、
引用発明1の「コンピュータが、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されたプログラム命令を読み取る」ことは、
本件補正発明の「プログラム命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な媒体に記録され、前記命令は、プロセッサにより読み取られ」ることに相当するといえる。
そして、引用発明1の「コンピュータソフトウエア」と、本件補正発明の「コンピュータソフトウェア」とは、「プログラム命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な媒体に記録され、前記命令は、プロセッサにより読み取られた際」に、一連の各種処理を実行するものという点で共通する。
b 引用発明1の「それぞれの空間位置」、「2D超音波イメージ」、「取得」は、それぞれ、
本件補正発明の「3D基準座標系内で異なるそれぞれの位置」、「二次元(2D)超音波画像」、「受信」に相当する。
また、引用発明1の超音波測定の対象は、「生体」であるので、
引用発明1の「心室」は、本件補正発明の「生きている被験者の身体内の腔」に相当する。
してみると、引用発明1の「超音波センサのそれぞれの空間位置で超音波センサを用いて心室である解剖学的構造の2D超音波イメージを取得させ」ることは、
本件補正発明の「3D基準座標系内で異なるそれぞれの位置を有する、生きている被験者の身体内の腔の複数の二次元(2D)超音波画像を受信させ」ることに相当する。
c 引用発明1の「濃淡」は、本件補正発明の「グレースケール値」に相当する。
引用発明1の「心室の構造を」「特定」し、「輪郭を」「マーク」することは、2D超音波イメージ中で、心室の組織と容積部を識別、分類することに他ならないから、
引用発明1の「複数の2D超音波イメージに、濃淡により、心室の構造を自動的に特定するとともに、心室の表面を表す目的の輪郭を自動的にマークさせ」ることと、
本件補正発明の「それぞれの前記2D超音波画像内で前記腔の内部内の位置に対応するピクセルを識別させ」、「前記プロセッサが、閾値を設定し、指定された閾値未満のそれぞれのグレースケール値を有する前記ピクセルを、前記腔の前記内部に属しているとして分類する」ことは、
「それぞれの前記2D超音波画像内で前記腔の内部内の位置に対応するピクセルを識別させ」、「前記プロセッサが、グレースケール値により前記ピクセルを、前記腔の前記内部に属しているとして分類する」ことという点で共通する。
d 引用発明1の「心室の容積部」、「3D座標を割り当て」ることは、それぞれ、
本件補正発明の「前記腔の前記内部に対応する容積」、「3D基準座標系内に登録」することに相当する。
また、引用発明1の「心室の表面」は、「複数の2D超音波イメージ」から「輪郭を自動的にマーク」することによって得られるものであるから、「心室の表面」により画定される「心室の容積部」も、「複数の2D超音波イメージ」から得られるものであるといえる。
そして、引用発明1の「心室の容積部に対して3D座標を割り当てさせ」ることによって、「心室の容積部」が特定されることは明らかである。
してみると、引用発明1の「心室の表面により画定される心室の容積部に対して3D座標を割り当てさせ」ることは、
本件補正発明の「前記複数の前記2D画像からの前記識別ピクセルを前記3D基準座標系内に登録して、前記腔の前記内部に対応する容積を規定させ」ることに相当する。
e 引用発明1の「心室の表面」は、「心室の容積部」を「画定」するものであるから、本件補正発明の「容積の外側表面」に相当する。
そうすると、引用発明1の「目的の輪郭全てを整列させて作成した骨格モデルに対して、心室の表面を作成し、心室の立体3D形状を生成させる」ことと、
本件補正発明の「前記腔の内部内の位置に対応する複数のピクセルを収集することにより、そして、前記複数のピクセルの境界となる外側表面を見出すことにより、前記腔の内面を表す前記容積の外側表面を再構築させ」ることは、
「前記複数のピクセルの境界となる外側表面を見出すことにより、前記腔の内面を表す前記容積の外側表面を再構築させ」ることという点で共通する。
f 以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点1及び相違点2で相違する。
(一致点)
「コンピュータソフトウェアであって、プログラム命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な媒体に記録され、前記命令は、プロセッサにより読み取られた際、前記プロセッサに、3D基準座標系内で異なるそれぞれの位置を有する、生きている被験者の身体内の腔の複数の二次元(2D)超音波画像を受信させ、
それぞれの前記2D超音波画像内で前記腔の内部内の位置に対応するピクセルを識別させ、前記複数の前記2D画像からの前記識別ピクセルを前記3D基準座標系内に登録して、前記腔の前記内部に対応する容積を規定させ、
前記複数のピクセルの境界となる外側表面を見出すことにより、前記腔の内面を表す前記容積の外側表面を再構築させ、
前記プロセッサが、グレースケール値により、前記腔の前記内部に属しているとして分類するよう構成されている、コンピュータソフトウェア。」
(相違点1)
腔の内部に属しているか否かを分類する際に、
本件補正発明では、「閾値を設定し、指定された閾値未満のそれぞれのグレースケール値を有する前記ピクセルを、前記腔の前記内部に属しているとして分類する」のに対して、
引用発明1は、2D超音波イメージの「濃淡」を利用してはいるものの、「閾値」を用いるのか明らかでないとともに、「濃色(暗色)」のピクセルを、心室の容積部と特定するのか、あるいは、心室の組織と特定するのかが明らかでない点。
(相違点2)
「容積の外側表面を再構築」する際に、
本件補正発明では、「前記腔の内部内の位置に対応する複数のピクセルを収集することにより」、「前記複数のピクセルの境界となる外側表面を見出す」のに対して、
引用発明1は、「目的の輪郭全てを整列させて作成した骨格モデルに対して、心室の表面を作成し」ている点。
(イ)判断
a 相違点1について
(a)引用発明1は、「2D超音波イメージ」の「濃淡により、心室の構造を自動的に特定する」ものである。
ここで、強い反射が生じる「組織」からの受信信号レベルは強く、2D超音波イメージ中の「淡色(明色)」となり、反射がほとんど生じない「中空部」からの受信信号レベルは弱く、2D超音波イメージ中の「濃色(暗色)」となることは、優先権主張日前の技術常識である(実際に、引用例1の図4で、僧帽弁、大動脈弁の開閉する部分(中空部)が「濃色(暗色)」、僧帽弁、大動脈弁の周壁部(組織)が「淡色(明色)」となっていることからも裏付けられる。)。
してみると、引用発明1の2D超音波イメージにおいても、「組織」が「淡色(明色)」、「中空部」が「濃色(暗色)」となっていると解するのが合理的であり、引用発明1は、「2D超音波イメージ」の「濃淡により、心室の構造を自動的に特定する」際に、「濃色(暗色)」のピクセルを、心室の中空部、すなわち、心室の容積部であると特定しているものと認められる。
(b)引用発明1の「心室の構造を自動的に特定」し、「輪郭を自動的にマーク」することは、コンピュータによって「自動的」に行われる画像処理であるところ、画像上で心室の組織と容積部の境を特定するためのものであって、コンピュータによる画像処理に適した「客観的な指標」のひとつである「濃淡のしきい値」を利用して当該画像処理を行うようにすることは当業者が適宜なし得たことである。
(c)上記(a)及び(b)のとおりであるから、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。
(d)さらに言えば、上記ア(ク)で説示した「超音波イメージにおいて、信号レベルが、所定の閾値未満の部分を身体の中空部、閾値以上の部分を組織であるとして、身体の中空部と組織を識別するとともに、両者の境界を決定すること」が周知技術であることに鑑みると、
引用発明1において、身体の中空部と組織を識別する超音波イメージの処理という点で技術分野、機能が共通する周知技術1を参考にして、所定の閾値を用いるとともに、所定の閾値未満のピクセルを、身体の中空部、すなわち、心室の容積部として、特定することは、やはり当業者が適宜なし得たことであると言わざるを得ない。
したがって、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
b 相違点2について
(a)引用発明1の「心室の表面を表す目的の輪郭」とは、「心室の容積部」と「心室の組織」の「境界面」であり、「心室の容積部」に属する部分であるとも、「心室の組織」に属する部分であるともいえる。
(b)引用発明1の「心室の表面を表す目的の輪郭」が、「心室の容積部」に属する部分であると解した場合、
引用発明1の「目的の輪郭全てを整列させて作成した骨格モデル」は、「心室の容積部」の一部分である「輪郭」を集めて作成されたものであるから、「心室の容積部」の一部分のピクセルを集めて作成されたものであるといえる。
してみると、引用発明1は、「心室の容積部」の一部分のピクセルを集めて作成された「骨格モデル」に対して、「心室の表面を作成し」ているものであるから、
上記解釈に基づく場合に限れば、相違点2は実質的な相違点ではない。
(c)他方、引用発明1の「心室の表面を表す目的の輪郭」が、「心室の組織」に属する部分であると解した場合、本件補正発明と引用発明1とは、相違点2で相違することになる。
しかしながら、上記ア(ケ)で説示した「身体の中空部の3次元形状データを求め、求められた身体の中空部の3次元形状データに基づいて身体の中空部の表面を特定すること」が周知技術であることに鑑みると、
引用発明1において、身体の中空部と組織を識別する超音波イメージの処理という点で技術分野、機能が共通する周知技術2を参考にして、「目的の輪郭全てを整列させて作成した骨格モデル」を用いる代わりに、「身体の中空部」に当たる「心室の容積部」のものであって、既に求められている「3D座標」に基づいて、「心室の表面を作成」することは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
c また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明1、周知技術1及び周知技術2から予測される範囲内であって、格別なものでない。
(2)上記(1)とおりであるから、本件補正発明は、「引用発明1」、「引用発明1及び周知技術1」、「引用発明1及び周知技術2」または「引用発明1、周知技術1及び周知技術2」に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定のまとめ
よって、本件補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成26年8月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであって、そのうちの請求項11に係る発明は、上記第2の1(1)アで示したとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)
2 引用例及びその記載事項
原査定の拒絶理由で引用された引用例1及び引用例2並びにその記載事項は、上記第2の2(1)アに記載したとおりである。
3 対比及び判断
本願発明は、「前記プロセッサが、閾値を設定し、指定された閾値未満のそれぞれのグレースケール値を有する前記ピクセルを、前記腔の前記内部に属しているとして分類するよう構成されてい」るとの限定を、上記第2で検討した本件補正発明から省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2(1)イで検討したとおり、「引用発明1」、「引用発明1及び周知技術1」、「引用発明1及び周知技術2」または「引用発明1、周知技術1及び周知技術2」に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
本願発明も、同様の理由により、「引用発明1」、「引用発明1及び周知技術1」、「引用発明1及び周知技術2」または「引用発明1、周知技術1及び周知技術2」に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-000972