特許拒絶査定不服審判
2015-016886
透明層複合体アセンブリ
- 審判番号
- 2015-016886
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-535400外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年09月14日
- 審決日
- 2017年04月18日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .161-WZ (C03C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-535400「透明層複合体アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月 3日国際公開、WO2012/055860、平成25年12月 9日国内公表、特表2013-543832〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年10月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月26日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成25年 6月26日に国際出願翻訳文提出書により、明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成26年 8月 1日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年11月 5日に手続補正書及び意見書が提出されたが、平成27年 5月 7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年 9月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審にて平成28年 9月 1日付けの拒絶理由を通知したところ、平成28年12月 6日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成28年12月 6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
導電性透明酸化物層と、半導体層と、屈折率ndが>1.6であり、弾性係数が60×103N/mm2以上、最大で120×103N/mm2であるガラスを含む基板層とを含む透明層複合体アセンブリであって、前記ガラスは、少なくとも0.5wt%、最大で71wt%の含有率のSiO2を含み、前記ガラスにおけるB2O3の含有率は50wt%を超えないものであり、かつ、前記ガラスにおけるAl2O3の含有率は7wt%を超えないものである、透明層複合体アセンブリ。」
第3 原査定の拒絶の理由
当審拒絶理由通知において、記載不備があるために、その判断を留保した原査定の拒絶の理由の概略は以下のとおりである。
本願発明は、その優先権の基礎とされた先の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開(特開2011-213568号)がされた特許出願(特願2010-154769号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、まとめて「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
第4 先願明細書の記載(抜粋)及び引用発明
1.先願明細書の記載の抜粋(当審において関連箇所に下線を付記する)
「【0003】従来、これらの利点を活かし、有機ELディスプレイに関する研究開発が盛んに行われてきたが、近年では照明用途の研究開発も活発化している。
【0004】有機EL照明は、約0.5~0.7mm厚の基板の上に、ITO、IZO等の透明電極、有機発光層、光反射用の金属膜からなる背面電極が順次積層された構成を有している。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】有機EL照明の効率を高めるためには、有機発光層から発生する光を効率良く外部に取り出すことが重要である。しかし、有機発光層から発生した光は、基板-透明電極界面で反射して有機発光層内に戻り易い。このため、外部へ取り出すことができる光は、せいぜい15~20%であることが知られている。」
「【0019】本発明のガラス板は、照明デバイスや有機ELデバイスの基板、その他の構成要素として好適である。」
「【発明を実施するための形態】
【0023】本発明のガラス板において、屈折率ndは1.55以上であり、1.58以上、1.60以上、1.62以上、1.65以上、1.68以上、1.70以上、1.72以上、特に1.75以上であることが好ましい。屈折率ndが1.55未満になると、ITO-ガラス板界面における反射によって、有機発光層もしくはITOに光が閉じ込められる確率が高まり、結果として、光取り出し効率が低下する。一方、屈折率ndが2.3以上になると、空気-ガラス板界面における反射によって、光の取り出し効率が低下し易くなる。よって、屈折率ndは2.3以下、2.2以下、2.1以下、特に2.0以下が好ましい。なお、屈折率ndは、ガラス組成を調整することによって高めることができる。」
「【0048】B2O3の含有量は0~20%である。B2O3の含有量が多くなると、屈折率ndやヤング率が低下し易くなる。よって、B2O3の含有量は17%以下、15%以下、特に11%以下が好ましい。なお、B2O3を添加すれば、耐失透性を高めることができる。よって、耐失透性が不十分の場合は、B2O3を1%以上、2%以上、3%以上、特に5%以上添加してもよい。」
「【0051】CaOの含有量は0~15%が好ましい。CaOの含有量が多くなると、屈折率nd、密度、熱膨張係数が上昇する傾向にあるが、その含有量が15%より多くなると、ガラス組成のバランスが損なわれて、ガラスが失透し易くなる。よって、CaOの含有量は12%以下、10%以下、9%以下、特に8.5%以下が好ましい。一方、CaOの含有量が少なくなると、溶融性、ヤング率、屈折率ndが低下し易くなる。よって、CaOの含有量は0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、特に5%以上が好ましい。」
「【0084】表3~10は、本発明の実施例(試料No.12~78)を示している。
【0085】【表3】
」
2.引用発明の認定
先願明細書には、有機EL照明、有機ELディスプレイ等の有機ELデバイスに用いるガラス基板について記載されており(【0019】)、さらに、試料No.12には、組成がSiO2:42.0質量%、Al2O3:5.0質量%、B2O3:4.0質量%、CaO:5.8質量%、SrO:10.0質量%、BaO:33.0質量%及びSnO2:0.2質量%であり、屈折率が1.61であるガラス基板が記載されている(【0085】)。
また、先願明細書には、有機ELデバイスが、ガラス基板、ITO等の透明電極及び有機発光層を備えていることも記載されている(【0003】~【0005】)。
してみると、先願明細書には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「透明電極と、有機発光層と、屈折率が1.61のガラス基板とを含む有機ELデバイスであって、前記ガラス基板に、SiO2が42.0質量%、Al2O3が5.0質量%、B2O3が4.0質量%、CaOが5.8質量%、SrOが10.0質量%、BaOが33.0質量%及びSnO2が0.2質量%含まれる有機ELデバイス」
第5 当審の判断
1.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、先願明細書には引用発明の「透明電極」としてITO等を用いることが記載されており(【0004】)、これは本願発明の「導電性透明酸化物層」に相当する。
また、引用発明の「有機発光層」は、有機半導体層に電流を流して発光させるものであることは当業者において技術常識であるから、本願発明の「半導体層」に相当する。
したがって、引用発明の「透明電極」と「有機発光層」と「ガラス基板」を含む「有機ELデバイス」は、本願発明の「導電性透明酸化物層」と「半導体層」と「ガラスを含む基板層」を含む「透明層複合体アセンブリ」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「導電性透明酸化物層と、半導体層と、屈折率ndが1.61であるガラスを含む基板層とを含む透明層複合体アセンブリであって、前記ガラスは、42.0質量%のSiO2を含み、前記ガラスにおけるB2O3の含有率は4.0質量%であり、かつ、前記ガラスにおけるAl2O3の含有率が5.0質量%である、透明層複合体アセンブリ」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
相違点:本願発明はガラスの弾性係数が60×103N/mm2以上、最大で120×103N/mm2であるのに対し、引用発明は、ガラスの弾性係数が不明である点。
2.相違点の判断
上記相違点を検討するにあたり、ガラスにおける技術常識を示すため、参考文献1~2の記載内容を摘記する。
ア.参考文献1(社団法人日本セラミックス協会編、セラミック工学ハンドブック[応用]、2002.03.31発行、2版 1刷、p.369-370)
「実用ガラスの大部分は,表2.3に示すようにヤング率は50~100GPa,ポアソン比は0.16~0.28の範囲にある。」(第369頁右欄第3行~第369頁右欄第5行)
「図2.9に,アルカリおよびアルカリ土類金属酸化物を含むガラスのヤング率と平均原子容の関係を示す。」(第369頁右欄下から第8行~第369頁右欄下から第6行)
イ.参考文献2(稲葉 誠二、藤野 茂、ガラスの機械的性質、NEW GLASS、2008.12.発行、Serial.91 Vol.23 No.4、p.46-52)
「図2に,アルカリ金属酸化物(R2O),アルカリ土類酸化物(RO),希土類酸化物(Re2O3)を添加したアルミノケイ酸塩系ガラスのヤング率Eとイオン充填率VPの関係を示す。」(第47頁右欄下から第8行~第47頁右欄下から第5行)
3.相違点の検討
先願明細書には、引用発明のガラス組成がヤング率(弾性係数)も考慮して設定されていることが記載されている(【0048】、【0051】)。
そして、参考文献1に記載されているように、液晶用基板ガラスやPDP用基板ガラスのような表示装置に用いられるガラス板は、通常70GPa~76GPaのヤング率(70×103N/mm2~76×103N/mm2の弾性係数)とするものと認められる。
また、参考文献1の図2.9(RO・SiO2、RO・2SiO2)、参考文献2の図2(R’O-Al2O3-SiO2)には、ケイ酸アルカリ土類金属ガラスのヤング率が60GPa~120GPa(60×103N/mm2~120×103N/mm2の弾性係数)の範囲内にあることが記載されている。
したがって、有機ELディスプレイのような有機ELデバイスに用いるガラス板であって、ケイ酸アルカリ土類金属ガラスである引用発明のガラス基板の弾性係数は、用途の点からみても、組成の点からみても、少なくとも60×103N/mm2~120×103N/mm2の範囲内にあることは当業者に自明なことと認められる。
よって、上記相違点は両者の実質的な相違点とはいえない。
したがって、本願発明と先願明細書に記載された発明とは実質的に同一である。
なお、試料No.12を引用発明と認定したが、試料No.16~20を引用発明としても同様の判断をすることができる。
第6 むすび
本願発明は、その優先権の基礎とされた先の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の拒絶理由について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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