特許拒絶査定不服審判
2015-011051
金属ゲートとストレッサーを有するゲルマニウムフィンFET
- 審判番号
- 2015-011051
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-144426外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年06月10日
- 審決日
- 2017年03月02日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】台湾積體電路製造股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】田澤 英昭
- 【請求人代理人】濱田 初音
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-144426「金属ゲートとストレッサーを有するゲルマニウムフィンFET」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-243381〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月22日(パリ条約による優先権主張2009年9月24日 アメリカ合衆国、2010年7月7日 アメリカ合衆国)に出願した特願2010-211635号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年7月10日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 7月10日 上申書の提出
平成26年 9月 8日 拒絶理由通知(起案日)
平成26年12月16日 意見書及び手続補正書の提出
平成27年 2月 3日 拒絶査定(起案日)
平成27年 6月10日 審判請求書及び手続補正書の提出
平成28年 6月22日 当審より拒絶理由通知(起案日)
平成28年11月28日 意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明に対する判断
1 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年11月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「半導体基板と、
第一ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第一ゲルマニウムフィン、前記第一ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第一ゲート誘電体、及び、前記第一ゲート誘電体上の第一ゲート電極からなるn型フィン電界効果トランジスタ(FinFET)と、
第二ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第二ゲルマニウムフィン、前記第二ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第二ゲート誘電体、及び、前記第二ゲート誘電体上の第二ゲート電極からなり、前記第一ゲート電極と前記第二ゲート電極とが、4.25eVと4.4eVとの間の仕事関数を有する同一材料で形成され、かつ、前記第一ゲルマニウムフィンと前記第二ゲルマニウムフィンとのゲルマニウム原子百分率が、50パーセントより大きいp型FinFETと、
前記半導体基板の直上の複数のダミーフィンからなり、n型FinFET及びp型FinFET以外の領域に配置され、前記複数のダミーフィンが、前記半導体基板の直上のシャロートレンチアイソレーション領域のそれぞれに挟まれ、かつ、前記複数のダミーフィンの下面と前記シャロートレンチアイソレーション領域とが、前記半導体基板の直上で同じレベルにあるダミーフィン構造と
を備えた集積回路構造。」
2 当審よりの拒絶理由通知の概要
平成28年6月22日付けで当審より通知した拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2007-258485号公報
2.特開2007-123867号公報
3.特開2009-60104号公報
4.特開2006-339514号公報
5.特開2009-200118号公報
6.特表2009-517867号公報
7.特開2008-277416号公報
8.特開2008-282901号公報
9.特表2009-514248号公報
10.特開2008-226901号公報
・請求項 :1
・引用文献等:1~5
・備考
文献1の段落【0044】~【0062】には、「1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置」(段落【0044】)について記載されている。ここで、段落【0044】~【0062】の記載から、n型不純物ないしp型不純物が添加されたSiGe層10bから前記「pFinFET」ないし「nFinFET」のチャネル領域を形成されることは明らかである。したがって、前記「1枚の半導体基板」とは、「Si半導体層10c」と、その上の「バッファ層10a」を併せたものを指すと認められる。
そうすると、文献1の特に段落【0044】~【0062】及び図8~図11には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置であって、
Si半導体層10c上に、CVD法によりGe濃度を段階的に変化させて形成したバッファ層10aを設けた前記半導体基板と、
前記バッファ層10aの上にエピタキシャル成長させるとともにp型不純物を所定の濃度で添加したSiGe層10bをパターンニングして形成した複数のフィン20と、前記複数のフィン20の周囲に形成したゲート絶縁膜31と、前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン70からなるゲート33とからなるnFinFETと、
前記バッファ層10aの上にエピタキシャル成長させるとともにn型不純物を所定の濃度で添加したSiGe層10bをパターンニングして形成した複数のフィン20と、前記複数のフィン20の周囲に形成したゲート絶縁膜31と、前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン70からなるゲート33とからなるpFinFETと、
前記フィン20の上面から垂直あるいは傾斜させて不純物のイオン注入を行うことで各々形成した深い接合部からなる、前記nFinFET及び前記pFinFETのソース領域40及びドレイン領域50とを備え、
前記ポリシリコン70は前記フィン20を含む全体に堆積したものである半導体装置。」
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「フィン20」は「Si半導体層10c上に、CVD法によりGe濃度を段階的に変化させて形成したバッファ層10aを設けた前記半導体基板」を介して、その下部が接続されている。したがって、本願明細書の段落【0011】~【0012】に記載された「ゲルマニウムフィン124と224」と同様に、引用発明の「複数のフィン20」は互いに電気的に接続されていると認められる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、以下の点で相違し、その余の点では一致している。
(相違点1)本願発明1の「前記第一ゲート電極と前記第二ゲート電極は、4.25eVと4.4eV間の仕事関数を有する同一材料で形成され」ているのに対して、引用発明の「nFinFET」及び「pFinFET」の各「ゲート33」は、「前記フィン20を含む全体に堆積」した「ポリシリコン70」を用いて形成されている点。
(相違点2)本願発明1の「前記第一ゲルマニウムフィンと前記第二ゲルマニウムフィンのゲルマニウム原子百分率は、50パーセントより大きい」のに対して、引用発明の「SiGe層10b」のゲルマニウム原子百分率は不明である点。
(相違点3)本願発明1は、「前記半導体基板の直上の複数のダミーフィンからなるダミーフィン構造であって、前記ダミーフィン構造は、n型FinFETとp型FinFET以外の領域に配置される」構造を備えるのに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。
相違点1及び相違点2について
文献1の段落【0057】には、「ゲート絶縁膜31(SiO2等)を熱酸化等により形成した後に、MOCVD法等によりポリシリコン70をフィン20を含む全体に堆積させる。……これにより、フィン20及びゲート33の構造が形成される。」と記載されている。前記「フィン20」が、段落【0047】に記載の「pFinFET領域」に形成された「フィン20」と、段落【0051】に記載の「nFinFET領域」に形成された「フィン20」の両方を指すという明示の記載はない。
しかしながら、前記段落【0057】の記載から、引用発明における「nFinFET」ないし「pFinFET」の各「ゲート33」は、「nFinFET」領域及び「pFinFET」領域に共通して堆積された同一材料である「ポリシリコン70」を元に形成されることが、少なくとも示唆されていると解される。
さて、FETのゲート電極として「金属ゲート」が好ましいとされること、nFinFETとpFinFETの各ゲートを同一材料の「金属ゲート」で形成するのが好ましいこと、当該同一材料の「金属ゲート」の仕事関数を、FETを形成する半導体材料の価電子帯と伝導帯の中間値(ミッドギャップ)近傍の値を意味する「ミッドギャップ仕事関数」に設定することは、文献2の段落【0014】及び段落【0033】~【0038】、文献3の段落【0001】及び段落【0046】~【0049】にそれぞれ記載され、いずれも周知技術である。
ここで、SiGe材料のバンドギャップの大きさはゲルマニウムの原子百分率に応じて決まること、前記ゲルマニウムの価電子帯と伝導帯の中間値(ミッドギャップ)が4.33eVであること、が当業者の技術常識であることを考慮すれば、引用発明の「nFinFET」及び「pFinFET」の各「ゲート33」を、「前記フィン20を含む全体に堆積」した「ポリシリコン70」と「第2のポリシリコン70」とから形成することに代えて、4.25eVと4.4eV間の仕事関数を有する同一の金属材料で形成するとともに、「SiGe層10b」のゲルマニウム原子百分率を50パーセントより大きい値とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
相違点3について
FinFETを形成する部位以外の領域にダミーフィンを配置することは、文献4の段落【0055】~【0058】及び図14~15に、文献5の段落【0178】~【0201】及び図10~12にそれぞれ記載されるように、フィン型FETの技術分野において周知技術である。
したがって、引用発明において、「Si半導体層10c上に、CVD法によりGe濃度を段階的に変化させて形成したバッファ層10aを設けた前記半導体基板」の直上であって、「nFinFET」と「pFinFET」を形成する部位以外の領域にダミーフィンを配置することは、当業者であれば適宜になし得たものと認められる。
なお、文献4には、「ダミーフィン200A~200C」を半導体基板の直上に形成することが記載されるとともに、段落【0056】には「FinFET領域30の周辺に位置する素子分離領域190に、実際にはFinFETとして使用しないダミーフィン200A~200Cが複数形成され」ることが記載されている。
……(以下、省略)」
3 各引用例の記載について
(1)引用例1の記載事項と引用発明
ア 引用例1の記載事項
本願の原出願の最先の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成28年6月22日付けの当審よりの拒絶理由通知において「文献1」として引用された刊行物である特開2007-258485号公報(以下「引用例1」という。)には、「半導体装置及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1~18とともに、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため当審において付したものであり、以下、同様である。)。
(ア)「【背景技術】
【0002】
近年、シリコン基板上に形成されるLSIにおいて、そこに用いられる素子の微細化によって高性能化が達成されてきている。これは論理回路、またはSRAMなどの記憶装置に用いられるMOSFETにおいて、いわゆるスケーリング則に基づいてゲート長が縮小されたり、ゲート絶縁膜が薄膜化されることで実現されている。現在30nm以下の短チャネル領域においてカットオフ特性を改善するために、例えば、3次元構造MIS型半導体装置の一種として、SOI基板を用いてSOI層を短冊状に細く切り出して突起状領域を形成し(これをフィン(Fin)という)、それにゲート電極を立体交差させることで、切り出した突起状基板の上面及び側面をチャネルとするダブルゲート型Fully Depleted-SOI MOSFETが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この形のFETを特にFinFETと呼んでいる。
【0003】
一方、最近ではデバイス性能、特に電流駆動力を改善するためにMOSFETのチャネル領域に対して高いキャリア移動度を得るための工夫がなされてきている。
【0004】
従来の他の半導体装置として、例えば、シリコンに歪みを加えてサブバンド構造を変調し、キャリアの散乱確率と伝導の有効質量(conductivity mass)を改善することで高いキャリア移動度を得ようとする歪みシリコン技術がある。これを実現する方法の一例として、SiとGeの混晶層上にSiをエピタキシャル成長させ、両者の格子定数の違い(約4.8%)を利用してSi層に引張り応力を与えて高性能n型FETを形成する。
【0005】
また、p型FETにおいてはGe自身をチャネルにすると高いホール移動度を持つのでこれもCMOS高性能化に寄与できる。この場合、SiGe、もしくはpure Geに近い層を使う場合があるが、いずれにしても高濃度のGe層を基板上に作りこむ必要がある。これにはSGOI(Silicon Germanium on Insulator)基板のSiGe領域を酸化してGe濃縮するか、もしくはSiGe上に高濃度ゲルマニウム層をエピタキシャル成長することで得られる(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
しかし、非特許文献1によると、プレーナ(planar)型FETは比較的簡単に形成できるが、Geチャネル、もしくはSiGeチャネルのFinFETを想定した場合には問題がある。例えば、従来のSiGe/バッファ層 SiGe/Si積層構造ウエハーに酸化によるGe濃縮工程を行って高濃度ゲルマニウム層を形成するには、基板底部へのGe拡散を抑制するために基板構造はSGOI(Silicon Germanium on Insulator)基板に限定されてしまう。また縦方向への酸化によってGe濃縮を行っているため、この場合Ge濃度の高い領域の厚さは当初のSiGe膜の厚さよりも小さくなる。従って、FinFETのFin高さ、すなわち最大チャネル幅がそれで決まってしまうので、FinFETの電流駆動力が必然的に制限されることになり、設計の自由度が失われる。
【0007】
また、SiGe層上に高濃度ゲルマニウム層をエピタキシャル成長で形成する場合は、Si基板上にバッファ層、緩和層を形成しておいてからGe層をエピタキシャル成長させる必要があり、やはりGe層の膜厚を大きく取れない。もしGeを厚く積めたとしてもフィンの根元に近い領域では圧縮応力がかかっているが、フィン上部では応力が弱くなり、チャネル中での応力が一様にならないという問題がある。
……(中略)……
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、SiGe層をFinFETのチャネル領域とし、FinFETのチャネル幅(フィン高さ)が大きくできて、設計に自由度を有するフィン構造のFETを有する半導体装置、及び、その製造方法を提供することにある。」
(イ)「【0017】
(第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法)
図2(a)、(b)、(c)、(d)、図3(a)、(b)、(c)、図4(a)、(b)、(c)、図5(a)、(b)、(c)、図6(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施の形態に係るp型FinFETの製造工程を斜視図により順に示す図である。
……(中略)……
【0026】
(1i)ゲートとなるポリシリコンを堆積させる工程である。ゲート絶縁膜31(SiO2等)を熱酸化等により形成した後に、MOCVD法等によりポリシリコン70をフィン20を含む全体に堆積させる(図4(b))。
【0027】
(1j)上記の工程後、平坦化する。CMPにより、SiNマスク11の上端をストッパ位置として、ポリシリコン70を平坦化処理する(図4(c))。
【0028】
(1k)平坦化されたポリシリコン70及びSiNマスク11上に、第2のポリシリコン71をMOCVD法等により堆積させる(図5(a))。
【0029】
(1l)SiN膜12を所定の膜厚でMOCVD法により堆積させ、ゲート形成のためのレジスト13をSiN膜12上に形成する(図5(b))。
【0030】
(1m)SiN膜12をRIE等によりエッチングする(図5(c))。
【0031】
(1n)SiN膜12をマスクとして、CF4等のフッ素系ガスを用いたRIEによりエッチングを行う。これにより、フィン20及びゲート33の構造が形成される(図6(a))。
【0032】
(1o)SiNマスク11及びSiN膜12を剥離した後、フィン20の上面から垂直に、あるいは、傾斜させて、ボロンB等のp型不純物のイオン注入を行い、ソース領域とチャネル領域及びドレイン領域とチャネル領域との間の浅い接合部(図示を省略)を各々形成する。ゲート側壁34を形成するため、SiO2膜80をCVD法等により、等方的に堆積させる(図6(b))。
【0033】
(1p)CF4等のフッ素系ガスを用いたRIEによりSiO2膜80をエッチバック除去して、ゲート側壁34を形成する。ここで、フィン20の上面から垂直に、あるいは、傾斜させて、ボロンB等のp型不純物のイオン注入を行い、ゲート側壁34をマスクエッジとして、ソース領域40及びドレイン領域50となる深い接合部を各々形成する(図6(c))。
【0034】
(1q)上記の工程後に、ゲート電極、ソース・ドレイン電極、コンタクト、配線等を公知技術による半導体製造プロセスを用いて形成することにより、pFinFETが作製されることになる。」
(ウ)「【0044】
(本発明の第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、第1の実施の形態で示したpFinFETと、n型FinFET(以下、nFinFETという)を有し、1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置である。以下に、製造方法を説明しながら、上記半導体装置を説明する。
【0045】
図8(a)、(b)、(c)、図9(a)、(b)、(c)、図10(a)、(b)、(c)、図11(a)、(b)は、本発明の第3の実施の形態に係るnFinFET及びpFinFETの製造工程を断面図により順に示す図である。左側にnFinFET領域、右側にpFinFET領域の製造工程を示す。
【0046】
(3a)Si半導体層10c上に、CVD法により、Ge濃度を段階的に変化させてバッファ層10aを形成し、その上に、Ge濃度を所定の濃度にしてSiGe層10bを形成する。バッファ層10aは、Si半導体層10cからSiGe層10bにかけてGe濃度が高くなるようにGe濃度を変化させて、格子不整合を緩和させながらエピタキシャル成長を行なう。尚、SiGe層10bのGe濃度は、バッファ層10aとの界面のGe濃度に応じたGe濃度にするのが好ましく、特に、バッファ層10aとの界面のGe濃度に近似した濃度にするのが好ましい。また、SiGe層10bのGe濃度は、一定であることが好ましい。SiGe層10bは、pFinFET領域ではn型不純物で所定の濃度に形成され、nFinFET領域ではp型不純物で所定の濃度に形成されている。SiGe層10bの上に、SiNマスク11を形成する(図8(a))。
【0047】
(3b)まず、pFinFET領域を形成するため、nFinFET領域にレジスト(図示を省略)を施し、選択的にpFinFETの製造工程を進める。pFinFET領域にリソグラフィ技術によりSiNマスク11を所定の形状にパターニングし、これを基にRIEによりフィン20を形成する(図8(b))。
【0048】
(3c)SiGe層10b及びバッファ層10aを選択的に酸化してGe濃縮を行ない、チャネル領域等となる部分のGe濃度を高める。SiGe層を酸化することにより、SiGe中のSiをSiO2中に取り込む。チャネル領域等となる部分は、高濃度GeのSiGeチャネル、Geチャネル、あるいは、歪Geチャネルに形成される。これにより、SiGe層10b表面に形成されるSiO2酸化膜12は厚くなると共に、SiGe層10bは薄くなる。尚、SiGe層10bはGe濃度の勾配をその厚さ方向にほぼ対称に有する。また、各フィン20の間の底部20aにもSiO2酸化膜12が形成される(図8(c))。
【0049】
(3d)次に、nFinFET領域のレジストを剥離後、pFinFET領域にレジスト(図示を省略)を施し、選択的に、nFinFET領域に、リソグラフィ技術とRIEによりフィン20を形成するため、SiNマスク11を所定の形状にパターニングする(図9(a))。
【0050】
(3e)pFinFET領域のレジストを剥離した後、pFinFET領域及びnFinFET領域において、SiNマスク11をホットリン酸により、スリミングして酸化後のSiGe層10bとほぼ同じ厚さにする(図9(b))。
【0051】
(3f)次に、nFinFET領域を形成するため、pFinFET領域にレジスト(図示を省略)を施し、選択的にnFinFETの製造工程を進める。nFinFET領域において、SiNマスク11を基にRIEによりフィン20を形成する(図9(c))。
【0052】
(3g)pFinFET領域のレジストを剥離後、pFinFET領域において、SiGe層10bの表面のSiO2酸化膜12を、フッ酸系のガスにより除去する。これにより、SiGe層10bは薄くなり、所定のフィン厚さとなる。同様に、各フィン20の間の底部20aのSiO2酸化膜12も除去され、フィン20の高さが所定の値に形成される。尚、バッファ層10aの一部も除去される(図10(a))。
【0053】
(3h)pFinFET領域及びnFinFET領域において、各FinFETの素子分離を行うため、CVD法により、SiO2等の素子分離膜60を堆積、充填する(図10(b))。
【0054】
(3i)素子分離膜60をエッチングにより所定の深さまでエッチバックする。所定の深さは、エッチバックによりバッファ層10aが露出するまではエッチングされず、バッファ層10aは素子分離膜60に埋め込まれているようにする(図10(c))。
【0055】
(3j)pFinFET領域にレジスト(図示を省略)を施し、選択的に、nFinFET領域の各フィン20の間の素子分離膜上面60aに、イオン注入を行う。ボロンB又はインジウムIn等のp型不純物を上方から素子分離膜上面60aに向って図示A方向に打ち込むと、フィン20にはその頂部にSiNマスク11があるのでイオン注入されないが、素子分離膜上面60aにはイオン注入される。素子分離膜上面60aにイオン注入されると共に、不純物は横方向にも拡散され、フィン下部にもイオン注入され、フィン下部の不純物濃度が高くなり、パンチスルーストッパとなる(図11(a))。
【0056】
(3k)次に、nFinFET領域にレジスト(図示を省略)を施し、選択的に、pFinFET領域の各フィン20の間の素子分離膜上面60aに、イオン注入を行う。リンP又は砒素As等のn型不純物を上方から素子分離膜上面60aに向って図示A方向に打ち込むと、フィン20にはその頂部にSiNマスク11があるのでイオン注入されないが、素子分離膜上面60aにはイオン注入される。素子分離膜上面60aにイオン注入されると共に、不純物は横方向にも拡散され、フィン下部にもイオン注入され、フィン下部の不純物濃度が高くなり、パンチスルーストッパとなる(図11(b))。
【0057】
(3l)以下の工程は、第1の実施の形態において示した(1i)~(1q)、すなわち、図4(b)~図6(c)の製造工程と共通である。レジスト剥離後、ゲート絶縁膜31(SiO2等)を熱酸化等により形成した後に、MOCVD法等によりポリシリコン70をフィン20を含む全体に堆積させる。上記の工程後、CMPにより、SiNマスク11の上端をストッパ位置として、平坦化処理する。平坦化されたポリシリコン70及びSiNマスク11上に、第2のポリシリコン71をMOCVD法等により堆積させる。SiN膜12を所定の膜厚でMOCVD法により堆積させ、ゲート形成のためのレジストをSiN膜12上に形成する。SiN膜12をRIE等によりエッチングした後、SiN膜12をマスクとして、CF4等のフッ素系ガスを用いたRIEによりエッチングを行う。これにより、フィン20及びゲート33の構造が形成される。
【0058】
SiNマスク11及びSiN膜12を剥離した後、フィン20の上面から垂直に、あるいは、傾斜させて、不純物のイオン注入を行い、ソース領域とチャネル領域及びドレイン領域とチャネル領域との間の浅い接合部を各々形成する。
【0059】
ゲート側壁を形成するため、SiO2膜80をCVD法等により、等方的に堆積させる。CF4等のフッ素系ガスを用いたRIEによりSiO2膜80をエッチバック除去して、ゲート側壁34を形成する。そして、フィン20の上面から垂直に、あるいは、傾斜させて、不純物のイオン注入を行い、ゲート側壁34をマスクエッジとして、ソース領域40及びドレイン領域50となる深い接合部を各々形成する。
【0060】
上記の工程後に、ゲート電極、ソース・ドレイン電極、コンタクト、配線等を公知技術による半導体製造プロセスを用いて形成するこにより、nFinFET及びpFinFETが作製されることになる。
【0061】
尚、ソース領域とチャネル領域及びドレイン領域とチャネル領域との間の浅い接合部、ソース領域及びドレイン領域となる深い接合部の形成では、nFinFETの場合は、リンP等のn型不純物のイオン注入を行い、pFinFETの場合は、ボロンB等のp型不純物のイオン注入を行なう。
【0062】
(第3の実施の形態の効果)
1.本発明の第3の実施の形態によれば、pFinFETにおいては、第1の実施の形態の効果と同様に、チャネル領域32を高濃度GeのSiGeチャネル、Geチャネル、あるいは、歪Geチャネルとできるので、キャリア移動度の向上に有利な効果を有する。また、nFinFETにおいては、pFinFETチャネル領域32のGe濃度よりも低濃度のSiGeチャネルが形成される。
2.上記のように、同一の基板上に、高濃度GeのSiGeチャネルを有するpFinFETと、低濃度GeのSiGeチャネルを有するnFinFETとが形成できるので、CMOS構成にする場合に特に効果を有する。」
(エ)図6(a)、(c)には、複数のFinFETが、1つのゲート33を共有することが記載されている。
(オ)nFinFET領域にフィン20を形成した状態を図示する図9(c)の左側の図面、及び、pFinFET領域にフィン20を形成した状態を図示する図10(a)の右側の図面には、いずれも、上部にSiNマスク11を有するバッファ層10a及びSiGe層10bからなる複数のスタックのそれぞれを指してフィン20と称することが記載されている。
(カ)図10(c)には、隣合う上記フィン20の間に埋め込まれた素子分離膜60により、フィン20のバッファ層10aの全部とSiGe層10bの下部が前記素子分離膜60に埋め込まれて、前記素子分離膜60の上面は前記SiGe層10bの下部と隣接していることが記載されている。
イ 引用発明
(ア)引用例1には、段落【0044】に「1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置」と、段落【0046】に「Si半導体層10c上に、CVD法により、Ge濃度を段階的に変化させてバッファ層10aを形成し、その上に、Ge濃度を所定の濃度にしてSiGe層10bを形成する。」と記載されている。
そして、同段落【0047】及び段落【0051】に「pFinFET領域」及び「nFinFET領域」において「RIEによりフィン20を形成する」と記載されていること、及び、前記ア(オ)とから、前記「フィン20」は、「バッファ層10a」と「SiGe層10b」とからなるものと認められる。
一方、同段落【0054】に「バッファ層10aは素子分離膜60に埋め込まれているようにする」と記載され、段落【0055】には「素子分離膜上面60aにイオン注入されると共に、不純物は横方向にも拡散され、フィン下部にもイオン注入され、フィン下部の不純物濃度が高くなり、パンチスルーストッパとなる」と記載されている。この「素子分離膜上面60aにイオン注入され」た「不純物」が「横方向にも拡散され、フィン下部にもイオン注入され」るという記載と前記ア(カ)とから、前記「フィン下部」とは、「バッファ層10a」を「埋め込」む「素子分離膜60」の「上面60a」に隣接する「SiGe層10b」の下部を指すと認められる。
そうすると、引用例1において、「pFinFET」ないし「nFinFET」における「フィン」とは、「フィン20」を構成する「バッファ層10a」と「SiGe層10b」のうち、前記「SiGe層10b」部分を指すと認められる。
(イ)そして、上記(ア)のように「pFinFET」ないし「nFinFET」における「フィン」は「SiGe層10b」部分を指すこと、及び、引用例1の段落【0008】の「SiGe層をFinFETのチャネル領域」とする「フィン構造のFETを有する半導体装置」という記載を参酌すれば、段落【0044】に記載された前記「1枚の半導体基板」とは、「Si半導体層10c」及び「バッファ層10a」を併せたものを指すと認められる。
(ウ)そうすると、前記ア(ア)~(カ)から、引用例1には「第3の実施の形態」に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置であって、
Si半導体層10c上に、CVD法によりGe濃度が段階的に高くなるように変化させて格子不整合を緩和させながら成長させたバッファ層10aを設けた前記半導体基板と、
前記バッファ層10a上に形成され、前記バッファ層10aとの界面のGe濃度に近似した一定のGe濃度を有するとともに、pFinFET領域ではn型不純物で所定の濃度に形成され、nFinFET領域ではp型不純物で所定の濃度に形成されているSiGe層10bと、
前記pFinFET領域及び前記nFinFET領域において、前記バッファ層10a及び前記SiGe層10bをRIEによりパターニングして形成した複数のフィン20と、
前記pFinFET領域に設けられ、前記フィン20を構成する前記SiGe層10bからなる複数のフィンと、前記複数のフィンの周囲に形成したゲート絶縁膜31と、前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン71を有するゲート33とからなるpFinFETと、
前記nFinFET領域に設けられ、前記フィン20を構成する前記SiGe層10bからなる複数のフィンと、前記複数のフィンの周囲に形成したゲート絶縁膜31と、前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン71を有するゲート33とからなるnFinFETと、
前記pFinFET領域及び前記nFinFET領域において、各FinFETの素子分離を行うため、前記バッファ層10aが埋め込まれるよう堆積、充填された素子分離膜60と、を備え、
前記ポリシリコン70は前記フィン20を含む全体に堆積したものである半導体装置。」
(2)引用例2の記載事項
本願の原出願の最先の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成28年6月22日付けの当審よりの拒絶理由通知において「文献2」として引用された刊行物である特開2007-123867号公報(以下「引用例2」という。)には、「半導体デバイスおよびその製造方法」(発明の名称)に関して、図1~17とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
〔技術分野〕
本発明は、一般的には半導体デバイス、特に複数のゲートを有するトランジスタおよびその製造方法に関する。」
イ 「【0014】
本発明の好ましい形態の利点として、トランジスタデバイスおよびその構造を製造するための新規な方法を提供している点が含まれる。複数ゲートCMOSデバイスのPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタが略対称的なVtを有する、複数ゲートCMOSデバイスが製造される。金属ゲート材料の厚さ、および/またはゲート電極材料のドーパントレベルは、トランジスタゲート電極の仕事関数を規定し、従ってトランジスタの閾値電圧Vtを規定する。一部の形態では、PMOSおよびNMOSトランジスタのゲートに対して同一の材料が用いられることが好ましい。同一の材料を用いることによって、2つの異なるゲート材料を堆積およびエッチングするために要する処理が少なくなり、さらに製造プロセス工具の汚染を予防できる。別の形態では、1種類のゲート材料が堆積され、そしてPMOSデバイスまたはNMOSトランジスタゲート電極材料のいずれかにドーパント種が注入されて、仕事関数が調節される。」
ウ 「【0033】
先進的なトランジスタ設計に必要なデバイス性能を得るためには、ゲート絶縁膜材料として、金属ゲート電極材料および高誘電率絶縁材料を用いる傾向がある。ゲート空乏化効果を回避し、酸化膜換算膜厚(equivalent oxide thickness; EOT)を減少させるためには、従来のポリシリコンよりも金属ゲートが好ましい。しかし、CMOSデバイス(特に、ゲート絶縁材料として高誘電率絶縁材料を有するCMOSデバイス)の金属ゲートとしては、適切な材料がまだ発見されていない。特に、複数ゲートトランジスタのためのゲート材料工学は困難であることが分かってきている。
【0034】
「ミッドギャップ」ゲート仕事関数は、本明細書では約4.65eVに規定されている。なぜなら、上記値が、nドープされた多結晶シリコンの仕事関数(すなわち約4.1eV)と、pドープされた多結晶シリコンの仕事関数(すなわち約5.2eV)の中間値であるためである。4.1eVと5.2eVとの差は、例えば価電子帯と伝導帯との間の1.1eVのエネルギーギャップである。「準ミッドギャップ(near-mid-gap)」は、本明細書では約4.65eV近辺の仕事関数として規定されている。例えば、約4.45eVはNMOSデバイスの準ミッドギャップ仕事関数であり、約4.85eVはPMOSデバイスの準ミッドギャップ仕事関数である。
【0035】
当技術分野では、複数ゲートCMOSデバイスに対して適切な仕事関数を有する金属ゲート電極が必要とされている。CMOS FinFET技術が、バルクSi CMOS技術に勝る最大性能利益をもたらすためには、1つの問題を解決しなければならない。すなわち、閾値電圧Vtを制御するための調整可能な仕事関数を有するゲート技術の開発という問題である。
【0036】
本発明の実施形態の1つの特徴は、例えば複数ゲートNMOSデバイスおよび複数ゲートPMOSデバイスに対して、仕事関数がそれぞれ約4.45eVおよび4.85eVである2つの準ミッドギャップ金属ゲート材料を発見することにある。これらの仕事関数は、CMOSデバイスに必要とされる対称性を持つVtnおよびVtp(例えば、Vtn=+0.3V、Vtp=-0.3V)を達成する。本発明の実施形態の別の特徴は、これら2つの金属ゲート材料を複数ゲートデバイスの1つのプロセスフローに統合することにある。
【0037】
本発明の実施形態は、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとの両方の複数ゲートCMOSトランジスタに用いられるゲート材料として有用な金属を開示することによって、技術的優位性を達成する。一実施形態では、上記ゲート材料は、TiSiNを含んでいることが好ましい。別の実施形態では、上記ゲート材料は、TaNまたはTiNを含んでいることが好ましい。上記ゲート材料は、別の材料を含んでいてもよい。一部の実施形態では、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタの仕事関数は、ゲート材料の厚さを調節または調整することによって調節される。ゲート絶縁膜に隣接したゲート材料が金属であるので、ゲート絶縁膜として高誘電率絶縁材料を用いることによって生じるフェルミピニング効果(Fermi-pinning effect)が回避される。一部の実施形態では、NMOSおよびPMOSトランジスタの複数ゲートは、例えば、最上面に配置された半導体材料の層を含んでいてもよい。
【0038】
本発明については、具体的状況(すなわちCMOS FinFETデバイス)において、好ましい実施形態に関連して説明する。しかし本発明の実施形態は、例えばトリゲートデバイスなど、トランジスタに2つ以上のゲート電極が用いられた他の半導体デバイスアプリケーションへ応用することも可能である。なお、図面にはCMOSデバイスのみが示されている。しかし、本明細書に記載の各製造プロセス中に、半導体基板上に多くのトランジスタを形成することができる。
(3)引用例3の記載事項
本願の原出願の最先の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成28年6月22日付けの当審よりの拒絶理由通知において「文献3」として引用された刊行物である特開2009-60104号公報(以下「引用例3」という。)には、「ピン電界効果トランジスタ及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1~17とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、電界効果トランジスタ及びその製造方法に関し、より詳細には、ピン電界効果トランジスタ(FinFET)及びその製造方法に関する。」
イ 「【0046】
ゲート酸化膜パターン104上には、アクティブピン102と交差するように延長される第1電極パターン106bが具備される。第1電極パターン106bは、ピントランジスタで実質的なゲート電極として機能するので、第1電極パターン106bの仕事関数によってピントランジスタのしきい電圧が変わる。
【0047】
従って、第1電極パターン106bは、N型又はP型トランジスタのゲート電極として使用するに適合な物質からなることが好ましい。即ち、第1電極パターン106bは、不純物のドーピングによって仕事関数を特定の値に調節できる導電物質からなるか、又はN型及びP型トランジスタのゲート電極でそれぞれ使用される仕事関数値の中間値であるミッドギャップ仕事関数を有する導電物質からなることができる。ここで、前記ミッドギャップ仕事関数は、4.0eV~5.2eVの仕事関数と言える。
【0048】
より具体的に、第1電極パターン106bは、ポリシリコンゲルマニウムからなることができる。前記ポリシリコンゲルマニウムには、ソース/ドレイン領域にドーピングされている不純物と同じ導電型の不純物がドーピングされている。即ち、P型のピン電界効果トランジスタである場合、前記ポリシリコンゲルマニウムにはホウ素のようなP型不純物がドーピングされている。又、N型のピン電界効果トランジスタである場合、前記ポリシリコンゲルマニウムにはリン、ヒ素のようなN型不純物がドーピングされている。
【0049】
これとは異なり、第1電極パターン106bは、チタニウム、チタニウム窒化物、タンタル、タンタル窒化物等のような金属物質からなることができる。これらは単独又は混合して使用されることができる。前記金属物質は、ミッドギャップ仕事関数を有するので、N型及びP型ピン電界効果トランジスタのゲート電極として使用されることができる。」
(4)引用例4の記載事項
本願の原出願の最先の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成28年6月22日付けの当審よりの拒絶理由通知において「文献4」として引用された刊行物である特開2006-339514号公報(以下「引用例4」という。)には、「半導体装置及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1~67とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0013】
(1)第1の実施の形態
図1~図9に、本発明の第1の実施の形態による半導体装置の製造方法を示す。なお、図1(a)~図9(a)は、半導体基板10上のプレーナ型MOSFET領域(すなわち第2の領域)20にプレーナ型MOSFETを形成する場合を示し、図1(b)~図9(b)は、半導体基板10上のFinFET領域(すなわち第1の領域)30にFinFETを形成する場合を示す。
【0014】
図1(a)及び(b)に示すように、半導体基板10上にシリコン酸化(SiO2)膜40を2nm程度形成した後、例えばシリコン窒化(SiN)膜からなるマスク材50を100nm程度堆積する。なお、マスク材50としては、シリコン窒化(SiN)膜に限らず、例えばシリコン酸化膜などの他の絶縁膜を用いることも可能である。
【0015】
リソグラフィ及びRIEによって、マスク材50及びシリコン酸化膜40に順次パターニングを行う。さらにマスク材50をマスクとして、半導体基板10にエッチングを行うことにより、半導体基板10の表面からの深さが200nm程度の素子分離溝60を形成すると共に、プレーナ型MOSFET領域20には凸部10Aを形成し、FinFET領域30にはフィン10Bを形成する。
【0016】
高密度プラズマ(High Density Plasma:HDP)CVD法を用いて、素子分離溝60を埋め込むように、半導体基板10及びマスク材50の全面に、例えばシリコン酸化膜からなる素子分離絶縁膜70を堆積する。マスク材50をストッパとして、CMP法によって素子分離絶縁膜70を平坦化することにより、マスク材50の上面を露出させる。
【0017】
図2(a)及び(b)に示すように、マスク材50及び素子分離絶縁膜70上にフォトレジストを塗布し、露光及び現像を行うことにより、半導体基板10のうちFinFET領域30が開口するパターンを有するレジストマスク80を形成し、プレーナ型MOSFET領域20をレジストマスク80で覆う。
【0018】
マスク材50及びレジストマスク80をマスクとして、RIEによって、FinFET領域30に形成された素子分離絶縁膜70にエッチングを行うことにより、素子分離絶縁膜70の膜厚を100nm程度にする。なお、RIEではなく、フッ酸(HF)を用いたウエットエッチングを行っても良い。
【0019】
図3(a)及び(b)に示すように、レジストマスク80を除去した後、さらにマスク材50及び素子分離絶縁膜70上にフォトレジストを塗布し、露光及び現像を行うことにより、半導体基板10のうちプレーナ型MOSFET領域20が開口するパターンを有するレジストマスク90を形成し、FinFET領域30をレジストマスク90で覆う。
【0020】
レジストマスク90をマスクとして、RIEによって、プレーナ型MOSFET領域20に形成されたマスク材50を除去した後、さらにフッ酸(HF)を用いたウエットエッチングによって、プレーナ型MOSFET20に形成されたシリコン酸化膜40を除去する。
【0021】
その際、素子分離絶縁膜70の高さが、半導体基板10のうち、プレーナ型MOSFET領域20の凸部10Aの表面を基準として70nm程度になるように、プロセス条件を調整した上でエッチングを行う。これにより、素子分離絶縁膜70の表面部分にエッチングが行われることを抑制し、素子分離絶縁膜70及びマスク材50それぞれの上面の高さを略同一にすることができる。
【0022】
図4(a)及び(b)に示すように、レジストマスク90を除去した後、半導体基板10のうち、プレーナ型MOSFET領域20の凸部10Aの表面上に、例えばシリコン酸窒化(SiON)膜からなるゲート絶縁膜100Aを1nm程度形成する。
【0023】
これと共に、FinFET領域30のフィン10Bの対向する一組の両側面に、それぞれ例えばシリコン酸窒化(SiON)膜からなるゲート絶縁膜100B及び100Cを1nm程度形成する。」
イ 「【0055】
(4)第4の実施の形態
図14~図15に、本発明の第4の実施の形態による半導体装置の製造方法を示す。なお、第1の実施の形態の図1~図4における工程は、第4の実施の形態と同一であるため、説明を省略する。
【0056】
但し、本実施の形態の場合、図14(a)及び(b)に示すように、FinFET領域30の周辺に位置する素子分離領域190に、実際にはFinFETとして使用しないダミーフィン200A~200Cが複数形成されており、この点について、第1の実施の形態と相違する。なお、ダミーフィン200A~200Cの形状や寸法は、高さを除き、FinFET領域30に形成されるフィン10Bと同一である必要はない。
【0057】
この場合、CVD法などによって、例えばポリシリコンからなるゲート電極材110を300nm程度堆積する。図15(a)及び(b)に示すように、プレーナ型MOSFET領域20の素子分離絶縁膜70と、FinFET領域30のマスク材50と、素子分離領域190のマスク材210A~210Cとをストッパとして、CMP法によって、ゲート電極材110を平坦化する。
【0058】
このように、複数のダミーフィン200A~200Cをストッパとして別途設けることにより、CMP法による平坦化処理を容易に行うことができる。」
ウ 図14(b)には、FinFET領域30においては、図1(b)と同様に、半導体基板10に形成されたフィン10Bの両横の素子分離溝60内に素子分離絶縁膜70が浅く埋め込まれることで、前記素子分離溝60の底面で決まる前記フィン10Bの下端が、前記素子分離溝60内に埋め込まれた前記素子分離絶縁膜70の底面に一致すること、素子分離領域190においても、ダミーフィン200A~Cの下端が素子分離絶縁膜70の底面に一致することが記載されている。
(5)引用例5の記載事項
本願の原出願の最先の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、平成28年6月22日付けの当審よりの拒絶理由通知において「文献5」として引用された刊行物である特開2009-200118号公報(以下「引用例5」という。)には、「半導体装置、および、その製造方法」(発明の名称)に関して、図1~13とともに、以下の事項が記載されている。
ア 「【0178】
<第4実施形態>
【0179】
図10は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置について、要部を示す平面図である。
【0180】
本実施形態は、図10に示すように、第1実施形態と異なり、第1のfinFET100にダミーフィンDF11,DF12が設けられ、第2のfinFET200にダミーフィンDF21,DF22が設けられ、第3のfinFET300にダミーフィンDF31,DF32が設けられている。この点を除き、第1実施形態と同様である。このため、重複する個所については、記載を省略する。
【0181】
第1のfinFET100において、ダミーフィンDF11,DF12は、図10に示すように、2枚、設けられている。
【0182】
この2枚のダミーフィンDF11,DF12は、図10に示すように、フィンF11と同様に、ライン状であって、基板のxy面においてy方向へ互いに平行になるように延在している。そして、この2枚のダミーフィンDF11,DF12は、基板のxy面のx方向において、フィンF11を間に介在して並ぶように配置されている。
【0183】
ここでは、2枚のダミーフィンDF11,DF12とフィンF11との間のx方向における各距離df11,df12が、互いに等しくなるように(df11=df12)、ダミーフィンDF11,DF12が形成されている。
【0184】
このダミーフィンDF11,DF12は、フィンF11と同様に、たとえば、シリコン半導体によって形成されている。
【0185】
しかし、ダミーフィンDF11,DF12は、フィンF11と異なり、一対のソース・ドレイン領域S1,D1に連結されておらず、その一対のソース・ドレイン領域S1,D1から電気的に絶縁されるように、独立して形成されている。
【0186】
第2のfinFET200において、ダミーフィンDF21,DF22は、第1のfinFET100と同様に、図10に示すように、2枚、設けられている。
【0187】
この2枚のダミーフィンDF21,DF22は、図10に示すように、フィンF21,F22と同様に、ライン状であって、基板のxy面においてy方向へ互いに平行になるように延在している。そして、この2枚のダミーフィンDF21,DF22は、基板のxy面のx方向において、2枚のフィンF21,F22を間に介在して並ぶように配置されている。
【0188】
ここでは、2枚のダミーフィンDF21,DF22と、その2枚のダミーフィンDF21,DF22のそれぞれにおいて隣り合うフィンF21,F22との間のx方向における各距離df21,df22は、2枚のフィンF21,F22の間のx方向における各距離f2と等しくなるように(f2=df21=df22)、ダミーフィンDF21,DF22が形成されている。
【0189】
このダミーフィンDF21,DF22は、フィンF21,F22と同様に、たとえば、シリコン半導体によって形成されている。
【0190】
しかし、ダミーフィンDF21,DF22は、フィンF21,F22と異なり、一対のソース・ドレイン領域S2,D2に連結されておらず、その一対のソース・ドレイン領域S2,D2から電気的に絶縁されるように、独立して形成されている。
【0191】
第3のfinFET300において、ダミーフィンDF31,DF32は、第1のfinFET100と同様に、図10に示すように、2枚、設けられている。
【0192】
この2枚のダミーフィンDF31,DF32は、図10に示すように、フィンF31,F32,F33と同様に、ライン状であって、基板のxy面においてy方向へ互いに平行になるように延在している。そして、この2枚のダミーフィンDF21,DF22は、基板のxy面のx方向において、3枚のフィンF31,F32,F33を間に介在して並ぶように配置されている。
【0193】
ここでは、2枚のダミーフィンDF31,DF32と、その2枚のダミーフィンDF31,DF32のそれぞれにおいて隣り合うフィンF31,F33との間のx方向における各距離df31,df32は、3枚のフィンF31,F32,F33の間のx方向における各距離f3と等しくなるように(f3=df31=df32)、ダミーフィンDF31,DF32が形成されている。
【0194】
このダミーフィンDF31,DF32は、フィンF31,F32,F33と同様に、たとえば、シリコン半導体によって形成されている。
【0195】
しかし、ダミーフィンDF31,DF32は、フィンF31,F32,F33と異なり、一対のソース・ドレイン領域S3,D3に連結されておらず、その一対のソース・ドレイン領域S3,D3から電気的に絶縁されるように、独立して形成されている。
【0196】
上記の第1のfinFET100,第2のfinFET200,第3のfinFET300を形成する際においては、第1実施形態と同様に、図4(a)に示したように、基板1の表面に、埋め込み酸化膜2と半導体層3とを設ける。
【0197】
つぎに、半導体層3についてパターン加工をすることで、図10に示したように、各finFET100,200,300を構成する、フィンF11,F21,F22,F31,F32,F33と、一対のソース・ドレイン領域S1,D1,S2,D2,S3,D3と、ダミーフィンDF11,DF12,DF21,DF22,DF31,DF32とを形成する。
【0198】
ここでは、第1実施形態と同様に、各finFETを構成するフィンと一対のソース・ドレイン領域とダミーフィンと平面形状に対応するハードマスク(図示なし)をフォトリソグラフィ技術によって形成した後、そのハードマスクを用いて、半導体層3をエッチング処理することで、パターン加工を実施する。そして、その後、第1実施形態と同様にして、各finFETを完成させる。
【0199】
上記のようにフィンF11,F21,F22,F31,F32,F33へパターン加工する際においては、そのパターンの粗密に応じて、たとえば、光近接効果などの影響を受ける場合があるために、パターン加工後のパターン寸法に、誤差が生ずる場合がある。たとえば、第3のfinFET300にてx方向に並ぶ3枚のフィンF31,F32,F33において、中央に位置するフィンF32と、端部に位置するフィンF31,F33との間においては、パターンの粗密が異なるので、その各フィンF31,F32,F33のライン幅が同一の幅に加工されない場合が生ずる。
【0200】
しかし、本実施形態において上記のパターン加工を実施する際には、各finFET100,200,300にダミーフィンDF11,DF12,DF21,DF22,DF31,DF32を形成し、パターンの粗密を均一化している。
【0201】
このため、本実施形態は、高精度なパターン寸法で、各finFET100,200,300について製造することができる。
【0202】
したがって、本実施形態は、第1のfinFET100と、第2のfinFET200と、第3のfinFET300とのそれぞれにおいて、フィンの数に応じた電流比で電流を流す場合に、その電流比の精度を、更に向上することができる。」
イ 図10には、ダミーフィンDF11とDF12、DF21とDF22、及び、DF31とDF32を、それぞれ、finFETを形成する領域の両側に配置することが記載されている。
4.対比
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と、引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFET」とが「構成され」、「Si半導体層10c上に、CVD法によりGe濃度が段階的に高くなるように変化させて格子不整合を緩和させながら成長させたバッファ層10aを設けた前記半導体基板」は、本願発明の「半導体基板」に相当する。
イ 引用発明の「nFinFET領域に設けられ、前記フィン20を構成する前記SiGe層10bからなる複数のフィン」は互いに物理的に離れているが、それらの下部は、「前記フィン20」を構成する「バッファ層10a」を介して、「Si半導体層10c」によって接続されている。そして、前記「複数のフィン」は、引用発明の前記「半導体基板」の直上に設けられているといえる。
これに対して、本願明細書には、段落【0011】に「別の実施例において、フィン124と224は、シリコンゲルマニウムで形成される。」と記載されているから、本願発明の「ゲルマニウムフィン」は、シリコンゲルマニウムで形成されるフィンを包含している。
したがって、引用発明の「nFinFET領域に設けられ、前記フィン20を構成する前記SiGe層10bからなる複数のフィン」は、以下の相違点2を除き、本願発明の「第一ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第一ゲルマニウムフィン」に相当する。
また、引用発明の「nFinFET領域に設けられ」る「前記複数のフィンの周囲に形成したゲート絶縁膜31」は、本願発明の「前記第一ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第一ゲート誘電体」に相当する。
そして、引用発明の「nFinFET領域に設けられ」る「前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン71を有するゲート33」は、以下の相違点1を除き、本願発明の「前記第一ゲート誘電体上の第一ゲート電極」に相当する。
以上から、引用発明の「nFinFET領域に設けられ、前記フィン20を構成する前記SiGe層10bからなる複数のフィンと、前記複数のフィンの周囲に形成したゲート絶縁膜31と、前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン71を有するゲート33とからなるnFinFET」は、以下の相違点1、2を除き、本願発明の「第一ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第一ゲルマニウムフィン、前記第一ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第一ゲート誘電体、及び、前記第一ゲート誘電体上の第一ゲート電極からなるn型フィン電界効果トランジスタ(FinFET)」に相当する。
ウ 前記イと同様に、引用発明の「pFinFET領域に設けられ、前記フィン20を構成する前記SiGe層10bからなる複数のフィンと、前記複数のフィンの周囲に形成したゲート絶縁膜31と、前記ゲート絶縁膜31上のポリシリコン70及び第2のポリシリコン71を有するゲート33とからなるpFinFET」は、以下の相違点1、2を除き、本願発明の「第二ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第二ゲルマニウムフィン、前記第二ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第二ゲート誘電体、及び、前記第二ゲート誘電体上の第二ゲート電極から」なる「p型FinFET」に相当する。
エ そして、引用発明の「1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置」は、集積回路化されるものであることは自明であるので、本願発明の「集積回路構造」に相当する。
(2)一致点及び相違点
以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<一致点>
「半導体基板と、
第一ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第一ゲルマニウムフィン、前記第一ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第一ゲート誘電体、及び、前記第一ゲート誘電体上の第一ゲート電極からなるn型フィン電界効果トランジスタ(FinFET)と、
第二ゲルマニウムフィンが互いに物理的に分離し、かつ、互いに電気的に接続する、前記半導体基板の直上の複数の第二ゲルマニウムフィン、前記第二ゲルマニウムフィンの上面と側壁上の第二ゲート誘電体、及び、前記第二ゲート誘電体上の第二ゲート電極からなるp型FinFETと、
を備えた集積回路構造。」
<相違点>
<<相違点1>>
本願発明の「前記第一ゲート電極と前記第二ゲート電極とが、4.25eVと4.4eVとの間の仕事関数を有する同一材料で形成され」るのに対して、引用発明の「nFinFET」及び「pFinFET」の各「ゲート33」は「前記フィン20を含む全体に堆積したポリシリコン70」及び「第2のポリシリコン71」からなる点。
<<相違点2>>
本願発明の「前記第一ゲルマニウムフィンと前記第二ゲルマニウムフィンとのゲルマニウム原子百分率が、50パーセントより大きい」のに対して、引用発明の「nFinFET」及び「pFinFET」の各「前記SiGe層10bからなる複数のフィン」におけるゲルマニウム原子百分率は不明である点。
<<相違点3>>
本願発明は「前記半導体基板の直上の複数のダミーフィンからなり、n型FinFET及びp型FinFET以外の領域に配置され、前記複数のダミーフィンが、前記半導体基板の直上のシャロートレンチアイソレーション領域のそれぞれに挟まれ、かつ、前記複数のダミーフィンの下面と前記シャロートレンチアイソレーション領域とが、前記半導体基板の直上で同じレベルにあるダミーフィン構造」を備えるのに対して、引用発明はそのような構造を備えていない点。
5 当審の判断
(1)相違点1及び相違点2について
ア ゲルマニウムがシリコンよりも格段に優れた電子移動度と正孔移動度を有すること、及び、Si1-xGex層の物性値は概ねxの線形補間で近似できることは、当業者の技術常識であるところ、引用例1には、第2の3(1)ア(ア)で摘記したように、段落【0003】に「最近ではデバイス性能、特に電流駆動力を改善するためにMOSFETのチャネル領域に対して高いキャリア移動度を得るための工夫がなされてきている。」と記載されている。
そして、引用例1には、第2の3(1)ア(ウ)で摘記したように、段落【0046】に「SiGe層10bのGe濃度は、一定であることが好ましい。」と記載されている。
したがって、引用発明において、「バッファ層10a」の「界面」での「Ge濃度」を大きくし、これに伴い、「前記バッファ層10aとの界面のGe濃度に近似した一定のGe濃度を有する」とともに「pFinFET」及び「nFinFET」の「フィン」を形成することで活性層となる「SiGe層10b」により大きな「一定のGe濃度」を持たせることで、より大きな電子移動度と正孔移動度を得ようとすることは、当業者であれば当然に想起したものと認められる。
そうすると、引用発明において、高いキャリア移動度を得るために、「バッファ層10a」の「界面」でのゲルマニウム原子百分率を50パーセントより大きくして、「SiGe層10b」の「一定」のゲルマニウム原子百分率を50パーセントより大きくすることは、引用例1の記載に接した当業者であれば当然に想起したものと認められる。
イ さて、引用例1には、「第3の実施の形態」における「1枚の半導体基板上に少なくとも1つのpFinFETと少なくとも1つのnFinFETとで構成された半導体装置」(段落【0044】)の製造工程を説明して、段落【0057】に「ゲート絶縁膜31(SiO2等)を熱酸化等により形成した後に、MOCVD法等によりポリシリコン70をフィン20を含む全体に堆積させる。」と記載されている。
そして、前記「第3の実施の形態」においては、段落【0047】及び【0051】に記載されるように、「pFinFET領域」及び「nFinFET領域」に「RIE」により「形成」するフィンに対して、同じ「フィン20」という表現を用いている。
したがって、引用例1には、引用発明における「pFinFET」ないし「nFinFET」の各「ゲート33」は、「pFinFET領域」及び「nFinFET領域」に共通して堆積された同一材料である「ポリシリコン70」を元に形成されることが、記載され、ないしは、少なくとも示唆されていると認められる。
ウ 一方、第2の3(2)及び(3)のとおり、FETのゲート電極として「金属ゲート」が好ましいとされること、nFinFETとpFinFETの各ゲートを同一材料の「金属ゲート」で形成するのが好ましいこと、当該同一材料の「金属ゲート」の仕事関数を、FETを形成する半導体材料の価電子帯と伝導帯の中間値(ミッドギャップ)近傍の値を意味する「ミッドギャップ仕事関数」に設定することは、引用例2の段落【0014】及び段落【0033】~【0038】、並びに引用例3の段落【0001】及び段落【0046】~【0049】にそれぞれ記載され、いずれも周知技術である。
エ ここで、ゲルマニウムの価電子帯と伝導帯の中間値(ミッドギャップ)が4.33eVであること、及び、前記アで指摘したように、SiGe材料のバンドギャップの大きさはゲルマニウムの原子百分率に応じて決まることは、当業者の技術常識である。したがって、引用発明において、前記アのように「一定」のゲルマニウム原子百分率を50パーセントより大きくした「SiGe層10b」は、ゲルマニウムにより近似したミッドギャップを有すると認められる。
オ そして、本願明細書の記載を参照しても、本願発明が「ゲート電極」を「4.25eVと4.4eVとの間の仕事関数を有する」材料で形成した意義は何ら記載されておらず、前記「4.25eVと4.4eV」の値に臨界的な意義があるとは認められない。
したがって、前記「4.25eVと4.4eV」の値は、「ゲルマニウムフィン」のゲルマニウムの組成に応じて、当業者が適宜設定できるものと認められる。
カ そうすると、前記アのように、引用発明の「SiGe層10b」の「一定」のゲルマニウム原子百分率を50パーセントより大きくしたことで、「pFinFET」及び「nFinFET」における「前記SiGe層10bからなる複数のフィン」のゲルマニウム原子百分率を50パーセントより大きくすることに伴い、前記「nFinFET」及び前記「pFinFET」の各「ゲート33」を、「前記フィン20を含む全体に堆積」した「ポリシリコン70」と「第2のポリシリコン71」とから形成することに代えて、ゲルマニウムのミッドギャップに近似する4.25eVと4.4eVとの間の仕事関数を有する同一の金属材料で形成することは、引用例2及び3に見られる周知技術を勘案すれば、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(2)相違点3について
ア まず、本願発明において「前記複数のダミーフィンの下面と前記シャロートレンチアイソレーション領域とが、前記半導体基板の直上で同じレベルにあるダミーフィン構造」という記載は、「面」と「領域」という本質的に異なるものが「同じレベルにある」という点で、一義的に理解することが困難である。
この点について、平成28年11月28日付けで提出された意見書には、「本願請求項1および7に係る発明に「複数のダミーフィンが、前記半導体基板の直上のシャロートレンチアイソレーション領域のそれぞれに挟まれ、かつ、前記複数のダミーフィンの下面と前記シャロートレンチアイソレーション領域とが、前記半導体基板の直上で同じレベルにあるダミーフィン構造」という特徴を追加しました。
この補正は、本願の図10とこれに関連する明細書の記載を根拠としております。」と述べている。
イ そこで、本願発明の上記記載について、本願明細書及び図面の記載を参酌する。
(ア)本願明細書には、段落【0011】に「シャロートレンチアイソレーション(浅溝)(shallow trench isolation、STI)領域22は、基板の20の中か上方に形成される。ゲルマニウムフィン124と224が、STI領域22の上面の上に形成される。……その後、STI領域22の上部分は除去してもよいが、STI領域22の下部分は除去されず、隣接するSTI領域22間の再成長ゲルマニウムの上部分がゲルマニウムフィンになる。」と、段落【0028】に「22 ~ シャロートレンチアイソレーション(STI)」と記載されている。したがって、本願明細書においては、「シャロートレンチアイソレーション領域」と「シャロートレンチアイソレーション」を同一視しているか、「シャロートレンチアイソレーション」を構成する材料が配置される領域を「シャロートレンチアイソレーション領域」と呼んでいると認められる。
(イ)一方、図10には、
a 複数のダミーフィン324の下端と、シャロートレンチアイソレーション22の下面とが、基板320の上面と接していること、
b 複数のダミーフィン324の下側部分は、シャロートレンチアイソレーション22内に埋もれていること、
c シャロートレンチアイソレーション22の上面から露出する複数のダミーフィン324の上側部分は、NMOS FinFET150及びPMOS FinFET250と同様に、ゲート誘電体層で覆われていること、
が記載されている。
(ウ)そうすると、本願発明の「前記複数のダミーフィンの下面と前記シャロートレンチアイソレーション領域とが、前記半導体基板の直上で同じレベルにある」とは、本願明細書及び図面の記載を参酌すると、複数のダミーフィンの下端とシャロートレンチアイソレーション領域の下面とが、半導体基板の上面と接することで、前記半導体基板の直上で同じレベルにあるという図10の上記aの記載を意味すると認められる。
さらに、本願発明の「ダミーフィン」とは、上記(ア)及び(イ)で指摘した本願明細書及び図面の記載から、ゲート誘電体層で覆われている部分と覆われていない部分とを含むと解される。
ウ さて、高精度なパターン寸法でFinFETを形成するために、FinFETを形成する部位以外の領域にダミーフィンを配置することは、第2の3(4)ア~ウ、及び、第2の3(5)ア~イで摘記したように、引用例4及び引用例5に記載され、フィン型FETの技術分野において周知技術である。
してみれば、引用発明において、高精度なパターン寸法で「pFinFET」と「pFinFET」をそれぞれ形成するために、「pFinFET領域」及び「nFinFET領域」以外の領域にダミーフィンを配置することは、上記周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものと認められる。
そして、引用例4には、第2の3(4)イで摘記したように、段落【0055】に「第1の実施の形態の図1~図4における工程は、第4の実施の形態と同一である」と記載され、FinFETのフィンとダミーフィンを同一の工程で形成することが記載され、当該記載に照らせば、引用発明において、上記周知技術に基づいてダミーフィンを「pFinFET領域」及び「nFinFET領域」以外の領域に形成するときに、前記「pFinFET領域」及び前記「nFinFET領域」以外の領域において、「前記バッファ層10a及び前記SiGe層10bをRIEによりパターニング」して「複数のフィン20」を形成した後、「素子分離膜60」を「前記バッファ層10aが埋め込まれるよう堆積、充填」することは、当業者が普通に行い得るものと認められる。
このとき、「前記pFinFET領域及び前記nFinFET領域」以外の領域に設けられる「複数のフィン20」のそれぞれは、隣接する「フィン20」との間の溝状部に「堆積、充填され」た「素子分離膜60」で挟まれ、かつ、当該「複数のフィン20」のそれぞれを構成する「バッファ層10a」の下面と、前記「素子分離膜60」の下面は、引用発明の「半導体基板」を構成する「Si半導体層10c」の上面と接し、両者は「Si半導体層10c」の直上で同じレベルにある構成となるとともに、前記「フィン20」のうち「SiGe層10b」の周囲にだけ「ゲート絶縁膜31」が形成されると認められる。
そうすると、引用発明において、上記周知技術に基づいて、「前記pFinFET領域及び前記nFinFET領域」以外の領域に設けられる「複数のフィン20」は、本願発明の相違点3に係る構成を備える「ダミーフィン構造」に相当すると認められる。
エ 以上から、引用発明に引用例4及び5にみられる周知技術を適用して、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(3)意見書の主張について
ア なお、審判請求人は、平成28年11月28日に提出した意見書において、
(ア)「審判官殿は、引用文献4に「ダミーフィン200A~200C」を半導体基板の直上に形成することが記載されると指摘されています。
しかしながら、引用文献4の段落[0055]~[0058]の記載及び図14~15によると、引用文献4には、「複数のダミーフィンが半導体基板の直上のシャロートレンチアイソレーション領域のそれぞれに挟まれ、かつ、複数のダミーフィンの下面とシャロートレンチアイソレーション領域とが半導体基板の直上で同じレベルにあること」が開示または示唆されていません。
特に、審判官殿が指摘するように、「ダミーフィン200A~200C」が半導体基板の直上に形成されていますが、シャロートレンチアイソレーション領域(70)は、半導体基板(10)に埋め込まれています。」
(イ)「引用文献4および5に基づく限り、当業者であっても、「ダミーフィン構造がn型FinFETおよびp型FinFET以外に構成されており、複数のダミーフィンが半導体基板の直上のシャロートレンチアイソレーション領域のそれぞれに挟まれ、かつ、複数のダミーフィンの下面とシャロートレンチアイソレーション領域とが半導体基板の直上で同じレベルにあること」を想到することは不可能です。」
(ウ)「さらに、当業者であっても本願発明が提供する効果を予想できるものではありません。」
と主張している。
イ 上記(ア)及び(イ)の主張については、引用発明と引用例4及び引用例5にみられる周知技術に基づいて、本願発明の「ダミーフィン」に相当する「前記pFinFET領域及び前記nFinFET領域」以外の領域に設けられる「複数のフィン20」を形成することは、当業者が容易に想到し得たものであることは、第2の5(2)ア~エで指摘したとおりである。
なお、本願明細書には、段落【0011】に「シャロートレンチアイソレーション(浅溝)(shallow trench isolation、STI)領域22は、基板の20の中か上方に形成される。」と記載され、「シャロートレンチアイソレーション」領域22を「基板の20の中」に形成することで、「前記複数のダミーフィンの下面と前記シャロートレンチアイソレーション領域とが、前記半導体基板の直上で同じレベルにあるダミーフィン構造」を形成することは、本願明細書にも記載されている。
したがって、上記(ア)及び(イ)の主張は採用できない。
ウ 本願明細書には、段落【0022】に「ダミーフィンは又、いかなるFinFETの形成にも用いられないが、ゲルマニウムフィン124と224の形成において、パターンローディング効果を減少させるために形成される。」と記載されている。
しかしながら、第2の3(5)アで摘記したように、「フィンF11,F21,F22,F31,F32,F33へパターン加工する際においては、そのパターンの粗密に応じて、たとえば、光近接効果などの影響を受ける場合があるために、パターン加工後のパターン寸法に、誤差が生ずる場合がある」ところ「パターン加工を実施する際には、各finFET100,200,300にダミーフィンDF11,DF12,DF21,DF22,DF31,DF32を形成し、パターンの粗密を均一化」することが、引用例5の段落【0199】~【0200】に記載されている。
したがって、ダミーフィンを設けることで、集積回路を形成するための回路パターンの粗密に伴う寸法変動という「パターンローディング効果」を減少できることは、引用例4及び引用例5の記載に基づいて、当業者が予期し得たものと認められる。
また、本願発明の他の効果も、引用発明及び引用例2ないし5に記載された技術に基づいて、当業者が予期し得たものと認められる。
よって、上記(ウ)の主張は採用できない。
6 小括
以上のとおりであるから、相違点1~3は、引用例2ないし5にみられる周知技術及び技術常識を勘案すれば、引用発明から当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものである。
そして、本願発明の効果も、引用発明、引用例2ないし5にみられる周知技術及び技術常識から、当業者が予期し得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2ないし5にみられる周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
第3.結言
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2ないし5にみられる周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2015-011051