特許異議申立
2024-700249
高炉の操業方法及び銑鉄の製造方法
- 審判番号
- 2024-700249
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-054828
- 登録番号
- 7348466
- 請求日
- 2024年03月19日
- 審決日
- 2024年07月29日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本製鉄株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】勝俣 智夫
- 【権利者代理人】山口 洋
- 【権利者代理人】堀田 耕一郎
- 【権利者代理人】山口 健吾
- 【権利者代理人】飯田 恭宏
- 【権利者代理人】井口 翔太
- 【異議申立人】吉田 敦子
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1651.121-Y (C21B) / P1651.537-Y (C21B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7348466号発明「高炉の操業方法及び銑鉄の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7348466号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7348466号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成31年3月22日の出願であって、令和5年9月12日にその特許権の設定登録がなされ、同年9月21日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、令和6年3月19日に特許異議申立人吉田敦子(以下、「申立人」という。)より請求項1~3(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件である。
第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下、これらをそれぞれ「本件発明1」~「本件発明3」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
焼結鉱を少なくとも含む鉄源とコークスとを装入し、気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材と微粉炭とを吹き込むことで銑鉄を製造する高炉の操業方法であって、
前記焼結鉱の還元粉化指数は、24%以上34%以下であり、
前記微粉炭の使用量は、150kg/tp以上220kg/tp以下であり、
前記補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下であり、
前記焼結鉱の装入量は、前記鉄源の質量に対して、70質量%以上である、高炉の操業方法。
【請求項2】
前記コークスの使用量は、300kg/tp以下である、請求項1に記載の高炉の操業方法。
【請求項3】
焼結鉱を少なくとも含む鉄源とコークスとを高炉に装入し、気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材と微粉炭とを前記高炉に吹き込むことで、前記鉄源を還元して銑鉄を得る銑鉄の製造方法であって、
前記焼結鉱の還元粉化指数は、24%以上34%以下であり、
前記微粉炭の使用量は、150kg/tp以上220kg/tp以下であり、
前記補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下であり、
前記焼結鉱の装入量は、前記鉄源の質量に対して、70質量%以上である、銑鉄の製造方法。」
第3 特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として次の甲第1~5号証を提出し、以下の特許異議申立理由により、請求項1~3に係る特許を取り消すべきである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:R. Fruehling et al.“Co-Injection of Pulverized Coal and Natural Gas into the Blast Furnace”, AISTech 2005 Proceedings-Volume I, p.481-489(当審注:「Fruehling」の「ue」は「u」にウムラウト)
甲第2号証:特開2009-221547号公報
甲第3号証:特開2013-147692号公報
甲第4号証:篠原貴司他,「塩化カルシウム添加によるRDI改善技術と設備腐食影響評価」, CAMP-ISIJ Vol.21(2008) p.888
甲第5号証:特許第7348466号公報
なお、以下、甲第1~5号証をそれぞれ「甲1」~「甲5」という。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1、3は、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるため、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件発明1~3は、「低コークス比の操業条件において、より安定して継続した操業が可能な高炉の操業方法及び銑鉄の製造方法を提供する」という本件発明の課題を解決し得ないものを含むから、本件の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 特許異議申立理由の検討
当審は、以下に示すとおり、上記特許異議申立理由はいずれも採用できないと判断する。
1 申立理由1(進歩性)
1-1 各甲号証の記載事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1の記載事項
甲1には次の記載がある。なお、翻訳は申立人によるものである。また、下線は当審で付した。以下、同じ。
ア「ABSTRACT
Of late countries with abundant reserve of natural gas consider the possibility of pulverized coal and natural gas co-injection into the blast furnace. This mode of operation will lead to optimizing coke saving as well as raising the blast furnace productivity. Blast furnace models were utilized to project the technical parameters and determine the feasibility of the operation. The simulation was based on the current operation data of four blast furnaces at Novolipetsk Iron and Steel plant (Russia) and shows the advantage of the operation in terms of technical feasibility as well as maximum financial gain, using the low priced available natural gas in the county.」(481頁,1-7行)
(翻訳)
「要約
天然ガスの埋蔵量が豊富な最近の国々では、高炉への微粉炭と天然ガスの同時吹込みの可能性が検討されている。この運転モードは高炉生産性の向上だけでなくコークス節約の最適化につながる。高炉モデルを用いて技術的パラメータを予測し、操業の実現可能性を決定した。シミュレーションはNovolipetsk製鉄所(ロシア)の4つの高炉の現在の操業データに基づいており、国内の低価格利用天然ガスを用いて、技術的実現可能性および最大財務利益の点で操業の利点を示した。」
イ「The thermal, chemical and operative parameters at different fuel injection rates are shown in the sample table No.8
The model calculated coke replacement ratio for coal at 0,84 and natural gas coke replacement ratio was taken at 1, 12 corresponding to the plant experience.」(486頁,12-14行)
(翻訳)
「異なる燃料吹込み比における熱的、化学的及び操業パラメータをサンプルtable No.8に示す。
モデルは石炭のコークス代替比を0.84と計算し、天然ガスのコークス代替比をプラント経験に応じて1.12とした。」
ウ「Important point to note here is that combined injection of n.gas and coal in term of equivalent fuel injected as indicated in the table No 6. were well above PCI rate of 150 kg/thm.
This level of injection for PCI only would have required far more stringent material quality and furnace operative control. This is where the advantage of co-injection lies, compared to single PCI operation.」(486頁,26-29行)
(翻訳)
「ここで注意すべき重要な点は、table No.6に示されているように、n.ガス及び石炭の同時吹込みは、吹込まれた等価燃料に関してPCI比150 kg/thmを大きく上回っていた。
PCIのみのためのこのレベルの吹込みは、はるかに厳格な材料品質と炉の操業制御を必要とするであろう。これが、単独PCI吹込みと比較した同時吹込みの利点である。」
エ「
[図:0001413361000001.jpg]
」(486頁)
(翻訳)
「
[図:0001413361000002.jpg]
」
オ「There are three runs by the model which we consider here.
First run depicts the case where PCI only is applied to the four blast furnaces at moderate injection rates of 100-130 kg/thm. This level of PCI is consistent with the present level of natural gas injection shown as the base case in table no. 6. The coke consumption in this case is not significantly reduced compared with the base case. However at the same coal equivalent rates (co-injection case one - table No 6.) we see lower coke consumption rates.
Co-injections in case two and case three are about PCI injection rates of 130 and 150 kg/thm in combination with natural gas injection, within the blast furnace operative conditions already mentioned (flame temperature, productivity, etc). Dia. no.1
The resulting coke consumptions are clearly a significant improvement for the existing cost of hot metal operation Dia no2.
The detailed cost data used in this estimate was based on the very low priced natural as it is the case in Russia with market prices assumed for coke, PCI cost and the utilities.
These modes of operation of the blast furnaces were subject to minimum requirements outlined in table no. 7.」(486頁下から3行-487頁8行)
(翻訳)
「ここで考えるモデルには3つの実験がある。
最初の実験では、PCIのみが100-130 kg/thmの中程度の吹込み比で4つの高炉に適用された場合を示している。このPCIのレベルは、table no.6のベースケースとして示されている現在の天然ガス吹込みレベルと一致している。このケースのコークス消費は、ベースケースと比較して大幅に減少しない。しかし、同じ石炭換算比(同時吹込みケース1? table No.6)では、コークス消費率は低い。
ケース2及びケース3における同時吹込みは、既に述べた高炉操業条件(火炎温度、生産性等)、Dia.no.1の範囲内で、天然ガス吹込みと組合わせて約130及び150 kg/thmのPCI吹込み比である。
結果として得られたコークス消費量は、溶銑操業Dia no2の既存のコストに対して明らかに著しい改善である。
この評価に使用された詳細なコストデータは、ロシアの場合と同様に、コークス、PCIコストおよび公益事業の市場価格を想定して、非常に低価格の天然ガスに基づいている。
高炉のこれらの運転モードは、table no.7に概説されている最低限の要件に従っている。」
カ「
[図:0001413361000003.jpg]
」(487頁)
(翻訳)
「
[図:0001413361000004.jpg]
」
キ「
[図:0001413361000005.jpg]
」(489頁)
(翻訳)
「
[図:0001413361000006.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)のアには、「高炉への微粉炭と天然ガスの同時吹込みの可能性が検討されている」と記載されているから、上記(1)のウの「n.ガス及び石炭の同時吹込み」の「石炭」、及び、上記(1)のキのTable No.8の第1行の最右欄の「石炭+ガス」の「石炭」は、いずれも上記(1)のアの「微粉炭」を意味していると解される。
そうすると、上記(1)のオの「ケース3における同時吹込み」とは、上記(1)のアの「微粉炭と天然ガスの同時吹込み」を意味していると解される。
イ また、上記(1)のキのTable no.8の第1~2欄には番号及び項目が記載されており、そのうち「19 焼結鉱」、「20 ペレット」、「21 塊鉱」、「22 全鉱石」について、「ケース3」では、それぞれ85.6%、14%、0.2%、1591kg/thmと記載されている。
さらに、同じく、「29 コークス消費量」、「30 天然ガス」、「31 石炭吹込み」、「32 燃料比」について、「ケース3」では、それぞれ343kg/thm、18kg/thm、150kg/thm、511kg/thmと記載されており、この「31 石炭吹込み」の「石炭」は、上記アの「微粉炭」に相当する。
ウ そうすると、上記(1)及び上記ア~イより、甲1のケース3の高炉の操業方法に注目すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「Novolipetsk製鉄所(ロシア)の高炉の現在の操業データに基づいてシミュレーションした高炉の操業方法において、
微粉炭と天然ガスの同時吹込みを行い、
鉄鉱石として、焼結鉱85.6%、ペレット14%、塊鉱0.2%を用い、
燃料として、コークス343kg/thm、天然ガス18kg/thm、微粉炭150kg/thmを用いる高炉の操業方法。」
(3)甲2の記載事項
ア 甲2には次の記載がある。
「【0006】
従って本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、水素含有率の高い還元材を吹き込む高炉操業を行なう際に、炉内の低温領域の拡大と、炉頂ガス温度の低下を防止可能な高炉操業方法を提供することにある。」
「【0009】
本発明では、予熱ガスをシャフト部から高炉の炉内に吹き込むことで、水素含有率の高い還元材を吹き込んだ際に問題となる低温領域の拡大と炉頂温度の低下を防止する。」
「【0017】
予熱ガスとして還元性ガスを用いる際には、高炉に原料を装入する際に、周辺部に低還元粉化性(RDI)焼結鉱、塊鉱石等の低反応性鉱を装入することが好ましい。予熱ガスの吹込みにより炉周辺部のガス還元が促進されるためである。還元性ガスとしては、CO、H2等を用いることが好ましい。」
「【0020】
本発明を内容積5000m3の高炉における各種水素含有還元材吹き込み操業に適用した。出銑比2.3t/m3/d、羽口先温度を2200℃、微粉炭吹込み量が160kg/tの操業において、水素含有還元材としてLNG(CH4:88.5vol%、C2H6:4.6vol%、C3H8:5.4vol%、その他:1.5vol%)とCOG(H2:58.45vol%、CO:6.35vol%、CH4:27.35vol%、CO2:1.92vol%、N2:2.31vol%、その他炭化水素:3.62vol%)、COG改質ガス(H含有率約65vol%、CO含量35vol%:H2含有率約11.7質量%)、H2を用い、操業条件を適宜変更して操業試験を行なった。」
「【0022】
【表1】
[図:0001413361000007.jpg]
」
「【実施例2】
【0024】
本発明例8として、上記実施例1の本発明例1の条件において、高炉半径方向周辺から無次元半径位置で1/4の範囲にRDI=38%の焼結鉱を、無次元半径位置で1/4から中心にかけて、RDI=35%の焼結鉱を装入した。通気抵抗指数の通常操業との相対値は通常操業と同等となった(1.0)。
【0025】
本発明例9として、上記実施例1の本発明例7の条件において、高炉半径方向周辺から無次元半径位置で1/4の範囲にRDI=31%の焼結鉱を、無次元半径位置で1/4から中心にかけて、RDI=35%の焼結鉱を装入した。通気抵抗指数の通常操業との相対値は本発明例7で0.99であったものが、0.97となった。」
イ 甲2に記載された事項
上記アより、甲2には次の事項が記載されている。
「水素含有率の高い還元材を吹き込んだ際に問題となる低温領域の拡大と炉頂温度の低下を防止するために、予熱ガスをシャフト部から高炉の炉内に吹き込む高炉操業方法において、
予熱ガスの吹込みにより炉周辺部のガス還元が促進されるため、高炉半径方向周辺から無次元半径位置で1/4の範囲にRDI=31%の焼結鉱を、無次元半径位置で1/4から中心にかけて、RDI=35%の焼結鉱を装入する技術事項。」
(4)甲3の記載事項
ア 甲3には次の記載がある。
「【請求項1】
高炉の少なくともシャフト部から改質COGを吹き込むと共に、焼結鉱を炉内に装入するに当たっては、還元粉化指数(RDI)の低い焼結鉱を炉壁側の位置に、そして還元粉化指数(RDI)の高い焼結鉱を炉中心側の位置に装入して操業することを特徴とする高出銑比高炉操業方法。
・・・(略)・・・
【請求項3】
還元粉化指数の低い焼結鉱は、炉半径方向における無次元半径で炉壁から炉中心に向って、1/4までの範囲の位置に装入すること特徴とする請求項1または2に記載の高出銑比高炉操業方法。
【請求項4】
還元粉化指数の低い焼結鉱は、RDI値で34%未満の焼結鉱であること特徴とする請求項3に記載の高出銑比高炉操業方法。
【請求項5】
前記還元粉化指数の高い焼結鉱は、炉半径方向における無次元半径で炉壁から炉中心に向って、1/4~4/4の範囲の位置に装入すること特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の高出銑比高炉操業方法。
【請求項6】
還元粉化指数の高い焼結鉱は、RDI値で34%以上の焼結鉱であること特徴とする請求項5に記載の高出銑比高炉操業方法。」
「【0003】
また、羽口から水素を吹き込む場合、羽口前空間の温度を確保するために、高酸素富化操業が必要となるが、この方法の場合は窒素ガス量が相対的に減少してトータルガス量が減少する。そのため、高炉内での熱流比が高くなり、炉上部の温度が低下するなどして、焼結鉱の低温域滞留時間が長くなる。その結果、焼結鉱中のFe2O3からFe3O4への還元に伴う体積膨張による粉化現象、いわゆる還元粉化が増大し、高炉内の通気性を悪化させるという問題があった。」
「【0014】
そこで、本発明の目的は、改質COGを用いて、低コークス比を維持しつつ高出銑比高炉操業ができる方法を提案することにある。」
「【0017】
前述のような構成を有する本発明方法によれば、水素を含有する改質COGを高炉の少なくともシャフト部から吹き込むと共に、焼結鉱を低RDIのものと高RDIのものとに分別して炉半径方向の異なる位置に装入することで、焼結鉱の炉内での還元粉化を抑制することができるから、安定した高炉の操業が可能になると同時に、出銑量の増大が図れる。さらに、本発明によれば、改質COGを適量使用すること、及びその吹き込みの位置を特定することによって、低コークス比操業をも同様に達成することができる。」
「【0043】
・・・(略)・・・
還元ガス中に水素を添加した場合の方が、焼結鉱の粒内拡散係数が大きく、還元反応において水素分子が焼結鉱内部へよく拡散し還元がよく進行することが判る。一方で、還元ガス中に水素を添加しない場合、すなわちCO還元が進行する場合、表面破壊が優勢の還元粉化がよく進むが、還元ガス中に水素を添加した場合には、水素分子が焼結鉱内部にまで入り、その内部を起点として焼結鉱が割れる体積破壊が優勢に進むことがわかった。」
「【0046】
このように、水素リッチな改質COG吹き込み雰囲気下で焼結鉱を還元しようとした場合、上記のような高・低RDI焼結鉱の通常の積層装入では、特に炉壁側において焼結鉱内部への水素分子の拡散により還元粉化が進行し還元元粉化率が増大する。そこで、本発明では、図10に示すように、高RDI焼結鉱を炉の中心側の位置に装入し、一方、低RDI焼結鉱の多くが炉壁側に堆積するように装入することにした。その結果、高RDI焼結鉱が改質COGに接触する機会が少なくなるため、焼結鉱の還元粉化が抑制され、還元粉化率も低下して出銑量の増加が期待できるようになる。」
「【0047】
次に、前記改質COGについて説明する。この改質COGについて、本発明では、ガス中に含まれるH2の含有量によって決定する。一般に、製鉄所ではコークスを製造する際にコークス炉ガス(COG)が発生するが、このCOG中のH2含有量は50vol%程度である。これに対し、本発明で使用する改質COGとは、上記COGの熱エネルギーを利用して、COG中に含まれる炭化水素やタールを熱分解しながら、COG中のH2含有量を10~20vol%程度増加させたガスである。従って、本発明で使用可能な改質COGとは、このガス中に含まれるH2の含有量が60~70vol%程度のものである。」
「【0050】
炉半径方向の炉壁から炉中心に向って1/4~4/4までの範囲の位置に装入する焼結鉱のRDI値を37.6%と一定にし、炉壁から炉半径方向の中心部に向って1/4までの範囲の位置に装入する焼結鉱のRDI値が33.8%と34.5%の場合とでは出銑量が大きく異なっている。以上の結果から、本発明では、RDI値が34%以上の焼結鉱を高RDI焼結鉱とし、RDI値が34%未満の焼結鉱を低RDI焼結鉱と定義することにした。」
「【0052】
本発明方法に従い、図8に示すような内容積5000m3の高炉に改質COG吹き込みの操業を行なった。即ち、羽口先温度が2200℃、羽口から吹き込む送風温度が1140℃の高炉操業において、水素含有還元材である改質COG(H2含有量:65vol%、CO含有量:35vol%)を、150Nm3/t、200Nm3/t、300Nm3/tの条件について、炉内温度が1200℃程度のシャフト部から吹き込む操業と、200Nm3/tの改質COGを炉内温度が1100℃程度および1300℃程度の位置から吹き込む操業とを行った。なお、改質COGについては、このガス中に含まれる全ての炭化水素、タールを熱分解し、水素濃度を15%増量させたものを用いた。」
「【0055】
これらの表に示すように、比較例1は、改質COGを全く吹き込まない操業であり、比較例2は、炉内温度1200℃の領域から改質COGを少量(100Nm3/t)吹き込んだ操業例である。比較例1と比較例2とを比べた場合、この両者の間では出銑量の大幅な増加は見込まれず殆ど同じであった。
【0056】
これに対し、発明例1は、炉内温度が1200℃のシャフト部から改質COGを150Nm3/t吹き込んだ操業例である。この発明例1を比較例1と比べると、発明例の方が出銑量にして351t/day多く、還元材比は37kg/t減少した。発明例1と比較例2とを比べると、発明例1の方が出銑量は341t/day多く、還元材比は19kg/t少なかった。」
「【0073】
【表3】
[図:0001413361000008.jpg]
」
イ 甲3に記載された事項
上記アより、甲3には次の事項が記載されている。
「高炉操業方法において、水素を含有する改質COGを高炉の少なくともシャフト部から吹き込むと共に、還元粉化指数(RDI)が34%未満の焼結鉱を炉半径方向における無次元半径で炉壁から炉中心に向って、1/4までの範囲の位置、すなわち、炉壁側の位置に、そして還元粉化指数(RDI)が34%以上の焼結鉱を炉半径方向における無次元半径で炉壁から炉中心に向って、1/4~4/4の範囲の位置、すなわち、炉中心側の位置に装入することで、焼結鉱の炉内での還元粉化を抑制することができるから、安定した高炉の操業が可能になると同時に、出銑量の増大が図れ、さらに、改質COGを適量使用すること、及びその吹き込みの位置をシャフト部の所定位置に特定することによって、低コークス比操業をも同様に達成することができる技術事項。」
1-2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 「高炉」とは、一般的に、「製鉄用の溶鉱炉。高さのある円筒形の炉で、上部から原料鉱石とコークス・石灰石を入れて溶錬し、下方にたまった銑鉄(せんてつ)を取り出す」(「デジタル大辞林」)ものである。
また、甲1発明は、「鉄鉱石として、焼結鉱85.6%」「を用い」るものである。
そうすると、甲1発明の「高炉の操業方法」は、本件発明1の「焼結鉱を少なくとも含む鉄源とコークスとを装入」する「銑鉄を製造する高炉の操業方法」に相当する。
イ 甲1発明の「天然ガス」は、本件発明1の「気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材」に相当するから、甲1発明の「微粉炭と天然ガスの同時吹込みを行」う事項は、本件発明1の「気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材と微粉炭とを吹き込む」事項に相当する。
ウ kg/thmはkg/tpに相当するから、甲1発明の「燃料として、」「天然ガス18kg/thm、微粉炭150kg/thmを用いる」事項は、本件発明1の「微粉炭の使用量は、150kg/tp以上220kg/tp以下であり、前記補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下であ」る事項に相当する。
エ 甲1発明の「鉄鉱石として、焼結鉱85.6%」「を用い」る事項は、本件発明1の「焼結鉱の装入量は、前記鉄源の質量に対して、70質量%以上である」事項に相当する。
オ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「焼結鉱を少なくとも含む鉄源とコークスとを装入し、気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材と微粉炭とを吹き込むことで銑鉄を製造する高炉の操業方法であって、
前記微粉炭の使用量は、150kg/tp以上220kg/tp以下であり、
前記補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下であり、
前記焼結鉱の装入量は、前記鉄源の質量に対して、70質量%以上である、高炉の操業方法。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1)
本件発明1では、「焼結鉱の還元粉化指数は、24%以上34%以下であ」るのに対し、甲1発明では、焼結鉱の還元粉化指数が不明である点。
(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 上記1-1の(3)のイより、甲2には、次の技術事項が記載されている。
「水素含有率の高い還元材を吹き込んだ際に問題となる低温領域の拡大と炉頂温度の低下を防止するために、予熱ガスをシャフト部から高炉の炉内に吹き込む高炉操業方法において、
予熱ガスの吹込みにより炉周辺部のガス還元が促進されるため、高炉半径方向周辺から無次元半径位置で1/4の範囲にRDI=31%の焼結鉱を、無次元半径位置で1/4から中心にかけて、RDI=35%の焼結鉱を装入する技術事項。」
イ また、上記1-1の(4)のイより、甲3には、次の技術事項が記載されている。
「高炉操業方法において、
水素を含有する改質COGを高炉の少なくともシャフト部から吹き込むと共に、還元粉化指数(RDI)が34%未満の焼結鉱を炉半径方向における無次元半径で炉壁から炉中心に向って、1/4までの範囲の位置、すなわち、炉壁側の位置に、そして還元粉化指数(RDI)が34%以上の焼結鉱を炉半径方向における無次元半径で炉壁から炉中心に向って、1/4~4/4の範囲の位置、すなわち、炉中心側の位置に装入することで、焼結鉱の炉内での還元粉化を抑制することができるから、安定した高炉の操業が可能になると同時に、出銑量の増大が図れ、さらに、改質COGを適量使用すること、及びその吹き込みの位置をシャフト部の所定位置に特定することによって、低コークス比操業をも同様に達成することができる技術事項。」
ウ さらに、上記1-1の(1)のカより、甲1におけるケース2の操業方法は、RDIが「<33」である(Table no.7参照。)。
エ ここで、本件発明1の「焼結鉱の還元粉化指数は、24%以上34%以下であ」るところ、上記アのとおり、甲2には、高炉半径方向周辺から無次元半径位置で1/4の範囲にRDI=31%の焼結鉱を装入することが記載されているものの、当該技術は1/4から中心にかけてはRDI=35%の焼結鉱を装入するものであって、それにより予熱ガスの吹込みにより炉周辺部のガス還元を促進するものである。
オ また、上記イのとおり、甲3には、還元粉化指数(RDI)が34%未満の焼結鉱を炉壁側の位置に挿入するものであるものの、当該技術は、炉中心側の位置に還元粉化指数(RDI)が34%以上の焼結鉱を装入するものであって、それにより、焼結鉱の炉内での還元粉化を抑制することができるから、安定した高炉の操業が可能になると同時に、出銑量の増大が図れるものである。
カ そうすると、上記エ、オより、甲2、甲3に記載された事項は、還元粉化指数について、炉壁側と中心側とで異ならせるものであって、焼結鉱全体の還元粉化指数を調整する思想がない。
キ また、上記ウのとおり、甲1におけるケース2の操業方法は、RDIが「<33」であるものの、当該RDIを甲1発明に適用する動機がないし、また、甲2、甲3に記載された事項を考慮したとしても、当該事項は、上記カのとおり、炉壁側と中心側とで異ならせるものであるから、甲1発明において、ケース2のRDIを採用して「<33」とする動機とはなりえない。
ク さらに、本件発明1の「焼結鉱の還元粉化指数」は、「24%以上」であることにより、「焼結鉱の被還元性(RI:Reduction index)が小さくなり、炉体10の内部の還元ガスによる焼結鉱の還元が抑制され」、「そのため、融着帯30の厚みが厚くなり、炉下部においてガスの圧力損失が増大し、その結果、炉内の状況が変動し、操業が不安定となる」(【0038】)ことを防ぐという効果を奏するものであるところ、甲1のケース2では、「焼結鉱の還元粉化指数」の下限が特定されていない。
ケ そうすると、仮に、甲1発明において、ケース2のRDIを採用できたとしても、「焼結鉱の還元粉化指数」を「24%以上」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
コ そして、上記ケの検討結果は甲4を参酌しても変わらない。
サ したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
シ よって、本件発明1は、甲1発明、及び甲1~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
1-3 本件発明3について
(1)対比・判断
ア 本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1で相違する。
イ そして、上記相違点1については、上記1-2の(2)で検討したとおりであるから、同様の理由により、本件発明3も、甲1発明、及び甲1~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 申立理由2(サポート要件)
(1)本件発明の解決しようとする課題は、「低コークス比の操業条件において、より安定して継続した操業が可能な高炉の操業方法及び銑鉄の製造方法を提供すること」(【0009】)であると認める。
(2)そして、本件出願の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)には、次の記載がある。
「【0035】
本実施形態に係る高炉の操業方法は、焼結鉱を少なくとも含む鉄源とコークスとを装入し、気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材と微粉炭とを吹き込むことで銑鉄を製造する方法である。そして、同方法において、焼結鉱の還元粉化指数は、24%以上34%以下であり、微粉炭の使用量は、150kg/tp以上220kg/tp以下であり、補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下である。また、本実施形態に係る銑鉄の製造方法は、上記高炉の操業方法により銑鉄を得る方法である。」
「【0038】
本実施形態において、焼結鉱としては、還元粉化指数(RDI:Reduction disintegration index)が24~34%のものを使用する。・・・(略)・・・RDIが24%未満であると、焼結鉱の被還元性(RI:Reduction index)が小さくなり、炉体10の内部の還元ガスによる焼結鉱の還元が抑制される。そのため、融着帯30の厚みが厚くなり、炉下部においてガスの圧力損失が増大し、その結果、炉内の状況が変動し、操業が不安定となる。一方で、RDIが34%を超えると、炉上部で焼結鉱が粉化して炉上部におけるガスの圧力損失が増大し、塊状帯20の積層状態が乱れ、鉄源の還元効率が低下する可能性がある。」
「【0051】
[2.2.2.微粉炭]
微粉炭比は、150kg/tp以上220kg/tp以下とする。当該範囲の微粉炭を炉内に吹き込むことで、コークス比を低減しつつ、未燃チャーの生成が抑制される。」
「【0054】
補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下とする。当該範囲の補助還元材を炉内に吹き込むことで、補助還元材の分解によって発生する水素ガスが鉄源の還元に供するため、融着帯30が薄層化する。その結果、炉下部における圧力損失の増大が抑制される。」
(3)上記(2)の記載からすると、「焼結鉱を少なくとも含む鉄源とコークスとを装入し、気体還元材または液体還元材の少なくともいずれかを含む補助還元材と微粉炭とを吹き込むことで銑鉄を製造する方法」において、「焼結鉱の還元粉化指数は、24%以上34%以下であり、微粉炭の使用量は、150kg/tp以上220kg/tp以下であり、補助還元材の使用量は、10kg/tp以上50kg/tp以下」とすることにより、上記(1)の課題を解決し得ることが理解できる。
(4)また、本件明細書の実施例(【0057】~【0072】)において、本件発明1~3のいずれにも該当する実施例1~7の高炉の操業方法または銑鉄の製造方法は、低コークス比(230kg/tpまたは250kg/tp)の操業条件において、操業安定性が良好であるとの結果が得られている(表2参照。)。
(5)そうすると、本件発明1~3は、本件発明の解決しようとする課題を解決し得るものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
(6)なお、申立人は特許異議申立書において、(ア)微粉炭の使用量を請求項1、3の最小値である150kg/tp、補助還元材の使用量を請求項1、3の最小値である10kg/tpとした場合、コークス比が大きくなるから、上記(1)の課題を解決し得ないこと、及び、(イ)微粉炭の使用量を150kg/tp、及び、補助還元材の使用量を10kg/tpとした場合、コークスの使用量が300kg/tpを超えるため、本件発明2の「前記コークスの使用量は、300kg/tp以下である」との発明特定事項と矛盾する旨主張している。
(7)まず、上記(6)の(ア)の点について検討する。
本件明細書には、「本実施形態において、コークス比は、特に限定されず、任意の範囲、例えば230kg/tp以上350kg/tp以下の範囲で用いることができる」(【0049】)と、コークス比は特に限定されないことが記載されている。
また、上記(1)の課題からすると、本件発明1、3は、「低コークス比の操業条件において、より安定して継続した操業が可能な」ものを提供できればよいので、高いコークス比での操業を否定するものではないと解される。
したがって、本件発明1、3は、低コークス比であることが特定されていなくても、上記(1)の課題を解決し得るものである。
(8)次に、上記(6)の(イ)の点について検討する。
本件発明2は、「前記コークスの使用量は、300kg/tp以下である」との発明特定事項を含むものであるから、還元材比が500kg/tpという前提のもとでは、微粉炭の使用量を150kg/tp、及び、補助還元材の使用量を10kg/tpとすることはあり得ないだけであり、このようなあり得ない数値の組み合わせは当該発明に含まれないだけであって、決して矛盾するものではない。
(9)よって、申立人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~3に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700249