特許異議申立
2025-700430
保持装置
- 審判番号
- 2025-700430
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-180076
- 登録番号
- 7601606
- 請求日
- 2025年04月15日
- 審決日
- 2025年08月29日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本特殊陶業株式会社
- 【権利者代理人】田邊 淳也
- 【異議申立人】河原田 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 松永 稔
- 審判官 打出 義尚
- 審判官 綿引 隆
- 分類
- P1652.537-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7601606号発明「保持装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7601606号の請求項1、3~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7601606号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年10月28日に出願され、令和6年12月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年4月15日に特許異議申立人 河原田隆(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、前記板状部材の前記第2の面と前記ベース部材の前記第3の面との間に配置され、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合層と、を有し、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記板状部材には、前記第1の面と前記第2の面を貫通する第1の貫通孔が形成され、
前記ベース部材には、前記第3の面と前記第4の面を貫通し、前記第1の貫通孔に連通する第2の貫通孔が形成されており、
前記第2の面に、前記第1の貫通孔の開口部周辺に凹部が設けられ、
前記接合層は、前記凹部の少なくとも一部に充填配置された他の部位よりも厚い厚層部を有し、
前記凹部は、前記第1の貫通孔に向かって徐々に前記第1の面の方向に深くなるテーパ形状をなしており、
前記厚層部は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを連通させる第3の貫通孔が中央に形成された前記第1の面側に凸である
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載する保持装置において、
前記板状部材は、内部に発熱抵抗体を有し、
前記発熱抵抗体は、前記板状部材と前記ベース部材との積層方向から見たときに、前記厚層部に重なるように配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する保持装置において、
前記ベース部材は、冷媒を流すための冷媒流路を備え、
前記冷媒流路は、前記板状部材と前記ベース部材との積層方向から見たときに、前記厚層部に重ならないように配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、前記板状部材の前記第2の面と前記ベース部材の前記第3の面との間に配置され、前記板状部材と前記ベース部材とを接合する接合層と、を有し、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記板状部材には、前記第1の面と前記第2の面を貫通する第1の貫通孔が形成され、
前記ベース部材には、前記第3の面と前記第4の面を貫通し、前記第1の貫通孔に連通する第2の貫通孔が形成されており、
前記第2の面に、前記第1の貫通孔の開口部を取り囲むように凹部が設けられ、
前記凹部は、前記第1の面の方向に深くなる形状をなしており、
前記接合層は、前記凹部の少なくとも一部に充填配置された他の部位よりも厚い厚層部を有し、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを連通させる第3の貫通孔が中央に形成された前記第1の面側に凸であり、
第3貫通孔の直径は、前記第1の貫通孔の直径と同等である
ことを特徴とする保持装置。」
第3 申立理由の概要
申立人が主張する申立理由は、次のとおりである。
本件発明1、3~4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1、3~4に係る特許は、同法第113条第4号により取消されるべきものである。
第4 申立理由の検討
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。
1 本件発明1について
(1) 本件特許の明細書の、背景技術としての、「保持装置として、例えば、特許文献1に記載された静電チャックが知られている。この静電チャックは、対象物であるウエハを保持する静電チャック基板(セラミックス部材)と、冷却用のベースプレート(ベース部材)と、両部材を接合する接合層とを備えている。そして、静電チャック基板は、発熱抵抗体を内蔵している。また、このような静電チャックには、ウエハを静電チャック基板からリフトアップするためのリフトピンが挿入されるリフトピン孔や、静電チャック基板の表面(保持面)とウエハとの間にガスを充填するためのガス孔などの貫通孔が設けられている。」(段落0002)との記載、また、発明が解決しようとする課題としての、「しかしながら、上記のような保持装置では、発熱抵抗体の露出を防止するために、貫通孔付近においては発熱抵抗体が貫通孔から少し離れた箇所(言い換えると、貫通孔を避けるよう)に配置されている。そのため、対象物を保持する保持面において、貫通孔周辺では、他の部位に比べて低温になり易い。そのため、保持面において、貫通孔周辺まで温度を均一化することが困難であった。」(段落0004)、及び、「そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、対象物を保持する保持面において、貫通孔周辺まで温度を均一化することができる保持装置を提供することを目的とする。」(段落0005)との記載によると、発明の詳細な説明には「保持装置(対象物であるウエハを保持する静電チャック)において、貫通孔付近においては発熱抵抗体が貫通孔から少し離れた箇所(言い換えると、貫通孔を避けるよう)に配置されることにより、対象物を保持する保持面において、貫通孔周辺では、他の部位に比べて低温になり易く、そのため、保持面において、貫通孔周辺まで温度を均一化することが困難であった」との、発明の課題が記載されているといえる。
一方、本件発明1の保持装置は、「前記第2の面に、前記第1の貫通孔の開口部周辺に凹部が設けられ、前記接合層は、前記凹部の少なくとも一部に充填配置された他の部位よりも厚い厚層部を有し」との構成(以下「本件構成」という。)を備えるものである。そして、本件特許の明細書の「これにより、第1の面において低温になりやすい貫通孔周辺に、接合層の厚層部が配置される。そのため、厚層部によってベース部材と板状部材との熱伝達(ベース部材による冷却)が抑制されるので、貫通孔周辺の温度低下を抑制することができる。従って、第1の面において、貫通孔周辺まで温度を均一化することができる。」(段落0007)との記載によると、当業者は、本件構成によって、上記発明の課題を解決できると認識し得る。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(2) 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の6ページにおいて、下記のとおり主張している。
「一方で、本件特許の特許請求の記載において、請求項1では、板状部材の内部に発熱抵抗体が内蔵されていること、が構成要件として特定されていない。このため、請求項1に係る発明は、上記の課題を解決し得ない構成をも広く包含するものとなっている。すなわち、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定された所謂「サポート要件」を満たしていない。」
しかしながら、本件発明1が、板状部材の内部に発熱抵抗体が内蔵されておらず、上記(1)の発明の課題を解決しない場合を含むとしても、当業者が上記(1)の発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
2 本件発明3~4について
本件発明3~4についても、本件構成を含むから、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
3 その他の申立人の主張について
本件発明4につき、申立人は、特許異議申立書の7ページにおいて、下記のとおり主張している。
「本件特許の詳細な説明には、「第3貫通孔の直径は、前記第1の貫通孔の直径と同等である」ことを示す記載は一切存在しない。・・・請求項4に記載された「第3貫通孔の直径は、前記第1の貫通孔と同等である」との事項を、本件特許の図2から読み取ることはできない。このように、本件特許の特許請求の範囲のうち、請求項4に記載された「第3貰通孔の直径は、前記第1の貫通孔の直径と同等である」との事項は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。従って、請求項4に係る発明が、特許法第36条第6項第1号に規定された所謂「サポート要件」を満たしていないことは、この点においても明らかである。」
しかしながら、本件特許の図2、図5からは、第3貫通孔45a、45bの直径が、第1貫通孔15a,15bの直径と同等であることが見て取れるから、本件発明4の「第3貰通孔の直径は、前記第1の貫通孔の直径と同等である」との発明特定事項が、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないとまではいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
4 小括
以上のとおり、本件発明1、3~4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、サポート要件に適合する。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1、3~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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