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特許異議申立

2025-700379

保持装置

審判番号
2025-700379
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-122493
登録番号
7561164
請求日
2025年04月02日
審決日
2025年07月11日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本特殊陶業株式会社
  • 【権利者代理人】田邊 淳也
  • 【権利者代理人】本多 真由
  • 【異議申立人】河原田 隆
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 緑川 隆
  • 審判官 今井 聖和
分類
P1651.121-Y (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7561164号発明「保持装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7561164号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7561164号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年8月1日に出願され、令和6年9月25日にその特許権の設定登録がされ、同年10月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年4月2日に特許異議申立人 河原田 隆(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明8」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 なお、特許異議申立書第15頁の記載を踏まえて、本件特許発明1、2については、A~Nに分説した。以下、「構成要件A」のようにして参照する。 「【請求項1】 A 対象物を保持する保持装置であって、 B 前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、 C 前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、 D 前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、 を備え、 E 前記板状部は、 前記第1面を含む第1板状部と、 前記第2面を含む第2板状部と、 前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、 を有し、 F 前記第2接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であり、 G 前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率より大きいことを特徴とする、 保持装置。 【請求項2】 H 対象物を保持する保持装置であって、 I 前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、 J 前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、 K 前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、 を備え、 L 前記板状部は、 前記第1面を含む第1板状部と、 前記第2面を含む第2板状部と、 前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、 を有し、 M 前記第2接合部は樹脂を主成分とし、 N 前記第2接合部の熱抵抗は、120℃の時に2.5×10-4(m2K/W)以上6.5×10-4(m2K/W)以下であることを特徴とする、 保持装置。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、 前記第2接合部の熱抵抗は、-60℃の時に5.5×10-4(m2K/W)以下であることを特徴とする、 保持装置。 【請求項4】 請求項2に記載の保持装置であって、 前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率以上であることを特徴とする、 保持装置。 【請求項5】 請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、 前記第1接合部の熱抵抗は、120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下であることを特徴とする、 保持装置。 【請求項6】 請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、 前記第2接合部の厚みは前記第1接合部の厚み以下であることを特徴とする、 保持装置。 【請求項7】 請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、 前記第2接合部および前記第1接合部の少なくともいずれか一方は、側鎖の少なくとも一部にフェニル基を備えたシリコーン樹脂を含むことを特徴とする、 保持装置。 【請求項8】 請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、 前記第2板状部のうち、前記第2面とは反対側の面側にヒーターが配置されることを特徴とする、 保持装置。」 第3 申立理由の概要 1 申立人の提出した証拠 申立人は、次の甲第1号証~甲第10号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲10」という。)を証拠として提出している。 甲第1号証(甲1):特開2022-109210号公報 甲第2号証(甲2):特開2011-91297号公報 甲第3号証(甲3):国際公開第2020/213368号 甲第4号証(甲4):特開2020-23088号公報 甲第5号証(甲5):和田 正、「新しい形態のゴム特集号 液状ゴム シリコーンゴム」、日本ゴム協会誌、第48巻、第5号、p.295-303 甲第6号証(甲6):特開2007-194320号公報 甲第7号証(甲7):特開2005-33181号公報 甲第8号証(甲8):特開2021-2641号公報 甲第9号証(甲9):特開2006-140367号公報 甲第10号証(甲10):特開2020-188194号公報 2 特許異議の申立理由 申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (1) 申立理由1(甲1を主たる証拠とした場合の進歩性欠如) 本件特許発明1~8は、甲1に記載された発明、甲2~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲2を主たる証拠とした場合の進歩性欠如) 本件特許発明1~8は、甲2に記載された発明、甲1、甲3~10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第4 申立人の提出した証拠の記載 1 甲1について (1) 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。 「【0013】 図1に示すように、第1実施形態に係る基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、補助接着層21と、静電吸着部材50とを有している。 【0014】 ベースプレート10は、静電吸着部材50を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20mm~50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電吸着部材50上に吸着されたウェハ等の基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。 【0015】 ベースプレート10の内部には、水路15が設けられている。水路15は、一端に冷却水導入部15aを備え、他端に冷却水排出部15bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却することができる。ベースプレート10には、水路15の他に、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス路等を設けてもよい。 【0016】 静電吸着部材50は、発熱部30と、静電チャック40とを有し、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する。静電吸着部材50のベースプレート10側の面にプライマー62が塗布されている。プライマー62は、例えばチタンを含んでいてもよい。プライマー62は第2プライマーの一例である。 【0017】 発熱部30は、絶縁層31と、絶縁層31に内蔵された発熱体32とを有している。発熱体32の周囲は、絶縁層31に被覆され、外部から保護されている。発熱体32としては、例えばタングステン又はモリブデンの焼結体を用いることができる。発熱体32として、圧延合金を用いてもよい。なお、発熱体32は、必ずしも絶縁層31の厚さ方向の中央部に内蔵される必要はなく、要求仕様に応じて絶縁層31の厚さ方向の中央部よりもベースプレート10側又は静電チャック40側に偏在してもよい。 【0018】 絶縁層31としては、例えば、高熱伝導率及び高耐熱性を有するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いることができる。絶縁層31の熱伝導率は3W/(m・K)以上とすることが好ましい。絶縁層31にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーを含有させることで、絶縁層31の熱伝導率を向上させることができる。また、絶縁層31のガラス転移温度(Tg)は250℃以上とすることが好ましい。また、絶縁層31の厚さは100μm~150μm程度とすることが好ましく、絶縁層31の厚さばらつきは±10%以下とすることが好ましい。 ・・・ 【0020】 静電チャック40は、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する。静電チャック40の吸着対象物である基板の直径は、例えば、8インチ、12インチ、又は18インチ程度とすることができる。 【0021】 静電チャック40は、発熱部30上に設けられている。静電チャック40は、基体41と、静電電極42とを有している。静電チャック40は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック40は、クーロン力型静電チャックであってもよい。 【0022】 基体41は誘電体であり、基体41としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いることができる。基体41の厚さは、例えば、1mm~10mm程度、基体41の比誘電率は、例えば、1kHzの周波数で9~10程度とすることができる。静電チャック40と発熱部30の絶縁層31とは直接接合されている。発熱部30と静電チャック40とを接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上することができる。発熱部30と静電チャック40とを接着剤で接合する基板固定装置の耐熱温度は150℃程度であるが、基板固定装置1では耐熱温度を200℃程度とすることができる。 ・・・ 【0024】 接着層20は、発熱部30をベースプレート10に接着している。接着層20はプライマー62に直接接触する。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーが含有されていてもよい。-110℃~250℃の温度範囲R1内で、接着層20の貯蔵弾性率は25MPa以下であり、好ましくは、-100℃~140℃の温度範囲R2内で、接着層20の貯蔵弾性率は21MPa以下である。図2は、接着層20の例における温度と貯蔵弾性率との関係を示す図である。・・・ 【0025】 接着層20の厚さは、好ましくは0.4mm以下である。接着層20の厚さが0.4mm超であると、静電チャック40とベースプレート10との間の熱抵抗が過剰となるおそれがあるためである。接着層20の厚さは、より好ましくは0.3mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以下である。また、接着力の確保の観点から、接着層20の厚さは、好ましくは0.1mm以上である。 【0026】 温度範囲R1及びR2内で、接着層20の熱伝導率は、好ましくは0.5W/(m・K)以上であり、より好ましくは0.9W/(m・K)以上である。接着層20の熱伝導率が0.5W/(m・K)未満であると、静電チャック40とベースプレート10との間の熱抵抗が過剰となるおそれがあるためである。温度範囲R1及びR2内で、接着層20の熱伝導率は、更に好ましくは1.0W/(m・K)以上であり、更に一層好ましくは1.1W/(m・K)以上である。 【0027】 補助接着層21は接着層20よりも薄い。補助接着層21の厚さは、例えば0.12mm以下である。温度範囲R1及びR2内で、補助接着層21の熱伝導率は、接着層20の熱伝導率よりも高いことが好ましい。例えば、温度範囲R1及びR2内で、補助接着層21の熱伝導率は2.0W/(m・K)以上である。補助接着層21は第2接着層の一例である。 ・・・ 【0036】 装置No.1は、図3に示す特性を備えた接着層20の第1例20A及び補助接着層21を有する。接着層20の厚さは0.2mmとし、補助接着層21の厚さは0.1mmとした。」 「【図1】 [図:0001425802000001.jpg] 」 (2) 甲1に記載された事項 ア 【0013】の記載によれば、「基板固定装置1」は、「ベースプレート10」と、「接着層20」と、「補助接着層21」と、「静電吸着部材50」とを有している。 イ 【0015】の記載によれば、「ベースプレート10」の内部には、「水路15」が設けられており、「水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却することができる」。 ウ 【0016】の記載によれば、「静電吸着部材50」は、「発熱部30」と、「静電チャック40」とを有し、「吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持する」。 エ 【0017】、【0018】の記載によれば、「発熱部30」は、「絶縁層31」と、「絶縁層31に内蔵された発熱体32」とを有し、「絶縁層31の熱伝導率は3W/(m・K)以上」である。 オ 【0021】、【0022】の記載によれば、「静電チャック40」は、「発熱部30」上に設けられ、「基体41」と、「静電電極42」とを有しており、「基体41」は誘電体であり、「酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス」が用いられる。また、「発熱部30」と「静電チャック40」は、「接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上」させている。 カ 【0024】の記載によれば、「接着層20」は、「発熱部30」を「ベースプレート10」に接着している。 キ 【図1】によれば、「静電吸着部材50」の下面側に「ベースプレート10」が配置され、「静電吸着部材50」と「ベースプレート10」との間に「接着層20」及び「補助接着層21」が設けられており、「静電吸着部材50」の形状は、「ベースプレート10」と同様に「プレート状」であることが見て取れる。 (3) 甲1発明 上記(1)、(2)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(括弧内は、上記(2)の引用元を示す。) 「ベースプレート10と、接着層20と、補助接着層21と、静電吸着部材50とを有する基板固定装置1であって、(ア) 静電吸着部材50の下面側にベースプレート10が配置され、静電吸着部材50とベースプレート10との間に接着層20及び補助接着層21が設けられ、静電吸着部材50の形状は、プレート状であり、(キ) ベースプレート10の内部には、水路15が設けられており、水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却することができ、(イ) 静電吸着部材50は、発熱部30と、静電チャック40とを有し、吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持し、(ウ) 発熱部30と静電チャック40は、接着剤を介すことなく直接接合することにより、基板固定装置1の耐熱温度を向上させており、(オ) 接着層20は、発熱部30をベースプレート10に接着しており、(カ) 発熱部30は、絶縁層31と、絶縁層31に内蔵された発熱体32とを有し、絶縁層31の熱伝導率は3W/(m・K)以上であり、(エ) 静電チャック40は、発熱部30上に設けられ、基体41と、静電電極42とを有しており、基体41は誘電体であり、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスが用いられる、(オ) 基板固定装置1。」 2 甲2について (1) 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 「【0025】 本実施形態に係るヒータ付き静電チャック10は、基本的には、金属製の基盤(ベースプレート)11と、このベースプレート11上にヒータ接着層14を介して接着されたフィルム状のヒータ13と、このヒータ13上に基板接着層18を介して接着された静電チャック(ESC)基板17とを備えている。ヒータ13の上面(基板接着層18と接触する側の面)には、均熱板としての役割をもたせるアルミニウム(Al)板等からなる金属板13Aが貼り合わされている。 ・・・ 【0027】 また、ベースプレート11の内部には、図示のようにヒータ接着層14と平行する面内で複数の冷却用流路12が並列して形成されており、各冷却用流路12はベースプレート11内で連通している。図中矢印で示すように左側の流路12から右側の流路12に、水やガルデン等の冷却媒体を流すことにより、このベースプレート11上にヒータ接着層14、ヒータ13(均熱板13A)及び基板接着層18を介して接合されたESC基板17上に吸着保持されるウエハWの温度が所定の温度となるように調整することができる。 ・・・ 【0030】 ヒータ接着層14の厚さは、例えば、0.5~2mm程度に選定され、このうち接着剤層16の厚さは、0.05~0.3mm程度(好適には0.1mm程度)に選定されている。従って、接着剤層15は、ヒータ接着層14の厚さから接着剤層16の厚さを減じた分に相当する厚さを有している。 【0031】 接着剤層15は、主としてヒータ13とベースプレート11との間の熱伝導を良好に維持するために設けられている。すなわち、ヒータ13はESC基板17上のウエハWを加熱するために設けられているが、プラズマ等によりウエハWが急速に加熱された場合にその熱を外部に逃がす必要があり、また、ヒータ13からの熱をベースプレート11に流しながらウエハWを加熱する必要がある。このため、ヒータ13とベースプレート11の間に介在する接着剤層15には、熱伝導率の高い材料を選択するのが望ましい。本実施形態では、シリコーン系の樹脂を使用している。 ・・・ 【0034】 使用するシリコーン系の樹脂の特性としては、キュア前の粘度が10~200P(ポアズ)程度で、キュア(硬化)後にゲル状となり、熱伝導率は接着剤層15と同程度のものを選択している。この接着剤層16にも同様の高熱伝導率を要求するのは、ヒータ13とベースプレート11の間の熱伝達効率を高めるためである。 【0035】 ヒータ13とESC基板17の間に介在される基板接着層18は、主としてヒータ13とESC基板17との間の熱伝導を良好に維持するのが目的であるため、その材料としては、ヒータ接着層14の接着剤層15と同様に、熱伝導率の高い材料(シリコーン系の樹脂)が用いられる。この基板接着層18の厚さは、例えば、100μm程度に選定されている。 【0036】 ESC基板17は、基本的には絶縁性を有した材料から構成されていれば十分であり、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミック材や、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料などを使用することができる。本実施形態では、入手のし易さ、加工のし易さ、プラズマ等に対する耐性が比較的高いなどの点から、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックを使用している。特に、窒化アルミニウムを使用した場合、その熱伝導率は150~250W/(m・K)と大きいため、ESC基板17に吸着保持されるウエハW面内の温度差を小さくする上で好ましい。 ・・・ 【0038】 このESC基板17の内部には、特に図示はしていないが、所要の電極層が埋め込まれている。少なくとも、ウエハWを保持する側の吸着面17Sの近傍の基板部分に、静電吸着用の直流(DC)電圧が印加される電極層が埋め込まれている。さらに必要に応じて、この吸着用電極層の吸着面17Sと反対側の基板部分に、プラズマ制御用の高周波電力が給電される複数のRF電極層が埋め込まれていてもよい。 ・・・ 【0041】 先ず、フィルム状のヒータ13を用意する(図2(a)参照)。例えば、ポリイミド樹脂フィルム上にヒータ電極(金属配線)を所要の形状にパターン形成し、このヒータ電極を挟み込むように別のポリイミド樹脂フィルムを重ね合わせ、熱硬化させて一体化したものを、アルミニウム(Al)板等からなる金属板(均熱板)13Aに貼り合わせることにより、所望のヒータ13を得ることができる。ヒータ電極の金属材料としては、本実施形態ではインコネルを使用している。これは、ニッケル(Ni)と約15~23%のクロム(Cr)を主成分とする耐熱合金であり、鉄(Fe)、コバルト(Co)あるいはモリブデン(Mo)を含有する場合がある。加工性がよく、熱間・冷間加工が可能で、耐食性に優れている。」 「【図1】 [図:0001425802000002.jpg] 」 (2) 甲2に記載された事項 ア 【0025】の記載によれば、本発明の「ヒータ付き静電チャック10」は、「金属製のベースプレート11」と、「このベースプレート11上にヒータ接着層14を介して接着されたフィルム状のヒータ13」と、「このヒータ13上に基板接着層18を介して接着された静電チャック(ESC)基板17」とを備えており、「ヒータ13の上面(基板接着層18と接触する側の面)」には、「均熱板としての役割をもたせるアルミニウム板等からなる金属板13A」が貼り合わされている。 イ 【0027】の記載によれば、「ベースプレート11」の内部には、「複数の冷却用流路12」が形成されており、「水やガルデン等の冷却媒体」を流すことにより、「ベースプレート11上にヒータ接着層14、ヒータ13(均熱板13A)及び基板接着層18を介して接合されたESC基板17上」に吸着保持される「ウエハW」の温度が所定の温度となるように調整することができる。 ウ 【0031】の記載によれば、「接着剤層15」は、「ヒータ13」と「ベースプレート11」との間の熱伝導を良好に維持するために設けられ、熱伝導率の高い材料が望ましく、「シリコーン系の樹脂」を使用している。 エ 【0035】の記載によれば、「基板接着層18」は、「接着剤層15」と同様に、「熱伝導率の高い材料」である「シリコーン系の樹脂」が用いられる。 (3) 甲2発明 上記(1)、(2)によれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。(括弧内は、上記(2)の引用元を示す。) 「金属製のベースプレート11と、このベースプレート11上にヒータ接着層14を介して接着されたフィルム状のヒータ13と、このヒータ13上に基板接着層18を介して接着された静電チャック(ESC)基板17とを備えた、ヒータ付き静電チャック10であって、(ア) ヒータ13の上面(基板接着層18と接触する側の面)には、均熱板としての役割をもたせるアルミニウム板等からなる金属板13Aが貼り合わされており、(ア) ベースプレート10の内部には、複数の冷却用流路12が形成されており、水やガルデン等の冷却媒体を流すことにより、ベースプレート11上にヒータ接着層14、ヒータ13(均熱板13A)及び基板接着層18を介して接合されたESC基板17上に吸着保持されるウエハWの温度が所定の温度となるように調整することができ、(イ) 接着剤層15は、ヒータ13とベースプレート11との間の熱伝導を良好に維持するために設けられ、熱伝導率の高い材料が望ましく、シリコーン系の樹脂を使用しており、(ウ) 基板接着層18は、熱伝導率の高い材料であるシリコーン系の樹脂が用いられる、(エ) ヒータ付き静電チャック10。」 3 甲3について 甲3には、以下の記載がある。 「[0035] 板状部材10の上側部分101は、板状部材10のうち、吸着面S1を含む略平板状の部分である。鍔部109は、上側部分101に形成されている。本実施形態では、板状部材10の上側部分101は、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)の焼結体により形成されている。なお、上側部分101は、下側部分102と比べて、耐プラズマ性に優れたセラミックス材料により形成されることが好ましく、また、気孔率が低いことが好ましい。上側部分101は、特許請求の範囲における第1の部分に相当する。 [0036] 板状部材10の中間接合部104は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材やガラス、金属等により構成されている。中間接合部104は、セラミックス粉末等のフィラーを含んでいてもよい。中間接合部104は、特許請求の範囲における第1の接合部に相当する。」 「[図2] [図:0001425802000003.jpg] 」 4 甲6について 甲6には、以下の記載がある。 「【0003】 ところで、この静電チャック装置では、板状試料の温度を所望の一定の温度に維持するためには、板状試料と温度調整用ベース部材との間の熱交換効率を高める必要があり、接合層であるシリコーン系接着剤についても熱伝導性を向上させる必要がある。」 5 甲7について 甲7には、以下の記載がある。 「【0011】 本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、静電チャック層と支持部とを接着する接合層の熱伝導率を高めることにより、基板が所定温度に安定するまでの時間を短縮することができる技術を提供することにある。また本発明の他の目的は、プラズマにより生じた活性種による前記接合層の劣化を抑えることのできる技術を提供することにある。」 第5 当審の判断 1 申立理由1(甲1を主たる証拠とした場合の進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 (ア) 構成要件Aについて 甲1発明の「基板固定装置1」が有する「静電吸着部材50」は、「吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持」するものであるから、「対象物」である「ウェハ等の基板」を保持する「保持装置」といえる。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、「対象物を保持する保持装置」である点で共通する。 (イ) 構成要件Bについて 甲1発明の「静電吸着部材50」は、「吸着対象物であるウェハ等の基板を吸着保持」するとともに、「下面側にベースプレート10」が配置される。してみれば、「下面」の反対側の「上面」に基板を吸着保持し、「下面」に「ベースプレート10」が配置されるものであり、「上面」を「第1面」と、「下面」を「第2面」といえる。また、「静電吸着部材50」の形状は、「プレート状」であり、「プレート状」は「板状」ともいい得るものである。 そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部」の構成を備えているといえる。 (ウ) 構成要件Cについて 甲1発明の「ベースプレート10」は、「静電吸着部材50」の「下面側に配置され」るものであり、その内部に設けられた「水路15」に冷却水を循環させて、「静電吸着部材50上に吸着された基板を冷却することができ」るものである。また、上記(イ)で示したように、「静電吸着部材50」の「下面」を「第2面」といえる。 そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部」の構成を備えているといえる。 (エ) 構成要件Dについて 甲1発明の「接着層20」及び「補助接着層21」は、「静電吸着部材50」と「ベースプレート10」との間に設けられており、「接着層20」は、「静電吸着部材50」の「発熱部30」を「ベースプレート10」に接着している。してみれば、「補助接着層21」も、「発熱部30」を「ベースプレート10」に接着する機能を有しており、「静電吸着部材50」と「ベースプレート10」は、「接着層20」及び「補助接着層21」によって接着されて接合されるものであるから、「接着層20」及び「補助接着層21」は、「静電吸着部材50」と「ベースプレート10」を接合する「接合部」といえる。 そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部」の構成を備えているといえる。 (オ) 構成要件Eについて 甲1発明の「静電吸着部材50」は、「静電チャック40」と「発熱部30」とを有するものであり、「下面側にベースプレート10」が配置され、「接着層20」により、「発熱部30」と「ベースプレート10」が接着されているから、「上面」側に「静電チャック40」が設けられ、「下面」側に「発熱部30」が設けられたものである。 また、上記(イ)で示したように、「静電吸着部材50」は、形状を「板状」と、「上面」を「第1面」と、「下面」を「第2面」といい得るものであるから、「上面」側の「静電チャック40」は、「第1面」を含む「第1板状部」と、「下面」側の「発熱部30」は、「第2面」を含む「第2板状部」といい得るものである。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、「記板状部は、前記第1面を含む第1板状部と、前記第2面を含む第2板状部と、を有」するものである点で共通する。 (カ) 上記(ア)~(オ)より、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 [一致点] 「 対象物を保持する保持装置であって、 前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、 前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、 前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、 を備え、 前記板状部は、 前記第1面を含む第1板状部と、 前記第2面を含む第2板状部と、 を有することを特徴とする、 保持装置。」 [相違点] (相違点1-1) 本件特許発明1の「板状部」は、「前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部」を有するのに対し、甲1発明の「静電吸着部材50」は、「静電チャック40」と「発熱部30」とを、接着剤を介すことなく直接接合したものであり、「静電チャック40」と「発熱部30」との間には何もなく、「第2接合部」を有するものではない点。 (相違点1-2) 本件特許発明1の「第2接合部の熱抵抗」は、「120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下」であるのに対し、甲1発明には、そのような特定がない点。 (相違点1-3) 本件特許発明1は、「前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率より大きい」のに対し、甲1発明は、「静電チャック40」の熱伝導率と「発熱部30」の熱伝導率の大小関係が、特定されていない点。 イ 判断 (ア) 検討 事案に鑑み、相違点1-1について検討する。 甲1発明の「発熱部30」と「静電チャック40」は、「基板固定装置1」の耐熱温度を向上させることを目的として、接着剤を介すことなく直接接合する構成としたものである。したがって、「発熱部30」と「静電チャック40」との間に、両者を接合する接合部を設ける動機はない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、甲2~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 異議申立人の主張について a 相違点1-1に関して、異議申立人は、「静電チャック40と発熱部30とが互いに当接し接合されている部分が、「第2接合部」に該当することは明らか」であるから、甲1には、「第2接合部」が記載されている旨主張する。(異議申立書 24頁下から3行~25頁21行) しかしながら、甲1の【0022】に「発熱部30と静電チャック40とを接着剤を介すことなく直接接合する」と記載されているように、「静電チャック40」と「発熱部30」は、接着剤を介すことなく直接接合されており、接合されている部分に、「静電チャック40」と「発熱部30」の他に、別の部材が配置されていないことは明らかであるから、異議申立人の上記主張は採用できない。 b また、異議申立人は、本件特許発明の「第2接合部」の熱抵抗について、甲1の【0026】に記載されている「接着層20の熱伝導率が0.5W/(m・K)未満であると、静電チャック40とベースプレート10との間の熱抵抗が過剰となるおそれがある」との懸念が、「静電チャック40と発熱部30との間の熱抵抗が大きくなった場合においても全く同様に想起される」ものであり、「静電チャック40」と「発熱部30」との間の熱抵抗を、接合層20及び補助接着層の全体の熱抵抗以下に抑えること、すなわち、4.5×10-4(m2K/W)以下とするとは、当業者が容易になし得たことである旨主張する。(異議申立書 25頁22行~26頁下から11行) しかしながら、上記aで示したように、甲1には、本件特許発明1の「第2接合部」に相当する構成が記載されていない以上、異議申立人の上記主張は採用できない。 c また、異議申立人は、「冷却効率を高めること等を目的として各接合部の熱抵抗を低減すること」は、例えば、甲6、甲7等に記載されているように、静電チャック(保持装置)の技術分野においては周知の課題であり、静電チャック40と発熱部30との間の熱抵抗を4.5×10-4(m2K/W)以下とすることは、当業者が容易になし得たことである旨主張する。(異議申立書 26頁下から10行~27頁4行) しかしながら、上記aで示したように、甲1には、本件特許発明1の「第2接合部」に相当する構成が記載されていない以上、異議申立人の上記主張は採用できない。 (2) 本件特許発明2について 本件特許発明2の構成要件H~Lは、本件特許発明1の構成要件A~Eと同じであり、本件特許発明2は、本件特許発明1の構成要件F及び構成要件Gを削除し、構成要件M及び構成要件Nを追加した発明である。 してみれば、本件特許発明2と甲1発明を対比すると、少なくとも、構成要件Eに関する上記(1)ア(カ)の相違点1-1を有するところ、本件特許発明1が上記(1)イ(ア)、上記(1)イ(イ)のとおり、甲1発明、甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2も甲1発明、甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 本件特許発明3~8について 本件特許発明3~8は、本件特許発明1又は本件特許発明2を限定した発明であり、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)ア(カ)の相違点1-1を有するところ、本件特許発明1及び本件特許発明2が上記(1)イ(ア)、上記(1)イ(イ)、上記(2)のとおり、甲1発明、甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明3~8も甲1発明、甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 小括 以上のとおり、本件特許発明1~8は、甲1発明、甲2~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明1~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 2 申立理由2(甲2を主たる証拠とした場合の進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 (ア) 構成要件Aについて 甲2発明の「ヒータ付き静電チャック10」は、「ESC基板17」上に「ウエハW」を吸着保持するものであるから、「対象物」である「ウエハW」を保持する「保持装置」といえる。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、「対象物を保持する保持装置」である点で共通する。 (イ) 構成要件Bについて 甲2発明の「フィルム状のヒータ13」と「ヒータ13上に基板接着層18を介して接着された静電チャック(ESC)基板17」は、「フィルム状」の「ヒータ13」と板状の「ESC基板17」を接着したものであるから、「ESC基板17」と「ヒータ13」を接着した部材は、形状が「板状」であり、「板状に形成される板状部」といい得るものである。 また、「ESC基板17」上に「ウエハW」が吸着保持されるとともに、「ベースプレート11」上に「ヒータ13」が接着されるのであるから、「ESC基板17」の上面は、「ウエハW」が載置される側の「第1面」といえ、「ベースプレート11」に接着される「ヒータ13」の下面は、「第2面」といえる。 そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の「前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部」の構成を備えているといえる。 (ウ) 構成要件Cについて 甲2発明の「ベースプレート11」は、内部に形成された複数の冷却用流路12に、水やガルデン等の冷却媒体を流して、「ESC基板17」上に吸着保持される「ウエハW」の温度を調整するものであるから、冷却機能を有している。 また、上記(イ)で示したように、甲2発明の「ヒータ13」と「ESC基板17」を接着した部材は、「板状に形成される板状部」といい得るものであり、「ベースプレート11」は、「ヒータ13」の下面である「第2面」に接着されている。 そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の「前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部」の構成を備えているといえる。 (エ) 構成要件Dについて 甲2発明の「ヒータ接着層14」は、「ベースプレート11」と「ヒータ13」を接着するものであり、二つの部材の間に配置され、二つの部材を接合する「接合部」といえる。また、上記(イ)で示したように、甲2発明の「ヒータ13」と「ESC基板17」を接着したものは、「板状に形成される板状部」といい得るものである。 そうすると、甲2発明は、本件特許発明1の「前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部」の構成を備えているといえる。 (オ) 構成要件Eについて 上記(イ)で示したように、甲2発明の「ヒータ13」と「ESC基板17」を接着したものは、「板状に形成される板状部」といい得るものであり、「ウエハW」は「ESC基板17」の上面である「第1面」に載置され、「ベースプレート11」は、「ヒータ13」の下面である「第2面」に接着される。 また、甲2発明の「ヒータ13」と「ESC基板17」は、「基板接着層18」を介して接合されている。 そうすると、甲2発明の「ESC基板17」、「ヒータ13」、「基板接着層18」は、本件特許発明1の「第1板状部」、「第2板状部」、「第2接合部」に対応し、本件特許発明1と甲2発明とは、「前記板状部は、前記第1面を含む第1板状部と、前記第2面を含む第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、を有」するものである点で共通する。 (カ) 上記(ア)~(オ)より、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 [一致点] 「 対象物を保持する保持装置であって、 前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、 前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、 前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、 を備え、 前記板状部は、 前記第1面を含む第1板状部と、 前記第2面を含む第2板状部と、 前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、 を有することを特徴とする、 保持装置。」 [相違点] (相違点2-1) 本件特許発明1の「第2接合部の熱抵抗」は、「120℃の時に6.5×10-4(m2K/W)以下」であるのに対し、甲2発明には、そのような特定がない点。 (相違点2-2) 本件特許発明1は、「前記第1板状部を構成する材料の熱伝導率は、前記第2板状部を構成する材料の熱伝導率より大きい」のに対し、甲2発明は、「ESC基板17」の熱伝導率と「ヒータ13」の熱伝導率の大小関係が、特定されていない点。 イ 判断 (ア) 検討 事案に鑑み、相違点2-2について検討する。 本件特許の明細書の【0014】に、「但し、例えば、第2板状部がヒーターを備える場合、ヒーターによって板状部の第1面の温度分布を調整するが、第2板状部の熱伝導率が高すぎると、ベース部(冷却)の影響を受けやすく、ヒーターによる板状部の第1面の温度分布の調整が困難になる可能性がある。そのため、第1板状部の熱伝導率を第2板状部の熱伝導率以上にすると、第2板状部がヒーターを備える場合にも、板状部の第1面の温度分布を適切に調整することができる。」と記載されているように、本件特許発明1は、相違点2-2に係る構成とすることで、「第2板状部がヒーターを備える場合」に、「板状部の第1面の温度分布を適切に調整する」ことを実現するという技術思想(以下「技術思想1」という。)を含むものである。 また、本件特許の明細書の【0029】に、「そのため、第2板状部120の形成材料は、第1板状部110の形成材料よりも熱伝導率が低いことが好ましい。そこで、例えば、セラミックスの焼結助剤を混入する等により低熱伝導を実現することができる。例えば、アルミナ系母材に対し低融点のガラス(例えば、Si、Ca、Mgなどの酸化物)を混入する。その結果、第2板状部120は第1板状部110と比較して易焼結性となり、コストを低減することができる。なお、第1板状部110は、高純度、かつ高緻密性であるためコストが高くなるため、第2板状部120はコスト低減を図ることが好ましい。すなわち、第1板状部110の構成材料は、第2板状部120の構成材料より高純度であり熱伝導率が高く、第1板状部110は第2板状部120より高緻密(低気孔率)であることが好ましい。」と記載されているように、本件特許発明1は、相違点2-2に係る構成とすることで、「第2板状部」の「コスト低減」を実現するという技術思想(以下「技術思想2」という。)を含むものである。 一方、甲2の【0036】には、本件特許発明1の「第1板状部」に対応する「ESC基板17」は、「基本的には絶縁性を有した材料から構成されていれば十分であり、例えばアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミック材や、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料などを使用することができる」こと、及び、【0041】に、「ヒータ13」は、「例えば、ポリイミド樹脂フィルム上にヒータ電極(金属配線)を所要の形状にパターン形成し、このヒータ電極を挟み込むように別のポリイミド樹脂フィルムを重ね合わせ、熱硬化させて一体化したものを、アルミニウム(Al)板等からなる金属板(均熱板)13Aに貼り合わせ」て、得ることができることが記載されているものの、これらの記載は、「ESC基板17」と「ヒータ13」の熱伝導率の大小関係を考慮したものではなく、上記した、本件特許発明1の技術思想1又は技術思想2を開示するものではない。 また、相違点2-2に係る構成は、甲1、甲3~甲10のいずれにも記載されておらず、本件特許の出願時に周知技術であったということもできないから、甲2発明において、相違点2-2に係る構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、甲1、甲3~10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 異議申立人の主張について a 相違点2-2に関して、異議申立人は、甲2の【0036】には、「ESC基板17」の材料として「窒化アルミニウムを使用した場合、その熱伝導率は150~250W/(m・K)」となることが記載されており、また、甲2の【0041】には、「ヒータ13」は、フィルム状の「ポリイミド樹脂」と、板状の「アルミニウム」と、を互いに貼り合わせた構成であることが記載されており、「ポリイミド樹脂とアルミニウムヒータ13とを含むヒータ13の全体の熱伝導率は、236W/(m・K)よりも小さくなる」ので、「ヒータ13」の全体の熱伝導率は、「ESC基板17」の熱伝導率よりも小さくなる可能性が高い旨主張している。(異議申立書 48頁9行~49頁15行) しかしながら、甲2の「ESC基板17」の熱伝導率は「150~250W/(m・K)」とされているものの、「ヒータ13」の全体の熱伝導率との大小関係は規定されていない。そうすると、例えば、「ESC基板17」の熱伝導率が150W/(m・K)であり、「ヒータ13」の全体の熱伝導率が「236W/(m・K)よりも小さ」い200W/(m・K)である場合も想定できるが、この場合には「ヒータ13」の全体の熱伝導率は、「ESC基板17」の熱伝導率よりも小さくならず、異議申立人の上記主張は採用できない。 b また、異議申立人は、「第1板状部と第2板状部とが互いに接合された構成において、第1板状部を構成する材料の熱伝導率を、第2板状部を構成する材料の熱伝導率よりも大きくすること」は、甲1及び甲3に記載されており、甲2に記載された発明と、甲1又は甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得た事項である旨主張している。(異議申立書 49頁16行~50頁2行) そこで、甲1の記載を検討すると、上記1(1)ア(オ)で示したように、甲1には、本件特許発明の「第1板状部」、「第2板状部」に対応する、「静電チャック40」、「発熱部30」が記載されており、また、甲1の【0017】、【0018】には、「発熱部30」が有する「絶縁層31」の熱伝導率は、「3W/(m・K)以上」とすることが好ましいことが記載されている。 してみれば、甲1の「発熱部30」の熱伝導率は、「3W/(m・K)以上」であって、その上限は特定されていないことから、「静電チャック40」の熱伝導率と「発熱部30」の熱伝導率の大小関係が特定されているとはいえず、上記(ア)で示した技術思想1又は技術思想2は記載されているとは認められないから、異議申立人の上記主張は採用できない。 また、甲3の記載を検討すると、[0035]には、「上側部分101は、下側部分102と比べて、耐プラズマ性に優れたセラミックス材料により形成されることが好ましく、また、気孔率が低いことが好ましい」ことが記載されている。 しかしながら、甲3には、「上側部分101」の熱伝導率と「下側部分102」の熱伝導率の大小関係が具体的に記載されておらず、上記(ア)で示した技術思想1又は技術思想2は記載されているとは認められないし、また、甲2の「ヒータ13」は、甲2の【0041】に記載されているように、「ポリイミド樹脂」や「金属板(均熱板13A)」から構成されるものであって、上記の甲3に記載された事項を適用する動機もないことから、異議申立人の上記主張は採用できない。 (2) 本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲2発明を対比する。 (ア) 構成要件H~Lについて 本件特許発明2の構成要件H~Lは、本件特許発明1の構成要件A~Eと同じであり、上記(1)アで検討したとおりである。 (イ) 構成要件Mについて 甲2発明の「基板接着層18」は、「シリコーン系の樹脂」を使用したものであるから、主成分は樹脂といえる。 そうすると、本件特許発明2と甲2発明とは、第2接合部について、「樹脂を主成分」としたものである点で共通する。 (ウ) 上記(ア)、(イ)より、本件特許発明2と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 [一致点] 「 対象物を保持する保持装置であって、 前記対象物が載置される側の第1面と、前記第1面の裏面である第2面とを有する板状に形成される板状部と、 前記板状部の前記第2面側に配置され、冷却機能を有する、板状のベース部と、 前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する第1接合部と、 を備え、 前記板状部は、 前記第1面を含む第1板状部と、 前記第2面を含む第2板状部と、 前記第1板状部と前記第2板状部との間に配置され、前記第1板状部と前記第2板状部とを接合する第2接合部と、 を有し、 前記第2接合部は樹脂を主成分とすることを特徴とする、 保持装置。」 [相違点] (相違点3-1) 本件特許発明2の「第2接合部の熱抵抗」は、「120℃の時に2.5×10-4(m2K/W)以上6.5×10-4(m2K/W)以下」であるのに対し、甲2発明には、そのような特定がない点。 イ 判断 (ア) 検討 相違点3-1について検討する。 甲2の【0035】には、「基板接着層18」は、「ヒータ13とESC基板17との間の熱伝導を良好に維持するのが目的」であり、その材料としては、「熱伝導率の高い材料(シリコーン系の樹脂)」が用いられ、「基板接着層18の厚さ」は、「100μm程度」であることが記載されているものの、熱伝導率をどのような値とするかは記載されていない。 そして、「基板接着層18の熱抵抗」は、「基板接着層18の厚さ」を「基板接着層18の熱伝導率」で割った値として算出できるところ、上記したように、「基板接着層18の熱伝導率」をどのような値とするかは記載されていないのであるから、「基板接着層18の熱抵抗」を算出することはできないし、構成要件Nの数値範囲とする動機もない。 また、「ヒータ13」と「ESC基板17」とを接合する接合部の熱抵抗を、相違点3-1の範囲のものとすることは、甲1、甲3~甲10のいずれにも記載されておらず、本件特許の出願時に周知技術であったということもできないから、甲2発明において、相違点3-1に係る構成を採用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 よって、本件特許発明2は、甲2発明、甲1、甲3~10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 異議申立人の主張について a 相違点3-1に関して、異議申立人は、甲1の「接合層20」及び「補助接着層21」の全体の熱抵抗が、-100℃~140℃の範囲において4.5×10-4(m2K/W)であることを算出し、甲2の「基板接着層18」の熱抵抗として採用し、相違点3-1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である旨主張する。(異議申立書 52頁8行~53頁23行) しかしながら、甲2の「基板接着層18」は、「ヒータ13」と「ESC基板17」とを接着するものである一方、甲1の「接合層20」及び「補助接着層21」は、甲1の【図1】から見て取れるように、「ベースプレート10」と「静電吸着部材50」との間に設けられたものであり、甲1の「接合層20」及び「補助接着層21」の全体の熱抵抗を甲2の「基板接着層18」として採用する動機はないから、異議申立人の上記主張は採用できない。 b また、甲1の【0024】、【0026】には、「接着層20」の材料について、温度範囲R2内である-100℃~140℃における熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上が好ましいことが記載されており、仮に、甲2の「基板接着層18」として、この材料が採用できたとしても、厚さが100μmの「基板接着層18」の熱抵抗は、2×10-4(m2K/W)以下となり、上記相違点3-1に係る構成には至らない。 (3) 本件特許発明3~8について 本件特許発明3~8は、本件特許発明1又は本件特許発明2を限定した発明であり、甲2発明と対比すると、少なくとも、上記(1)ア(カ)の相違点2-2又は、上記(2)ア(ウ)の相違点3-1を有するところ、本件特許発明1及び本件特許発明2が、上記(1)イ(ア)、上記(1)イ(イ)、上記(2)イ(ア)及び上記(2)イ(イ)のとおり、甲2発明、甲1、甲3~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明3~8も甲2発明、甲1、甲3~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 小括 以上のとおり、本件特許発明1~8は、甲2発明、甲1、甲3~甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明1~8は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700379

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