特許異議申立
2025-701065
積層体及びスタンディングパウチ
- 審判番号
- 2025-701065
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-160721
- 登録番号
- 7676745
- 請求日
- 2025年11月13日
- 審決日
- 2026年02月10日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】柳 康樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】千野 肇
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 大野 明良
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7676745号発明「積層体及びスタンディングパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7676745号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7676745号の請求項1、2に係る特許についての出願は、令和2年9月25日の出願であって、令和7年5月7日にその特許権の設定登録がされ、令和7年5月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年11月13日に特許異議申立人千野肇(以下「申立人」という。)により、その請求項1、2に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
請求項1、2に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」等という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
前記基材層は、ポリエチレンから構成される未延伸フィルムであり且つ高密度ポリエチレン樹脂を含み、
前記ヒートシール層は、密度0.925g/cm3未満のポリエチレンフィルムから構成されており、
前記積層体のMD方向の引張伸度が800%以上であり且つTD方向の引張伸度が500%以上であり、
前記積層体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上であり、
前記基材層と前記ヒートシール層との間に接着層を備え、
前記接着層を形成する接着剤がウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤である、積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の積層体を含むスタンディングパウチ。」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
また、申立人は、下記2に示した甲第1号証~甲第4号証(以下それぞれ「甲1」等という。)を証拠として申立書に添付している。
1 申立理由(甲1を主引例とする進歩性)
請求項1、2に係る特許は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠
甲1:中国特許出願公開第111204093号明細書
甲2:特開2020-055162号公報
甲3:特開2020-055157号公報
甲4:特開2019-171861号公報
第4 当審の判断
1 甲号証の記載について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。翻訳は、申立人による翻訳を採用した。「・・・」は省略を示す。以下同様。
「
[図:0001433134000001.jpg]
」(特許請求の範囲の請求項1)
(翻訳:
[図:0001433134000002.jpg]
)
「
[図:0001433134000003.jpg]
」
(翻訳:
[図:0001433134000004.jpg]
)
「
[図:0001433134000005.jpg]
[図:0001433134000006.jpg]
」
(翻訳:
[図:0001433134000007.jpg]
[図:0001433134000008.jpg]
[図:0001433134000009.jpg]
[図:0001433134000010.jpg]
)
(当審注:[0018]の「SP152」は「SP1520」の誤記であると認められる。)
「
[図:0001433134000011.jpg]
[図:0001433134000012.jpg]
」
(翻訳:
[図:0001433134000013.jpg]
)
(当審注:表中の「(本発明における「引張伸度」に相当する。)」の記載は甲1にはなく、申立人が追記したものと認められる。)
「
[図:0001433134000014.jpg]
」
(翻訳:
[図:0001433134000015.jpg]
)
イ 甲1に記載されていると認められる事項
(ア) [0016]、[0028]~[0032]からみて、物流保護フィルムは、内層、中層及び外層の複合構成(以下「三層複合フィルム」という。)を含むと認められる。
(イ) [0016]、[0018]~[0026]からみて、実施例では、内層は49%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)、30%のLDPE FB5005(密度:0.92g/cm3)、20%のメタロセン線形 SP1520(密度:0.91g/cm3)及び1%の滑剤マスターバッチで構成され、中層は40%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)及び60%のHDPE F0554(密度:0.93g/cm3)で構成され、外層は10%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)及び90%のHDPE F0554(密度:0.93g/cm3)で構成されていると認められる。
(ウ) [0016]、[0019]~[0022]、[0025]及び[0026]からみて、実施例における内層を構成するポリエチレンの密度はいずれも0.925g/cm3未満であるから、内層の密度は0.925g/cm3未満であると認められる。
(エ) [0039]、[0040]の記載からみて、三層複合フィルムのMD方向の破断伸び率が587%、TD方向の破断伸び率が865%であると認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイより、甲1には、特に実施例に着目すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内は特に関連する箇所である。)。
「三層複合フィルムは、内層、中層及び外層の複合構成を含み、(上記イ(ア))
内層は49%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)、30%のLDPE FB5005(密度:0.92g/cm3)、20%のメタロセン線形 SP1520(密度:0.91g/cm3)及び1%の滑剤マスターバッチで構成され、中層は40%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)及び60%のHDPE F0554(密度:0.93g/cm3)で構成され、外層は10%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)及び90%のHDPE F0554(密度:0.93g/cm3)で構成されており、(上記イ(イ))
三層複合フィルムは、混合された原料を押出機のホッパーに投入し、ブローユニットを起動して製造され、([0028]~[0032])
内層の密度は、0.925g/cm3未満であり、(上記イ(ウ))
三層複合フィルムのMD方向の破断伸び率が587%、TD方向の破断伸び率が865%である、(上記イ(エ))
三層複合フィルム。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
・甲1発明の「三層複合フィルム」は、本件発明1の「積層体」に相当する。また、甲1発明の「内層」は主成分が低密度であり、「外層」は主成分が高密度であるから、技術常識に鑑みれば、甲1発明の「内層」、「外層」は、本件発明1の「ヒートシール層」、「基材層」にそれぞれ相当する。
・甲1発明の「外層は10%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)及び90%のHDPE F0554(密度:0.93g/cm3)で構成されて」いる構成は、本件発明1の「前記基材層は、ポリエチレンから構成され」「且つ高密度ポリエチレン樹脂を含」む構成を満たす。また、甲1発明の「三層複合フィルム」は「混合された原料を押出機のホッパーに投入し、ブローユニットを起動して製造され」るものであるから、本件発明1の「未延伸フィルム」に相当する。
・甲1発明の「内層は49%のLLDPE HB18N(密度:0.918g/cm3)、30%のLDPE FB5005(密度:0.92g/cm3)、20%のメタロセン線形 SP1520(密度:0.91g/cm3)及び1%の滑剤マスターバッチで構成され」、「内層の密度は、0.925g/cm3未満であ」る構成は、本件発明1の「前記ヒートシール層は、密度0.925g/cm3未満のポリエチレンフィルムから構成されて」いる構成を満たす。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「基材層と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
前記基材層は、ポリエチレンから構成される未延伸フィルムであり且つ高密度ポリエチレン樹脂を含み、
前記ヒートシール層は、密度0.925g/cm3未満のポリエチレンフィルムから構成されている、
積層体。」
[相違点1]
積層体の引張伸度について、本件発明1では「MD方向の引張伸度が800%以上であり且つTD方向の引張伸度が500%以上であ」るのに対して、甲1発明は「MD方向の破断伸び率が587%、TD方向の破断伸び率が865%であ」る点。
[相違点2]
積層体におけるポリエチレンの含有量について、本件発明1では「90質量%以上である」のに対して、甲1発明は不明である点。
[相違点3]
本件発明1では「前記基材層と前記ヒートシール層との間に接着層を備え、前記接着層を形成する接着剤がウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤であ」るのに対して、甲1発明は接着層を有していない点。
(2)判断
相違点1について検討する。
甲1発明のMD方向の引張伸度は587%であり、当該相違点における800%以上を相応に下回っていると言わざるを得ない。そして、甲1において、[0044]には伸び率が大きい点が効果として示されているものの、実施例におけるMD方向の破断伸び率を587%から更に向上させ、800%以上とする動機付けは存在せず、してみれば、当該事項は当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、申立人が提出したその他の証拠を参照しても、同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張
申立人は、上記相違点1に関して、「そして、特許発明1は、積層体におけるMD方向の引張伸度が800%以上であり、且つTD方向の引張伸度が500%以上である点で、甲第1号証に記載された発明と一見相違するが、フィルムや包装体の状態においてMD方向とTD方向を区別することは困難であることから、特許発明1の積層体と甲第1号証に記載されたフィルムは実質的に同一である。」と主張するものである。
しかしながら、フィルムのMD方向、TD方向は、明確に区別されるものであり、MD方向とTD方向とを入れ替えて甲1発明を認定したり、進歩性の有無を議論するというのは、前提において成立しない。
よって、申立人の主張は採用することはできない。
3 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記2に示したことと同様に、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
したがって、申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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