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特許異議申立

2021-700864

ダイ、ダイパック、単結晶育成装置、及び単結晶育成方法

審判番号
2021-700864
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-204031
登録番号
6841490
請求日
2021年09月08日
審決日
2022年08月29日
公報発行日
2022年11月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アダマンド並木精密宝石株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】千原 正
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 関根 崇
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(C30B) / P1651.121-YAA(C30B) / P1651.536-YAA(C30B) / P1651.537-YAA(C30B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6841490号発明「ダイ、ダイパック、単結晶育成装置、及び単結晶育成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6841490号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第6841490号の請求項1、3~5に係る特許を維持する。 特許第6841490号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立を却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6841490号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年10月18日に特許出願され、令和3年2月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年9月8日に請求項1~5に係る特許に対して特許異議申立人 千原 正(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和4年1月11日付けで取消理由が通知され、同年3月15日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ、これに対し、申立人に意見を求めたが、期間内に何らの応答もなされなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年3月15日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「aが7.75以上7.80以下であり、」との記載を、「aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、」に訂正する(請求項1を引用する請求項3~5についても同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3~5 特許請求の範囲の請求項3~5における「請求項1又は2の何れかに記載の」との記載を、「請求項1に記載の」に訂正する。 なお、訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用し、これら請求項1~5は一群の請求項を構成するから、上記訂正事項1~5に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~5を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載に基づき、訂正前の請求項1に記載された一次関数式の係数「b」の数値をさらに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3~5について 訂正事項3~5は、訂正前の請求項3~5において、訂正事項2により削除する請求項2を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、特許異議の申立ては、本件訂正前の全ての請求項1~5についてされているので、訂正事項1~5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件訂正請求により訂正された請求項1、3~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 スリットを有しEFG法に用いられるダイであって、 ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、 更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度であることを特徴とするダイ。 【請求項3】 請求項1に記載のダイを2つ以上備えており、各々の前記スリットの長手方向が平行に配置されて構成されることを特徴とするダイパック。 【請求項4】 請求項1に記載のダイ又は請求項3に記載のダイパックを備えることを特徴とする単結晶育成装置。 【請求項5】 請求項1に記載のダイ又は請求項3に記載のダイパックを坩堝に収容し、 坩堝に単結晶の原料を投入して加熱し、原料を坩堝内で溶融して融液を用意し、 前記スリットを介して前記スリットの上部に融液溜りを形成し、 その前記スリットの上部の融液に種結晶を接触させ、種結晶を引き上げることで、所望の主面を有する単結晶を育成することを特徴とする単結晶育成方法。」 第4 甲号証について 1 甲号証一覧 特許異議申立書に添付された各甲号証は次のとおりである。 甲第1号証:特開2016-60692号公報 甲第2号証:米国特許出願公開第2009/0136731号明細書 甲第3号証:特表2016-516658号公報 甲第4号証:米国特許第7682452号明細書 甲第5号証:特公昭60-38360号公報 2 甲号証の記載内容 以下、項番に応じて「甲1」などという。また、「…」は当審による省略を意味する。 (1)甲1(特開2016-60692号公報) 甲1には以下の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、複数のサファイア単結晶とその製造方法に関する。 … 【図面の簡単な説明】 【0019】 【図1】EFG法によるサファイア単結晶の製造装置を示す概略構成図である。 【図2】(a)本発明の実施形態に係るダイの一例を模式的に示す平面図である。(b)同図(a)の正面図である。(c)同図(a)の側面図である。 … 【発明を実施するための形態】 【0020】 以下に、本発明の実施形態に係る複数のサファイア単結晶及びその製造方法について、図1から図10を参照しながら説明する。 【0021】 図1に示すように、サファイア単結晶の製造装置1は、サファイア単結晶2を育成する育成容器3と、育成したサファイア単結晶2を引き上げる引き上げ容器4とから構成され、EFG(Edge-defined Film-fed. Growth)法によりサファイア単結晶2を育成成長する。 【0022】 育成容器3は、坩堝5、坩堝駆動部6、ヒータ7、電極8、ダイ9、及び断熱材10を備える。… … 【0026】 次に、ダイ9について説明する。ダイ9はモリブデン製であり、図2に示すように多数の仕切り板18を有する。図2ではダイの一例として、仕切り板18が30枚であり、ダイ9が15個形成されている場合を示している。仕切り板18は同一の平板形状を有し、微小間隙(スリット)19を形成するように互いに平行に配置されて、1つのダイ9を形成している。…各仕切り板18の上部は斜面30が形成されており、互いの斜面30が向かい合わせで配置されることで、鋭角の開口部20が形成されている。またスリット19は融液21を毛細管現象によって、各ダイ9の下端から開口部20に上昇させる役割を有している。 … 【0078】 実施例は全部で例1~例10まで行い、実施例1~4では間隙Dをダイの厚みtの0.34倍に設定した。一方、実施例5~10では間隙Dが前記数3を満足するように設定した。ダイの厚みtは、実施例1~4では3.3mm~4.5mmの範囲内で適宜表1に示すように設定し、実施例5~10では3.3mm~6.5mmの範囲内で適宜表1に示すように設定した。従って間隙Dは表1に示すように、実施例1~4では最小1.12mm~最大1.53mmに適宜設定し、実施例5~10では最小1.20mm~最大2.28mmの範囲内に適宜設定した。但し間隙Dの計算値は、小数点以下第3位を四捨五入した。 【0079】 [図:0001390559000001.jpg] 」 イ 「 [図:0001390559000002.jpg] [図:0001390559000003.jpg] 」 (2)甲2(米国特許出願公開第2009/0136731号明細書) 甲2には以下の記載がある(当審注:訳文は申立人によるもの。以下同様である。)。 ア 「 [図:0001390559000004.jpg] 」 イ 「 [図:0001390559000005.jpg] 」 ウ 「 [図:0001390559000006.jpg] 」 エ 「[0027] After providing the rare earth silicate composition (and any other inorganic additives) within the crucible at step 101, the process continues at step 103 by heating the composition to form a melt.」(ステップ101で坩堝内に希土類ケイ酸塩組成物(および他の無機添加剤)を提供した後、プロセスは、組成物を加熱して溶融物を形成することにより、ステップ103に続く。) オ 「[0028] …the die includes a capillary and a shaping channel. …The capillary and the shaping channel are connected, that is, are in communication with each other, and together form a passageway through the interior of the die. As such, upon forming a liquid melt, the melt is drawn into the die, through the capillary and into the shaping channel via capillary action.」(…ダイは、キャピラリーおよび成形チャネルを含む。…キャピラリーと成形チャネルは接続されている、つまり互いに連絡しており、ともにダイの内部を通る通路を形成している。したがって、液体溶融物を形成すると、溶融物は、キャピラリーを介してダイに引き込まれ、毛細管作用を介して成形チャネルに引き込まれる。) カ 「[0032] After forming the melt at step 103, the process continues at step 105 by contacting a seed crystal to the melt surface within the die.」(ステップ103で溶融物を形成した後、プロセスは、種結晶をダイ内の溶融物表面に接触させることによってステップ105に続く。) キ 「[0034] Upon satisfactory formation of the liquid film above the surface of the melt, the seed crystal is translated in a direction away from the surface of the melt within the shaping channel. This process marks the beginning of the formation of the neck of the single crystal material at step 107 of FIG. 1.」(溶融物の表面上に液膜が十分に形成されると、種結晶は、成形チャネル内で溶融物の表面から離れる方向に移動する。このプロセスは、図1のステップ107での単結晶材料のネックの形成の始まりを示す。) ク 「[0045] Referring to FIG. 2, a crystal growth device 200 and particularly an Edge-defined Film-fed Growth (EFG) device is illustrated. The device 200 includes in part, a crucible 201 and a die 202 disposed within the crucible.」(図2を参照すると、結晶成長デバイス200、特に、Edge-defined Film-fed Growth(EFG)デバイスが示されている。デバイス200は、坩堝201および坩堝内に配置されたダイ202を部分的に含む。) ケ 「[0072] Referring to FIG. 5 a cross-sectional diagram of a capillary 501 and a shaping channel 503 is illustrated according to one embodiment. … In this embodiment, the shaping channel 503 includes tapered sides, which extend through the height (hsc) of the shaping channel 503. These tapered sides of the shaping channel 503 define an angle 505 between the sides of the capillary 501 and the sides of the shaping channel 503. Generally, the angle 505 is typically not less than about 90°.」(図5を参照すると、一実施形態による、キャピラリー501および成形チャネル503の断面図が示されている。…この実施形態では、成形チャネル503は、成形チャネル503の高さ(hsc)を通って延びるテーパーサイドを含む。成形チャネル503のこれらのテーパーサイドは、キャピラリー501のサイドと成形チャネル503のサイドとの間の角度505を規定する。一般に、角度505は、典型的には約90°以上である。) コ 「[0075] In further reference to the dimensions of the body of the as-grown single crystals, generally, the thickness not less than about 4 mm.」(成長したたままの単結晶の本体の寸法をさらに参照すると、一般に厚さは約4mm以上である。) サ 「[0080] …more than one die, each with a capillary and shaping channel, may be provided within a crucible such that multiple crystals can be grown simultaneously through multiple dies from the raw material within one crucible.」(…それぞれがキャピラリーおよび成形チャネルを有する複数のダイを坩堝内に設けることができ、その結果、複数の結晶が、1つの坩堝内の原料から複数のダイを通して同時に成長することができる。) シ 「[0101] A rare earth silicate single crystal having the following composition Lu1.8892Y0.11Ce0.0008SiO5, was formed and of a substantially rectangular cross-sectional contour having the dimensions 5 mm×27 mm×203 mm (thickness×width×length). …The shaping channel had a thickness of 5 mm, a width of 27 mm, and a height of 1.3 mm, with a 120° angle between tapered sides of the capillary and shaping channel.」(以下の組成Lu1.8892Y0.11Ce0.0008SiO5を有し、5mm×27mm×203mm (厚み×幅×長さ)の寸法を有する実質的に長方形の断面輪郭を有する希土類ケイ酸塩単結晶が形成された。…成形チャネルは、厚み5mm、幅27mm、高さ1.3mmであり、キャピラリーのテーパーサイドと成形チャネルとの間の角度は120°であった。) (3)甲3(特表2016-516658号公報) 甲3には以下の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本開示は、サファイアリボン、ならびにサファイアリボンを特に縁端限定成長(EFG)によって作成するための装置および方法に関する。 … 【0016】 図1は、複数の結晶リボン7、特にサファイア結晶リボンを、本開示の第1の局面に係る縁端限定成長(Edge-Defined Film-Fed Growth)(EFG)によって成長させるための装置5を示す。図1に示すように、この装置5は、溶融体源10と、溶融体源に連通する複数のダイ20と、複数のダイに隣接する複数の第1の領域30と、熱反射性シールド50とを含むことができる。… … 【0020】 再び図1を参照すると、前記複数のダイは各々ダイ開口部24を有し得る。…このダイ開口部24の寸法は、ダイ開口部を通して作製されるリボンの所望の寸法(幅および厚さ)を決定し得る。本開示のある特定の利点は、前記ダイ開口部24および同一のEFG成長装置5内で同時に作製される各サファイアリボン7の間の分散(variance)が小さいサファイアリボンを作製し得ることである。例えば、ある特定の実施態様においては、外側リボンの(およびさらには同時に製造されるリボンの各々の)平均厚さのダイ開口部厚さに対する比が少なくとも約0.95:1であり得る。 【0021】 さて、図2を参照すると、EFG装置内のダイ開口部25,27,29の配置の一実施態様の略図が示されている。図示するように、複数のダイは、複数のダイ開口部25,27,29のうちの少なくとも1つが複数のダイ開口部25,27、29のうちのべつの1つと比べて異なる高さになるように配置され得る。 … 【0089】 <項目34>前記ダイ開口部は少なくとも0.3mm、少なくとも0.6mm、少なくとも0.75mm、少なくとも約1mm、少なくとも約1.5mm、少なくとも約2mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約2.8mm、少なくとも約3mm、またはさらには少なくとも約3.5mmの厚さを有する、先行項目のいずれかに記載の装置または方法。」 イ 「【図1】 [図:0001390559000007.jpg] 【図2】 [図:0001390559000008.jpg] 」 (4)甲4(米国特許第7682452号明細書) 甲4には以下の記載がある。 ア 「 [図:0001390559000009.jpg] [図:0001390559000010.jpg] 」 イ 「Broadly stated, the objects of the invention are realized, according to one aspect of the invention, by modifying the shape of the die tip used in the EFG process.」(大まかに言えば、本発明の目的は、本発明の一態様によれば、EFGプロセスで使用されるダイチップの形状を変更することによって実現される。)(第3欄第26~28行) ウ 「FIG. 6A is a perspective view illustrating a conventional die 700 for producing sapphire sheet.」(図6Aは、サファイアシートを製造するための従来のダイ700を示す斜視図である。)(第9欄第35~36行) エ 「FIG. 6B is a vertical section of the top part of the V-shaped die of FIG. 6A modified according to the invention.」(図6Bは、本発明に従って変更された図6AのV型ダイの頂部の垂直断面図である。)(第9欄第48~49行) オ 「In addition to the angular disposition of outside sidewalls 704, it is considered important for optimum results to have the top of the die symmetrically angled to the horizontal as shown by the angle θ. This angle may vary from -30°to 30°. The angles φ and θ are chosen so the temperature across the top of the die is uniform enough to allow the growth of void-free sapphire sheet. The optimal angles depend on the thermal field surrounding the die top (e.g. any insulation and heat shields). If the wall angle φ is too large and/or the top angle θ too small, the thickness of the sheet will not be controlled by the width of the die, but will be unstable and smaller. If the wall angle φ is too small and/or the top angle θ too large, the outside of the die top will be too cool, and voids will form in the products.」(外側の側壁704の角度配置に加えて、最適な結果のために、角度θによって示されるように、ダイの頂部を水平に対して対称的に角度を付けることが重要であると考えられる。この角度は-30°から30°まで変化してもよい。角度φとθは、ダイの頂部全体の温度がボイドのないサファイアシートの成長を可能にするのに十分均一になるように選択される。最適な角度は、ダイ頂部を囲む熱場(断熱材や熱シールドなど)によって異なる。壁角度φが大きすぎる、及び/又は頂角θが小さすぎると、シートの厚さがダイの幅によって制御されず、不安定で小さくなる。壁角度φが小さすぎるか、及び/又は頂角θが大きすぎると、ダイ頂部の外側が低温になり、製品内にボイドが形成される。)(第9欄第60行~第10欄第6行) (5)甲5(特公昭60-38360号公報) 甲5には以下の記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 1 溶融体から結晶を成長させるのに使うダイ組立体において、同心の内外両部材の形の2個の別々の部分を有し、前記両部材は互に離隔されて前記ダイ組立体の底端に開口を有する下部毛細管通路を画定し、前記両部材の一方は他方より長く、且その上端に前記両部材の他方の上に張り出してこれと係合する延長部を有し、前記延長部は前記延長部を頂端面を持つ複数個のダイに細分割する第1溝と、前記ダイにあつて前記内外両部材間の空間と交差し且前記下部毛細管通路と前記ダイの前記頂端面との間に毛細管通路を設ける第2溝とを有するダイ組立体。」 イ 「本発明は溶融体から結晶体を成長させる装置、特にイーエフジー法によって結晶を成長させるダイに関する。」(第2頁左欄第18~20行) ウ 「第6図に示すダイ44Bは、各ダイの上端が毛細管溝46の高点から斜めにされ、それで半径方向に延びるダイ頂面40の代りに、第6図の各ダイの形成面は、斜面45と毛細管溝46との交差で形成される一対の平行な鋭い緑面40Aで画定されること以外、第2図及び第3図のダイ構造と同様である。第6図に示す修正ダイは、比較的薄いリボン結晶を高い成長速度で成長させるのに特に適している事は当業者には認められることである。 第7図に示すダイ44Cは、水平なダイ頂端面40が斜めに集まる面40Bに置きかえられて、毛細管溝46と連絡する半径方向に延びるV字形凹部則ち溝46Bを形成していること以外、第2図及び第3図に示すダイと同様構造である。第7図に示す修正ダイは、比較的広いリボンを適当な成長速度で成長させるのに特に適している事は当業者に認められることである。第7図に示す修正ダイの特別の利点は、斜面40Bが結晶成長中に結晶溶融体中間面をより自然な形をとり得るようにし、そしてこれが順に単結晶の成長をより良く強めることである。」(第5頁右欄第12~33行) エ 「 [図:0001390559000011.jpg] [図:0001390559000012.jpg] 」 第5 取消理由について 1 取消理由の概要 (1)設定登録時の請求項1、4、5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(取消理由1)。 (2)設定登録時の請求項3~5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(取消理由2)。 (3)設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、3~5に記載された発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるということができないので、当該請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(取消理由3)。 2 取消理由に対する当審の判断 (1)取消理由1及び2(甲2を主たる証拠とするもの) ア 本件発明1 (ア)甲2発明 上記第4の2(2)ウ、ケ、シによれば、キャピラリーのテーパーサイドと成形チャネルとの間の角度が120°であるから([0072]、[0101]、FIG.5)、ダイ先端に位置する成形チャネルの開口角度は120°であると解される。そして、前記成形チャネルの厚みが5mmであることと([0101])、同クのEFGデバイスに係る記載([0045])を併せて整理すると、甲2には、 「キャピラリーを有しEFG法に用いられるダイであって、ダイ先端に位置する成形チャネルの開口角度が120°であり、厚みが5mmであるダイ。」(以下、「甲2発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (イ)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 上記第4の2(2)オによれば、甲2発明の「キャピラリー」は、ダイの内部を通る通路を形成するもので、毛細管作用により液体溶融物を成形チャネルに引き込むものであるから、本件発明1の「スリット」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「スリットを有しEFG法に用いられるダイ」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度である」のに対し、 甲2発明は、「ダイ先端に位置する成形チャネルの開口角度が120°であり、厚みが5mmである」点。 (ウ)判断 相違点1について検討する。 本件発明1において、「厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であ」る場合の「開口角度y1」の取り得る角度は、72.575°(a=7.75、b=47.0、x=3.3)~98.09°(a=7.80、b=47.39、x=6.5)であり、±5%の誤差を考慮したとしても、甲2発明の開口角度「120°」は含まれないから、当該相違点1は実質的なものである。 そして、甲2の明細書及び図面を子細にみても、本件発明1で規定される開口角度yとダイの厚みxmmとの一次関数式(以下、「本件一次関数式」という。)に係る記載はないし、これを記載する他の証拠もない以上、甲2発明において、ダイ先端に位置する成形チャネルの開口角度とダイの厚みを「本件一次関数式」を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ 本件発明3~5 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記ア(ウ)で検討した理由により、本件発明3~5は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明及び甲2に記載された事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)取消理由3について 本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明の【0021】などの記載からみて、目安となるダイの先端の開口角度y1を一次関係式のyで関連付けて開口角度y1の最適化の検証回数を減少させることにより、育成される単結晶の厚みに対して開口角度が容易且つ最適に設定可能なダイを提供するという本件発明の課題(同【0011】)を解決するものであると解される。 ここで、本件一次関数式に含まれるa、b、xについて着目すると、発明の詳細な説明には、aを7.75以上7.80以下、bを47.0°以上47.39°以下に設定することは、ダイの厚みx(3.5mm以上6.5mm以下)に対して最小二乗法に基づく誤差範囲外まで一次関数式yが移動するのを防止でき、最適な開口角度y1の値を導出するのに好ましいと記載されているから(同【0057】、【0060】)、このように設定した一次関係式を満たすダイであれば、本件発明の課題を解決できることを認識できる。 そして、本件発明1に係る請求項1には、「ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度であること」が特定されており、当該特定事項は、上述した本件発明の課題を解決できることを認識できる範囲にほかならない。 そうすると、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものといえる。また、本件発明1の特定事項を全て含む本件発明3~5についても、同様に判断される。 (3)小活 したがって、取消理由1~3に理由はない。 第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 (1)設定登録時の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1)。 (2)設定登録時の請求項1~5に係る発明は、甲3に記載された発明であるか、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由2)。 (3)設定登録時の請求項1~5に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、あるいは甲4に記載された発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由3)。 (4)設定登録時の請求項1~5に係る発明は、甲5に記載された発明に基いて、あるいは甲5に記載された発明及び甲第1号証~甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由4)。 (5)設定登録時の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記2(5)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(申立理由5)。 (6)設定登録時の請求項1~5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記2(6)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(申立理由6)。 (7)設定登録時の請求項1~5に係る特許は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、下記2(7)アの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(申立理由7)。 2 申立理由に対する当審の判断 (1)申立理由1(甲1を主たる証拠とするもの) ア 本件発明1 (ア)甲1発明 上記第4の2(1)アによれば、甲1には、EFG法によりサファイア単結晶を育成成長するために(【0021】)、仕切り板18が互いに平行に配置されて微小間隙(スリット)19を形成したダイ9について、各仕切り板18の上部に斜面30が形成されており、互いの斜面30が向かい合わせで配置されることで鋭角の開口部20が形成されること(【0026】)、さらに、前記ダイの厚みが3.3~6.5mmに設定されること(【0078】~【0079】)が記載されている。 そうすると、甲1には、「スリットを有しEFG法に用いられるダイであって、ダイの上部の開口部が鋭角で形成されており、ダイの厚みが3.3mm~6.5mmに設定されたダイ。」(以下、「甲1発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (イ)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1と甲1発明とは、「スリットを有しEFG法に用いられるダイ」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明1は、「ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度である」のに対し、 甲1発明は、「ダイの上部の開口部が鋭角で形成されており、ダイの厚みが3.3mm~6.5mmに設定された」点。 (ウ)判断 相違点2について検討する。 本件発明1のダイの開口角度y1の取り得る角度は、上記第5の2(1)ア(ウ)で検討したとおり、72.575°~98.09°と算出される。他方、甲1発明の「ダイの上部の開口部」は「鋭角」であるが、その具体的な数値は不明であるから、当該相違点2は実質的なものである。 そして、甲1の明細書及び図面(特に図2)を子細にみても、「本件一次関数式」に係る記載はないし、これを記載する他の証拠もない以上、甲1発明において、ダイの上部の開口部の角度とダイの厚みを「本件一次関数式」を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ 本件発明3~5 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記ア(ウ)で検討した理由により、本件発明3~5は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲1に記載された事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)申立理由2(甲3を主たる証拠とするもの) ア 本件発明1 (ア)甲3発明 上記第4の2(3)アによれば、甲3には、EFGによって成長させるための複数のダイ20について、(【0016】)、ダイ開口部24の寸法はリボンの所望の寸法(幅および厚さ)を決定し得るもので(【0020】)、少なくとも3.5mmの厚さにすること(【0089】)が記載されている。また、同イの図1、2を参照すると、複数のダイには溶融体源10と連通するための間隙(スリット)が形成されていることが見てとれる。 そうすると、甲3には、「スリットを有しEFG法に用いられるダイであって、ダイ開口部の寸法がリボンの所望の寸法により決定されるものであり、当該ダイ開口部の厚みが少なくとも3.5mmであるダイ。」(以下、「甲3発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (イ)対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、本件発明1と甲3発明とは、「スリットを有しEFG法に用いられるダイ」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明1は、「ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度である」のに対し、 甲3発明は、「ダイ開口部の寸法がリボンの所望の寸法により決定されるものであり、当該ダイ開口部の厚みが少なくとも3.5mmである」点。 (ウ)判断 相違点3について検討する。 本件発明1のダイの開口角度y1の取り得る角度は、上記第5の2(1)ア(ウ)で検討したとおり、72.575°~98.09°と算出される。他方、甲3発明の「ダイ開口部」における角度の具体的な数値は不明であるから、当該相違点3は実質的なものである。 そして、甲3の明細書及び図面(特に図2)を子細にみても、甲3発明の「ダイ開口部」における角度の具体的な数値は不明であるし、「本件一次関数式」に係る記載もない。そして、「本件一次関数式」について記載する他の証拠もない以上、甲3発明において、ダイ開口部の角度とダイの厚みを「本件一次関数式」を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ 本件発明3~5 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記ア(ウ)で検討した理由により、本件発明3~5は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明及び甲3に記載された事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)申立理由3(甲4を主たる証拠とするもの) ア 本件発明1 (ア)甲4発明 上記第4の2(4)によれば、甲4には、EFGプロセスで使用されるダイチップについて(第3欄第25~27行)、V型ダイにすること(第9欄第48~49行、図6B)、ダイの頂部は、水平に対して対称的に角度を付けるようにして、その角度θが-30°から30°まで変化してよいこと(第9欄60行~)が記載されている。また、図6Bを参照すると、ダイには間隙(スリット)が形成されていることが見てとれる。 そうすると、甲4には、「スリットを有しEFGプロセスに使用されるV型のダイであって、ダイの頂部は水平に対して対称的に角度が付けられており、その角度θが-30°から30°であるダイ。」(以下、「甲4発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (イ)対比 本件発明1と甲4発明とを対比すると、本件発明1と甲4発明とは、「スリットを有しEFG法に用いられるダイ」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4> 本件発明1は、「ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度である」のに対し、 甲4発明は、「ダイの頂部は水平に対して対称的に角度が付けられており、その角度θが-30°から30°である」点。 (ウ)判断 相違点4について検討する。 本件発明1のダイの開口角度y1の取り得る角度は、上記第5の2(1)ア(ウ)で検討したとおり、72.575°~98.09°と算出される。他方、甲4発明の「ダイの頂部」が「V型」であるとき、その角度が取り得る範囲は、120°~180°(θ=30°~0°)になると解されるから、当該相違点4は実質的なものである。 そして、甲4の明細書及び図面(特に図6B)を子細にみても、「本件一次関数式」に係る記載はないし、これを記載する他の証拠もない以上、甲4発明において、ダイの頂部の角度とダイの厚みを「本件一次関数式」を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ 本件発明3~5 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記ア(ウ)で検討した理由により、本件発明3~5は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び甲4に記載された事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)申立理由4(甲5を主たる証拠とするもの) ア 本件発明1 (ア)甲5発明 上記第4の2(5)によれば、甲5には、イーエフジー法によって結晶を成長させるダイについて(第2頁左欄第18~20行)、水平なダイ頂端面40が斜めに集まる面40Bに置きかえられて、毛細管溝46と連絡する半径方向に延びるV字形凹部則ち溝46Bが形成されること(第5頁右欄第12~33行、図7)が記載されている。 そうすると、甲5には、「毛細管溝を有しイーエフジー法によって結晶を成長させるダイであって、ダイ頂端面にV字形溝が形成されているダイ。」(以下、「甲5発明」という。)の発明が記載されていると認められる。 (イ)対比 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「毛細管溝」は本件発明1の「スリット」に相当するから、本件発明1と甲5発明とは、「スリットを有しEFG法に用いられるダイ」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> 本件発明1は、「ダイの先端が開口角度y1(但しy1<180°)で形成されており、更に開口角度y1が、ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度で形成されており、厚みxが3.3mm以上6.5mm以下であり、aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度である」のに対し、 甲5発明は、「ダイ頂端面にV字形溝が形成されている」点。 (ウ)判断 相違点5について検討する。 本件発明1のダイの開口角度y1の取り得る角度は、上記第5の2(1)ア(ウ)で検討したとおり、72.575°~98.09°と算出される。他方、甲5発明の「ダイ頂端面」の「V字形溝」における角度の具体的な数値は不明であるから、当該相違点5は実質的なものである。 そして、甲5の明細書及び図面(特に図7)を子細にみても、「ダイ頂端面」の「V字形溝」における角度の具体的な数値は不明であるし、「本件一次関数式」に係る記載もない。そして、「本件一次関数式」について記載する他の証拠もない以上、甲5発明において、V字型溝の角度とダイの厚みを「本件一次関数式」を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ 本件発明3~5 本件発明3~5は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記ア(ウ)で検討した理由により、本件発明3~5は、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明及び甲5に記載された事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由5(明確性要件) ア 申立人は、特許異議申立書(第25頁)において、「本件特許発明は、いかにして検証回数を低減して開口角度y1を決めるかという「方法の発明」というべきであり、ダイ、ダイパック、単結晶製造装置の各々には上記効果はなく、構造上にも何ら特徴がないため、不明確である」と主張する。 イ そこで検討するに、本件発明1に係る請求項1には、「ダイの厚みx」が「3.3mm以上6.5mm以下」であること、また、「ダイの先端」の「開口角度y1」が、「ダイの厚みxmmの一次関数式y=ax+b(但し、y<180°、x>0mm、a>0、b>0°)で関連付けられた角度」で形成され、「aが7.75以上7.80以下であり、bが47.0°以上47.39°以下であり、開口角度y1が、一次関数式yの±5%内の角度であること」が特定されている。 そして、当該特定事項は、ダイの構造を特定するものにほかならないから、本件発明1は物の発明として明確であるというべきであり、申立人の上記主張は採用できない。 (6)申立理由6(サポート要件) ア 申立人は、特許異議申立書(第26頁前半)において、「本件特許発明の課題である、結晶粒界やリシード(recede:結晶幅の不足)又はベンド(bend:結晶厚み方向の曲がり)の発生は、単結晶の材料や育成条件(結晶サイズ、育成領域の温度分布、育成速度など)の影響が大きいため、本件特許発明1に記載された条件以外にも必須の条件があると思料する。そのような各種条件を無視して本件特許発明1の範囲にまで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」と主張する。 イ しかしながら、本件発明の課題は、育成される単結晶の厚みに対して開口角度が容易且つ最適に設定可能なダイを提供することであり(【0011】)、本件発明1が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであることは、上記第5の2(2)で検討したとおりである。さらに、結晶粒界やリシード(recede:結晶幅の不足)又はベンド(bend:結晶厚み方向の曲がり)の発生について検討しても、本件発明1のダイを用い且つ一般的な単結晶の材料や育成条件を選択することで、結晶粒界やリシード又はベンドの発生を抑制できると考えられるから、請求項1において単結晶の材料や育成条件を特定していないことを論拠にして、サポート要件を満たさないとする申立人の上記主張は採用できない。 (7)申立理由7(実施可能要件) ア 申立人は、特許異議申立書(第26頁後半)において、「本件特許発明の課題である、結晶粒界やリシード(recede:結晶幅の不足)又はベンド(bend:結晶厚み方向の曲がり)の発生を解決するためには、単結晶の材料や育成条件(結晶サイズ、育成領域の温度分布、育成速度など)の影響が大きい。しかしながら、特許明細書には、上記の各種条件について十分な開示がなされていないため、本件特許発明を得るにあたり、当業者が過度の試行錯誤を要することになる。」と主張する。 イ しかしながら、本件発明の課題は、育成される単結晶の厚みに対して開口角度が容易且つ最適に設定可能なダイを提供することであり(【0011】)、当該ダイは、本件一次関数式に基づいて設計(製造)可能なものであるといえる。さらに、結晶粒界やリシード(recede:結晶幅の不足)又はベンド(bend:結晶厚み方向の曲がり)の発生について検討しても、本件発明1のダイを用い且つ一般的な単結晶の材料や育成条件を選択することで、結晶粒界やリシード又はベンドの発生を抑制できると考えられるから、発明の詳細な説明において単結晶の材料や育成条件の詳細が記載されていないことを論拠にして、実施可能要件を満たさないとする申立人の上記主張は採用できない。 (8)小活 したがって、申立理由1~7に理由はない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3~5に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に本件請求項1、3~5に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。 また、請求項2は本件訂正により削除されたので、請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700864

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    共通の審決分類: 113・C30B、121・C30B、536・C30B、537・C30B
  • 2018-010494拒絶査定不服審判 / 2019-11-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)バッファ薄層を伴うIII-V族基板材料及び製造方法
    共通の審決分類: 113・C30B、121・C30B、536・C30B、537・C30B

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