特許異議申立
2025-700819
根管治療システム
- 審判番号
- 2025-700819
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-182337
- 登録番号
- 7648060
- 請求日
- 2025年08月12日
- 審決日
- 2026年04月07日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社吉田製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【権利者】藤栄電気株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】松本 征二
- 審判長/審判官
- 審判長 安井 寿儀
- 審判官 土田 嘉一
- 審判官 佐々木 佳祐
- 分類
- P1651.121-YAA(A61C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7648060号発明「根管治療システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7648060号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
特許第7648060号の請求項1~13に係る特許を維持する。
特許第7648060号の請求項14~16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7648060号(以下「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、令和5年10月24日にしたものであって、令和7年3月10日にその特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行された。
そして、請求項1~16に係る特許に対し、令和7年8月12日に特許異議申立人 松本 征二(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされ、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 7年10月30日付け:取消理由通知書
同年12月24日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和 8年 1月15日付け:訂正請求があった旨の通知
(特許法第120条の5第5項)
同年 2月16日 :意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年12月24日提出の訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~16について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「被験者の歯牙の根管内に注入された注入液内に配置される触媒部と、
前記被験者の口腔内に配置され、前記触媒部に励起エネルギーを付与することによって当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部と、
前記被験者の口腔外に配置され、前記励起エネルギーを供給する励起エネルギー供給装置と、
発生した前記励起エネルギーを前記励起エネルギー付与部に伝達する伝達部と、
を備え、
前記触媒部は、前記励起エネルギー付与部の先端部を被覆するように配置されており、前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こし、前記注入液内にフリーラジカルを発生させる
ことを特徴とする根管治療システム。」
と記載されているのを、
「被験者の歯牙の根管内に注入された注入液内に配置される触媒部と、
前記被験者の口腔内に配置され、前記触媒部に励起エネルギーを付与することによって当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部と、
前記被験者の口腔外に配置され、前記励起エネルギーを供給する励起エネルギー供給装置と、
発生した前記励起エネルギーを前記励起エネルギー付与部に伝達する伝達部と、
を備え、
前記励起エネルギー付与部は、
前記根管内に配置される根管内電極と、
前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極と、
を備え、
前記触媒部は、前記根管内電極の先端部を被覆するように配置されており、前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こし、前記注入液内にフリーラジカルを発生させる
ことを特徴とする根管治療システム。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~13も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に
「前記触媒部は、触媒物質を含有する溶液内に前記励起エネルギー付与部の先端部を浸すディップコーティング法によって形成されている」
と記載されているのを、
「前記触媒部は、触媒物質を含有する溶液内に前記根管内電極の先端部を浸すディップコーティング法によって形成されている」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に
「前記励起エネルギー付与部は、前記ストッパに対して前記根管の軸方向に移動可能かつ固定可能に取り付けられている」
と記載されているのを、
「前記根管内電極は、前記ストッパに対して前記根管の軸方向に移動可能かつ固定可能に取り付けられている」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に
「前記励起エネルギー付与部は、
前記根管内に配置される根管内電極と、
前記被験者の身体に配置される対向電極と、
を備え、
前記伝達部は、電線であり、
前記励起エネルギー供給装置は、前記励起エネルギーとしての電力を、前記電線を介して前記根管内電極及び前記対向電極へ供給する」
と記載されているのを、
「前記伝達部は、電線であり、
前記励起エネルギー供給装置は、前記励起エネルギーとしての電力を、前記電線を介して前記根管内電極及び前記対向電極へ供給する」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0006】に
「前記した課題を解決するために、本発明の根管治療システムは、被験者の歯牙の根管内に注入された注入液内に配置される触媒部と、前記被験者の口腔内に配置され、前記触媒部に励起エネルギーを付与することによって当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部と、前記被験者の口腔外に配置され、前記励起エネルギーを供給する励起エネルギー供給装置と、発生した前記励起エネルギーを前記励起エネルギー付与部に伝達する伝達部と、を備え、前記触媒部は、前記励起エネルギー付与部の先端部を被覆するように配置されており、前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こし、前記注入液内にフリーラジカルを発生させることを特徴とする。」
と記載されているのを、
「前記した課題を解決するために、本発明の根管治療システムは、被験者の歯牙の根管内に注入された注入液内に配置される触媒部と、前記被験者の口腔内に配置され、前記触媒部に励起エネルギーを付与することによって当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部と、前記被験者の口腔外に配置され、前記励起エネルギーを供給する励起エネルギー供給装置と、発生した前記励起エネルギーを前記励起エネルギー付与部に伝達する伝達部と、を備え、前記励起エネルギー付与部は、前記根管内に配置される根管内電極と、前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極と、を備え、前記触媒部は、前記根管内電極の先端部を被覆するように配置されており、前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こし、前記注入液内にフリーラジカルを発生させることを特徴とする。」
に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~16について、請求項2~16は、本件訂正により訂正される請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「励起エネルギー付与部」について「前記根管内に配置される根管内電極と、前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極と、を備え」ることを限定し、触媒部が被覆する「前記励起エネルギー付与部」の先端部を「前記根管内電極」の先端部に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項10、明細書の段落【0023】、【0024】及び【0029】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項6の「前記触媒部は、触媒物質を含有する溶液内に前記励起エネルギー付与部の先端部を浸すディップコーティング法によって形成されている」という記載を、訂正事項1の「前記触媒部は、前記根管内電極の先端部を被覆するように配置されており」という記載に整合させるために、「前記触媒部は、触媒物質を含有する溶液内に前記根管内電極の先端部を浸すディップコーティング法によって形成されている」とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項7の「前記励起エネルギー付与部は、前記ストッパに対して前記根管の軸方向に移動可能かつ固定可能に取り付けられている」という記載を、訂正事項1の「前記励起エネルギー付与部は、前記根管内に配置される根管内電極」「を備え、」という記載に整合させるために、「前記根管内電極は、前記ストッパに対して前記根管の軸方向に移動可能かつ固定可能に取り付けられている」とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項10が引用する請求項1が訂正事項1により限定されることに伴い、重複する記載を削除して整理する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
(5)訂正事項5~7について
訂正事項5~7は、訂正前の請求項14~16を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項5~7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項5~7は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
(6)訂正事項8について
訂正事項8は、明細書の段落【0006】の記載を、本件訂正後の請求項1の記載に整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
そして、訂正事項8は、上記「(1)訂正事項1について」で検討したのと同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
4 独立特許要件について
請求項1~16について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1~16に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである(本件訂正により、請求項14~16は削除された。)。
「 【請求項1】
被験者の歯牙の根管内に注入された注入液内に配置される触媒部と、
前記被験者の口腔内に配置され、前記触媒部に励起エネルギーを付与することによって当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部と、
前記被験者の口腔外に配置され、前記励起エネルギーを供給する励起エネルギー供給装置と、
発生した前記励起エネルギーを前記励起エネルギー付与部に伝達する伝達部と、
を備え、
前記励起エネルギー付与部は、
前記根管内に配置される根管内電極と、
前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極と、
を備え、
前記触媒部は、前記根管内電極の先端部を被覆するように配置されており、前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こし、前記注入液内にフリーラジカルを発生させる
ことを特徴とする根管治療システム。
【請求項2】
前記触媒部は、酸化チタンによって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の根管治療システム。
【請求項3】
前記励起エネルギー付与部及び前記伝達部、又は、前記伝達部及び前記励起エネルギー供給装置は、互いに分離可能である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の根管治療システム。
【請求項4】
前記励起エネルギー供給装置は、前記励起エネルギーの単位時間あたりの供給量及び/又は供給時間を変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の根管治療システム。
【請求項5】
前記注入液は、水、酸素水、オキシドール又はpH4.5~8.9の中性水溶液である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の根管治療システム。
【請求項6】
前記触媒部は、触媒物質を含有する溶液内に前記根管内電極の先端部を浸すディップコーティング法によって形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の根管治療システム。
【請求項7】
前記歯牙の咬合側端部に配置されるストッパを備え、
前記根管内電極は、前記ストッパに対して前記根管の軸方向に移動可能かつ固定可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の根管治療システム。
【請求項8】
前記根管内及び前記口腔外に架設され、前記注入液が通過可能な注入液通路部を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の根管治療システム。
【請求項9】
前記注入液通路部を介して前記注入液を前記根管内に注入する、及び、前記注入液を前記根管内から吸引する注入吸引部を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の根管治療システム。
【請求項10】
前記伝達部は、電線であり、
前記励起エネルギー供給装置は、前記励起エネルギーとしての電力を、前記電線を介して前記根管内電極及び前記対向電極へ供給する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の根管治療システム。
【請求項11】
前記励起エネルギー供給装置は、前記電力の単位時間あたりの供給量及び/又は供給時間を変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の根管治療システム。
【請求項12】
前記励起エネルギー供給装置は、
前記根管の先端部である根尖の位置を検知するための根尖位置検知信号を発生する根尖位置検知信号発生部と、
前記根尖位置検知信号を用いて前記根尖の位置を検知する根尖位置検知部と、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の根管治療システム。
【請求項13】
前記励起エネルギー供給装置は、
前記励起エネルギーとしての直流電力を発生する直流電力発生部を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の根管治療システム。」
第4 取消理由の概要
令和7年10月30日付けで通知した取消理由は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由であって、その概要は次のとおりである。
訂正前の請求項1~11、13~16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、また、訂正前の請求項12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第5号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証 米国特許出願公開第2010/0209867号明細書
甲第2号証 久野木 克典、「酸化チタンの触媒作用を用いたフリーラジカル発生方法の開発」、2022年3月15日
甲第5号証 特開2022-84241号公報
なお、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証は、申立人が提出したものであり、以下それぞれを「甲1」、「甲2」及び「甲5」という。
第5 甲各号証の記載事項及び引用発明
1 甲1について
甲1には、次の記載がある。なお、和訳は、申立人が提出した抄訳文に基づいて当審が作成した。また、下線は当審で付した。(以下同様)
(1)「FIELD AND BACKGROUND OF THE INVENTION
[0002] The present invention relates to a device and method for treatment of a dental cavity such as a root canal and, more particularly, but not exclusively to a device for sterilizing a root canal.」
発明の分野及び背景技術
[0002]本発明は、根管などの歯の空洞を治療するための装置及び方法に関し、より具体的には、根管を滅菌するための装置に関するが、これに限定されるものではない。
(2)「[0007] Other systems place an electrode inside the root canal and another electrode outside the tooth and pass a current between the two, closing the circuit via the human body. The electromagnetic field and in some case the temperature kills bacteria, but the effectiveness is limited because often the conditions in the canal are not ideal. This is particularly the case when the electrode is far from the apical aria. One version uses 500 Watts of power, at a frequency of 300-KHz, in order to create a current path from the apical aria of the root canal to the external electrode, through the patient's flesh. A disadvantage of this system is that much of the power provided goes to setting up the current path and not to carrying out the sterilization. Furthermore the sterilization effect is not uniform over the root canal, and requires exceptional skill on the part of the dentist in order to be successful. Furthermore the resistance provided by the human body varies between individuals, making it impossible to control the power level in given cases. Thus a higher than designed resistance may reduce the output and vice versa. Furthermore the power increases with proximity to the apical aria, due to the reduced distance between the two ends of the probe or electrode and in some cases a current overload may result, causing pain to the patient. Thus it is impossible to control the power and you may either expose the client to sharp, pain or you may fail to provide sufficient power to destroy all the bacteria.」
[0007]他のシステムでは、1つの電極が根管内に、別の1つの電極が歯の外側に配置され、人体を介して回路を閉じ、2つの電極間を電流が通過する。電磁場、場合により温度が細菌を殺すが、根管内の条件が理想的でないことが多いため、その効果は限られている。特に、電極が根尖部から遠く離れている場合に当てはまる。一つのバージョンでは、根管の根尖部から外部電極まで患者の肉体を通しての電流経路を作成するために、300KHzの周波数で500ワットの電力を使用する。このシステムの欠点は、供給される電力の多くが電流経路を構成するために使われ、滅菌を実行するためには使われないことである。さらに、滅菌効果は根管全体に均一ではなく、成功させるためには歯科医の卓越した技術が必要である。さらに、人体が提供する抵抗は個人によって異なり、特定のケースで電力レベルを制御することが不可能である。このため、設計された以上の抵抗があると出力が減少し、その逆もまた同様である。さらに、根尖部に近づくにつれて、プローブ又は電極の両端間の距離が短くなるために電力が増加し、場合によっては電流の過負荷が発生し、患者に痛みを引き起こす可能性がある。このため、電力を制御することは不可能であり、患者に鋭い痛みを与えるか、すべての細菌を殺すのに十分な電力を提供できない可能性がある。
(3)「[0048] The present embodiments comprise an apparatus and a method for root canal sterilization using electrical energy, where an electrode pair is inserted into the root canal. A discharge is induced between the electrodes of the electrode pair. The current is confined to the root canal, and electrical energy is therefore kept out of surrounding tissues. The result is that several Joules of energy can be released within the root canal to kill the bacteria, without detrimental effect on the human body
[0049] The effect can be enhanced by filling the root canal with either a conductive fluid, such as salt water or an irrigation fluid such as 17% ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA), to take two examples. Other fluids with high conductivity and/or sterilizing or disinfecting ability may also be considered. Mixtures of conducting materials and sterilizing or disinfection agents may also be used. In an embodiment of the invention a conductive fluid is placed in the root canal and the electrode pair is dipped or otherwise contacted with a sterilizing or disinfecting fluid. The electrode pair is then inserted into the conducting liquid in the root canal and the current is made to flow between the electrodes. Other sterilizing or disinfecting solutions can be used. Applicants believe that hydrogen peroxide, chlorhexidine, iodoform (IKI-potassium iodide are suitable.
[0050] In an embodiment the electrical energy diffuses into the root canal volume and kills the bacteria. The bacteria are killed by one or more of an electromagnetic wave, a wave of heat provided via the liquid and a pressure wave. Although any one of the above may be useful, two or more are preferred for clinical effectiveness and all three together provide the ideal sterilization, thus providing the sterilization.
[0051] It is believed that an important factor in the sterilization process is aggressive oxidation cause by the break-up of the water in the solution in which one component is atomic oxygen. The resulting oxidation is very strong compared to that resulting from mere high temperatures. The breakdown caused by the pulse gives rise to pressure and thermal waves which force the atomic oxygen particles into side tubules and channels in the interior of the root. It is believed that many of these tubules and channels are not open during normal sterilization.」
[0048]本実施形態は、電気エネルギーを使用して根管を殺菌するための装置及び方法を備えており、電極対が根管に挿入される。電極対の電極間に放電が誘起される。電流は根管内に閉じ込められるため、電気エネルギーは周囲の組織には及ばなくなる。その結果、数ジュールのエネルギーを根管内に放出して細菌を殺すことができ、人体に悪影響を与えることなく殺菌することができる。
[0049]二つの例を挙げると、たとえば塩水などの導電性液体や、17%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの洗浄液を根管に満たすことで効果を高めることができる。高い導電性及び/又は殺菌又は消毒能力を持つ他の液体も検討されうる。導電材料と滅菌剤又は消毒剤の混合物も使用できる。本発明の一実施形態では、導電性流体が根管内に配置され、電極対が、殺菌又は消毒流体に浸されるか、他の方法で接触される。次に、電極対が根管内の導電性液体に挿入され、電流が電極間に流される。その他の殺菌又は消毒液も使用できる。出願人は、過酸化水素、クロルヘキシジン、ヨードホルム(IKI-ヨウ化カリウム)が適切であると考えている。
[0050]実施形態において、電気エネルギーは根管の体積に拡散し、細菌を殺す。細菌は、電磁波、液体を介して提供される熱波、及び圧力波のいずれか一つ以上によって殺される。上記のいずれか一つが有用である場合もあるが、臨床的な効果を考慮すると二つ以上が好ましく、三つすべてを組み合わせることで理想的な滅菌が実現され、これにより滅菌が提供される。
[0051]殺菌プロセスにおける重要な要素は、原子状酸素を一成分とする溶液中の水の分解によって引き起こされる強力な酸化であると考えられる。その結果得られる酸化は、単なる高温による酸化に比べて非常に強力である。パルスによって引き起こされる破壊は、圧力及び熱の波を生じさせ、原子酸素粒子を根の内部にある側管やチャネルに押し込む。通常の滅菌時には、これらの細管やチャネルの多くは開いていないと考えられている。
(4)「[0055] Reference is now made to FIG. 1 which illustrates a device 10 for sterilization of a dental root cavity 12, according to an embodiment of the invention. The device comprises an electrode pair 14 for extending into the cavity.
[0056] A controller-control box 16-comprises a power supply 17, a controller 18 and an apex locator unit 19. The power supply includes capacitors to store energy, a voltage supply, a supply limiter and a timer, and provides precise pulses. The controller 18 optionally includes a microprocessor and is able to carry out functions such as measuring apex location within the root canal, measuring conductivity and calculating the pulses needed for the given conditions, in some embodiments of the invention.
[0057] The controller 16 sends a controlled electrical current at high voltage to the cavity via the electrodes. The controlled current is confined within the cavity since both electrodes are located within the cavity. The energy released carries out the disinfection. The energy released can be of the order of magnitude of 1 to 10 or even 40 Joules we aren't yet sure, but it will most likely be between 25-40J, and may be calculated to heat fluid within the cavity within milliseconds to a temperature exceeding 200 or 500 degrees Celsius or at least a temperature exceeding 100 degrees Celsius, to kill any bacteria present. It can be expected that this almost instant heating causes a shock wave within the cavity.」
[0055]ここで言及する図1は、本発明の一実施形態による、歯根空洞12を滅菌するための装置10を示す。この装置は、空洞内に延びる電極対14を備える。
[0056]コントローラー(制御箱16)は、電源17、コントローラー18、及び根尖位置検出ユニット19を備える。電源はエネルギーを蓄えるためのコンデンサ、電圧供給器、供給制限器、及びタイマーを含み、正確なパルスを提供する。本発明のいくつかの実施形態において、コントローラー18はオプションとしてマイクロプロセッサを含み、根管内の根尖位置の測定、導電性の測定、及び与えられた条件に必要なパルスの計算などの機能を実行することができる。
[0057]コントローラー16は、制御された高電圧の電流を電極を介して空洞に送る。両方の電極が空洞内に配置されているため、制御された電流は空洞内に閉じ込められる。放出されたエネルギーによって消毒が行われる。放出されるエネルギーは、1~10ジュール、又は40ジュール程度で、まだ確定はしていないが、おそらく25~40ジュールの間である。そして、数ミリ秒以内に空洞内の流体を200~500℃、又は少なくとも100℃を超える温度まで加熱し、存在する細菌を死滅させることができると計算される。このほぼ瞬間的な加熱により、空洞内に衝撃波が発生すると予想される。
(5)「[0081] FIG. 5 illustrates an embodiment of a working device. The sterilization device 10 is one of three attachments to a main controller 60 and is inserted into the root canal where electrical sparks are used to sterilize the root canal. Hook 62 is looped on the lip and the combination of hook 62 and attachment 64 are used for locating the apex, in conjunction with the apex location unit.」
[0081]図5は、作業装置の実施形態を示す。滅菌装置10は、メインコントローラー60に接続される三つのアタッチメントの一つであり、電気スパークを使用して滅菌される根管内に挿入される。フック62は、唇上でループにされ、フック62とアタッチメント64の組み合わせは、根尖位置検出ユニットと連携して根尖を特定するために使用される。
(6)「[0097] FIG. 9 is a simplified schematic diagram which shows use of attachments for apex location in order to set the plug. Parts that are the same as in earlier figures are given the same reference numerals and are only explained again in accordance with the need to understand the present figure. The process of locating the apex is controlled within controller 60. Hook 62 is placed on the gum to define a ground and then a train of high frequency pulses are released into the canal from apex location attachment 64. The reflection of the pulses is measured. A second train of pulses is then emitted at a different frequency and the reflection is measured. The two reflections are subjected to signal processing and then applied to a look up table which supplies a number, that number being the length of the canal. The user then sets the plug to give an electrode length according to (in fact slightly less than) that number in millimeters.」
[0097]図9は、プラグを設定するための根尖位置検出用のアタッチメントを使用する方法を示す簡略化された概略図である。前の図と同じ部分には同じ参照番号が付けられており、この図を理解する必要がある場合にのみ再度説明される。根尖の位置検出プロセスは、コントローラー60内で制御される。接地を定義するためにフック62が歯肉上に置かれ、次に高周波パルス列が根尖位置検出アタッチメント64から根管内に放出される。パルスの反射が測定される。次に、異なる周波数で2番目のパルス列が放射され、反射が測定される。2つの反射は信号処理され、次に根管の長さである数値を提供するルックアップテーブルに適用される。ユーザーは、そのミリメートル単位の数値に応じた(実際にはその数値よりも若干短い)電極の長さを設定するためにプラグを調整する。
(7)図1
「
[図:0001437398000001.jpg]
」
(8)図9
「
[図:0001437398000002.jpg]
」
(9)図1の図示内容から、コントローラー16は患者の口腔外に配置される。
(10)段落[0057]の記載及び図1の図示内容から、コントローラー16は、電流を伝達する手段により、装置10に高電圧の電流を供給する。
上記(1)~(10)を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「歯根空洞12内に延びる電極対14を備える装置10と、
患者の口腔外に配置され、制御された高電圧の電流を電極対14を介して歯根空洞12に送るコントローラー16と、
コントローラー16から装置10に電流を伝達する手段と、
を備え、
電極対14が根管内の導電性液体に挿入され、電流が電極対14の間に流され、電気エネルギーが根管の体積に拡散して細菌を殺し、原子状酸素を一成分とする溶液中の水の分解によって引き起こされる強力な酸化を滅菌プロセスの重要な要素とする、
歯根空洞12を滅菌するための装置10及びコントローラー16。」
2 甲2について
甲2には、次の記載がある。
(1)5ページ
「材料と方法
1. 酸化チタンのコーティング
使用した酸化チタンは一般に市販されている光触媒酸化チタンコーティング剤溶液 ST-K211(アナターゼ型二酸化チタン,石原産業,大阪)を使用した。コーティングする材料として切片作製用スライドガラス(松浪ガラス工業社、大阪)、矯正歯科用ステンレスワイヤー(太さ0.016mm、オーソデントラム,東京)とし、これらに対してコーティングを行った。」
(2)5ページ最下行~6ページ
「3. 通電によるフリーラジカルの発生の確認
ステンレスワイヤーに対して上記の方法でST-K211をコーティングしチタン電極としてマイナスに接続した。この時の電極には10本のステンレスワイヤーを束にして使用した。プラスの電極には注射針(18G、テルモ社、東京)を用いてチタン実験群の電気回路とした(Fig.2)。対照群の電気回路として、マイナスの電極にチタンをコーティングしていないステンレスワイヤー束を用いた。電源には歯科用イオン導入装置(PYO-CURE:ナルコーム社)を用いて3V, 100μAの直流電気を通電した。0.01%のメチレンブルー溶液1.5mlをサンプリングチューブに入れ、実験群ではチタンをコーティングした電極と注射針を挿入し、それぞれマイナスとプラスに接続して通電した。」
(3)13ページ
「結論
本研究結果から酸化チタンをコーティングした電極に通電することによってフリーラジカルを発生することが出来た。さらに抗菌作用も確認できた。これらの結果は今後酸化チタンの通電法は光の届かない根管治療に大変有用な方法であることが示唆された。今後さらに通電方法や酸化チタンをコーティングする基材の選択など更なる研究が必要と考える。」
(4)図2
「
[図:0001437398000003.jpg]
」
上記(1)~(4)を総合すると、甲2には次の事項が記載されている(以下「甲2記載事項」という。)。
「ステンレスワイヤーに対して光触媒酸化チタンをコーティングしたマイナス電極と、プラス電極をサンプリングチューブに入れ、
通電することによってフリーラジカルが発生して抗菌作用が確認できること。」
「酸化チタンの通電法が光の届かない根管治療に大変有用な方法であること。」
3 甲5について
甲5には、次の記載がある。なお、「・・・」は省略を示す。
(1)「【0014】
そこで、歯科用治療装置では、根管の内部に電極を差し込み、当該電極に高周波電流を通電する治療が行われている。この治療は、人体、特に歯、その中でも根管、歯周組織、骨に高周波電流を通電することで、通電されている部位、特に電極近傍、および電流密度が高い部分が高周波電流によるジュール熱で焼灼し、起炎因子、細菌などを低減させる。なお、この治療で完全に殺菌できなくてもよく、歯髄や肉芽を熱変性させて、壊死、失活させることができればよい。」
(2)「【0017】
・・・具体的に、歯科用治療装置10は、図1に示すように、切削工具であるファイル11(図2参照)に高周波電流を通電するユニット12と、ファイル11を保持するためのファイルホルダ13と、を備えており、ファイルホルダ13の先端に取り付けられたファイル11に対して高周波電流を通電することができる。・・・
【0018】
・・・ユニット12には、表示部14、設定操作部15が設けられているとともに、フートスイッチ16および受動電極22が接続されている。」
(3)「【0024】
高周波信号発生回路19は、ファイル11と受動電極22との間に、例えば周波数が300kHz~1000kHzで、電流値が20mA~200mA(根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲)の高周波電流を通電する。・・・なお、高周波電流を通電する際は、ファイル11が根管901内に挿入され、その先端が、例えば根尖903付近の組織に当てられ、受動電極22が歯肉902や口唇904等、患者の体の一部に当てられる。つまり、ファイルホルダ13は、根管901内に配置される電極であるファイル11を保持する保持部であり、高周波信号発生回路19は、当該電極に高周波電流を通電する電源部である。」
(4)「【0026】
根管長測定回路23は、根管長測定用信号をファイル11と受動電極22との間に流してファイル11の先端の位置を測定する。根管長測定回路23で測定したファイル11の先端の位置の情報は、根管長測定回路23から制御回路21へ送信される。具体的に、根管長測定回路23は、ファイル11と受動電極22との間に2つの異なる周波数の電圧を印加することで、それぞれのインピーダンスの値を求め、その2つの値(実際にはインピーダンスの値に対応する電圧や電流の値)の差分や比等から、根尖903からのファイル11の先端の位置を特定する。・・・根管長測定の際においても、受動電極22は、歯肉902や口唇904等、患者の体の一部に当てられる。」
(5)【図2】
「
[図:0001437398000004.jpg]
」
上記(1)~(5)を総合すると、甲5には次の事項が記載されている(以下「甲5記載事項」という。)。
「根管内901に挿入されるファイル11と、
歯肉902や口唇904等、患者の体の一部に当てられる受動電極22と、
を備え、
高周波信号発生回路19は、ファイル11と受動電極22との間に、通電されている部位をジュール熱で焼灼して根管内の起炎因子、細菌などを低減するための根管治療に必要な電流値の範囲の高周波電流を通電し、
根管長測定回路23は、根管長測定用信号をファイル11と受動電極22との間に流してファイル11の先端の位置を測定する、
歯科用治療装置10。」
第6 取消理由についての判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「歯根空洞12内に延びる電極対14を備える装置10」と、本件発明1の「前記被験者の口腔内に配置され、前記触媒部に励起エネルギーを付与することによって当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部」とは、前記被験者の口腔内に配置され、エネルギーを付与するエネルギー付与部、の限りで一致する。
また、甲1発明の「装置10」が「歯根空洞12内に延びる電極対14を備える」ことと、本件発明1の「前記励起エネルギー付与部は、前記根管内に配置される根管内電極と、前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極と、を備え」ることとは、エネルギー付与部は、前記根管内に配置される根管内電極を備えること、の限りで一致する。
(イ)甲1発明の「患者の口腔外に配置され、制御された高電圧の電流を電極対14を介して歯根空洞12に送るコントローラー16」と、本件発明1の「前記被験者の口腔外に配置され、前記励起エネルギーを供給する励起エネルギー供給装置」とは、前記被験者の口腔外に配置され、前記エネルギーを供給するエネルギー供給装置、の限りで一致する。
(ウ)甲1発明の「コントローラー16から装置10に電流を伝達する手段」と、本件発明1の「発生した前記励起エネルギーを前記励起エネルギー付与部に伝達する伝達部」とは、発生した前記エネルギーを前記エネルギー付与部に伝達する伝達部、の限りで一致する。
(エ)甲1発明の「根管内の導電性液体」は、本件発明1の「被験者の歯牙の根管内に注入された注入液」に相当する。
そして、甲1発明の「原子状酸素を一成分とする溶液中の水の分解によって引き起こされる強力な酸化」は、技術常識を参酌すると、根管内の導電性液体に発生したフリーラジカルによる酸化であるから、甲1発明の「電気エネルギーが根管の体積に拡散して細菌を殺し、原子状酸素を一成分とする溶液中の水の分解によって引き起こされる強力な酸化を滅菌プロセスの重要な要素とする」ことと、本件発明1の「前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こし、前記注入液内にフリーラジカルを発生させる」こととは、前記エネルギーによって、前記注入液内にフリーラジカルを発生させること、の限りで一致する。
(オ)甲1発明の「歯根空洞12を滅菌するための装置10及びコントローラー16」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「根管治療システム」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、
「前記被験者の口腔内に配置され、エネルギーを付与するエネルギー付与部と、
前記被験者の口腔外に配置され、前記エネルギーを供給するエネルギー供給装置と、
発生した前記エネルギーを前記エネルギー付与部に伝達する伝達部と、
を備え、
前記エネルギー付与部は、
前記根管内に配置される根管内電極、
を備え、
前記エネルギーによって、前記注入液内にフリーラジカルを発生させる
根管治療システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「被験者の歯牙の根管内に注入された注入液内に配置される触媒部」を備え、エネルギー付与部が「前記触媒部に励起エネルギー」を付与することによって「当該触媒部に触媒作用を起こさせる励起エネルギー付与部」であり、エネルギー供給装置が「前記励起エネルギー」を供給する「励起エネルギー供給装置」であり、伝達部が「前記励起エネルギー」を「前記励起エネルギー付与部」に伝達し、「前記触媒部は、前記根管内電極の先端部を被覆するように配置されており、前記励起エネルギーによって前記触媒作用を起こ」すのに対して、甲1発明は、触媒部を備えておらず、励起エネルギーに係る特定がない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記励起エネルギー付与部」が、根管内に配置される根管内電極と、「前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極」とを備えるのに対して、甲1発明は、歯根空洞12内に延びる電極対14を備える点。
(2)判断
事案に鑑み、まず上記相違点2から検討する。
甲1の段落[0007]には、1つの電極が根管内に、別の1つの電極が歯の外側に配置されるシステムにおいて、人体を介して回路を閉じ、2つの電極間を電流が通過することで生じる課題が記載されている。
そして、段落[0048]には、根管に挿入される電極対により、電流が根管内に閉じ込められ、人体に悪影響を与えることなく殺菌することができることが記載されている。
これら記載によれば、甲1発明は、1つの電極が根管内に、別の1つの電極が歯の外側に配置されるシステムにおいて生じる課題を解決するために、根管に挿入される電極対14により殺菌を行うものである。
そうすると、甲1発明において、殺菌を行うための電極として、根管内に配置される根管内電極と、根管の外部に配置される対向電極を採用することには阻害要因がある。
したがって、甲1発明に、甲5記載事項の「根管内901に挿入されるファイル11」及び「歯肉902や口唇904等、患者の体の一部に当てられる受動電極22」を適用することはできない。
また、甲2には、上記相違点2に係る本件発明1の事項は記載されていない。
申立人は、令和8年2月16日提出の意見書において、甲1に記載された「根尖位置アタッチメント64」及び「フック62」は、本件発明1の「前記根管内に配置される根管内電極」及び「前記根管の外部において前記被験者の身体に配置される対向電極」にそれぞれ相当し、根管内に配置される根管内電極と根管の外部に配置される対向電極とを用いて根管内に電流を発生させることは、甲5に記載されているか、下記文献に記載されているように周知技術であるから、本件発明1は容易想到である旨主張する。
特開2011-193907号公報
特開2022-084238号公報
特開2022-084239号公報
特開2022-084240号公報
しかし、甲1の段落[0081]及び[0097]の記載によれば、甲1に記載された「根尖位置アタッチメント64」は、根尖の位置検出プロセスにおいて高周波パルス列を放出するものであり、また、「フック62」は接地を定義するための電極であるから、甲1に記載された「根尖位置アタッチメント64」及び「フック62」は、歯根空洞を滅菌する際にフリーラジカルを発生させる電極ではない。
また、上記のとおり、甲1発明において、殺菌を行うための電極として、根管内に配置される根管内電極と、根管の外部に配置される対向電極を採用することには阻害要因があるから、甲1発明に、甲5記載事項や申立人が主張する上記周知技術を適用することはできない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~13について
本件発明2~13は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、上記1と同様の理由により、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正前の請求項14~16は本件訂正により削除されたため、請求項14~16についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700819