特許異議申立
2024-700554
情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
- 審判番号
- 2024-700554
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-035199
- 登録番号
- 7398983
- 請求日
- 2024年06月11日
- 審決日
- 2024年09月25日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社クレスコ
- 【権利者代理人】弁理士法人白坂
- 【異議申立人】西内 大生
- 【異議申立人】伊藤 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 土田 嘉一
- 審判官 小河 了一
- 分類
- P1651.113-Y (A61C) / P1651.121-Y (A61C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7398983号発明「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7398983号の請求項に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7398983号の請求項1~9に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2020-35199号)は、令和2年3月2日の出願であって、令和5年12月7日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月15日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年6月11日に特許異議申立人 西内 大生(以下「申立人A」という。)により、全請求項に対して特許異議の申立てがされ、令和6年6月14日に特許異議申立人 伊藤 裕美(以下「申立人B」という。)により、全請求項に対して特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7398983号の請求項1~9に係る発明(以下それぞれを「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部と、
被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得部と、
前記第1取得部によって取得された第1学習モデルと、前記第2取得部によって取得された第2画像とに基づいて、第2画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類部と、
前記分類部によってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す番号付け部と、
前記番号付け部によって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
第1画像に記録される複数の物体、及び、第2画像に記録される複数の物体それぞれでは、上側において複数の物体が直列に並んだ上列部と、下側において複数の物体が直列に並んだ下列部と、を備え、
前記分類部は、上列部の中央に対して左側の複数の物体と、上列部の中央に対して右側の複数の物体と、下列部の中央に対して左側の複数の物体と、下列部の中央に対して右側の複数の物体と、にグループ分けを行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記番号付け部は、所定の基準として、グループ分けを行った中央側を基準に、左上列部及び左下列部それぞれの中央側から左側に向けた昇順で番号を付すと共に、右上列部及び左下列部それぞれの中央側から右側に向けた昇順で番号を付す
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記番号付け部は、第2画像に記録される複数の物体の間に閾値以上の間隔があることにより当該間隔の位置の物体が無くなったと推定される場合に、当該間隔の位置に対しても番号を付す
請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
物体の形状を学習することにより生成された第2学習モデルを取得する第3取得部と、
前記番号付け部によって番号が付された複数の物体の第3画像と、前記第3取得部によって取得された第2学習モデルとに基づいて、第3画像に記録される少なくとも1つの物体の形状を抽出する抽出部と、を備え、
前記出力部は、前記抽出部によって抽出された少なくとも1つの物体が記録される第4画像を出力する
請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
電子カルテを記憶する記憶部と、
第3画像又は第4画像を電子カルテに記録する記録部と、
を備える請求項5に記載の情報処理装置
【請求項7】
前記第2取得部は、第2画像として、複数の物体である複数の歯牙が記録される歯列画像を取得する
請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得ステップと、
被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得ステップと、
前記第1取得ステップによって取得された第1学習モデルと、前記第2取得ステップによって取得された第2画像とに基づいて、第2画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類ステップと、
前記分類ステップによってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す番号付けステップと、
前記番号付けステップによって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力ステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得機能と、
被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得機能と、
前記第1取得機能によって取得された第1学習モデルと、前記第2取得機能によって取得された第2画像とに基づいて、第2画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類機能と、
前記分類機能によってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す番号付け機能と、
前記番号付け機能によって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力機能と、
を実現させる情報処理プログラム。」
第3 異議申立理由の概要
1 申立人Aの申立理由
申立人Aは、証拠方法として甲第1号証~甲第4号証(以下それぞれ「甲A1」~「甲A4」という。)を提出し、請求項1~9に係る特許は、以下の取消理由Aのとおり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
<証拠方法>
甲A1:Dmitry V Tuzoff,外7名,"Tooth detection and numbering in panoramic radiographs using convolutional neural networks",Dentomaxillofacial Radiology,2019年3月5日
甲A2:Jingru Yi,外7名,"Object-Guided Instance Segmentation for Biological Images",The Thirty-Fourth AAAI Conference on Artificial Intelligence(AAAI-20),2020年2月
甲A3:藤田広志,「医用画像ディープラーニング入門」,第1版第1刷,株式会社オーム社,2019年4月10日,174~177ページ
甲A4:特開2019-101484号公報
<取消理由A(甲A1を主引例とする進歩性)>
本件発明1~4、8、9は、甲A1及び甲A2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5は、甲A1~甲A3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明6、7は、甲A1~甲A4記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 申立人Bの申立理由
申立人Bは、証拠方法として甲第1号証~甲第3号証(以下それぞれ「甲B1」~「甲B3」という。)を提出し、以下の取消理由B1及びB2のとおり、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものあり、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
<証拠方法>
甲B1:Hu Chen,外6名,"A deep learning approach to automatic teeth detection and numbering based on object detection in dental periapical films",SCIENTIFIC REPORTS,2019年3月7日
甲B2:Dmitry V Tuzoff,外7名,"Tooth detection and numbering in panoramic radiographs using convolutional neural networks",Dentomaxillofacial Radiology,2019年3月5日
甲B3:Jeong-Hee Lee,外4名,"Application of a fully deep convolutional neural network to the automation of tooth segmentation on panoramic radiographs",Oral Surgery,Oral Medicine,Oral Pathology and Oral Radiology,2019年11月15日
なお、甲A1と甲B2は同一の文献であって、甲A1は、要約、図及び図の説明等の抜粋、甲B2は、これらを含む全文である。
<取消理由B1(甲B1を主引例とする新規性、進歩性)>
本件発明1~5、7~9は、甲B1に記載された発明である。
本件発明1~9は、甲B1~甲B3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<取消理由B2(甲B2を主引例とする新規性、進歩性)>
本件発明1~9は、甲B2に記載された発明である。
本件発明1~9は、甲B2及び甲B3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 甲各号証の記載事項及び引用発明
1 甲A1、甲B2について
甲A1と甲B2は同一の文献であって、甲A1は、要約、図及び図の説明等の抜粋、甲B2は、これらを含む全文であるから、以下、甲B2の記載事項を認定する。
(1)甲B2の記載
ア 甲B2には、訳文にして以下の記載がある。なお、訳文は当審で作成し、下線は当審で付した(以下同様)。
(ア)Abstractの1~12行
「目的:歯科用X線写真の分析は、日常の臨床診療における診断プロセスの重要な一部である。専門家による解釈は、歯の検出と番号付けを含む。本研究では、パノラマX線写真に対してこのタスクを自動的に実行する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に基づく新しいソリューションが提案される。
方法:無作為に抽出された成人のパノラマX線写真1352枚のデータセットがシステムの訓練に使用された。歯の検出と番号付けのタスクの両方について、CNNベースのアーキテクチャが分析された。歯検出モジュールは、各歯の境界を定義するためにX線写真を処理する。それは、最先端のFaster R-CNNアーキテクチャに基づく。歯番号付けモジュールは、検出された歯画像をFDI表記に従って分類する。それは、歯の空間的配置の規則に従って結果を改善するために、ヒューリスティックアルゴリズムとともに古典的なVGG-16 CNNを利用する。222枚の画像の別のテストセットは、システムの性能を評価し、専門家のレベルと比較するために使用された。」
(イ)「2of10」ページ右欄下から13行~最下行
「コンピュータ支援診断システムの基本的なワークフロー
ここで紹介されるシステムの入力として、パノラマX線写真が使用される。歯検出モジュールは、各歯の境界を定義するためにX線写真を処理する。次に、システムは予測された境界ボックスに基づいてパノラマX線写真を切り抜く。歯番号付けモジュールは、切り抜かれた各領域をFDI表記3に従って分類し、全ての歯を結合し、最終的な歯番号を生成するためにヒューリスティックを適用する。システムは、全ての検出された歯の境界ボックスの座標と対応する歯番号を画像上に出力する。全体的な構成とワークフローが図1に示される。」
(ウ)図1及び図1の説明
[図:0001415333000001.jpg]
(図1の説明の訳文)
「図1 システム構成とパイプライン:システムは、歯検出と歯分類の2つのモジュールから構成される。歯検出モジュールは、オリジナルのパノラマX線写真から歯を検出し、境界ボックスを出力する。歯分類モジュールは、歯科表記に従って番号を割り当てるために、各歯を分類し、検出された歯の間における配置の一貫性を確保するためにヒューリスティックな方法を適用する。CNNs、畳み込みニューラルネットワーク。」
(エ)「3of10」ページ左欄11~25行
「訓練グループは、歯の検出及び番号付けモデルを訓練するために使用され、テストグループは、ソフトウェアの性能を評価するために使用された。
全てのパノラマX線写真は、Sirona Orthophos XG-3 X線装置(Sirona Dental Systems GmbH,Bensheim,ドイツ)で撮影された。様々な経験を持つ5人の放射線科専門家が、画像に対するグランドトゥルース注釈を提供した。注釈を収集するために、以下の方法が用いられた:専門家は、高解像度のパノラマX線写真を提示され、全ての歯の周囲に境界ボックスを描画すると同時に、各ボックスに歯番号(FDIシステム)を含む分類ラベルを提供するよう求められた。モデルは、歯科インプラント及び固定式ブリッジを除く、天然歯根を持つ歯のみを検出するように訓練された。」
(オ)「4of10」ページ左欄30行~右欄54行
「歯番号付け
歯番号付け方法は、VGG-16畳み込みアーキテクチャーに基づく16。このモデルは、FDI2桁表記に従って歯の番号を予測するように訓練された。
歯を数字で分類するために、このモジュールは歯検出モジュールの出力を使用する。それは、予測された境界ボックスに基づいて歯を切り抜く。次に、VGG-16 CNNは、2桁の歯番号を予測するために、切り抜かれた各画像を分類する。分類器は、各境界ボックスについて、歯が可能性のある32の歯番号のいずれかである確率を推定するために、32の分類全ての信頼度スコアのセットを出力する。次に、これらのデータは、予測結果を改善するためにヒューリスティックな方法によって後処理される。後処理は、各歯が画像内で特定の順序で最大1回出現するという自然な仮定に基づく。;アルゴリズムは以下のように動作する。
ステップ1.予測された歯の境界ボックスを各顎内の座標で並び替える。
ステップ2.既知の最大歯数に基づいて、欠けた歯の数を数える。
ステップ3.可能性のある有効な歯の全ての組み合わせを繰り返し、信頼性スコアの合計を計算する。
ステップ4.信頼度スコアの合計が最も高い組み合わせを選ぶ。」
(カ)図5及び図5の説明
「
[図:0001415333000002.jpg]
」
(図5の説明の訳文)
「図5 歯番号付け結果:(a)32の全ての歯が正しく分類され、(b)重度の虫歯と埋伏歯が正しく分類され、(c)歯冠のある歯が正しく分類され、(d)欠損歯及び前後関係の欠落を考慮して正しく分類された。」
イ 上記アの記載から、甲B2には以下の事項が記載されている。
(ア)上記ア(オ)の「このモジュール」は、上記ア(イ)及び(ウ)の「歯番号付けモジュール」であるから、歯番号付けモジュールは、歯検出モジュールの出力を使用し、各境界ボックスについて、32の分類全ての信頼度スコアのセットを出力し、これらのデータを、予測結果を改善するためにヒューリスティックな方法によって後処理し、歯番号を生成する。また、歯番号はFDI表記に従った番号である。
(2)甲A1(甲B2)発明
上記(1)ア及びイを総合すると、甲B2には次の発明(甲A1と甲B2は同一の文献であるから、以下「甲A1(甲B2)発明」という。)が記載されている。
「無作為に抽出されたパノラマX線写真のデータセットをシステムの訓練に使用し、
システムの入力として、パノラマX線写真を使用し、
歯検出モジュールは、オリジナルのパノラマX線写真から歯を検出し、境界ボックスを出力し、
歯分類モジュールは、歯検出モジュールの出力を使用し、各境界ボックスについて、32の分類全ての信頼度スコアのセットを出力し、これらのデータを、予測結果を改善するためにヒューリスティックな方法によって後処理し、FDI表記に従った歯番号を生成し、
全ての検出された歯の境界ボックスの座標と対応する歯番号を画像上に出力する、
システム。」
2 甲A2について
(1) 甲A2の記載
ア 甲A2には、訳文にして以下の記載がある。
(ア)Abstract(12677ページ)
「要約
生物画像のインスタンスセグメンテーションは、対象物の行動や特性を研究するために不可欠である。対象物のクラスタリング、オクルージョン及び付着の問題といった課題が、インスタンスセグメンテーションを難しいタスクにしている。現在のボックスフリーのインスタンスセグメンテーション法は、一般的にローカルのピクセルレベルの情報に依存している。大局的なオブジェクトビューがないため、これらの手法ではセグメンテーションの過不足が生じやすい。これに対して、ボックスベースのインスタンスセグメンテーション法は、オブジェクト検出をセグメンテーションに組み込むことで、個々のインスタンスの識別においてより優れた性能を発揮する。本論文は、新しいボックスベースのインスタンスセグメンテーション法を提案する。主に、対象物境界ボックスをそれらの中心点から探し出す。対象物の特徴は、その後、RoIパッチ内のクラスタ化したインスタンスを分離するためのガイドとして、セグメンテーションブランチで再利用される。インスタンスの正規化とともに、このモデルはターゲットオブジェクトの分布を復元し、近傍の付属物体の分布を抑制することができる。その結果、提案モデルは、目的の対象物の詳細を保持したまま、クラスタ化した対象物をセグメンテーションすることに優れた性能を発揮する。提案手法は、3つの生物的データセット:細胞核、植物表現型データセット、神経細胞、において、最先端の性能を達成した。」
(イ)図1及び図1の説明
[図:0001415333000003.jpg]
(図1の説明の訳文)
「図1:対象物ガイド付きインスタンスセグメンテーションフレームワーク。エンコーダー(レイヤー1-5)はResNet50 (Heら。2016)のネットワークである。このフレームワークは、2のブランチ:(a)対象物検出ブランチ、(b)対象物ガイド付きセグメンテーションブランチを含む。BとSは、スキップコンビネーションモジュールを表す。対象物検出ブランチは、センターヒートマップ、ボックスプロパティ(幅や高さなど)、センターオフセットを予測する。予測された境界ボックスは、RoIパッチを切り抜くためにセグメンテーションブランチに流される。対象物の特徴は、モデルが付着した対象物を分離するためのガイダンスとして利用される。」
(ウ)第12679ページ左欄14~35行
「提案される方法
本手法のフレームワークが図1に示される。ガイド付きインスタンスセグメンテーションは、2つのブランチ:対象物検出と対象物ガイド付きセグメンテーションで構成される。対象物検出ブランチは、インスタンスの境界ボックスを提供することを目的とする。検出された境界ボックスは、次に、セグメンテーションブランチの入力特徴マップからRoIパッチを切り抜くために使用される。その後、インスタンスセグメンテーションがこれらRoIパッチに対して実行される。
対象物検出ブランチ
小さな対象物ではボックスのキーポイントが重なってしまうため、そのような場合、キーポイントのグループ化で対象物を検出することは失敗する。一方、単一の中心点は、キーポイントのグループ化処理が必要とされないため、小さな対象物の識別により適している。本論文では、対象物の中心点を通して対象物を直接特定する。特徴量を抽出するエンコーダとして、ResNet50(Heら。2016)からconvl-5レイヤーを用いる。検出ブランチは、スキップコネクション(Ronneberger, Fischer, and Brox。2015)を通して、深い特徴量と浅い特徴量を結合する。対象物検出ブランチの出力は、センターヒートマップ、センターオフセットマップ、及び幅-高さマップの3つの部分から構成される。」
イ 上記アの記載から、甲A2には以下の事項が記載されている。
(ア)上記ア(イ)には、複数の葉の画像(左上)を(a)対象物検出ブランチ及び(b)対象物ガイド付きセグメンテーションブランチで処理して、個々の葉が異なる色に着色されている画像(右下)を出力することが示されている。
(2)甲A2の記載事項
上記(1)を総合すると、甲A2には以下の事項が記載されている。
「ガイド付きインスタンスセグメンテーションは、対象物検出と対象物ガイド付きセグメンテーションの2つのブランチで構成され、対象物検出ブランチは、インスタンスの境界ボックスを提供し、対象物検出ブランチの出力は、センターヒートマップ、センターオフセットマップ、及び幅-高さマップの3つの部分から構成され、複数の葉の画像を対象物検出ブランチ及び対象物ガイド付きセグメンテーションブランチで処理して、個々の葉が異なる色に着色されている画像を出力すること。」
3 甲A3について
(1)甲A3の記載
ア 甲A3には、以下の記載がある。
(ア)176ページ下から4行~177ページ14行
「〔2〕歯種と歯牙状態の分類
歯種と歯牙状態の分類に用いたネットワークを図16.3に示し、以下にその概要を述べる。歯種と歯牙状態の分類にはResNet5012)が利用された。ResNetは、2015年に一般物体認識で最高性能を叩き出し、今日ではカテゴリ分類問題に汎用されるネットワークの1つである。歯種と歯牙状態の分類は、それぞれ独立にネットワークを用意する。
各ネットワークの学習は、〔1〕で獲得した関心領域を入力して順伝播を行い、その出力である信頼度が最も高いカテゴリを求め、教師信号(歯種または歯牙状態)との誤差を逆伝播する。これを反復して得られた学習済ネットワークに、〔1〕を適用して得られた関心領域を入力して推論処理を行うと、歯種と歯牙状態の各カテゴリの信頼度が算出される。最後に、信頼度が最大となる歯種と歯牙状態のカテゴリが出力される。
ディープラーニングの主な条件は、次の通りである。
-教師信号(歯種):4種類のカテゴリ(前歯、犬歯、小臼歯、大臼歯)
-教師信号(歯牙状態):3種類のカテゴリ(健全歯・齲蝕歯、部分修復、全部修復)
-事前モデル(共通):ImageNetを学習したモデルを使用
-最適化手法(共通):確率的勾配降下法(SOD: stochastic gradient descent)13)
-学習率(共通):0.0001」
(2)上記(1)を総合すると、甲A3には、次の事項が記載されている。
「教師信号(歯種)及び教師信号(歯牙状態)で学習を行い、歯種と歯牙状態の分類にResNet50を利用し、推論処理を行い、歯種と歯牙状態の各カテゴリの信頼度を算出し、信頼度が最大となる歯種と歯牙状態のカテゴリを出力すること。」
4 甲A4について
(1)甲A4の記載
ア 甲A4には、以下の記載がある。
(ア)0010段落
「【0010】
患者の診療録を電子保存する電子カルテには、当該患者に関する画像の情報が記憶される。DICOM画像のみならず、写真や文書の画像、非DICOM画像を含めて統合的に管理し、電子カルテにも適切に情報を送信できることが求められている。実施例1にかかる情報処理装置は、複数のシステムにおいて取得される医用画像を統合的に管理し、電子カルテに当該取得された医用画像の情報を適切に送信することを目的とする。具体的には、実施例1にかかる情報処理装置は、外部システムが取得した医用画像の情報を管理するとともに、当該外部システムが電子カルテに当該医用画像の情報を送信しない場合に、電子カルテに当該医用画像の情報を送信する。」
(イ)0025段落
「【0025】
電子カルテシステム106は、患者の診療内容(診療録)を記憶する。電子カルテシステム106は、当該患者を被検体とするDICOM画像、非DICOM画像、写真に関する情報を記憶する。また、電子カルテシステム106は、当該患者に関する文書の情報(たとえば文書画像)を記憶する。」
(2)上記(1)を総合すると、甲A4には、次の事項が記載されている。
「電子カルテシステム106に患者を被検体とするDICOM画像、非DICOM画像、写真に関する情報、患者に関する文書の情報(たとえば文書画像)を記憶すること。」
5 甲B1について
(1)甲B1の記載
ア 甲B1には、訳文にして以下の記載がある。
(ア)1ページ1~8行
「歯科周囲組織のフィルムから歯を検出し、番号を付けるために、TensorFlowツールパッケージの畳み込みニューラルネットワークフィーチャーのより高速な領域(より高速なR-CNN)を使用することを提案する。検出精度を向上させるために、ベースラインのより高速なR-CNNを補完する3つの後処理技術を、特定の事前領域知識に従って提案する。最初に、より高速なR-CNNによって検出された、同じ歯に関連した重複するボックスを削除するためのフィルタリングアルゴリズムが構築される。次に、欠損歯を検出するためのニューラルネットワークモデルが実装される。最後に、検出された歯のボックスのラベルを照合し、ある直感的なルールに反する検出結果を修正するために、歯番号付けシステムに基づくルールベースモジュールが提案される。」
(イ)2ページ29行~最下行
「本研究の全体的な作業の流れが図1に示される。合計1250枚の歯科用X線フィルムを収集し、訓練データセット、検証データセット、テストデータセットに分離した。訓練データセットと検証データセットは、より高速なR-CNNとディープニューラルネットワーク(DNN)の訓練に使用された。テスト時には、テストデータセットの画像が、訓練されたより高速なR-CNNによって分析され、そこで歯が検出され、歯の欠損も訓練されたDNNによって予測された。後処理の後、最終的に画像に自動的に注釈が付けられ、3人の歯科医による注釈と比較された。
画像データとグランドトゥルースの注釈。デジタル化された1250枚の歯科周囲組織のフィルムが北京大学学院及び口腔医学院から収集された。各フィルムは、サイズ約(300~500)×(300~400)ピクセルで、12.5ピクセル/mmの解像度でデジタル化され、特定の識別コードとともに“JPG”形式の画像ファイルとして保存された。これらの画像ファイルは、個人情報(患者の名前、性別及び年齢など)が明らかにならないように匿名で収集された。その後、5年以上の臨床経験を持つ専門歯科医が、損傷の無い各歯(歯冠と歯根を含む)を囲むように長方形の境界ボックスを描き、対応する歯番号をグランドトゥルース(GT)として提供した。右上8歯を11~18、左上8歯を21~28、左下8歯を31~38、右下8歯を41~48でラベル付けするよう(図2に示されるように)、国際歯科連盟(FDI)の歯番号システム(ISO-3950)が使用された。注釈をつける際、医師は画像内の各歯に最小サイズの境界ボックスを描くよう求められた。」
(ウ)図2及び図2の説明
[図:0001415333000004.jpg]
(図2の説明の訳文)
「図2.FDI歯番号システム:11~18=右上1~8、21~28=左上1~8、31~38=左下1~8、41~48=右下1~8;1.中切歯、2.側切歯、3.犬歯、4.第一小臼歯、5.第二小臼歯、6.第一大臼歯、7.第二大臼歯、8.第三大臼歯。」
(エ)4ページ下から4行~5ページ2行
「FDI歯番号システムが、上の歯は“18、17、16、15、14、13、12、11、21、22、23、24、25、26、27、28”の配列、下の歯は“48、47、46、45、44、43、42、41、31、32、33、34、35、36、37、38、39”という配列を持つテンプレートとして使用される。1枚のX線画像における全ての歯は、上でも下でも、同じ歯列に属しているため、検出されたボックスラベルは、上又は下の歯のテンプレートのいずれかと一致するはずである。例えば、もし、1枚の画像における検出されたボックスラベルが“17、16、14、15、13”であったなら、上のテンプレートと比較すると、“14、15”のラベルは誤った配置と考えられるので、“17、16、15、14、13”に修正されるべきである。」
(オ)図3及び図3の説明
[図:0001415333000005.jpg]
(図3の説明の訳文)
「図3.各ステージ後の注釈処理の例:(ステージ1)訓練されたより高速なR-CNNによって注釈が付けられ、一定の重複ボックスがあった(a);(ステージ2)スコアの低い重複ボックスを削除した後、ニューラルネットワークが他の類似した歯と混同したため、一定の歯番号のラベルが不正確であった;(ステージ3)歯番号のラベルは 補正のためのテンプレートと照合されたが、欠損歯がある場合にエラーが誘発された(フィルム1及び3において)。しかし、隣接する歯ボックスの間の隙間(ステージ2の(b))は、欠損歯を予測するための特徴として扱うことができた;(ステージ4)予測された欠損歯を挿入し、(ステージ2)のテンプレートと照合した後、歯番号のラベルは修正された。」
(カ)図5及び図5の説明
[図:0001415333000006.jpg]
(図5の説明の訳文)
「図5.ニューラルネットワークによって、正しく注釈が付けられたテストデータセットのサンプル画像:切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯を含む(a)上の歯及び(b)下の歯;(c1)インプラント修復、(c2)クラウン及びブリッジ、(c3)欠損歯を含む(c)いくつかの複雑な症例。」
イ 上記アの記載から、甲B1には以下の事項が記載されている。
(ア)歯科周囲組織のフィルムから歯を検出し、番号を付ける処理は、情報処理装置によって行われる。また、情報処理装置は、歯科周囲組織のフィルムを取得する。
(イ)上記ア(イ)から、専門歯科医が提供したグランドトゥルースは、各歯を囲む境界ボックス及び境界ボックスに対応する歯番号であるから、情報処理装置は、訓練データセットと、各歯を囲む境界ボックス及び境界ボックスに対応する歯番号とを訓練する。
(ウ)上記ア(ア)及び(オ)から、情報処理装置は、歯科周囲組織のフィルムにおいて各歯を囲む境界ボックスを検出し、検出した境界ボックスからスコアの低い重複ボックスを削除し、欠損歯を予測し、予測された欠損歯を挿入する。そして、各境界ボックスに対応した歯番号を付け、テンプレートと照合した後、歯番号を修正する。また、歯番号は、FDI歯番号システムに従った番号である。
(エ)上記ア(カ)には、正しく注釈が付けられたサンプル画像として、歯番号が付された画像が示されているから、情報処理装置は、歯番号が付された画像を出力する。
(2)甲B1発明
上記(1)ア及びイを総合すると、甲B1には次の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されている。
「訓練データセットと、各歯を囲む境界ボックス及び境界ボックスに対応する歯番号とを訓練し、
歯科周囲組織のフィルムを取得し、
歯科周囲組織のフィルムにおいて各歯を囲む境界ボックスを検出し、検出した境界ボックスからスコアの低い重複ボックスを削除し、欠損歯を予測し、予測された欠損歯を挿入し、各境界ボックスに対応した歯番号を付け、FDI歯番号システムが使用されたテンプレートと照合した後、歯番号を修正し、
FDI歯番号システムに従った歯番号が付された画像を出力する、
情報処理装置。」
6 甲B3について
(1)甲B3の記載
ア 甲B3には、訳文にして以下の記載がある。
(ア)Abstractの1~7行
「目的。パノラマX線写真の個別の注釈を用いる歯の自動化セグメンテーションのための完全ディープラーニングマスク領域ベースの畳み込みニューラルネットワーク(R-CNN)手法を評価すること。
研究デザイン。30枚のパノラマX線写真から歯に注釈が付けられた合計846枚の画像が訓練のために使用され、20枚のパノラマ画像が評価及びテストセットとして使用された。口腔放射線医は、各歯の構造のグランドトゥルースを生成するために、手動で、パノラマX線画像における個々の歯の注釈付けを行った。」
(イ)636ページ右欄下から12~4行
「微調整マスクR-CNNを用いた完全ディープラーニング法
Heら31)によって開発されたフレームワークであるマスクR-CNNを用いた。マスクR-CNNモデルは、画像内の対象物を検出、分類及びマスクする能力を持ったマルチテスクアルゴリズムである。マスクR-CNNモデルの重要な特徴は、画像内の個々の注目対象物を検出して区別するアプローチである、インスタンスセグメンテーションフレームワークである。」
(ウ)図2
[図:0001415333000007.jpg]
(図2の説明の訳文)
「図2.マスク領域に基づく畳み込みニューラルネットワーク(R-CNN)フレームワークに基づく提案手法のアーキテクチャ。」
イ 上記アの記載から、甲B3には以下の事項が記載されている。
(ア)上記ア(ウ)には、歯のパノラマX線写真を入力して、処理の結果、各歯の形状が異なる色で着色されている画像を出力することが示されている。
(2)甲B3の記載事項
上記(1)ア及びイを総合すると、甲B3には以下の事項が記載されている。
「畳み込みニューラルネットワーク(R-CNN)手法を用いて、各歯の構造をグランドトゥルースとして訓練し、画像内の個々の注目対象物を検出して区別し、各歯の形状が異なる色で着色されている画像を出力すること。」
第5 当審の判断
以下のとおり、当審は、申立人A及びBが申し立てる申立理由は、いずれも理由がないものと判断する。
なお、甲A1と甲B2は同一の文献であるから、取消理由A1(甲A1を主引例とした進歩性)と取消理由B2(甲B2を主引例とした新規性、進歩性)をまとめて検討する。
1 取消理由A1(甲A1を主引例とした進歩性)、取消理由B2(甲B2を主引例とした新規性、進歩性)
(1)請求項1
ア 対比
本件発明1と甲A1(甲B2)発明とを対比する。
(ア)甲A1(甲B2)発明の「無作為に抽出されたパノラマX線写真のデータセット」は、本件発明1の「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像」に相当する。そして、甲A1(甲B2)発明の「無作為に抽出されたパノラマX線写真のデータセットをシステムの訓練に使用」することは、その訓練により生成された学習モデルを取得することが明らかであるから、甲A1(甲B2)発明の当該事項と、本件発明1の「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部」「を備える」こととは、複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像を学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部を備えることの限りで一致する。
(イ)甲A1(甲B2)発明の「システムの入力として、パノラマX線写真を使用」することにおける「パノラマX線写真」は、本件発明1の「被写体となる複数の物体が記録される第2画像」に相当する。そして、甲A1(甲B2)発明の「システムの入力として、パノラマX線写真を使用」することは、その使用に当たりパノラマX線写真を取得することが明らかであるから、本件発明1の「被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得部と」「を備える」ことに相当する。
(ウ)甲A1(甲B2)発明の「歯分類モジュール」は「歯番号を生成」するから、甲A1(甲B2)発明の当該事項と、本件発明1の「前記分類部によってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す番号付け部」とは、複数の物体について、所定の基準で番号を付す番号付け部の限りで一致する。
(エ)甲A1(甲B2)発明の「全ての検出された歯の境界ボックスの座標と対応する歯番号を画像上に出力する」ことは、本件発明1の「番号付け部によって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力部と、を備える」ことに相当する。
(オ)甲A1(甲B2)発明の「システム」は、本件発明1の「情報処理装置」に相当する。
したがって、本件発明1と甲A1(甲B2)発明とは、
「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像を学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部と、
被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得部と、
複数の物体について、所定の基準で番号を付す番号付け部と、
前記番号付け部によって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
第1学習モデルについて、本件発明1は、「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成され」るのに対して、甲A1(甲B2)発明は、複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像を学習することにより生成されるものの、画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成されるものではない点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記第1取得部によって取得された第1学習モデルと、前記第2取得部によって第2画像とに基づいて、第2画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類部」を備えるのに対して、甲A1(甲B2)発明は、そのような事項を備えていない点。
[相違点3]
番号付け部について、本件発明1は、「前記分類部によってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す」のに対して、甲A1(甲B2)発明は、歯分類モジュールが、複数の物体について、所定の基準で番号を付すものの、グループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に番号を付すものではない点。
イ 判断
(ア)相違点について
上記相違点1~3について検討する。
甲A1(甲B2)発明は、「歯検出モジュールは、オリジナルのパノラマX線写真から歯を検出し、境界ボックスを出力し」、「歯分類モジュールは、歯検出モジュールの出力を使用し」、「FDI表記に従った歯番号を生成」するものである。
ここで、甲A1(甲B2)の記載事項を参照すると、上記第4の1(1)(イ)によれば、歯検出モジュールが出力する「境界ボックス」は、各歯の境界を定義するものであるから、歯検出モジュールは、歯のグループ分けを行っていない。そして、歯分類モジュールは、歯検出モジュールの出力である「境界ボックス」を使用して歯番号を生成するから、歯分類モジュールは、各歯の境界に基づいて歯番号を生成するものである。
また、上記第4の1(1)(エ)によれば、画像に対するグランドトゥルース注釈は、全ての歯の周囲に描画された境界ボックスと各境界ボックスの歯番号を含む分類ラベルであるから、甲A1(甲B2)発明は、画像と、グループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習していない。
そうすると、甲A1(甲B2)発明は、画像と、グループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習しておらず、画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行いグループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付しておらず、グループ分けが行われた複数の物体についてグループ毎に番号を付すものではない。
したがって、上記相違点1~3は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲A1(甲B2)発明ではない。
また、上記相違点1~3に係る事項は、甲A2、甲B3に記載されていない。
したがって、上記相違点1~3に係る事項は、甲A1(甲B2)発明、甲A2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、甲A1(甲B2)発明、甲A2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人Aの主張について
申立人Aは、特許異議申立書において、甲A2について「バウンディングボックスを出力し、オプジェクトガイド付きセグメンテーションブランチを経て個々の葉が異なる色に着色されている。これはすなわち、複数の葉に対して個々の葉にグループ分けをしていることに他ならない。」(特許異議申立書35ページ)、「システムの検証やテストを行うためには、第1学習モデルとテスト画像とに基づいて、テスト画像に写った複数のオブジェクト(物体)をグループ分けしてマーキングを付すステップを実行することは明らかである。すなわち、甲第2号証には本件発明1の分類部に相当する構成が記載されているに等しい。」(同)(下線は当審で付与した。)旨を主張している。
上記主張は、甲A2に記載された「個々の葉が異なる色に着色されている」ことが、「複数の葉に対して個々の葉にグループ分けをしていること」であるとするものであるから、「グループ分け」について検討する。
本件特許の明細書には、「グループ分け」に関して、「分類部14は、第2画像に含まれる複数の物体としての歯牙101を、上列部の中央に対して左側の複数の物体(左上側歯牙領域103)と、上列部の中央に対して右側の複数の物体(右上側歯牙領域102)と、下列部の中央に対して左側の複数の物体(左下側歯牙領域105)と、下列部の中央に対して右側の複数の物体(右下側歯牙領域104)と、にグループ分けを行う。」(0030段落)と記載されている。
ここで、「グループ」とは、通常、「<1>群。集団。<2>共通点をもつ人や物の集まり。」(<1>、<2>は丸囲み文字)(「広辞苑 第6版」、株式会社岩波書店)の意味であり、本件発明1の「グループ分け」における「グループ」は、そのような意味で用いられていると認められるから、本件発明1において、「第2画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行」うことは、第2画像に記録される複数の物体を、複数個からなる群、集団、集まりに分けることである。
そして、甲A2には、結果として個々の葉が異なる色に着色されている画像を出力することが記載されているものの、個々の葉を異なる色に着色することは、「グループ分けを行」っているとはいえない。
そうすると、甲A2には、画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行うことは記載されていない。
したがって、申立人Aの上記主張は採用することができない。
(ウ)申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書において、甲A1(甲B2)に記載された発明は「複数の歯が並ぶ成人のパノラマX線写真と、複数の歯についてFDI表記法のグループ分けを行うための歯の検出と番号付けを学習することにより生成されたモジュール(歯検出モジュール及び歯番号付けモジュール)を取得しているといえる。」(特許異議申立書52ページ)、「生成したモジュールと、テストデータとしてのパノラマX線写真とに基づいて、FDI表記に従って複数の歯を4つの領域に分類し、領域毎のそれぞれの歯に十の位が共通する二桁の歯番号を付しているといえる。」(同)として、甲A1(甲B2)に記載された発明は「2c 生成したモジュールと、テストデータとしてのパノラマX線写真とに基づいて、FDI表記に従って複数の歯を4つの領域に分類し、領域毎のそれぞれの歯に十の位が共通する二桁の歯番号を付す分類部」(同56ページ)を備え、当該「分類部」は本件発明1の「分類部」に相当する(同77ページ)旨を主張しているから、上記主張について検討する。
甲A1(甲B2)発明は、「FDI表記に従った歯番号を生成し、」「歯番号を画像上に出力する」ものであるところ、FDI表記は、複数の歯を4つの領域に分類し、領域毎のそれぞれの歯に十の位が共通する二桁の歯番号を付す表記である。
しかし、甲A1(甲B2)発明において、「FDI表記に従った歯番号」は、歯分類モジュールによって最終的に生成されるものであり、上記イ(ア)のとおり、歯検出モジュールは各歯の境界を示す境界ボックスを出力するものであって、歯分類モジュールは各歯の境界に基づいて歯番号を生成するものである。
そうすると、甲A1(甲B2)発明は、本件発明1の、画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類部に相当する事項を備えていない。
したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。
(2)本件発明2~7
本件発明2~7は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に技術事項を追加したものである。
よって、本件発明2~7は、上記(1)と同様の理由により、甲A1(甲B2)発明ではなく、甲A1(甲B2)発明、甲A2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明8、9
本件発明8、9は、「情報処理装置」に係る本件発明1を、それぞれ「情報処理方法」及び「情報処理プログラム」の発明としたものであって、その実質的な内容は本件発明1と同様である。
そして、甲A1(甲B2)には、甲A1(甲B2)発明に係る「情報処理方法」又は「情報処理プログラム」の発明が記載されているものの、本件発明8、9は、上記(1)と同様の理由により、甲A1(甲B2)に記載された発明ではなく、甲A1(甲B2)に記載された発明、甲A2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由B1(甲B1を主引例とした新規性、進歩性)
(1)請求項1について
ア 対比
本件発明1と甲B1発明とを対比する。
(ア)甲B1発明の「訓練データセット」は、本件発明1の「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像」に相当する。そして、甲B1発明の「訓練データセットと、各歯を囲む境界ボックス及び境界ボックスに対応する歯番号とを訓練」することは、その訓練により生成された学習モデルを取得することが明らかであるから、甲B1発明の当該事項と、本件発明1の「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部」「を備える」こととは、複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像を学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部を備えることの限りで一致する。
(イ)甲B1発明の「歯科周囲組織のフィルム」は、本件発明1の「被写体となる複数の物体が記録される第2画像」に相当する。そして、甲B1発明の「歯科周囲組織のフィルムを取得」することは、本件発明1の「被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得部と」「を備える」ことに相当する。
(ウ)甲B1発明の「歯科周囲組織のフィルムにおいて各歯を囲む境界ボックスを検出し、検出した境界ボックスからスコアの低い重複ボックスを削除し、欠損歯を予測し、予測された欠損歯を挿入し、各境界ボックスに対応した歯番号を付け、FDI歯番号システムが使用されたテンプレートと照合した後、歯番号を修正」することと、本件発明1の「前記分類部によってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す番号付け部」「を備える」こととは、複数の物体について、所定の基準で番号を付す番号付け部を備えることの限りで一致する。
(エ)甲B1発明の「FDI歯番号システムに従った歯番号が付された画像を出力する」ことは、本件発明1の「番号付け部によって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力部と、を備える」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲B1発明とは、
「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像を学習することにより生成された第1学習モデルを取得する第1取得部と、
被写体となる複数の物体が記録される第2画像を取得する第2取得部と、
複数の物体について、所定の基準で番号を付す番号付け部と、
前記番号付け部によって番号が付された物体が記録される第3画像を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点4]
第1学習モデルについて、本件発明1は、「複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成され」るのに対して、甲B1発明は、複数の物体が並ぶ被写体が記録された第1画像を学習することにより生成されるものの、画像と、複数の物体についてグループ分けを行うための物体に対するマーキングとを学習することにより生成されるものではない点。
[相違点5]
本件発明1は、「前記第1取得部によって取得された第1学習モデルと、前記第2取得部によって第2画像とに基づいて、第2画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類部」を備えるのに対して、甲B1発明は、そのような事項を備えていない点。
[相違点6]
番号付け部について、本件発明1は、「前記分類部によってグループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に所定の基準で番号を付す」のに対して、甲B1発明は、複数の物体について、所定の基準で番号を付すものの、グループ分けが行われた複数の物体について、グループ毎に番号を付すものではない点。
イ 判断
(ア)相違点について
上記相違点4~6について検討する。
甲B1発明は、「歯科周囲組織のフィルムにおいて各歯を囲む境界ボックスを検出し、」「各境界ボックスに対応した歯番号を付け」るものである。
ここで、甲B1の記載事項を参照すると、上記第4の5(1)(イ)には、グランドトゥルースとして提供される「境界ボックス」は、各歯を囲むように長方形に描かれることが記載されており、同(オ)には、各歯を囲む長方形の「境界ボックス」が示されているところ、「境界ボックス」によって囲まれる歯は各歯であるから、境界ボックスは歯をグループ分けするものではない。
そうすると、甲B1発明は、画像と、グループ分けを行うための物体に対するマーキングを学習しておらず、画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行いグループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付しておらず、グループ分けが行われた複数の物体についてグループ毎に番号を付すものではない。
したがって、上記相違点4~6は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲B1発明ではない。
また、上記相違点4~6に係る事項は、甲B2、甲B3に記載されていない。
したがって、上記相違点4~6に係る事項は、甲B1発明、甲B2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、甲B1発明、甲B2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書において、甲B1に記載された発明は「構築したニューラル・ネットワーク・モデルと、取得したテストデータと、に基づいて、テストデータに記録されている複数の歯について4つのグループに分けるとともに、グループ毎のそれぞれの歯に対して二桁の番号の十の位に共通の数値を付付している。」(特許異議申立書30ページ)、「グループ分けが行われた複数の歯について、グループ毎に国際歯科連盟(FDI)の歯番号システム(ISO-3950)に基づいて番号を付している。」(同31ページ)として、甲B1に記載された発明は「1c 構築したニューラル・ネットワーク・モデルと、取得したテストデータとに基づいて、テストデータに記録されている複数の歯について4つのグループに分けるとともに、グループ毎のそれぞれの歯に対して二桁の番号の十の位に共通の数値を付すグループ分け部」(同34ページ)を備え、当該「グループ分け部」は本件発明1の「分類部」に相当する(同69~70)旨を主張しているから、上記主張について検討する。
FDI歯番号システムは、複数の歯を上下左右の4つのグループに分け、グループ毎のそれぞれの歯における十の位を共通の数値とするものである。
しかし、甲B1発明の「FDI歯番号システムに従った歯番号」は、「歯科周囲組織のフィルムにおいて各歯を囲む境界ボックスを検出し、」「各境界ボックスに対応した歯番号を付け」た結果として得られるものであって、上記(ア)のとおり、「各境界ボックス」は各歯を囲むものであるから、甲B1発明は、各歯を囲む境界ボックスに対応した歯番号を付けるものである。
そうすると、甲B1発明は、本件発明1の、画像に記録される複数の物体についてグループ分けを行い、グループ毎のそれぞれの物体に対してマーキングを付す分類部に相当する事項を備えていない。
したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。
(2)本件発明2~7
本件発明2~7は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に技術事項を追加したものである。
よって、本件発明2~7は、上記(1)と同様の理由により、甲B1発明ではなく、甲B1発明、甲B2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明8、9
本件発明8、9は、「情報処理装置」に係る本件発明1を、それぞれ「情報処理方法」及び「情報処理プログラム」の発明としたものであって、その実質的な内容は本件発明1と同様である。
そして、甲B1には、甲B1発明に係る「情報処理方法」又は「情報処理プログラム」の発明が記載されているものの、本件発明8、9は、上記(1)と同様の理由により、甲B1に記載された発明ではなく、甲B1に記載された発明、甲B2の記載事項及び甲B3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700554