特許異議申立
2018-700330
歯科用診療装置
- 審判番号
- 2018-700330
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-138810
- 登録番号
- 特許第6216009号(P6216009)
- 請求日
- 2018年04月16日
- 審決日
- 2018年09月28日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社吉田製作所
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】松本 征二
- 審判長/審判官
- 審判長 和田 雄二
- 審判官 仁木 学
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 分類
- P1652.113-YAA(A61G) / P1652.121-YAA(A61G) / P1652.537-YAA(A61G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6216009号発明「歯科用診療装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6216009号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項9について訂正することを認める。
特許第6216009号の請求項1に係る特許を維持する。
特許第6216009号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6216009号の請求項1及び9に係る特許についての出願は、平成28年7月13日に特許出願され、平成29年9月29日にその特許権の設定登録がされ、平成29年10月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年4月16日に特許異議申立人松本征二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年7月3日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年8月31日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年8月31日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」といい、図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(2)訂正事項2
本件明細書の段落【0017】を削除する。
訂正事項2の明細書の訂正は、請求項9に関係するものであり、本件訂正請求は、請求項9を対象とするものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、上記(1)で判断したところによれば、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項9について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求が認められ、特許異議の申立ての対象となる請求項9に係る特許は削除されたため、特許異議の申立ての対象として存在するものは、請求項1に係る特許のみとなる。
請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
歯科診療に供される歯科用診療装置であって、
操作手段と、
術者が前記操作手段を操作した内容を記憶手段に記録する操作検知記録手段と、
予め定められた異常を検知すると異常の内容を前記記憶手段に記録する異常検知記録手段と、
を備え、
複数若しくは単数の術者毎に又は患者毎に対応可能な動作モードを有し、
前記操作検知記録手段は、術者毎に又は患者毎に前記操作手段を操作した操作内容及び術者名若しくは患者名を前記記憶手段に記録し、
前記異常検知記録手段は、予め定められた異常を検知すると異常の内容及び術者名若しくは患者名を前記記憶手段に記録することを特徴とする歯科用診療装置。」
2 取消理由の概要
請求項1に係る特許に対しては、取消理由を通知していない。
訂正前の請求項9に係る特許に対して平成29年8月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1
本件特許は、その特許請求の範囲の請求項9の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。
(2)取消理由2
本件特許の請求項9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
刊行物1:特開2013-42903号公報
刊行物2:特開2009-273718号公報
上記刊行物1及び2は、申立人が証拠として提出した甲第1及び4号証である。
3 判断
上記第2のとおり、本件訂正請求が認められ、特許異議の申立ての対象となる請求項9に係る特許は削除されたため、かかる請求項9に対する取消理由1及び2は存在しなくなった。
4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
上記1でも述べたとおり、特許異議の申立ての対象として存在するものは、請求項1に係る特許のみであるため、以下、請求項1に係る発明に対する特許異議申立理由について検討する。
申立人は、特許異議申立書において、以下の旨主張する。
理由1 請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決する手段が反映されていないため、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさない。
理由2 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~8号証に示される周知技術から、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~9号証に示される周知技術から、当業者が容易に想到しうる発明であり、同法第29条第2項の要件を満たさない。
甲第1号証:特開2013-42903号公報
甲第2号証:特開平6-78919号公報
甲第3号証:特開2007-37687号公報
甲第4号証:特開2009-273718号公報
甲第5号証:特開2016-67532号公報
甲第6号証:特開平9-114903号公報
甲第7号証:特開2015-230631号公報
甲第8号証:特開2016-42231号公報
甲第9号証:特開2004-105533号公報
(1-1)理由1について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁特別部判決 平成17年(行ケ)第10042号参照)。
以下、この観点に立って検討する。
申立人は、理由1の根拠として、特許異議申立書23頁4行~25頁4行の「3(4)エ(ア)」において、「本件特許発明1...の課題は、歯科用診療装置にて発生する不具合に対して修理を容易にさせることである。そうすると、異常検知記録手段が記録する異常は、歯科用診療装置が検知する様々な異常のうち、修理にかかわる異常でなければならず、少なくとも、歯科用診療装置が検知できる様々な異常のすべてではなく、そのうちの一部の異常のみに限ったものでなければならない。しかしながら、構成要件Dは、『予め定められた異常』としか記載していないため、『歯科用診療装置が検知する、ありとあらゆるすべての異常』が異常検知記録手段の記録対象となり得る」ことを挙げている。
確かに、申立人の主張するとおり、発明の詳細な説明の段落【0006】には、「歯科用診療装置にて発生する不具合に対して修理を容易にさせることのできる歯科用診療装置を提供すること」が記載されているものの、段落【0018】の「不具合発生以前に術者の操作履歴を記録しておくので不具合の再現性を高めることができる。」という【発明の効果】の記載をも考慮すれば、【発明が解決しようとする課題】は、段落【0005】に記載された「単なる異常発生情報しか取得できていないときには、歯科用診療装置に
発生した不具合をサービスマンが現場で修理する場合、不具合を再現しようとしても、どのような条件で不具合が発生したのか不明である」こと(以下「本件課題」という。)であるといえる。
そして、当業者が本件課題を解決できると認識できるためには、「発生した不具合」と「どのような条件で不具合が発生したのか」を関連づけて記憶する構成であれば足り、「発生した不具合」である「予め定められた異常」の内容を、修理にかかわる異常とすることまでは要しないといえる。
そこで、本件発明1について検討すると、特許請求の範囲の請求項1には、「予め定められた異常を検知すると異常の内容を前記記憶手段に記録する異常検知記録手段」を備え、「前記異常検知記録手段は、予め定められた異常を検知すると異常の内容及び術者名若しくは患者名を前記記憶手段に記録する」構成が記載されており、「発生した不具合」と「どのような条件で不具合が発生したのか」を関連づけて記憶することが特定されているといえることから、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないとはいえないものである。
(1-2)理由2について
ア 甲号証の記載事項等
(ア)甲第1号証の記載事項等
甲第1号証には、以下の事項等が記載されている。
(1a)
「【請求項1】
被検体を撮像する画像診断装置であって、
前記画像診断装置は、
前記被検者の撮像開始から撮像終了までの一連の第1シーケンスの内、1つ1つの操作をA(1)操作からA(n)操作からなるA(i)操作として記憶し、且つ前記第1シーケンスと異なる第2シーケンスに対しても同様に前記A(i)操作を記憶する操作記録部と、
前記A(i)操作をm個の操作ごとのブロックにまとめるブロック化手段と、
前記ブロック化されたm個の操作に基づいて、A(i)操作に続くA(i+1)操作の確率を計算する確率計算部と、
前記A(i)操作を表示する表示部と、
前記A(i)操作の操作がなされた後、前記確率が計算された一番高い確率のA(i+1)操作を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備える画像診断装置。
但し、i及びnは自然数、mは自然数でn>m>1を満たす。
・・・
【請求項7】
前記画像診断装置に警告又はトラブルが生じた際に、前記表示制御部は、前記表示部に警告又はトラブルを解消させる、確率が一番高いA(i+1)操作を表示させるとともに次に確率が高いA(i+1)操作を表示させる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像診断装置」
(1b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ガイド機能を備える画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置を操作する操作者は、医師などの指示に適応する撮影方法を画像診断装置の数十から数百種類ある撮影方法のデータベースの中から選択している。操作者は、指示を満足させる撮影方法を選択するだけでなく、被検者の状態により複数の操作及び撮影の条件を変更するなどして最良の画像を作成している。」
(1c)
「【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態では磁気共鳴イメージング装置用の操作ガイド機能について説明する。しかし、操作ガイド機能は、X線CT装置、核医学装置又は超音波画像診断装置等の画像診断装置においても適用できる。
【0017】
<<第1実施形態>>
<磁気共鳴イメージング装置の構成>
図1は、第1実施形態の磁気共鳴イメージング装置10の概略構成図である。図1を参照して、第1実施形態の磁気共鳴イメージング装置10の構成及びその基本動作について説明する。
【0018】
磁気共鳴イメージング装置10は、マグネットシステム100、勾配コイル駆動部130、RFコイル駆動部140、データ収集部150、パルスシーケンス制御部160、データ処理部170、表示部180及び操作部190を有する。」
(1d)
「【0029】
<操作記録部>
演算部171の操作記録部175は、操作者(習得者)が被検者SBを寝台110に載置して撮像を開始し始める時点から被検者SBを寝台110から下ろす時点までのすべての操作を記録することが可能である。また、操作記録部175は、被検者SBを寝台110に載置して撮像を開始し始める時点から被検者SBを寝台110から下ろす時点までの一部の操作を記憶することも可能である。
【0030】
操作記録部175は、最初の操作を操作A(1)とした場合、被検者SBごとに操作A(1)から操作終了の操作A(n)までを記録する。本実施形態では操作記憶部175は、データ記憶部172と区別して説明されているが、それらが一つの記憶部であってもよい。
【0031】
第1被検者SB1の一連の撮像開始から撮影終了までの操作を第1シーケンスSQ1(図3を参照)とすると、操作記録部175は、複数の操作A(i)からなる第1シーケンスSQ1を記憶する。また、第2被検者SB2の一連の撮像開始から撮影終了までの操作を第2シーケンスSQ2(図3を参照)とすると、操作記録部175は、複数の操作A(i)からなる第2シーケンスSQ2を記憶することができる。なお、iは自然数である。
【0032】
このように、操作記録部175は、被検者SBごとにシーケンスSQを増やすことができ、複数のシーケンスSQがデータベース化される。
・・・
【0040】
<確率計算部及びブロック化手段>
演算部171の確率計算部176は、操作A(i)のデータベースを解析し、操作者が次に行う操作A(i+1)の操作内容opの確率を計算する。
【0041】
確率計算部176及びブロック化手段178は、操作記録部175の学習モードの終了時または所定のタイミングで実行される。ブロック化手段178は、シーケンスSQを1以上の操作A(i)からなるブロックBに分ける。そして確率計算部176は、操作A(i+1)の操作内容opの確率を計算する。
図4は、確率計算部176のフローチャートである。」
(1e)
「【0087】
<<第3実施形態>>
第3実施形態の操作記録部175は、警告またはトラブルに対して、未習得者に対応させることも可能である。通常の操作状況において、未習得者は、突発的な警告またはトラブルに対応できないことが多い。操作記録部175は、警告またはトラブルに対して、習得者が採った複数の操作Aを記録する。そして、未習得者が同様な警告またはトラブルに遭遇した際に、表示制御部177は、警告またはトラブルに対応する、次の操作A(i+1)を表示する。
【0088】
警告には、軽微な警告から重度の警告まで様々ある。このため、未習得者は表示された警告に対して操作を続行してよいものか、パラメータの変更をすればよいのかの判断に迷う。軽度の警告の一例として、SAR(specific absorption rate:比吸収率)の警告がある。SARは、磁気共鳴イメージング装置10におけるRFパルスを被検者SBに用いた場合のジュール熱の発生状況を示している。SARは、磁気共鳴イメージング装置10ごとに設定値が設定されている。磁気共鳴イメージング装置10の操作中にSARが設定値以上になると、演算部171は警告表示を行う。
【0089】
図16は、警告またはトラブル時のフローチャートである。
ステップS31において、操作者(習得者)は、エラー記録モードのスイッチER(図8を参照)を押す。操作記録部175は、エラー記録モードのスイッチERが押されると、習得者が認識し易いようにエラー記録モードのボタンの点灯または表示部の背景色を変化させる。
【0090】
ステップS32において、操作記録部175は、発生した警告またはトラブルを記録する。また、操作記録部175はエラー記録モードのスイッチERが押された一つ前の事象(警告またはトラブル)を記録する。
ステップS33において、操作記録部175はカウンタiを1にセットする。
【0091】
ステップS34において、操作記録部175は、操作A(i)として、習得者が操作する操作内容opとカウンタとを収集する。操作A(i)に、習得者の任意のコメントが付け加えられてもよい。例えば、習得者が例えばトラブル対処方法などのコメントを入力し、操作記録部175は、そのコメントを記憶することが可能である。未習得者は、警告またはトラブルの情報を共有することが可能であり、警告またはトラブルを解決する手法の一手段をしてコメントを利用することが可能である。
【0092】
ステップS35において、演算部171は、エラー記録モードを終了するかを判断する。操作記録部175は、エラー記録モードが終了されるまでステップS36に移動し、操作A(i)を記録する。習得者が点灯しているスイッチERを再度押すと、エラー記録モードが終了し、ステップS37に移動する。」
上記(1a)~(1e)の記載を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「被検体SBを撮像する磁気共鳴イメージング装置10であって、
前記磁気共鳴イメージング装置10は、
操作部190と
前記被検者SBの撮像開始から撮像終了までの一連の第1シーケンスの内、1つ1つの操作をA(1)操作からA(n)操作からなるA(i)操作として記憶し、且つ前記第1シーケンスと異なる第2シーケンスに対しても同様に前記A(i)操作を記憶する操作記録部175と、
前記A(i)操作をm個の操作ごとのブロックにまとめるブロック化手段と、
前記ブロック化されたm個の操作に基づいて、A(i)操作に続くA(i+1)操作の確率を計算する確率計算部176と、
前記A(i)操作を表示する表示部180と、
前記A(i)操作の操作がなされた後、前記確率が計算された一番高い確率のA(i+1)操作を前記表示部に表示させる表示制御部177と、
を備え、
前記磁気共鳴イメージング装置10に警告又はトラブルが生じた際に、操作者が、エラー記録モードのスイッチERを押すと、前記操作記録部175は、発生した警告またはトラブルを記録するとともに、エラー記録モードのスイッチERが押された一つ前の事象(警告またはトラブル)を記録し、
前記表示制御部177は、前記表示部180に警告又はトラブルを解消させる、確率が一番高いA(i+1)操作を表示させるとともに次に確率が高いA(i+1)操作を表示させる磁気共鳴イメージング装置10。
但し、i及びnは自然数、mは自然数でn>m>1を満たす。」
イ 当審の判断
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲第1号証には、「画像診断装置を操作する操作者は、医師などの指示に適応する撮影方法を画像診断装置の数十から数百種類ある撮影方法のデータベースの中から選択している。」(摘示(1b))と記載されていることから、上記「画像診断装置」である甲1発明の「磁気共鳴イメージング装置10」は、医療に供される診療装置であるといえる。 そうすると、「歯科診療」も「医療」に含まれる概念であることを踏まえると、甲1発明の「磁気共鳴イメージング装置10」と本件発明1の「歯科診療に供される歯科用診療装置」は、「医療に供される診療装置」を限度として共通する。
b 甲1発明の「操作部190」が、その機能・構成から本件発明1の「操作手段」に相当する。
c 甲1発明における「操作」は、甲第1号証には明記されていないものの、「術者」により行われていることは明らかであるから、「前記被検者SBの撮像開始から撮像終了までの一連の第1シーケンスの内、1つ1つの操作をA(1)操作からA(n)操作からなるA(i)操作として記憶し、且つ前記第1シーケンスと異なる第2シーケンスに対しても同様に前記A(i)操作を記憶する操作記録部175」が、本件発明1の「術者が前記操作手段を操作した内容」が「記録」される「記憶手段」に相当する。
d 甲1発明は、「操作記録部175」に「操作を記憶」しており、「操作」を検知しなければ「記憶」できないことは明らかであることも踏まえると、甲第1号証には明記されていないものの、甲1発明は、本件発明1の「操作検知記録手段」に相当する構成を備えているといえる。
e 上記aを踏まえると、甲1発明の「被験者SB」は、本件発明1の「患者」に相当し、加えて、上記dをも踏まえると、甲1発明の「操作検知記録手段」に相当する構成が、「操作記録部175」に、「前記被検者SBの撮像開始から撮像終了までの一連の第1シーケンスの内、1つ1つの操作をA(1)操作からA(n)操作からなるA(i)操作として記憶」する構成と、本件発明1の「操作検知記録手段」が、「術者毎に又は患者毎に前記操作手段を操作した操作内容及び術者名若しくは患者名を前記記憶手段に記録」する構成とを対比すると、両者は「操作検知記録手段」が、「術者毎に又は患者毎に前記操作手段を操作した操作内容を前記記憶手段に記録」する構成を限度として共通する。
上記a~eを総合すると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「医療に供される診療装置であって、
操作手段と、
術者が前記操作手段を操作した内容を記憶手段に記録する操作検知記録手段と、
を備え、
前記操作検知記録手段は、術者毎に又は患者毎に前記操作手段を操作した操作内容を前記記憶手段に記録する診療装置。」
<相違点1>
本件発明1の「医療に供される診療装置」は、「歯科診療に供される歯科用診療装置」であるのに対し、甲1発明の「磁気共鳴イメージング装置10」は、そうではない点。
<相違点2>
本件発明1は、「予め定められた異常を検知すると異常の内容を前記記憶手段に記録する異常検知記録手段」を備え、「前記異常検知記録手段は、予め定められた異常を検知すると異常の内容及び術者名若しくは患者名を前記記憶手段に記録する」のに対し、甲1発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「複数若しくは単数の術者毎に又は患者毎に対応可能な動作モードを有し」ているのに対し、甲1発明は、そのような動作モードを有していない点。
<相違点4>
本件発明1の「操作検知記録手段」は、「術者名若しくは患者名を前記記憶手段に記録」しているのに対し、甲1発明の「操作検知記録手段」に相当する構成は、それを記録していない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
本件発明1の「動作モード」に関し、本件明細書段落【0040】には、「本実施形態では、歯科用診療装置1は、複数の術者毎に対応可能な動作モードを有することとしており、操作表示手段210は、術者毎の動作モードで歯科用椅子104を操作することができる。」と記載され、本件明細書段落【0082】には、「前記実施形態では、歯科用診療装置1は、複数の術者毎に対応可能な動作モードを有することとしたが、単数の術者に対応可能な動作モードであっても構わない。また、患者毎に対応可能な動作モードを有することとしてもよい。この場合、操作検知記録手段260は、患者毎に、複数又は単数の術者が操作手段を操作した操作内容及び術者名若しくは患者名を操作履歴記憶手段270に記録する。」と記載されており、本件発明1の「動作モード」とは、「複数若しくは単数の術者毎に又は患者毎に対応」して、「歯科用診療装置」を操作するための構成であると認められる。
それに対し、甲1発明は、「被検者SBの撮像開始から撮像終了までの一連の第1シーケンスの内、1つ1つの操作をA(1)操作からA(n)操作からなるA(i)操作として記憶し、且つ前記第1シーケンスと異なる第2シーケンスに対しても同様に前記A(i)操作を記憶」し、「磁気共鳴イメージング装置10に警告又はトラブルが生じた際に、操作者が、エラー記録モードのスイッチERを押すと、前記操作記録部175は、発生した警告またはトラブルを記録するとともに、エラー記録モードのスイッチERが押された一つ前の事象(警告またはトラブル)を記録し、前記表示制御部177は、前記表示部180に警告又はトラブルを解消させる、確率が一番高いA(i+1)操作を表示させるとともに次に確率が高いA(i+1)操作を表示させ」ている。
すなわち、甲1発明の、「1つ1つの操作」を記憶した「第1シーケンス」及び「第2シーケンス」は、「被験者SB」に対応して「磁気共鳴イメージング装置10」を操作するための構成ではなく、「装置に警告又はトラブルが生じた際に、・・・前記表示部に警告又はトラブルを解消させる、確率が一番高いA(i+1)操作を表示させるとともに次に確率が高いA(i+1)操作を表示させる」ための構成であるから、甲1発明の「第1シーケンス」及び「第2シーケンス」は、本件発明1の「動作モード」に相当する構成とはいえない。
さらに、甲第2~第9号証にも、本件発明1の「動作モード」に相当する構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲第2~第9号証を参照しても、相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到できるものとはいえない。
そうすると、相違点1、2及び4について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~第9号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
第4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項9に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項9に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-700330