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特許異議申立

2024-700767

給電システム、地絡検知方法、及びプログラム

審判番号
2024-700767
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-523770
登録番号
7435757
請求日
2024年08月14日
審決日
2025年05月30日
公報発行日
2025年08月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本電信電話株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ITOH
  • 【権利者代理人】伊東 忠重
  • 【権利者代理人】伊東 忠彦
  • 【権利者代理人】石原 隆治
  • 【異議申立人】松本 征二
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 寺谷 大亮
  • 審判官 丸山 高政
分類
P1651.113-YAA(H02H) / P1651.121-YAA(H02H) / P1651.537-YAA(H02H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7435757号発明「給電システム、地絡検知方法、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7435757号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4、6〕及び5について訂正することを認める。 特許第7435757号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 特許第7435757号の請求項3~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7435757号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)5月18日を国際出願日とする出願であって、令和6年2月13日にその特許権の設定登録がされ、同年2月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~6)に係る特許に対し、令和6年8月14日に特許異議申立人 松本 征二(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 特許異議の申立て以後の手続の概略は、以下のとおりである。 令和 6年 8月14日 特許異議申立書 9月17日 手続補正書 10月17日付け 取消理由通知書 12月19日 訂正請求書 意見書(特許権者) 令和 7年 2月10日 意見書(申立人) 3月 4日付け 取消理由通知書(決定の予告) 5月 7日 訂正請求書 意見書(特許権者) 令和7年5月7日の訂正請求書(以下、単に「訂正請求書」という。)により訂正の請求がされたので、特許法120条の5第7項の規定により、令和6年12月19日の訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす。 以下では、特許異議申立書を単に「申立書」といい、令和6年10月17日付け取消理由通知書を「取消理由通知書1」といい、令和7年3月4日付けの取消理由通知書を「決定の予告」といい、訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい、令和7年2月10日の申立人による意見書を「申立人意見書」という。 本件訂正後の特許請求の範囲の内容は、実質的に、令和6年12月19日の訂正請求書により訂正されたものに含まれており、これについて申立人は申立人意見書を既に提出しているので、本件訂正後のものについて申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる。よって、特許法120条の5第5項に規定する特別の事情があると認められるから、訂正請求書による訂正の請求後に申立人に意見書を提出する機会を与えていない。 第2 証拠方法及び申立理由 申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第11号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲11」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、請求項1~6に係る特許を取消すべきものである旨主張する。 1 証拠方法 甲1 特開2013-145158号公報 甲2 平成21年度~平成24年度成果報告書「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)/エネルギー利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発/データセンタの電源システムと最適直流化技術の開発」,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,平成25年2月,pp.148~194,表紙,要約,目次 甲3 特開2001-169561号公報 甲4 特開2019-30099号公報 甲5 特開昭63-18918号公報 甲6 特開2016-213914号公報 甲7 特開2018-96804号公報 甲8 特開2008-113546号公報 甲9 特開2013-85392号公報 甲10 実公昭51-44907号公報 甲11 特開2019-45321号公報 2 申立理由 申立書に記載された申立ての理由は、概略、以下のとおりである。以下では、本件の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明6」といい、これらを総称して「本件発明」という。 申立理由1 本件発明1~5は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)と同一であるから、本件発明1~5についての特許は、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由2 本件発明1~5は、当業者が甲1発明及び甲4~甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 本件発明6は、当業者が甲1発明及び甲3~甲6に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由3 本件発明1及び5は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)と同一であるから、本件発明1及び5についての特許は、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由4 本件発明1は、当業者が甲2発明及び甲4~甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 本件発明2~5は、当業者が甲2発明及び甲3~甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2~5についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 本件発明6は、当業者が甲2発明及び甲1及び3~甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由5 本件発明1、5及び6は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲3に記載された発明(以下「甲3発明」という。)と同一であるから、本件発明1、5及び6についての特許は、同項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由6 本件発明1、5及び6は、当業者が甲3発明及び甲1、甲2、甲9及び甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、5及び6についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 本件発明2及び3は、当業者が甲3発明及び甲1、甲2、甲5及び甲8~甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2及び3についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 本件発明4は、当業者が甲3発明及び甲1、甲2、甲4、甲5及び甲8~甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号) 申立理由7 本件発明は、以下の7-1~7-5の点で明確ではないから、本件発明についての特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号) 7-1 請求項1の記載によれば、「給電システム」が「制御装置」に加えて、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置」(以下「装置」と略す。)を「一つのみ」含む限り、それ以外のいかなる構成要素を含むか含まないかによらず、本件発明に含まれ得ると解されるが、「一つのみ」を解釈するには、「給電システム」の範囲を明確に特定できることを要する。 しかしながら、給電システムでは、複数の構成要素が互いにどれだけ離れて配置されてもよく、給電システムの範囲を特定しにくい傾向があるところ、「給電システム」の範囲が実質的に何ら定まっていないため、たとえ「装置」が複数設けられていたとしても、「給電システム」の範囲を恣意的に設定又は解釈すれば、「装置」が「一つのみ」と解されるため、本件発明1は明確ではない。 本件発明2~6も同様である。 7-2 以下のa~cの点で、特許請求の範囲と発明の詳細な説明とが整合していないため、「給電システム」の範囲を明確に認識できない。 a 「負荷」について 請求項1には「負荷への給電を行う給電システムであって」と記載されており、「給電システム」は「負荷」を含まないように解されるが、本件明細書の【0025】、【0029】、【0034】、図5及び図6を参照すると、「給電システム」は「負荷」を含むと認められ、請求項1の記載は発明の詳細な説明と整合しておらず、「給電システム」の範囲を明確に認識できない。本件発明2~6も同様である。よって、本件発明は明確でない。 b 「分電盤」について 請求項2には、「前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え」ると記載されており、本件発明2に係る「給電システム」が「複数の分岐部」を含むことは明確ではあるが、本件発明2に係る「給電システム」が「分電盤」を含むか否かは明確ではない。 一方、本件明細書の【0034】の記載によれば、「給電システム」は「分電盤」を含むと認められる。 よって、本件発明2~4及び6は明確ではない。 c 「遮断器」について 請求項2を引用する請求項4には、「前記特定の分岐部に対応する遮断器に対し、遮断を指示する」と記載されており、「分岐部に対応する遮断器」との記載は、「分岐部に含まれる遮断器」とは異なり、「遮断器」が「分岐部」とは別に設けられた構成も含み得る。つまり、本件発明4に係る「給電システム」が「遮断器」を含むか否かが特定されていない。 一方、本件明細書の【0034】及び【0037】を参照すると、給電システムが遮断器を含むと認められる。 よって、本件発明4及び6は明確ではない。 7-3 本件明細書の【0003】、【0006】及び【0007】の記載によれば、従来の高電圧直流給電システムは、「給電システムにもともと組み込まれている高抵抗」と、「地絡過電圧検出型の地絡検出器における高抵抗」とが別々に設けられていると認められる。 これに対し、請求項1には、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し」としか記載されておらず、「装置」が「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」する以外にどのような機能を有するかについて一切記載されていない。「装置」が「給電システムにもともと組み込まれている高抵抗」に関連してどのような機能を有するか、特に、「装置」が「負荷への給電」に関連してどのような機能を有するか(または有さないか)について、請求項1では何ら特定されていない。 ここで、従来の地絡過電圧検出型の地絡検出器は、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置」であるとともに、当然に「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」するから、文言上、請求項1の「装置」は、従来の地絡過電圧検出型の検出器も含み得る。「装置」が従来の地絡過電圧検出型の地絡検出器であるとすると、「給電システム」は従来の地絡過電圧検出型の地絡検出器と制御装置とを備えるシステムに過ぎない。 請求項1の記載は、「給電システム」が「負荷への給電を行う」ための構成が何ら特定されておらず、かつ、「給電システム」と従来の高電圧直流給電システムとの構成上の差異が不明であることから、「給電システム」の範囲を明確に認識できず、本件発明1は明確ではない。 本件発明2~6も同様である。よって、本件発明は明確でない。 7-4 請求項1の記載によれば、「装置」は、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する」ものであって、かつ、「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」するものであれば、いかなる装置であっても良いと解される。 本件明細書等には、整流装置以外にも様々な装置が記載されている一方で、これらの装置のうちどれが「装置」に相当するかが特定されていないため、本件発明1は明確ではない。 本件発明2~6も同様である。よって、本件発明は明確でない。 7-5 請求項1及び2の記載によれば、本件発明2に係る「給電システム」は、「装置」とは別に「電源」を含むと解される。 一方、本件明細書の【0015】には、「本実施の形態における給電システムでは、交流を直流に変換する整流装置(電源と呼んでもよい)が使用される。」と記載されている。「図5に示す例では、整流装置100において、もともと中性点高抵抗として備えられる抵抗12、13を、地絡過電圧検出型の地絡検出にしようする。」(【0025】)との記載に照らせば、整流装置が「装置」に相当すると認められるから、「電源」は「装置」と同一のもの(別の呼び方)であるようにも読める。 請求項2の記載は、「装置」と「電源」との関係を理解できず、「給電システム」の範囲を明確に認識できなくなっているから、本件発明2~4及び6は明確ではない。 なお、以下では申立理由7を構成する前記7-1~7-5を、それぞれ「申立理由7-1」~「申立理由7-5」といい、申立理由7-2を構成するa~cを、それぞれ「申立理由7-2a」~「申立理由7-2c」という。 申立理由8 本件発明は、以下の8-1~8-2の点で発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件発明についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号) 8-1 請求項1の記載によれば、「装置」は、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する」ものであって、かつ、「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」するものであれば、いかなる装置であってもよいと解される。 一方、本件明細書等には、整流装置以外のどのような装置が「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有」し、かつ、「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」し得るかについて記載されていない。本件明細書の「給電システムにおける整流装置において中性点高抵抗接地を行わない場合において、図5における「100」で示される装置は、整流装置ではない地絡過電圧検出型の地絡検出器100となる。」(【0027】)との記載における「「100」で示される装置」が請求項1に記載の「装置」に相当すると認められるところ、「整流装置ではない」との記載は整流装置を除外しているに過ぎないため、「装置」が「整流装置ではない地絡過電圧検出型の地絡検出器100」である場合の「装置」の構成が全く不明である。仮に「整流装置ではない」とは、整流装置以外の装置であるとすると、「整流装置ではない」ことについては【0027】の記載以外に一切記載されていない。また、仮に「整流装置ではない」とは、整流装置が「図5における「100」で示される装置」の外部に設けられているとの意味であるとすると、「給電システム」は、中性点高抵抗を有しない整流装置と、中性点高抵抗を有する「「100」で示される装置」とが接続された構成を有することとなり、この場合の「「100」で示される装置」についても、中性点高抵抗を有する地絡過電圧検出型の地絡検出器である以外にどのような構造・機能を有するか何も特定されていない。 したがって、請求項1に記載の「装置」は、発明の詳細な説明に記載された以上のあらゆる装置を含み得ることとなり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。 本件発明2~6についても同様である。 8-2 本件明細書の【0006】~【0009】の記載によれば、本件発明1が解決しようとする課題は、給電線と大地との間に高抵抗が複数並列に接続されると、給電システムの対地抵抗が低下するから、対地抵抗を低下させることなく安全に地絡を検出することであると認められる。 一方、請求項1の記載によれば、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え」、かつ、「更に制御装置を備え」るのであれば、文言上、「装置」及び「制御装置」以外のいかなる装置も含まない「給電システム」も本件発明1に含まれ得ると解される。 しかしながら、「給電システム」が「装置」及び「制御装置」以外のいかなる装置も含まない場合、上記課題を引き起こし得る「給電線と大地との間に高抵抗が複数並列に接続されると、システム全体の対地抵抗が低下する」との事情がそもそも存在せず、上記課題は自ずと生じないこととなる。言い換えると、「給電システム」が給電線と大地との間に「装置」以外の装置が接続されていて初めて本件発明1の課題が発生し、当該課題が解決され得ると解される。 したがって、本件発明1は、解決しようとする課題を生じない構成も含むから、発明の詳細な説明に記載したものでない。本件発明5も同様である。 なお、以下では申立理由8を構成する前記8-1及び8-2を、それぞれ「申立理由8-1」及び「申立理由8-2」という。 第3 当審で通知した取消理由 当審で通知した取消理由を、以下の1及び2に示す。 1 取消理由通知書1で通知した取消理由 取消理由通知書1により当審で通知した取消理由は、概略、以下の取消理由1-1~1-3のとおりである。 取消理由1-1 本件発明6は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲3発明と同一であるから、本件発明6についての特許は、同項の規定に違反してされたものである。 取消理由1-2 本件発明6は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 取消理由1-3 本件発明6は、当業者が甲3発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 2 決定の予告で通知した取消理由 決定の予告により当審で通知した取消理由は、概略、以下の取消理由2のとおりである。 取消理由2 本件発明1、2、4及び5は、当業者が甲1発明及び甲11に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2、4及び5についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 なお、決定の予告では、令和6年12月19日の訂正請求書による訂正を適法なものとし、当該訂正により訂正された特許請求の範囲に基づいて取消理由が示されているところ、当該訂正は、請求項6についてのみの訂正であり、請求項6が引用する請求項について、当該訂正前は「請求項2ないし4のうちいずれか1項」とあったのを、「請求項3」へと訂正するものであった。(前記第1に示したとおり、現時点では、当該訂正は、取り下げられたものとみなされる。) 第4 本件訂正の適否 以下、本件訂正の適否について判断する。 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容を以下の(1)に示す。 なお、本件訂正前の特許請求の範囲の記載を以下の(2)に、本件訂正後の特許請求の範囲の記載を以下の(3)に示す。 (1)訂正事項1~6 本件訂正は、以下の訂正事項1~6からなる。 〈訂正事項1〉 請求項1を削除する。 〈訂正事項2〉 請求項2を削除する。 〈訂正事項3〉 訂正請求書の記載によれば、訂正事項3は、請求項3の従属関係を解消し、独立形式請求項に訂正するものであり、請求項3が引用する請求項2の記載事項、及び、請求項2が引用する請求項1の記載事項を請求項3に追加するものとされ(訂正請求書2~3頁)、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲も参照すると、訂正事項3は、次のとおりと解される。なお、下線は、訂正部分を示すために当審で付したものである(以下同様)。 請求項3の 「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 請求項2に記載の給電システム。」との記載を、 「負荷への給電を行う給電システムであって、 給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 給電システムであり、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 給電システム。」に訂正する。 〈訂正事項4〉 請求項4の 「請求項2又は3に記載の」との記載を、 「請求項3に記載の」に訂正する。 〈訂正事項5〉 請求項6の 「請求項2ないし4のうちいずれか1項に記載の」との記載を、 「請求項3又は4に記載の」に訂正する。 〈訂正事項6〉 訂正請求書の記載によれば、訂正事項6は、請求項5に対し、請求項2の記載事項及び請求項3の記載事項を追加するものとされ(訂正請求書8頁)、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲も参照すると、訂正事項6は、次のとおりと解される。 請求項5の 「負荷への給電を行う給電システムにより実行される地絡検知方法であって、 前記給電システムは、給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信する 地絡検知方法。」との記載を、 「負荷への給電を行う給電システムにより実行される地絡検知方法であって、 前記給電システムは、給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 地絡検知方法であり、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 地絡検知方法。」に訂正する。 (2)本件訂正前の特許請求の範囲 本件訂正前の特許請求の範囲の全文は、以下のとおりである。 【請求項1】 負荷への給電を行う給電システムであって、 給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信する 給電システム。 【請求項2】 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 請求項1に記載の給電システム。 【請求項3】 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 請求項2に記載の給電システム。 【請求項4】 前記制御装置は、地絡が発生したと判断した前記特定の分岐部に対応する遮断器に対し、遮断を指示する請求項2又は3に記載の給電システム。 【請求項5】 負荷への給電を行う給電システムにより実行される地絡検知方法であって、 前記給電システムは、給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信する 地絡検知方法。 【請求項6】 コンピュータを、請求項2ないし4のうちいずれか1項に記載の前記制御装置として機能させるためのプログラム。 (3)本件訂正後の特許請求の範囲 本件訂正後の特許請求の範囲の全文は、以下のとおりである。 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 負荷への給電を行う給電システムであって、 給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 給電システムであり、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 給電システム。 【請求項4】 前記制御装置は、地絡が発生したと判断した前記特定の分岐部に対応する遮断器に対し、遮断を指示する請求項3に記載の給電システム。 【請求項5】 負荷への給電を行う給電システムにより実行される地絡検知方法であって、 前記給電システムは、給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 地絡検知方法であり、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 地絡検知方法。 【請求項6】 コンピュータを、請求項3又は4に記載の前記制御装置として機能させるためのプログラム。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~4及び6は、いずれも、直接的又は間接的に請求項1を引用するため、請求項1~4及び6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であると認める。 3 独立特許要件について 本件特許異議の申立ては全請求項になされているので、本件訂正には、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 4 訂正事項1及び2について 訂正事項1及び2に係る訂正は、いずれも請求項を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 そして、訂正事項1及び2に係る訂正は、請求項を削除するのみであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは明らかである。 5 訂正事項3について 本件訂正前において、請求項3は請求項2を引用し、請求項2は請求項1を引用している。 本件訂正は、本件訂正前の請求項3を独立形式に書き改めたに過ぎないから、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とすると認められる。 そして、本件訂正の前後において、請求項3に記載された発明に変化はないから、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは明らかである。 6 訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項4が、請求項2又は3を引用していたものを、請求項3のみを引用するようにするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とすると認められる。 訂正事項4に係る訂正が、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは明らかである。 7 訂正事項5について 訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の請求項6が、請求項2~4のいずれかを引用していたものを、請求項3又は4を引用するようにするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とすると認められる。 訂正事項5に係る訂正が、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に規定する要件を満たすことは明らかである。 8 訂正事項6について 訂正事項6に係る訂正は、請求項5の「給電システムにより実行される地絡検知方法」について、「前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、」「各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、」「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する」という限定(以下「限定A」という。)と、「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」という限定(以下「限定B」という。)とを追加するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とすると認められる。 そのため、訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に規定する要件を満たすと認められる。 限定Aは本件訂正前の請求項2に記載された事項であり、限定Bは本件訂正前の請求項3に記載された事項であるから、訂正事項6に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしており、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たすと認められる。 9 本件訂正についての小括 以上によれば、本件訂正は適法なものと認められる。 よって、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4、6〕及び5について訂正することを認める。 第5 申立ての一部却下 前記第4のとおり、本件訂正は認められたので、請求項1及び2は削除された。これにより、請求項1及び2についての特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 第6 本件発明3 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項3~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明3」~「本件発明6」と改めていい、これらを総称して「本件発明」という。)は、前記第4、1(3)に示した請求項3~6にそれぞれ記載されたとおりのものと認める。 なお、後の参照の便宜のために、本件発明3については、以下のように記号3A~3Jを付して分説し、「発明特定事項3A」のようにして参照する。 【請求項3】 3A 負荷への給電を行う給電システムであって、 3B1 給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、 3B2 当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 3C 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 3D 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、 3E 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 3F 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 3G 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 3H 給電システムであり、 3I 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 3J 給電システム。 第7 甲1発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無の判断 以下では、甲1発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無を判断しこれにより、申立理由1及び2並びに取消理由1-2及び2についての理由の有無を判断する。 1 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。 (1)「【0025】 本発明の第1実施形態に係る直流地絡検知装置について、図1~図6を参酌しつつ説明する。同実施形態に係る直流地絡検知装置1は、図1に示すように、地絡に起因して直流回路2内に流れる地絡電流を検知するために、直流回路2に設置されている。 【0026】 直流回路2は、直流電源3から1又は複数の負荷4,…(41,42,…,4n;n=1,2,3,…)に直流電流を供給する回路である。直流電源3は、1又は複数の電源である。そして、直流電源3は、直流電源装置として直流回路2の外部に設けられて当該直流回路2に接続される電源である。負荷4,…は、直流回路2に1又は複数接続されている。なお、直流電源3は、蓄電池と接続されて直流回路2内に設けられていてもよい。また、負荷4,…は、直流回路2内に設けられていてもよい。 【0027】 直流回路2は、直流電源3に接続される主回路21Aと、該主回路21Aから分岐して各負荷4,…又は特定の負荷4,…の集合である負荷群ごとに設けられる複数の分岐回路21B,…(21B1,21B2,…,21Bn;n=1,2,3,…)と、を備える。本実施形態に係る直流回路2は、直流電源装置から受電した直流電流を複数の負荷4,…に配電すべく複数の分岐回路21B,…を有する分電盤を例に説明する。 【0028】 主回路21A及び分岐回路21B,…は、当該主回路21A及び分岐回路21B,…内を流れる電流を遮断する遮断器を備える。当該遮断器は、直流回路2が定常状態で動作しているときに流れる負荷電流や地絡電流などの事故電流を遮断する回路制御用遮断器22,…と、流れる電流が所定の電流値以上のときに当該電流を遮断する過電流遮断器23,…と、を備える。本実施形態に係る回路制御用遮断器22は、配線用遮断器MCBである例を説明するが、遮断する回路の仕様により気中遮断器ACBや真空遮断器VCBなどであってもよい。 【0029】 これらの回路制御用遮断器22,…は、直流回路2,…を区画する遮断区画24を形成する。遮断区画24は、回路制御用遮断器22,…を遮断することにより、直流電流が供給されている回路から切り離すことのできる区画である。つまり、遮断区画24は、地絡が発生したとき、回路制御用遮断器22を遮断することにより、地絡が発生している当該区画24,…のみを遮断することができる。」 (2)「【0033】 直流地絡検知装置1は、図1及び図2(a)に示すように、直流回路2を接地する接地回路5と、各遮断区画24,…の地絡電流を検知する地絡検知回路6,…と、該地絡検知回路6,…それぞれからの検知に基づき地絡が発生した遮断区画24,…を判定する地絡判定回路7と、該地絡判定回路7により地絡が発生していると判定された遮断区画24を遮断すべく回路制御用遮断器22,…を制御する遮断器制御回路8と、を備える。 【0034】 接地回路5は、図1に示すように、直流回路2を接地する接地部51と、該接地部51を介して当該直流回路2内に流れる地絡電流を可変させる可変部52と、を備える。 【0035】 接地部51は、複数の回路21,22,…のいずれかに発生した地絡を検知することを目的に、直流地絡を検出するための保護継電器を兼ねている。つまり、接地部51は、主回路21の正極側電路に接続される正極側地絡検出用抵抗53pと、主回路21の負極側電路に接続される負極側地絡検出用抵抗53mと、正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとの間を接地する接地電路54と、正極側地絡検出用抵抗53pの対地間電圧Vgpを検知する正極側地絡検知部55pと、負極側地絡検出用抵抗53mの対地間電圧Vgmを検知する負極側地絡検知部55mと、を備える。 【0036】 正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとは、略同じ抵抗値に設定されており、約5kΩの抵抗である。接地電路54は、一端側を接地して、他端側を正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとを介して直流回路2に接続する。よって、直流回路2が地絡したとき、当該直流回路2の地絡箇所から接地電路54を介して直流回路2内に地絡電流が流れて、地絡回路が形成される。正極側地絡検知部55pは、正極側地絡検出用抵抗53pと並列に接続され、当該正極側地絡検出用抵抗53pの端子間電圧Vgpを計測可能な電圧計である。負極側地絡検知部55mも、負極側地絡検出用抵抗53mと並列に接続され、当該負極側地絡検出用抵抗53mの端子間電圧Vgmを計測可能な電圧計である。正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mは、検知した対地間電圧Vgp,Vgmを地絡判定回路7に出力可能な外部出力端子を有している。なお、正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mは、対地間電圧Vgp,Vgmの計測値が出力されることに限定されず、対地間電圧Vgp,Vgmが所定の電圧値以上である旨の信号が出力されるように構成されていてもよい。 【0037】 可変部52は、接地電路54に設けられて、直流回路2から接地回路5を切り離すべく、接地部51と直流回路2の主回路21Aとの接続状態を切換可能に接続する切換部56である。該切換部56は、接地回路5を流れる電流を遮断する第3の遮断器である。第3の遮断器は、地絡電流を遮断する遮断能力を有する。また、第3の遮断器は、地絡判定回路7によって制御される。」 (3)「【0039】 地絡検知回路6は、主回路21Aの第1の遮断器22Aの負荷4,…側に設けられる第1の地絡検知回路61と、分岐回路21B,…の第2の遮断器22B,…の負荷4,…側に設けられる第2の地絡検知回路62,…と、を備える。第1の地絡検知回路61は、第1の遮断区画24Aを流れる地絡電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を第1の1次検知値dI1Aとして出力する。第2の地絡検知回路62は、第2の遮断区画24B,…を流れる地絡電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を第2の1次検知値dI1B(dI1B1,dI1B2,…,dI1Bn;n=1,2,3,…)として出力する。 【0040】 地絡検知回路61,62,…は、第3の遮断器による接地回路5と直流回路2との接続関係が切り換わるときに当該遮断区画24,…を流れる地絡電流の単位時間あたりの変化量に応答する交流用変流器で検知する。つまり、交流用変流器は、入力された電流の単位時間あたりの変化量に比例した検知値を出力する。 【0041】 交流用変流器は、正極側電路と負極側電路との両方を流れる電流の単位時間あたりの変化量に応答するため、負荷電流などのように正極側電路と負極側電路とで等しく流れる電流については出力されず、地絡電流のようにいずれか一方の電路に偏って流れる電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を1次検知値dI1として出力する。 【0042】 地絡判定回路7は、図2(a)に示すように、各地絡検知回路6,…から1次検知値dI1,…を受信する検知値受信部71と、地絡検知回路6から検知されたすべての1次検知値dI1,…の中で最大となる最大検知値dIMAXが検知された地絡検知回路6が設けられる遮断区画24を、地絡が発生した地絡区画(遮断区画)24gと判定する判定部72と、を備える。 【0043】 検知値受信部71は、第1の地絡検知回路61から第1の1次検知値dI1Aの入力を受け付けて判定部72に出力する第1処理部73と、各第2の地絡検知回路62,…から第2の1次検知値dI1B,…の入力を受け付けて、当該第2の1次検知値dI1Bを選択して第1処理部73に出力する第2処理部74と、を備える。 【0044】 第1処理部73は、第2処理部74から第2の1次検知値dI1Bが入力されると、第1の地絡検知回路61から入力された第1の1次検知値dI1Aにその第2の1次検知値dI1Bを加算して2次検知値dI2(=dI1A+dI1B)として判定部72に出力する。第1処理部73は、第1の地絡検知回路61と第2処理部74とを並列に接続している。第2処理部74から第2の1次検知値dI1Bが入力されなかったとき、第1処理部73は、第1の地絡検知回路61から入力された第1の1次検知値dI1Aをそのまま2次検知値dI2として判定部72に出力する。」 (4)「【0047】 判定部72は、地絡が直流回路2に発生しているか否かを検知する地絡発生検知部76と、第2の地絡検知回路62から検知する第2の1次検知値dI1Bを選択する検知値選択部77と、該検知値選択部77が検知した1次検知値dI1,…を記憶する記憶部78と、地絡検知回路6,…から検知された2次検知値dI2から地絡区画24gを判定する地絡区画判定部79と、を備える。 【0048】 地絡発生検知部76は、接地部51の正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mから入力される対地間電圧Vgp,Vgmから地絡の発生を検知する。つまり、正極側地絡検知部55pから対地間電圧Vgpの入力があれば、地絡発生検知部76は、直流回路2の負極側電路に地絡が発生していることを検知する。また、負極側地絡検知部55mから対地間電圧Vgmの入力があれば、地絡発生検知部76は、直流回路2の正極側電路に地絡が発生していることを検知する。そして、地絡発生検知部76は、地絡が発生していることを検知すると、地絡区画判定部79に地絡発生信号を出力する。」 (5)「【0054】 次に、同実施形態に係る直流地絡検知装置1の直流地絡検知方法について、図1~図6を参酌しつつ説明する。まず、図3~図6に示すように、分岐回路21B1の正極側電路で地絡が発生したとき、地絡電流Igは、接地回路5の切換部56を介して負極側地絡検出用抵抗53m、直流電源3、主回路21A、分岐回路21B1を流れる。また、分岐回路21B2,…,21Bnでは、負荷側から分岐回路21B1の地絡箇所に向かって電流I2p,I2m,…,Inp,Inmが流れる。つまり、主回路21Aでは、地絡電流Igが流れる。分岐回路21B1では、地絡電流Igと、負極側電路を流れる電流I1nと、分岐回路21B2,…,21Bnから流れる電流I2p,I2m,…,Inp,Inmと、が流れる。各地絡検知回路6,…は、これらの電流を検知する。 【0055】 まず、負極側地絡検知部55mは、地絡電流Igが接地回路5の負極側地絡検出用抵抗53mを流れることにより、対地間電圧Vgmが検出される。そして、負極側地絡検知部55mは、地絡発生検知部76に当該対地間電圧Vgmを出力する。地絡発生検知部76は、この対地間電圧Vgmの入力を受けて、地絡の発生を検知する(S1)。地絡発生検知部76は、地絡区画判定部79に地絡発生信号を出力して、地絡区画判定を開始する。 【0056】 地絡区画判定部79は、第1処理部73から入力される第1の地絡検知回路61からの2次検知値dI2(第1の1次検知値dI1A)を記憶部78に記憶する(S2)。次に、地絡区画判定部79は、接地回路5の切換部56に切換信号を出力して、直流回路2との接続状態を切り換える(S3)とともに、検知値選択部77に検知値選択信号を出力して、回路選択スイッチ75,…を切り換えて、第1処理部73が出力する2次検知値dI2を算出する、第1の1次検知値dI1Aと第2の1次検知値dI1Bとの組み合わせを変更する(S4)。そして、地絡区画判定部79は、第1の1次検知値dI1Aに第2の1次検知値dI1Bが加算された2次検知値dI2の入力を第1処理部73から受け付けて、2次検知値dI2(第1の1次検知値dI1A+第2の1次検知値dI1B)を記憶部78に記憶する(S5)。 【0057】 地絡区画判定部79は、すべての第2の地絡検知回路62,…から第2の1次検知値dI1B,…が検知されて、第1の1次検知値dI1Aに第2の1次検知値dI1Bが加算された2次検知値dI2が記憶部78に記憶されるまで繰り返す(S6)。 【0058】 地絡区画判定部79は、すべての2次検知値dI2の検知が終了する(S6でYES)と、記憶部78に記憶された2次検知値dI2の中から最大となる最大検知値dIMAXを検索する(S7-1~S7-4)。最大検知値dIMAXは、図6(j)に示すように、1回目に検知された2次検知値dI2となる。よって、地絡区画判定部79は、最大検知値dIMAXに対応する2次検知値dI2の算出の根拠となった第2の1次検知値dI1Bが検知された第2の地絡検知回路62B1が設けられた遮断区画24B1を地絡区間24gと判定する(S8-1~S8-4)。地絡区画判定部79は、回路制御用遮断器22を遮断する遮断器遮断信号を出力して、地絡区間24gを遮断する(S9-1~S9-4)。」 (6)「【0065】 よって、判定部72は、記憶部78に記憶された第1の1次検知値dI1Aよりも大きくなる第2の検知値dI1Bを検索することによって、第1実施形態と同様に、地絡区間24gを判定できる。そして、第2の検知値dI1Bは、図7(j)に示すように、1回目に検知された2次検知値dI2となる。よって、地絡区画判定部79は、1回目に検知された2次検知値dI2に対応する2次検知値dI2の算出の根拠となった第2の1次検知値dI1Bが検知された第2の地絡検知回路が設けられた遮断区画24Bを地絡区間24gと判定する。なお、判定部72は、第1の1次検知値dI1Aに所定の設定値(例えば、0.5~2.0)を掛け合わせた第1検知値に基づいて判定をしてもよい。このようにすることによって、判定感度が調整することができる。」 (7)図1 [図:0001425748000001.jpg] (8)図2(a) [図:0001425748000002.jpg] (9)図3 [図:0001425748000003.jpg] (10)図4 [図:0001425748000004.jpg] 2 甲1発明の認定 前記1の記載によれば、甲1には、次に示す甲1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下の1a~1wに分説し、「構成1a」のようにして参照する。 〈甲1発明〉 1a 直流回路2に設置された直流地絡検知装置1であって、(【0025】) 1b 直流回路2は、直流電源3から複数の負荷4(4n;n=1,2,3,…)に直流電流を供給する回路であり、(【0026】) 1c 直流電源3は、直流回路2の外部に設けられて直流回路2に接続される電源であり、(【0026】) 1d 直流回路2は、直流電源3に接続される主回路21Aと、主回路21Aから分岐して設けられる複数の分岐回路21B(21Bn;n=1,2,3,…)と、を備え、(【0027】) 1e 分電盤は、複数の分岐回路21Bを有し、(【0027】) 1f 主回路21A及び分岐回路21Bは、当該主回路21A及び分岐回路21B内を流れる電流を遮断する遮断器を備え、遮断器は、回路制御用遮断器22と、過電流遮断器23と、を備え、(【0028】) 1g 回路制御用遮断器22は、直流回路2を区画する遮断区画24を形成し、遮断区画24は、回路制御用遮断器22を遮断することにより、直流電流が供給されている回路から切り離すことのできる区画であり、(【0029】) 1h 直流地絡検知装置1は、接地回路5と、地絡検知回路6と、地絡判定回路7と、遮断器制御回路8と、を備え、(【0033】) 1i 接地回路5は、直流回路2を接地する接地部51と、接地部51を介して直流回路2内に流れる地絡電流を可変させる可変部52と、を備え、(【0034】) 1j 接地部51は、主回路21の正極側電路に接続される正極側地絡検出用抵抗53pと、主回路21の負極側電路に接続される負極側地絡検出用抵抗53mと、正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとの間を接地する接地電路54と、正極側地絡検出用抵抗53pの対地間電圧Vgpを検知する正極側地絡検知部55pと、負極側地絡検出用抵抗53mの対地間電圧Vgmを検知する負極側地絡検知部55mと、を備え、(【0035】) 1k 正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとは、約5kΩの抵抗であり、接地電路54は、一端側を接地して、他端側を正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとを介して直流回路2に接続し、(【0036】) 1l1 正極側地絡検知部55pは、正極側地絡検出用抵抗53pの端子間電圧Vgpを計測可能な電圧計であり、負極側地絡検知部55mも、負極側地絡検出用抵抗53mの端子間電圧Vgmを計測可能な電圧計であり、(【0036】) 1l2 正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mは、検知した対地間電圧Vgp,Vgmを地絡判定回路7に出力可能な外部出力端子を有し、(【0036】) 1l3 正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mは、対地間電圧Vgp,Vgmが所定の電圧値以上である旨の信号が出力されるように構成されており、(【0036】) 1m 可変部52は、切換部56であり、切換部56は、第3の遮断器であり、第3の遮断器は、地絡判定回路7によって制御され、(【0037】) 1n 地絡判定回路7は、検知値受信部71と、判定部72と、を備え、(【0042】) 1o 検知値受信部71は、第1処理部73と、第2処理部74と、を備え、(【0043】) 1p 判定部72は、地絡発生検知部76と、検知値選択部77と、記憶部78と、地絡区画判定部79と、を備え(【0047】) 1q 地絡発生検知部76は、正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mから入力される対地間電圧Vgp,Vgmから地絡の発生を検知し、(【0048】) 1r 地絡検知回路6は、主回路21Aに設けられる第1の地絡検知回路61と、分岐回路21Bに設けられる第2の地絡検知回路62と、を備え、第1の地絡検知回路61は、第1の遮断区画24Aを流れる地絡電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を第1の1次検知値dI1Aとして出力し、第2の地絡検知回路62は、第2の遮断区画24Bを流れる地絡電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を第2の1次検知値dI1B(dI1Bn;n=1,2,3,…)として出力し、(【0039】) 1s 地絡検知回路61,62は、交流用変流器で検知し、交流用変流器は、正極側電路と負極側電路とで等しく流れる電流については出力されず、いずれか一方の電路に偏って流れる電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を1次検知値dI1として出力し、(【0040】、【0041】) 1t 第1処理部73は、第2処理部74から第2の1次検知値dI1Bが入力されると、第1の1次検知値dI1Aにその第2の1次検知値dI1Bを加算して2次検知値dI2(=dI1A+dI1B)として判定部72に出力し、(【0044】) 1u 分岐回路21B1の正極側電路で地絡が発生したとき、(【0054】) 1u1 負極側地絡検知部55mは、対地間電圧Vgmを出力し、地絡発生検知部76は、この対地間電圧Vgmの入力を受けて、地絡の発生を検知し、地絡発生検知部76は、地絡区画判定部79に地絡発生信号を出力して、地絡区画判定を開始し、(【0055】) 1u2 地絡区画判定部79は、すべての2次検知値dI2の検知が終了すると、2次検知値dI2の中から最大となる最大検知値dIMAXを検索し、地絡区画判定部79は、最大検知値dIMAXに対応する2次検知値dI2の算出の根拠となった第2の1次検知値dI1Bが検知された遮断区画24B1を地絡区間24gと判定し、(【0058】) 1u3 地絡区画判定部79は、回路制御用遮断器22を遮断する遮断器遮断信号を出力して、地絡区間24gを遮断し、(【0058】) 1v 判定部72は、第1の1次検知値dI1Aに所定の設定値(例えば、0.5~2.0)を掛け合わせた第1検知値に基づいて判定をしてもよく、このようにすることによって、判定感度が調整することができる、(【0065】) 1w 直流地絡検知装置1。 3 本件発明3と甲1発明との対比 本件発明3と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。 (1)発明特定事項3A、3H及び3Jについて 発明特定事項3Aは「負荷への給電を行う給電システムであって、」というものであり、発明特定事項3Hは「給電システムであり、」というものであり、発明特定事項3Jは「給電システム。」というものである。 甲1発明の「負荷4」(構成1b)は、本件発明3の「負荷」に相当する。 甲1発明の「直流電源3」(構成1b)、「直流回路2」及び「直流地絡検知装置1」(構成1a)により、「直流電源3から複数の負荷4」「に直流電流を供給する」(構成1b)から、甲1発明の「直流地絡検知装置1」、「直流回路2」及び「直流電源3」は、給電システム(以下「甲1給電システム」という。)をなし、本件発明3の「給電システム」に相当する。 よって、本件発明3と、甲1給電システムとは、「負荷への給電を行う給電システムであ」る点で一致する。 (2)発明特定事項3B1について 発明特定事項3B1は「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、」というものである。 ア 甲1給電システムの「正極側地絡検出用抵抗53p」は、「正極側電路に接続され」、「負極側地絡検出用抵抗53m」は、「負極側電路に接続され」る(構成1j)から、「正極側地絡検出用抵抗53p」及び「負極側地絡検出用抵抗53m」は、それぞれ「正極側電路」及び「負極側電路」に接続されており、「正極側電路」及び「負極側電路」は、給電線に他ならない。 イ 甲1給電システムの「接地電路54」は、「正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとの間を接地」し(構成1j)、「接地電路54は、一端側を接地して、他端側を正極側地絡検出用抵抗53pと負極側地絡検出用抵抗53mとを介して直流回路2に接続」する(構成1k)。すなわち、「正極側地絡検出用抵抗53p」と「負極側地絡検出用抵抗53m」との接続点は、「接地電路54」を介して接地され、接地された部分は大地に接続されると解される。そうすると、「正極側地絡検出用抵抗53p」及び「負極側地絡検出用抵抗53m」は、大地に接続されたものであり、前記アも考慮すると、「正極側地絡検出用抵抗53p」及び「負極側地絡検出用抵抗53m」は、給電線と大地との間に接続されていると解され、これらの抵抗を「中性点抵抗」と呼ぶことは任意である。 ウ 甲1給電システムの「接地回路5」は「接地部51」と「可変部52」とを備え(構成1i)、「接地部51」は、「正極側地絡検出用抵抗53p」及び「負極側地絡検出用抵抗53m」を備える(構成1j)から、前記イも考慮すると、「接地回路5」は、給電線(「正極側電路」及び「負極側電路」)と大地との間に中性点抵抗(「正極側地絡検出用抵抗53p」及び「負極側地絡検出用抵抗53m」)を有するといえる。 エ 甲1給電システムの「検知回路5」は、装置といえるから、本件発明3の「装置」に相当する。 そして、甲1給電システムには、「検知回路5」のように給電線と大地との間に設けられた中性点抵抗を有する装置は、「検知回路5」の他には存在しない。 オ 以上によれば、本件発明3と甲1給電システムとは、「給電線と大地との間に中性点抵抗を有する装置を一つのみ備え」る点で共通するものの、本件発明3の中性点抵抗は「高抵抗」であるのに対し、甲1給電システムの中性点抵抗は、「約5kΩ」(構成1k)である点で相違する。 (3)発明特定事項3B2について 発明特定事項3B2は「当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、」というものである。 甲1給電システムの「検知回路5」は、「接地部51」を備え(構成1i)、「接地部51」は、「正極側地絡検出用抵抗53pの端子間電圧Vgpを計測可能な電圧計であ」る「正極側地絡検知部55p」と、「負極側地絡検出用抵抗53mの端子間電圧Vgmを計測可能な電圧計であ」る「負極側地絡検知部55m」を備え(構成1j)、「正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55mは、対地間電圧Vgp,Vgmが所定の電圧値以上である旨の信号が出力されるように構成されて」いる(構成1l3)から、端子間電圧が所定の電圧値を超えた(過電圧となった)ときに地絡を検知する地絡検知器であると解され、本件発明3の「地絡過電圧検出型の地絡検出器」に相当する。 よって、本件発明3と甲1給電システムとは、「当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」する点で一致する。 (4)発明特定事項3Cについて 発明特定事項3Cは「前記給電システムは、更に制御装置を備え、」というものである。 甲1給電システムの「地絡判定回路7」(構成1h)は、少なくとも「第3の遮断器」を制御する(構成1m)から、制御装置である。 よって、本件発明3と甲1給電システムとは、「前記給電システムは、更に制御装置を備え」る点で一致する。 (5)発明特定事項3Dについて 発明特定事項3Dは「前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、」というものである。 甲1給電システムの「正極側地絡検知部55p及び負極側地絡検知部55m」は、「検知した対地間電圧Vgp,Vgmを地絡判定回路7に出力可能な外部出力端子を有」する(構成1l2)から、Vgp及びVgmは、外部出力端子に接続された信号線により「地絡判定回路7」に送信されると解される。 よって、本件発明3と甲1給電システムとは、「前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信」する点で一致する。 (6)発明特定事項3Eについて 発明特定事項3Eは「前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、」というものである。 甲1給電システムの「直流回路2」は、「主回路21A」と、「主回路21Aから分岐して設けられる複数の分岐回路21B」とを備えており(構成1d)、「複数の分岐回路21B」は、本件発明3の「分岐部」に相当する。 甲1発明では、「分電盤は、複数の分岐回路21Bを有」する(構成1e)ところ、一般に分電盤は、「電気の配線を幹線からコンセントなどの利用箇所へと複数に分岐する装置。スイッチ・ブレーカーなど安全装置を備える。」(広辞苑)を意味するから、甲1発明の「分電盤」は、幹線である「主回路21A」を「複数の分岐回路21B」に分岐する装置であると解される。よって、当該「分電盤」は、「主回路21A」及び「複数の分岐回路21B」とともに、「直流回路2」に備わるものと解され、当該「分電盤」は、「直流電源3」と電気的に接続されていると解される。 そして、甲1給電システムが「直流地絡検知装置1」、「直流回路2」及び「直流電源3」から構成されること(前記(1))を考慮すると、甲1給電システムは、「直流電源3」と、「分電盤」から枝分かれした「複数の分岐回路21B」を備えるといえる。 以上によれば、本件発明3と甲1給電システムとは、「前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え」る点で一致する。 (7)発明特定事項3Fについて 発明特定事項3Fは「各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、」というものである。 甲1給電システムの「直流地絡検知装置1」に備わる「地絡検知回路6」(構成1h)には、「分岐回路21Bに設けられる第2の地絡検知回路62」が備わる(構成1r)。 甲1給電システムの「第2の地絡検知回路62」は、「交流用変流器で検知し、交流用変流器は、正極側電路と負極側電路とで等しく流れる電流については出力されず、いずれか一方の電路に偏って流れる電流の単位時間あたりの変化量に比例した値を1次検知値dI1として出力」するものである(構成1s)から、不平衡電流を検出する地絡検知回路であると解される。 以上によれば、本件発明3と甲1給電システムとは、「各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え」る点で一致する。 (8)発明特定事項3Gについて 発明特定事項3Gは「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する」というものである。 甲1給電システムは、「対地間電圧Vgmの入力を受けて、地絡の発生を検知し、地絡発生検知部76は、地絡区画判定部79に地絡発生信号を出力して、地絡区画判定を開始し、」(構成1u1)、「すべての2次検知値dI2」の中から「最大となる最大検知値dIMAXを検索し、地絡区画判定部79は、最大検知値dIMAXに対応する2次検知値dI2の算出の根拠となった第2の1次検知値dI1Bが検知された遮断区画24B1を地絡区間24gと判定」する(構成1u2)から、対地間電圧Vgmと、「遮蔽区画24B」に対応する「分岐回路21B」に設けられた「第2の地絡検知回路62」が出力する「第2の1次検知値dI1B」とに基づいて、当該「分岐回路21B」において地絡が発生したか否かを判断している。 「第2の1次検知値dI1B」は、「第2の地絡検知回路62」の動作の結果生じた値であるという意味で、地絡検知結果であると解される。 そして、甲1給電システムの「地絡発生検知部76」及び「地絡区画判定部79」は、「判定部72」に備わるものであり(構成1p)、「判定部72」は、「地絡判定回路7」に備わるものである(構成1n)から、前記(4)により、甲1給電システムの「地絡発生検知部76」及び「地絡区画判定部79」は、本件発明3の「前記制御装置」に相当する。 よって、本件発明3と甲1給電システムとは、「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する」点で一致する。 (9)発明特定事項3Iについて 発明特定事項3Iは「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」というものである。 ア 前記(8)のとおり、甲1給電システムは、対地間電圧Vgmと、「遮蔽区画24B」に対応する「分岐回路21B」に設けられた「第2の地絡検知回路62」が出力する「第2の1次検知値dI1B」とに基づいて、当該「分岐回路21B」において地絡が発生したか否かを判断している。 甲1発明の「負極側地絡検知部55m」は、「検知した対地間電圧」「Vgmを地絡判定回路7に出力可能な外部出力端子を有」する(構成1l2)ところ、「負極側地絡検知部55mは、対地間電圧」「Vgmが所定の電圧値以上である旨の信号が出力されるように構成されて」いる(構成1l3)ので、前記(8)における「対地間電圧Vgm」は、検知された電圧値そのものではなく、検知された電圧値が所定の電圧値以上である旨、すなわち、地絡が発生した旨の信号であると解される。したがって、甲1給電システムにおいて「対地間電圧Vgp,Vgmから地絡の発生を検知」すること(構成1q)は、本件発明3において「前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され」ることに相当する。 イ 他方、甲1給電システムは、前記(8)のとおり、「すべての2次検知値dI2」の中から「最大となる最大検知値dIMAXを検索し、地絡区画判定部79は、最大検知値dIMAXに対応する2次検知値dI2の算出の根拠となった第2の1次検知値dI1Bが検知された遮断区画24B1を地絡区間24gと判定」する(構成1u2)ものである。 2次検知値dI2の算出は、「第1の1次検知値dI1Aにその第2の1次検知値dI1Bを加算して2次検知値dI2(=dI1A+dI1B)と」する(構成1t)ことによる。 そして、「第2の1次検知値dI1B」は、「第2の遮断区画24Bを流れる地絡電流の単位時間あたりの変化量に比例した値」(構成1r)であるから、地絡電流の単位時間あたりの変化量に比例した値であって、地絡電流が所定値よりも小さい場合(すなわち、地絡が検知されない場合)の値をも含むものであるから、必ずしも地絡が検知された旨を示すものではない。 ウ 前記ア及びイによれば、本件発明3と甲1給電システムとは、「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出された場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」点で共通するものの、特定の分岐部において地絡が発生したと判断するための条件として、本件発明3は、「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要するのに対し、甲1給電システムは、「第2の1次検知値dI1B」を用いてはいるものの、「第2の1次検知値dI1B」が地絡を検出したといえる値であるとは限らないため、前記場合を要しない点で相違する。 (10)本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点 前記(1)~(9)の対比は、本件発明3と甲1給電システムとの対比であるところ、甲1給電システムは甲1発明に包含されるものであって、甲1発明のうち甲1給電システムではない部分は、本件発明3との一致点及び相違点の認定を左右しないので、前記(1)~(9)の対比は、本件発明3と甲1発明と対比と同一となる。よって、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「負荷への給電を行う給電システムであって、 給電線と大地との間に中性点抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し、 前記給電システムは、更に制御装置を備え、 前記地絡過電圧検出型の地絡検出器は、地絡を検出した場合に、地絡が発生したことを示す信号を信号線により前記制御装置に送信し、 前記給電システムは、電源と、当該電源に接続される分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え、 各分岐部は、不平衡電流検出型の地絡検出器を備え、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器による地絡検出結果と、ある特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器による地絡検出結果とに基づいて、当該特定の分岐部において地絡が発生したか否かを判断する 給電システムであって、 前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出された場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する 給電システム。」である点。 〈相違点1-1〉 本件発明3の中性点抵抗は「高抵抗」であるのに対し、甲1発明の中性点抵抗は、「約5kΩ」である点。(発明特定事項3B1) 〈相違点1-2〉 特定の分岐部において地絡が発生したと判断するための条件として、本件発明3は、「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要するのに対し、甲1給電システムは、「第2の1次検知値dI1B」を用いてはいるものの、「第2の1次検知値dI1B」が地絡を検出したといえる値であるとは限らないため、前記場合を要しない点。(発明特定事項3I) 4 相違点1-2についての判断 事案に鑑み、相違点1-2について判断する。 (1)相違点1-2は、特定の分岐部において地絡が発生したと判断するための条件の相違によるものであるから、実質的な相違点である。 (2)甲1発明は、「第1の1次検知値dI1Aにその第2の1次検知値dI1Bを加算して2次検知値dI2(=dI1A+dI1B)として判定部72に出力し」(構成1t)、「すべての2次検知値dI2の検知が終了すると、2次検知値dI2の中から最大となる最大検知値dIMAXを検索し、地絡区画判定部79は、最大検知値dIMAXに対応する2次検知値dI2の算出の根拠となった第2の1次検知値dI1Bが検知された遮断区画24B1を地絡区間24gと判定」する(構成1u2)ものである。 すなわち、甲1発明は、あくまで2次検知値dI2(=dI1A+dI1B)の値の大きさによって地絡区間を特定しているのであって、最大検知値dIMAXに対応する1次検知値dI1A又はdI1Bの値の大きさは、地絡区間の特定に直接使用されるものではない。 さらに、甲1発明では、「判定部72は、第1の1次検知値dI1Aに所定の設定値(例えば、0.5~2.0)を掛け合わせた第1検知値に基づいて判定をしてもよく、このようにすることによって、判定感度が調整することができる」(構成1v)とされているため、第1の1次検知値は、あくまで地絡検知回路の出力する電流値でしかなく、地絡検知回路61又は62の出力値である1次検知値dI1A及びdI1Bのそれぞれを、単独で地絡が検出されたか否かの判断に使用することは想定されていない。 以上によれば、甲1発明の地絡区間の特定において、本件発明3のように「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要件とするように改変すること、換言すれば、遮断区画24に設けられた地絡検知回路61又は62の出力値である1次検知値dI1A及びdI1Bのそれぞれを単独で地絡が検出されたか否かの判断に使用するように改変することには、動機付けがなく、むしろ、阻害要因があるといえる。 そして、甲1発明の1次検知値dI1A及びdI1Bのそれぞれを単独で地絡が検出されたか否かの判断に使用するように改変することを記載ないし示唆する証拠は存在しない。 したがって、相違点1-2に係る構成は、当業者といえども容易に想到し得たとは認められない。 5 申立人の主張について 申立人は、相違点1-2について、概略、以下を主張する。 甲1発明の地絡区画判定部79は、地絡発生検知部76により地絡が検出され、かつ、第2の地絡検出回路62により特定の分岐部における地絡が検出されたことを検知した場合に、特定の分岐部において地絡が発生したと判定しているため、本件発明3の「制御装置」に相当する。(申立書41頁) 甲1の【0039】、【0040】及び【0059】の記載によれば、甲1発明の「地絡検出回路62」から出力される第2の1次検知値dI1Bは、地絡が検出されたことを示すものである。(申立人意見書6頁) しかしながら、前記4(2)に示したように、甲1発明において地絡区間の特定に用いるのはあくまで2次検知値dI2であって、1次検知値dI1Bではない。1次検知値は、あくまで地絡検知回路の出力する電流値でしかない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 6 本件発明3の新規性及び進歩性についての小括 前記4及び5のとおり、相違点1-2は実質的な相違点であり、該相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得ないものである。 よって、相違点1-1について判断するまでもなく、本件発明3は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとも、認めることはできない。 したがって、本件発明3に係る特許は、特許法29条1項又は同条2項の規定に違反してされたものではない。 7 本件発明4~6について 本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を備えるものであるから、本件発明4及び6と甲1発明とは、少なくとも相違点1-2において相違する。よって、本件発明4は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとも、認めることはできない。 本件発明5は、「給電システム」である本件発明3を、「地絡検出方法」の発明として記載したものであると解されるから、本件発明5と甲1発明とは、少なくとも相違点1-2と同様の相違点において相違する。よって、本件発明5は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとも、認めることはできない。 本件発明6は、「給電システム」である本件発明3又は4を、「地絡検出方法」の発明としたものであると解されるから、本件発明6と甲1発明とは、少なくとも相違点1-2と同様の相違点において相違する。よって、本件発明6は、甲1発明と同一であるとも、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとも、認めることはできない。 したがって、本件発明4~6に係る特許は、特許法29条1項又は同条2項の規定に違反してされたものではない。 8 甲1発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無についての小括 前記6及び7のとおりであるから、本件発明は、甲1発明とは同一ではなく、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、申立理由1及び2並びに取消理由1-2及び2には理由がない。 第8 甲2発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無の判断 以下では、甲2発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無を判断しこれにより、申立理由3及び4についての理由の有無を判断する。 1 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 (1)180頁下から6行~181頁3行 「3.2.2.3.2 地絡検出方法 高電圧直流給電システムでは、接地方式を両端高抵抗接地方式とした。図表3.2.2.3-2に地絡検出を含めたシステム系統図を示す。通常、線間383Vであるため、正常な場合の接地抵抗の対地電圧は、191.5Vとなる。プラス極が地絡した場合、プラス極~接地間の対地電圧が低下、マイナス極~接地間の対地電圧が上昇する。逆にマイナ極が地絡した場合、マイナ極~接地間の対地電圧が低下、プラス極~接地間の対地電圧が上昇する。いずれかの対地電圧を測定することで、どちらの極が地絡しているかを検出できる。今回地絡は、整流装置出力端に具備した接地抵抗Rg2の対地電圧で検出している。」 (当審注:上記記載中の「マイナ極」(2箇所)は、「マイナス極」の誤記と認める。また、上記記載中の「図表3.2.2.3-2」は、文脈から「図表3.2.2.3-3」の誤記と認める。) (2)181頁 図表3.2.2.3-3 地絡検出を含めたシステム構成図 [図:0001425748000005.jpg] 上図によれば、高電圧直流給電システムは、整流装置の中に電圧測定部及び監視制御部を備え、電圧測定部と監視制御部とは接続され、電圧測定部は、接地抵抗Rg2の対地電圧を測定すると解される。 (3)183頁1~6行 「前項にて設定した、負荷が接続されていない状態で身体電流10mA以下とするための接地抵抗値を決定する。対地電圧は定常時は、±191.5V±1%であるが、最悪条件は383V+1%(=386.83V)である。身体電流を10mA以下とするには、図表3.2.2.3-6に示すように、368.83V/0.01A=38.7kΩ以上の抵抗値とする必要がある。」 (4)186頁6行~187頁1行 「3.2.2.3.7 地絡箇所の探査方法 地絡が発生した時の地絡電流ルートを図表3.2.2.3-11に示す。地絡電流は、接地抵抗を介す回路(点線:ピンク色)と絶縁抵抗を介す回路(破線:茶色)を流れる。 地絡の探査は、直流の漏電クランプセンサ(例:マルチ計測器株式会社製、ZCTDC-110Sなど)を用いる。測定箇所は、地絡系統の地絡点前(A点)、値絡系統の地絡点後(B点)、健全系統(C点)がある。図の通り、A~C点はいずれもプラスとマイナスの差電流が生じるため、漏電クランプセンサにて漏電電流が測定される。しかし、接地抵抗<絶縁抵抗であるため、接地抵抗を流れる電流の方が、絶縁抵抗を流れる電流よりも電流値は大きい。従って、差電流の大きい箇所を探査することで、漏電箇所の特定ができるものと思われる。」 (5)187頁 図表3.2.2.3-11 地絡電流の探査方法 [図:0001425748000006.jpg] 上図によれば、高電圧直流給電システムの給電線(図中、電源分配装置の左側に接続される線)は、電源分配装置から第1の負荷19インチラック(図中上側の負荷19インチラック)へ給電する第1の分岐と、電源分配装置から第2の負荷19インチラック(図中下側の負荷19インチラック)へ給電する第2の分岐とに枝分かれしていると解される。 上図によれば、A点及びB点は第1の分岐に位置し、C点は第2の分岐に位置すると解される。 2 甲2発明の認定 前記1の記載によれば、甲2には、次に示す甲2発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲2発明を以下の2a~2gに分説し、「構成2a」のようにして参照する。 2a 接地方式を両端高抵抗接地方式とした高電圧直流給電システムであって、(前記1(1)) 2b 地絡は、整流装置出力端に具備した接地抵抗Rg2の対地電圧で検出し、(前記1(1)) 2c 高電圧直流給電システムは、整流装置の中に電圧測定部及び監視制御部を備え、電圧測定部と監視制御部とは接続され、電圧測定部は、接地抵抗Rg2の対地電圧を測定し、(前記1(2)) 2d 接地抵抗地は、38.7kΩ以上の抵抗値とする必要があり、(前記1(3)) 2e 高電圧直流給電システムの給電線は、電源分配装置から第1の負荷19インチラックへ給電する第1の分岐と、電源分配装置から第2の負荷19インチラックへ給電する第2の分岐とに枝分かれし、(前記1(5)) 2e 地絡の探査は、直流の漏電クランプセンサを用い、測定箇所は、地絡系統の地絡点前(A点)、地絡系統の地絡点後(B点)、健全系統(C点)があり、A~C点はいずれも漏電クランプセンサにて漏電電流が測定され、差電流の大きい箇所を探査することで、漏電箇所の特定ができ、(前記1(4)) 2f A点及びB点は第1の分岐に位置し、C点は第2の分岐に位置する、(前記1(5)) 2g 高電圧直流給電システム。 3 本件発明3と甲2発明との対比 事案に鑑み、本件発明3の発明特定事項3Iについて、甲2発明と対比する。 (1)発明特定事項3Iについて 発明特定事項3Iは「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」というものである。 ア 甲2発明は、「地絡」を「接地抵抗Rg2の対地電圧で検出」し(構成2b)、「電圧測定部は、接地抵抗Rg2の対地電圧を測定」する(構成2c)ものであるから、「電圧測定部」は「接地抵抗Rg2」の対地電圧の測定をすると解される。 他方、甲2発明において、測定された「接地抵抗Rg2」の対地電圧に基づいて「地絡」を「検出」するものが、「電圧測定部」なのか、「監視制御部」なのか、それとも、高電圧直流給電システムのその他の部分なのかは、甲2全体を参照しても判然としない。しかしながら、高電圧直流給電システムのいずれかの部分が「接地抵抗Rg2」の対地電圧に基づいて「地絡」を「検出」する(構成2b)のだから、その部分を「地絡過電圧検出型の地絡検出器」と称することは任意である。 したがって、甲2発明において「地絡」を「接地抵抗Rg2の対地電圧で検出」することは、本件発明3の「前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され」た場合に「地絡が発生したと判断する」点に相当する。 イ 甲2発明は、「地絡の探査は、直流の漏電クランプセンサを用い、」「A~C点はいずれも漏電クランプセンサにて漏電電流が測定され、差電流の大きい箇所を探査することで、漏電箇所の特定ができ」る(構成2e)ものである。この際の「漏電箇所」は、「第1の分岐」及び「第2の分岐」のいずれかとして特定されることは、図表3.2.2.3-11から明らかである。 そうすると、甲2発明の「漏電箇所の特定」は、本件発明3の「前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」ことに相当する。 しかしながら、甲2発明の「漏電クランプセンサ」は、「漏電電流」を「測定」しているに過ぎず、「漏電クランプセンサ」単体で「地絡」を検出するものではない。現に、甲2発明では、「A~C点はいずれも漏電クランプセンサにて漏電電流が測定され」ており、その内から「差電流の大きい箇所を探査する」必要がある点で、A~C点の全ての漏電電流を測定しない限り漏電箇所を特定することができない。よって、甲2発明の「漏電クランプセンサ」は、本件発明3の「不平衡電流検出型の地絡検出器」に相当するとはいえない。 加えて、甲2発明の「地絡の探査」は、高電圧直流給電システムのいずれの部分で行われているのかが、甲2全体を参照しても不明である。 ウ 前記ア及びイによれば、本件発明3と甲2発明とは、「前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され」た「場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」点で共通するものの、本件発明3における地絡発生の判断は、「前記制御装置」により行われるのに対し、甲2発明は「制御装置」の有無が不明である点で相違すると共に、本件発明3では、特定の分岐部において地絡が発生したと判断するための条件として、「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要するのに対し、甲2発明は「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器」を備えないため、前記条件として「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要しない点で相違する。 (2)本件発明3と甲2発明との相違点 前記(1)ウによれば、本件発明3と甲2発明とは、少なくとも以下の相違点2-1及び2-2において相違する。 〈相違点2-1〉 本件発明3における地絡発生の判断は、「前記制御装置」により行われるのに対し、甲2発明は「制御装置」の有無が不明である点。 〈相違点2-2〉 本件発明3では、特定の分岐部において地絡が発生したと判断するための条件として、「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要するのに対し、甲2発明は「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器」を備えないため、前記条件として「前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合」を要しない点。 4 相違点2-2についての判断 事案に鑑み、相違点2-2について判断する。 (1)相違点2-2は、特定の分岐部において地絡が発生したと判断するための条件の相違によるものであるから、実質的な相違点である。 (2)甲2発明の「漏電クランプセンサ」は、漏電電流を測定しているに過ぎず、単体で地絡を検出するものではない(前記3(1)イ)。 そして、甲2には、「漏電クランプセンサ」に変えて、測定箇所(A点~C点)で地絡の検出を行うことについては、記載も示唆もない。むしろ、甲2発明はシステム全体で唯一の「監視制御部を備え」る(構成2c)から、各所での漏電電流を「監視制御部」に集約し、「監視制御部」にて地絡検出まで行うよう構成する方が自然である。 よって、相違点2-2に係る構成も当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 5 申立人の主張について 申立人は、相違点2-2について、概略、以下を主張する。 甲2の3.2.2.3.7の記載(前記1(4))によれば、特定の分岐部における漏電クランプセンサにより地絡が検出され、その特定の分岐部において地絡が発生したと判断されると認められる。 甲1、甲5、甲8及び甲9に記載されているように、地絡検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、特定の分岐部における不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、当該特定の分岐部において地絡が発生したと判断することは周知技術であるから、甲2発明において、整流装置の監視制御部が様々な判断を担うように判断機能を集約した上で、監視制御部が、抵抗Rg1、Rg2及び電圧測定部により地絡が検出され、かつ、漏電クランプセンサにより地絡が検出された場合に地絡が発生したと判断するようにして相違点2-2に係る技術的事項を採用することは当業者にとって容易に想到し得る。(申立書57~59頁) しかしながら、前記3(1)イに示したように、甲2発明の「漏電クランプセンサ」は、漏電電流を測定しているに過ぎず、単体で地絡を検出するものではない。 甲2発明の「漏電クランプセンサ」を地絡を検出する検知器として機能させるためには、測定された漏電電流の値に基づいて地絡の有無を判断するための判断機能を「漏電クランプセンサ」に設けることが必要となるが、そのような判断機能を「漏電クランプセンサ」に設けることは、申立人が主張する「整流装置の監視制御部が様々な判断を担うように判断機能を集約」することに反する。 加えて、甲2発明に対して、(i)「判断機能を集約した上で」、(ii)電圧測定部により地絡が検出され、かつ、漏電クランプセンサにより地絡が検出された場合に地絡が発生したと判断するようにする、という改変を加えるには、(i)及び(ii)の直列した2つのステップを要するため、これを当業者が容易に想到し得たとは評価できない。 よって、申立人の主張は採用できない。 6 本件発明の新規性及び進歩性についての小括 前記4及び5のとおり、相違点2-2は実質的な相違点であり、該相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得ないものである。 よって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明3は、甲2発明と同一であるとも、当業者が甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたとも、認めることはできない。 したがって、本件発明3に係る特許は、特許法29条1項又は同条2項の規定に違反してされたものではない。 本件発明4~6についても同様である。 したがって、申立理由3及び4には理由がない。 第9 甲3発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無の判断 以下では、甲3発明に対する本件発明の新規性及び進歩性の有無を判断しこれにより、申立理由5及び6並びに取消理由1-1及び1-3についての理由の有無を判断する。 1 甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は電力供給装置、制御装置およびその制御方法に関し、例えば、太陽電池などの直流電源から供給される電力を負荷へ供給するための電力供給装置、制御装置およびその制御方法に関するものである。」 (2)「【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる一実施形態の電力供給装置である太陽光発電装置を図面を参照して詳細に説明する。 【0018】 【第1実施形態】図1は第1実施形態の太陽光発電装置の構成例を示すブロック図で、商用電力系統との系統連系運転が可能な太陽光発電装置である。図1は第1実施形態における電源と地絡検出手段との接続関係を示している。 【0019】1は電源である。なお、本実施形態における電源1は、光起電力素子や、光起電力素子を有する太陽電池モジュールである。また、電源1は、複数の太陽電池モジュールが電気的に直列接続されたストリングであってもよいし、電気的に並列接続されたアレイであってもよい。 【0020】2は集電箱で、電源1の出力を集電する集電機構、集電された電力の開閉を行う開閉器、太陽電池の出力の確認するための確認手段、保守点検機構、および、ダイオードなどによる電力の逆流防止機構などを備えている。 【0021】3はパワーコンディショナで、電源1で発生し、集電箱2から供給される直流電力を交流電力に変換して商用交流系統5に供給する。また、パワーコンディショナ3は各種の保護機能を有する。 【0022】4は交流分電盤で、パワーコンディショナ3から出力される電力を系統連系させるためのものである。なお、交流分電盤4を省略して、パワーコンディショナ3と商用電力系統5とを接続してもよいが、その場合、ブレーカを介して両者を接続するのが安全上好ましい。 【0023】[パワーコンディショナ]図2はパワーコンディショナ3の構成例を示すブロック図である。 【0024】入力端子11は集電箱2を介して電源1から供給される直流電力を入力し、出力端子12はパワーコンディショナ3により変換された交流電力を出力する。また、接地端子13は、パワーコンディショナ3の一部回路をアースに接続するためのものである。 【0025】入力端子11に入力される直流電力は、キャパシタなどで構成される入力側のノイズフィルタ14を介して、平滑キャパシタ、リアクタL、ダイオード、スイッチング素子などで構成される直交流変換回路15へ入力される。なお、直交流変換回路15は所謂トランスレスインバータである。直交流変換回路15から出力される交流電力は、交流出力の開閉を行う出力開閉器16、出力側のノイズフィルタ17、および、出力端子12を介して、商用交流系統5へ供給される。 【0026】また、入力される直流電圧値を検出するための直流電圧検出器18、並びに、出力される交流電圧値および交流電流値を検出するための交流電圧検出器19および交流電流検出器20の出力は、マイクロプロセッサなどからなるインバータの制御回路21へ入力される。制御回路21は、各種の検出データに基づき、インバータ/チョッパの各種制御や保護などの制御を行う。 【0027】22は直流回路の地絡を検出する地絡検出回路である。地絡検出回路22は、入力端子11間に同一の抵抗値を有する抵抗器31および32を直列に接続し、両抵抗器の接続点(分圧点)を直流電圧検出器33の一端に接続する。電圧検出器33の他端は、制御回路21により開閉制御される対地開閉器34を介して接地端子13に接続される。電圧検出器33によって検出される分圧点の対地電位は制御回路21に送られる。検出される対地電位の値によって、例えば直列に接続されている複数の太陽電池モジュールのうち、どの太陽電池モジュール間で地絡が発生したかがわかる。 【0028】23は不揮発性のメモリで、制御回路21からリード/ライト可能である。メモリ23は、制御回路21へ電力の供給が停止した場合に記憶が保持できるものであればよく、SRAMとバックアップ電源との組み合わせや、フラッシュメモリの使用など種々構成が可能である。 【0029】制御回路21は、地絡を検出しようとする場合、出力開閉器16を開いた後、対地開閉器34を閉じる。そして、電圧検出器33の検出電圧、つまり対地電位を読み取る。その際、電源1の絶縁が保たれていれば検出値は零である。一方、電源1に地絡が発生していれば、地絡箇所に応じた電圧が検出される。地絡の検出処理、つまり、地絡しているか否かを判定する処理の後、制御回路21は、対地開閉器34を開いた後、必要に応じて出力開閉器16を閉じるが、地絡が発生している場合は、安全のために出力開閉器16は開かれたままになる。 【0030】電源1の対地静電容量にアンバランスがある場合は検出値が零にならないことがある。その場合は、例えば電源1の設置初期などにアンバランス分の電圧を測定してメモリ23へ格納し、以降はオフセット電圧として処理すればよい。」 (3)「【0051】 【第2実施形態】以下、本発明にかかる第2実施形態の太陽光発電装置を説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。」 (4)「【0053】[パワーコンディショナ]図6は本実施形態のパワーコンディショナ3の構成例を示すブロック図である。以下では、第1実施形態と異なる点について説明する。」 (5)「【0062】 【第3実施形態】以下、本発明にかかる第3実施形態の太陽光発電装置を説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。」 (6)「【0064】図8は本実施形態のパワーコンディショナ3の構成例を示すブロック図で、出力開閉器16と交流電流検出器20との間に配置され、交流電力ラインの差電流を検出する差電流検出器28を備える。差電流検出器28の検出値は制御回路21へ送られる。 【0065】図9は制御回路21により実行される制御手順を説明するフローチャートである。図3に示した第1実施形態と異なるのはステップS41およびS42が追加されていることである。以下、ステップS41およびS42について説明する。 【0066】ステップS41で、差電流が検出されるか否か、具体的には検出される差電流の値が所定値より大きいか否かにより地絡の有無を判定する。差電流の値が所定値より大きければ地絡が発生したと判断してステップS42に進む。そうでなければ地絡は発生していないと判断してステップS27へ進む。従って、系統連系運転が継続される場合はステップs41およびS7が繰り返される。」 (7)「【0068】このように、本実施形態によれば、系統連系運転期間は差電流により地絡を検出し、系統連系運転が停止中は対地電位により地絡を検出する。従って、系統連系運転をしてるか否かにかかわらず地絡を検出することができる。 【0069】また、差電流による地絡検出および対地電位による地絡検出には、それぞれ検出不可能な条件(地絡箇所、地絡抵抗など)があるが、両者を組み合わせることで、検出不可能な条件(領域)を互いに補完することができ、地絡検出が不可能な条件を狭める効果がある。」 (8)「【0071】また、差電流によって地絡を検出し、停止保持(S23)の後に、対地電位による地絡検出を行ってもよい。差電流を検出しただけではわからない地絡箇所が特定できる場合もあり、後で地絡を調査する際に役立つ。」 (9)図1 [図:0001425748000007.jpg] 図1及び【0018】の記載によれば、太陽光発電装置は、電源1と、集電箱2と、パワーコンディショナ3と、交流分電盤4と、商用電力系統5とを備えると解される。 (10)図6 [図:0001425748000008.jpg] (11)図8 [図:0001425748000009.jpg] 図8によれば、パワーコンディショナ3は、入力端子11と、制御回路21と、地絡検出回路22と、メモリ23と、抵抗器31および32と、電圧検出器33と、差電流検出器28とを備えると解される。 2 甲3発明の認定 甲3には、「以下、本発明にかかる第3実施形態の太陽光発電装置を説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。」(【0062】)との記載がある。 そこで、甲3発明として、パワーコンディショナ3が第3実施形態のものを認定し、第1実施形態と同様の部分については、第1実施形態の説明を参照する。 そうすると、前記1の記載によれば、甲3には、次に示す甲3発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲3発明を以下の3a~3mに分説し、「構成3a」のようにして参照する。 〈甲3発明〉 3a 太陽電池などの直流電源から供給される電力を負荷へ供給するための電力供給装置であって、(【0001】) 3b 電力供給装置は、太陽光発電装置であり、(【0017】) 3c 太陽光発電装置は、電源1と、集電箱2と、パワーコンディショナ3と、交流分電盤4と、商用電力系統5とを備え、(図1) 3d パワーコンディショナ3は、入力端子11と、制御回路21と、地絡検出回路22と、メモリ23と、抵抗器31および32と、電圧検出器33と、差電流検出器28とを備え、(図8) 3e 入力端子11は電源1から供給される直流電力を入力し、(【0024】) 3f 地絡検出回路22は、入力端子11間に同一の抵抗値を有する抵抗器31および32を直列に接続し、両抵抗器の接続点(分圧点)を直流電圧検出器33の一端に接続し、電圧検出器33の他端は、制御回路21により開閉制御される対地開閉器34を介して接地端子13に接続され、(【0027】) 3g 電圧検出器33によって検出される分圧点の対地電位は制御回路21に送られ、検出される対地電位の値によって、複数の太陽電池モジュールのうち、どの太陽電池モジュール間で地絡が発生したかがわかり、(【0027】) 3h 制御回路21は、地絡を検出しようとする場合、電圧検出器33の検出電圧、つまり対地電位を読み取り、その際、電源1の絶縁が保たれていれば検出値は零であり、一方、電源1に地絡が発生していれば、地絡箇所に応じた電圧が検出され、(【0029】) 3i 電源1の対地静電容量にアンバランスがある場合は検出値が零にならないことがあり、その場合は、アンバランス分の電圧を測定してメモリ23へ格納し、以降はオフセット電圧として処理し、(【0030】) 3j 差電流検出器28の検出値は制御回路21へ送られ、(【0064】) 3k 制御回路21により実行される制御手順として、差電流の値が所定値より大きければ地絡が発生したと判断し、そうでなければ地絡は発生していないと判断し、(【0065】、【0066】) 3l 系統連系運転期間は差電流により地絡を検出し、系統連系運転が停止中は対地電位により地絡を検出する、(【0068】) 3m 電力供給装置。 3 本件発明3と甲3発明との対比 事案に鑑み、本件発明3の発明特定事項3Iについて、甲3発明と対比する。 (1)発明特定事項3Iについて 発明特定事項3Iは「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、かつ、前記特定の分岐部における前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、前記特定の分岐部において地絡が発生したと判断する」というものである。 ア 甲3発明の「制御回路21」は、「地絡を検出しようとする場合、電圧検出器33の検出電圧、つまり対地電位を読み取」る(構成3h)から、本件発明3における「地絡が発生したと判断する」「制御装置」に相当するとともに、甲3発明の「制御回路21」及び「電圧検出器32」は、一体として、本件発明3の「前記地絡過電圧検出型の地絡検出器」に相当する。 イ 甲3発明には、本件発明3の「分岐部」に対応する構成がない。 他方、甲3発明においては、「差電流検出器28の検出値は制御回路21へ送られ」(構成3j)、「制御回路21により実行される制御手順として、差電流の値が所定値より大きければ地絡が発生したと判断」する(構成3k)から、甲3発明の「差電流検出器28」及び「制御回路21」は、一体として、本件発明3の「前記不平衡電流検出型の地絡検出器」に相当する。 そして、甲3発明は、「系統連系運転期間は差電流により地絡を検出し、系統連系運転が停止中は対地電位により地絡を検出する」もの(構成3l)であって、対地電位による地絡検出と、差電流による地絡検出とを同時に用いるものではなく、さらに、特定の分岐部において地絡が発生したことを判断するものではない。 ウ 前記ア及びイによれば、本件発明3と甲3発明とは、「前記制御装置は、前記地絡過電圧検出型の地絡検出器により地絡が検出され、又は、前記不平衡電流検出型の地絡検出器により地絡が検出されたことを検知した場合に、地絡が発生したと判断する」点で共通するものの、本件発明3は、不平衡電流検出型の地絡検出器が「前記特定の分岐部」に備わり、地絡が「前記特定の分岐部において」発生したことを検出するものであるのに対し、甲3発明は、分岐部に相当する構成を有さないため、地絡が特定の分岐部において発生したことを検出するものではない点で相違する。 (2)本件発明3と甲3発明との相違点 前記(1)ウによれば、本件発明3と甲3発明とは、少なくとも以下の相違点3において相違する。 〈相違点3〉 本件発明3は、不平衡電流検出型の地絡検出器が「前記特定の分岐部」に備わり、地絡が「前記特定の分岐部において」発生したことを検出するものであるのに対し、甲3発明は、分岐部に相当する構成を有さないため、地絡が特定の分岐部において発生したことを検出するものではない点。 4 相違点3についての判断 相違点3について、以下、判断する。 (1)相違点3は、分岐部の有無の相違、及び、特定の分岐部における地絡を検出可能か否かの相違に関するから、実質的な相違点である。 (2)甲3には、第2実施形態として、分岐部を有するもの(図6)が記載されているが、甲3には、第3実施形態(甲3発明)と第2実施形態とを組み合わせることについては、記載も示唆もない。 仮に甲3発明と第2実施形態を組み合わせることができたとしても、甲3発明は、「系統連系運転期間は差電流により地絡を検出し、系統連系運転が停止中は対地電位により地絡を検出する」(構成3l)ものであるから、差電流による地絡検出と対地電位による地絡検出とは別々に用いられるものであり、本件発明3のように、対地電位による地絡が検出され、かつ、差電流による地絡が検出された場合を想定することはあり得ない。 なお、甲3には、「差電流による地絡検出および対地電位による地絡検出には、それぞれ検出不可能な条件(地絡箇所、地絡抵抗など)があるが、両者を組み合わせることで、検出不可能な条件(領域)を互いに補完することができ、地絡検出が不可能な条件を狭める効果がある。」(【0069】)との記載があるが、当該記載は、系統連系運転期間中は差電流により地絡を検出することと、系統連系運転が停止中は対地電位により地絡を検出することとを組み合わせる趣旨のことと解され、差電流及び対地電位を同時に用いて地絡を検出することを述べたものとは解されない。このことは、「差電流によって地絡を検出し、停止保持(S23)の後に、対地電位による地絡検出を行ってもよい。」(【0071】)との記載とも整合する。 よって、相違点3に係る構成は、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。 5 申立人の主張について 申立人は、相違点3について、概略、以下を主張する。 甲3には、対地電位による地絡の検出と、差電流による地絡の検出との両者を組み合わせてもよいことが記載されている。 給電システムの技術分野では、甲1、甲2、甲5、甲8、甲9及び甲10のように、不平衡電流検出型の地絡検出器を各分岐部に設けることは周知技術であるから、甲3発明において、出力開閉器15及び出力端子12を含む分岐部に差電流検出器28を設けるのに加えて、自立出力開閉器26及び自立出力端子25を含む分岐部にも差電流検出器28を設けるようにすることは、当業者にとって容易に想到し得る。(申立書74~75頁、申立人意見書7~8頁) しかしながら、前記4(2)に示したように、甲3発明は、差電流による地絡検出と対地電位による地絡検出とは別々に用いられるものであり、本件発明3のように、対地電位による地絡が検出され、かつ、差電流による地絡が検出された場合を想定することはあり得ない。 加えて、甲3発明の「差電流検出器28」は、電流を検出しているに過ぎず、これ単体で本件発明3の「不平衡電流検出型の地絡検出器」に相当するとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。 6 本件発明の新規性及び進歩性についての小括 前記4及び5のとおり、相違点3は実質的な相違点であり、該相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得ないものである。 よって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明3は、甲3発明と同一であるとも、当業者が甲3発明に基づいて容易に発明をすることができたとも、認めることはできない。 したがって、本件発明3に係る特許は、特許法29条1項又は同条2項の規定に違反してされたものではない。 本件発明4~6についても同様である。 よって、申立理由5及び6並びに取消理由1-1及び1-3には理由がない。 第10 明確性要件についての判断 以下では、申立理由7についての理由の有無を判断する。 1 申立理由7-1について 申立人は「給電システム」の範囲が実質的に何ら定まっていないと主張するが、本件発明3において「負荷への給電を行う給電システム」であること(発明特定事項3A)が特定されているため、本件発明3は、負荷に給電を行うために使用されるシステムの全体を指していると解され(本件発明4~6についても同様)、申立人が主張するように、「給電システム」の範囲を恣意的に設定又は解釈することはできない。 したがって、申立理由7-1には理由がない。 2 申立理由7-2aについて 申立人は、特許請求の範囲の記載によれば、「給電システム」は「負荷」を含まないと解されるが、本件明細書及び図面を参照すると「給電システム」は「負荷」を含むと解され、両者が整合しない旨、主張する。 確かに、本件明細書には「図6に示すように、本実施の形態における給電システムは、…(略)…分電盤300,…(略)…、及び負荷500-1~500-3を有する。」(【0034】)と記載されている。 しかしながら、上記記載はあくまで実施の形態を説明しているに過ぎず、本件発明は特許請求の範囲の記載どおりに解釈すべきものである。 そして、本件明細書及び図面の記載は、負荷が接続される位置を明確にするために、あえて負荷を含めたシステムとして記載していると解される。 そうすると、本件発明の「給電システム」は、特許請求の範囲の記載どおりに解釈すべきものであり、「負荷」は含まないことが明確である。 したがって、申立理由7-2aには理由がない。 3 申立理由7-2bについて 申立人は、本件発明の「給電システム」に「分電盤」が含まれるか明確でない旨、主張する。 本件発明には「前記給電システムは、…分電盤から枝分かれした複数の分岐部を備え」(発明特定事項3E)との発明特定事項があり、「複数の分岐部」はそれぞれが負荷への給電を行うと解されるから、その分岐元である「分電盤」も明らかに負荷への給電路となっていると解される。よって、「分電盤」が「給電システム」に含まれるのは明らかである。 したがって、申立理由7-2bには理由がない。 4 申立理由7-2cについて 申立人は、本件発明4及び6が明確でない旨、主張する。 しかしながら、請求項4に「前記制御装置は、地絡が発生したと判断した前記特定の分岐部に対応する遮断器に対し、遮断を指示する」と記載されていることから、当該「遮断器」は、地絡が発生した場合に給電を遮断する機能を有するものと解され、明らかに「負荷への給電を行う給電システム」(発明特定事項3A)の一部を成すと解される。 申立人の、「分岐部に対応する遮断器」が「分岐部」とは別に設けられた構成も含み得るとする解釈は、請求項4の記載を曲解したものであり、妥当な解釈とは認められない。 したがって、申立理由7-2cには理由がない。 5 申立理由7-3及び7-4について 本件発明の「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能し」(発明特定事項3B1、3B2、請求項5にも同様の記載有)との発明特定事項は、給電システムにおいて「中性点高抵抗を有する装置」が「一つのみ」備わること、及び、「装置」が「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」することを特定しており、明確である。 従来の地絡過電圧検出型の地絡検出器と制御装置とを備えるシステムとの構成上の差異は、本件発明の技術的範囲に当該従来システムが包含されるか否かの差に過ぎず、本件発明の明確性を左右するものではない。なお、当該従来システムは、「地絡検出器」の他に「中性点高抵抗を有する装置」が存在することを特段禁ずるものではない。 また、本件明細書に記載された種々の装置(負荷側装置、負荷、分電盤、遮断器)は、その機能及び明細書の文脈から明らかに「中性点高抵抗を有する装置」ではないと解される。本件発明の「装置」に相当するものは、(i)「中性点高抵抗」(【0025】)を備える「整流装置であるとともに、地絡過電圧検出型の地絡検出器でもある」「整流装置100」(【0026】)か、あるいは、(ii)「整流装置」が中性点高抵抗を備えない場合(【0027】)又は給電システムが整流装置を有さない場合の、当該システムに唯一設けられる「整流装置ではない地絡過電圧検出型の地絡検出器100」(【0027】)かのいずれかであると明確に理解できる。 したがって、申立理由7-3及び7-4には理由がない。 6 申立理由7-5について 申立人は、特許請求の範囲の記載から、「装置」と「電源」との関係が不明である旨、主張する。 特許請求の範囲の記載は、「装置」と「電源」とが同一の装置であるとも、別の装置であるとも特定するものではない。すなわち、本件発明の「給電システム」は、「装置」と「電源」とが同一の装置である態様と、別の装置である態様との双方を包含する形で特定されてる。 そして、「装置」と「電源」とが同一の装置である態様は、前記5の(i)の「整流装置100」であり、別の装置である態様は、前記5の(ii)の「唯一設けられる地絡過電圧検出型の地絡検出器」であると解される。 よって、申立理由7-5には理由がない。 7 申立人意見書における主張について 申立人は、本件発明の「中性点高抵抗」について、どの程度の抵抗値であれば「高抵抗」に該当するのか、あるいは「高抵抗」が何と比較して抵抗が高いことを意味しているのかが不明瞭である旨、主張する。(申立人意見書9~10頁) 上記主張は、申立書に記載した明確性要件違反の理由とは異なる新たな理由を主張するものであるから、採用しない。 8 明確性要件についての小括 以上のとおりであるから、申立理由7には理由がない。 第11 サポート要件についての判断 以下では、申立理由8についての理由の有無を判断する。 1 申立理由8-1について 前記第10、5のとおり、給電システムにおいて「中性点高抵抗を有する装置」が「一つのみ」備わること、及び、「装置」が「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」することが特定されており、本件発明の「装置」は、前記第10、5のとおり、本件明細書の記載から読み取れる(i)又は(ii)であると解される。 前記第10、5の(ii)における「地絡検出器100」は、中性点高抵抗を備えさえすれば、他にどのような機能を有しても構わないことが明らかであり、一方、本件発明の「装置」は、「地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」すること以外には、機能について限定されていない。 したがって、本件発明の「装置」は、本件明細書に記載したものであると認められ、申立理由8-1には理由がない。 2 申立理由8-2について 本件明細書の「給電線と大地との間に高抵抗を持つ装置であっても、それらが複数並列に接続されると、システム全体の対地抵抗は低下する。」(【0008】)との記載によれば、給電線と大地との間に高抵抗(中性点高抵抗)を持つ装置が、システム全体に1つしかないならば、そのような装置が複数並列に接続されることもないため、「対地抵抗を低下させることなく安全に地絡を検出することを可能とする」(【0009】)という、本件発明が解決すべき課題を解決できると認識される。 そして、本件発明は、「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え、当該装置が、地絡過電圧検出型の地絡検出器として機能」する(発明特定事項3B1、3B2、請求項5にも同様の記載有)と特定されているのだから、中性点高抵抗を有する装置が複数並列に接続される余地がなく、「対地抵抗を低下させることなく安全に地絡を検出することを可能とする」という課題を解決できると認識される。 申立人は、「給電システム」が「装置」及び「制御装置」以外のいかなる装置も含まない場合、上記課題を引き起こし得る「給電線と大地との間に高抵抗が複数並列に接続されると、システム全体の対地抵抗が低下する」との事情がそもそも存在せず、上記課題は自ずと生じないこととなる、と主張するが、これは正に、本件発明が課題を解決するための手段として「給電線と大地との間に中性点高抵抗を有する装置を一つのみ備え」るからに他ならない。 よって、申立理由8-2には理由がない。 3 サポート要件についての小括 以上のとおりであるから、申立理由8には理由がない。 第12 むすび 前記第4のとおり、本件訂正を認める。 前記第5のとおり、本件の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 前記第7~第11によれば、取消理由通知書1及び決定の予告に記載した取消理由並びに申立書に記載した申立理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700767

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