特許異議申立
2025-700808
二次電池およびその製造方法
- 審判番号
- 2025-700808
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-568643
- 登録番号
- 7631373
- 請求日
- 2025年08月08日
- 審決日
- 2025年11月05日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
- 【権利者代理人】飯田 雅人
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【異議申立人】中村 絵美
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7631373号発明「二次電池およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7631373号の請求項1-12に係る特許を維持する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7631373号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)9月27日(優先日 2020年9月28日 韓国、2020年9月28日 韓国、2021年9月23日 韓国)を国際出願日とする出願であって、令和7年2月7日にその特許権の設定登録がされ、令和7年2月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年8月8日に特許異議申立人中村 絵美(以下、異議申立人)という。)により、請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てがなされた。
第2 本件発明
特許第7631373号の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電極リードが結合された電極組立体と、
前記電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチと、
前記電極リードを囲むように前記パウチに備えられ、前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部と、を含み、
前記ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、
前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、
前記ガス透過フィルムは、熱可塑性樹脂からなり、
前記水分吸収物質は、水分を吸収する酸化物からなる、二次電池。
【請求項2】
前記ガス排出部は、前記電極リードと前記シール部との間に備えられる、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記ガス排出部は、前記シール部に備えられる、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記ガス排出部と前記シール部との間には、前記ガス排出部と前記シール部との間を密封する接着フィルムが設けられる、請求項2または3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記接着フィルムは、通気性を有する素材からなる、請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記接着フィルムは、前記ガス排出部が外部に露出しないように、前記ガス透過フィルムの外周面の全体を囲むように設けられる、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
電極リードが結合された電極組立体と、
前記電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチと、
前記電極リードを囲むように前記パウチに備えられ、前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部と、を含み、
前記ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、
前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、
前記ガス排出部は、前記電極リードと前記シール部との間に備えられ、または前記シール部に備えられ、
前記ガス排出部と前記シール部との間には、前記ガス排出部と前記シール部との間を密封する接着フィルムが設けられ、
前記接着フィルムは、通気性を有する素材からなり、
前記接着フィルムの通気性が、前記ガス透過フィルムの通気性より低い、二次電池。
【請求項8】
電極リードが結合された電極組立体と、
前記電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチと、
前記電極リードを囲むように前記パウチに備えられ、前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部と、を含み、
前記ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、
前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、
前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの外側面に設けられる、二次電池。
【請求項9】
前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部に含有されるように設けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
請求項1に記載の二次電池を製造する、二次電池の製造方法であって、
(a)上部ケースと下部ケースからなる前記パウチを準備するステップであって、前記上部ケースは、上部収容面と上部シール面からなり、前記下部ケースは、下部収容面と下部シール面からなるステップと、
(b)前記上部ケースと前記下部ケースとを対応させて配置した後、前記上部収容面と前記下部収容面とが連結されて形成される前記収容部に、前記電極リードが結合された前記電極組立体を配置するステップと、
(c)通気性を有する前記ガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収する前記水分吸収物質と、を含む前記ガス排出部であって、前記電極リードを囲むように配置された前記ガス排出部を製造するステップと、
(d)前記上部ケースの前記上部シール面と前記下部ケースの前記下部シール面との間に前記ガス排出部を配置するステップと、
(e)前記上部シール面と前記下部シール面とを熱融着して前記シール部を形成するステップと、を含み、
前記(c)ステップで、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの製造時に、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有される、二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記(d)ステップで、前記ガス排出部は、前記電極リードと対応する前記上部シール面と前記下部シール面との間に備えられる、請求項10に記載の二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記(c)ステップでガス排出部を製造した後、前記ガス排出部の外側に接着フィルムを付着する工程をさらに含む、請求項10または11に記載の二次電池の製造方法。」
第3 申立理由の概要
異議申立人の異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)
本件請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。
よって、請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)
本件請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
〔提出された証拠〕
甲第1号証:特開2017-33820号公報
第4 申立理由についての当審の判断
1 甲第1号証の記載
(1)甲第1号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)
「【0004】
このように袋状包装材料を使用したリチウムイオン二次電池は、例えば、図4に示すように、蓄電デバイス本体1、包装材料2、端子用樹脂フィルム3の三者を備えて構成されている。蓄電デバイス本体1の上下面には、この蓄電デバイス本体1より大面積の包装材料2が配置されており、蓄電デバイス本体1の周囲に延びた部位2aで包装材料2同士をヒートシールして密封している。包装材料2としては、空気や水分の透過を防止するため、アルミニウム箔の内面側に電気絶縁性の樹脂層を積層したものが通例である。
【0005】
そして、蓄電デバイス本体1は、それぞれ正負の集電体に接続した金属端子11を有しており、包装材料2同士の前記シール面から蓄電デバイスの外部に延出している。そして、この金属端子11とシール部2aとが交差する位置では、金属端子11の上下面と側面とを含む外周面の全周が端子用樹脂フィルムで覆われており、このため、金属端子11と包装材料2とが端子用樹脂フィルム3を介してシールされている。」
「【0014】
そこで、本発明は、密封性と絶縁性とを十分に確保できるにも拘わらず、その厚さ(総厚)を薄くすることができる端子用樹脂フィルムを提供することを目的とする。」
「【0028】
本発明に係る端子用樹脂フィルムはリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスに適用するものである。この蓄電デバイスは従来の蓄電デバイスと同様の構造を有している。すなわち、図4に示すように、蓄電デバイス本体1、包装材料2、端子用樹脂フィルム3の三者を備えて構成されており、蓄電デバイス本体1の上下面に配置した包装材料2を蓄電デバイス本体1の周囲で互いにシールして密封しているものである。そして、包装材料2の前記シール面から金属端子11が外部に延出しており、かつ、この金属端子11と包装材料2とが端子用樹脂フィルム3を介してシールされている。
【0029】
そして、端子用樹脂フィルム3は、熱融着性樹脂層31と、耐熱性絶縁層32とを備えて構成される必要がある。端子用樹脂フィルム3は、図1(a)に示すようにこの2層で構成されるものであってもよいし、図1(b)に示すようにこの2層に加えて、耐熱性絶縁層側に積層された包装材料用熱融着性樹脂層33を有する3層構造であってもよい。熱融着性樹脂層31は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着するものである。熱融着性樹脂層31が金属端子11の上下面及び側面に接着するため、端子用樹脂フィルム3は金属端子11の外周の全周を密封し、電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する。また、包装材料用熱融着性樹脂層33は包装材料2の内面に接着するものである。なお、両者を区別するため、以下、熱融着性樹脂層31を「端子用熱融着性樹脂層31」と呼ぶ。」
「【0058】
本発明に係る端子用樹脂フィルム3を使用して蓄電デバイスを製造する際には、まず、金属端子11の両面に端子用熱融着性樹脂層31が接するように端子用樹脂フィルム3を重ね、熱圧して接着する。端子用樹脂フィルム16と金属端子14との十分な密着性及び封止性を得るため、端子用熱融着性樹脂層31の融点以上の温度まで加熱して融着することが望ましい。もっとも、耐熱性絶縁層32の絶縁性を損なわない温度である必要がある。例えば、140~170℃である。
【0059】
こうして、金属端子11に端子用樹脂フィルム3を接着して得られるタブを図3に示す。この図から分かるように、端子用樹脂フィルム3は金属端子11の外周面の一部を覆って配置されており、しかも、その上下面と側面とを含む全周に渡って液密かつ気密に密封している。
・・・(中略)・・・。
【0061】
例えば、蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池の場合、正極用集電体としてアルミニウムが用いられ、負極用集電体として銅が用いられる。この場合、蓄電デバイス本体1の正極と接続される金属端子本体111の材料としては、アルミニウムを用いることが好ましい。また、電解液への耐食性を考慮すると、蓄電デバイス本体1の正極と接続される金属端子本体111の材料としては、例えば、1N30等の純度97%以上のアルミニウム素材を用いることが好適である。さらに、金属端子本体111を屈曲させる場合には、柔軟性を付加する目的で十分な焼鈍により調質したO材を用いることが好ましい。蓄電デバイス本体1の負極と接続される金属端子本体111の材料としては、表面にニッケルめっき層が形成された銅、もしくはニッケルを用いることが好ましい。
・・・(中略)・・・。
【0064】
次に、こうして端子用樹脂フィルム3を接着した金属端子11の一方の端部を蓄電デバイス本体1の集電体に電気的に接続し、包装材料2を上下に配置してヒートシールすることにより、蓄電デバイスを製造することができる。」
「【0073】
[図:0001430040000001.jpg]
」
「【0080】
実施例21は、三種三層構成の端子用樹脂フィルム3を使用したもので、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として融点145℃、MFRが6.0g/10minの酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32として融点145℃、MFRが5.5g/10minのポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとして平均粒径1μmのアルミナを10重量%混合した樹脂を用いたものである。」
「
[図:0001430040000002.jpg]
」
「
[図:0001430040000003.jpg]
」
「
[図:0001430040000004.jpg]
」
(2)甲第1号証の上記記載事項によれば、次のことがいえる。
ア 段落【0028】、図4によれば、甲第1号証には、蓄電デバイス本体1、包装材料2、端子用樹脂フィルム3を備えたリチウムイオン二次電池が記載されているといえる。
イ 段落【0061】によれば、蓄電デバイス本体1は、正極、負極を有する。
また、段落【0028】に「本発明に係る端子用樹脂フィルムはリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスに適用するものである。この蓄電デバイスは従来の蓄電デバイスと同様の構造を有している。」と記載され、段落【0005】に「蓄電デバイス本体1は、それぞれ正負の集電体に接続した金属端子11を有しており」と記載されていることから、蓄電デバイス本体1は、正極負極の集電体にそれぞれ接続した金属端子11を有する。
ウ 段落【0004】に「図4に示すように、・・・蓄電デバイス本体1の上下面には、この蓄電デバイス本体1より大面積の包装材料2が配置されており、蓄電デバイス本体1の周囲に延びた部位2aで包装材料2同士をヒートシールして密封している。」と記載され、段落【0005】に「蓄電デバイス本体1は、・・・金属端子11を有しており、包装材料2・・・から・・外部に延出している。そして、この金属端子11とシール部2aとが交差する」と記載され、さらに、段落【0028】に「図4に示すように、・・・、蓄電デバイス本体1の上下面に配置した包装材料2を蓄電デバイス本体1の周囲で互いにシールして密封しているものである。そして、包装材料2・・・から金属端子11が外部に延出しており」との記載によれば、包装材料2は、蓄電デバイス本体1の上下面に配置され、金属端子11を外部に延出させ、蓄電デバイス本体1の周囲に延びたシール部2aを有するといえる。
そして、図4によれば、包装材料2は、蓄電デバイス本体1を収容する部分と、該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2aとから構成されることが見て取れる。
エ 段落【0029】によれば、端子用樹脂フィルム3は、金属端子11の外周の全周を密封し、電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する。
また、段落【0028】の「金属端子11と包装材料2とが端子用樹脂フィルム3を介してシールされている。」との記載、及び、図4によれば、端子用樹脂フィルム3は、金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置されているといえる。
オ 段落【0029】によれば、端子用樹脂フィルム3は、端子用熱融着性樹脂層31と、耐熱性絶縁層32と、包装材料用熱融着性樹脂層33とを備える。
また、同【0029】によれば、端子用熱融着性樹脂層31は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着し、包装材料用熱融着性樹脂層33は包装材料2の内面に接着する。
そして、図1、図2によれば、耐熱性絶縁層32は端子用熱融着性樹脂層31上に積層され、包装材料用熱融着性樹脂層33は耐熱性絶縁層32上に積層される。
カ 段落【0080】によれば、実施例21として、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用いたの端子用樹脂フィルム3が記載されている。
段落【0073】の【表1】によれば、実施例21の端子用樹脂フィルム3の総厚t3は60μm、端子用熱融着性樹脂層31の厚さt31は30μm、耐熱性絶縁層32の厚さt32は20μmであることが記載されている。
キ 上記アないしカによれば、甲第1号証の実施例21の端子用樹脂フィルム3に基づく次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「正極、負極、及び、正極負極の集電体にそれぞれ接続した金属端子11を有する蓄電デバイス本体1と、
蓄電デバイス本体1の上下面に配置され、金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分と、該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2aとを構成する包装材料2と、
金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され、金属端子11の外周の全周を密封し、電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3とを含み、
端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、
端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い、端子用樹脂フィルム3の総厚t3が60μm、端子用熱融着性樹脂層31の厚さt31が30μm、耐熱性絶縁層32の厚さt32が20μmである、
リチウムイオン二次電池。」
2 申立理由1(新規性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「金属端子11」は、本件発明1の「電極リード」に相当する。
また、甲1発明の「蓄電デバイス本体1」は、「正極、負極」を組み立てたものといえるから、本件発明1の「電極組立体」に相当する。
してみれば、甲1発明の「正極、負極、及び、正極負極の集電体にそれぞれ接続した金属端子11を有する蓄電デバイス本体1」は、本件発明1の「電極リードが結合された電極組立体」に相当する。
(イ)甲1発明の包装材料2における「金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分」は、本件発明1の「電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部」に相当する。
また、甲1発明の包装材料2における「該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2a」は、本件発明1の「収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部」に相当する。
よって、甲1発明の「蓄電デバイス本体1の上下面に配置され、金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分と、該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2aとを構成する包装材料2」は、本件発明1の「電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「端子用樹脂フィルム3」は「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され」、さらに、「端子用樹脂フィルム3」を構成する「包装材料用熱融着性樹脂層33」は「包装材料2の内面に接着する」ことから、「端子用樹脂フィルム3」は「包装材料2」に備えられているといえる。
してみると、甲1発明の「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され、金属端子11の外周の全周を密封」する「端子用樹脂フィルム3」と本件発明1の「ガス排出部」とは、「電極リードを囲むように前記パウチに備えられた所定部材」である点では共通するといえる。
ただし、該所定部材に関し、本件発明1は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記ガス透過フィルムは、熱可塑性樹脂からなり、前記水分吸収物質は、水分を吸収する酸化物からなる」のに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」ている点で相違する。
(エ)甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、本件発明1の「二次電池」に相当する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)により、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「電極リードが結合された電極組立体と、
前記電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチと、
前記電極リードを囲むように前記パウチに備えられた所定部材と、を含む、二次電池。」
(相違点1)
所定部材に関し、本件発明1は「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記ガス透過フィルムは、熱可塑性樹脂からなり、前記水分吸収物質は、水分を吸収する酸化物からなる」のに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」ている点。
イ 相違点に対する判断
(ア)甲1発明の「端子用熱融着性樹脂層31」は「酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)」を用い、「耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)」を用いているところ、一般に、二次電池の外装材に利用されるポリプロピレン樹脂は、他の樹脂と比較してガス透過性が低いことは普通に知られている。(例えば、特開2003-288883号公報の段落【0009】、特開平9-63550号公報の段落【0025】、国際公開第2018-110067号の段落[0053]、国際公開第2019/044615号の段落[0020]を参照)
(イ)そして、甲1発明における「端子用熱融着性樹脂層31」、「耐熱性絶縁層32」及び「包装材料用熱融着性樹脂層33」から構成される「端子用樹脂フィルム3」は、「空気及び水分の透過を防止する」ものであって、甲第1号証の段落【0014】によれば、「端子用樹脂フィルム」は「密封性と絶縁層とを十分に確保できる」ものである。
(ウ)さらに、ポリプロピレン等の高分子のガス透過性又はガスバリア性は、高分子の主鎖と側鎖の化学構造、結晶化度、分子量、重合度等により調整可能であることも技術常識(例えば、特開2014-510099号公報の段落【0951】、総説 パッケージ用プラスチックとガスバリア機能、Gas Barrier Properties of Plastic Products for Packaging Applications 永井一清、日本印刷学会誌、第52巻第2号、2015年、152頁の左欄の「3,高分子材料のガス透過挙動」、[2025年10月10日検索]、インターネット <URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nig/52/2/52_149/_pdf/-char/ja>)であり、「ポリプロピレン樹脂」だからといって、ただちにガス透過性(通気性)があるとはいえない。
(エ)してみると、甲第1号証には、「端子用樹脂フィルム3」にガス透過性を付与するためにその構成材料である「ポリプロピレン樹脂」を調整することは記載されておらず、そもそも「包装材料2」の内部から外部へガスを排出することすら記載されていない。まして、甲1発明における「端子用樹脂フィルム3」は「空気」「の透過を防止する」ものであることも鑑みれば、該「端子用樹脂フィルム3」が「包装材料2」の内部から外部へガスを排出するとは必ずしもいえない。
よって、相違点1は実質的な相違であり、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。
ウ 異議申立人の主張について
(ア)異議申立人は異議申立書において、概略次のように主張している。
甲第1号証の実施例21、24及び29に記載された端子用樹脂フィルムにおいて、各層の形成に使用されているポリプロピレン樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)などのポリプロピレンが、気体透過性(通気性)を有することは自明である。
また、甲第1号証の実施例21、24 、29に記載された端子用樹脂フィルムは、ポリプロピレン樹脂(PP)などの熱可塑性樹脂からなり、フィラーとして含まれるアルミナ、シリカは、水分を吸着する酸化物である。
さらに、甲第1号証の実施例21、24、29に記載された端子用樹脂フィルムにおいて、耐熱性絶縁層32又は包装材料用熱融着性樹脂層33には、フィラを混合した樹脂が使用されているから、水分吸収物質は、 これらの層の内部の全体に含有されることは明らかである。
従って、本件発明1と甲第1号証に記載されたリチウムイオン二次電池との間に相違点はない。(29頁14ないし23行)
(イ)上記主張について検討する。
a 上記イで検討したように、一般に、二次電池の外装材に利用されるポリプロピレン樹脂は、他の樹脂と比較してガス透過性が低いことは普通に知られており、甲1発明における「端子用樹脂フィルム3」は、「空気及び水分の透過を防止する」ものであって、高分子のガス透過性は、高分子の主鎖と側鎖の化学構造、結晶化度、分子量、重合度等により調整可能であり、「ポリプロピレン樹脂」だからといって、ただちにガス透過性(通気性)があるとはいえないこと等を総合的に勘案すれば、甲1発明における「端子用樹脂フィルム3」が「包装材料2」の内部から外部へガスを排出するものとは必ずしもいえない。
b また、異議申立人は、ポリプロピレンが、気体透過性(通気性)を有することは自明である旨主張するにとどまり、甲1発明において、「端子用樹脂フィルム3」により「包装材料2」内部からガスを外部へ排出されていることを裏付ける証拠は何等提出していない。
c 以上から、異議申立人の上記(ア)の主張は採用できない。
エ 小括
以上から、本件発明1と甲1発明とは相違点を有するものであるから、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)本件発明2ないし6、10ないし12について
請求項2ないし6、10ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし6、10ないし12は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし6、10ないし12は甲第1号証に記載された発明ではない。
(3)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「金属端子11」は、本件発明7の「電極リード」に相当する。
また、甲1発明の「蓄電デバイス本体1」は、「正極、負極」を組み立てたものといえるから、本件発明7の「電極組立体」に相当する。
してみれば、甲1発明の「正極、負極、及び、正極負極の集電体にそれぞれ接続した金属端子11を有する蓄電デバイス本体1」は、本件発明7の「電極リードが結合された電極組立体」に相当する。
(イ)甲1発明の包装材料2における「金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分」は、本件発明7の「電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部」に相当する。
また、甲1発明の包装材料2における「該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2a」は、本件発明7の「収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部」に相当する。
よって、甲1発明の「蓄電デバイス本体1の上下面に配置され、金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分と、該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2aとを構成する包装材料2」は、本件発明7の「電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「端子用樹脂フィルム3」は「金属端子11と包装材料2 のシール部2aとの間に配置され」、さらに、「端子用樹脂フィルム3」を構成する「包装材料用熱融着性樹脂層33」は「包装材料2の内面に接着する」ことから、「端子用樹脂フィルム3」は「包装材料2」に備えられているといえる。
してみると、甲1発明の「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され、金属端子11の外周の全周を密封」する「端子用樹脂フィルム3」と本件発明7の「ガス排出部」とは、「電極リードを囲むように前記パウチに備えられ」、「電極リードと前記シール部との間に備えられた所定部材」である点では共通するといえる。
ただし、該所定部材に関し、本件発明7は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記ガス排出部は、前記電極リードと前記シール部との間に備えられ、または前記シール部に備えられ」るのに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」、「端子用樹脂フィルム33」は「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され」ている点で相違する。
(エ)本件発明7は、「前記ガス排出部と前記シール部との間には、前記ガス排出部と前記シール部との間を密封する接着フィルムが設けられ、前記接着フィルムは、通気性を有する素材からなり、前記接着フィルムの通気性が、前記ガス透過フィルムの通気性より低い」のに対し、甲1発明は、「端子用樹脂フィルム3」と「包装材料2のシール部2a」との間に、「端子用樹脂フィルム3」と「包装材料2のシール部2a」との間を密封するためのフィルムは設けられておらず、「端子用樹脂フィルム3」を構成する「包装材料用熱融着性樹脂層33」が「包装材料2の内面に接着」している点で相違する。
(オ)甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、本件発明1の「二次電池」に相当する。
(カ)上記(ア)ないし(オ)により、本件発明7と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「電極リードが結合された電極組立体と、
前記電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチと、
前記電極リードを囲むように前記パウチに備えられた所定部材と、を含み、
シール部に接着フィルムが設けられる、
二次電池。」
(相違点2)
所定部材に関し、本件発明7は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記ガス排出部は、前記電極リードと前記シール部との間に備えられ、または前記シール部に備えられ」るのに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」、「端子用樹脂フィルム33」は「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され」ている点。
(相違点3)
本件発明7は、「前記ガス排出部と前記シール部との間には、前記ガス排出部と前記シール部との間を密封する接着フィルムが設けられ、前記接着フィルムは、通気性を有する素材からなり、前記接着フィルムの通気性が、前記ガス透過フィルムの通気性より低い」のに対し、甲1発明は、「端子用樹脂フィルム3」と「包装材料2のシール部2a」との間に、「端子用樹脂フィルム3」と「包装材料2のシール部2a」との間を密封するためのフィルムは設けられておらず、「端子用樹脂フィルム3」を構成する「包装材料用熱融着性樹脂層33」が「包装材料2の内面に接着」している点。
イ 相違点に対する判断
相違点2における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点は、相違点1における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点と同じである。
してみると、上記(1)イで述べた理由と同様に、相違点2は実質的な相違であるから、本件発明7は甲1発明であるとはいえない。
ウ 小括
よって、本件発明7と甲1発明とは少なくとも実質的な相違である相違点2を有するものであるから、請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(4)本件発明8について
ア 対比
本件発明8と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「金属端子11」は、本件発明8の「電極リード」に相当する。
また、甲1発明の「蓄電デバイス本体1」は、「正極、負極」を組み立てたものといえるから、本件発明8の「電極組立体」に相当する。
してみれば、甲1発明の「正極、負極、及び、正極負極の集電体にそれぞれ接続した金属端子11を有する蓄電デバイス本体1」は、本件発明8の「電極リードが結合された電極組立体」に相当する。
(イ)甲1発明の包装材料2における「金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分」は、本件発明8の「電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部」に相当する。
また、甲1発明の包装材料2における「該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2a」は、本件発明8の「収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部」に相当する。
よって、甲1発明の「蓄電デバイス本体1の上下面に配置され、金属端子11を外部に延出させるとともに蓄電デバイス本体1を収容する部分と、該収容する部分の周囲に形成され、該収容する部分を密封するシール部2aとを構成する包装材料2」は、本件発明8の「電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「端子用樹脂フィルム3」は「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され」、さらに、「端子用樹脂フィルム3」を構成する「包装材料用熱融着性樹脂層33」は「包装材料2の内面に接着する」ことから、「端子用樹脂フィルム3」は「包装材料2」に備えられているといえる。
してみると、甲1発明の「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され、金属端子11の外周の全周を密封」する「端子用樹脂フィルム3」と本件発明8の「ガス排出部」とは、「電極リードを囲むように前記パウチに備えられる所定部材」である点では共通するといえる。
ただし、該所定部材に関し、本件発明8は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの外側面に設けられる」のに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」ている点で相違する。
(オ)甲1発明の「リチウムイオン二次電池」は、本件発明8の「二次電池」に相当する。
(カ)上記(ア)ないし(オ)により、本件発明8と甲1発明とは、次の一致点、相違点を有しているものと認められる。
(一致点)
「電極リードが結合された電極組立体と、
前記電極リードの先端が外部に引き出された状態で前記電極組立体を収容する収容部、および前記収容部の縁に沿って形成され、前記収容部を密封するシール部を備えたパウチと、
前記電極リードを囲むように前記パウチに備えられた所定部材と、を含む、
二次電池。」
(相違点4)
所定部材に関し、本件発明8は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの外側面に設けられる」のに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」ている点。
イ 相違点に対する判断
相違点4における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点は、相違点1における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点と同じである。
してみると、上記(1)イで述べた理由と同様に、相違点4は実質的な相違であるから、本件発明8は甲1発明であるとはいえない。
ウ 小括
よって、本件発明8と甲1発明とは実質的な相違である相違点4を有するものであるから、請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(5)本件発明9について
請求項9は、請求項1又は請求項7を引用する請求項であり、本件発明9は、本件発明1又は本件発明7の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1又は本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明9は甲第1号証に記載された発明ではない。
(6)まとめ
以上のとおり、請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるということはできないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
したがって、請求項1ないし12に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
3 申立理由2(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
上記2(1)アで検討したように、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点1)
所定部材に関し、本件発明1は「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記ガス透過フィルムは、熱可塑性樹脂からなり、前記水分吸収物質は、水分を吸収する酸化物からなる」のに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」ている点。
イ 相違点に対する判断
甲第1号証には、密封性と絶縁性とを十分に確保できるにも拘わらず、その厚さ(総厚)を薄くすることができる端子用樹脂フィルムを提供するという課題(段落【0014】を参照。)を解決するために、端子用樹脂フィルムを、熱融着性樹脂層31と、耐熱性絶縁層32とを備えて構成し、耐熱性絶縁層32の厚さを、端子用熱融着性樹脂層31の厚さ以下、かつ、端子用熱融着性樹脂層31の厚さの0.1倍以上とし、端子用樹脂フィルムの総厚を15μm以上とすることが記載されており(段落【0016】、【0026】、【0029】、【0031】、【0099】を参照。)、甲1発明では、「端子用樹脂フィルム3の総厚t3が60μm、端子用熱融着性樹脂層31の厚さt31が30μm、耐熱性絶縁層32の厚さt32が20μm」である。
また、甲第1号証には、密封された包装材料2内部で発生したガスに係る記載や示唆は見当たらないところ、甲第1号証の段落【0014】の「密封性と絶縁性とを十分に確保できる・・・端子用樹脂フィルム」、段落【0029】の「端子用樹脂フィルム3は金属端子11の外周の全周を密封し、電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する」、同段落【0059】の「端子用樹脂フィルム3は金属端子11の外周面の一部を覆って配置されており、しかも、その上下面と側面とを含む全周に渡って液密かつ気密に密封している。」との各記載(なお、下線は当審が付与。)からすれば、甲1発明の「端子用樹脂フィルム3」は気体の透過を防止するものであるといえる。
してみると、甲1発明の「端子用樹脂フィルム3」を、密封された包装材料3の内部から外部へガスを排出させる機能を備えた構成とすることの動機付けはなく、むしろ阻害要因があるというべきである。
よって、甲1発明において、相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 異議申立人の主張について
(ア)異議申立人は異議申立書において、概略次のように主張している。
本件発明1-12は、甲第1号証に記載された発明と同一である。仮に何らかの点で相違するとしても、当該相違点は、当業者にとって設計的事項に過ぎない
従って、 本件発明1-12は、甲第1号証に記載された発明に対して、進歩性を備えておらず、取り消されるべきものである。(37頁18~21行)
(イ)上記主張について検討する。
上記イで検討したように、甲1発明の「端子用樹脂フィルム3」を、密封された包装材料3の内部から外部へガスを排出させる機能を備えた構成とすることの動機付けはなく、むしろ阻害要因があるというべきであるから、甲1発明において、相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、異議申立人の主張(ア)は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2ないし6、10ないし12について
請求項2ないし6、10ないし12は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし6、10ないし12は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし6、10ないし12は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)本件発明7について
ア 対比
上記2(3)アで検討したように、本件発明1と甲7発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点2)
所定部材に関し、本件発明7は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記ガス排出部は、前記電極リードと前記シール部との間に備えられ、または前記シール部に備えられ」るのに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」、「端子用樹脂フィルム33」は「金属端子11と包装材料2のシール部2aとの間に配置され」ている点。
(相違点3)
本件発明7は、「前記ガス排出部と前記シール部との間には、前記ガス排出部と前記シール部との間を密封する接着フィルムが設けられ、前記接着フィルムは、通気性を有する素材からなり、前記接着フィルムの通気性が、前記ガス透過フィルムの通気性より低い」のに対し、甲1発明は、「端子用樹脂フィルム3」と「包装材料2のシール部2a」との間に、「端子用樹脂フィルム3」と「包装材料2のシール部2a」との間を密封するためのフィルムは設けられておらず、「端子用樹脂フィルム3」を構成する「包装材料用熱融着性樹脂層33」が「包装材料2の内面に接着」している点。
イ 相違点に対する判断
相違点2における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点は、相違点1における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点と同じである。
してみると、上記(1)イで述べた理由と同様に、甲1発明において、相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得ことはいえない。
ウ 小括
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(4)本件発明8について
ア 対比
上記2(4)アで検討したように、本件発明8と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点4)
所定部材に関し、本件発明8は、「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」であり、「ガス排出部は、前記収容部の内部のガスを外部に排出する通気性を有するガス透過フィルムと、前記ガス透過フィルムを通過する水分を吸収して前記パウチの外部から内部への水分の流入を遮断する水分吸収物質と、を含み、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの内部の全体に含有され、前記水分吸収物質は、前記ガス透過フィルムの外側面に設けられる」のに対し、甲1発明は、「電解液の漏液や空気及び水分の透過を防止する端子用樹脂フィルム3」であり、「端子用樹脂フィルム3は、熱圧によって金属端子11の上下面及び側面に接着する端子用熱融着性樹脂層31と、端子用熱融着性樹脂層31上に積層される耐熱性絶縁層32と、耐熱性絶縁層32上に積層され、包装材料2の内面に接着する包装材料用熱融着性樹脂層33とを備えて構成され、端子用熱融着性樹脂層31及び包装材料用熱融着性樹脂層33として酸変性ポリプロピレン樹脂(変性PP)を用い、耐熱性絶縁層32としてポリプロピレン樹脂(PP)に、フィラーとしてアルミナを混合した樹脂を用い」ている点。
イ 相違点に対する判断
相違点4における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点は、相違点1における「前記パウチの内部から外部へのガスは排出し、前記パウチの外部から内部への水分の流入は遮断するガス排出部」である点と同じである。
してみると、上記(1)イで述べた理由と同様に、甲1発明において、相違点4に係る構成とすることは当業者が容易になし得ことはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(5)本件発明9について
請求項9は、請求項1又は請求項7を引用する請求項であり、本件発明9は、本件発明1又は本件発明7の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1又は本件発明7についての判断と同様の理由により、本件発明9は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(6)まとめ
以上のとおり、請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ない12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700808