審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-700773

結合組織体形成用構造体および結合組織体の形成方法

審判番号
2025-700773
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-061894
登録番号
7622944
請求日
2025年07月28日
審決日
2025年10月02日
公報発行日
2025年11月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】古河電気工業株式会社
  • 【権利者代理人】来間 清志
  • 【権利者代理人】齋藤 拓也
  • 【権利者】国立大学法人北海道大学
  • 【権利者代理人】来間 清志
  • 【権利者代理人】齋藤 拓也
  • 【異議申立人】原口 正和
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 正章
  • 審判官 栗山 卓也
  • 審判官 三森 雄介
分類
P1651.121-Y (A61F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7622944号発明「結合組織体形成用構造体および結合組織体の形成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7622944号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7622944号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2021-61894号)は、令和 3年 3月31日の出願であって、令和 7年 1月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行された。 その後、同年 7月28日に特許異議申立人原口正和(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の板部材と、 前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材と、 を備える結合組織体形成用構造体であって、 各板部材は、対向する2つの短辺である第1辺と、対向する2つの長辺である第2辺とで区画形成される長方形、または当該長方形の角部が面取りされた形状の平面形状を有し、 前記複数の離間部材は、前記複数の板部材の側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板部材の少なくとも2つの第1辺側の側縁部に設けられ、かつ前記長方形の2本の対角線上、及び前記2つの第2辺の少なくとも一方と前記2本の対角線とで囲まれた領域に位置せず、 前記複数の離間部材の間に開口部が形成され、 前記開口部のうち、前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口部が、最長であることを特徴とする結合組織体形成用構造体。 【請求項2】 前記板部材は、前記第1辺側の側縁部と、前記第2辺側の側縁部とを連結する角部が面取りされている、請求項1に記載の結合組織体形成用構造体。 【請求項3】 前記離間部材は、前記板部材の前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部にさらに設けられ、かつ、前記少なくとも一方の第2辺側の側縁部に設けられる前記離間部材は、前記中央領域を挟んで位置する両側方領域に設けられる、請求項1または2に記載の結合組織体形成用構造体。 【請求項4】 前記離間部材は、前記板部材の前記2つの第2辺側の側縁部にさらに設けられ、かつ、前記2つの第2辺側の側縁部に設けられる前記離間部材は、いずれも前記中央領域を挟んで位置する両側方領域に設けられる、請求項1または2に記載の結合組織体形成用構造体。 【請求項5】 前記離間部材は、対向離間させた状態で保持する前記2つの板部材のうちの少なくとも一方の板部材に一体形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の結合組織体形成用構造体。 【請求項6】 前記離間部材は、対向離間させた状態で保持する前記2つの板部材とは別体で形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の結合組織体形成用構造体。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載の結合組織体形成用構造体を、ヒト以外の生体内に挿入して埋植する工程(S-1)と、 前記生体内に埋植した前記結合組織体形成用構造体の前記2つの板部材の対向表面の間に結合組織体を形成する工程(S-2)と、 前記結合組織体を形成した前記結合組織体形成用構造体を前記生体内から取り出す工程(S-3)と を有することを特徴とする結合組織体の形成方法。 【請求項8】 前記工程(S-1)の前に、前記結合組織体形成用構造体を挿入可能な挿入部を前記ヒト以外の生体に設ける工程(S-A)をさらに有し、 前記工程(S-1)では、前記結合組織体形成用構造体を前記挿入部から挿入して埋植する、請求項7に記載の結合組織体の形成方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 令和 7年 7月28日に申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に例示される周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2014-30598号公報 甲第2号証: Takayuki Kawashima,外8名,“Aortic valve neocuspidization with in-body tissue-engineered autologous membranes: preliminary results in a long-term goat model”,p.969-977,[online],05 February 2021,Interactive CardioVascular and Thoracic Surgery,[令和7年7月25日検索],インターネット<https://academic.oup.com/icvts/article/32/6/969/6128921>及び訳文 甲第3号証: Osamu Sakai,外6名,“Development of the Wing-Attached Rod for Acceleration of ‘Biotube’ Vascular Grafts Fabrication In Vivo.”,p.240-247,[online],4 April 2007,Journal of Biomedical Materials Research Part B. Applied Biomaterials 83B:,[令和7年7月25日検索],インターネット<https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jbm.b.30789>及び訳文 甲第1号証~甲第3号証を、以下「甲1」~「甲3」という。 第4 甲各号証の記載事項及び甲1発明 1 甲1について (1)甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。 ア 「【0028】 図1に示すように、膜状結合組織体形成用基材1は、生体組織材料の存在する環境に配置して、人工の心膜や硬膜、皮膚、弁膜、角膜などとして用いる膜状の結合組織体を基材表面に形成するためのものであり、2枚の板状基材2a、2bを互いに間隔をあけて設けてなり、膜状結合組織体の両面を基材表面に合わせて形成するよう、2枚の板状基材2a、2bの互いに対向する二面が結合組織を形成する結合組織形成面3とされる。 【0029】 板状基材2a、2bは、わずかに湾曲した同一形状の長方形板とされ、互いに中央部の板厚方向に平行移動した位置関係に配置されて、四隅の結合部4を介して互いに分解可能に一体化されている。結合部4は、小径の円柱状とされ、その長さを適宜設定することにより、結合組織形成面3の間隔である板状基材2a、2bの純間隔aが設定され、さらに、この結合部4を切断することにより、板状基材2a、2bを互いに分解可能とする。」 イ 「【0048】 なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、膜状結合組織体形成用基材1は、板状基材2a、2bの四隅に結合部4を設けて、結合組織が侵入する開口を四辺に設けた構造であるが、このように、四辺の全てに開口を設けたものに限らず、四辺のうちの少なくとも一辺に開口を設けたものであればよい。」 ウ 図1「 [図:0001429049000001.jpg] 」 エ 図1から、四隅の結合部4は、長方形板である2枚の板状基材2a、2bの対角線上にあって、板状基材2a、2bの側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板状基材2a、2bの少なくとも2つの短辺側の側縁部に設けられており、また、当該結合部4間に開口(上記イ参照)が形成され、当該開口のうち、2つの長辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の長辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口が最長であることが看取される。 (2)甲1発明 上記(1)ア~エを総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「わずかに湾曲した同一形状の長方形板とされた2枚の板状基材2a、2bが互いに中央部の板厚方向に平行移動した位置関係に配置されて、互いに間隔をあけて設けられ、板状基材2a、2bに設けた四隅の結合部4を介して一体化されてなり、 四隅の結合部4は、小径の円柱状とされ、2枚の板状基材2a、2bの対角線上にあって、板状基材2a、2bの側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板状基材2a、2bの少なくとも2つの短辺側の側縁部に設けられ、 結合組織が侵入する開口を四辺の当該結合部4間に設けた構造であり、 当該開口のうち、2つの長辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の長辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口が最長である、 膜状結合組織体形成用基材1。」 2 甲2について 甲2には、以下の記載がある。 「OBJECTIVES: Aortic valve neocuspidization has shown satisfactory clinical outcomes; however, autologous pericardium durability is a concern for young patients. This study applied an autologous collagenous membrane (Biosheet R), produced by in-body tissue architecture, to aortic valve neocuspidization and investigated its long-term outcome in a goat model. METHODS: Moulds were embedded subcutaneously in 6 goats. After 2 months, Biosheets formed in the moulds.・・・ RESULTS: All animals survived the scheduled period. At 6 months, Biosheets maintained valve function and showed a regeneration response:fusion to the annulus, cell infiltration to the leaflets and appearance of elastic fibres at the ventricular side.」(969ページ下段~970ページ上段) (訳文)「目的:大動脈弁の再構築(ネオカスピダイゼーション)は良好な臨床成績を示しているが、自家心膜の耐久性は若年患者にとって懸念材料である。本研究では、体内組織工学(in-body tissue architecture)によって作製した自家性のコラーゲン膜「Biosheet(登録商標)」を大動脈弁の再構築に応用し、ヤギモデルでその長期的転帰を評価した。 方法:6頭のヤギの皮下に金型(モールド)を埋め込み、2か月後にモールド内でBiosheetを形成させた。・・・ 結果:すべての動物が予定期間を生存した。6か月後、Biosheetは弁機能を維持し、再生反応が確認された:弁輪との癒着、弁尖への細胞浸潤、心室側での弾性線維の出現。」 「Production of Biosheet The moulds were assembled by inserting a silicone tube (outer diameter, 16.5mm; length, 70mm) with an acryl rod into an acryl or stainless-steel pipe (outer diameter, 19mm; inner diameter 18mm; length, 70mm) with many parallel- or alternating-pattern slits (Fig. 1A).Both ends were fixed with cap parts so that the tube was placed at the centre. The gap between the tube and the pipe was 0.5, 0.75, 0.85, 1.0 or 1.50mm [8]. The moulds were embedded in the abdominal subcutaneous pouches of 6 adult Saanen goats (12months or older; weight, 33-50 kg; 3-7 moulds per animal) under anaesthesia by induction with 2mg/kg of ketamine and maintained with 2-3% sevoflurane (Fig. 1B). After about 2months, the moulds were harvested, and the tubular tissues formed in the moulds were extracted and dried overnight. Biosheets (5×7 cm) were obtained by cutting the tubular tissues in the longitudinal direction and stored in 70% ethanol solution.」(970ページ右欄) (訳文)「Biosheetの作製:モールドは、シリコーンチューブ(外径16.5mm、長さ70mm)にアクリルロッドを挿入し、それをアクリルまたはステンレス製のパイプ(外径19mm、内径18mm、長さ70mm)内に配置することで組み立てられた。このパイプには多数の平行または交互パターンのスリットが施されていた(図1A )。両端はキャップ部品で固定され、チューブが中心に配置される構造とした。チューブとパイプの間の隙間は0.5、0.75、0.85、1.0、1.50mmのいずれかとした[8]。モールドは、6頭の成体サーネン種ヤギ(12か月齢以上、体重33-50kg、1頭あたり3~7個のモールド)に対し、腹部皮下ポーチに埋め込まれた。麻酔はケタミン2mg/kgによる導入後、2~3%セボフルランで維持された(図1B)。約2か月後にモールドを摘出し、モールド内に形成された管状組織を取り出し、一晩乾燥させた。管状組織を縦方向に切開することで、5×7cmのBiosheetを得た。これらは70%エタノール溶液中で保存された。」 「RESULTS We embedded 32 moulds in 6 goats, and the Biosheets were successfully obtained from all moulds about 2 months later. The implantable Biosheets were determined based on the OCT measurement; the mean thickness of the Biosheet used for AVNeo was 0.340 (0.283-0.374) mm. Acrylic moulds were used for the first animal; however, because the deformation of the mould during embedding caused a large variation in the thickness of the sheets, stainless-steel moulds were applied for the remaining 5 animals. Biosheets made from moulds with a 1-mm gap were used for the first 3 animals, which were expected to survive for 6 months. Those made from moulds with a 0.75-mm gap were used for the remaining 3 animals to obtain more flexibility and lower Vmax, which were expected to survive for 12 months. There was no significant difference in thickness between those Biosheets」(972ページ左欄) (訳文)「結果(RESULTS) 6頭のヤギに計32個のモールドを埋め込み、約2か月後、すべてのモールドからBiosheetの作製に成功した。AVNeoに使用されたBiosheetの厚さは、OCT測定に基づき選定され、中央値は0.340(0.283-0.374)mmであった。初回の1頭にはアクリルモールドを使用したが、埋設中に変形してシートの厚みにばらつきが生じたため、残りの5頭にはステンレス製モールドを使用した。6か月生存を想定した最初の3頭には1.0mmギャップのモールドで作製されたBiosheetを用い、より柔軟性と低Vmaxを得るために、12か月生存を想定した残り3頭には0.75mmギャップのモールドで作製されたBiosheetを用いた。これらの間に厚さの有意差はなかった」 「 [図:0001429049000002.jpg] Figure1(B)」 3 甲3について 甲3には、以下の記載がある。 「Our purpose in this study is to develop larger Rolled Biotubes with thick and strong walls in a short period, which can be applied for middle- or large-caliber vascular grafts (>10 mm in diameter). To this end, a novel tissue rolling technique with two-step IBTI process was attempted. As a mold, a wing-attached rod was specially designed. The mold consists of two parts, a rod for preparation of the core tubular tissue and a wing to provide membranous tissues for rolling.」(241ページ左欄~右欄) (訳文)「本研究の目的は、中~大口径の血管グラフト(直径10mm以上)に適用可能な、厚くて強靭な壁構造を持つより大型のロールド・バイオチューブ(Rolled Biotube)を短期間で開発することである。そのために、二段階のIBTIを用いた新たなティッシュ・ローリング技術を試みた。使用するモールドには、「翼付きロッド」を特別に設計した。このモールドは、中心チューブ組織を作るロッド部分と、ロール用の膜状組織を供給する翼部分の2つの構成要素からなる。」 「Mold Design For the new wing-attached rod mold, a silicone rod (3 mm in diameter, 23 mm in length, Tigers Polymer Co. Ltd., Osaka, Japan) and a poly(ethylene terephthalate) (PET) film (23 mm in length, 19 mm in width, 0.1 mm in thickness, Toray Co. Ltd., Tokyo, Japan) were assembled (Hi-Lex Co., Hyogo, Japan). The silicone rod was partly connected with one PET film as a wing at both its ends by silicone glue (Figure 1). The space between the silicone rod and the PET film was set to 0.5 mm.」(241ページ右欄) (訳文)「モールドの設計 新たに設計した翼付きロッド型モールドは、以下の構成で組み立てた:シリコーンロッド(直径3mm,長さ23mm タイガースポリマー株式会社、大阪),ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(長さ23mm、幅19mm、厚さ0.1mm 東レ株式会社、東京),組立:上記2つを組み立てた(Hi-Lex株式会社、兵庫)。シリコーンロッドの両端にPETフィルム(翼)をシリコーン接着剤で部分的に接続し(図1参照)、シリコーンロッドとPETフィルムの間には0.5mmの間隔を設けた。」 「After 2 weeks of embedding (primary IBTI), the molds were harvested with their surrounding tissue capsules [Figure 2(A)]. The PET film was separated from the silicone rod and pulled out from the tissues [Figure 2(B)]. The membranous tissues formed around the PET film were rolled up and laminated on the core tubular tissue formed around the silicone rod [Figure 2(C)]. The rolled tissue was tied from the outside using 4-0 silk threads (Alfresa Pharma Co., Osaka, Japan) [Figure 2(D)] and reembedded in another subcutaneous pouch of the same animal. After another 2-week embedding (secondary IBTI), the integrated tissue was harvested [Figure 2(E)] and the silicone rod was pulled out to obtain the Rolled Biotube [Figure 2(F)].」(241ページ右欄) (訳文)「一次IBTI埋入から2週間後、モールドと周囲の組織カプセルを回収[図2(A)]。PETフィルムをシリコーンロッドから分離し、組織から引き抜く[図2(B)]。PETフィルムの周囲に形成された膜状組織を、シリコーンロッドの周囲に形成された中空組織に巻き付けて重ねた[図2(C)]。ロール状組織は、4-0絹糸(アルフレッサファーマ、大阪)で外側から固定した[図2(D)]。再び同一個体の別の皮下ポーチに再埋入し、さらに2週間培養(二次IBTI)。その後、統合された組織を回収[図2(E)]し、シリコーンロッドを抜去して、ロールド・バイオチューブを得た[図2(F)]。」 「Since the PET film was partially connected with the silicone rod only at both its ends, connective tissues were formed independently around both materials [Figure 3(A-2)].」(245ページ下欄) (訳文)「PETフィルムは両端のみでシリコーンロッドと部分的に接着されていたため、それぞれ独立して組織が形成された[図3(A-2)]。」 「 [図:0001429049000003.jpg] Figure 1」 「 [図:0001429049000004.jpg] Figure 2」 Figure 1から、翼付きロッド型モールドのPETフィルム(翼)は、右上と右下の角部の形状が面取りされていることが看取される。 4 甲2及び甲3に例示される周知技術 上記2、3を総合すると、甲2、3には、次の周知技術が記載されている。 「ヒト以外の生体内に挿入して結合組織体を形成する技術分野において、結合組織体形成用構造体における角部に面取りされた形状を適用すること」 第5 当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)申立理由1-1 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「2枚の板状基材2a、2b」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「複数の板部材」に相当し、以下同様に、「四隅の結合部4」は「複数の離間部材」に、「膜状結合組織体形成用基材1」は「結合組織体形成用構造体」に、それぞれ相当する。 そして、甲1発明の、「板状基材2a、2bの」「側縁部に設けられ」、「2枚の板状基材2a、2b」を「互いに中央部の板厚方向に平行移動した位置関係に配置」して「互いに間隔をあけて設け」、「一体化」する「四隅の結合部4」は、本件発明1の「前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材」に相当する。 そうすると、甲1発明の「2枚の板状基材2a、2bが互いに中央部の板厚方向に平行移動した位置関係に配置されて、互いに間隔をあけて設けられ、板状基材2a、2b」「の側縁部」「に設けた四隅の結合部4を介して一体化されてな」る「膜状結合組織体形成用基材1」は、本件発明1の「複数の板部材と、前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材と、を備える結合組織体形成用構造体」に相当する。 b 甲1発明の「2枚の板状基材2a、2b」が「長方形板」である点は、長方形の図形としての性状を踏まえれば、本件発明1の「各板部材は、対向する2つの短辺である第1辺と、対向する2つの長辺である第2辺とで区画形成される長方形」「を有」する点に相当する。 よって、甲1発明の上記の点は、本件発明1の「各板部材は、対向する2つの短辺である第1辺と、対向する2つの長辺である第2辺とで区画形成される長方形、または当該長方形の角部が面取りされた形状の平面形状を有」する点に相当する。 c 本件発明1の「第1辺」は短辺であることを踏まえれば、甲1発明の「四隅の結合部4は、」「板状基材2a、2bの側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板状基材2a、2bの少なくとも2つの短辺側の側縁部に設けられ」る点は、本件発明1の「前記複数の離間部材は、前記複数の板部材の側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板部材の少なくとも2つの第1辺側の側縁部に設けられ」る点に相当する。 d 甲1発明の「開口」は、その機能及び構造からみて、本件発明1の「開口部」に相当し、甲1発明の「開口」が「結合部4間に設け」られる点は、本件発明1の「前記複数の離間部材の間に開口部が形成され」る点に相当する。 そして、本件発明1の「第2辺」は長辺であることを踏まえれば、甲1発明の「当該開口のうち、2つの長辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の長辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口が最長である」点は、本件発明1の「前記開口部のうち、前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口部が、最長である」点に相当する。 そうすると、両者は、 「複数の板部材と、 前記複数の板部材の側縁部に設けられ、前記複数の板部材を対向離間させた状態で保持する複数の離間部材と、 を備える結合組織体形成用構造体であって、 各板部材は、対向する2つの短辺である第1辺と、対向する2つの長辺である第2辺とで区画形成される長方形、または当該長方形の角部が面取りされた形状の平面形状を有し、 前記複数の離間部材は、前記複数の板部材の側縁部のうち、向かい合って位置する2つの板部材の少なくとも2つの第1辺側の側縁部に設けられ、 前記複数の離間部材の間に開口部が形成され、 前記開口部のうち、前記2つの第2辺側の側縁部のうちの少なくとも一方の第2辺側の側縁部の中央領域にわたって連続して延在する開口部が、最長であることを特徴とする結合組織体形成用構造体。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本件発明1は、複数の離間部材が、「前記長方形の2本の対角線上、及び前記2つの第2辺の少なくとも一方と前記2本の対角線とで囲まれた領域に位置」しないのに対して、甲1発明は、四隅の結合部4が、小径の円柱状とされ、2枚の板状基材2a、2bの対角線上にある点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 甲1発明の四隅の結合部4は、2枚の板状基材2a、2bの対角線上にあり、なおかつ、小径の円柱状の形態であって所定の幅を有する形状であることから、2つの長辺の少なくとも一方と2本の対角線とで囲まれた領域に位置する構造となっている。 そして、甲1には、2枚の板状基材2a、2bの四隅に設けた結合部4を板状基材内の他の位置に変更することを示唆する記載はなく、結合部4の位置を本件発明1に係る上記相違点の位置とする動機づけはないから、甲1発明において上記相違点に係る本件発明1の事項とすることは、当業者といえども、容易になし得たことということはできない。 また、2枚の板状基材の間において、結合部を、板状基材の対角線上に位置せず、かつ、2つの長辺の少なくとも一方と2本の対角線とで囲まれた領域にも位置しないように配置することは、甲2~3に記載されておらず、また、そのような配置の適用を示す他の証拠もなく、さらに、そのような配置とすることが周知技術であるということもできない。 したがって、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)申立人の主張について 特許異議申立書において申立人は、上記相違点に関連して、当業者は、甲1記載の膜状結合組織体形成用基材において、膜状結合組織の形状や大きさを所望のものとしたり、二面の結合組織形成面における変形を抑えたりすることを目的として、基材の形状や大きさに加え、長方形の4辺のなかの開口の位置、すなわち結合部の配置や、結合部の数量についても、変更することを試みたはずである、と主張するので(特許異議申立書23-24ページ)、当該主張について検討する。 甲1には、「基材の形状や大きさを適宜設定することにより、所望の形状や大きさの結合組織体を形成することができる。」(【0004】参照)及び「膜状結合組織体形成用基材1を構成する素材は、特に限定されるものではないが、生体に埋入することによる変形を防止できる程度の強度(硬度)…を有」する「樹脂が好ましく、シリコーン樹脂やアクリル樹脂を例示できる。」(【0031】参照)との記載があり、所望の形状や大きさの結合組織体を得ることや、生体埋入時の変形を防止できる程度の強度(硬度)を有する樹脂を材料とすることは開示されているものの、上記相違点に係る本件発明1の事項とすることまで当業者が容易に想到し得たということはできない。 したがって、甲1の膜状結合組織体形成用基材1において、板状基材2a、2bにおける結合部4の配置や数の変更を当業者が試みたはずである、とする申立人の上記主張は、当を得たものであるとはいえない。 (エ)小括 よって、本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付したものであるから、上記アと同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700773

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決215件(原口 正和、古河電気工業株式会社、国立大学法人北海道大学)
  • 2023-007207拒絶査定不服審判 / 2024-11-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)機能性構造体及び機能性構造体の製造方法
    同じ当事者: 古河電気工業株式会社、国立大学法人北海道大学
  • 2025-701007異議申立 / 2026-09-17 / 異議終了
    同じ当事者: 古河電気工業株式会社
  • 2026-700316異議申立 / 2026-07-06 / 維持磁気ディスク用アルミニウム合金基板及び当該磁気ディスク用アルミニウム合金基板を用…
    同じ当事者: 古河電気工業株式会社
  • 2025-700532異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置
    同じ当事者: 古河電気工業株式会社
  • 2025-700938異議申立 / 2026-04-17 / 維持コート層付金属箔及び金属張積層板
    同じ当事者: 古河電気工業株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)797件(121・A61F)
  • 2025-700336異議申立 / 2026-05-15 / 請求成立(取消)不織布、及び、吸収性物品
    共通の審決分類: 121・A61F
  • 2025-700514異議申立 / 2026-01-07 / 訂正認容ステントデリバリー装置
    共通の審決分類: 121・A61F
  • 2024-700341異議申立 / 2025-09-18 / 請求成立(取消)カバードステントおよびステントデリバリーシステム
    共通の審決分類: 121・A61F
  • 2022-700944異議申立 / 2024-08-01 / 請求成立(取消)注射器
    共通の審決分類: 121・A61F
  • 2022-700449異議申立 / 2023-11-21 / 訂正認容吸収性物品
    共通の審決分類: 121・A61F

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存