特許異議申立
2024-700087
ビール様発酵麦芽飲料
- 審判番号
- 2024-700087
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-242879
- 登録番号
- 7320918
- 請求日
- 2024年02月02日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アサヒビール株式会社
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】西下 正石
- 【異議申立人】田中 眞喜子
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.537-YAA(C12C) / P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.536-YAA(C12C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7320918号発明「ビール様発酵麦芽飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7320918号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4~6、9〕及び〔7、10〕について訂正することを認める。
特許第7320918号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7320918号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成29年12月19日の出願であって、令和5年7月27日にその特許権の設定登録がされ、同年8月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和6年2月2日に特許異議申立人田中眞喜子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~10)がされたものである。
以降の手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年2月22日付け:手続補正指令書(方式)
同年3月 4日 :特許異議申立書の手続補正書(方式)
同年5月10日付け:取消理由通知
同年7月12日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
同年7月22日付け:手続補正指令書(方式)
同年8月22日 :訂正請求書の手続補正書(方式)
同年8月29日付け:訂正請求があった旨の通知
(特許法第120条の5第5項)
同年9月30日 :意見書(申立人)
第2 訂正請求について
1.訂正の内容
令和6年7月12日に提出され、同年8月22日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第7320918号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4~7、9及び10について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4の「ビール様発酵麦芽飲料」の前に「請求項1に記載の」を挿入する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5、6及び9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7の「ビール様発酵麦芽飲料」の前に「請求項1に記載の」を挿入する。
請求項7の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に「85%以上の外観最終発酵度を有する」と記載されているのを削除する。
なお、訂正事項1に係る訂正前の請求項4~6及び9について、請求項5、6及び9は請求項4を直接又は間接的に引用する関係にあり、本件訂正により対応する訂正後の請求項4~6及び9に訂正される。また、訂正事項2及び3に係る訂正前の請求項7及び10について、請求項10は請求項7を引用する関係にあり、本件訂正により対応する訂正後の請求項7及び10に訂正される。よって、本件訂正はそれぞれが一群の請求項をなす請求項4~6及び9と、請求項7及び10とを訂正の単位として請求されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前に独立形式で記載されていた請求項4の「ビール様発酵麦芽飲料」を、請求項1に従属する「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5、6及び9の訂正も同様である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前に独立形式で記載されていた請求項7の「ビール様発酵麦芽飲料」を、請求項1に従属する「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項7を引用する請求項10の訂正も同様である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項10における「請求項7に記載の85%以上の外観最終発酵度を有するビールテイスト飲料」という記載が、本件訂正前の請求項7に記載された「90~110%の外観発酵度まで発酵」よりも広い数値範囲を記載するものであったため、記載が整合せず不明瞭となっていたものを、請求項10における「85%以上の外観最終発酵度を有する」という記載を削除することにより、記載の不整合を解消し、「請求項7に記載のビールテイスト飲料」すなわち「90~110%の外観発酵度まで発酵」させたビール様発酵麦芽飲料に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
エ 申立人の主張について(訂正事項2について)
申立人は、令和6年9月30日に提出した意見書の第2頁において、本件訂正後の請求項7及び10に関し、「本件明細書で開示された発明は、最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料に、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-2ブテン-1-オールを含有することで冷涼感を付与するものであり・・・既に冷涼感を有している「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料」に対して更に冷涼感を付与することについては何ら記載されていない。従って、本件特許発明7に係る訂正は、新たな技術的事項を追加するものであり、また、同時に実質上特許請求の範囲を変更するものである」と主張している。
しかし、本件訂正前の請求項7に具体的に特定された事項が、ビール様発酵麦芽飲料の「原料」から得られた「糖液の3Mbol含有量」を調整する工程と、得られる「糖液を所定の外観最終発酵度まで発酵させる」工程という、ビール様発酵麦芽飲料を原料から製造することに関する事項であることに鑑みると、本件訂正前の請求項7に係る発明は、上記工程を包含する方法を実施することによって、得られたビール様発酵麦芽飲料が冷涼感を有するものとなることを、「ビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法」と表現した発明であると解される。
そして、本件訂正後の請求項7に係る発明は、上記工程を包含する方法を実施することによって、得られた「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料」が冷涼感を有するものとなることを、「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法」と表現した発明であると解されるところ、請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料が冷涼感を有するものとなることは、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されていた事項であるから、請求項7の訂正は新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。請求項7の記載を引用する請求項10も同様である。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(2)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~10に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1~3については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4~6、9〕及び〔7、10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表示した。
「[請求項1]
90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する、ビール様発酵麦芽飲料。
[請求項2]
50重量%以上の麦芽使用比率を有する請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料。
[請求項3]
ポラリス種ホップ由来のセスキテルペン類及びその誘導体を含有する請求項1又は2に記載のビール様発酵麦芽飲料。
[請求項4]
原料から得られた糖液の3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を7~20ppbに調整する工程;及び
得られる糖液に酵母を接種し、90~110%の外観最終発酵度まで発酵させる工程;
を包含する、請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料の製造方法。
[請求項5]
前記原料は麦芽を50重量%以上の割合で含有する請求項4に記載のビール様発酵麦芽飲料の製造方法。
[請求項6]
原料のホップとして、ポラリス種ホップを使用する、請求項4又は5に記載のビール様発酵麦芽飲料の製造方法。
[請求項7]
原料から得られた糖液の3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を7~20ppbに調整する工程;及び
得られる糖液に酵母を接種し、90~110%の外観最終発酵度まで発酵させる工程;
を包含する、請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法。
[請求項8]
前記3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度が7ppb以上20ppb未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビール様発酵麦芽飲料。
[請求項9]
前記3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量が7ppb以上20ppb未満に調整される、請求項4~6のいずれか一項に記載のビール様発酵麦芽飲料の製造方法。
[請求項10]
前記3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量が7ppb以上20ppb未満に調整される、請求項7に記載のビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)
本件発明1~10は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)
本件発明1~5及び8は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~10は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)
本件発明1~10は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5)申立理由3(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~10についての特許は同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 酵母について
ビール中の3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度は、 ホップと酵母の組合せ(相乗効果)により大きく異なることが知られており(甲5の Table 3,4)、実際に分析を行わなければ当業者でも3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度が全く予測できない。本件明細書には、ポラリス種ホップの比率を増やすことで3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度が増えると記載されているが(表1)、使用された酵母については具体的に記載されていないから、ポラリス種ホップを用いたとしても如何なる酵母を使用すればよいか分からず、本件実施例を追試するためには当業者であっても過度の試行錯誤を要する。
イ ホップについて
ポラリス種以外のホップを使用した場合における3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度は更に予測が困難であり、濃度調整のためにはビールを調製する度に逐一濃度を測定しなければならないから、ホップ種の限定のない本件発明1、2、4、5及び7~10では、特に過度の試行錯誤を要する。
(6)申立理由4(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明4~7、9、10についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件発明4~7、9及び10においては、「糖液」の3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を調整することは規定されているが、得られたビール様発酵麦芽飲料の3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量は特定されていない。ビール様発酵麦芽飲料中の3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量は、 ホップと酵母の組合せ(相乗効果)により大きく変動するものであり(甲5の Table3,4)、発酵前の「糖液」における含有量が7~20ppbであっても、必ずしも発酵後のビール様発酵麦芽飲料における含有量が7~20ppbの範囲内であるとは限らず、そのような場合においてまで所望の課題を解決できるとは理解できない。
(7)申立理由5(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明10についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項10には、「請求項7に記載の85%以上の外観最終発酵度を有するビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法」と記載されているが、請求項7にはそのような記載はなく、「90~110%の外観最終発酵度まで発酵させる」ことが記載されているから、本件発明10のビール様発酵麦芽飲料が如何なるものであるか理解できない。
2.証拠方法
甲1:ミンテルGNPD,"Polaris Single Hop IPA",[online],2014年4月,Mintel Group Ltd.,[2024年1月25日検索],インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#2374903
甲2:ミンテルGNPD,"Zero Life Beer",[online],2015年2月,Mintel Group Ltd.,[2024年1月25日検索],インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#2986327
甲3:ミンテルGNPD,"Lager Beer",[online],2015年4月,Mintel Group Ltd.,[2024年1月25日検索],インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#3124041
甲4:ミンテルGNPD,"Frosted Polaris Hopped Beer",[online],2015年4月,Mintel Group Ltd.,[2024年1月25日検索],インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#3127339
甲5:D. Steyer,P. Tristram,C. Clayeux,F. Heitz and B. Laugel,"Yeast Strains and Hop Varieties Synergy on Beer Volatile Compounds",BrewingScience,Fachverlag Hans Carl GmbH,2017年11月,vol.70,p.131-141
甲6:薄葉久,中川正人,江藤正和,"アサヒスーパードライの開発",日本農芸化学会誌,公益社団法人日本農芸化学会,1993年10月1日,vol.67,No.10,p.1379-1384
甲7:特開平6-98749号公報
証拠の表記は当審による。
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~10に係る発明についての特許に対して、令和6年5月10日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1.取消理由1(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明4~7、9及び10についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件発明4においては、「原料から得られた糖液の3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有量を7~20ppbに調整する工程」を備えることが特定されているが、本件明細書の[0029]~[0046]に記載されたビール様発酵麦芽飲料の一般的な製造工程を参酌すると、上記の発明特定事項は完成したビール様発酵麦芽飲料における3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を特定するものではない。また、本件発明4の他の発明特定事項及び本件特許に係る出願の出願時における技術常識を参酌しても、本件発明4の製造方法は完成したビール様発酵麦芽飲料における3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を特定するものではない。そうすると、当業者は、本件発明4が「冷涼感を付与された最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料の製造方法を提供する」という課題を解決するものとは認識することができない。請求項4を直接又は間接的に引用する本件発明5、6及び9についても同様である。
本件発明7についても、「原料から得られた糖液の3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有量を7~20ppbに調整する工程」を備えることが特定されているが、上記イに記載した理由と同様の理由により、当業者は、本件発明7が「最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法を提供する」という課題を解決するものとは認識することができない。請求項7を引用する本件発明10についても同様である。
2.取消理由2(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明10についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件発明10は、「請求項7に記載の85%以上の外観最終発酵度を有するビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法」という発明特定事項を含むが、請求項7には該当する記載はなく、「90~110%の外観最終発酵度まで発酵させる工程;を包含する、ビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法」と特定されているから、外観最終発酵度の数値範囲が一致していない。また、願書に添付した明細書の記載を考慮し、本件特許に係る出願の出願時における当業者の技術常識を基礎としても、請求項10における記載の不一致が解消されるものではないから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえる。
第6 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
当審は、取消理由通知に記載した取消理由1及び2によって本件発明4~7、9及び10についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。
1.取消理由1(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0012]等の記載から見て、本件発明4~6及び9の課題は「冷涼感を付与された最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料の製造方法を提供する」ことにあり、本件発明7及び10の課題は「最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法を提供する」ことにあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載について
本件明細書には以下の事項が記載されている。下線は当審が付記した。
「[0006]
ビール様発酵麦芽飲料のキレ感は、たとえば最終発酵度を上げることで増大させることができる。しかしながら、ビール様発酵麦芽飲料の最終発酵度を上げるとコク味が失われ、味の厚みが感じられず、味感は水っぽくなり、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性が低下することがある。」
「[0008]
冷涼感を有する飲料は飲用時に咽喉元周辺に冷たい感覚を与え、さっぱり、爽快な口腔刺激を強調することができる。キレ感を有するビール様発酵麦芽飲料が冷涼感をも有する場合、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させるのに有効である。」
「[発明の効果]
[0020]
本発明によれば、最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料に、冷涼感を付与する方法が提供される。本発明の方法で得られるビール様発酵麦芽飲料はキレ感及び冷涼感を有し、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させるのに有効である。」
「[発明を実施するための形態]
[0021]
本発明の発明者らは、ビール様発酵麦芽飲料(以下単に「発酵麦芽飲料」ともいう。)に特定量の3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させることにより、ビール様発酵麦芽飲料に冷涼感が付与されることを見出した。」
「[0022]
本発明のビール様発酵麦芽飲料においては、3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量は濃度5ppb以上に調節される。3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度が5ppb未満であると、ビール様発酵麦芽飲料に付与される冷涼感が不十分になる。3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度は、好ましくは、7~50ppb、より好ましくは9~20ppbである。3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度が50ppbを超えると、香味のバランスが悪化することがある。」
「[0024]
3-メチル-2-ブテン-1-オールを発酵麦芽飲料に含有させる方法は特に限定されない。3-メチル-2-ブテン-1-オールは、発酵麦芽飲料に添加することで含有させてよく、原料の種類及び使用量を調節することで含有させてもよい。
[0025]
3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する原料の例にはホップが挙げられる。ホップは苦味と爽快な香りを付与し、泡持ちを良くする、さらにはビールの微生物耐久性を向上させる目的で、発酵麦芽飲料を製造する際に使用される原料である。ホップを原料として添加する形態は、ホップペレットでもよいし、ホップエキス、さらには毬花そのものとしてでもよい。3-メチル-2-ブテン-1-オールは、例えば、原料としてポラリス種ホップを使用した場合に発酵麦芽飲料に多く含有されるが、それに限定されるものではない。但し3-メチル-2-ブテン-1-オール濃度を高める方法の一例としては、通常使用される種類のホップの全部又は一部をポラリス種ホップに代替すればよい。通常使用される種類のホップの一部をポラリス種ホップに代替する場合、ポラリス種ホップの使用量は、3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量及び発酵麦芽飲料の香味を考慮して、通常使用されるホップの約3重量%以上、好ましくは約7~50重量%、より好ましくは約10~30重量%の範囲で適宜調節される。」
「[0029]
発酵麦芽飲料に3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させる場合、発酵麦芽飲料の製造過程における適当な工程で含有させることができる。例えば、発酵麦芽飲料に含有させる場合には、麦汁等の原料溶液の麦汁煮沸時、麦汁煮沸後の冷却工程、発酵工程又は熟成工程等任意の工程でよい。
[0030]
本発明のビール様発酵麦芽飲料の製造は、3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させること以外は、ビール又は発酵麦芽飲料を製造する際に通常行われる方法及び条件に従って行われる。例えば、まず、麦芽の破砕物、大麦等の副原料、及び温水を仕込槽に加えて混合してマイシェを調製する。マイシェの調製は、常法により行うことができ、例えば、はじめに35~60℃で20~90分間保持することにより原料に由来するたんぱく質をアミノ酸などへ分解し、糖化工程へ移行する。その際、必要に応じて、主原料と副原料以外にも、後述する糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤や、スパイスやハーブ類等の香味成分等を添加してもよい。
[0031]
その後、該マイシェを徐々に昇温して所定の温度で一定期間保持することにより、麦芽由来の酵素やマイシェに添加した酵素を利用して、澱粉質を糖化させる。糖化処理時の温度や時間は、用いる酵素の種類やマイシェの量、目的とする麦芽アルコール飲料の品質等を考慮して、適宜決定することができ、例えば、60~72℃にて30~90分間保持することにより行うことができる。糖化処理後、76~78℃で10分間程度保持した後、マイシェを麦汁濾過槽にて濾過することにより、透明な糖液を得る。また、糖化処理を行う際に、酵素剤を必要な範囲で適当量添加してもよい。」
「[0032]
糖化に供される穀類は麦芽を含む。糖化に供される穀類中の麦芽の含有量は、特に限定されないが、25重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは67重量%以上である。糖化に供される穀類は麦芽100%であってもよい。尚、水を除く全原料に対する麦芽の割合(重量%)を麦芽使用比率という。
[0033]
穀類中の麦芽の含有量が多いほど、得られる麦汁の麦芽由来の旨味やコク感が強くなる。また、穀類中の麦芽の含有量が多いほど得られる麦汁中の窒素化合物の含有量が多くなり、麦汁が発酵に供される場合に発酵不順が発生しにくくなり、不快臭が発生し難くなる。
[0034]
上記副原料とは、麦芽とホップ以外の原料を意味する。該副原料として、例えば、大麦、小麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等の澱粉原料や、液糖や砂糖等の糖質原料がある。ここで、液糖とは、澱粉質を酸又は糖化酵素により分解、糖化して製造されたものであり、主にグルコース、マルトース、マルトトリオース等が含まれている。その他、香味を付与又は改善することを目的として用いられるスパイス類、ハーブ類、及び果物等も、副原料に含まれる。
[0035]
上記糖化酵素とは、澱粉質を分解して糖を生成する酵素を意味する。該糖化酵素として、例えば、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルナラーゼ等がある。
[0036]
麦汁煮沸の操作は、ビールを製造する際に通常行われる方法及び条件に従って行えばよい。例えば、pHを調節した糖液を煮沸釜に移し、煮沸する。糖液の煮沸開始時から、ワールプール静置の間に、ホップを添加する。ホップとして、ホップエキス又はホップから抽出した成分を使用してもよい。糖液は次いでワールプールと呼ばれる沈殿槽に移し、煮沸により生じたホップ粕や凝固した蛋白質等を除去した後、プレートクーラーにより適切な温度まで冷却する。上記麦汁煮沸の操作により、麦汁が得られる。
[0037]
得られた麦汁は、発酵させて、発酵麦芽飲料を製造する原料として使用することができる。麦汁の発酵は常法に従って行えばよい。例えば、冷却した麦汁に酵母を接種して、発酵タンクに移し、アルコール発酵を行う。
[0038]
本発明の発酵麦芽飲料の外観最終発酵度は85%以上が好ましい。発酵麦芽飲料の外観最終発酵度が85%未満であると、得られる発酵麦芽飲料のキレ感が低下する。本発明の発酵麦芽飲料の外観最終発酵度は、好ましくは、90~110%、より好ましくは、90%~100%である。
[0039]
発酵度とは、発酵後のビールにおいて、どれだけ発酵が進んだか、発酵の進み方を示す重要な指標である。そして、さらに最終発酵度とは、原麦汁エキスに対して、ビール酵母が資化可能なエキスの割合を意味する。ここで、ビール酵母が資化可能なエキスとは、原麦汁エキスから、製品ビールに含まれるエキス(即ち、ビール酵母が利用可能なエキスをすべて発酵させた後に残存するエキス(最終エキスという))を差し引いたものである。外観最終発酵度とは、最終エキスの値に、外観エキス、即ち、アルコールを含んだままのビールの比重から求めたエキス濃度(%)、を使用して計算した最終発酵度をいう。
[0040]
尚、エキスとは不揮発性固形分をいう。エキスという文言は、文脈に応じて、不揮発性固形分そのもの、不揮発性固形分の量、又は不揮発性固形分の濃度を意味する。
[0041]
例えば、発酵飲料の外観最終発酵度Vendは、式
[0042]
[数1]
Vend(%)={(P-Eend)/P}×100
[式中、Pは原麦汁エキスであり、Eendは、外観最終エキスである。]
[0043]
原麦汁エキスPは、製品ビールのアルコール濃度とエキスの値から、Ballingの式に従い、理論上アルコール発酵前の麦汁エキスの値を逆算するものである。具体的には、Analytica-EBC(9.4)(2007)に示される方法により、求めることができる。また、外観最終エキスEendはビールをフラスコに採取し、新鮮な圧搾酵母を多量に添加し、25℃で攪拌しながら、エキスの値がこれ以上低下しなくなるまで発酵させて(24h)、残存ビール中の外観エキスの値を測定することにより、求めることができる。
[0044]
外観最終エキスEendは、最終エキスのアルコールを含んだ比重から計算されるため、マイナスの値を示すことがある。結果、外観最終発酵度は100%を超える場合がある。
[0045]
外観最終発酵度は、例えば、糖化条件、原料を糖化させる際の酵素の使用有無、及び、原材料の種類や配合量などを調整することにより、制御することができる。例えば、糖化時間を長くすれば、酵母が使用する事ができる糖濃度を高めることができ、外観最終発酵度を高めることができる。
[0046]
発酵終了後、さらに、熟成工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させる。次いで濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより酵母及びタンパク質等を除去して、発酵麦芽飲料が得られる。」
「[0048]
<実施例1>
ポラリス種ホップを使用したビールの製造及び分析
(ビールの製造)
粉砕麦芽40kgを湯に混合し、糖化、濾過させて160Lの麦汁を得た。これに、ナゲット種エキス(Hopsteiner社製)0.02kgおよびポラリス種ホップペレット(Hopsteiner社製)を製品ビールの苦味価が20B.U.になるような量を調整して添加し、60分煮沸した。煮沸後、冷却させて所定量の酵母を添加し、7日間発酵させた。その後、熟成・冷却し、濾過してビールAを得た。ビールAの外観最終発酵度は87.3%であった。
[0049]
ナゲット種ホップエキスの量を、0.02kgから、0.015kgにし、製品ビール苦味価20B.U.となるように、ポラリス種ホップペレットを調整して添加したこと以外はAと同様にして、ビールBを製造した。ビールBの外観最終発酵度は88.1%であった。
[0050]
ナゲット種ホップエキス0.02kgから、0.010kgにし、製品ビール苦味価20B.U.となるように、ポラリス種ホップペレットを調整して添加したこと以外は製品ビールAと同様にして、ビールCを製造した。ビールCの外観最終発酵度は89.1%であった。
[0051]
ナゲット種ホップエキスを使用せず、製品ビール苦味価20B.U.となるように、ポラリス種ホップペレットのみを調整して添加したこと以外は製品ビールAと同様にして、ビールDを製造した。ビールDの外観最終発酵度は87.7%であった。」
「[0057]
得られたビールA、B、C、Dについて、よく訓練されたパネリスト7名により、ビールの冷涼感の強さについて、官能検査を実施した。
[0058]
(冷涼感)
4:強い冷涼感がある
3:冷涼感を感じる
2:やや冷涼感を感じる
1:あまり冷涼感を感じない
0:冷涼感を感じない
[0059]
結果を表1に記載する。なお、表1の官能検査の点数は、7名のパネリストの評点の平均値である。
[0060]
[表1]
[図:0001422411000001.jpg]
[0061]
<実施例2>
3MBolを使用したビールの製造
粉砕麦芽30kgを50℃、120Lの湯に混合したマイシェに、別途10kgのコーンスターチを液化させた液を混合して糖化させた。その後、麦汁濾過、麦汁煮沸、麦汁冷却を実施し、酵母を添加して10℃、10日間発酵させ、10日熟成後濾過させてベースビールを製造した。但し、麦汁煮沸時に、ホップは添加しなかった。3MBolはホップ由来であり、ベースビール中の3MBol濃度は、0ppbであった。ベースビールの外観最終発酵度は91.3%であった。
[0062]
このベースビールを8つに分割し、一つは対照として使用するために添加せず、残りの7つに3MBolをその濃度がそれぞれ1、3、5、7、9、10及び20ppbとなるように添加した。
[0063]
調製した官能検査サンプルビールについて、よく訓練されたパネリスト5名によりブラインドでの官能評価を実施した。評価性能は、冷涼感、コク感、キレ、ビールらしさ(即ち、ビールとしての香味バランスの良さ)を設定した。評価基準は次の通り5段階を設定した。各パネリストによる採点の平均値を表2に示す。
[0064]
[表2]
[図:0001422411000002.jpg]
[0065]
(冷涼感)
4:強い冷涼感がある
3:冷涼感を感じる
2:やや冷涼感を感じる
1:あまり冷涼感を感じない
0:冷涼感を感じない
[0066]
(コク感)
4:非常にコク感がある
3:コク感がある
2:ややコク感がある
1:あまりコク感を感じない
0:コク感を感じない
[0067]
(キレ)
4:非常にキレがある
3:キレがある
2:ややキレがある
1:ややキレが劣る
0:キレがない
[0068]
(ビールらしさ)
4:ビール香味のバランスが大変良い
3:ビール香味のバランスが良い
2:ややビール香味のバランスに欠ける
1:ビール香味のバランスが悪い
0:大変ビール香味のバランスが悪い
[0069]
3MBolを添加していくと、冷涼感が増加する傾向があらわれた。また、コク感はあまり変化しなかった。キレは増加する傾向にあったが、20ppbではややキレが劣る傾向になった。ビールらしさは、元来無ホップビールであるため、点数は低めであるが、3MBol10ppb添加でやや点がよくなった。20ppb添加だと香味のバランスが崩れた。
[0070]
<実施例3>
ポラリス種ホップを一部使用したビールの製造
粉砕麦芽30kgを50℃、120Lの湯に混合したマイシェに、別途10kgのコーンスターチを液化させた液を混合して糖化させた。その後、麦汁濾過、麦汁煮沸、麦汁冷却を実施し、酵母を添加して10℃、10日間発酵させ、10日熟成後濾過させてベースビールを製造した。なお、ホップは麦汁煮沸時に、ナゲット種エキスを0.02kg添加し、さらに製品ビールでの苦味価が20B.U.になるように調整した量のポラリス種ホップペレットを添加した。ベースビールの外観最終発酵度は92.2%であった。
[0071]
ベースビール中の3MBolを測定したところ、8.1ppbであった。このベースビールに、実施例2で製造した無ホップビールを任意の割合で混合して、5種類の官能検査サンプルを得た。調製した官能検査サンプルビールについて、実施例2と同様にして官能評価を実施した。各パネリストによる採点の平均値を表3に示す。
[0072]
[表3]
[図:0001422411000003.jpg]
」
「[0074]
<実施例4>
外観最終発酵度と冷涼感の関係
粉砕麦芽30kgを50℃、120Lの湯に混合したマイシェに、別途10kgのコーンスターチを液化させた液を混合して糖化させた。その後、麦汁濾過、ホップを投入して麦汁煮沸、麦汁冷却を実施し、酵母を添加して10℃、10日間発酵させ、10日熟成後濾過させてビールを製造した。その際、糖化条件を変更して、外観最終発酵度の異なる、3種類のビールを各々180Lずつ試作した。但し、ホップはポラリス種を製品ビールの苦味価が15B.U.になるように調整して添加した。各試作品について、外観最終発酵度を算出し、3Mbol濃度を測定した。
[0075]
これら3種類の試作品に、さらに3Mbolを4ppb添加して、3Mbol濃度を増大させた。
[0076]
6種類の試作品について、パネリスト5名による冷涼感の官能検査を行った。評価基準は実施例2と同様である。各パネリストによる採点の平均値を表4に示す。
[0077]
[表4]
[図:0001422411000004.jpg]
」
(4)サポート要件違反の判断
ア 課題を解決できる範囲
本件明細書の[0006]、[0008]には、本件発明の課題に関連し、ビール様発酵麦芽飲料のキレ感は、たとえば最終発酵度を上げることで増大させることができるが、ビール様発酵麦芽飲料の最終発酵度を上げるとコク味が失われ、味の厚みが感じられず、味感は水っぽくなり、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性が低下することがあること、キレ感を有するビール様発酵麦芽飲料が冷涼感をも有する場合、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させるのに有効であることが記載され、[0020]~[0021]には、ビール様発酵麦芽飲料に特定量の3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させることにより、ビール様発酵麦芽飲料に冷涼感が付与されることが見出され、本発明の方法で得られるビール様発酵麦芽飲料はキレ感及び冷涼感を有し、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させるのに有効であることが記載されている。
また、[0022]には、3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度は、ビール様発酵麦芽飲料に付与される冷涼感及び香味のバランスの観点から、好ましくは、7~50ppb、より好ましくは9~20ppbであることが記載されており、[0024]~[0025]には、3-メチル-2-ブテン-1-オールを発酵麦芽飲料に含有させる方法は特に限定されず、3-メチル-2-ブテン-1-オールを発酵麦芽飲料に添加することで含有させてよく、原料の種類及び使用量を調節することで含有させてもよく、原料の例にはホップが挙げられ、例えば、原料としてポラリス種ホップを使用した場合に発酵麦芽飲料に多く含有されるが、それに限定されるものではないことが記載されている。
さらに、[0029]~[0030]には、発酵麦芽飲料の製造工程について、発酵麦芽飲料に3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させる場合、発酵麦芽飲料の製造過程における適当な工程で含有させることができること、及び本発明のビール様発酵麦芽飲料の製造は、3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させること以外は、ビール又は発酵麦芽飲料を製造する際に通常行われる方法及び条件に従って行われることが記載されており、[0031]~[0037]には製造原料及び製造工程について具体的に記載されている。
加えて、[0038]~[0041]には、外観最終発酵度について、得られる発酵麦芽飲料のキレ感の観点から、本発明の発酵麦芽飲料の外観最終発酵度は、好ましくは、90~110%、より好ましくは、90%~100%であること、及び外観最終発酵度は、例えば、糖化条件、原料を糖化させる際の酵素の使用有無、及び、原材料の種類や配合量などを調整することにより、制御することができることが記載されている。
そして、[0048]~[0078]の実施例1~4には、製造工程におけるホップの添加量の調整(実施例1、3、4)又は3-メチル-2-ブテン-1-オールの添加量の調整(実施例2)によって、得られる製品ビールの3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を調整できること、及び、外観最終発酵度を87.7%又は89.1%としたビールC、D(実施例1)、91.3%としたビール(実施例2)、92.2%としたビール(実施例3)及び87.9%又は100.3%とした実施例C、Dのビール(実施例4)の官能評価において、製品ビールの3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度を[0022]において好ましいとされた7ppb以上とすることにより、濃度に応じて冷涼感が増加する傾向があること、20ppbではビールらしさ(ビール香味のバランス)の評価が下がること、及び冷涼感は外観最終発酵度が高い方が増大する傾向があることが記載されている([表1]~[表4]、[0069]、[0078]等)。
そうすると、当業者は、本件明細書の記載に基づいて、90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有するビール様発酵麦芽飲料を製造する方法は、「冷涼感を付与された最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料の製造方法を提供する」という課題を解決することができ、3-メチル-2-ブテン-1-オール濃度及び外観最終発酵度を当該ビール様発酵飲料と同様に調整する工程を有する方法は、「最終発酵度が高いビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法を提供する」という課題を解決することができると認識することができる。
イ 本件発明4~6及び9について
本件発明4は、「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料の製造方法」、すなわち、「90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有するビール様発酵麦芽飲料の製造方法」の発明であるところ、上記アにおける検討を踏まえると、当該製造方法は当業者が本件発明の課題を解決することができると認識することができるものである。請求項4を直接又は間接的に引用する本件発明5、6及び9についても同様である。
よって、本件発明4~6及び9は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、サポート要件を満たしている。
ウ 本件発明7及び10について
本件発明7は、「請求項1に記載のビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法」、すなわち、「90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有するビール様発酵麦芽飲料に清涼感を付与する方法」の発明であるところ、上記アにおける検討を踏まえると、当該方法は当業者が本件発明の課題を解決することができると認識することができるものである。請求項7を引用する本件発明10についても同様である。
よって、本件発明7及び10は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、サポート要件を満たしている。
エ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において上記第4 1.(6)のように主張しているが、上記イ及びウに記載したとおり、本件訂正により、本件発明4~6及び9並びに本件発明7及び10は、いずれもビール様発酵麦芽飲料における3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度が7~20ppbであることが特定されたから、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなった。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(5)取消理由1(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明4~7、9及び10は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由1(サポート要件違反)により本件発明4~7、9及び10についての特許を取り消すことはできない。
2.理由2(明確性要件違反)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)本件発明10について
本件訂正前の請求項10には、請求項7における外観最終発酵度の数値範囲と整合しない記載が存在したが、本件訂正により不整合は解消されたため、請求項10の記載は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確なものではない。よって、本件発明10は明確である。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において上記第4 1.(7)のように主張しているが、上記(2)に記載したとおり、本件訂正により請求項7の記載と請求項10の記載との不整合は解消され、本件発明10は明確となった。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
なお、申立人は、令和6年9月30日に提出した意見書の第2~3頁において、本件訂正に伴う新たな特許異議申立理由(明確性要件違反)を申し立てているので、後述する。
(4)取消理由2(明確性要件違反)のまとめ
以上のことから、本件発明10は、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、その発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由2(明確性要件違反)により本件発明10についての特許を取り消すことはできない。
3.取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ
以上のとおり、取消理由通知に記載したいずれの取消理由によっても、本件発明4~7、9及び10についての特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
当審は、申立人が申し立てた特許異議申立理由は、いずれも理由がないものと判断する。理由は以下のとおり。
1.取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要
取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由は、上記第4の1.(1)~(5)に記載した申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)、申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)、並びに申立理由3(実施可能要件違反)である。以下、検討する。
2.申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。表の形式は証拠と異なることがある。また、英文の箇所は翻訳文を摘記する。
(1-1)「Polaris Single Hop IPA
[図:0001422411000005.jpg]
」(1頁左上欄)
(1-2)「商品説明
Austmann Polaris Single Hop IPA は、フルーティー、フレッシュ、及びミントのようなフレーバーとアロマで知られるポラリスホップを使用して醸造されている。」(1頁中央欄)
(1-3)「製品分析
[図:0001422411000006.jpg]
」(1頁左下欄)
(1-4)「
[図:0001422411000007.jpg]
」(2頁中央欄)
(2)甲1に記載された発明
甲1には、Austmann Bryggeri 社が製造するカテゴリー「アルコール飲料」、サブカテゴリー「ビール」に属する「Polaris Single Hop IPA」という商品について、「フルーティー、フレッシュ、及びミントのようなフレーバーとアロマで知られるポラリスホップを使用して醸造されている」ことが記載され(摘記1-1、1-2)、アルコール含有量(%)は6.50%(摘記1-3)、パッケージに表示された成分は「水、麦芽、ポラリスホップ、酵母」であること(摘記1-4)が記載されている。
そうすると、甲1には以下の発明が記載されている。
「ポラリスホップを使用して醸造された、アルコール含有量6.50%のPolaris Single Hop IPAという商品名のビール。」(以下、「甲1発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ビール」は、本件発明1における「ビール様発酵麦芽飲料」に相当する。
そうすると、両者は「ビール様発酵麦芽飲料。」の点で一致し、
相違点甲1-1:本件発明1は「90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、相違点甲1-1について検討する。
イ 相違点甲1-1について
甲1には、甲1発明の製造方法は記載されておらず、甲1の記載から外観最終発酵度を求めることはできない。また、甲1には甲1発明が3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有することは記載されておらず、甲1の記載からその含有量を求めることもできない。よって、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
また、甲1発明は市販の商品であり、その香味を変えることにつながる製造工程の変更や原料の変更を行い、外観最終発酵度を90~110%の範囲に調整し、3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度を7~20ppbに調整することは当業者が動機付けられることではなく、他の証拠の記載を参照しても当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明1が発揮する「キレ感及び冷涼感を有し、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させる」という効果は、甲1及び他の証拠の記載から当業者が予測することができない顕著な効果である。
よって、相違点甲1-1は当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の27頁において、(ア)外観最終発酵度及び(イ)3-メチル-2-ブテン-1-オールについて、以下のように主張する。また、申立人は、令和6年9月30日に提出した意見書の1~2頁において、(ウ)3-メチル-2-ブテン-1-オールについて、以下のように主張する。
(ア)外観最終発酵度について
a.「アルコール度数を高くする方法として、外観最終発酵度を高くすることが有効であることは技術常識である。従って、アルコール含有量6.50%(高アルコール)の甲1発明の外観最終発酵度も90~110%の範囲内である蓋然性が高い。」
b.「仮に相違するとしても、味感がさらりとしてべとつく味がないなどキレを良くする観点から外観最終発酵度の調整することは適宜設計する事項に過ぎず(甲6の p.1380右欄9~16行)、当業者が容易に成し得たことである。」
(イ)3-メチル-2-ブテン-1-オールについて
a.「甲1発明では、本件と同様、3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する原料であるとされるポラリスホップ(本件明細書の段落0025)を使用しており、ミント(冷涼感)が特徴であることが記載されている。従って、甲1発明についても7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有している蓋然性が高い。」
b.「仮に相違するとしても、上記のとおりポラリスホップにミント(冷涼感)のフレーバーやアロマがあることが知られており、また、ポラリスホップを用いてビールを製造することも一般的に行われていることであるから(甲2~甲4)、ポラリスホップの使用量等を変更して冷涼感を好適な範囲に調整することは適宜設計する事項に過ぎず、当業者が容易になし得たことである。」
(ウ)3-メチル-2-ブテン-1-オールについて
a.「申立理由3(実施可能要件)・・・の主張が採用されなかったということは、酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば、容易に発明の実施が可能である(当然に7~20ppbを充足する)と判断されたものと考えられる。
しかし、そのような考え方を前提とするのであれば、同じくポラリス種ホップを使用した甲1発明、甲2発明についても、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有している蓋然性が極めて高く、本件特許発明1~10はいずれも新規性を欠くというべきである。」
b.「仮に新規性を有するとしても、甲1発明、甲2発明における3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度を確認して7~20ppb程度のありふれた濃度範囲(酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば当然に充足する程度の濃度範囲)を設定することは当業者にとって容易であるから、進歩性を有するものではないとみるのが相当である。」
しかし、(ア)a.、(イ)a.及び(ウ)a.については、上記イに記載したとおり、甲1に外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量は記載されておらず、また、アルコール含有量が6.50%であること及びポラリスホップ(本件明細書の段落0025)を使用しておりミント(冷涼感)が特徴であることが記載されていても、それらの記載から外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を求めることはできない。
また、申立人は、「酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば、容易に発明の実施が可能である(当然に7~20ppbを充足する)と判断された」という推測に基づいて「甲1発明・・・についても、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有している蓋然性が極めて高」いと主張しているが、後記する実施可能要件の判断のとおり、当審が申立人の推測したような判断をした事実はないから、申立人の主張は前提において誤りがあり、さらに、申立人は甲1発明の外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量の正確な値を立証する証拠を提出していない。
よって、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
また、(ア)b.、(イ)b.及び(ウ)b.については、上記イに記載したとおり、甲1発明は市販の商品であるから、甲6に外観最終発酵度の調整が味感及びキレに影響することが記載され、甲2~甲4にポラリスホップにミント(冷涼感)のフレーバーやアロマがあること及びポラリスホップを用いてビールを製造することが記載されていても、甲1発明の香味を変えることにつながる製造工程の変更や原料の変更を行い、外観最終発酵度を90~110%の範囲に調整し、3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度を7~20ppbに調整することは当業者が動機付けられることとはいえない。また、甲6と甲2~甲4のそれぞれに、個別に外観最終発酵度又はポラリスホップについての記載があるとしても、「90~110%の外観最終発酵度」と「7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する」こととの組合せにより「キレ感及び冷涼感を有し、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させる」という効果を得ることはいずれの証拠にも記載されておらず、本件発明1は当業者が予測することができない顕著な効果を発揮するものである。よって、相違点甲1-1は甲1及び他の証拠の記載から当業者が容易に想到し得ることではない。
以上のとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。
エ 相違点甲1-1についてのまとめ
以上まとめると、相違点甲1-1は実質的な相違点であり、かつ、甲1発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
オ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲1発明ではなく、かつ、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~10について
本件発明2~10は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~10は、いずれも甲1に記載された発明ではなく、かつ、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~10は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~10は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~10についての特許を取り消すことはできない。
3.申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)について
(1)甲2に記載された事項
甲2には以下の事項が記載されている。表の形式は証拠と異なることがある。また、英文の箇所は翻訳文を摘記する。
(2-1)「Zero Life Beer
[図:0001422411000008.jpg]
」(1頁左上欄)
(2-2)「商品説明
アサヒオリオンゼロライフビールは、新しい限定品である。爽やかな香りと軽やかな味わいを持つドイツ産ポラリスホップにより製造されている。」(1頁中央欄)
(2-3)「製品分析
[図:0001422411000009.jpg]
」(1頁左下欄)
(2-4)「
[図:0001422411000010.jpg]
」(2頁中央欄)
(2)甲2に記載された発明
甲2には、Asahi Breweries 社が製造するカテゴリー「アルコール飲料」、サブカテゴリー「ビール」に属する「Zero Life Beer」という商品について、「爽やかな香りと軽やかな味わいを持つドイツ産ポラリスホップにより製造されている」ことが記載され(摘記2-1、2-2)、アルコール含有量(%)は3.50%(摘記2-3)、パッケージに表示された成分には「ホップ」を含む低麦芽ビール(摘記2-4)が記載されている。
そうすると、甲2には以下の発明が記載されている。
「ドイツ産ポラリスホップにより製造された、アルコール含有量3.50%のZero Life Beerという商品名のビール。」(以下、「甲2発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「ビール」は、本件発明1における「ビール様発酵麦芽飲料」に相当する。
そうすると、両者は「ビール様発酵麦芽飲料。」の点で一致し、
相違点甲2-1:本件発明1は「90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する、」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、相違点甲2-1について検討する。
イ 相違点甲2-1について
甲2には甲2発明の製造方法は記載されておらず、甲2の記載から外観最終発酵度を求めることはできない。また、甲2には甲2発明が3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有することは記載されておらず、甲2の記載からその含有量を求めることもできない。よって、相違点甲2-1は実質的な相違点である。
また、甲2発明は市販の商品であり、その香味を変えることにつながる製造工程の変更や原料の変更を行い、外観最終発酵度を90~110%の範囲に調整し、3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度を7~20ppbに調整することは当業者が動機付けられることではなく、他の証拠の記載を参照しても当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明1が発揮する「キレ感及び冷涼感を有し、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させる」という効果は、甲2及び他の証拠の記載から当業者が予測することができない顕著な効果である。
よって、相違点甲2-1は当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の34頁において、(ア)外観最終発酵度及び(イ)3-メチル-2-ブテン-1-オールについて、以下のように主張する。また、申立人は、令和6年9月30日に提出した意見書の1~2頁において、3-メチル-2-ブテン-1-オールについて、上記2.(3)ウ(ウ)のとおり主張する。
(ア)外観最終発酵度について
「糖質ゼロビールにおいては、糖質を減らすために外観発酵度が必然的に高くなることから(要すれば甲7等を参照)、甲2発明の糖質ゼロビールは90~110%の外観最終発酵度を有している蓋然性が高い。」
(イ)3-メチル-2-ブテン-1-オールについて
a.「甲2発明においてもポラリスホップを用いており、上記・・・と同様の理由から(当審注:上記2.(3)ウ(イ)を参照。)、甲2発明についても7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有している蓋然性が高いか、或いは当業者が容易に想到し得たことである。」
しかし、上記2.(3)ウにおいて検討したことと同様のことがいえ、甲2には外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量は記載されておらず、糖質ゼロビールという記載及びポラリスホップにより製造されたとの記載から、甲2発明の外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を求めることはできない。
また、申立人は、「酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば、容易に発明の実施が可能である(当然に7~20ppbを充足する)と判断された」という推測に基づいて「甲2発明についても、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有している蓋然性が極めて高」いと主張しているが、後記する実施可能要件の判断のとおり、当審が申立人の推測したような判断をした事実はないから、申立人の主張は前提において誤りがあり、さらに、申立人は甲2発明の外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量の正確な値を立証する証拠を提出していない。
よって、相違点甲2-1は実質的な相違点である。
また、甲2発明は市販の商品であるから、甲2発明の香味を変えることにつながる製造工程の変更や原料の変更を行い、外観最終発酵度を90~110%の範囲に調整し、3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度を7~20ppbに調整することは当業者が動機付けられることとはいえないし、「90~110%の外観最終発酵度」と「7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する」こととの組合せにより「キレ感及び冷涼感を有し、ビール様発酵麦芽飲料の嗜好性を向上させる」という効果を得ることは、甲2を含むいずれの証拠にも記載されておらず、本件発明1は当業者が予測することができない顕著な効果を発揮するものである。よって、相違点甲2-1は甲2及び他の証拠の記載から当業者が容易に想到し得ることではない。
以上のとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。
エ 相違点甲2-1についてのまとめ
以上まとめると、相違点甲2-1は実質的な相違点であり、かつ、甲2発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
オ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲2発明ではなく、かつ、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~10について
本件発明2~10は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5及び8は、いずれも甲2に記載された発明ではなく、かつ、本件発明2~10は、いずれも甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~5及び8は、いずれも甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~10は、いずれも甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)により本件発明1~10についての特許を取り消すことはできない。
4.申立理由3(実施可能要件違反)について
(1)実施可能要件の判断手法
物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること及びその方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつその方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
(2)本件明細書の記載について
本件明細書には、上記第6 1.(3)に記載した事項が記載されている。
(3)実施可能要件についての判断
当業者は、本件明細書におけるビール様発酵麦芽飲料の原料及び製造方法の記載、3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度の好ましい範囲及びその濃度を3-メチル-2-ブテン-1-オールの添加量の調整又はホップ等の原料の選択等により調整することができる旨の記載、並びに実施例及び比較例の記載等に基づいて、「90~110%の外観最終発酵度を有し、7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する、ビール様発酵麦芽飲料。」を製造することができ、また、製造されたものをビール様発酵麦芽飲料として飲食に使用することができることを理解することができる。
そうすると、本件明細書には本件発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件発明1を生産し、かつ、本件発明1を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定される本件発明2、3及び8についても同様の記載があるといえる。
また、本件訂正により請求項1の記載を引用して特定されるものとなった本件発明4のビール様発酵麦芽飲料の製造方法についても、本件明細書には本件発明4に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件発明4の製造方法を使用し、かつ、その方法により生産した物を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。請求項4の記載を直接又は間接的に引用して特定される本件発明5、6及び9についても同様である。
さらに、本件訂正により請求項1の記載を引用して特定されるものとなった本件発明7のビール様発酵麦芽飲料に冷涼感を付与する方法についても、本件明細書には本件発明7に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件発明7の方法を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。請求項7の記載を引用して特定される本件発明10についても同様である。
(4)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、上記第4 1.(5)ア及びイのように主張している。また、申立人は、令和6年9月30日に提出した意見書の1~2頁において、以下のウのように主張する。
ウ 「ア 酵母について」の主張が取消理由において採用されなかったことについて
「申立理由3(実施可能要件)の「ア 酵母について」において、ビール中の3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度がホップと酵母の組み合せ(相乗効果)により大きく異なること、本件ではポラリス種ホップを用いたとしても如何なる酵母を使用すればよいか分からず当業者であっても過度の試行錯誤を要する旨の主張が採用されなかったということは、酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば、容易に発明の実施が可能である(当然に7~20ppbを充足する)と判断されたものと考えられる。」
しかし、ア 酵母及びイ ホップについては、本件明細書の[0030]に「本発明のビール様発酵麦芽飲料の製造は、3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有させること以外は、ビール又は発酵麦芽飲料を製造する際に通常行われる方法及び条件に従って行われる」と記載されており、当業者であれば、本件明細書に記載された原料及び製造方法についての記載及び出願時の技術常識に基づいて、公知の酵母ないしホップを用いてビール様発酵麦芽飲料を製造することができ、その際、酵母及びホップの種類や発酵条件を変えたときに、製造物の外観最終発酵度及び3-メチル-2-ブテン-1-オールの濃度がどのように変化するかを実測し、適切な条件を探索することは当業者が通常行うことであるから、本件明細書の実施例に酵母についての記載がなくとも、それだけで本件発明のビール様発酵麦芽飲料の製造に過度の試行錯誤を要するとまではいえないし、ホップ種の限定のない本件発明1、2、4、5及び7~10の製造に特に過度の試行錯誤を要するともいえない。また、申立人は、酵母及びホップを含む公知の原料及び発酵条件の組合せでは本件発明に相当するビール様発酵麦芽飲料を製造できないことを立証する具体的な証拠ないし理論的な説明を提出していないから、上記(3)の判断を覆すには足りない。
また、ウ 申立人の「ア 酵母について」の主張を採用することができない理由は上記したとおりであって、当審が「酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば、容易に発明の実施が可能である(当然に7~20ppbを充足する)」と判断した事実はないから、申立人の主張は理由がない。また、本件明細書の記載及び出願時の技術常識を参酌しても、「酵母の種類によらずポラリス種ホップを使用しさえすれば、容易に発明の実施が可能である(当然に7~20ppbを充足する)」という推論は成り立たないから、申立理由3(実施可能要件違反)を採用できないとする判断は、申立理由1-1~申立理由2-2(甲1又は甲2に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)を採用できないとした上記2.及び3.の判断と矛盾するものではない。
よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。
(5)申立理由3(実施可能要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由3(実施可能要件違反)により本件発明1~10についての特許を取り消すことはできない。
第8 新たに申し立てられた特許異議申立理由について
1.新たに申し立てられた特許異議申立理由(明確性要件違反)の内容
申立人は、令和6年9月30日に提出した意見書の第2~3頁において、以下のように主張している。
「訂正後の本件特許発明9、10は、請求項1及び4、請求項1及び7を引用しており、ここでいう「前記3-メチル-2-ブテン-1-オール」が請求項1に記載されたビール様発酵麦芽飲料中の「3-メチル-2-ブテン-1-オール」であるのか、或いは請求項4や7に記載された「糖液の3-メチル-2-ブテン-1-オール」であるのかが明確でなく、第三者に不測の不利益を与えるものである。
従って、訂正後の本件発明9、10は不明確である。特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。」
2.判断
(1)明確性要件の判断基準
上記第6 2.(1)に記載したとおりである。
(2)本件発明9及び10について
まず、請求項1、4及び7の記載を参照すると、請求項1には「7~20ppbの濃度で3-メチル-2-ブテン-1-オールを含有する、ビール様発酵麦芽飲料」と記載され、請求項4及び7には「糖液の3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量を7~20ppbに調整する」と記載されているから、ビール様発酵麦芽飲料における3-メチル-2-ブテン-1-オールの量に関しては「濃度」という用語が用いられ、糖液における3-メチル-2-ブテン-1-オールの量に関しては「含有量」という用語が用いられ、用語が使い分けられていることが見て取れる。
そして、請求項9及び10には「前記3-メチル-2-ブテン-1-オールの含有量が7ppb以上20ppb未満」と記載されているから、当該記載は糖液における3-メチル-2-ブテン-1-オールの「含有量」を特定した記載であると一義的に理解することができ、第三者に不測の不利益を及ぼすおそれはない。
よって、請求項9及び10の記載は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確なものではなく、本件発明9及び10は明確である。
3.新たに申し立てられた特許異議申立理由(明確性要件違反)のまとめ
以上のことから、本件発明9及び10は、いずれも特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、新たに申し立てられた特許異議申立理由(明確性要件違反)により本件発明9及び10についての特許を取り消すことはできない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び新たに申し立てられた特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1~10についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700087