特許異議申立
2025-700744
画像判定装置、画像判定方法、および、画像判定プログラム
- 審判番号
- 2025-700744
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-011214
- 登録番号
- 7623148
- 請求日
- 2025年07月18日
- 審決日
- 2026年01月13日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】シャープ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 【権利者】清水建設株式会社
- 【異議申立人】西林 晴子
- 審判長/審判官
- 審判長 伊藤 隆夫
- 審判官 中元 淳二
- 審判官 宮下 誠
- 分類
- P1652.121-Y (G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7623148号発明「画像判定装置、画像判定方法、および、画像判定プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7623148号の請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7623148号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年1月27日に出願され、令和7年1月20日にその特許権の設定登録がされ、令和7年1月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年7月18日に特許異議申立人 西林 晴子は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、1A~1D等は説明のために当審合議体で付したものであり、以下、構成1A~1D等という。
「【請求項1】
1A 鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理部と、
1B 前記鉄筋のメーカを示すメーカ情報を取得する取得部と、
1C 鉄筋のメーカごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得したメーカ情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部と、
1D を備えることを特徴とする画像判定装置。
【請求項2】
2A 鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理部と、
2B 前記鉄筋が使用される現場を示す現場情報を取得する取得部と、
2C 鉄筋が使用される現場ごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得した現場情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部と、
2D を備えることを特徴とする画像判定装置。」
「【請求項5】
5A 鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理ステップと、
5B 前記鉄筋のメーカを示すメーカ情報を取得する取得ステップと、
5C 鉄筋のメーカごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得したメーカ情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定ステップと、
5D を含むことを特徴とする画像判定装置による画像判定方法。
【請求項6】
6A 鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理ステップと、
6B 前記鉄筋が使用される現場を示す現場情報を取得する取得ステップと、
6C 鉄筋が使用される現場ごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得した現場情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定ステップと、
6D を含むことを特徴とする画像判定装置による画像判定方法。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人 西林 晴子は、証拠として、特開2020-166566号公報(以下、「甲1」という。)、及び、特開2013-040549号公報(以下、「甲2」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
申立理由:請求項1~2、5~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(同法第113条第2号)。
第4 書証の記載事項
1 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項(下線は強調のため当審にて付与した。以下同様。)が記載されている。
(1)「【0050】
本実施形態の配筋検査システム1に適用される携帯端末装置10としては、具体的には、例えば従来一般的に普及しているタブレット型やノート型の小型PC(personal computer)を利用することができる。この場合、それらのPCに対しては、本発明の配筋検査システムの作用を実現し得るアプリケーションプログラムを適宜インストールして使用する。これによって、本実施形態の携帯端末装置10を構成することができる。」
(2)「【0071】
図3に示す使用者(ユーザ;検査担当者)110は、本配筋検査システム1を持参して、配筋検査を行なう工事現場へ出向いて、当該配筋検査システム1を使用して、検査対象とする工事済みの配筋200の鉄筋200aを撮影し、画像データを含む各種の情報を取得する。
」
(3)「図3
[図:0001432088000001.jpg]
」
(4)「【0127】
即ち、図7の検査前サブメニュー画面においては、複数のメニューボタン203fとして、例えば「検査簿取込」機能,「鉄筋情報取込」機能,「事前検査設定」機能などがある。
【0128】
ここで、「検査簿取込」機能は、配筋検査に必要な情報(例えば設計データなど)を外部システム(例えば自社サーバなど;不図示)から取り込む機能である。そのために、配筋検査システム1における携帯端末装置10の制御部11は通信部16を介して、不図示の外部機器との通信を行って、当該外部機器との間で情報データの送受信を行なうことができるように構成されている。これにより、携帯端末装置10は、必要な情報データを適宜取り込むことができる。
【0129】
ここで、配筋検査を行う際に必要な情報は、例えば検査場所(工事現場)などを大まかに示す場所情報(例えば○○鉄道,□橋,△地点など)等の第1情報と、この第1情報に付属する複数の細部情報であって、例えば何をどのように検査するか示す第2情報(例えば、柱,識別番号,鉄筋の径,間隔,本数など)などがある。
【0130】
ここで、取り込まれるデータファイル形式としては、所定の規格に沿って規定される汎用的なデータファイル、例えばXML(Extensible Markup Language)形式のデータフォーマットファイルなどが適用される。
【0131】
また、「検査簿取込」機能においては、複数のデータファイルを同時に取り込むことができるようになっている。
【0132】
「鉄筋情報取込」機能は、配筋検査において、得られた画像データに基づいて鉄筋径を特定するのに必要となる情報を外部ファイルとして取り込む機能である。ここで、外部ファイルとは、例えば鉄筋の納品時に、鉄筋のメーカーから入手できる鉄筋情報などである。また、鉄筋の規格は、JIS規格によって規定されているものであるが、自由度があるために、鉄筋径などの数値はメーカー別に異なることがある。そのために、配筋検査を行なおうとしている現場で使用されている鉄筋についての情報を、予め取り込んでおくことが必要になる。
【0133】
通常の場合、鉄筋の調達は一括して行われる。また、調達先が変わることもあるため、鉄筋情報については、常に新しい情報に更新しておくのが望ましい。例えば、特定の工事現場においても、工期が長くなる場合には、調達先が変更される場合がある。そのような場合にも、常に新しい情報を取り込み安くしておけば、配筋検査において、常に正確な計測を行うことができる。したがって、この「鉄筋情報取込」機能は、オフィス業務として有用な機能である。」
(5)「図7
[図:0001432088000002.jpg]
」
(6)「【0232】
図14の範囲指定画面は、前段の撮影作業で取得された2つの画像データに基づいて検査対象物の計測処理を行なうのに際し、画像領域の中の所定の領域を指定して計測対象範囲とするための表示画面である。ここで、検査対象物の計測としては、例えば鉄筋の径の計測、配筋された鉄筋の間隔の計測、鉄筋の本数などの計測などである。」
(7)「【0255】
ところで、この計測画面においては、図13で撮影された画像データに基づいて、図14で設定された計測対象範囲における配筋検査のための計測処理を行なうことができる。そのためには、まず、複数の操作指示ボタン203kのうち「2点間計測」ボタンをタップ操作した後、画像表示領域203hの計測対象範囲内の所望の計測対象の2点をタップ操作する。これにより、特定対象の計測処理が開始される。この計測処理の実行中には、画像表示領域203hの所定の位置に、例えば進捗インジケータ(progress indicator)が表示される。そして、計測処理が完了すると、その計測結果として、検出された鉄筋を明示する表示(鉄筋に沿う複数の線)た、検出された各鉄筋の種類や鉄筋径,本数の情報、各鉄筋間隔の実測値などの情報が撮影画像301に重畳表示される。」
(8)「図13
[図:0001432088000003.jpg]
」
(9)「図14
[図:0001432088000004.jpg]
」
(10)前記(1)~(9)によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、1a~1hは説明のために当審合議体で付したものであり、以下、構成1a~1hという。
<甲1発明>
「1a 検査対象とする工事済みの配筋200の鉄筋200aを撮影し、画像データを含む各種の情報を取得し(【0071】)、
1b 配筋検査に必要な情報を外部システムから取り込み(【0128】)、
1c 配筋検査を行う際に必要な情報は、検査場所(工事現場)などを大まかに示す場所情報等の第1情報と、この第1情報に付属する複数の細部情報であって、例えば何をどのように検査するか示す第2情報(鉄筋の径,間隔,本数など)があり(【0129】)、
1d 配筋検査において、得られた画像データに基づいて鉄筋径を特定するのに必要となる情報を外部ファイルとして取り込み(【0132】)、
1e 外部ファイルとは、鉄筋のメーカーから入手できる鉄筋情報などであり、(【0132】)
1f 鉄筋の規格は、JIS規格によって規定されているものであるが、鉄筋径などの数値はメーカー別に異なり、そのために、配筋検査を行なおうとしている現場で使用されている鉄筋についての情報を、予め取り込んでおくことが必要になり(【0132】)、
1g 検査対象物の計測としては、例えば鉄筋の径の計測、配筋された鉄筋の間隔の計測、鉄筋の本数などの計測などであり(【0232】)、
1h 特定対象の計測処理が開始され、計測処理が完了すると、その計測結果として、検出された鉄筋を明示する表示(鉄筋に沿う複数の線)、検出された各鉄筋の種類や鉄筋径,本数の情報、各鉄筋間隔の実測値などの情報が撮影画像301に重畳表示される(【0255】)、
1a 配筋検査システム1(【0071】)。」
2 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0022】
≪システムの構成と概要≫
図1は、配筋情報取得システム1の構成を示す図である。配筋情報取得システム1は、建設現場におけるデジタルカメラ3及び携帯端末4と、事務所における管理サーバ5とを備える。デジタルカメラ3と、携帯端末4との間は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等による接続でデータの送受信が可能である。携帯端末4と、管理サーバ5との間は、無線通信等によりデータの送受信が可能である。
【0023】
デジタルカメラ3は、鉄筋を含む柱、梁、床、壁等の撮影対象部位2を撮影するものであって、画素数が例えば400万画素以上であり、オートフォーカス機能をオフにできるものが用いられる。携帯端末4は、携帯型情報処理機器であり、デジタルカメラ3から撮影したデジタル画像を取り込んで配筋情報を生成し、管理サーバ5から設計図面情報を受信し、配筋情報と、設計図面情報とを比較、照合することにより、出来形が正当か否かを判定する。なお、携帯端末4は、PC(Personal Computer)やサーバで代用してもよい。管理サーバ5は、設計図面情報や工事写真情報を記憶する記憶部55を備え、それらの情報を携帯端末4と送受信する。」
(2)「図1
[図:0001432088000005.jpg]
」
(3)「【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る配筋情報取得システムは、建設現場において、マーカ(パターン)を両端に付した背景板を異形鉄筋の後ろに配置し、デジタルカメラを用いて両端のマーカ及びその間の異形鉄筋を撮影し、携帯端末(配筋情報取得装置)を用いて撮影画像から異形鉄筋の本数、径長及びピッチ(間隔)等の配筋情報を求め、径長の分布から各鉄筋の種類(規格、公称直径や呼び径)を推定するものである。特に、背景板を鉄筋の間に挿入可能な形状にし、その背景板を斜めに挿入することにより、主筋及びせん断補強筋(以下、簡単に「補強筋」とする)の径長等を同時に計測することができる。なお、本実施の形態では、主筋は、鉛直方向に配置されているものとし、補強筋は、水平方向に配置されているものとする。
【0020】
さらに、最小径の調査データ(配筋指針)及びふしの高さのJIS規格を用いて、鉄筋の種類ごとに、鉄筋の回転により変化する最大径の範囲(鉄筋規格情報)を予め用意する。そして、実際に撮影した画像から最大径を求め、鉄筋規格情報に基づいて最大径から鉄筋の種類を判別する。」
(4)「【0015】
また、本発明の上記鉄筋規格情報作成装置において、前記予め記憶する最小径は、前記規格ごとの、各メーカの鉄筋の最小径を平均したものであることとしてもよい。
この構成によれば、各メーカが製造した既存鉄筋の最小径を調査したデータがあるので、規格ごとに平均した最小径を用いる。これによれば、鉄筋のメーカごとに鉄筋規格情報を作成することなく、一元化することができる。」
(5)「【0026】
≪データの構成≫
図4は、配筋情報取得システム1に記憶されるデータの構成を示す図である。図4(a)は、携帯端末4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す。記憶部45は、画像処理プログラム451及び鉄筋規格情報452を記憶する。画像処理プログラム451は、デジタルカメラ3で撮影された画像データから配筋情報を取得し、設計図面情報との適合性を判定する処理を行うプログラムであり、当該処理の必要に応じて処理部44の指示により記憶部45から読み出される。鉄筋規格情報(鉄筋種類情報)452は、径長の分布から鉄筋の寸法に関する規格(種類)を求めるために用いられるテーブル情報である。その詳細は、別途説明する。」
(6)「図4
[図:0001432088000006.jpg]
」
第5 申立理由についての当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア 構成1Aについて
(ア) 構成1aの「検査対象とする工事済みの配筋200の鉄筋200aを撮影し、画像データを含む各種の情報を取得し」との事項から、「画像データ」は「鉄筋200aを撮影し」たものが含まれるといえる。すると、構成1aの「鉄筋200aを撮影し」たものを含む「画像データ」は構成1Aの「鉄筋を撮影した撮影画像」に相当する。
(イ) 構成1dの「得られた画像データに基づいて鉄筋径を特定するのに必要となる情報を外部ファイルとして取り込み」との事項、及び構成1cの「配筋検査を行う際に必要な情報は、」「例えば何をどのように検査するか示す第2情報(鉄筋の径,間隔,本数など)があり」との事項から、甲1発明は、得られた画像データに基づいて、鉄筋の径をどのように検査するか示す情報を取り込むものといえる。
(ウ) 上記(イ)及び構成1gの「検査対象物の計測としては、例えば鉄筋の径の計測、配筋された鉄筋の間隔の計測、鉄筋の本数などの計測などであり」との事項から、甲1発明は、得られた画像データに基づいて、鉄筋の径をどのように検査するか示す情報を取り込み、検査対象物として鉄筋の径の算出をしているものといえる。
(エ) 上記(ア)及び(ウ)で指摘したように、甲1発明は、「鉄筋200aを撮影し」たものを含む画像データに基づいて、鉄筋の径をどのように検査するか示す情報を取り込み、検査対象物として鉄筋の径の算出をしているといえるから、本件発明と甲1発明とは構成1Aの「鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する」点で共通する。
(オ) 甲1発明の「配筋検査システム」が、上記(エ)で指摘した画像データに基づいて鉄筋の径を算出をする画像処理を行う処理部を有していることは明らかであり、そのような処理部を「画像処理部」と呼ぶことは任意である。
上記(ア)から(オ)で指摘した事項を総合すると、本件発明と甲1発明とは、構成1Aの「鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理部」を有する点で共通する。
イ 構成1Bについて
構成1dの「配筋検査において、得られた画像データに基づいて鉄筋径を特定するのに必要となる情報を外部ファイルとして取り込み」との事項、構成1eの「外部ファイルとは、鉄筋のメーカーから入手できる鉄筋情報などであり、」との事項から、甲1発明は、鉄筋のメーカーから入手できる鉄筋情報を取り込む構成を有しているといえる。
また、「鉄筋情報」に関して、構成1fの「鉄筋の規格は、JIS規格によって規定されているものであるが、鉄筋径などの数値はメーカー別に異なり、そのために、配筋検査を行なおうとしている現場で使用されている鉄筋についての情報を、予め取り込んでおくことが必要になり」との事項から、甲1発明の「鉄筋情報」は、鉄筋のメーカー別に異なる鉄筋径の数値を含むといえる。
しかしながら、甲1発明は、構成1Bの「前記鉄筋のメーカを示すメーカ情報を取得する取得部」を備えているとはいえない。
ウ 構成1Cについて
上記イで言及したとおり甲1発明の「鉄筋情報」は、鉄筋のメーカー別に異なる鉄筋径の数値を含むものの、複数のメーカーの「鉄筋情報」を同時に取得することは、甲1には記載も示唆もされていないから、甲1発明は、構成1Cの「鉄筋のメーカごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得したメーカ情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」を備えているとはいえない。
エ 構成1Dについて
構成1aの「配筋検査システム1を使用して、検査対象とする工事済みの配筋200の鉄筋200aを撮影し、画像データを含む各種の情報を取得し」との事項、及び構成1dの「配筋検査において、得られた画像データに基づいて鉄筋径を特定するのに必要となる情報を外部ファイルとして取り込み」との事項から、甲1発明は画像に基づき鉄筋径を特定する配筋検査システムであるといえる。
ここで、画像データに基づき鉄筋径を特定することは、画像データに基づき鉄筋径の判定を行っているものといえ、また甲1発明の配筋検査システムは装置によって構成されていることは明らかであるから、甲1発明の配筋検査システム1は画像判定装置を備えるものといえる。
すると、本件発明と甲1発明とは、構成1Dの「画像判定装置」である点で共通する。
上記ア~エで言及した事項を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理部と、
を備えることを特徴とする画像判定装置。」
そして、本件発明1と甲1発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「前記鉄筋のメーカを示すメーカ情報を取得する取得部」を備えているのに対し、甲1発明は鉄筋のメーカーから入手できる鉄筋情報を取り込む構成を有しており、加えて鉄筋のメーカー別に異なる鉄筋径の数値を取得する構成を有しているものの、鉄筋のメーカーそのものを示す「メーカ情報」を取得する構成を備えていない点。
<相違点2>
本件発明1は「鉄筋のメーカごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得したメーカ情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」を備えているのに対し、甲1発明は鉄筋の規格が規定されており、また鉄筋径の数値がメーカー別に異なる鉄筋についての情報を取り込む構成を有しているが、本件発明1のような「メーカ情報」から規格を判定する規格判定部を備えていない点。
(2)相違点についての判断
以下甲1発明に、上記相違点1及び上記相違点2で指摘した「前記鉄筋のメーカを示すメーカ情報を取得する取得部」及び「鉄筋のメーカごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得したメーカ情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」を備えるように構成することが当業者にとって容易に想到し得たことであるか検討する。
甲2には、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(1)及び(2)で指摘したように、配筋情報取得システムの携帯電話において、デジタルカメラで撮影したデジタル画像を取り込んで配筋情報を生成し、管理サーバから設計図面情報を受信して、配筋情報と設計図面情報とを比較し、出来形が正当か否かを判定することの記載がある。
また甲2には、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(3)及び(4)で指摘したように、配筋情報取得システムである携帯電話を用いて撮影画像から異形鉄筋の最大径を求め、鉄筋規格情報に基づいて最大径から鉄筋の種類を判別することの記載がある。ここで、鉄筋規格情報は最小径の調査データ及びふしの高さのJIS規格を用いて最大径の範囲を予め用意するものであり、最小径の調査データは規格ごとの、各メーカの鉄筋の最小径を平均したものであるとの記載がある。
更に甲2には、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(5)及び(6)で指摘したように、鉄筋規格情報は径長の分布から鉄筋の寸法に関する規格を求めるために用いられるテーブル情報であることの記載がある。
しかしながら、甲2には、上記相違点1の「前記鉄筋のメーカを示すメーカ情報を取得する取得部」及び上記相違点2の「鉄筋のメーカごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得したメーカ情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」に該当する構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は甲1発明及び甲2の記載事項に基づいて容易に発明を想到し得たものとはいえない。
2 本件発明2について
(1)本件発明2と甲1発明との対比
ア 構成2Aについて
上記「1 本件発明1について」「(1) 本件発明1と甲1発明との対比」「ア 構成1Aについて」において指摘したのと同様に、本件発明2と甲2発明とは、構成2Aの「鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理部」を備える点で共通する。
イ 構成2Bについて
構成1bの「配筋検査に必要な情報を外部システムから取り込み」との事項、及び構成1cの「配筋検査を行う際に必要な情報は、検査場所(工事現場)などを大まかに示す場所情報等の第1情報と、この第1情報に付属する複数の細部情報であって、例えば何をどのように検査するか示す第2情報(鉄筋の径,間隔,本数など)があり」との事項から、甲1発明は、配筋検査の検査場所である工事現場の場所情報を取り込む構成を有しているといえる。また、配筋検査の検査場所とは、当然鉄筋が使用されている現場である。
したがって、本件発明2と甲1発明とは、構成2Bの「前記鉄筋が使用される現場を示す現場情報を取得する取得部」を備える点で共通する。
ウ 構成2Cについて
上記「1 本件発明1について」「(1) 本件発明1と甲1発明との対比」「ウ 構成1Cについて」で言及したとおり甲1発明の「鉄筋情報」は、鉄筋のメーカー別に異なる鉄筋径の数値を含むものの、複数のメーカーの「鉄筋情報」を同時に取得することは、甲1には記載も示唆もされていないから、甲1発明は、構成2Cの「鉄筋が使用される現場ごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得した現場情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」を備えているとはいえない。
エ 構成2Dについて
上記「1 本件発明1について」「(1) 本件発明1と甲1発明との対比」「エ 構成1Dについて」において指摘したのと同様に、本件発明2と甲1発明とは、構成1Dの「画像判定装置」である点で共通する。
上記ア~エで言及した事項を踏まえると、本件発明2と甲1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「鉄筋を撮影した撮影画像から当該鉄筋の径を算出する画像処理部と、
前記鉄筋が使用される現場を示す現場情報を取得する取得部と、
を備えることを特徴とする画像判定装置。」
そして、本件発明2と甲1発明とは、次の点で相違する。
<相違点>
本件発明2は「鉄筋が使用される現場ごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得した現場情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」を備えているのに対し、甲1発明は鉄筋の規格が規定されている一方で、配筋検査を行なおうとしている現場で使用されている鉄筋についての情報を取り込む構成を有しているが、本件発明1のような規格判定部を備えていない点。
(2)相違点についての判断
以下甲1発明に、上記相違点として指摘した「鉄筋が使用される現場ごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得した現場情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」を備えるように構成することが当業者にとって容易に想到し得たことであるか検討する。
甲2には、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(1)及び(2)で指摘したように、配筋情報取得システムの携帯電話において、デジタルカメラで撮影したデジタル画像を取り込んで配筋情報を生成し、管理サーバから設計図面情報を受信して、配筋情報と設計図面情報とを比較し、出来形が正当か否かを判定することの記載がある。
また甲2には、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(3)及び(4)で指摘したように、配筋情報取得システムである携帯電話を用いて撮影画像から異形鉄筋の最大径を求め、鉄筋規格情報に基づいて最大径から鉄筋の種類を判別することの記載がある。加えて、鉄筋規格情報は最小径の調査データ及びふしの高さのJIS規格を用いて最大径の範囲を予め用意するものであり、最小径の調査データは規格ごとの、各メーカの鉄筋の最小径を平均したものであるとの記載がある。
更に甲2には、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(5)及び(6)で指摘したように、鉄筋規格情報は径長の分布から鉄筋の寸法に関する規格を求めるために用いられるテーブル情報であることの記載がある。
しかしながら甲2には、相違点である「鉄筋が使用される現場ごとに、当該鉄筋の規格を示す規格データと、当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報を参照して、前記算出した鉄筋の径と、前記取得した現場情報とから、当該鉄筋の規格を判定する規格判定部」に該当する構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明2は甲1発明及び甲2の記載事項に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。
3 本件発明5、6について
本件発明5、6は、本件発明1、2の「画像判定装置」の発明を「画像判定方法」の発明に書き換えたものである。
本件発明5、6は、本件特許1、2と同様の発明特定事項を有するから、上記「1 本件発明1について」及び上記「2 本件発明2について」で検討したとおり、当業者が甲1発明及び甲2の記載事項に基いて容易に想到し得たものとはいえない。
4 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書の10頁32行から11頁4行において、甲1発明に甲2の記載事項を組み合わせて本件発明1とすることの容易性として、「甲2号証には、デジタルカメラから撮影したデジタル画像に基づいて配筋情報を生成する配筋情報取得システムが、鉄筋径の範囲を示す鉄筋規格情報に基づいて鉄筋径から鉄筋の規格を判別することが記載されているといえる。
甲1号証、及び、甲2号証記載の事項はいずれも画像から鉄筋径を算出する、鉄筋判別の効率化を目的とした技術を開示しており、技術分野、課題、課題の解決手段、作用、及び、機能などが共通しているため、甲1発明aに甲第2号証に記載の事項を適用することに困難性はない。」と主張する。
また、特許異議申立人は、特許異議申立書の12頁1行から8行において、甲1発明に甲2の記載事項を組み合わせて本件発明2とすることの容易性として、「甲2号証には、デジタルカメラから撮影したデジタル画像に基づいて配筋情報を生成する配筋情報取得システムが、鉄筋径の範囲を示す鉄筋規格情報に基づいて鉄筋径から鉄筋の規格を判別することが記載されているといえる。
甲1号証、及び、甲2号証記載の事項はいずれも画像から鉄筋径を算出する、鉄筋判別の効率化を目的とした技術を開示しており、技術分野、課題、課題の解決手段、作用、及び、機能などが共通しているため、甲1発明bに甲第2号証に記載の事項を適用することに困難性はない。」と主張する。
しかしながら、上記「1 本件発明1について」「(2)相違点についての判断」及び上記「2 本件発明2について」「(2)相違点についての判断」で指摘したように、甲2には本件発明1又は本件発明2と、甲1発明との相違点に相当する構成について、何ら記載も示唆もしていない。
なお、甲2の「鉄筋径の範囲を示す鉄筋規格情報」は、上記「第4 書証の記載事項」「2 甲2の記載事項」(3)ないし(6)で指摘したように、径長の分布から鉄筋の寸法に関する規格を求めるために用いられるテーブル情報であるが、各メーカーごとに作成するものではなく、各メーカーの既存鉄筋の最小径の平均を用いて作成するものである。
よって、甲2の「鉄筋径の範囲を示す鉄筋規格情報」は、本件発明1の「鉄筋のメーカごと」の「当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報」とは異なり、また本件発明2の「鉄筋が使用される現場ごと」の「当該規格の鉄筋径の範囲を示す鉄筋範囲データとを対応付けた鉄筋規格情報」とも異なるといえる。
したがって、甲1発明に甲2記載の事項を適用して本件発明1及び本件発明2とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
5 小括
以上、上記1~4によれば、本件発明1、本件発明2、本件発明5及び本件発明6は、当業者が甲1発明及び甲2の記載事項に基づいて容易に発明を想到し得たとはいえない。
よって、申立理由には理由がない。
第6 むすび
上記第3~第5によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700744