特許異議申立
2026-700020
画像処理方法、プログラムおよび画像処理システム
- 審判番号
- 2026-700020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-187839
- 登録番号
- 7703838
- 請求日
- 2026年01月05日
- 審決日
- 2026年05月22日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社リコー
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 中元 淳二
- 審判官 圓道 浩史
- 分類
- P1651.121-Y (G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7703838号発明「画像処理方法、プログラムおよび画像処理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7703838号の請求項1から請求項15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7703838号(以下、「本件特許」という。)の請求項1から15に係る特許についての出願は、令和2年11月11日に出願され、令和7年6月30日にその特許権の設定登録がされ、令和7年7月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年1月5日に特許異議申立人 角田 朗により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1から15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」から「本件発明15」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1から15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1に付したAからFは説明のために当審合議体で付したものであり、以下、対応する発明特定事項を「構成A」から「構成F」という。
「 【請求項1】
A 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、
B 構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像から前記空間の構造を推定する構造推定ステップと、
C 前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する検知ステップと、
D 検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する位置推定ステップと、
E 推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する領域推定ステップと、
F 前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する画像処理ステップと、
A を実行する画像処理方法。
【請求項2】
前記検知ステップは、前記空間を撮影する撮影装置を支持する支持部材を検知し、
前記画像処理ステップは、検知された前記支持部材を隠すように前記背景画像に対して所定の画像を合成する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記検知ステップは、前記背景画像に示されている被写体のうち、光源となる特定の被写体を検知し、
前記位置推定ステップは、検知された前記特定の被写体の前記空間上の位置を推定し、
前記画像処理ステップは、前記位置推定ステップによって推定された前記特定の被写体の前記空間上の位置に対して、光源となる仮想物体を示す画像を合成する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記構造推定ステップは、前記空間の大きさを推定する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理方法であって、
前記構造推定ステップは、前記空間の用途を推定し、更に、
推定された前記用途に基づいて、前記仮想対象物を決定する決定ステップを実行し、
前記画像処理ステップは、前記背景画像に対して、決定された前記仮想対象物を合成する画像処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理方法であって、更に、
外部装置から前記空間の用途を示す用途情報を受信する受信ステップと、
受信された前記用途情報に基づいて、前記仮想対象物を決定する決定ステップと、を実行し、
前記画像処理ステップは、前記背景画像に対して、決定された前記仮想対象物を合成する画像処理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の画像処理方法であって、
前記画像処理システムは、仮想対象物の配置条件を示す条件情報を記憶する記憶手段を備え、
前記決定ステップは、記憶された前記条件情報から前記空間の用途に応じた前記仮想対象物を選択する画像処理方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像処理方法であって、更に、
前記領域推定ステップによって推定された前記領域に対して前記仮想対象物を配置する配置ステップを実行し、
前記画像処理ステップは、前記背景画像に対して、配置された前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理方法を実行させるプログラム。
【請求項10】
構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像から前記空間の構造を推定する構造推定手段と、
前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する検知手段と、
検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する位置推定手段と、
推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する領域推定手段と、
前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する画像処理手段と、
を備える画像処理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の画像処理システムであって、更に、
前記画像処理手段によって合成された処理画像を、表示装置に表示させる表示制御手段を備える画像処理システム。
【請求項12】
前記表示制御手段は、前記背景画像および前記処理画像の表示を切り替える請求項11に記載の画像処理システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の画像処理システムであって、
表示された前記処理画像上での前記仮想対象物の中心位置を算出する算出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記処理画像に対して、算出された前記中心位置に付加情報を重畳させて表示させる画像処理システム。
【請求項14】
前記付加情報は、前記仮想対象物に対応するアイコン、またはWEBサイトへのリンクである請求項13に記載の画像処理システム。
【請求項15】
前記表示制御手段は、前記処理画像に示されている前記仮想対象物の色の変更または前記仮想対象物が縁取りされた画像を表示させる請求項11乃至14のいずれか一項に記載の画像処理システム。」
第3 特許異議申立書に記載された申立理由
特許異議申立書に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。
1 申立理由
(1)本件特許発明1、3、10及び11は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1、3、10及び11は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(2)本件特許発明2は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明2は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(3)本件特許発明4から9は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載の発明に基づき、または甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明4から9は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(4)本件特許発明12は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明12は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(5)本件特許発明13及び14は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲6号証に記載の発明に基づき、または甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明13及び14は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
(6)本件特許発明15は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲7号証に記載の発明に基づき、または甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証及び甲第7号証に記載の発明に基づき、または甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載の発明に基づき、または甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明15は特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきである。
2 証拠方法
(1)甲第1号証:国際公開第2019/088273号
(2)甲第2号証:特開2018-81548号公報
(3)甲第3号証:特開2016-85695号公報
(4)甲第4号証:特表2020-525902号公報
(5)甲第5号証:特開2004-5513号公報
(6)甲第6号証:特開2010-238096号公報
(7)甲第7号証:特開2016-218547号公報
第4 証拠について
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載について
甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のため当審合議体が付与した。以下同様。
ア 「 【0026】
背景画像として使用される天球画像は、360°画像、全天球画像、全方位画像などとも呼ばれ、撮影箇所の周囲ほぼ360°の被写体が写った画像のことである。背景画像(天球画像)は、静止画であっても良いし、動画であっても良い。」
イ 「 【0031】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図2A及び図2Bは、図1に示す画像処理装置が実行する画像合成処理を説明するための模式図である。このうち、図2Aは、不動産物件の間取図を示す。また、図2Bは、該不動産物件のリビングルーム(図2A参照)において撮影を行うことにより取得した背景画像(天球画像)に、ソファ及びローテーブル、タンス、並びに絵の3Dモデルを合成した画像の一部を示す。図2Bに示すように、ソファ及びローテーブル、タンス、並びに絵の各オブジェクトは、配置に応じた奥行き感が再現されているため、あたかもリビングルームに各オブジェクトを実際に配置して撮影を行ったかのように、背景画像に対して違和感なく表示されている。
・・・(中略)・・・
【0047】
次に、本実施形態に係る画像処理方法を説明する。
本実施形態における画像処理の概要は以下のとおりである。即ち、合成対象の背景画像(天球画像)と、影用の透明な天球画像のレイヤー(影レイヤー)と、家具等のオブジェクトの3Dモデル用の透明な天球画像のレイヤー(オブジェクトレイヤー)との、計3層の天球画像を用意する。背景画像は、不動産物件の現場で全天球カメラなどを用いて撮影を行うことにより取得されたものである。なお、背景画像に重ねるレイヤーは上記2つのレイヤーに加え、適宜増やしても良い。
・・・(中略)・・・
【0051】
以下、このような画像処理について、具体例を示しながら詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。図4は、背景画像の被写体の一例である不動産物件の間取図である。本実施形態においては、図4に示す間取図上の撮影点P0に対応する位置に全天球カメラを設置して不動産物件内を撮影することにより、静止画又は動画の天球画像を生成し、この天球画像を背景画像として3Dモデルを合成するものとして説明する。
・・・(中略)・・・
【0055】
続くステップS13において、画像処理部150は、図4に示す間取図におけるオブジェクトの配置箇所に対応する3D空間における3Dモデルの位置を推定する。
【0056】
図5は、ステップS13における位置推定処理を示すフローチャートである。また、図6~図8は、3Dモデルの位置推定処理を説明するための模式図である。このうち、図6は、三脚に取り付けた全天球カメラ20を床面上に設置した状態を示している。図7は、全天球カメラ20により不動産物件を撮影することにより得られた背景画像L1を、天球の中心点P0’を通る水平面でカットした状態を示している。図7に示す背景画像L1には、撮影点P0(図4参照)に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写っている。図8は、同背景画像L1を、中心点P0’を通る垂直面でカットした状態を示している。図8に示す背景画像L1には、全天球カメラ20の視野に入る床面、壁、天井、玄関ドア等の像が写っている。
・・・(中略)・・・
【0058】
まず、ステップS131において、配置設定部151は、間取図上でオブジェクトの配置を決定する。詳細には、配置設定部151は、不動産物件の間取図を表示部12に表示させ、家具等のオブジェクトを配置したい場所を間取図上でユーザに指定させる。そして、配置設定部151は、ユーザによる操作に応じて操作入力部13から入力された信号に従い、間取図におけるオブジェクトの位置情報(座標)を取得する。以下においては、図4に示す間取図上の点P1が、ユーザ所望のオブジェクトの配置箇所として決定されたものとする。
・・・(中略)・・・
【0060】
続くステップS133において、3D位置推定部152は、間取図に基づいて、背景画像L1によって囲まれる3D空間における3Dモデルの位置を導出する。詳細には、3D位置推定部152は、撮影点P0を天球の中心点P0’と対応づけた3D空間を作成し、間取図における各部の位置や寸法を3D空間の座標に対応づける。それにより、間取図における点P1に対応する3D空間内の点P1’の座標を取得することができる。
このようにして3Dモデルの位置が推定されると、処理はメインルーチンに戻る。
【0061】
再び図3を参照すると、ステップS13に続くステップS14において、画像処理部150は、ステップS13において推定された3D空間の位置に3Dモデルを配置する。図9は、図3に示す画像処理を説明するための模式図であり、背景画像L1によって囲まれる3D空間にソファの3Dモデルa11を配置した状態を示している。
・・・(中略)・・・
【0065】
続くステップS18において、オブジェクトレイヤー生成部153は、3Dモデルの像がレンダリングされたオブジェクトレイヤーを生成する。詳細には、オブジェクトレイヤー生成部153は、ステップS14において3D空間に配置され、さらに、ステップS16においてライティングされた3Dモデルを、3D空間の中心点P0’を投影中心として、背景画像と同じ天球面上に位置するオブジェクトレイヤーL3に投影する。図9には、影レイヤーL2の上層のオブジェクトレイヤーL3に、3Dモデルa11を投影した像の領域a15が示されている。なお、オブジェクトレイヤーL3のうち、像の領域a15以外の領域は透明である。
【0066】
続くステップS19において、画像合成部156は、背景画像L1、影レイヤーL2、及び、オブジェクトレイヤーL3をこの順に重畳した合成画像を生成する。それにより、背景画像におけるユーザ所望の位置に3Dモデルの像が合成された画像が得られる。」
ウ 「 【0071】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の構成は全体として第1の実施形態(図1参照)と同様であり、3D位置推定部152が実行する3Dモデルの位置推定処理(図3のステップS13参照)が第1の実施形態と異なる。
【0072】
図10は、本発明の第2の実施形態における位置推定処理を示すフローチャートである。図11は、背景画像の被写体の一例である不動産物件の間取図である。図12A~図13Bは、本実施形態における位置推定処理を説明するための模式図である。このうち、図12Aは、全天球カメラ20により不動産物件を撮影している様子を示す側面図であり、図12Bは、該撮影によって得られた背景画像L1を、中心点P0’を通る垂直面でカットした状態を示している。図13Aは、全天球カメラ20により撮影を行っている様子を示す上面図であり、図13Bは、背景画像L1を、中心点P0’を通る水平面でカットした状態を示している。
・・・(中略)・・・
【0074】
まず、ステップS231において、配置設定部151は、間取図上でオブジェクトの配置を決定する。オブジェクトの配置の決定処理は、第1の実施形態と同様である(図5のステップS131参照)。以下においては、図11に示す間取図上の点P2が、オブジェクトの配置箇所として決定されたものとする。
【0075】
続くステップS232において、3D位置推定部152は、間取図におけるオブジェクトの配置箇所の近傍にある被写体を参照オブジェクトとして選択する。以下においては、図11に示す流し台が参照オブジェクト21として選択されたものとする。
【0076】
続くステップS233において、3D位置推定部152は、背景画像L1に写った参照オブジェクト21がいっぱいに収まる視野領域の垂直画角及び水平画角を取得する。詳細には、図12B及び図13Bに示すように、参照オブジェクト21が写った領域a21を背景画像L1から抽出し、垂直画角α及び水平画角βを測定する。垂直画角αについては、床面から全天球カメラ20までの高さhに相当する領域を測定する。
【0077】
続くステップS234において、3D位置推定部152は、背景画像L1によって囲まれ、間取図における撮影点P0を天球の中心点P0’に対応づけた3D空間を生成する。
【0078】
続くステップS235において、3D位置推定部152は、3D空間における参照オブジェクト21の位置を推定する。なお、参照オブジェクト21の位置は、例えば参照オブジェクト21の中心点や撮影点P0から最短距離の点などの代表点によって表すことができる。具体例として、図12A及び図12Bに示すように、垂直画角αと撮影点P0の高さhとから、次式(1)により、撮影点P0から参照オブジェクト21の代表点までの距離d1を算出することができる。
d1=h/tanα …(1)
・・・(中略)・・・
【0080】
続くステップS236において、3D位置推定部152は、3D空間における3Dモデルの位置を導出する。例えば、図11に示すように、参照オブジェクト21(流し台)にオブジェクトを並べるとした場合、3D空間においても、ステップS235において推定された参照オブジェクト21の位置の近傍(例えば、距離x4だけずらした位置)に3Dモデルを配置すれば良い。
その後、処理はメインルーチンに戻る。」
エ 「 【0084】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置の構成は全体として第1の実施形態(図1参照)と同様であり、3D位置推定部152が実行する3Dモデルの位置推定処理が、第1の実施形態と異なる。
【0085】
図14は、本実施形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。図15は、背景画像の被写体の一例である不動産物件の間取図である。図16は、背景画像の一例を示す模式図であり、中心点P0’を通る水平面で背景画像L1をカットした状態を示している。本実施形態においては、不動産物件に配置された家具や内装などの被写体の距離(奥行き)や寸法の計測値に基づいて、不動産物件における撮影点P0を特定し、オブジェクト位置を推定する。
【0086】
まず、ステップS30において、画像処理部150は、3Dモデルを合成するための背景画像を取得する。
【0087】
続くステップS31において、画像処理部150は、背景画像L1に基づき、撮影点P0から複数箇所の被写体までの距離及び被写体の寸法を計測し、計測データを保存する。被写体の距離及び寸法の計測方法は、上記第2の実施形態において説明したものと同様である(図12A~図13B参照)。距離及び寸法を計測する被写体の数は任意であるが、一例として、3箇所の被写体までの距離を計測することにより、水平面における撮影点P0の座標を特定することができる。
【0088】
続くステップS32において、画像処理部150は、被写体の計測データを背景画像と関連づける。図16は、ステップS31において計測された距離d31~d38や、水平面における寸法x31、x32、y31、y32が、背景画像L1と関連付けられた状態を示している。垂直面における寸法についても同様に、背景画像に関連付けられる。
【0089】
続くステップS33において、画像処理部150は、背景画像L1に合成する3Dモデルを表す3Dデータを取得する。また、ステップS34において、画像処理部150は、背景画像L1に合成する3Dモデルに関するパラメータを取得する。ステップS33、34の処理は、それぞれ、図3に示すステップS11、S12と同様である。
【0090】
続くステップS35において、画像処理部150は、間取図上でオブジェクトの配置を決定する。オブジェクトの配置の決定処理は、第1の実施形態と同様である(図5のステップS131参照)。以下においては、図15に示す間取図上の点P3が、オブジェクトの配置箇所として決定されたものとする。
【0091】
続くステップS36において、画像処理部150は、背景画像L1を撮影した際の撮影点P0の位置を取得する。詳細には、3D位置推定部152が、ステップS31において計測された距離から(図15参照)、間取図における撮影点P0の座標を算出する。
【0092】
続くステップS37において、画像処理部150は、背景画像L1に関連付けられた計測データに基づいて、背景画像L1によって囲まれ、間取図における撮影点P0を天球の中心点P0’に対応づけた3D空間を生成する。
【0093】
続くステップS38において、画像処理部150は、ステップS35において決定されたオブジェクトの配置に基づいて、3D空間に3Dモデルを配置する。詳細には、3D位置推定部152が、間取図における撮影点P0に対するオブジェクトの配置箇所(点P3)の座標を算出し、この配置箇所に対応する3D空間内の位置(図16の点P3’)を推定し、この位置に3Dモデルを配置する。」
オ 「 【0098】
図17は、本発明の第1~第3の実施形態に係る画像処理装置が適用されるシステムの構成例を示すネットワーク図である。図17に示すシステム1は、画像処理装置(サーバ)30と、不動産管理端末31と、オブジェクト管理端末32と、画像表示端末33とを備え、これらの機器が通信ネットワークNを介して接続されている。通信ネットワークNとしては、例えばインターネット回線や電話回線、LAN、専用線、移動体通信網、WiFi(Wireless Fidelity)、ブルートゥース(登録商標)等の通信回線、又はこれらの組み合わせが用いられる。通信ネットワークNは、有線、無線、又はこれらの組み合わせのいずれであっても良い。
【0099】
画像処理装置30は、演算処理能力の高いホストコンピュータによって構成され、システム1を統括的に管理するサーバとして機能すると共に、上記第1~第3の実施形態において説明した画像処理を実行する。画像処理装置30を構成するコンピュータは、必ずしも1台である必要はなく、通信ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。」
カ 「【図1】
[図:0001436213000001.jpg]
」
キ 「【図3】
[図:0001436213000002.jpg]
」
ク 「【図4】
[図:0001436213000003.jpg]
」
ケ 「【図5】
[図:0001436213000004.jpg]
」
コ 「【図7】
[図:0001436213000005.jpg]
」
サ 「【図9】
[図:0001436213000006.jpg]
」
シ 「【図10】
[図:0001436213000007.jpg]
」
ス 「【図11】
[図:0001436213000008.jpg]
」
セ 「【図12B】
[図:0001436213000009.jpg]
」
ソ 「【図13B】
[図:0001436213000010.jpg]
」
タ 「【図14】
[図:0001436213000011.jpg]
」
チ 「【図15】
[図:0001436213000012.jpg]
」
ツ 「【図16】
[図:0001436213000013.jpg]
」
テ 「【図17】
[図:0001436213000014.jpg]
」
(2)甲第1号証に記載された事項について
上記(1)から、甲第1号証には次のことが記載されているといえる。
ア 上記(1)オの【0099】及び前記(1)テによれば、「画像処理装置30」は「システム1を統括的管理するサーバとして機能」し、また「上記第1~第3の実施形態において説明した画像処理を実行する」といえるから、「画像処理装置」は「システムを統括的に管理するサーバ」として第1の実施形態において画像処理を実行するといえる。
また、上記(1)イからエにそれぞれ「(第1の実施形態)」(【0031】)、「(第2の実施形態)」(【0071】)、「(第3の実施形態)」(【0084】)とあることから、上記(1)イからエに記載される「第1の実施形態」から「第3の実施形態」の「画像処理装置」は、それぞれ「システムを統括的に管理するサーバ」として画像処理を実行するものである。
すると、上記(1)イの第1の実施形態の「画像処理方法」(【0047】)は、「画像処理装置」が「システムを統括的に管理するサーバ」として実行する「画像処理方法」であるから、上記(1)イは画像処理システムが実行する画像処理方法について記載したものといえる。
また、上記(1)ウに「本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の構成は全体として第1の実施形態(図1参照)と同様であり、3D位置推定部152が実行する3Dモデルの位置推定処理(図3のステップS13参照)が第1の実施形態と異なる。」(【0071】)及び「図3は、本実施形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。」(【0051】)とあることから、上記(1)ウに示された第2の実施形態に係る画像処理装置の構成は第1の実施形態と同様であるが、3D位置推定部152が実行する3Dモデルの位置推定処理は第1の実施形態と異なり、また3Dモデルの位置推定処理は画像処理方法を示すフローチャートのステップとして参照されるものといえる。
すると、上記(1)ウの画像処理装置の3D位置推定部152は画像処理方法を実行していることは明らかであり、上記(1)ウの3Dモデルの位置推定処理は画像処理装置の画像処理方法について記載したものといえるから、上記(1)ウは上記(1)イと同じく画像処理システムが実行する画像処理方法について記載したものといえる。
更に、上記(1)エに「本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置の構成は全体として第1の実施形態(図1参照)と同様であり、3D位置推定部152が実行する3Dモデルの位置推定処理が、第1の実施形態と異なる。」(【0084】)及び「図14は、本実施形態に係る画像処理方法を示すフローチャートである。」(【0085】)とあることから、上記(1)エは、上記(1)イと同じく画像処理システムが実行する画像処理方法について記載したものといえる。
イ 上記(1)イの「図4は、背景画像の被写体の一例である不動産物件の間取図である。本実施形態においては、図4に示す間取図上の撮影点P0に対応する位置に全天球カメラを設置して不動産物件内を撮影することにより、静止画又は動画の天球画像を生成し、この天球画像を背景画像として3Dモデルを合成するものとして説明する。」(【0051】)との記載、及び「図7に示す背景画像L1には、撮影点P0(図4参照)に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写っている。」(【0056】)との記載、並びに上記(1)ク及びコの図4、図7から、背景画像L1には、不動産物件内のLDK8帖の室内の撮影点P0に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写っていることが見て取れる。
(3)甲第1号証に記載された発明について
上記(1)ア、イ、オ、カからサ及びテの記載及び上記(2)を考慮すると、甲第1号証には、第1の実施形態として以下の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、「1-1a」から「1-1j」は説明のために当審合議体で付したものであり、以下、対応する発明特定事項を「構成1-1a」等という。また、丸括弧内の墨付き括弧の番号は明細書の段落番号または図面の番号を示す。以下同様。)
<甲1-1発明>
「1-1a 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、(上記(2)ア)
1-1b 全天球カメラを設置して不動産物件内を撮影することにより、静止画又は動画の天球画像を生成し、この天球画像を背景画像とし、(【0051】)
1-1c 背景画像として使用される天球画像は、全方位画像などとも呼ばれ、撮影箇所の周囲ほぼ360°の被写体が写った画像のことであり、(【0026】)
1-1d 背景画像L1には、不動産物件内のLDK8帖の室内の撮影点P0に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写っており、(上記(2)イ)
1-1e 不動産物件の間取図を表示部12に表示させ、家具等のオブジェクトを配置したい場所を間取図上でユーザに指定させ、(【0058】)
1-1f 撮影点P0を天球の中心点P0’と対応づけた3D空間を作成し、間取図における各部の位置や寸法を3D空間の座標に対応づけ、(【0060】)
1-1g 間取図におけるオブジェクトの配置箇所に対応する3D空間における3Dモデルの位置を推定し、(【0055】)
1-1h 推定された3D空間の位置に3Dモデルを配置し、(【0061】)
1-1i 3Dモデルを、3D空間の中心点P0’を投影中心として、背景画像と同じ天球面上に位置するオブジェクトレイヤーL3に投影し、オブジェクトレイヤーL3に、3Dモデルa11を投影した像の領域a15があり、(【0065】)
1-1j 背景画像L1、影レイヤーL2、及び、オブジェクトレイヤーL3をこの順に重畳した合成画像を生成する、(【0066】)
1-1a 画像処理方法。」
また、上記(1)アからウ、オからキ、シからソ及びテ並びに上記(2)を考慮すると、甲第1号証には、第2の実施形態として以下の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1-2発明>
「1-2a 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、(上記(2)ア)
1-2b 全天球カメラを設置して不動産物件内を撮影することにより、静止画又は動画の天球画像を生成し、この天球画像を背景画像とし、(【0051】)
1-2c 背景画像として使用される天球画像は、全方位画像などとも呼ばれ、撮影箇所の周囲ほぼ360°の被写体が写った画像のことであり、(【0026】)
1-2d 背景画像L1には、不動産物件内のLDK8帖の室内の撮影点P0に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写っており、(上記(2)イ)
1-2e 不動産物件の間取図を表示部12に表示させ、家具等のオブジェクトを配置したい場所を間取図上でユーザに指定させ、(【0058】)
1-2f 間取図上でオブジェクトの配置を決定し、図11に示す間取図上の点P2が、オブジェクトの配置箇所として決定され、(【0074】、【図11】)
1-2g 間取図におけるオブジェクトの配置箇所の近傍にある被写体を参照オブジェクトとして選択し、図11に示す流し台が参照オブジェクト21として選択され、(【0075】、【図11】)
1-2h 参照オブジェクト21が写った領域a21を背景画像L1から抽出し、垂直画角α及び水平画角βを測定し、(【0076】)
1-2i 間取図における撮影点P0を天球の中心点P0’に対応づけた3D空間を生成し、(【0077】)
1-2j 3D空間における参照オブジェクト21の位置を推定し、(【0078】)
1-2k 推定された参照オブジェクト21の位置の近傍に3Dモデルを配置し、(【0080】)
1-2l 3Dモデルを、3D空間の中心点P0’を投影中心として、背景画像と同じ天球面上に位置するオブジェクトレイヤーL3に投影し、オブジェクトレイヤーL3に、3Dモデルa11を投影した像の領域a15があり、(【0065】)
1-2m 背景画像L1、影レイヤーL2、及び、オブジェクトレイヤーL3をこの順に重畳した合成画像を生成する、(【0066】)
1-2a 画像処理方法。」
更に、上記(1)ア、イ、エ、カ、キ、タからテの記載及び前記(2)を考慮すると、甲第1号証には、第3の実施形態として以下の発明(以下、「甲1-3発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1-3発明>
「1-3a 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、(上記(2)ア)
1-3b 全天球カメラを設置して不動産物件内を撮影することにより、静止画又は動画の天球画像を生成し、この天球画像を背景画像とし、(【0051】)
1-3c 背景画像として使用される天球画像は、全方位画像などとも呼ばれ、撮影箇所の周囲ほぼ360°の被写体が写った画像のことであり、(【0026】)
1-3d 背景画像L1には、不動産物件内のLDK8帖の室内の撮影点P0に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写っており、(上記(2)イ)
1-3e 3Dモデルを合成するための背景画像を取得し、(【0086】)
1-3f 背景画像L1に基づき、撮影点P0から複数箇所の被写体までの距離及び被写体の寸法を計測し、計測データを保存し、(【0087】)
1-3g 被写体の計測データを背景画像と関連づけ、(【0088】)
1-3h 背景画像L1に合成する3Dモデルを表す3Dデータを取得し、(【0089】)
1-3i 不動産物件の間取図を表示部12に表示させ、家具等のオブジェクトを配置したい場所を間取図上でユーザに指定させ、(【0058】)
1-3j 間取図上でオブジェクトの配置を決定し、(【0090】)
1-3k 計測された距離から、間取図における撮影点P0の座標を算出し、(【0091】)
1-3l 背景画像L1に関連付けられた計測データに基づいて、背景画像L1によって囲まれ、間取図における撮影点P0を天球の中心点P0’に対応づけた3D空間を生成し、(【0092】)
1-3m 間取図における撮影点P0に対するオブジェクトの配置箇所の座標を算出し、この配置箇所に対応する3D空間内の位置を推定し、この位置に3Dモデルを配置し、(【0093】)
1-3n 3Dモデルを、3D空間の中心点P0’を投影中心として、背景画像と同じ天球面上に位置するオブジェクトレイヤーL3に投影し、オブジェクトレイヤーL3に、3Dモデルa11を投影した像の領域a15があり、(【0065】)
1-3o 背景画像L1、影レイヤーL2、及び、オブジェクトレイヤーL3をこの順に重畳した合成画像を生成する、(【0066】)
1-3a 画像処理方法。」
2 甲第2号証について
甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
・・・(中略)・・・
【0028】
設置物検出部250は、間取り画像を解析することにより、間取り図画像に含まれる記号等から設置物を検出する。例えば、便器記号(トイレ)、浴槽記号(風呂)、ドア記号、システムキッチン記号(台所)等を設置物検出部250は検出する。設置物検出部250による検出処理は、図6を参照しながら後述する。
・・・(中略)・・・
【0045】
[2.2.3 設置物検出部250の処理]
設置物検出部250の処理の実施形態を、図5乃至図8を参照しながら説明する。設置物検出部250は、先述の通り、間取り図画像に、記号(以下、設置物記号ともいう。)として描写される設置物を検出する。検出対象の設置物としては、例えば、便器(トイレ)、浴槽(風呂)、ドア、システムキッチン(台所)等が考えられる。ここでは、ドアを検出する場合を中心に説明する。図5に示した間取り図画像の例であれば、玄関のドアに相当するドア記号51、及びトイレのドアを示すドア記号52が間取り図画像に含まれている。設置物検出部250は当該ドア記号51及び52を検出する。
・・・(中略)・・・
【0068】
室内情報抽出部330は、入力部310Bから入力された物件の室内画像を解析する。具体的には、テクスチャの抽出処理や部屋の構造解析(例えば部屋の高さの推定)等を室内情報抽出部330は行う。室内情報抽出部330の処理の詳細は、図13及び図14を参照しながら後述する。
・・・(中略)・・・
【0070】
家具配置生成部350は、物件の3Dモデルにどのような家具が配置できるかをユーザがイメージできるように、3D家具情報を生成する。この時、生成する3D家具情報は、例えば、家具を配置する部屋の種類毎に予め用意することができる。リビングであればソファとテーブル、ダイニングであればダイニングテーブルとダイニングチェアの組み合わせ等を、事前準備の3D家具モデルとして用意すれば良い。物件の3Dモデルに配置する家具のスケールは、スケール推定部320が推定したスケールに合わせて調整可能である。なお、物件の3Dモデルに3D家具モデルを配置しないのであれば、家具配置生成部350は不要である。
【0071】
3Dモデル生成部360は、入力された間取り図解析結果と、スケール推定部320、室内情報抽出部330、周辺風景生成部340、及び家具配置生成部350が生成した情報とを統合して、物件の3Dモデルを生成する。具体的には、例えば、間取り図解析結果により得られる2次元の間取りに対して、室内情報抽出部330が検出した高さを持たせることで、物件の3次元化ができる。更に、当該3次元化された物件に対して、室内情報抽出部330が抽出した床や壁等のテクスチャ情報を適用することで、テクスチャを含む3次元モデルが生成される。これに、周辺風景生成部340が生成した風景情報や、家具配置生成部350が生成した3D家具モデルを組み合わせれば、窓から見える眺望や室内に配置される家具等も3Dモデル上で再現される。3Dモデル生成部360の処理の一部は、図15を参照しながら後述する。
・・・(中略)・・・
【0076】
続くステップS233において、3D位置推定部152は、背景画像L1に写った参照オブジェクト21がいっぱいに収まる視野領域の垂直画角及び水平画角を取得する。詳細には、図12B及び図13Bに示すように、参照オブジェクト21が写った領域a21を背景画像L1から抽出し、垂直画角α及び水平画角βを測定する。垂直画角αについては、床面から全天球カメラ20までの高さhに相当する領域を測定する。
【0077】
図14(a)に記載した室内画像が入力され、当該室内画像に対して線分検出処理を行うと、図14(b)に示すような画像が生成される。図14(b)において、検出された線分は太線で示されている。図14(b)を見ると、壁の境界や床と壁の境界、ドアと壁の境界等に加え、床の突板の境界の一部等も、線分として検出されている。
・・・(中略)・・・
【0079】
このようにして、部屋の構造を構成する、壁間の境界や床と壁の境界や、壁と天井の境界の線分が特定されれば、間取りの幅と、天井の高さとの比が特定できる。よって、3Dモデル生成部360において、間取り図解析結果と物件の広さとから推定される物件の縮尺と、室内情報抽出部330での構造解析結果とを組みわせることにより、天井高を推定することができる。」
「【図12】
[図:0001436213000015.jpg]
」
「【図14】
[図:0001436213000016.jpg]
」
以上の記載によれば、甲第2号証には、以下の技術(以下、「甲第2号証記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
「情報処理方法であって、(【0001】)
室内情報抽出部330は、入力部310Bから入力された物件の室内画像を解析し、(【0068】)
室内画像が入力され、当該室内画像に対して線分検出処理を行い、(【0077】)
部屋の構造を構成する、壁間の境界や床と壁の境界や、壁と天井の境界の線分が特定されれば、間取りの幅と、天井の高さとの比が特定でき、(【0079】)
設置物検出部250は、間取り画像を解析することにより、間取り図画像に含まれる記号等から設置物を検出し、(【0028】)
検出対象の設置物としては、例えば、便器(トイレ)、浴槽(風呂)、ドア、システムキッチン(台所)等が考えられ、(【0045】)
家具配置生成部350は、物件の3Dモデルにどのような家具が配置できるかをユーザがイメージできるように、3D家具情報を生成し、(【0070】)
3Dモデル生成部360は、室内情報抽出部330、及び家具配置生成部350が生成した情報とを統合して、物件の3Dモデルを生成し、(【0071】)
これに、家具配置生成部350が生成した3D家具モデルを組み合わせれば、窓から見える眺望や室内に配置される家具等も3Dモデル上で再現される、(【0071】)
情報処理方法。」
3 甲第3号証について
甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「 【0027】
図2は、図1に示した設計支援装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図に示すように、ステップS11にて、壁オブジェクトの配置状況に関連付けられた部品オブジェクトと、該部品オブジェクトの部屋内の配置ルールとを含む配置マスターテーブルLMTを格納する。次に、ステップS12では、取得部ACQが、少なくとも部屋種別を示す識別子を含む複数の部屋オブジェクトと、複数の壁オブジェクトと、を含むCAD情報(例えば、間取り情報などを読み込む)を取得する。そして、ステップS13にて、配置解析部LAが、取得したCAD情報に含まれる1つの部屋オブジェクトの外周に沿って位置する、或いは、該部屋オブジェクトに隣接する、または囲む、1つまたは壁オブジェクトの配置状況を解析する。続いて、ステップS14では、部品選択配置部PSLが、配置マスターテーブルを参照して、解析した部屋オブジェクト内の壁オブジェクトの配置状況に基づき検索し、合致する配置状況に関連付けられた部品オブジェクトを選択し、ステップS15にて、選択された部品オブジェクトの配置ルールに基づき、当該部屋内に部品オブジェクトを配置する。図示しないが、部品オブジェクトを配置した状態でCAD情報を置換し、配置後のCAD情報により描画される間取りを表示部DISに表示する。なお、ステップS11などの格納ステップは、一回実施しておけば、その情報が変更されるまでは再実施する必要はない。或いは、格納ステップは、当該情報を格納したROMやフラッシュメモリを装置やコンピュータに搭載することで不要、または読み取りステップで代替することとなる。
【0028】
図3は、住宅の間取りが規定されたCAD情報CI10が取得・解析され、部品が配置される一例を説明する説明図である。図に示すように、本装置は、住宅の間取りが規定されたCAD情報CI10を取得し、1つの部屋オブジェクトであるトイレについて解析する。部屋オブジェクトであるトイレを囲む、隣接する、またはその外周に位置する壁オブジェクトを特定し、どのような壁種類かを解析する。壁種類としては、例えば、開口がない完全な壁、開口がある壁、外部出入口、内部出入口、または、内部特殊建具を含む。即ち、配置解析部は、解析した部屋オブジェクト内の壁オブジェクトに、開口がない完全な壁、開口がある壁、外部出入口、内部出入口、または、内部特殊建具のいずれの壁種類が含まれるかを解析する壁種類解析を実施する。この例では、まずは配置状況が解析される。それが、解析された部屋KR10である。これが、配置マスターテーブルLMT10の、壁種類に囲まれるものと比較してこれに合致するものと判断される。ここでは、配置マスターテーブルLMT10の項目は1つだけ描画してあるが、このようなテーブル項目を必要な分だけ構築しておくことが好適である(テーブル項目については後で詳細に述べる。)。即ち、部屋オブジェクト「トイレ」の周囲に4つの壁種類およびその配置状況が全壁ZK1-4、ドアDR1を持つものに合致すると判断し、そこに規定される部品オブジェクトPT10(タンクレストイレユニット)が選択され、そこに規定された配置ルールで部品オブジェクトPT10のコピーである部品オブジェクトPT10-1が、解析された部屋KR10に配置され、部屋KR10-1に置換される。そして、CAD情報CI10も、部品オブジェクトが配置されたものに置換され、これが表示部DISに表示される。
・・・(中略)・・・
【0030】
図5は、住宅の間取りが規定されたCAD情報CI10が取得・解析され、部品が配置される他の一例を説明する説明図である。図5と図3の異なる点は、配置マスターテーブルであり、図3では、CADオブジェクトである壁オブジェクトの配置状況や、部品オブジェクトの部屋内の配置で配置ルール(位置関係)を規定したが、図5では、壁オブジェクトの種別、配置ルールを文章、即ち、構文的に規定・表現したことに相違点がある。しかし、図に示すように、本装置は、住宅の間取りが規定されたCAD情報CI10を取得し、1つの部屋オブジェクトであるトイレについて解析することが、図3のそれと同様に可能である。即ち、部屋オブジェクトであるトイレを囲む、隣接する、またはその外周に位置する壁オブジェクトを特定し、どのような壁種類かを解析する。壁種類としては、例えば、開口がない完全な壁、開口がある壁、外部出入口、内部出入口、または、内部特殊建具を含む。即ち、配置解析部は、解析した部屋オブジェクト内の壁オブジェクトに、開口がない完全な壁、開口がある壁、外部出入口、内部出入口、または、内部特殊建具のいずれの壁種類が含まれるかを解析する壁種類解析を実施する。この例でも、まずは配置状況が解析される。それが、解析された部屋KR11である。これが、配置マスターテーブルLMT11の、壁種類に囲まれるものと比較してこれに合致するものと判断される。即ち、部屋オブジェクト「トイレ」の周囲に「全壁」「ドア」「開口を許容」という配置ルールに合致すると判断し、そこに規定される部品オブジェクトPT11(タンクレストイレユニット)が選択され、そこに規定された配置ルールで部品オブジェクトPT11のコピーである部品オブジェクトPT11-1が、解析された部屋KR11に配置され、部屋KR11-1に置換される。そして、CAD情報CI10も、部品オブジェクトが配置されたものに置換され、これが表示部DISに表示される。
・・・(中略)・・・
【0036】
テーブル項目LMT11-E1(これは、配置マスターテーブルLMT11に含まれる項目の1つである)は、部屋種別を示す識別子「トイレ」に関連付けられた、壁オブジェクトであるトイレ用ドアTDR1の配置状況と、該部屋種別を示す識別子または配置状況に関連付けられた部品オブジェクトPT10(トイレユニット)と、該配置状況における部品オブジェクトの配置情報(CAD上でPT10が置かれた位置/座標が配置情報である)とが規定される(含まれている)。これは、テーブル項目LMT10-E4とほぼ同様の機能を持つが、CAD上に置かれたオブジェクトで情報を規定せずに、文字情報のみで配置状況、配置ルール、位置を規定しない部品オブジェクトを規定したものである。壁オブジェクトの配置状況は、トイレドアの存在のみ規定し、配置ルールとしては、トイレドアから最も遠くなる壁にトイレユニットを付けて配置し、その壁にトイレタンクが接するように配置することが規定される。また、部品オブジェクトとしてタンクレストイレユニットである部品オブジェクトPT10を使用することが規定される。このような文字情報が規定されたテーブル項目でも部品の自動配置が可能である。」
「【図3】
[図:0001436213000017.jpg]
」
「【図5】
[図:0001436213000018.jpg]
」
以上の記載によれば、甲第3号証には、以下の技術(以下、「甲第3号証記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
「設計支援装置で実行される処理であって、(【0027】)
CADオブジェクトである壁オブジェクトの配置状況や、部品オブジェクトの部屋内の配置で配置ルール(位置関係)を規定し、(【0030】)
配置ルールとしては、トイレドアから最も遠くなる壁にトイレユニットを付けて配置し、その壁にトイレタンクが接するように配置することが規定され、(【0036】)
CAD情報CI10を取得し、1つの部屋オブジェクトであるトイレについて解析し、部屋オブジェクトであるトイレを囲む、隣接する、またはその外周に位置する壁オブジェクトを特定し、(【0028】)
解析した部屋オブジェクト内の壁オブジェクトに、開口がない完全な壁、開口がある壁、外部出入口、内部出入口、または、内部特殊建具のいずれの壁種類が含まれるかを解析し、(【0028】)
部屋オブジェクト「トイレ」の周囲に4つの壁種類およびその配置状況が全壁ZK1-4、ドアDR1を持つものに合致すると判断し、そこに規定される部品オブジェクトPT10(タンクレストイレユニット)が選択され、(【0028】)
そこに規定された配置ルールで部品オブジェクトPT10のコピーである部品オブジェクトPT10-1が、解析された部屋KR10に配置され、部屋KR10-1に置換され、(【0028】)
CAD情報CI10も、部品オブジェクトが配置されたものに置換され、これが表示部DISに表示される、(【0028】)
設計支援装置で実行される処理。【0027】」
4 甲第4号証から甲第7号証について
(1)甲第4号証には、
「 【0013】
たとえば、映画の場合、監督は撮影クルーと設備を視界から隠すのに細心の注意を払っている。1つのアプローチは、180°フィルムグラマールールと呼ばれるもので、カメラはシーンの片側に配置され、もう一方の側を向いている。全方向性ビデオの録画は、各全方向カメラの周囲のシーン全体が見えるため、はるかに困難である。このため、たとえば、クルーは風景の後ろに隠れ、後処理で三脚などの要素を消去する必要がある。」
と記載されている(以下、「甲第4号証記載の技術」という。)と認められる。
(2)甲第5号証には、
「 【0031】
次に、家具表示の有無を切替えるための操作部7について説明する。図13の主画面8に表示された3次元仮想空間には家具が表示されていないが、この状態で操作部7の「家具配置」のボタンを操作すると、図14~図16の家具表示有りの状態に切り替わる。また、家具表示有りの状態で操作部7の「家具消去」のボタンを操作すると、図13の家具表示無しの状態に切り替わる。」
と記載されている(以下、「甲第5号証記載の技術」という。)と認められる。
(3)甲第6号証には、
「 【0045】
上記処理の後、決定された表示位置に各拡張現実感情報を描画することにより実空間映像に重畳させて表示する処理を行う。このような処理についての制限は特にないが、各拡張現実感情報が所定位置に描画されて残部が透明の画面レイヤーを作成し、この画面レイヤーを実空間映像に重ねて表示部102に表示させることができ、これにより実空間映像の適切な位置に拡張現実感情報が表示される。この際、拡張現実感情報の表示としては、アイコンや、情報バルーンや、サブウィンドウ等の態様が考えられるが、ここでは、拡張現実感情報はアイコン(又は情報バルーン)であるとして説明する。
【0046】
なお、拡張現実感情報をアイコンとして表示することにより画面の煩雑化は避けられるが、画面に表示される情報量が減ってしまうため、例えば拡張現実感情報の種類に応じて外観の異なるアイコンを使い分けるようにしてもよい。図4(a)、(b)、(c)は、拡張現実感情報を丸形のアイコンで表示する画面の例を示したものである。図4(a)は、カメラ部106の取得した実空間の映像を示し、図4(b)は、前述の方法により各拡張現実感情報の表示位置を求めてアイコンを描画したイメージを示し、図4(c)は、これらを重畳して表示した画面である。また、図5(a)、(b)、(c)は、拡張現実感情報を情報バルーンで表示した場合について同様に示したものである。
・・・(中略)・・・
【0053】
(5)閾値の具体的な設定の一例
引き続き、閾値の具体的な設定の一例について、図7を用いて説明する。図7は、端末装置100から50m、100m、400mの各地点に10m幅の対象物があり、カメラ部106で撮影した対象物の映像に制御部108がアイコンを重畳した場合におけるアイコン配置の許容幅Aと、許容幅Aを満たすズレ角度θについて、特定規格のカメラ部106及び表示部102をモデルとして調査した結果の図表である。モデルとしたカメラ部106は視野水平角52°、視野垂直角36°であり、表示部102はHVGAの3インチ液晶である。この場合、表示部102上の対象物サイズは、透過投影法により図7に記載したように算出される。
【0054】
ここで、拡張現実感情報を近距離グループ、中距離グループ、遠距離グループに区分し、更に表示上の演出として遠距離の対象物に関連付けられた情報のアイコンを小さくすることを加味すると、水平方向におけるアイコン表示位置に許容される幅Aは、それぞれ21.12mm、12.56mm、5.64mmとなる。ここで、50m、100m、400mの各地点を撮影した場合に、表示部102上にこれだけの位置ズレを生じさせるズレ角度θを求めたところ、18.45°、10.97°、4.928°となる。初期の段階で対象物の中心にアイコンが重畳されていると仮定すると、そこから許容されるズレ角度θは、それぞれ上記の1/2となる。」と記載されており、図面として
「【図4】
[図:0001436213000019.jpg]
」
が記載されている(以下、「甲第6号証記載の技術」という。)と認められる。
(4)甲第7号証には、
「 【0076】
さらに、ステップS110以降の色調整処理において、色調整部144は、実物色の彩度(色鮮やかさ)に応じて、外景SCの透過率を変更することで目視色を制御するのか、仮想オブジェクトVOの色を調整することで目視色を制御するのか、を使い分ける。実物色の彩度が高い(色鮮やかである)場合は、例えば外景SCの透過率を下げることによって、色鮮やかな実物色そのものを利用者に見えづらくすることで、仮想オブジェクトVOの色を強調することが有効である。一方、実物色の彩度が低い(くすんだ色である)場合は、仮想オブジェクトVOの色を調整した加法混色による調色を用いれば、表現できる色域を拡げることができる。このようにして色の分解能を向上させれば、微妙な色再現が可能となるため有効である。このようにすれば、色調整部144は、実物色の彩度に応じて、目視色を制御するためのより適切な方法を使い分けることができる。」
と記載されている(以下、「甲第7号証記載の技術」という。)と認められる。
第5 申立理由についての当審の判断
1 本件発明1について
(1)甲1-1発明に対して
ア 対比
以下本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
(ア)構成Bについて
構成1-1bの「背景画像」は「不動産物件内を撮影することにより」「生成」されたものであるから、不動産物件の内部の画像といえる。
また、構成1-1bの「背景画像」は、構成1-1cの「全方位画像などとも呼ばれ、撮影箇所の周囲ほぼ360°の被写体が写った画像」のことであるから、撮影箇所の周囲の全方位の被写体が写った画像といえる。
すると、構成1-1bの「背景画像」は、不動産物件の内部の画像であり、撮影箇所の周辺の全方位の被写体が写った画像であるから、構成Bの「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」に相当する。
しかしながら、甲1-1発明は、構成Bの「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点1」という。)で、本件発明1とは相違する。
(イ)構成Cについて
構成1-1dの「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」は、「背景画像L1」に「像が写って」いることから、構成Cの「背景画像に示されている被写体」に含まれる。
しかしながら、甲1-1発明は、「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」の像を写しているといえるものの、「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」を検知しているステップを実行するとはいえない。
加えて甲1-1発明は、「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」の種類を検知するステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点2」という。)で、本件発明1とは相違する。
(ウ)構成Dについて
上記(イ)で説示したように、構成1-1dの「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」は構成Dの「前記被写体」に含まれる。
しかしながら、甲1-1発明は、構成Dの「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点3」という。)で、本件発明1とは相違する。
(エ)構成Eについて
構成1-1eの「家具等のオブジェクト」は、「ユーザ」によって「配置したい場所」を「指定」されるから、配置の対象物といえる。
すると、構成1-1gの「オブジェクトの配置箇所に対応する3D空間における3Dモデル」とは、配置の対象物の「配置箇所に対応する」「3Dモデル」のことであり、3Dモデルは仮想的な物であることは明らかであるから、構成1-1gの「3Dモデル」は、構成Eの「仮想対象物」に相当する。
しかしながら、甲1-1発明は、構成Eの「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを実行するものとはいえない点(以下、「相違点4」という。)で、本件発明1とは相違する。
(オ)構成Fについて
構成1-1iから「3Dモデル」は「オブジェクトレイヤーL3に投影」されるといえ、また構成1-1jから「オブジェクトレイヤーL3」は「背景画像L1」と「重畳」されて「合成画像」が「生成」されるといえることから、「3Dモデル」は「背景画像L1」に対し「オブジェクトレイヤーL3に投影」されてから合成されるといえる。
また、構成1-1iの「オブジェクトレイヤーL3に、3Dモデルa11を投影した像の領域a15があ」ることを考慮すると、甲1-1発明は、「背景画像L1」に対して、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するものといえる。
すると、本件発明1と甲1-1発明とは、構成Fの「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を」「合成する」ステップを実行する点で共通しているといえる。またこのようなステップを「画像処理ステップ」と呼ぶことは任意である。
一方、甲1-1発明は、「背景画像L1」に対し、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するといえるが、構成Fにあるように「前記推定された領域」に合成するものではない点(以下、「相違点5」という。)で、本件発明1とは相違する。
(カ)構成Aについて
甲1-1発明は構成1-1aにあるように、「画像処理システムが実行する画像処理方法」であることから、本件発明1と甲1-1発明とは、構成Aの「画像処理システムが実行する画像処理方法」の点で共通する。
上記(ア)から(カ)の事項を踏まえると、本件発明1と甲1-1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、
背景画像に対して、仮想対象物を合成する画像処理ステップと、
を実行する画像処理方法。」
そして、本件発明1と甲1-1発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを実行するのに対し、甲1-1発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点2>
本件発明1は「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類」を「検知する」ステップを実行するのに対し、甲1-1発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点3>
本件発明1は「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを実行するのに対し、甲1-1発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点4>
本件発明1は「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを実行するのに対し、甲1-1発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点5>
本件発明1は「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップを備えるのに対し、甲1-1発明は「背景画像L1」に対し、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するといえるが、本件発明1のように「前記推定された領域」に合成するステップを実行しない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、先に相違点1から相違点3についてまとめて検討する。
(ア)甲第2号証記載の技術は、上記「2 甲第2号証について」にて説示したように、
「情報処理方法であって、
室内情報抽出部330は、入力部310Bから入力された物件の室内画像を解析し、
室内画像が入力され、当該室内画像に対して線分検出処理を行い、
部屋の構造を構成する、壁間の境界や床と壁の境界や、壁と天井の境界の線分が特定されれば、間取りの幅と、天井の高さとの比が特定でき、
設置物検出部250は、間取り画像を解析することにより、間取り図画像に含まれる記号等から設置物を検出し、
検出対象の設置物としては、例えば、便器(トイレ)、浴槽(風呂)、ドア、システムキッチン(台所)等が考えられ、
家具配置生成部350は、物件の3Dモデルにどのような家具が配置できるかをユーザがイメージできるように、3D家具情報を生成し、
3Dモデル生成部360は、室内情報抽出部330、及び家具配置生成部350が生成した情報とを統合して、物件の3Dモデルを生成し、
これに、家具配置生成部350が生成した3D家具モデルを組み合わせれば、窓から見える眺望や室内に配置される家具等も3Dモデル上で再現される、
情報処理方法。」である。
(イ)甲第2号証記載の技術は、「入力部310Bから入力された物件の室内画像を解析」することから、「物件の室内画像」を利用するものといえる。
一方、甲1-1発明は、構成1-dに「背景画像L1には、不動産物件内のLDK8帖の室内の撮影点P0に設置された全天球カメラ20の視野に入る流し台、コンロ、壁、洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア等の像が写って」いるとあることから、甲1-1発明と甲第2号証記載の技術とは、物件の室内画像を利用する点で共通するといえる。
(ウ)また、甲第2号証記載の技術は、「物件の3Dモデルにどのような家具が配置できるかをユーザがイメージできるように、3D家具情報を生成」し、「家具配置生成部350が生成した3D家具モデルを組み合わせ」て「室内に配置される家具等も3Dモデル上で再現」することから、「家具」の「配置」について、「3D家具モデル」を用いるものであるといえる。
一方、甲1-1発明は、それぞれ構成1-1e、1-1g、1-1hに「家具等のオブジェクトを配置したい場所を間取図上でユーザに指定させ、」「間取図におけるオブジェクトの配置箇所に対応する3D空間における3Dモデルの位置を推定し」「推定された3D空間の位置に3Dモデルを配置し、」とあることから、「家具等のオブジェクト」の「配置箇所に対応する」「推定された3D空間の位置」に「3Dモデルを配置」するものである。すると、甲1-1発明は「家具」の「配置箇所」に、「3Dモデルを配置」するものであるから、「家具」の「配置」について「3Dモデル」を用いるものであるといえる。
そうすると、甲1-1発明と甲第2号証記載の技術とは、家具の配置に3Dモデルを用いる点で共通するといえる。
(エ)上記(イ)及び(ウ)で示したように、甲1-1発明と甲第2号証記載の技術とは、物件の室内の画像を利用し、家具の配置に3Dモデルを用いる点で共通するから、甲1-1発明に甲第2号証記載の技術を適用する動機付けはあるといえる。
(オ)しかしながら、甲第2号証記載の技術は、上記(ア)に示したように「室内画像が入力され、当該室内画像に対して線分検出処理を行い、」「部屋の構造を構成する、壁間の境界や床と壁の境界や、壁と天井の境界の線分が特定されれば、間取りの幅と、天井の高さとの比が特定でき、」とのことから、「室内画像」から「部屋の構造を構成する」「壁間の境界や床と壁の境界」や「壁と天井の境界」の「線分」を「特定」して「間取りの幅」と、「天井の高さとの比」を「特定」するものであって、相違点1にあるように「前記空間の構造」を「推定」するものではない。
また、甲第2号証記載の技術は、相違点2の「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する」ステップ、及び相違点3の「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップについて何も示唆していない。
(カ)したがって、上記(ア)から(オ)で説示した理由から、当業者が甲1-1発明において、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップ、相違点2の「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類」を「検知する」ステップ、及び相違点3の「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを設けることは、たとえ当業者であっても甲第2号証記載の技術に基づいて容易になしえないから、本件発明1は当業者が容易に発明できたものではない。
(キ)また、甲第3号証記載の技術は、上記「3 甲第3号証について」にて説示したように、
「設計支援装置で実行される処理であって、
CADオブジェクトである壁オブジェクトの配置状況や、部品オブジェクトの部屋内の配置で配置ルール(位置関係)を規定し、
配置ルールとしては、トイレドアから最も遠くなる壁にトイレユニットを付けて配置し、その壁にトイレタンクが接するように配置することが規定され、
CAD情報CI10を取得し、1つの部屋オブジェクトであるトイレについて解析し、部屋オブジェクトであるトイレを囲む、隣接する、またはその外周に位置する壁オブジェクトを特定し、
解析した部屋オブジェクト内の壁オブジェクトに、開口がない完全な壁、開口がある壁、外部出入口、内部出入口、または、内部特殊建具のいずれの壁種類が含まれるかを解析し、
部屋オブジェクト「トイレ」の周囲に4つの壁種類およびその配置状況が全壁ZK1-4、ドアDR1を持つものに合致すると判断し、そこに規定される部品オブジェクトPT10(タンクレストイレユニット)が選択され、
そこに規定された配置ルールで部品オブジェクトPT10のコピーである部品オブジェクトPT10-1が、解析された部屋KR10に配置され、部屋KR10-1に置換され、
CAD情報CI10も、部品オブジェクトが配置されたものに置換され、これが表示部DISに表示される、
設計支援装置で実行される処理。」である。
しかしながら、甲第3号証記載の技術は、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップ、相違点2の「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類」を「検知する」ステップ、及び相違点3の「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップについて何も示唆していない。
(ク)したがって、上記(キ)で説示した理由から、当業者が甲1-1発明において、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップ、相違点2の「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類」を「検知する」ステップ、及び相違点3の「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを設けることは、たとえ当業者であっても甲第3号証記載の技術に基づいて容易になしえないから、本件発明1は当業者が容易に発明できたものではない。
(ケ)上記(カ)及び(ク)から、本件発明1は、相違点4及び相違点5について検討するまでもなく、当業者が甲1-1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(2)甲1-2発明に対して
ア 対比
以下本件発明1と甲1-2発明とを対比する。
(ア)構成Bについて
上記(1)ア(ア)と同様の理由により、甲1-2発明は、構成Bの「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点1」という。)で、本件発明1とは相違する。
(イ)構成Cについて
構成1-2dの「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」は、「背景画像L1」に「像が写って」いることから、構成Cの「背景画像に示されている被写体」に含まれる。
また、構成1-2fにあるように「間取図上でオブジェクトの配置を決定し、図11に示す間取図上の点P2が、オブジェクトの配置箇所として決定され」、構成1-2gにおいて「間取図におけるオブジェクトの配置箇所の近傍にある被写体を参照オブジェクトとして選択し、図11に示す流し台が参照オブジェクト21として選択され」ることから、「オブジェクトの配置箇所」である「間取図上の点P2」の配置箇所によって、「オブジェクトの配置箇所の近傍」にある被写体が図11に示される被写体のうち、「流し台」以外の被写体となり得ることは明らかである。
また、図11には「流し台」以外に「コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」があることが見て取れるから、構成1-2hの「参照オブジェクト21」には、「流し台」の他に、「流し台」以外の被写体である「コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」が含まれるといえる。
一方、構成1-2hの「参照オブジェクト21が写った領域a21を背景画像L1から抽出」することから、領域を抽出するために背景画像L1の所定の領域を絞り込み、その領域が「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」の中のどの種類に該当するものが写っているかを検知することによって、その絞り込んだ所定の領域が「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」が写った領域であると検知し、その領域を抽出しているといえる。
以上のことから、本件発明1と甲1-2発明とは、構成Cの「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する」ステップを実行する点で共通する。また、このようなステップを「検知ステップ」と呼ぶことは任意である。
(ウ)構成Dについて
構成1-2jの「3D空間における参照オブジェクト21の位置を推定」することにおいて、上記(イ)で説示したように、「参照オブジェクト」には、「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」が含まれる。すると、構成1-2jは、「3D空間における」「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」の位置を推定するものといえる。
また、上記(イ)で説示したように、「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」は、背景画像L1から領域を絞り込んで検知されることから、構成Dの「検知された前記被写体」に含まれる。
以上のことから、本件発明1と甲1-2発明とは、構成Dの「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを実行する点で共通する。またこのようなステップを「位置推定ステップ」と呼ぶことは任意である。
(エ)構成Eについて
構成1-2eの「家具等のオブジェクト」は、「ユーザ」によって「配置したい場所」を「指定」されるから、配置される対象物であるといえる。
また、構成1-2gの「間取図におけるオブジェクト」とは、構成1-2eの「家具等のオブジェクトを配置したい場所を間取図上でユーザに指定させ」たものであるから、構成1-2eの「家具等のオブジェクト」といえる。
更に、構成1-2kから、「3Dモデル」は、「推定された参照オブジェクト21の位置の近傍」に「配置」されるものであり、また構成1-2gの「間取図におけるオブジェクト」、すなわち構成1-2eの「家具等のオブジェクト」は、構成1-2gにおいて「間取図におけるオブジェクトの配置箇所の近傍」にて「参照オブジェクト」が選択されていることから、「参照オブジェクト」の近傍に配置されているといえる。
すると、構成1-2kの「3Dモデル」と構成1-2eの「家具等のオブジェクト」とは、「参照オブジェクト」の近傍に配置された点で同じ関係にあるから、構成1-2kの「3Dモデル」は、構成1-2eの「家具等のオブジェクト」に対応するものであることは明らかである。
すると、構成1-2jの「3Dモデル」は「家具等のオブジェクト」として配置される対象物に対応する3Dモデルといえるから、構成Dの「仮想対象物」に相当する。
しかしながら、甲1-2発明は、構成Eの「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点2」という。)で、本件発明1とは相違する。
(オ)構成Fについて
上記(1)ア(オ)と同様の理由により、甲1-2発明は、「背景画像L1」に対し、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するといえるが、構成Fにあるように「前記推定された領域」に合成するものではない点(以下、「相違点3」という。)で、本件発明1とは相違する。
(カ)構成Aについて
甲1-2発明は構成1-2aにあるように、「画像処理システムが実行する画像処理方法」であることから、本件発明1と甲1-2発明とは、構成Aの「画像処理システムが実行する画像処理方法」の点で共通する。
上記(ア)から(カ)の事項を踏まえると、本件発明1と甲1-2発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、
背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する検知ステップと、
検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する位置推定ステップと、
前記背景画像に対して、仮想対象物を合成する画像処理ステップと、
を実行する画像処理方法。」
そして、本件発明1と甲1-2発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを実行するのに対し、甲1-2発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点2>
本件発明1は「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを実行するのに対し、甲1-2発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点3>
本件発明1は「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップを実行するのに対し、甲1-2発明は「背景画像L1」に対し、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するといえるが、本件発明1のように「前記推定された領域」に合成するステップを実行しない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点1から相違点3についてまとめて検討する。
(ア)上記(1)イ(ア)から(エ)で説示したのと同じ理由により、甲1-2発明に甲第2号証記載の技術を適用する動機付けはあるといえる。
しかしながら、上記(1)イ(オ)で説示したように、甲第2号証記載の技術は、相違点1にあるように「前記空間の構造」を「推定」するものではない。
また、上記(1)イ(キ)で説示したように、甲第3号証記載の技術は、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップについて何も示唆していない。
したがって、当業者が甲1-2発明に基づき、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを設けることは、たとえ当業者であっても甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易になしえないから、本件発明1は当業者が容易に発明できたものではない。
(イ)更に、甲第2号証及び甲第3号証記載の技術は、相違点2の「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップ、及び相違点3の「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップについて何も示唆していない。
甲第2号証記載の技術は、上記(ア)で説示したように、相違点1の「前記空間の構造」を「推定」するものではないことから、相違点2の「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを実行していないことは明らかである。
すると、甲第2号証記載の技術は、相違点2の「配置可能な領域を推定する」ものでもないから、相違点3の「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップを実行していない。
また、甲第3号証記載の技術も、上記(ア)で説示したように、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップについて何も示唆しているものではないから、甲第2号証記載の技術と同様に、相違点2及び相違点3のステップを実行していないといえる。
更に、甲第3号証記載の技術は、「CADオブジェクトである壁オブジェクトの配置状況や、部品オブジェクトの部屋内の配置で配置ルール(位置関係)を規定」しており、また、「配置ルールとしては、トイレドアから最も遠くなる壁にトイレユニットを付けて配置し、その壁にトイレタンクが接するように配置することが規定され」るものとしている。
しかしながら、甲第3号証記載の技術は、「CADオブジェクトである壁オブジェクト」に対する配置ルールを示しているといえるが、この「CADオブジェクトである壁オブジェクト」は、甲1-2発明の「背景画像」に写った「壁」とは技術的に全く異なるものである。
また、甲第3号証記載の技術は、「そこに規定された配置ルールで部品オブジェクトPT10のコピーである部品オブジェクトPT10-1が、解析された部屋KR10に配置され、部屋KR10-1に置換され、CAD情報CI10も、部品オブジェクトが配置されたものに置換され、これが表示部DISに表示される」とあるように、CAD情報に示される部屋の置換を行うためのものであり、本件発明1にあるように、配置可能な領域を推定することや、背景画像に対して、仮想対象物を推定された領域に合成することとは全く関係がない。
以上のことから、当業者が甲1-2発明において、相違点2の「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップ、及び相違点3の「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップを設けることは、たとえ当業者であっても甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易になしえないから、本件発明1は当業者が容易に発明できたものではない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、本件発明1は当業者が甲1-2発明並びに甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(3)甲1-3発明に対して
ア 対比
以下本件発明1と甲1-3発明とを対比する。
(ア)構成Bについて
上記(1)ア(ア)及び上記(2)ア(ア)と同様の理由により、甲1-3発明は、構成Bの「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点1」という。)で、本件発明1とは相違する。
(イ)構成Cについて
構成1-3dの「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」は、「背景画像L1」に「像が写って」いることから、構成Cの「背景画像に示されている被写体」に含まれる。
また、構成1-3fの「背景画像L1に基づき、撮影点P0から複数箇所の被写体までの距離及び被写体の寸法を計測」することから、「複数箇所の被写体までの距離及び寸法を計測」するために、背景画像L1から複数箇所にある「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」が画像中のどこに写っているかを検知し、また写っているものが「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」のどの種類に該当するものかを検知してから、検知した「流し台、コンロ、」「洋室のドア、和室の襖、浴室のドア、トイレのドア、玄関ドア」に対して撮影点P0から距離及び寸法を計測しているといえる。
以上のことから、本件発明1と甲1-3発明とは、構成Cの「前記背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する」ステップを実行する点で共通する。また、このようなステップを「検知ステップ」と呼ぶことは任意である。
(ウ)構成Dについて
上記(1)ア(ウ)と同様の理由により、甲1-3発明は、構成Dの「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点2」という。)で、本件発明1とは相違する。
(エ)構成Eについて
構成1-3iの「家具等のオブジェクト」は、「ユーザ」によって「配置したい場所」を「指定」されるから、配置の対象物といえる。
また、構成1-3mの「3Dモデル」は、「オブジェクトの配置箇所の座標を算出し、この配置箇所に対応する3D空間内の位置を推定し、この位置に」「配置」されるものであり、また構成1-3mの「オブジェクト」とは構成1-3iの「家具等のオブジェクト」のことであるから、構成1-3mの「3Dモデル」は、「家具等のオブジェクト」の配置箇所に対応する3D空間内の推定された位置に「配置」されるものであるといえる。
すると、構成1-3mの「3Dモデル」は、配置の対象物の配置箇所に対応する3D空間内の位置に配置されるものといえ、3Dモデルは仮想的な物であることは明らかであるから、構成1-1gの「3Dモデル」は、構成Eの「仮想対象物」に相当する。
しかしながら、甲1-3発明は、構成Eの「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを実行するとはいえない点(以下、「相違点3」という。)で、本件発明1とは相違する。
(オ)構成Fについて
上記(1)ア(オ)と同様の理由により、甲1-3発明は、「背景画像L1」に対し、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するといえるが、構成Fにあるように「前記推定された領域」に合成するものではない点(以下、「相違点4」という。)で、本件発明1とは相違する。
(カ)構成Aについて
甲1-3発明は構成1-3aにあるように、「画像処理システムが実行する画像処理方法」であることから、本件発明1と甲1-3発明とは、構成Aの「画像処理システムが実行する画像処理方法」の点で共通する。
上記(ア)から(カ)の事項を踏まえると、本件発明1と甲1-3発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「 画像処理システムが実行する画像処理方法であって、
背景画像に示されている被写体および前記被写体の種類を検知する検知ステップと、
前記背景画像に対して、仮想対象物を合成する画像処理ステップと、
を実行する画像処理方法。」
そして、本件発明1と甲1-3発明とは、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを備えるのに対し、甲1-3発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点2>
本件発明1は「検知された前記被写体の前記空間上の位置を推定する」ステップを備えるのに対し、甲1-3発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点3>
本件発明1は「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップを備えるのに対し、甲1-3発明は当該ステップを実行しない点。
<相違点4>
本件発明1は「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップを備えるのに対し、甲1-3発明は「背景画像L1」に対し、「3Dモデル」を「オブジェクトレイヤーL3に」「投影した像の領域」に合成するといえるが、本件発明1のように「前記推定された領域」に合成するステップを実行しない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、先に相違点1、相違点3及び相違点4についてまとめて検討する。
(ア)上記(1)イ(ア)から(エ)での説示と同じ理由により、甲1-3発明に甲第2号証記載の技術を適用する動機付けはあるといえる。
しかしながら、上記(1)イ(オ)で説示したように、甲第2号証記載の技術は、相違点1にあるように「前記空間の構造」を「推定」するものではない。また、上記(1)イ(キ)で説示したように、甲第3号証記載の技術は、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップについて何も示唆していない。
したがって、当業者が甲1-3発明において、相違点1の「構造物の内部の空間が全方位で示された背景画像」から「前記空間の構造を推定する」ステップを設けることは、たとえ当業者であっても甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易になしえないから、本件発明1は容易に発明できたものではない。
(イ)上記(2)イ(イ)で説示したのと同様に、相違点3の「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップ、及び相違点4の「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップについて甲第2号証及び甲第3号証記載の技術は何ら示唆していない。
したがって、当業者が甲1-3発明において、相違点3の「推定された前記構造、推定された前記被写体の空間上の位置、および前記構造および前記被写体の種類に対する前記空間における仮想対象物の種類毎の配置のルールに基づいて、前記仮想対象物を配置可能な領域を推定する」ステップ、及び相違点4の「前記背景画像に対して、前記仮想対象物を前記推定された領域に合成する」ステップを設けることは、たとえ当業者であっても甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易になしえないから、本件発明1は容易に発明できたものではない。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者が甲1-3発明並びに甲第2号証及び甲第3号証記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(4)小括
上記(1)から(3)によれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
2 本件発明2から本件発明15について
本件発明2から本件発明9は、本件発明1の請求項1の記載を直接的または間接的に引用するものであって、引用する請求項1の発明特定事項を全て含み、更に発明特定事項を付加するものである。
また、本件発明10は、本件発明1の「画像システムが実行する画像処理方法」を「画像システム」の発明に書き換えたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を全て含むものである。そして本件発明11から15は、本件発明10と同様の発明特定事項を全て含み、更に発明特定事項を付加するものである。
したがって、上記「1 本件発明1について」にて示した理由と同様の理由により、本件発明2から本件発明15は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
3 小括
上記1及び2によれば、本件発明1から本件発明15は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであるという取消理由(同法第113条第2号)は、存在しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1から15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1から15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700020