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特許異議申立

2025-700271

波進入判定システム、波進入判定方法および波進入判定プログラム

審判番号
2025-700271
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-152213
登録番号
7547127
請求日
2025年03月06日
審決日
2025年05月09日
公報発行日
2025年06月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】Arithmer株式会社
  • 【権利者代理人】稲葉 良幸
  • 【権利者代理人】大貫 敏史
  • 【権利者代理人】江口 昭彦
  • 【権利者代理人】内藤 和彦
  • 【権利者】一般財団法人日本気象協会
  • 【権利者代理人】稲葉 良幸
  • 【権利者代理人】大貫 敏史
  • 【権利者代理人】江口 昭彦
  • 【権利者代理人】内藤 和彦
  • 【異議申立人】中田 覚史
審判長/審判官
  • 審判長 伊藤 隆夫
  • 審判官 樫本 剛
  • 審判官 高橋 宣博
分類
P1651.121-Y (G06T) / P1651.537-Y (G06T)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7547127号発明「波進入判定システム、波進入判定方法および波進入判定プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7547127号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7547127号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年9月10日に出願され、令和6年8月30日にその特許権の設定登録がされ、同年9月9日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、令和7年3月6日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)中田覚史により特許異議の申立てがされた。 2 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明10」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1~10の記載は次のとおりである。 〔本件発明1〕【請求項1】 基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部と、 前記区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定部と、 前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいて波の進入を判定する判定部と、 を備え 、 前記決定部は、前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて、前記差分領域を決定する波進入判定システム。 〔本件発明2〕【請求項2】 前記抽出部は、予め設定された除外対象が占有する除外領域を前記複数画像の少なくともいずれかから抽出し、 前記判定部は、前記区域領域から前記除外領域を除外して前記共通領域を決定する請求項1に記載の波進入判定システム。 〔本件発明3〕【請求項3】 前記決定部は、所定の密度で差分が生じている領域を包含するように前記波領域を定める請求項1または2に記載の波進入判定システム。 〔本件発明4〕【請求項4】 前記判定部は、前記共通領域が存在する場合には、前記共通領域の広さに関する判定を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の波進入判定システム。 〔本件発明5〕【請求項5】 前記決定部は、前記第1差分と前記第2差分に現れた差分の集合領域をそれぞれ1つ以上のブロックにまとめ、前記第1差分の前記ブロックと前記第2差分の前記ブロックの対応関係を推定することにより前記差分領域を決定する請求項1に記載の波進入判定システム。 〔本件発明6〕【請求項6】 前記決定部は、前記ブロックの移動方向、移動距離、大きさおよび特徴量の少なくともいずれかに基づいて前記対応関係を推定する請求項5に記載の波進入判定システム。 〔本件発明7〕【請求項7】 基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部と、 前記区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定部と、 前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいて波の進入を判定する判定部と、 第1条件または第2条件へ切り替える切替部と、 を備え 、 前記第1条件では、予め設定された除外対象が占有する除外領域を前記複数画像の少なくともいずれかから抽出し、前記区域領域から前記除外領域を除外して前記共通領域を決定し、 前記第2条件では、前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて前記差分領域を決定し、前記区域領域と前記差分領域に基づいて前記共通領域を決定する波進入判定システム。 〔本件発明8〕【請求項8】 基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出ステップと、 前記区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定ステップと、 前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいて波の進入を判定する判定ステップと を備え 、 前記決定ステップは、前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて、前記差分領域を決定する波進入判定方法。 〔本件発明9〕【請求項9】 基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出ステップと、 前記区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定ステップと、 前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいて波の進入を判定する判定ステップと、 第1条件または第2条件へ切り替える切替ステップと、 を備え 、 前記第1条件では、予め設定された除外対象が占有する除外領域を前記複数画像の少なくともいずれかから抽出し、前記区域領域から前記除外領域を除外して前記共通領域を決定し、 前記第2条件では、前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて前記差分領域を決定し、前記区域領域と前記差分領域に基づいて前記共通領域を決定する波進入判定方法。 〔本件発明10〕【請求項10】 請求項8または9に記載の波進入判定方法をコンピュータに実行させる波進入判定プログラム。 3 特許異議申立理由 特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (理由1:進歩性) 本件発明1~10は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、並びに、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (理由2:サポート要件) 本件発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。 (理由3:明確性) 本件発明は明確ではないから、請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開平5-28388号公報 甲第2号証:特開2006-52974号公報 甲第3号証:嶺直道、八木康史、谷内田正彦、「時系列差分画像を 用いた複数移動物体の抽出および追跡」、情報処理学会 研究報告 コンピュータビジョンとイメージメディア、 1993年1月21日、1993巻、7号、 1992-CVIM-81、51~56頁 甲第4号証:絹川亨、石村理知、「簡便でノイズ耐性の高いフレーム間 差分による動体検知法 -抽出画素の時空間でのつながり 情報を用いたランダム変動背景の除去-」、情報処理学会 研究報告 オーディオビジュアル複合情報処理、 2007年12月14日、2007巻、125号、 2007-AVM-59、147~152頁 甲第5号証:Lei Shang、Fucheng You、Chao Han、Xuewei Wang、Shuai Zhao、「Optimization of Three-Frame Difference Method and Improvement of Pedestrian Detection Code Book」、Journal of Physics: Conference Series、 2019年、1302巻、2号、1~8頁 甲第6号証:特表平7-508633号公報 甲第7号証:特開2019-41207号公報 甲第8号証:特開2019-87925号公報 甲第9号証:特開2018-130793号公報 甲第10号証:特開2018-107578号公報 4 甲号証について (1)甲第1号証について ア 記載事項 甲第1号証には次の記載がある。なお、以降の下線は当審において付されたものである。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、鉄道線路や道路上の交通障害を監視カメラで捕え、画像処理を行って障害を判断し、即座に警報信号を発生して運行中の運転者に警告を与える交通障害監視装置に関する。」 「【0007】 【実施例】本発明の交通障害監視装置は、図1に示すように、大きく分けると、障害発生予想地域に設置されて監視エリアの画像データを送る撮像端末装置1と、この撮像端末装置1から画像データを受けて交通障害を検知する中央装置2と、中央装置2からの障害情報を受信し、警告を表示する車内等に設置された報知端末装置3とを備え、撮像端末装置1と中央装置2の間および中央装置2と報知端末装置3の間を、それぞれ、有線または無線通信回線で接続している。 【0008】そして、撮像端末装置1には、監視エリアを撮像する撮像部11と、撮像部11が撮影した画像データを送信するデータ送信部15とを備えており、中央装置2には、撮像端末装置1のデータ送信部15から送られてきた画像データを受信するデータ受信部21と、その画像データを表示する監視用のモニタ22と、画像データを処理する画像処理部23と、処理結果から障害物を検知する認識部24と、検知した結果を中央装置2において表示する表示部25と、検知した情報を格納する情報格納部26と、検知結果に基づいて障害情報を端末装置3に送信する障害情報送信部27とを備えている。 【0009】また、報知端末装置3には、障害情報送信部27から送信された情報を受信する障害情報受信部31と、その障害情報に基づいて警告を表示する警告表示部32とを備えている。」 「【0011】次に、本発明の交通障害監視装置の動作について説明する。 【0012】撮像端末装置1の撮像部11としての監視カメラは、例えば、図3に示すように、鉄道線路に防波堤4を越える海の波、すなわち「越波」や高波の及ぶ虞れがある地域、または、図4に示すように、土砂崩れ6や雪崩などの予想される地域に設置され、越波用監視エリア5または土砂崩れ用監視エリア7を常時撮影する。 【0013】この撮影において、屋外での昼夜間の明るさの変化があっても、常に適切なコントラストが得られるように、中央装置2から撮像部11のカメラ制御部14に対して制御信号が送られ、光学系12の撮像レンズの絞りやフォーカスおよびCCD13の電子シャッタ機能が制御される。 【0014】撮像部11で撮影して得た画像データは、データ送信部15を介して中央装置2に伝送され、中央装置2のデータ受信部21で受信される。 【0015】受信された画像データは、モニタ22に表示されると共に画像処理部23に送られ、デジタル画像に変換された後に画像処理される。この処理は、あるフレームの画像とその1フレーム前の画像との信号の差分を演算するもので、このフレーム差分を求めることにより監視エリア内での変化分だけが情報として抽出される。 【0016】したがって、監視エリアにおいて越波が発生した場合には、画像処理することによって、画像の変化分である越波の部分だけが差分として抽出される。認識部24では、この差分画像から越波の周期、越波の高さを画像計測し、予め設定しておいた危険レベルと比較をする。越波が危険レベルを越える場合には、認識部24から警告信号が発せられる。 【0017】一方、監視エリア7において土砂崩れが発生した場合には、画像処理することによって、画面上で変化があるものだけを抽出し、その後、時間をおいて何フレームか画像処理を行い、抽出した物体の移動に変化がなければその物体を障害物と判断し、認識部24から警告信号を発する。 【0018】認識部24の発する警告信号が障害情報送信部27に送られると、障害情報送信部27では、画像処理部23から転送された画像データを報知端末装置3に送信する。また、この認識部24の発する警告信号は、表示部25に送られて表示されると共に情報格納部26にも送られて記憶される。 【0019】中央装置2から送信された画像データは、報知端末装置3の障害情報受信部31で受信され、警告表示部32に画像とその場所と時間が表示される。したがって、これを見た交通機関の運転者は、交通障害による危険を知ることができる。なお、報知端末装置3は、車内に搭載してもよいし、線路や道路上に警報装置として設置してもよい。」 「【0020】次に、本発明の中央装置3(当審注:「中央装置2」の誤記と認めた。)の画像処理部23において、土砂崩れ等の線路上の障害物を検出するまでの基本アルゴリズムを図5のフローチャートに基づいて説明する。 【0021】ステップ1;受信した画像データを入力する。 ステップ2;入力した画像データaを1フレームごとにメモリに書き込む。 ステップ3;書き込まれた画像データaと1フレーム前の画像データbとの差分を演算する。 【0022】ステップ4;演算の結果に基づいて物体の有無を判定する。 ステップ5;物体が存在する場合には、ステップ1からステップ4までの過程を繰り返した回数を計数する。 ステップ6;計数値が設定値に達しているかどうかを判断する。設定値に達していない場合は、ステップ1に戻り、画像データbはそのまま保持し、画像データaを更新する。 【0023】ステップ7;ステップ1からステップ4までの過程の繰り返し回数が設定値に達した場合には、認識部24に制御信号を送る。 ステップ8;ステップ4において、物体が存在しないと判断したときは、ステップ1からステップ4までの過程の繰り返し回数、即ち、計数値を0にリセットする。 ステップ9;画像データaを画像データbのメモリに書き換え、ステップ1に戻る。 【0024】このように、ステップ1からステップ4までの過程を設定回数繰り返しても物体が存在するときに、その物体が障害物と判断され、認識部24に制御信号が送られ、認識部24において障害物の大きさが計測される。 【0025】なお、越波の場合は、図5のフローチャートにおいて、ステップ4により物体の存在があると判断されたときは、認識部24に制御信号が送られ、そこで越波の波高、周期および越波到達場所の計測が行われ、予め設定された危険レベルと比較される。」 「【図3】 [図:0001423550000001.jpg] 」 イ 甲1発明 上記アから、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。 〔甲1発明〕 鉄道線路や道路上の交通障害を監視カメラで捕え、画像処理を行って障害を判断し、即座に警報信号を発生して運行中の運転者に警告を与える交通障害監視装置であって、(【0001】) 障害発生予想地域に設置されて監視エリアの画像データを送る撮像端末装置1と、この撮像端末装置1から画像データを受けて交通障害を検知する中央装置2と、中央装置2からの障害情報を受信し、警告を表示する車内等に設置された報知端末装置3とを備え、撮像端末装置1と中央装置2の間および中央装置2と報知端末装置3の間を、それぞれ、有線または無線通信回線で接続しており、(【0007】) 撮像端末装置1には、監視エリアを撮像する撮像部11と、撮像部11が撮影した画像データを送信するデータ送信部15とを備えており、(【0008】) 中央装置2には、撮像端末装置1のデータ送信部15から送られてきた画像データを受信するデータ受信部21と、その画像データを表示する監視用のモニタ22と、画像データを処理する画像処理部23と、処理結果から障害物を検知する認識部24と、検知した結果を中央装置2において表示する表示部25と、検知した情報を格納する情報格納部26と、検知結果に基づいて障害情報を端末装置3に送信する障害情報送信部27とを備えており、(【0008】) 報知端末装置3には、障害情報送信部27から送信された情報を受信する障害情報受信部31と、その障害情報に基づいて警告を表示する警告表示部32とを備えており、(【0009】) 撮像端末装置1の撮像部11としての監視カメラは、例えば、図3に示すように、鉄道線路に防波堤4を越える海の波、すなわち「越波」や高波の及ぶ虞れがある地域に設置され、越波用監視エリア5を常時撮影するものであり、(【0012】) 撮像部11で撮影して得た画像データは、データ送信部15を介して中央装置2に伝送され、中央装置2のデータ受信部21で受信され、(【0014】) 受信された画像データは、画像処理部23に送られ、デジタル画像に変換された後に画像処理され、この処理は、あるフレームの画像とその1フレーム前の画像との信号の差分を演算するもので、このフレーム差分を求めることにより監視エリア内での変化分だけが情報として抽出され、したがって、監視エリアにおいて越波が発生した場合には、画像処理することによって、画像の変化分である越波の部分だけが差分として抽出され、(【0015】、【0016】) 認識部24では、この差分画像から越波の周期、越波の高さを画像計測し、予め設定しておいた危険レベルと比較をし、越波が危険レベルを越える場合には、認識部24から警告信号が発せられ、(【0016】) 認識部24の発する警告信号が障害情報送信部27に送られると、障害情報送信部27では、画像処理部23から転送された画像データを報知端末装置3に送信し、また、この認識部24の発する警告信号は、表示部25に送られて表示され、(【0018】) 中央装置2から送信された画像データは、報知端末装置3の障害情報受信部31で受信され、警告表示部32に画像とその場所と時間が表示され、(【0019】) 中央装置2の画像処理部23における基本アルゴリズムは、(【0020】) ステップ1;受信した画像データを入力する、(【0021】) ステップ2;入力した画像データaを1フレームごとにメモリに書き込む、(【0021】) ステップ3;書き込まれた画像データaと1フレーム前の画像データbとの差分を演算する、(【0021】) ステップ4;演算の結果に基づいて物体の有無を判定する、(【0022】) ステップ4により物体の存在があると判断されたときは、認識部24に制御信号が送られ、そこで越波の波高、周期および越波到達場所の計測が行われ、予め設定された危険レベルと比較される、(【0025】) というものである 交通障害監視装置。 (2)甲第2号証について ア 記載事項 甲第2号証には次の記載がある。 「【0001】 この発明は、TVカメラの映像を画像処理して、越波を検知する装置に関する。」 「【0008】 実施の形態1. 図1は、この発明の実施の形態1による越波検知装置を示す構成図である。図において、越波検知装置100は、撮像部1、撮像制御部2、フレームメモリ3、初期点列データ設定部4、点列データ移動部5、エネルギー算出部6、エネルギー最小位置決定部7、波位置算出部8、波位置記憶部9、波変位量算出部10、波進行方向決定部11、判定基準線分設定部12、越波判定部13および越波情報通報部14で構成されている。また、点列データ移動部5、エネルギー算出部6およびエネルギー最小位置決定部7で波輪郭形状抽出部15が構成されている。」 「【0010】 また、図2は、この発明の実施の形態1による越波検知装置の利用形態に関する説明図である。本実施の形態の越波検知装置100は、図2に示すように撮像部1を海岸線付近に設置し、防波堤等を越えて侵入してくる波すなわち越波を監視する。」 「【0015】 波位置算出部8は、波輪郭形状に対する波位置を波輪郭形状を形成する点列の座標の平均を求めることによって算出する。また、波変位量算出部10は、波位置と、波位置記憶部9で保持されている前フレームにおける波位置との差を求めることによって、波変位量を求める。さらに、波変位量を求めた後、波位置記憶部9の値は、最新の波位置に書き換えられる。 【0016】 波進行方向決定部11は、波変位量に基づき、3つの状態すなわち、海岸線へ向かう方向への移動あり、移動なし、海側に向かう方向への移動ありの状態のうち、いずれか1つを所定のしきい値をもとに決定して波方向とし、波方向の継続回数を記憶する。 【0017】 判定基準線分設定部12は、越波かどうかを判定するための判定基準線分を設定するもので、予め手動にて設定値が入力される。越波判定部13は、波輪郭形状抽出部15で得られた波輪郭形状と、判定基準線分設定部12で設定された判定基準線分とを比較した値または波方向の継続回数をもとに越波を判定する。また、その判定結果は、越波情報通報部14に送信され、越波情報通報部14によって監視者への通報または周辺部に存在する人物などへ通報が実施される。」 「【0028】 波輪郭形状抽出部15は、ステップST3~ST7を行い、すべての移動パターンの中で、最もエネルギーが小さい場合の移動パターンを新たな点列データの位置として設定し(ステップST8)、再びステップST3~ST7の処理を繰り返す。また、列の移動がなかった場合すなわちエネルギー量が変化しなくなった場合もしくは所定の回数だけ処理を実行した場合に終了し、得られた点列データを結ぶ線分を波輪郭形状として抽出する(ステップST9)。」 「【0032】 越波判定部13は、判定基準線分設定部12で予め設定された判定基準線分をもとに越波の発生の有無を判定する。図8に越波判定の説明図を示す。図8に示されるように、波輪郭形状60と、判定基準線分80との差分を求め(ステップST14)、判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた量の面積81が所定のしきい値以上である場合に越波ありと判定する(ステップST15)。このとき、波の進行方向が海岸線に向かう方向である状態が所定しきい値以上連続しているか否かによって、上記の越波判定結果の出力を制御する。すなわち、波が海岸線に向かっている場合は、越波と判定し、逆の場合は、ノイズと判定する(ステップST16)。なお、ノイズの影響がない場合は、ステップST16の判定を省略してもよい。」 「【図1】 [図:0001423550000002.jpg] 」 「【図2】 [図:0001423550000003.jpg] 」 「【図8】 [図:0001423550000004.jpg] 」 イ 甲2発明 上記アから、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾括弧内に、対応する記載箇所を付した。 〔甲2発明〕 撮像部1を海岸線付近に設置し、防波堤等を越えて侵入してくる波すなわち越波を監視する越波検知装置100であって、(【0010】) 撮像部1、撮像制御部2、フレームメモリ3、初期点列データ設定部4、波輪郭形状抽出部15、波位置算出部8、波位置記憶部9、波変位量算出部10、波進行方向決定部11、判定基準線分設定部12、越波判定部13および越波情報通報部14で構成されており、(【0008】) 波輪郭形状抽出部15は、波輪郭形状を抽出するものであり、【0028】 波位置算出部8は、波輪郭形状に対する波位置を算出するものであり、(【0015】) 波変位量算出部10は、波位置と、波位置記憶部9で保持されている前フレームにおける波位置との差を求めることによって、波変位量を求めるものであり、(【0015】) 波進行方向決定部11は、波変位量に基づき、3つの状態すなわち、海岸線へ向かう方向への移動あり、移動なし、海側に向かう方向への移動ありの状態のうち、いずれか1つを所定のしきい値をもとに決定して波方向とし、波方向の継続回数を記憶するものであり、(【0016】) 判定基準線分設定部12は、越波かどうかを判定するための判定基準線分を設定するもので、予め手動にて設定値が入力され、(【0017】) 越波判定部13は、判定基準線分設定部12で予め設定された判定基準線分をもとに越波の発生の有無を判定するものであり、波輪郭形状抽出部15で得られた波輪郭形状60と、判定基準線分80との差分を求め、判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた量の面積81が所定のしきい値以上である場合に越波ありと判定し、このとき、波の進行方向が海岸線に向かう方向である状態が所定しきい値以上連続している場合は、越波と判定し、逆の場合は、ノイズと判定するものである(【0017】、【0032】) 越波検知装置100。 (3)甲第3号証に記載された技術 甲第3号証(51~54頁)には、画像から移動物体の発見にはフレーム間差分を用い、その差分領域の時間的連続性より移動物体を追跡する技術が記載されている。 (4)甲第4号証に記載された技術 甲第4号証(147~152頁)には、フレーム間差分から動体領域の候補を抽出し、当該候補領域の画素の空間的、時間的な連続性より動体を検知する技術が記載されている。 (5)甲第5号証に記載された技術 甲第5号証(1頁(Abstract)、5頁(7~21行、Figure 1))には、フレーム間差分の連続性より歩行者を検出する技術が記載されている。 (6)甲第6号証に記載された技術 甲第6号証(要約、4頁右下欄3行~5頁左上欄29行)には、フレーム間差分の連続性より運動物体を追跡する技術が記載されている。 (7)甲第7号証について ア 記載事項 甲第7号証には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、監視システム及び監視方法に係り、例えば、鉄道のようにプラットホームに車両が進入するエリアを監視する監視システム及び監視方法に関する。」 「【0014】 画像処理装置8は、ホーム監視装置20から取得したデータを蓄積し、各種の処理を行う。そのような処理の一つとして、画像処理装置8は、蓄積された乗降客の行動から危険行動検知エリアを自動的に学習して登録する。」 「【0029】 画像処理装置8は、出現点、消失点、乗降客の動線情報を蓄積し、車両ドアから出入りする乗降客がホーム上を移動するエリアに対して危険行動を検知するための危険行動検知エリアB4(すなわち画像処理対象エリア)として登録する。危険行動検知エリアB4以外のエリアは、危険行動検知のための画像処理対象エリアから除外することで、列車や太陽光などといった外乱が画像処理に与える影響(誤検知等)を抑制することが可能となる。」 「【0032】 画像処理装置8は、車両ドアC6に向かう乗降客について、上述の移動ベクトルから、フレーム間の人物の移動距離から速度を計算し、一定速度以上の乗降客を危険行動(駆け込み乗車)と判定する。」 イ 甲第7号証に記載された技術 上記アによれば、甲第7号証には、監視領域を学習により求める技術が記載されている。 (8)甲第8号証について ア 記載事項 甲第8号証には次の記載がある。 「【要約】 【課題】進入または退出する人物の検知精度を向上させることができる画像処理装置、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムを提供することである。」 「【0004】 本発明が解決しようとする課題は、進入または退出する人物の検知精度を向上させることができる画像処理装置、画像処理システム、画像処理方法、およびプログラムを提供することである。」 「【0101】 また、第5実施形態の検知領域設定部118は、ユーザの検知線LNDの設定態様の好みを学習し、その学習した好みに応じて、検知線LNDを自動的(ユーザの操作に依らずに)に設定してもよい。例えば、ユーザが検知対象のトラックレットTLと非検知対象のトラックレットTLとを設定したときに、検知対象のトラックレットTLと共に、非検知対象のトラックレットTLも検知されるような位置に検知線LNDが設定されることが多い場合、すなわち、「正検知」を優先させるために、ある程度の「過検知」を許容した検知線LNDが設定されることが多い場合、検知領域設定部118は、このユーザが、過検知を許容してでもトラックレットTLの検知精度を高めることを好んでいると学習する。また、例えば、ユーザが検知対象のトラックレットTLと非検知対象のトラックレットTLとを設定したときに、検知対象のトラックレットTLが検知されなくとも、非検知対象のトラックレットTLが検知されないことを優先した位置に検知線LNDが設定されることが多い場合、すなわち、「過検知」されないことを優先させるために、ある程度の「未検知」を許容した検知線LNDが設定されることが多い場合、検知領域設定部118は、このユーザが、トラックレットTLの検知精度を下げてでも、過検知を禁止することを好んでいると学習する。 【0102】 そして、検知領域設定部118は、この学習したユーザの検知線LNDの設定態様の好みに応じて、新たな検知線LNDを自動的に設定する。例えば、「正検知」を優先させるために、ある程度の「過検知」を許容した検知線LNDを設定する傾向にあると学習したユーザが新たに検知線LNDを設定しようとした場合、検知領域設定部118は、この学習結果に基づいて、「過検知」を許容しつつ「正検知」となることを最も優先した検知線LNDを自動的に設定してよい。これによって、ユーザが検知線LNDを設定する手間を省くことができ、ユーザの利便性を向上させることができる。 【0103】 なお、検知領域設定部118が学習するユーザの検知線LNDの設定態様の好みは、ユーザ自身が決定してもよい。図26は、検知線LNDの設定態様の好みを設定する画面の一例を示す図である。例えば、出力制御部116は、図26に例示するような画面を表示部104に表示させ、ユーザに検知線LNDの設定態様の好みを設定させる。図中の閾値を示すバーは、例えば、検知線LNDによるトラックレットTLの検知精度の程度を調整するためのものである。ユーザは、このバーを0[%]側か100[%]側かに移動させることで、所望の検知精度に設定する。0[%]側は、例えば、検知線LNDによってトラックレットTLが「過検知」となることを禁止することを表し、100[%]側は、例えば、検知線LNDによってトラックレットTLが「未検知」となることを禁止することを表している。 【0104】 また、検知領域設定部118は、各カメラ10の監視区域ごとに検知線LNDを設定する場合、ある監視区域に対して設定した検知線LNDの設定態様を、他の監視区域に対して設定する検知線LNDの設定態様としてもよい。」 イ 甲第8号証に記載された技術 上記アによれば、甲第8号証には、監視領域を学習により求める技術が記載されている。 (9)甲第9号証に記載された技術 甲第9号証(【0001】、【0035】、【0057】)には、作業者及びロボットの動作を監視する際に、作業者可動領域とロボット占有領域との論理和の領域から構造物領域を除外した領域を、画像処理を行う領域とする技術が記載されている。 (10)甲第10号証に記載された技術 甲第10号証(【0001】、【0060】)には、監視分野において、監視エリアから駐車された車両の領域だけが除外された領域を、更新後の監視エリアとする技術が記載されている。 5 当審の判断 (1)理由1(進歩性)について (1-1)甲1発明を主発明とした場合について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 本件発明1では「基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部」を備えるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点(以下「相違点1」という。)で、両者は相違する。 甲1発明は、画像処理部23において、越波用監視エリア5を撮像部11で撮影して得た画像データをデジタル画像に変換して、あるフレームの画像とその1フレーム前の画像との信号の差分を演算して、監視エリアにおいて越波が発生した場合には、画像の変化分である越波の部分を差分として抽出するものであり、本件発明1と甲1発明は、「領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定部」を備える点で共通する。 しかしながら、前記領域が、本件発明1では「前記区域領域(基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域)を含む」ものであるのに対し、甲1発明では当該区域領域を含むものではない点(以下「相違点2」という。)で、両者は相違する。 また、前記決定部が、本件発明1では「前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて、前記差分領域を決定する」ものであるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点(以下「相違点3」という。)で、両者は相違する。 甲1発明は、認識部24において、差分画像から越波の周期、越波の高さおよび越波到達場所を計測し、越波(防波堤を越える海の波)が危険レベルを越える場合に警告信号を発するものであり、防波堤を越える海の波の(危険レベルを越える)進入を判定するものといえるから、本件発明1と甲1発明は、「波の進入を判定する判定部」を備える点で共通する。 しかしながら、前記判定が、本件発明1では「前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいて」いるのに対し、甲1発明では当該要素に基づいていない点(以下「相違点4」という。)で、両者は相違する。 甲1発明の「交通障害監視装置」は、上記のとおり波の進入を判定する構成を備えるものであるから、本件発明1の「波進入判定システム」に相当する。 以上から、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。 〔一致点〕 領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定部と、 波の進入を判定する判定部と、 を備えた 波進入判定システム。 〔相違点1〕 本件発明1では「基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部」を備えるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点。 〔相違点2〕 前記領域が、本件発明1では「前記区域領域(基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域)を含む」ものであるのに対し、甲1発明では当該区域領域を含むものではない点。 〔相違点3〕 前記決定部が、本件発明1では「前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて、前記差分領域を決定する」ものであるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点。 〔相違点4〕 前記判定が、本件発明1では「前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいて」いるのに対し、甲1発明では当該要素に基づいていない点。 (イ)判断 まず、上記相違点1、4について検討する。 監視領域(本件発明1の「区域領域」に相当するもの)を学習により求めること自体は、甲第7号証、甲第8号証に記載されているように周知技術と認められる。 しかしながら、当該技術における監視領域(区域領域)は、監視する領域を制限するものであり、監視対象の検出後に監視領域(区域領域)と共通する領域を求めるようなものではないから、甲1発明に当該周知技術を適用したとしても、判定部における波の進入を判定する処理として、監視領域(区域領域)と監視対象である「画像の変化分である越波の部分」(波領域の変化を示す差分領域)の共通領域の有無に基づいて行うこと(相違点4に係る本件発明1の構成)までは想到しえない。 また、監視対象の検出後に監視領域(区域領域)と共通する領域を求めることについては、甲第2号証~甲第10号証のいずれにも記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において、相違点1、4に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明及び甲第2号証~甲第10号証に記載された技術から当業者が容易に想到しうるものではない。 よって、相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲第2号証~甲第10号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2~本件発明10について 本件発明2~本件発明10も、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記アと同様の理由により、当業者が甲1発明及び甲第2号証~甲第10号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (1-2)甲2発明を主発明とした場合について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の判定基準線分設定部12において予め手動にて設定値が入力されて設定される判定基準線分80は、当該線分より海岸線側が「判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた量の面積81」の算出に用いられる領域であり、当該判定基準線分80より海岸線側の領域は、本件発明1の「予め設定された区域である区域領域」といえるものである。 そして、前記判定基準線分設定部12で設定される判定基準線分80により海岸線側の領域(区域領域)が抽出されるから、甲2発明の「判定基準線分設定部12」は、「基準画像から予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部」に相当する構成を備える点で、本件発明1の「抽出部」と共通する。 しかしながら、前記基準画像からの区域領域の抽出が、本件発明1では学習済みモデルを用いてなされるのに対し、甲2発明では手動にて設定値が入力されることによりなされるものである点で、両者は相違する。(以下「相違点5」という。) 甲2発明は、波輪郭形状抽出部15において波輪郭形状を抽出し、波位置算出部8において波輪郭形状に対する波位置を算出し、波変位量算出部10において、波位置と、前フレームにおける波位置との差を求めることによって、波変位量を求めるものである。 本件発明1と甲2発明は、「前記区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波の変化を示す差分情報を決定する決定部」を備える点で共通する。 しかしながら、前記波の変化を示す差分情報が、本件発明1では波領域の変化を示す差分領域であるのに対し、甲2発明では波輪郭形状に対する波位置の変化を示す波変位量である点で、両者は相違する。(以下「相違点6」という。) また、前記決定部が、本件発明1では「前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて、前記差分領域を決定する」ものであるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点(以下「相違点7」という。)で、両者は相違する。 甲2発明は、波進行方向決定部11において、波変位量に基づき、3つの状態すなわち、海岸線へ向かう方向への移動あり、移動なし、海側に向かう方向への移動ありの状態のうち、いずれか1つを所定のしきい値をもとに決定して波方向とし、越波判定部13において、判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた量の面積81が所定のしきい値以上である場合に越波ありと判定し、このとき、波の進行方向が海岸線に向かう方向である状態が所定しきい値以上連続している場合は、越波と判定するものである。当該越波(波の進入)を判定するために、判定基準線分80より海岸線側の領域(前記区域領域)と波変位量(前記差分情報)が用いられている。 そうすると、本件発明1と甲2発明は、「前記区域領域と前記差分情報に基づいて波の進入を判定する判定部」を備える点で共通する。 しかしながら、前記波の進入の判定が、本件発明1では前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいてなされるのに対し、甲2発明では海岸線側の領域(前記区域領域)における判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた量の面積81と、波変位量に基づき決定される波方向に基づいてなされる点(以下「相違点8」という。)で、両者は相違する。 甲2発明の「越波検知装置100」は、上記のとおり波の進入を判定する構成を備えるものであるから、本件発明1の「波進入判定システム」に相当する。 以上から、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。 〔一致点〕 基準画像から予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部と、 前記区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波の変化を示す差分情報を決定する決定部と、 前記区域領域と前記差分情報に基づいて波の進入を判定する判定部と、 を備えた 波進入判定システム。 〔相違点5〕 前記基準画像からの区域領域の抽出が、本件発明1では学習済みモデルを用いてなされるのに対し、甲2発明では手動にて設定値が入力されることによりなされるものである点。 〔相違点6〕 前記波の変化を示す差分情報が、本件発明1では波領域の変化を示す差分領域であるのに対し、甲2発明では波輪郭形状に対する波位置の変化を示す波変位量である点。 〔相違点7〕 前記決定部が、本件発明1では「前記複数画像のうち、第1画像と第2画像の差分である第1差分と、第3画像と第4画像の差分である第2差分とを算出し、前記第1差分から前記第2差分への変化に基づいて、前記差分領域を決定する」ものであるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点。 〔相違点8〕 前記波の進入の判定が、本件発明1では前記区域領域と前記差分領域の共通領域の有無に基づいてなされるのに対し、甲2発明では海岸線側の領域(前記区域領域)における判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた量の面積81と、波変位量に基づき決定される波方向に基づいてなされる点。 (イ)判断 まず、上記相違点6、8について検討する。 甲2発明は、波位置算出部8において波輪郭形状に対する波位置を算出し、波変位量算出部10において波位置と、前フレームにおける波位置との差を求めることによって、波変位量を求め、波進行方向決定部11において波変位量に基づき、3つの状態すなわち、海岸線へ向かう方向への移動あり、移動なし、海側に向かう方向への移動ありの状態のうち、いずれか1つを所定のしきい値をもとに決定して波方向とするものである。 甲第1号証には、越波の部分を抽出するために、あるフレームの画像とその1フレーム前の画像との信号の差分(波領域の変化を示す差分領域)を演算する技術が記載されているが、当該越波の部分を抽出する甲第1号証の技術は、波方向を決定する甲2発明とは処理目的が異なるものであるから、甲2発明における波方向の決定において、甲第1号証に記載された技術における「あるフレームの画像とその1フレーム前の画像との信号の差分」(波領域の変化を示す差分領域)を用いようとする動機付けは存在しない。 また、波方向を決定するために「波領域の変化を示す差分領域」を用いることについては、甲第3号証~甲第10号証のいずれにも記載も示唆もされていない。 なお、甲2発明における海岸線側の領域(前記区域領域)における判定基準線分80を波輪郭形状60が海岸線側に越えた部分についてみても、当該部分は各フレームにおいて求められるものであるから、当該部分にフレーム間の差分を適用しようとする動機付けは存在しない。 以上から、甲2発明において、相違点6、8に係る本件発明1の構成とすることは、甲2発明及び甲第1号証、甲第3号証~甲第10号証に記載された技術から当業者が容易に想到し得るものではない。 よって、相違点5、7について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲2発明及び甲第1号証、甲第3号証~甲第10号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2~本件発明10について 本件発明2~本件発明10も、上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、上記アと同様の理由により、当業者が甲2発明及び甲第1号証、甲第3号証~甲第10号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)理由2(サポート要件)、理由3(明確性)について 申立人は、本件発明1が「周囲が暗い環境」に対する課題を解決できないものであり、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号の要件を満たしていない旨主張している。 また、申立人は、本件発明7が「例えば、周囲が明るい昼の時間帯は第2実施例に係るフローで波進入の判定を行い、周囲が暗い夜の時間帯は第3実施例に係るフローに切り替えて波進入の判定を行うことができる」というような効果を有さず、本件発明の課題を解決できないものであり、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号の要件を満たしていない旨主張している。 しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「波の進入を監視すべき地点が一地点で足りることは稀であり、多くの場合は複数地点での監視が必要となる。例えば、海岸沿いの一般車両が走行する道路では、波の進入が生じ得る地点が多く存在する場合もある。このような状況では、従来技術の監視装置を導入するにあたり、一地点ごとにその地形に応じた初期設定の作業を強いられることになり、コスト高を招くなど、監視装置の導入に高い障壁があった。」(【0004】)というものであり、当該課題を解決するための手段は、「基準画像から学習済みモデルを用いて予め設定された区域である区域領域を抽出する抽出部と、区域領域を含む領域を設定された時間差で撮像された複数画像の差分に基づいて、波領域の変化を示す差分領域を決定する決定部と、区域領域と差分領域の共通領域の有無に基づいて波の進入を判定する判定部とを備える。」(【0006】)というものであり、本件発明の効果は、「複雑な初期設定を要することなく、導入後にいち早く運用を開始できる波進入判定システム等を提供することができる。」(【0009】)というものである。 上記課題を解決するための手段は、本件発明1、7に含まれているから、本件発明の課題を解決できるものである。 また、申立人は、実施形態では、図11等に示すように、3枚の画像から算出される実施例しか記載されておらず、本件発明1は、明細書の内容と明確に対応しておらず、明細書に記載がないことも含まれるから、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号の要件を満たしていない旨主張している。 しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明の【0068】に「第2画像を共通で利用せず、第1差分フレームDF 1を第1画像と第2画像から生成し、第2差分フレームDF 2を第3画像と第4画像から生成してもよい。」と記載され、4枚の画像から算出される実施例も記載されているから、本件発明1は、明細書の内容と明確に対応するものである。 以上のとおり、申立人の主張は、いずれも採用することができるものではなく、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号の要件を満たすものである。 請求項2~6、8~10についても同様である。 6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由(理由1~3)によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700271

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